TOPIC No. 2-88-2 森 元首相(2000年06月-12月)

「クリスマスイブまで座っていればなあ」 首相、弱気?

2000.11.14(19:47)asahi.com
 森喜朗首相が14日、牛尾治朗ウシオ電機会長からクリスマスイブの行事に誘われた際、「それまで(首相に)座っていればなあ」とこぼす場面があった。牛尾氏が「そんな軽率なことを言っちゃいかんよ」とその場でとりなした。

 加藤紘一元自民党幹事長の「倒閣」宣言を受けて、首相が弱気になっていると取られかねないだけに、党執行部は「冗談でしょう。反り返っていると言われて小さくなったんだろう」「クリスマスは毎年来るから」と打ち消しに走った。

 首相の発言は、官邸で開かれた教育改革国民会議の後、委員である牛尾氏との立ち話で出た。委員で、そばにいた黒田玲子東大教授も「そんなこと言っちゃだめ」。首相はこの後、記者団から「冗談と受けとめていいか」と聞かれて、「3人でミュージカルの話をしていただけだ。個人的な話を盗み聞きするのは記者として良くないですよ」と説明した。

森首相、政局心配で電話攻勢

2000.11.15(23:28)asahi.com
 自民党の主流派内から首相交代論が出るなか、森喜朗首相は15日、ブルネイでアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会合などの日程を表向きは淡々とこなした。しかし、留守中の情勢はさすがに気になるようで、しきりに日本に電話して情報を収集。日本のテレビ記者が街頭でインタビューを試みると一度は応じておきながら、あとになって放送しないように求めるなど、ピリピリ。同行した安倍晋三官房副長官も首相の「弱気発言」報道を否定するなど、火消しに躍起だった。

 「日本としては、引き続き忍耐をもって粘り強く交渉していきたい」。首相はこの日の韓国の金大中大統領との会談で、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との国交正常化交渉の進み具合を丹念に説明した。力を入れてきた日朝交渉の継続について語る言葉に、続投の意欲をにじませた。

 しかし、首相の政権基盤が急速に弱まっていることは、韓国政府にとっては周知の事実。金大統領の同行筋は「ポスト森はだれになるのだろうか」と次の政権に関心を寄せていた。

 首相としてはここで弱気を見せれば、一気に流れができてしまうだけに、APECに専念し、政局絡みの報道には平静を装い続けるしかない。首相は米ケーブルテレビとのインタビューでも「補正予算案など諸課題に取り組んでいく」と答えた。

 先に日英首脳会談で日本人拉致に関する問題発言が政権に大きなダメージを与えただけに、日韓首脳会談に同席した安倍官房副長官は必要最小限の内容だけを記者団に説明した。首相が安倍氏に「APECから帰ってきたら席がないかもしれないな」と語ったという一部報道についても、「事実無根だ。いくつかの話がごちゃまぜになっている」と釈明した。

森首相、会食を当分自粛 「危機感乏しい」指摘にこたえ

2000.11.14(18:49)asahi.com
 森喜朗首相が、夜の会食予定をしばらくキャンセルすることにした。料亭をハシゴする首相の姿がテレビや週刊誌で報じられ、危機感が乏しいと指摘されてきたためだ。会食は首相が寝泊まりしている公邸ですませ、外食は週に1回程度に抑えるという。福田康夫官房長官は14日の記者会見で、首相が公邸に1人で住んでいることを強調して「公邸で、ひとりポツリと食べることになっちゃう。外の食事は自分から誘うのではなく、誘われるケースも多い」とかばったが、「誤解があるとすれば、配慮しなければいけない」と語った。

 自民党の野中広務幹事長もこうした「方針転換」について14日の会見で「総理はこの緊張した時期に、自分の日程について節度ある取り扱いをされることは非常にいいことだと思う」と評価した。

「支持率に一喜一憂しない」 森首相、国会で答弁

2000.11.13(19:19)asahi.com
 森喜朗首相は13日の参院本会議で、各報道機関による世論調査で内閣支持率が低下していることについて、「最近の厳しい調査結果は謙虚に受け止めている。厳しいときこそ、支持率の動きに一喜一憂せず、国民のために何ができるかを考えるのが大切。景気回復、IT革命、教育改革、社会保障などの政策を着実に実行するのが私の責務だ」と述べ、政策課題の実行に専念する姿勢を強調した。民主党の小山峰男氏の質問に答えた。

「景気重視の税制改正を」 森首相が指示

2000.11.07(23:06)asahi.com
 森喜朗首相は7日、与党3党の政策責任者に官邸で会い、来年度税制改正について、(1)相続税・贈与税(2)企業税制(3)住宅ローン減税(4)株式譲渡益(キャピタルゲイン)課税の4分野について「景気対策を重視した内容とするよう、具体的な検討をしてほしい」と指示した。

 首相は、株式譲渡益課税について源泉分離課税の廃止を見直す方向で検討するよう伝えたほかは、具体的な検討の方向は示さなかったという。

 これを受け、与党3党は相続税では無利子国債構想のほか、最高税率(70%)の引き下げなどを検討する見通しだ。贈与税では年間60万円までの非課税枠の拡大、企業税制では会社分割に伴って移転する資産への課税繰り延べのほか、中小企業の経営者が亡くなった場合の事業承継を円滑にするための税制も検討する。

森首相、支持率低下を陳謝

2000.11.04 The Sankei Shimbun
 森喜朗首相は四日午前の公明党大会でのあいさつで、中川秀直前官房長官のスキャンダルによる辞任や、北朝鮮による日本人拉致(らち)疑惑をめぐる自らの「第三国発見方式」発言などで混乱を招いたことについて、「ずいぶんとご心労をおかけしているが、公明党には冷静に対処していただき、その政治姿勢には頭が下がる思いだ。おわび申し上げるとともに敬意と感謝を申し上げる」と、陳謝した。

映画にラグビー、森首相の休日 周囲の反対を押し切り

2000.11.03(21:17)asahi.com
 森喜朗首相は3日、映画試写会とラグビー観戦に出かけ、「スポーツ・芸術の秋」を満喫した。首相は先週末、側近の中川秀直前官房長官がスキャンダルまみれで辞任した翌日に大学野球の早慶戦やラグビーを観戦し、ひんしゅくを買ったばかり。さすがに首相周辺もこの日のラグビー観戦には反対したが、首相自身の決断で押し切った。

 首相はこの日、東京都内で映画「15才 学校4」の試写会に出席。その後、ラグビーのニュージーランド代表チーム「オールブラックス」と、日本でプレーする外国人選手らの混成チームの試合を観戦した。

 この日のラグビー観戦について首相は2日、「ただ見るだけじゃないんです。いろいろ理由があって行くんです」と記者団に説明していた。

 首相は最近、「日本代表は未来永劫(えいごう)ワールドカップを抱くことができない」と語り、ラグビーファンが怒っていた。こうしたこともあって、先週末のラグビー観戦では、会場で森首相が紹介されると一斉にブーイングが起こった。

 この日は後半戦の途中に来たため、紹介もなく、ほとんどの観客は気づかないまま。会場からは「政治さえしっかりやってくれれば休日の過ごし方は自由だ」という声が聞こえる一方、「(発言は)一生懸命やっている選手たちに失礼だ」「ぽろっと言ってしまうのが森さんらしい」と冷ややかな声もあった。

「辞めたくても辞められない…」のが総理大臣 政府首脳

2000.11.03(00:06)asahi.com
 「辞めたくても辞められない。それが総理大臣という最高権力者のきついところだ」。政府首脳は2日、東京株式市場などで「森喜朗首相が緊急記者会見を開いて辞意を表明する」とのうわさが流れたと聞き、こんな感想を語って、うわさを否定した。

 同首脳は「あとが決まっているならば別だが、後継に手をあげる人がいない。何も決まってないのに勝手に辞めたら、後任をめぐって大混乱し、下手したら政界再編みたいなことになりかねない」と語り、辞めない理由の1つとして「ポスト森」が決まっていないことを挙げた。

 さらに、「首相はいま、そんな気は全くない。小渕(恵三)前首相のように健康状態が悪くなったら別だが、健康な人が突然、辞めることはありえない。『参院選は森首相で』というのが与党内のほとんどの声で、そういうことを軽々に口にすべきではない」と述べた。

森首相インタビューの要旨

2000.11.03(00:39)asahi.com
 2日、森首相が朝日新聞社などのインタビューで語った要旨は次の通り。

 【日朝関係】
 (国交正常化交渉は)まだ大使レベルの実務的な詰めを行う。時機が来れば、政治レベルの交渉に上げることも必要になってくると思うが、今は外相レベルとか、私自身が交渉に臨むということを具体的に検討する時期ではない。

 (日本人拉致疑惑に絡む「第三国で発見」案は、問題解決の選択肢として)消えたとか、無くなったとか言う必要はないのではないか。今後の交渉であるかもしれないし、そんなにいくつも選択肢があるわけではない。

 【支持率急落】
 調査結果は謙虚に受け止めねばならない。中川秀直前官房長官の辞任が直接的にはやはり影響があっただろう。中川さんに責任があったということではなく、閣僚全員の人事の責任は私にある。緊張感をもって国政にあたる努力をしたい。本格的な景気回復に向けて補正予算を国会に提出し、来年度予算編成作業を進める。

 【内閣・党人事】
 一般論として、予算を組んだ大臣が国会での予算審議をお願いするのが正しいと思う。しかし人事を考えるのは時期尚早だ。

 野中広務幹事長と気持ちを1つにしてこの国会でなんとしても実をあげたい。慰留とか固辞ではなく、一緒にやっていこうということだ。青木幹雄参院幹事長とは、一番よく気持ちをわかっている。

 【教育改革】
 教育改革をやるなら(教育基本法改正は)避けて通れない。党としての議論をしたいし、来年前半までに(とりまとめたい)と考えている。

森政権支える「両輪」反目 野中氏発言を小泉氏が批判

2000.10.29(21:48)asahi.com
 「ガセネタ(間違った情報)を信用するようになったら、政治家はおしまい」――自民党森派の小泉純一郎会長は29日、川崎市で講演し、野中広務幹事長を批判した。28日には野中氏が小泉氏を批判しており、森喜朗首相を支える「両輪」の反目は、中川秀直前官房長官の更迭などで求心力が衰えている森政権の先行きに微妙な影響を与えそうだ。

 きっかけは中川氏の後任の人選にあたり、小泉氏が尾身幸次幹事長代理を「野中氏の影響を受け過ぎている」ので推さなかった、との一部報道。野中氏がこれに反発し、28日の講演で「看過できない。首相は私を選ぶか小泉さんを選ぶかだ」と切り付けた。

 小泉氏は29日の講演で報道を事実無根としたうえで「一部の新聞記事を真に受けて、確かめもせずあれこれ言うのはみっともない。恥ずかしいことだ。幹事長のような大政治家がするようなことではない」と一刀両断。福田康夫氏を後任に推した理由は「能力や人格などすべてを勘案して一番ふさわしい。野中さんに近いかどうかで考えるわけがない」と述べた。

森首相、神宮「はしご」観戦 六大学早慶戦→ラグビー

2000.10.28(19:28)asahi.com
 ラグビーファンを自任する森首相が28日、オーストラリア代表ワラビーズ―プレジデント15戦の観戦に訪れた東京・秩父宮ラグビー場で、ブーイングを浴びた。

 2日前にオーストラリア大使館で行われたワラビーズ歓迎レセプションで、本物のワールドカップを手にした喜びを語った際に、日本代表は未来永劫(えいごう)手にすることができない、とあいさつして不評をかったようだ。

 隣の神宮球場で早慶戦を観戦後に秩父宮に移動した森首相はハーフタイムに紹介されると笑顔で手を振ったが、観客は大ブーイングでこたえた。ラグビーファンからもすっかり支持を失ってしまった。

「学校に宗教教育必要」と森首相 テレビの番組収録で

2000.10.27(23:04)asahi.com
 森喜朗首相は27日、テレビ東京の政府広報番組の収録で、宗教教育のありかたについて「宗教は強制してはいけない。しかし全く教えないのはよくない。憲法に信教の自由があるから、宗教を特定して教えるのではないかと、先生がちゅうちょしてしまうが、学校の中でしっかり宗教観を教えなくてはいけない」と述べ、学校に宗教教育を盛り込む必要があるとの考えを示した。

 教育基本法は「宗教に関する寛容の態度」などを尊重する必要性を盛り込む一方で、公立校が特定の宗教のための教育をすることを禁じている。

 また首相は、教育改革国民会議の中間報告で、学校教育で「奉仕活動を全員が行うようにする」と提言していることについて、「奉仕を体験することが目的ではなく、奉仕活動をすることによって思いやりの心を育てたりするプロセスが大事だ。奉仕を義務づけてやりなさい、と求めているわけではない」と述べた。

森首相、世間の逆風どこ吹く風? サッカーに観劇

2000.10.27(20:53)asahi.com
 中川秀直氏が官房長官辞任に追い込まれた27日夜、森喜朗首相は智恵子夫人を伴って劇団四季のミュージカル「夢から醒(さ)めた夢」の観劇に出かけた。政界では「親子、兄弟以上の間柄」(青木幹雄元官房長官)とされる中川氏の辞任は、首相にも大きな衝撃のはずだが、強気を装っているのか、「逆風」も、どこ吹く風なのか。

 この日の夕方、首相官邸で森首相は「今日はきつい」とぼやいた。しかし、その理由はサッカー観戦による夜更かし。「(午前)2時ごろ目が覚めて、そしたらテレビで(日本対中国のアジアカップ)サッカーを見ちゃったんだよ。気が付いたら3時だった」と余裕をみせた。

 「官房長官の交代は政権へのダメージも大きいと思うが」との記者団の問いにも、無言を通していた。

「君らの責任じゃないか」森首相、マスコミに激怒

2000.10.25(20:28)asahi.com
 「何の責任だよ。君らの責任じゃないか」。日本人拉致疑惑に絡む「打開策」発言をめぐって、森喜朗首相は25日、記者団にこう語り、責任はマスコミ報道にあると激怒した。

 首相官邸の対応に批判が出ていることについて、中川秀直官房長官は同日の記者会見で「政府として、現時点で問題があるということはないと思う」と発言。これを受けて記者団が「首相も同じように責任はないとの考えですか」と質問したところ、首相は「君たちは(発言の内容を)初めて聞いたかもしれないから書いているんだろうが、周知の事実じゃないか」と答えた。

拉致疑惑発言で与党内にも森首相の責任問う声広がる

2000.10.24(21:47)asahi.com
 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)による日本人拉致疑惑をめぐり、森喜朗首相が「行方不明者として第三国で発見」するとの打開策を明かした問題は24日、自民党内で首相退陣を求める声が公然とあがったことで、新たな局面を迎えた。首相が同日、事実関係について従来の説明の修正を余儀なくされたことも加わり、若手議員を中心に早期退陣論が党内に広がる可能性も出てきた。一方、野党側も国会審議を通じて追及を強める方針。臨時国会を乗り切り、12月初めにも見込まれる内閣改造・党役員人事で政権基盤を固めようとしてきた首相にとっては、自らの発言で招いた大きな誤算といえる。

 森政権は、6月の総選挙で自公保3党による過半数を維持した後、支持率は低迷しつつも一定の安定感を保ってきた。だが、今回の「失態」で党内からも批判が相次ぎ、12月人事に向けて首相の求心力は急速に弱まった。

 24日には、閣僚懇談会でも「拉致された家族には看過できない」(保守党党首の扇千景建設相)などの批判が続出。自民党総務会でも「首相を擁護するばかりが与党ではない。意見を述べ、修正していくことも忘れてはならない」(山中貞則元通産相)といった意見が出るなど、首相への批判は与党全体に広がっている。

 この問題の処理をめぐって、首相官邸も迷走を続けた。森首相が、発言内容は3年前の与党訪朝団のメンバーだった中山正暉前建設相の「個人的な考え」だったと説明してきたことについて、中川秀直官房長官は24日の記者会見で「情報が正確でなかったことから、中山氏に迷惑をかけ申し訳なく思っている」と陳謝。森首相も、中山氏に会って謝罪した。

 これに関連して、自民党幹部の1人は24日夜、「大変な事態だ。この世界は思わぬことが大きな問題に発展することはよくある」と語り、首相や中川長官の責任が問われる可能性に言及した。

 一方、野党側は、自由党などが24日の衆院本会議で首相退陣を求めたほか、各党とも25日の党首討論を手はじめに追及を強める構え。民主党の菅直人幹事長は記者団に「森首相は自分の間違いを認識していない。首相の責任は大変に大きい」と批判。中川官房長官の右翼団体幹部との交友疑惑も併せて追及を強める方針だ。

情報管理の甘さ、官邸と外務省でなすり合い 拉致問題で

2000.10.24(21:23)asahi.com
 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)による日本人拉致疑惑をめぐる森喜朗首相の発言で、首相官邸は連日、釈明を重ねるたびに新たな矛盾が出てくる。24日には、3年前の与党訪朝団が示した打開策について「中山正暉氏の個人的な発言」とした前日の見解を修正する失態を見せた。問題の発端となった日英首脳会談の記者団への説明をめぐり、官邸と外務省の責任のなすり合いもあり、官邸の情報管理能力が疑問視されている。

 ●シナリオ変更

 「中山議員に迷惑をかけ申し訳ない」。24日の記者会見。中川秀直官房長官は、首相がかつて総団長を務めた訪朝団が示した打開案を「個人的な発言」としていた姿勢を改め、陳謝した。わずか1日での方針転換を探ると、官邸の対応の甘さが明らかになる。

 20日、日英首脳会談での森首相発言の波紋が広がり始めると、首相周辺は次のような収拾案を練った。(1)打開策を示したのは首相ではなく中山氏(2)与党訪朝団としての見解ではない(3)周知の事実で目新しい案ではない――。中川長官は23日の会見で、このシナリオ通り、「3年前の訪朝団員だった中山先生が個人的な考えとして述べたのを、首相が紹介した」と説明した。

 この間、中山氏本人とは安倍晋三官房副長官が連絡を取ったが、個人的な考えか訪朝団を代表した発言かは詰めないまま、個人的な発言として調整を進めた。

 長官会見を伝え聞いた中山氏は怒った。24日、抗議に官邸を訪れ、記者団に、首相・官房長官・安倍副長官の名をあげ、「うそつき3羽ガラスだ」。中山氏のけんまくに、官邸もシナリオを変更する。

 衆院本会議での答弁を控えていた森首相は、中山氏の目の前で答弁書に自ら手を入れた。同席した外務省関係者がなお「中山氏の個人的見解ということに」と求めたが、中山氏は「私を踏みつぶして切り抜けようなんて、許せん」と拒否。最後には首相が外務省関係者を執務室から出して「申し訳ない」と謝ったが、「私が官房長官に指示したわけではない」との言い訳も忘れなかった。

 ●なすり合い

 政府・与党内からは「問題は、首脳会談の極秘内容が簡単に記者発表されてしまう森政権の外交チームの情報管理」(加藤紘一元自民党幹事長)との声が早くからあった。

 記者には上野公成官房副長官が説明し、会談に同席していた外務省幹部は、問題の部分は伏せるよう、上野氏に進言したという。上野氏は「拉致問題に触れないわけにはいかない」と反論したが、外務省側の要請は部分的に受け入れたという。上野氏の周辺は「現地ではだれも問題にしなかった。担当幹部が責任逃れをしようとしている」と外務省の対応に不満を示す。

 外務省側は、「会談の公表は政治家の判断なのに」と釈然としない思いを抱きつつ、沈黙を守る姿勢だ。首相発言が政治問題へと拡大しており、「何を言っても政治的な意味を帯びてしまう」(幹部)。河野洋平外相は24日の記者会見で「しかるべき打ち合わせの後ブリーフされたことについて、素直に受け止めていただければいいと思う」と述べるにとどめた。

中山正暉氏、首相に抗議 第三国発見案の個人発言を否定

2000.10.24(13:57)asahi.com
 中山正暉前建設相は24日、森喜朗首相、中川秀直官房長官を首相官邸に訪ね、中川長官が「『第三国で発見』という案は中山氏の個人的な発言」としていることに強く抗議した。首相は「私が官房長官に指示したわけではない。申し訳なかった」と謝った。これを受けて政府は、中山氏の発言を「個人的な発言」とはせず、訪朝団の副団長としての発言とする考えだ。

 中山氏は首相らに「正式な会談で発言した。北京とかバンコク、パリとか、固有名詞を挙げたことはない」と強調。この後、記者団に「(首相を含めた官邸の)うそつき三羽ガラスに抗議に来た。私に責任を押しつけて腹を切らせ、難を逃れようとするのは、けしからん。国交正常化が進み、お隣の国だから真っ先に対応しなくてはいけないのに、こういうことで後ずさりすることは外交として残念至極だ」と語った。

「第三国で発見」案 河野外相、排除せぬ姿勢示唆

2000.10.24(12:57)asahi.com
 河野洋平外相は24日の閣議後の記者会見で、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)による日本人拉致疑惑をめぐり、森喜朗首相が「第三国で発見」との打開案を明かした問題に関連し、「少なくとも今の時点では、これは排除されるとか、されないとか申し上げるべきではない。交渉責任者としてそう思う」と述べた。「第三国で発見」案は3年前の与党訪朝団が提案したものだが、今も政府として選択肢から外したわけではないとの認識を示唆したものだ。

 また、河野外相は、オルブライト米国務長官から訪朝について報告を聞くため、25日にソウルで日米韓3カ国の外相で会談したうえ、日米2国間でも外相会談を開くことを明らかにした。

「第三国発見案」は訪朝団提案 中山氏が反論

2000.10.24(00:25)asahi.com
 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)による日本人拉致疑惑をめぐり、3年前の与党訪朝団が「行方不明者として第三国で発見」との打開策を提案したと、森喜朗首相が明かした問題で、政府の説明が二転三転している。当時どういう提案だったのか、今後この案を探る可能性があるのか……。説明者による食い違いが目立っている。個人的に提案したとされた自民党の中山正暉氏も「訪朝団としての正式提案」だったと反論している。

 20日の日英首脳会談で首相が打ち明けた打開策を記者団に説明したのは、上野公成官房副長官だ。上野氏は、首相がだれの考えとしてブレア首相に伝えたかは明言しなかった。首相はその夜、記者団に、中山氏から「正式にそういう話をした」と説明した。

 ところが、中川秀直官房長官は23日の記者会見で、「中山氏の個人的な発言」とし、訪朝団として提案したのではないと修正した。「このことは、中山先生がいろいろな講演で話されていると聞いている。周知の話ではないか」とも付け加えた。

 中川氏は(1)首相の発言ではない(2)訪朝団の正式の見解ではない(3)提案内容は秘密ではない――として批判をかわす考えだが、首相の説明と食い違う。

 訪朝団に加わった田英夫参院議員(社民党)によると、中山氏の当時の発言は「理想としたら、日本で気が付いたら、家でテレビを見ていたら、(拉致された人が)そこにいたという形がいいんじゃないか。場所は中米でもアフリカでも、どこでもいいんだ」という内容だった。当の中山氏は23日、朝日新聞記者に「正式な会談の場で提案した。官房長官は個人的な発言だと言ったそうだが、冗談じゃない」と反論。発言内容については「外国の固有名詞は使っていない」と述べつつ、大筋で田氏の説明を認めている。

首相、「第三国発見」問題で与党幹部に説明

2000.10.23(23:26)asahi.com
 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)による日本人拉致疑惑をめぐり、森喜朗首相が「第三国で発見」という打開策を明かした問題で、23日夕、自公保の与党3党幹事長らが首相から説明を受けた。3年前の自社さ訪朝団の時に出た話で、与党としては「特に問題視はしない」という。

 川島裕外務事務次官は記者会見で「政府のやりとりではない」と政府間交渉との関連を否定。一方、上野公成官房副長官が首相発言を記者団に説明したことには「事務的にきちんと調整していた」と述べ、外務省の判断を経た上での説明だったことを明らかにした。

 一方、自民党の山崎拓元政調会長は名古屋市内での講演で「外交は、そのプロセスが表に出れば実現を不可能にする。不用意というほかはない」と批判した。

「第三国発見案」は「政府の考えではない」 官房長官

2000.10.23(12:57)asahi.com
 中川秀直官房長官は23日午前の会見で、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)による日本人拉致疑惑に関して、3年前の与党訪朝団が北朝鮮側に「第三国で発見」案を提案したと、森喜朗首相が明らかにしたことについて、「首相は、過去のエピソードとして、(訪朝団に参加していた)中山(正暉自民党代議士)さんが個人的な考えとして述べたものを紹介した。首相の考え、政府の方針を言ったものではない。政府として拉致問題に関して決着方針を固めているわけではない」と述べ、政府や与党の方針ではないという考えを強調した。

 またこの案を拉致問題解決の選択肢とするのかどうかについては、「そのことを含めて特定の方針を固めたということはない」と述べ、明言を避けた。

「バッシングだ」 森首相、母校の早大でぼやく

2000.10.22(19:49)asahi.com
 森喜朗首相は22日、母校・早稲田大学の「校友大会」であいさつし、「(首相に)なるべき者がならなかったんで、いじめてやれと、最近の日本の風土なのか、バッシング、バッシング、バッシングだ」と、ぼやいた。

 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の日本人拉致疑惑をめぐり、「第三国で発見」案を明かしてしまったことへの批判が念頭にあるようだが、「でも、首相就任時より体重が5キロほど増えました」と意気軒高なところも見せた。

 首相就任後、森首相が早大キャンパスを訪れたのは初めて。話は、同じく早大出身の故小渕恵三前首相との思い出から、情報技術(IT)革命にまで及び、予定時間を大幅に超えた。

森首相外交、「びっくり発言」次々 たびたび自ら窮地に

2000.10.21(23:05)asahi.com
 森喜朗首相は21日、ソウルでのアジア欧州会議(ASEM)を終えて帰国し、一連の秋の外交日程に一区切りつけた。しかし、この間の外交にかかわる首相の言動は、外国の首脳に対する発言だけでなく、国会答弁や首相担当記者とのやりとりでも、自ら政府を窮地に追いこむようなものが目立つ。しかも、日米関係から朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との国交正常化交渉、中東情勢までと、発言にかかわる地域は世界にまたがる。外務省内には、「もう何を聞こうが驚かない」雰囲気が出来上がりつつあるほどだ。

 首相発言には、単なる「失言」では済まないものが少なくない。典型例が、北朝鮮による日本人拉致問題をめぐり、「第三国で発見」案をあちこちの国の首脳に紹介して回っていることだ。日朝国交正常化は日本外交の最重要課題の一つだが、首相自らが交渉を難しくしている。

 日朝交渉では、7月に記者団に「国交正常化交渉をするには、補償問題は当然、やらなくてはいけない」と語ったこともある。これも外務省幹部が肝を冷やすには十分だった。北朝鮮は「補償」を求めているが、日本政府は「北朝鮮とは交戦状態になかった」として「補償」を認めておらず、「財産請求権での処理」を主張している。

 こうした発言の一方で、首相は外交ルートを通さずに北朝鮮の金正日総書記に親書を送っていたとされている。政府・与党内でも「一歩間違えば取り返しがつかないことになる」と批判されたが、それでも首相の日朝首脳会談実現への意気込みは増す一方のようだ。冷や冷やし通しの外務省は「とても政治レベルには上げられない」(幹部)と警戒している。

 首相のもとで難航しているのは、沖縄の米軍基地問題も同様だ。もっとも、首相は自民党幹事長時代の講演で、沖縄は政府のやることに何でも反対するとして「共産党支配」呼ばわりし、これが県民の猛反発を買った経験がある。

 決定的だったのは、米軍普天間飛行場の移設問題で焦点になっている「15年の使用期限」問題をめぐる国会答弁だ。使用期限の設定が、日米特別行動委員会(SACO)最終報告に盛り込まれているとの「新見解」を披露。直ちに撤回したが、首相がSACO最終報告の内容さえ頭に入っていないまま、沖縄での日米首脳会談に臨んでいたことが分かってしまった。

 発言だけではない。金大中大統領を迎えての9月の日韓首脳会談では、地元・石川県の後援者が経営する熱海のホテルを会場に選んだ。あまりに露骨な会場選びに、韓国側にもあきれる声があった。今月に中国の朱鎔基首相が来日した際にも、実現はかなわなかったものの、東京都内の自宅に招くことを提案している。

 ユーゴスラビア情勢について記者団に問われ、「ひとの国のこと」と語ったように、首相は外交問題に総じて関心が薄いようだ。日本人拉致問題をめぐるソウルでの発言が騒ぎになるにつれ、政府内は「なぜ記者団に発言を明かしてしまったのか」という批判が出るほど混乱している。

 「仮に自分の意見を申し上げたら、日本とそれぞれの国との関係はどうなるのか」。首相の4月の国会答弁は、自ら警告を発したのかも知れない。

野党、党首討論で首相の資質・外交姿勢問う構え

2000.10.21(20:47)asahi.com
 森喜朗首相の「拉致疑惑打開案」発言をめぐり、野党各党は週明けからの国会審議の場で徹底的に追及する方針だ。特に人命、人権にかかわる外交交渉のプロセスを他国にもらしたことを重くみて、25日に予定される党首討論で首相自身に真意や事実関係をただすとともに、外交姿勢や首相としての資質を改めて問う。内閣不信任決議案提出を念頭に民主党の菅直人幹事長は21日、「森首相には辞めていただかなければならない」と述べた。

 菅幹事長は同日、東京都立川市内の街頭演説で、「朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の関係者もあんないい加減な総理のうちにうまくだましてやろうと思うかもしれない。軽率という以上に責任や資質のかけらもない人だ」として首相の退陣を要求。鳩山由紀夫代表も北海道室蘭市での講演で「裏工作があったということを為政者がばらすような国と交渉できるはずがない。この問題の解決はさらに難しくなった」と批判した。

 また、自由党の藤井裕久幹事長は同日、朝日新聞記者に「がく然とした。内容もさることながら、このようなことが外にでることはありえないこと、と思っていた」と批判した。

 野党各党は正常化した衆院審議で、中川秀直官房長官の右翼団体幹部との交友疑惑や「ケーエスデー中小企業経営者福祉事業団(KSD)」の不正融資疑惑などをとりあげ、政府・自民党を揺さぶる構えだった。しかし、今回の問題は「人命、人権、国益といった点でもっと深刻」と受け止めており、最優先して追及する方針だ。

 森首相が北朝鮮の金正日総書記に送ったとされる親書をめぐり、内閣は先に民主党代議士が出した質問主意書に「8月に送った事実はない」と否定の回答をしたが、野党側は首相の対北朝鮮外交全般に疑念を深めている。

森首相の「拉致」発言、与党内にも批判や懸念広がる

2000.10.21(20:40)asahi.com
 森喜朗首相が、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)による日本人拉致疑惑について「行方不明者として第三国で発見」という「解決策」を示した問題をめぐって21日、与党内でも日朝交渉への影響を懸念する声や批判が広がった。

 自民党の加藤紘一元幹事長は記者団に「首相が日朝交渉の過程や現状を、非常に信頼する第三国の首脳に極秘裏に説明することは外交上、あり得る話だ」と語り、一定の理解を示した。そのうえで「問題は、そのような首脳会談の極秘内容が、簡単に記者発表されてしまう森政権の外交チームの判断、情報管理だ。深刻な反省とともに、早急な態勢作り直しをすべきだ。日朝関係がわが国外交の最重要テーマであるときに、今回のミスは大きい」と批判した。

 また、公明党の神崎武法代表は「あまり適当とはいえない発言だ」と指摘。「どういう趣旨で発言したのか、森首相本人から説明があるだろうし、それを聞いてみないと何とも言えない」と記者団に語り、首相の説明を待って対応を検討する考えを示した。

 一方、1997年の訪朝団に同行した自民党の野中広務幹事長は20日、「交渉の中でそういう発言もあったと思うが、森さんが言ったということはないと思う」と記者団に説明。森首相を擁護した。

 自民党森派会長の小泉純一郎元厚相は20日深夜、森首相が「今なおそう思っているわけではない」と説明していることについて「それでいいと思う」と記者団に述べ、野党側の追及には耐えられるとの見通しを強調した。

森首相、「第三国で発見」案を3年前に提案 拉致疑惑で

2000.10.21(01:38)asahi.com
 訪韓中の森喜朗首相は20日、ブレア英首相との会談で、3年前に朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を訪れた与党代表団(森喜朗総団長)が、日本人拉致疑惑について「行方不明者ということでもいいから、北京でも、パリでも、バンコクでも、そこにいたという方法もある」と提案していたことを明らかにした。「第三国で発見」案は、拉致された人を救出するため関係者がひそかに検討してきた打開策の一つ。国交正常化交渉が山場を迎える中で首相自ら唐突に公表した判断や、政府が「拉致」と認めているのに「行方不明者」と譲歩し、真相をうやむやにしたまま決着を図ろうとした姿勢が問われそうだ。

 首相は会談で北朝鮮情勢に触れる中で、「国民感情からして、この(拉致)問題の解決が一番重要だ」と強調。「北朝鮮というのは大変メンツを重んじる国だから、正面から取り組むということではなく」と前置きしてから発言した。「(北朝鮮側から)まだ明確な返事をいただいていない」とも述べた。首相は会談後、「今なお私はそういう提案を思っているわけではない。北朝鮮側に提案したのは副団長の中山正暉君(自民党代議士)だ」と記者団に語った。

 北朝鮮からの亡命者証言によれば、拉致疑惑には北朝鮮の国家が関与していたとされ、北朝鮮当局が「拉致」を認める可能性は低いとみられてきた。そこで、拉致されたとされる日本人が北朝鮮以外の第三国で見つかるように工作すれば、北朝鮮は「名」を、日本は「実」をとれるため、妥協案の一つとして数年前から浮かんでいた。首相発言は、こうした舞台裏の一端を明かしたものだ。

 「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」の荒木和博事務局長は「家族の中には、とにかく何とか救い出したいという気持ちもあるが、拉致は国家犯罪だという認識がないと真の解決はない。水面下の交渉についてはとやかく言わないが、明らかにするのはどうかと思う」と反発している。

国益危うくする 民主幹事長が批判

2000.10.21 The Sankei Shimbun
 森喜朗首相が二十日、北朝鮮による拉致(らち)疑惑の解決策として、自民党総務会長当時の平成九年、拉致された人々が第三国で「行方不明者として見つかる方法がある」と北朝鮮に提案したことを明らかにしたことについて、民主党の菅直人幹事長は「森首相はあらゆるパイプを使って、北朝鮮の金正日総書記とのツーショット(写真)を撮りたい、そういう場面をつくってくれ、と言っているようだ。重い課題なのにしっかりとした戦略もなく、あれこれするのは日本の国益を危うくする」と批判した。

「主権侵害」置き去り 外務省当惑

2000.10.21 The Sankei Shimbun
 森喜朗首相が二十日の日英首脳会談で、北朝鮮による日本人拉致(らち)疑惑の解決策として「行方不明者ということでもいいから、第三国にいたという方法もある」との自らの過去の考えを紹介したことに、外務省が当惑している。政府はこれまで、拉致疑惑について、身柄保護だけでなく、主権侵害への対処も重視する立場を取ってきているが、首相発言は北朝鮮に主権侵害問題は問わないとの誤ったメッセージを与えかねないからだ。

 首相発言に関連して、外務省首脳は二十日夕、「かつていろいろな人が奇想天外なことを考えた」と指摘。その上で、拉致疑惑をめぐる北朝鮮との交渉では主権侵害問題の解決が必要との立場を改めて強調した。

 首相は日英首脳会談後、「今そう考えているわけではない」と釈明したが、今月三十日からの第十一回日朝国交正常化交渉を目前に控えた微妙な時期の発言。外務省内には「何とも言いようがない」との声も漏れている。

中国・朱鎔基首相が森首相に来年10月の訪中を招請

2000.10.20(00:31)asahi.com
 アジア欧州会議(ASEM)首脳会合出席のためソウルを訪れている森喜朗首相は、19日夜、夕食会の席上で中国の朱鎔基首相と短時間会話した。朱首相は「来年の訪中を期待している。できることなら上海など地方を訪ねるといい」と述べ、来年10月に中国を訪問するよう求めた。来年10月には上海でアジア太平洋経済協力会議(APEC)が予定されており、この時期に合わせた訪中を求めたものと見られる。

森首相がノーベル賞の白川名誉教授招き懇談

2000.10.18(19:22)asahi.com
 「白川さんのお兄さんの奥さんは私の小中高の後輩なんです。そのお姉さんは私の小学校の同級生です」

 森喜朗首相は18日、ノーベル化学賞を受賞した白川英樹筑波大名誉教授を首相官邸に招くと、故郷の石川県根上町にまつわる話から切り出した。

 白川さんもこれには驚いて「兄からも姉からも聞いてません」。さらに首相は「(巨人軍の)松井選手と私、白川さんのお兄さんの奥さんが根上町から出て、町長も喜んでいました」。

 郷土の話や、シドニー五輪で金メダルを取った高橋尚子選手が白川さんの遠縁に当たる話などを終えると、教育談議に。白川さんが「理科だけはよかった」と語っている新聞記事を読んでいた首相は「私も、1つだけ長所があればいい、と主張している」「『失敗から学ぶ』ということを私もよく言っている」。

 約20分の会談を終えると、白川さんは「首相から『おめでとう』と言われて感激しました」と喜んでいた。

「ITは政府の方が遅れている」森首相がPC店など視察

2000.10.15(20:48)asahi.com
 情報技術(IT)を内閣の最重要テーマにする森喜朗首相が15日、東京都内のパソコンショップなどを視察した。

 首相はまず東京都内のインターネットサービス会社を見学。続いてパソコンショップでは、自分でマウスを操作してネットショッピングのやり方を体験した。

 視察を終えた首相は記者団に「IT関連は政府の方が遅れている。民間の方が意欲もあるし、能力もある。急がなきゃいけないね」と感想を漏らした。

森首相の金総書記あて親書に批判 与党内に波紋広がる

2000.10.02(22:38)asahi.com
 森喜朗首相が朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の金正日総書記あてに親書を送っていたことに対し、政府・与党内で批判が広がっている。国交正常化交渉を重ねている中での首相独自の動きに、外務省は「首相が首脳会談に意欲を示すほど相手に足元を見られてしまう」(幹部)と困惑。通常の外交ルートを全く通さず、北朝鮮とパイプのある政治家がかかわった形跡もないことから、与党幹部からも「一歩間違えば取り返しのつかないことになる」と危ぶむ声が出ている。

 親書は8月下旬、朝鮮労働党幹部とつながりのある人物を通して送られた。首脳会談の開催を呼びかけ、日朝関係改善に意欲を示す内容と見られるが、今のところ北朝鮮側から返事はないという。森首相は3日、「親書を送った事実はあるか」との記者団の質問に、無言を通した。

 河野洋平外相は3日の記者会見で、親書について「承知していない」。さらに、「我々は外交ルートを使って国交正常化に向けた作業を懸命にしている。首相自身の判断かどうかよく分からないが、首相なりの判断があったかもしれない」と語った。

 政府・与党内では、日朝交渉で「過去の清算」や日本人拉致疑惑などをめぐって対立が続いている中で、森首相が一気に首脳会談に持ち込もうとしていることへの懸念がある。

 河野外相は「(日朝交渉は)首相を頂点とした相談の上での作業で、まったく違った人が違ったことをしているわけではない」と述べ、「二元外交」には当たらないとした。しかし、仮に親書によって首脳会談へと急展開すれば、森首相は国交正常化に向けて、どう対応するのか、重大な決断を迫られる。政府内では、そこまでの環境は整っていないとして、「賢明な選択ではない」(交渉関係者)との受け止め方が支配的だ。

 森首相は6月、金大中韓国大統領から金総書記に直接意思を伝えるべきだと助言された。親書を送ったのも、この助言が念頭にあってのことと見られるが、「金大統領のように、大統領制のもとで権限を持った人がやるのとは日本は違う」(与党幹部)との指摘もある。

「日本再生のシナリオ」へ首相が3回目の勉強会

2000.10.01(00:23)asahi.com
 森喜朗首相は30日夜、東京都内のホテルで私的な勉強会を開いた。竹中平蔵、村井純両慶大教授らの学者や樋口広太郎アサヒビール名誉会長、宮内義彦オリックス会長らの経済人、国際コンサルタントの岡本行夫氏らがメンバーで、今回が3回目。

 約2時間半に及ぶ勉強会では、中長期的な視点に立った経済政策や、今国会の目玉としている情報技術(IT)革命などについて、意見交換をした。こうした有識者らの意見をもとに、首相は10月中にも「日本再生のシナリオ」と題する政策を取りまとめる方針だ。

日本型IT社会構想掲げる 森首相、所信表明

2000.09.21(23:27)asahi.com
 森喜朗首相は21日、衆参両院本会議で所信表明演説をした。経済運営について当面は景気回復に軸足を置く必要性を強調しつつ、財政投入は「限定的な範囲」にするとし、財政構造改革への準備も進める考えを示した。

 これまでは景気回復策一辺倒だったが、財政再建路線への転換にも含みを持たせた。政権の看板に据える情報技術(IT)では、日本型IT社会を目指した「E―ジャパン」構想を掲げ、「5年後には我が国を世界の情報通信の最先端国家に仕上げる」という目標を掲げた。

 首相は、就任後半年足らずで3回目の所信表明ということもあり、内容は新味に乏しい。

 その中で、経済政策について「性急に財政再建を優先させれば、景気回復を危うくさせることにもなりかねない」と述べる一方、財政投入は「限定的な範囲」と明言した。「将来も持続可能な仕組みを作り上げるための準備は今から始めなくてはならない」と述べ、財政構造改革に向けて、かじを切る準備段階にあることを示した。

 年金や医療、介護など社会保障制度については、社会保険方式の堅持を主張。「リスクにはできる限り自ら備えをするという『自己責任の原則』」を唱え、高齢者などからも所得に応じて一定の負担を求め、必要な分だけ国庫負担で補うという考えを示した。10月に報告書をまとめる首相の私的諮問機関「社会保障構造の在り方について考える有識者会議」での議論を先取りし、「有識者会議が方向性を出しやすくする」(周辺)狙いだ。

 「E―ジャパン」は、首相が掲げるIT政策を「一大国民運動」として展開する構想だ。大量のデジタル情報を低価格で利用できるようにするための基盤整備を進め、「全国民がインターネットを使えるようにしたい」と強調。インターネットなどの講習費用の一部を国が負担する「IT講習券」の導入も視野に入れている。

 ITと並んで首相が力を入れる教育改革では、来年の通常国会を「教育改革国会」と位置づけ、教育改革関連法案を提出する方針を表明。小人数授業、授業妨害やいじめへの対応、奉仕活動問題などを例示して取り組む姿勢を示した。教育基本法の見直しについては「中央教育審議会等で幅広く国民的な議論を深める」などとしたものの、7月の所信表明で述べた「抜本的に見直す必要がある」との強い表現は避けた。

森首相、年末に内閣改造の方針

2000.09.13(00:46)asahi.com
 森喜朗首相は13日、内閣記者会のインタビューに応じ、「新しい予算編成は新大臣の方がいいのではないか。新大臣によって国会に説明できるのが筋としては一番通っている」と述べ、来年1月からの中央省庁再編を前に、年末に内閣改造を実施し、来年度予算案を編成する方針を示した。また教育改革について「次の通常国会には必要な法案を出していただいて、制度上、改めていくことは改めていく作業に入ることが大事だ」として、来年の通常国会に教育改革関連法案を提出する考えを示した。

 中央省庁は来年1月6日から、現在の1府22省庁が1府12省庁になる。内閣改造の具体的な時期については「どういう布陣でいくかということと、時期も含めてこれから考えていきたい」と明言を避けた。

 教育改革では、今月22日に首相の私的諮問機関「教育改革国民会議」(江崎玲於奈座長)が中間報告をまとめる予定。首相は「答申を得て、国民の意見を承りたいと思う。法改正するかしないかはもう少し国会の議論や世論を見極めたうえで最終的に判断すべきではないか」と述べた。一方で、「個人としては、教育基本法は半世紀たっているので、見直すべきだという気持ちを持っている」として、教育基本法の改正に意欲を示した。

 また今月初めに行われた日ロ首脳会談に関連して、平和条約締結交渉のためのロシア訪問の時期については、「今年(ロシアに)行くこともあるし、年を越すことになるのかもしれない。プーチン大統領との信頼関係はさらに深化していると思っているので、彼の判断を大事にしたいと思っている」と述べるにとどめた。

見直しを検討する34事業を公表 建設省

2000.09.02(01:40)asahi.com
 扇千景建設相は1日午前の記者会見で、岩倉川局部改良事業(鳥取県)、興部町公共下水道(北海道)など34の事業について、独自の見直し基準をもとに中止を含めて検討する、と発表した。

 公共事業の見直しではすでに、与党3党が、(1)採択後5年たっても未着工(2)完成予定を20年以上過ぎても未完成など4基準をもとに、233件の事業の中止を勧告し、このうち24事業を公表した。

 建設省が所管する事業も102件(うち公表は10件)が対象となったが、同省はこれとは別に「採択後20年以上たって継続中の事業で、当面事業の進展が見込めないもの」を基準に加えて検討を進めた結果、直轄事業5件、補助事業29件の計34件をリストアップした。建設省によると、これらの事業を継続した場合に必要となる事業費は合わせて1104億円、すでに投資した金額は1661億円になる。

 扇建設相は「政治主導は大事なことだが、『バラマキ』とか『ムダ』の冠がつかない公共事業を建設省が努力して進めていかなければならない」と語った。

    ◇

 建設省独自の見直し基準に該当する検討対象の34事業は次の通り。

 【道路・街路事業】道道上遠別霧立線(北海道)▽国道9号恩地局部改良(鳥取)▽国道21号垂井拡幅(岐阜)▽国道42号柏野改良(三重)▽国道2号吉見局部改良(山口)▽国道299号上野〜中里バイパス(群馬)▽国道155号春日井〜小牧バイパス(愛知)▽放射第19号線(東京)【河川事業】岩倉川局部改良事業(鳥取)▽境川局部改良事業(島根)▽清水川準用河川改修事業(山口)▽南の谷川局部改良事業(高知)【海岸事業】窪田海岸侵食対策事業(新潟)▽出水海岸高潮対策事業(鹿児島)【土地区画整理事業】河原(兵庫)▽東和歌山第2(和歌山)【都市公園事業】こども動物自然公園(埼玉)▽幸公園第2期地区(愛知)▽南予レクリエーション都市(愛媛)【下水道事業】興部町公共下水道(北海道)▽霞ケ浦町公共下水道(茨城)▽草津町公共下水道(群馬)▽高崎市特定環境保全公共下水道(群馬)▽酒々井町特定環境保全公共下水道(千葉)▽瑞穂町公共下水道(東京)▽猪名川町公共下水道(兵庫)▽修善寺町公共下水道(静岡)▽尾鷲市公共下水道(三重)▽比布町特定環境保全公共下水道(北海道)▽諏訪市特定環境保全公共下水道(長野)▽川西町公共下水道(奈良)【住宅宅地関連公共施設整備促進事業】米倉山汚水幹線(山梨)▽荒池緑地(愛知)▽市道1075号線(滋賀)

森首相、南アジア4カ国歴訪から帰国

2000.08.26(10:05)asahi.com
 19日からインド、パキスタンなど南アジア4カ国を訪れていた森喜朗首相は26日朝、羽田空港着の政府専用機で帰国した。

森首相が「インドのシリコンバレー」を訪問

2000.08.22(22:31)asahi.com
 南アジア歴訪中の森喜朗首相はインドに到着し、22日、「インドのシリコンバレー」と言われるコンピューター産業の集積地、バンガロールで情報技術(IT)関連企業を視察した。「日印IT協力構想」も発表するなど政権の旗印に掲げる「IT」への取り組みを強調した。ITを懸け橋に、インドの核実験以降、停滞していた日印関係を改善したいとの思いもにじんでいる。

 「インドのITの首都にようこそ」。この日、地元紙の1面に森首相の写真を飾る歓迎広告が載った。首相も、現地のIT企業経営者らとの会合で「IT活用という重要な課題への取り組みについて意見交換できることを大変楽しみにしていた」とあいさつ。米国株式市場ナスダックに上場しているインフォシス社などソフトウエア企業2社を視察した。

 首相がインドで最初の訪問地に選んだバンガロールには、ソフトウエア企業が多数集まる。1980年代に米国の半導体・コンピューター産業が相次いで進出したことから急速に発展した。欧米企業に比べ、日本企業は出遅れており、経済界には、首相訪問を機に巻き返したいとの思惑がある。

 こうした意向を反映したのが、IT協力構想だ。(1)経団連会長の率いる大型経済使節団を10月末にインドに派遣(2)3年間でインドから日本語研修生らを1000人規模で受け入れ(3)インドのIT企業関係者へのビザ発給の拡大(4)「日印ITサミット」の開催――など、民間交流が主な柱となっている。

 「ITを政権浮揚策に」と期待する森政権は、IT担当相を置いたりIT戦略会議を作ったりと熱を入れている。自らもパソコン研修を続け、最近はキーボード入力も速くなってきた。バンガロールは、その姿勢をアピールする格好の舞台と映ったようだ。

森首相の検挙記録の有無を警視庁に調査嘱託 東京地裁

2000.08.22(22:05)asahi.com
 森喜朗首相が学生時代の1958年に東京都売春等取締条例違反(当時)の疑いで検挙されたことがある、と報じた月刊誌「噂(うわさ)の真相」の記事をめぐり、首相が発行元と同誌編集長を相手に「事実無根で、名誉を傷つけられた」として1000万円の損害賠償などを求めた訴訟の口頭弁論が22日あり、東京地裁は、検挙された記録の有無の調査を警視庁に嘱託することを決めた。信濃孝一裁判長は「前歴の記述は公共の利害に関するもの」と認め、名誉棄損の不法行為が成立するかどうかを判断するうえで「(被告側には)調査嘱託以外に適切な立証方法がない」と必要性を説明した。

 調査嘱託は噂の真相側が申し立て、森首相側は「40年前の私的行為を公表することが公益を図るものとは考えられず、事実の真否を判断するための嘱託は必要ない」と反対していた。しかし、信濃裁判長は「現段階では(記事が)公益を図る目的であることを否定する根拠はない」とし、「原告自身がその真否を訴訟の対象としており、プライバシーが問題となる余地もない」と述べた。

 同地裁は今後、申し立てに従って(1)条例違反で検挙された記録があるかどうか(2)噂の真相側が「前歴カードの記載」として示している「指紋番号」や「犯歴番号」などの内容が正しいか――について警視庁に回答を求める。

 調査嘱託は、民事訴訟で事実認定の証拠を集めるために裁判所が職権で官庁や法人に対して行う。一般的には嘱託を受けた団体に回答義務があると解されているが、法文上は明記されておらず、回答しなくても制裁はない。

 <警視庁広報課の話> 調査の嘱託を受理していないので現時点でのコメントは差し控えたい。

国連改革で一致 森首相がバングラデシュ首相と会談

2000.08.19(22:59)asahi.com
 森喜朗首相は19日、バングラデシュのハシナ首相と会談し「国連改革が急務だ。安全保障理事会の常任理事国と非常任理事国の双方を増やし、新常任理事国には途上国も加えるべきだ」と強調した。ハシナ首相も「より民主的で、透明性の高い国連にすべきで、常任、非常任理事国の双方を拡大することは賛成だ」と答えた。ハシナ首相は、両国の外交関係樹立から30周年となる2002年に、天皇がバングラデシュを訪問するよう要請した。

 また、森首相は交流事業として、バングラデシュを含む南アジア7カ国から今後5年間で5000人規模の青少年を日本に招くことを提案した。

 森首相は引き続き野党第1党のBNP(バングラデシュ民族主義者党)のジア総裁とも会談。ジア総裁は来年に予定される総選挙に、日本から選挙監視団を派遣するよう求め、森首相は「考えたい」と答えた。

 日本の首相がバングラデシュを訪問するのは、海部俊樹首相以来10年ぶり。

印パへの経済制裁見直しは「総合的に判断」 森首相

2000.08.19(21:10)asahi.com
 森喜朗首相は19日、南アジア4カ国歴訪に向けて出発し、同日昼(日本時間同午後)、最初の訪問国であるバングラデシュに到着した。首相は政府専用機内で記者団に、インド、パキスタンに対する経済制裁について「CTBT(包括的核実験禁止条約)署名をはじめとする核不拡散の進展を注意深く見極めつつ、2国間関係などの要素を考慮しながら総合的に判断したい」と述べ、両国のCTBT署名だけを制裁見直しの条件としない考えを明らかにした。

 9月後半の召集を軸に政府・与党が検討している臨時国会については「できるだけ早い召集がいいのではないか」と述べるとともに、「日本経済は、まだまだ十分な見極めをしなければいけない大事な時期だ。9月に出る(今年4―6月期の)QE(国民所得統計速報)を見極め、おそらく臨時国会でも大変大きな議論になると思う」と述べ、補正予算などの景気対策の必要性を強調した。このほか少年法改正、警察の組織改善、あっせん利得罪創設などの政治浄化を課題として挙げた。

森首相、首脳外交へ出番 問われる独自戦略

2000.08.19(08:47)asahi.com
 森喜朗首相は、19日からのインド、パキスタンなど4カ国訪問を皮切りに「外交の季節」に入る。外遊中に朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との国交正常化交渉が東京で再開され、その後はロシアのプーチン大統領や韓国の金大中大統領、中国の朱鎔基首相らが続々と来日。いずれも明確なカラーを持つ指導者たちで、「首脳外交の時代」を象徴する顔ぶれだ。7月の九州・沖縄サミット(主要国首脳会議)までは「小渕恵三前首相の遺志」を強調してきた森首相だが、いよいよ自前の外交戦略が問われる局面を迎えた。

 「事務的に積み上げていたら10年かかったかもしれない。直接話したので、互いに理解を深めることができた」。金大中大統領は6月の金正日総書記との歴史的な南北首脳会談の直後、森首相に「首脳外交の効用」を語った。

 首相にとって、インドなどの訪問に加え、22日からの日朝国交正常化交渉と、9月3日に来日するプーチン大統領との平和条約締結交渉がまずは関門だ。対外イメージを大きく変えつつある金総書記。中国、北朝鮮を回って沖縄サミットに乗り込み、「主役」をさらったプーチン大統領。ともに世界の注目を集める首脳2人と、直接・間接に渡り合うことになる。

 だが、日朝間には過去の清算や拉致疑惑の難題があり、日ロ間には北方領土問題が横たわったまま。森首相の事態打開にかける熱意と外交戦略が欠かせない。

 中国との外交もカギだ。28日からは河野洋平外相が北京を訪問、10月には朱鎔基首相が来日する。森首相の今回のインド訪問には、中国をにらんでインドとの関係を厚くしておく狙いがあるが、各国の動きを眺め渡して日本外交の道筋を描く構想力が、今後ますます問われる。

森首相、アラファト議長に一方的な独立宣言の自制求める

2000.08.18(12:33)asahi.com
 森喜朗首相は18日、パレスチナ自治政府のアラファト議長と首相官邸で50分会談した。森首相は「イスラエルの合意なしで一方的に独立宣言するのは現時点で得策でなく、失うものが多い」と述べ、9月13日のパレスチナ最終地位交渉の期限に合わせて独立宣言することに自制を求めた。アラファト議長は期限延長については言及を避け、「国民の半分が50年以上、国家も希望もなく辛抱していることを理解して欲しい」と話した。

 アラファト議長は7月に米国・キャンプデービッドで開かれた中東和平首脳会談について説明するため、来日した。同議長は7月の中東和平首脳会談が不調に終わったのを受け、欧州やアジア約20カ国を歴訪して支持を求めているが、訪問先では独立宣言を自粛するよう求める声が相次いでいる。

公式参拝は見送りの森首相、私的に含みも

2000.08.14(23:37)asahi.com
 終戦記念日の15日、ことしも多くの閣僚が靖国神社に参拝する。今月下旬の日朝国交正常化交渉や秋に韓国大統領、中国首相の来日を控え、森喜朗首相は近隣諸国との関係に配慮して公式参拝は見送る。一方で私的参拝には「慎重かつ自主的に判断する」として含みを持たせている。自民党は公式参拝の可能性を探るため、靖国神社問題に関する懇談会を発足させ、年内に方向を示すという。しかし、先の戦争の総括や政教分離の問題をあいまいにしたままで、結論を急ぐことには異論も強い。戦後積み重ねられてきた政治と靖国をめぐる論議は収れんしないまま、21世紀に持ち越される。

 首相は6日、広島市での記者会見で「諸般の事情を総合的に考慮」して公式参拝はしないと明言した。ただ、私的な参拝については「私個人の心の問題」として言葉を濁した。日本遺族会の中井澄子会長らは8日、官邸を訪れ、「15日に参拝して欲しい」と求めたが、これにも首相は明確には答えなかったという。

 もともと首相は公式参拝に積極的だった。自民党幹事長だった昨年夏には、靖国参拝のあり方を見直す党内論議について「日本の国のために戦った人の霊を公式におまつりできないのはおかしい」と後押し。1995年には閣僚として参拝した。

 首相就任後も、日中戦争について4月の国会答弁で「侵略戦争をしたかどうかは、歴史の中でみんなが判断していくべきことだ」と述べ、中国政府の反発を招いた。すると5月には、日中戦争について「当時の戦争は侵略戦争であるということを私はきちっと認めている」と答弁。自民党の歴代首相が「侵略」「侵略行為」と言っていた表現よりもむしろ踏み込んだ。

 神道政治連盟国会議員懇談会の会合での「神の国」発言も、その後の反響の大きさにあわてて釈明会見するなど、歴史認識や宗教と政治の関係といった重要問題で、首相の言動はこれまでたびたび揺れてきている。

森首相、箱根でつかの間の夏休み 今年初のゴルフ

2000.08.12(19:20)asahi.com
 神奈川県箱根町で静養中の森喜朗首相は12日、中川秀直官房長官、安倍晋三副長官、牛尾治朗ウシオ電機会長と「今年になって初めて」というゴルフを楽しんだ。

 首相はポロシャツにテンガロンハットという軽装で、コースに出る前には素振りをしながら「いいフォームだよ」と自画自賛。「目標は(スコアが)100を切ること。国会と一緒だ。最後に法案が通るまでは気が抜けない」と、記者団に言い残してスタートした。

 5時間近くたってクラブハウスに戻ってきた首相は「公約通りだ。96だよ」と上機嫌。つかの間の夏休みを楽しんだ。

森首相、箱根で夏休み

2000.08.10(20:26)asahi.com
 森喜朗首相は10日から、5日間の夏休みに入った。神奈川県箱根町で過ごす予定だが、初日の10日には三宅島が噴火し、11日にはゼロ金利政策を解除するかどうかを議論する日銀の政策委員会・金融政策決定会合があり、「仕事を忘れてのんびり」というわけにもいかなそうだ。

 森首相は夏休み初日の10日朝、公邸から官邸別館内の危機管理センターに入り、三宅島噴火の簡単な報告を受けた。午後4時過ぎ、久しぶりのノーネクタイ姿で東京・瀬田の私邸を出て、智恵子夫人と一緒に箱根町のホテルに向かった。箱根では側近の中川秀直官房長官や初当選前からつき合いのある牛尾治朗・ウシオ電機会長らとゴルフをしたり、智恵子夫人と観光を楽しんだりする。

 森首相のほかに、中川官房長官や安倍晋三官房副長官らも10日前後から相次いで地元や静養先に向かい、首相官邸も「夏休み」となる。ただし、危機管理のため、首相らがいない間は、古川貞二郎官房副長官が官邸で留守番をする。

森首相が「日本新生特別枠」概算要求で指示

2000.08.09(21:24)asahi.com
 森喜朗首相は9日、来年度予算の概算要求で首相が配分先を決める「日本新生特別枠」について、重要政策に掲げる情報技術(IT)、環境問題、高齢化対策、都市基盤整備の4分野で、目的がはっきりした新しい事業に絞って要求するよう、各省庁に指示した。

 首相は「ITによる経済・社会・行政の効率性の向上」「地球規模の環境問題、ダイオキシン・環境ホルモンなど緊急性の高い環境保全」「高齢者雇用、革新的な医療の実現」「都市の安全性・利便性・競争力の向上やバリアフリー化」などの観点を挙げた。

首相、靖国神社の公式参拝見送りを表明

2000.08.06(20:11)asahi.com
 広島市の平和記念式に出席した森喜朗首相は6日、同市内のホテルで記者会見し、終戦記念日の靖国神社参拝について、「諸般の事情を総合的に考慮した結果、私自身が自主的に判断し、公式参拝することは控えたいと考えている」と述べ、中国などの近隣諸国に配慮して公式参拝しない考えを示した。また、自民党の検討会が中心になって進めている公共事業見直しについては、「私自らがリーダーシップを発揮して、個々の事業についてもその必要性を厳しく洗い直して、抜本的な見直しを(党側に)指示した」と語り、政府としても本格的に取り組む姿勢を強調した。

 森首相は記者会見で、靖国神社への公式参拝を控える考えを示したものの、私的な立場での参拝は「私個人の心の問題だから、慎重かつ自主的に判断したい」と、含みをのこした。

 一方、自民党の検討会が公共事業見直し対象にした吉野川可動堰(ぜき)と中海干拓事業に対しては、「洗い直しの対象と考えている。亀井(静香)政調会長が現地に行って関係者と話をする。その結果を待ちたい」と述べた。

 さらに、「あっせん利得罪」の法制化については、「次期国会での議論を期待し、成立まで努力していただきたい」と話し、秋に予定される臨時国会での成立に期待を示した。適用範囲については「地方分権が進み、予算も地方の判断で執行することが多いので、地方議員、秘書を含めて検討の課題にするのは当然だ」との考えを示した。

地元大好き、森首相 週に2日は地元関係者と面談

2000.08.05(20:48)asahi.com
 森喜朗首相の就任から4カ月の間、際だっているのが、地元・石川県への「肩入れ」ぶりだ。地元関係者と顔を合わせる日は平均して週に2日以上と、最近の首相の中では目立って多い。特に九州・沖縄サミット(主要国首脳会議)が終わってからは、ほぼ連日というペースだ。地元入りもすでに2回。息の抜けない日々が続く首相にとって、地元関係者とのつき合いは特別のようだ。

 首相が地元関係者と会った日数を就任後120日間で比較すると、森首相の37日に対し、故小渕恵三前首相が11日、橋本龍太郎元首相が6日。森氏の突出ぶりがわかる。小渕、橋本両氏は地元入りの日を除けば、1日1組だったが、森氏の場合、1日に2組が7日、3組が4日もある。

 例えば今月3日は、午前中に国会内で石川県立小松高校の生徒と記念撮影。午後は「子ども国会」に参加した地元の小学生と記念撮影。さらに地元傷痍(しょうい)軍人会の会員らと記念撮影という具合だ。4日に首相官邸を訪れた石川県吉野谷村の村長と村議会議長は「予定になかったが、たまたま東京に来ていたので、(首相から)来いと言われた」という。

 中には「(首相の)親せきとその知人」という一団や、「地元駅の利用客が減っているが、無人化されたりすることがないよう、お願いに来た」(竹内信孝石川県美川町長)という陳情など、首相の面会としてはあまりにローカル色の強いものもある。

 歴代首相がそれなりに神経を使った「お国入り」も森首相は気にしない風だ。2回目となった7月30日は「市長さん、町長さんの希望されることだけは、きちっとさせてもらわなければならない」(松任市)、「私の頭の真ん中にいつも石川県のことがちゃんと入っている」(小松市)などと語り、聴衆を沸かせた。

 周囲の懸念とは裏腹に、面会者は一向に減る気配がない。いまや首相の秘書が地元から来た一団を案内している姿は首相官邸の見慣れた光景となっている。

森首相が所信表明演説でIT軸に景気回復を強調

2000.07.28(18:44)asahi.com
 第149臨時国会は28日召集され、森喜朗首相が、衆参両院の本会議で総選挙後初の所信表明演説をした。情報技術(IT)革命の推進を前面に出した景気回復策を強調。教育基本法の抜本的な見直しに踏み込んだ点には、独自色を示す姿勢がうかがえた。一方で、外交では従来の政府の姿勢を踏襲、社会保障でも抽象的な表現が目立つなど、全体を通じて新味に欠ける内容になっている。

 首相は、自ら政策推進の柱として打ち出した「日本新生プラン」の実現を中心に据え、これを経済、社会保障、教育、政府(行政改革など)、外交の5つの分野に分けて説明した。

 首相はまず、経済運営について「景気を回復軌道に乗せていくよう全力を尽くす」と、引き続き景気回復に最優先で取り組む姿勢を示した。IT革命の推進を経済の「起爆剤」と位置づけ、電子商取引のための規制改革や情報通信インフラ整備などに「内閣を挙げて取り組む」と述べた。

 教育基本法については「抜本的に見直す必要がある」と述べ、同法改正に踏み込む。中高一貫教育や大学9月入学の推進、教員や学校の評価システムの導入などにも触れた。

 一方で、「内閣としても一番取り組みが遅れている」(首相周辺)という社会保障は、「社会保障制度全般について横断的、総合的な見直し」に触れるものの、「70歳まで働くことを選べる社会」「社会全体で子育ての支援」など、抽象的な表現が並んだ。

 外交では、今年中の平和条約の締結に向け、期限が迫るロシアとの関係についても「率直かつ信頼関係に基づいた意見交換を行う」との表現にとどめるなど、従来の政府の見解を繰り返した。

 中尾栄一元建設相の受託収賄事件や「そごう問題」にも触れ、適切な対応や法的措置の必要性を唱えた。

森首相が8月にインドなど南西アジア4カ国歴訪

2000.07.28(18:43)asahi.com
 森喜朗首相が来月19日から26日の日程で、バングラデシュ、パキスタン、インド、ネパールの南西アジア4カ国を訪問することが28日正式に決まった。ネパールは、日本の首相として初めての訪問となる。

議長ぎりぎり「合格点」 森首相/「欠席の村山元首相よりいい」 微妙な問題は避ける

2000.07.23The sankei Shimbun
 二十世紀最後の主要国首脳会議(沖縄サミット)に、議長としてあるいは八人目の首脳としてそれぞれデビューを果たした森喜朗首相とロシアのプーチン大統領。両氏に対する評価を集めた。

 森喜朗首相の側近筋によると、二十二日に河野洋平外相と会談したロシアのイワノフ外相は「今回のサミットは成功だったと確実に言える状況にある。森首相に感謝したい」と評価、フランスのシラク大統領も夕食会などで「森首相のさい配ぶりに乾杯」と称賛しているという。だが、サミット取材にあたっている海外の報道陣からの評価は今ひとつ。日本の安全保障に重大な影響を及ぼす可能性がある中台関係についてもひとことのメッセージさえ出せないままだ。

 首相の議長ぶりについて、“身内”は「首脳会合ではあちこちに飛びがちな話題をよくまとめ、がんばっている」(政府筋)と自賛している。

 二十二日午後の会合では、ネクタイ、スーツをやめることを提案、シラク大統領とドイツのシュレーダー首相はノーネクタイ、ほかの首脳は沖縄風開襟シャツの「かりゆし」を着て議論を進めた。

 昼食会で相撲に造けいが深いシラク大統領や柔道黒帯のプーチン大統領から日本武道の話題が出ると、「日本では、心を込めて行うスポーツには『道』という言葉がつく」と“議論”をリード、英国のブレア首相は真剣な面持ちで話に聞き入り、首脳の一人は「極めて知的で楽しい昼食会だった」と絶賛したという。

 だが、議題から外れた各首脳の発言には外交辞令が含まれるのが当たり前。これを裏付けるように、海外報道陣の評価は「合格点」ぎりぎりのよう。

 「首相に就任したばかりでよく本人を知らない。ただ、IT(情報技術)について各国の同意を得ることに成功したことは評価できる」(伊紙記者)

 「沖縄をサミット会場に選んだことはいろいろな意味で英断だった。オブチ元首相の選択だとは思うが…」(ブルガリア国営テレビ記者)

 「議長国として大変な仕事をこなした。ただ、今回に限らないが議題が総花的過ぎる」(独国営ラジオ記者)

 「どのテーマをとってみても、ニッポンが何をどうしようとしているのかはっきりと伝わってこない」(米紙記者)

 「食あたりでナポリ・サミットの首脳会合を欠席したムラヤマ(村山富市元首相)よりはいいが、遺伝子組み換え食品の安全確保など米欧の意見が一致しないテーマでは、調整役を果たせていない」(仏紙記者)

 国家主権の問題でもある北朝鮮による日本人拉致(らち)疑惑について、G8声明では「人道および人権の諸問題をめぐる国際的な懸念に対する建設的な対応を期待する」との間接的表現にとどまった。

 政府筋は「人道、人権の問題には当然、拉致問題も含まれると認識している」と強調するが、ほかの首脳はさきの南北首脳会談を高く評価し、南北対話のさらなる推進を期待する発言を口にするだけで、認識を共有できたとはいえない状況。(阿比留瑠比、杉浦美香)

首相、連日、ITの「夏季講習」に励む

2000.07.20(01:16)asahi.com
 情報技術(IT)が主要テーマとなる九州・沖縄サミット(主要国首脳会議)を目前に、森喜朗首相が先端技術を少しでも理解しようと勉強をしている。17日にパソコン講習を始めたばかりの首相が、18日にはロボットの操縦に挑戦。19日は、内外のIT関係者との会合を3件もはしごした。さながら「夏季講習」を受ける受験生のようだが、「それよりリーダーシップの発揮を」という辛口の注文も出ている。

 首相は18日、首相官邸であったロボットのデモンストレーションに参加。ソニーのロボット犬「アイボ」を見て「かむ?」と尋ねたり、人間の声を聞き分けるロボットに「選挙の投票に行った?」と話しかけたり、上機嫌だった。

 19日朝には、「ITプレサミット円卓会議」と称して首相官邸に欧米、アジアのIT関連企業の経営者ら、この分野の第一人者を集めた。この後も、IT関係者や有識者を集めた会合を2件こなした。

 首相周辺は「各省庁の説明を受け、自宅でも書類に目を通している」と熱心さを強調するが、IT戦略会議の出井伸之議長(ソニー会長)は「首相が一生懸命キーボードを触っているのは、それなりにほほえましいが、それより首相のリーダーシップ、ビジョンの創出が1番のポイントだ」と注文をつけている。

森首相、今度はロボット操縦でご満悦

2000.07.18(21:47)asahi.com
 パソコン講習を受け始めたばかりの森喜朗首相が、18日にはロボットの操縦にチャレンジした。情報技術(IT)が主要テーマとなる九州・沖縄サミット(主要国首脳会議)を目前に控え、先端技術を理解するための勉強を重ねる毎日だ。

 首相は、ソニーのロボット犬「アイボ」を見て「かむ?」と尋ねたり、人間の声を聞き分けてテレビをつけたりするロボットに「選挙の投票に行った?」と話しかけたり。ロボットが反応せず、「返事しなさい」としかる場面も。最後は人間の動作に合わせて動くロボットを両手で操縦して万歳のポーズをつくり、「カメラマンの皆さん、ご苦労様です」とご満悦だった。首相は「慣れれば自動車と同じで、30分も触ればできる。パソコンもそうだ」。

 ただ、同じ日に開かれたIT戦略会議の議長、出井伸之ソニー会長は「総理が一生懸命キーボードを触っているのは、それなりにほほえましいが、そんなことばかりで時間をつぶしても困る。それより総理のリーダーシップ、ビジョンの創出が一番のポイントだ」と語っていた。

目標は「モリメール」 首相がパソコン講習

2000.07.17(19:06)asahi.com
 森喜朗首相は17日、首相官邸にパソコンのインストラクターを2人招き、約30分間、講習を受けた。「IT(情報技術)革命を提唱しているからには、パソコンを使いこなせなければ」という森派若手議員からのアドバイスで実現した。両手でキーボードをたたき、電子メールを素早くやりとりできるようになることが目標といい、小渕恵三前首相の「ブッチホン」ならぬ「モリメール」で、国民に身近な首相を演出したいようだ。

 この日はインターネットのホームページを見る練習をした。入力は右手人さし指「1本」。それでもインストラクターは「ざっくばらんに質問して、積極的に学ぼうとされているので、同年配の方よりも上達が早いのでは」。今後も週1回程度のペースで講習を続けていくという。

ケーキで景気づけ? 森首相誕生日

2000.07.15(00:25)asahi.com
 森喜朗首相は14日、63歳の誕生日を迎え、自民党森派の小泉純一郎会長らから首相官邸でプレゼントをもらった。。歴代首相には、担当記者がプレゼントすることもあったが、今回は冷戦状態が続いていることもあって贈り物はなし。首相も、記者団に「誕生日なんて味わっている暇はないんだよ。忙しくて」とそっけなかった。それだけに、気心の知れた同僚議員の励ましには、思わず笑顔を見せていた。

 事前に計画を知らなかった首相は、さすがに照れた様子。小泉会長が「ケーキで景気つけてもらおうと思って」というと、首相は、63歳を表すために立てられた2種類のろうそくを数えて「6と3で9だから、『苦労』が多い」。

 小泉会長は「総理が『毎日格子なき牢獄(ろうごく)に入っているみたいだ』と言っていたから、『記者にはおおらかに接して』と言ってきた」。首相は「わかってる、わかってる」と答えたそうだ。

森首相、記事や取材について「オフレコ」で記者に注文

2000.07.08(00:11)asahi.com
 森喜朗首相が7日、取材のやり方などについて約20分間、記者団に説いた。首相就任以来、「神の国」発言などが大きく取り上げられる一方で、記者団とのやり取りでは自分の真意がうまく伝わらないという思いが募っていたようだ。

 首相は官邸の食堂で昼食をとると、この日は自分から記者団に声をかけた。ソファに座ると、「オフレコだ。書いた社とは付き合わない」と前置きしたうえで、記事や取材について感じていることを話し出した。

 首相の思いを要約すると、▽自分の発言をつまんで書いている▽自分が話しやすい環境を記者団がつくらない▽質問は短く的確にしてほしい▽聞きたいことがあれば事前に秘書官に言ってほしい――など。

 質問に答えないことがあるのも「自分の発言がどういう影響を与えるか、ちゃんと考えている」と説明し、「答えるのが首相の義務だという態度で質問されたら、こちらも答えないという権利があるということになる」と締めくくった。

 首相とのやりとりは、報道各社とも基本的にはオフレコとはしていない。内閣記者会は今回の発言については各社で対応することにした。

     ◇

 <首相> (記事は)報告を受けたキャップかデスクが都合のいいところだけをつまんで書いているんだろう。新聞によっても違う。全部、スクラップを取ってあるから、ちゃんとわかっている。(略)僕も機嫌いい時も悪い時もあるから、僕が話しやすい雰囲気を作るのも君たちの仕事だろう。(略)会議に行く時は、しゃべる内容を考えながら歩いている。そこで「どうですか」と聞かれても、「うるさい」となるだろう。(略)立ち止まれる時はいいが、次の予定が決まっていて急いでいる時は、立ち止まれないだろう。君たちも勉強が足りない。質問をもっと短く的確にするようにしてほしい。(略)この間も(皇太后の)ひん宮に行った帰りに敬けんな気持ちになっているのに、ああだこうだと聞いてくる。「今は何もおうかがいしませんが、後ほど質問します」と言ってくれれば、「かわいいとこがあるじゃないか」となる。別にこびへつらえということではないが、そうやって人間関係をつくって、まず名前を覚えてもらうことが大切じゃないか。

 <記者> 簡潔でいいから首相のコメントがほしいことがあります。

 <首相> 何か重要なことで聞きたいことがあったら、事前に秘書官に「次のこれを聞きますよ」と調整しておくのも手だろう。(略)君らは(私を)ばかだと思っているかもしれない。ぼくはばかだとは思っていない。自分の発言がどういう影響を与えるかは、ちゃんと考えている。それでも答えるためには、突然質問されても答えられないだろう。

 <記者> 首相とのやりとりはとても限定されているので……。

 <首相> だから、質問する方で工夫しなさい。ぶら下がりでの話はあくまでもサービスでやっているんだ。義務でも何でもない。質問する権利があるから、答えるのが首相の義務だという態度で質問されたら、こちらも答えないという権利があるということになる。この話はオフレコだ。書くなら全部、載せてくれ。

無党派層には「寝ていてほしい」 講演で森首相

2000.06.21(01:09)asahi.com
 森喜朗首相は20日の新潟市内での講演で、有権者の投票態度について「まだ決めていない人が40%ぐらいある。そのまま(選挙に)関心がないといって寝てしまってくれれば、それでいいんですけれども、そうはいかない」と述べた。陣営引き締めのためとみられるが、投票率アップを呼びかける立場の首相が、選挙のカギを握る無党派層などの棄権を期待しているとも受け止められかねない発言だ。

 森首相は、新聞各社の情勢調査で自民党が安定多数をうかがう結果となったことについて「新聞が『自民党が強い』と書くと、判官びいきみたいなのもあるし、それじゃあおれたちは逆に(投票を)やってやろうということになる」と警戒感を示した。

 この発言について、森首相は同夜、記者団に対し、「寝ていたらいいと言ったわけではなく、よく考えてもらわないといけないという意味だ」と釈明した。

 一方、首相の発言に対して民主党の鳩山由紀夫代表は東京都内の記者会見で、「大変さびしい話だ。多くの人に投票所に行ってもらい、雌雄を決するのが、首相の、またすべての候補者の共通の考えでなければいけない。『寝ていてもらいたい』とは何事だと言いたい」と批判した。

森首相の「寝ててくれれば」発言を野党が一斉に反発

2000.06.21(23:40)asahi.com
 森喜朗首相が有権者の投票態度について「関心がないといって寝てしまってくれれば」と発言をしたことをめぐり、野党各党の首脳らは21日、「民主主義の否定だ」(民主党・鳩山由紀夫代表)などと一斉に反発した。選挙結果は無党派層の動向がかぎを握るとみられるだけに、野党側は「無党派層をばかにした森首相」を印象づけようとしている。

 鳩山氏は、大阪府吹田市での街頭演説で「こんなばかなことをなぜ時のリーダーが言えるのか。断じてこの言葉を許すことができない」と批判。菅直人政調会長も東京都内で記者会見し、「利益誘導でからめとれない無党派層に投票をしないように呼びかけた発言で、言語道断だ。こんなに愚ろうされているのに棄権したら、森首相を喜ばせるだけだ」と訴えた。

 共産党の志位和夫書記局長は仙台市での記者会見で「『神の国』発言など森首相の暴言に一貫して流れているのは、国民主権の否定だ。首相の資格がないことが、また露呈された」と強調。社民党の土井たか子党首は富山市での街頭演説で「無党派層と無関心層は違う。無党派層が投票に行かないと決めつけるのはおかしい」と指摘した。

森首相、「寝ててくれれば」発言を釈明

2000.06.22(00:17)asahi.com
 森喜朗首相は21日、大分県三重町での会見で、無党派層に関する発言について、「何も寝ていればいいと言ったわけではない」と釈明した。そして、「(投票態度を)決めていない方々が4割もいることに十分留意しなければいけないし、深刻に受け止めるべきだ、と申し上げた」と真意を説明した。 P>

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