TOPIC No.2-76 日比谷線脱線事故

01.日比谷線事故  ●脱線し衝突、車両大破 by asahi.com
02.富久信介・17才の生涯 営団地下鉄日比谷線・脱線衝突事故 

法的調査権を持つ鉄道事故調査委を新設へ 来年度予算

2000.12.24(17:21)asahi.com
 法的調査権を持つ常設の鉄道事故調査機関を新しくつくることが、24日決定した来年度政府予算案で認められた。今年3月の営団地下鉄日比谷線事故を機に、運輸省が要望していた。

 現在ある同省航空事故調査委員会に統合する形で「航空・鉄道事故調査委員会」として発足させることにしており、次期通常国会に設置に必要な法案を提出する。委員計10人、調査官・事務局計39人の態勢で来年度中に立ち上げる。

再発防止策を説明 日比谷線脱線・衝突事故で運輸省

2000.11.03(00:09)asahi.com
 営団地下鉄日比谷線の脱線・衝突事故で運輸省鉄道事故調査検討会が最終報告書をまとめたことを受け、運輸省は2日、全国約200の鉄道事業者の技術担当責任者を同省に集め、再発防止策を説明した。

 左右の車輪バランスを保つための輪重(りんじゅう)管理や、計算式で総合的に安全性を判断する方法を取り入れたことなどを指示。年内に新しい保守計画を提出し、来年中に対策を完了するよう求めた。

最終報告書まとまり焦点は刑事責任に 日比谷線事故で

2000.10.26(21:12)asahi.com
 営団地下鉄日比谷線の脱線・衝突事故は、最終報告書がまとまったことで、原因究明から刑事責任の追及に焦点が移る。警視庁捜査一課は業務上過失致死傷事件として目黒署に捜査本部を設置し、20人態勢で捜査をしている。

 捜査本部は、事故直後、脱線した下り電車と多数の死傷者が出た上り電車、枕木、レールを押収した。押収物の鑑定を電車事故の専門家に依頼し、事故原因の調査を進めている。死傷者が車両のどの位置にいて被害を受けたかを特定するため、被害者たちからの事情聴取を重ねている。

 1986年の東急や92年に営団の鷺沼車両基地(川崎市)で起きた脱線など、今回と類似する事故を参考にして、営団の担当者らが脱線防止のための十分な措置を施したか、今回の事故に予見可能性があったかなど、過失の有無を慎重に捜査している。

事故調、輪重管理打ち出す 日比谷線事故で最終報告書

2000.10.26(21:11)asahi.com
 東京都目黒区で今年3月に発生した営団地下鉄日比谷線の脱線・衝突事故で、運輸省鉄道事故調査検討会(座長=井口雅一・東大名誉教授)は26日、事故原因や再発防止策をまとめた最終報告書を運輸省に提出した。車輪にかかる荷重である輪重(りんじゅう)のアンバランスを柱とする複数の要因が同時に作用してレールに乗り上がった「複合脱線」とし、再発防止策について輪重管理を新たに導入することや、複数の要因を組み合わせて計算式によって安全性を判断するという考え方を初めて打ち出した。運輸省はこれらの再発防止策を全国の鉄道事業者に通達し、年内に安全対策の実施計画を提出するよう指示した。

 事故は今年3月8日午前9時すぎ、営団地下鉄中目黒駅付近で起きた。北千住発菊名行き下り電車の最後尾車両が脱線し、通過中の上り電車に衝突。5人が死亡し、63人が重軽傷を負った。

 報告書によると、脱線した車両は急カーブから直線に移る場所を時速約12キロで走行中、車輪の突起部分であるフランジがレールに乗り上がって脱輪した。乗り上がり現象が起きた原因は、左右の輪重のバランスが崩れていたことや摩擦係数が大きかったこと、レールの形状など、それぞれ単独では脱線に至らない程度の複数の要因が同時に作用したためとした。

 再発防止策では、複数の要因が絡み合った点を重視し、輪重比やフランジの角度など16項目の数値を組み合わせて総合的に安全性を判断する「推定式」と呼ばれる計算式を発案。この式に基づく限界値を示し、範囲内に収まるよう各項目の対策を講じることとした。さらに限界値内に収めることが難しい場合は、脱線防止ガードの設置を求めている。各事業者が保有する車両数や種類、線路の長さなどによって安全管理方法が異なることや、実際に車両を走らせなくても脱線の危険性を判断できるよう実効性を勘案した。

 ただし、事故の主因となった輪重アンバランスの管理については、全事業者に導入を求め、「輪重比10%以内」という目標値を明示した。このほか(1)線路のねじれの管理(2)新品の断面形状に近づくようレールを研削すること(3)フランジの角度を70度まで変更することも改善目標として挙げている。

 さらに報告書では事故の教訓として、各事業者に対して軌道部門と車両部門など各技術部門間の連携強化を求めるとともに、これまで発生した事故の調査結果や対策が必ずしも他の事業者に反映されていなかった点を指摘。運輸省に対し、事故情報の共有や対策の徹底を提言した。

日比谷線事故、中間報告受け営団が輪重測定定例化

2000.06.30(00:40)asahi.com
 営団地下鉄日比谷線の脱線・衝突事故の原因調査について、運輸省の鉄道事故調査検討会(座長=井口雅一・東大名誉教授)が中間報告をまとめたことを受けて、営団は29日、社内でつくった再発防止策を発表した。脱線の主因とされた輪重(りんじゅう)アンバランスへの対策として、今後は輪重を測定する方法で定期的に保守管理を行うことにした。

 営団はこれまで、空気バネの高さを調整する間接的な方法で輪重のバランスを管理してきた。しかし今年3月の事故発生後、輪重測定装置を購入。日比谷線については6月中旬までに、全車両の輪重を測定したうえで、左右の車輪の不均衡を示す輪重比を15%以内に調整した。全車両のうち、9割は輪重比10%以内に収めることができたが、製造時から輪重比が大きかったものについては、10%以下には調整できなかったという。

 また、摩擦係数やレールの研削状況、空気バネの硬さなど、中間報告で指摘されたその他の脱線要因については、今後、メーカーと塗油器の改造など技術的な検討を進め、具体的な対策を年内にまとめる。

日比谷線脱線・衝突事故 輪重の不均衡が主因と断定

2000.06.27(21:11)asahi.com
 営団地下鉄日比谷線が今年3月に脱線・衝突し、5人が死亡、60人が重軽傷を負った事故で、運輸省の鉄道事故調査検討会(座長=井口雅一・東大名誉教授)は27日、車輪にかかる荷重である輪重(りんじゅう)のアンバランスを柱とする複数の要因が、同時に作用したことが原因とする中間報告書を発表した。検討会は、輪重の管理などの再発防止策を盛り込んだ最終報告書を、秋にもまとめる方針だ。

 事故は3月8日午前9時ごろ、東京都目黒区の中目黒駅付近で起きた。中間報告書によると、下り電車が左急カーブから直線に移る区間を時速12、3キロ程度で走行中、車輪の突起部分であるフランジが徐々にレールに乗り上がって脱輪した。

 乗り上がり現象が起きた原因は、それぞれ単独では脱線には至らない程度の複数の要因が同時に作用し、影響が重なり合った「複合脱線」だとし、その最も大きな要因として輪重のアンバランスを挙げた。

 事故を起こした車両は納車時から、輪重に不均衡が生じていた。また、すべての同型車両の輪重を測定したところ、左右の車輪のアンバランスを示す「輪重比」が最大で29%にのぼった。これらのことから、事故当時、脱線当時の輪重比もかなり大きかった可能性が高いと推定した。

 その他の要因としては、(1)気温の上昇に伴ってレールの温度も上がっていたことなどから、レールと車輪の間で発生する摩擦係数が大きくなっていた(2)台車の軸バネや空気バネが比較的硬かったため、車体がカーブに対応し切れず、車輪が浮き上がりやすかった(3)研削したレールの形状が、車輪を横方向に押し出す力を増大させたうえ、新品レールに比べて車輪が乗り上がりやすかった――ことなどが影響した可能性を指摘している。ただ検討会は、いずれの要因も保守管理の基準内に収まっていたとしている。

日比谷線事故の中間報告を受け営団総裁が辞表提出

2000.06.27(21:10)asahi.com
 営団地下鉄(本社・東京都台東区)の寺嶋潔総裁は27日、二階俊博運輸相に辞表を提出し、受理された。地下鉄史上最悪だった日比谷線の脱線・衝突事故の原因調査の中間報告がまとまったことを受け、引責辞任したものだ。

 寺嶋総裁は記者会見で、「大勢の人に日常利用してもらっている地下鉄への信頼を裏切ったことへの社会的責任を取りたい。遺族や被害者に対する補償問題はこれからだが、辞任後も側面的にお手伝いしたい」と語った。今後は営団地下鉄の顧問に就く見通し。退職金は辞退するという。

 二階運輸相は「できるだけ早く後任を決めたい」としている。

営団地下鉄半蔵門線の台車でも亀裂

2000.06.19(17:53)asahi.com
 営団地下鉄は19日、半蔵門線で使用している住友金属工業製の台車で亀裂が見つかったと発表した。

 1987年に製造された8000系車両の台車1台で、軸バネ箱と台車の枠をつなぐ溶接部分に幅0.1ミリ、長さ7センチのひびが入っていた。溶接不良が原因という。

膨大な量の数字と格闘

2000年5月7日16時21分 共同
 5人が亡くなった営団地下鉄日比谷線の脱線衝突事故から8日で2カ月。運輸省鉄道事故調査検討会が4月末に行った再現走行実験は「実際に脱線することも想定した厳しい条件」で実施されたにもかかわらず、車輪が浮いたのは1ミリ以下とごくわずか。事故当時、なぜ脱線するほどの強い力が働いたのかメカニズムは依然分からないまま。検討会は実験で集めた膨大な量の数字と格闘を続けている。

現場走行試験で車輪の浮き上がりを確認 日比谷線事故

0:20p.m. JST April 30, 2000
 営団地下鉄日比谷線の電車脱線事故で、運輸省の鉄道事故調査検討会が実施していた事故現場での同型車両を使った走行試験で、脱輪したのと同じ個所の車輪が数ミリ浮き上がる現象が確認された。走行試験は左右の車輪の輪重(車輪にかかる重さ)にアンバランス(輪重差)をつけて行った。試験は30日未明で終わり、検討会は今後、測定結果を詳細に分析、コンピューターによるシミュレーションなどで脱線のメカニズムの解明を急ぐ。
 脱線は中目黒駅付近の下り線の上り坂で急な左カーブが終わる地点で発生。8両編成電車の最後尾車両で、右最前部車輪が脱輪した。(時事)

日比谷線脱線事故のメカニズム解明へ運輸省が走行実験

6:31p.m. JST April 26, 2000
 営団地下鉄日比谷線の脱線・衝突事故で、運輸省の鉄道事故調査検討会(座長=井口雅一・東大名誉教授)は26日未明、中目黒駅(東京都目黒区)付近の事故現場で試験車両を走らせる実験を始めた。事故台車の部品を使用するなど脱線当時の状況を可能な限り再現した車両に、さまざまな計器を取り付け、脱線のメカニズムの解明を目指す。実験は営業運転終了後の未明に計4日間行われる。

 実験では、左右の車輪の輪重差である輪重比の数値を変えたり、レールに油を塗った状態とそうでない状態を設定し、計測している。

山形新幹線台車にも亀裂

2000年4月26日 19時31分
 JR東日本は26日、山形新幹線の400系つばさで使用している、住友金属工業製の台車2台から亀裂が見つかったと発表した。つばさの2編成を定期点検した際に、それぞれの台車1台でモーターを台車枠に取り付ける台座の上面に長さ約5センチ、側面に長さ約4センチの亀裂があった。住金製の台車は地下鉄などの車両で亀裂が相次いで見つかり、運輸省が鉄道各社に点検を指示していた。

横浜市営地下鉄でも台車亀裂 日比谷線事故車と同社製造

7:01p.m. JST April 08, 2000
 横浜市営地下鉄で運行されている住友金属工業(本社大阪市)製の車両の台車で、亀裂が見つかっていたことが8日までに分かった。脱線事故を起こした営団地下鉄日比谷線の台車も同社が製造したもので、事故以前に亀裂を補修していたことが分かっている。同社が製造した台車で亀裂発見が相次いでいることから、運輸省は同日、同社製の台車を緊急に点検するよう全国の鉄道事業者に指示した。

 同省などによると、横浜市交通局が6日に行った定期点検で、1000形と呼ばれる車両の台車枠に長さ約40センチの亀裂が1カ所見つかった。亀裂は台車中で最も力が掛かりやすい軸受け近くにあった。台車は1977年6月に製造されたもので、亀裂は徐々に広がったと同省はみている。同市交通局は同型の台車を組み込んだ13編成(156台車)を一斉点検した。

 住友金属製の台車については、営団日比谷線で脱線した車両の台車で98年2月に定期検査を行った際、ブレーキ接合部に亀裂が見つかり補修していたことが判明。最近では営団銀座線の車両でも今月3日、5つの台車で亀裂が発見されるなどしていた。同省は近く住友金属の関係者から事情を聴き、原因究明を進める。(時事)

原因究明は長期化へ

2000年4月8日 10時26分
 5人の乗客が死亡した営団地下鉄日比谷線の脱線衝突事故は、8日で発生から1カ月。37人に上った重軽傷者のうち今も5人が入院中で、事故の影響は消えていない。

 警視庁目黒署捜査本部は発生直後から、事故車両やレールなどを東京都荒川区の営団千住検車区に運び込み、運輸省鉄道事故調査検討会と協力して原因究明への鑑定作業を続けるとともに、負傷者のほぼ全員から一通り事情を聴いた。

営団地下鉄の台車に亀裂

2000年4月6日 16時50分
 営団地下鉄は6日、銀座線の電車を定期検査中に台車計5台の溶接部付近に亀裂が入っているのを発見したと発表した。営団は運輸省に報告し、メーカーの住友金属とともに原因を調べている。都営地下鉄12号線(大江戸線)でも台車の溶接部分に亀裂があったことが3月に明らかになり、運輸省は「台車の亀裂については報告義務がなく全容が分からないため、実態の把握に努めたい」と話している。

車両の「輪重」を測定

2000年4月5日 16時31分
 営団地下鉄日比谷線の脱線衝突事故で運輸省鉄道事故調査検討会は、原因調査の一環として車両の車輪にかかる力「輪重」の測定に着手、営団の千住車両基地(東京都荒川区)で5日、作業の様子を報道陣に公開した。検討会は考えられる事故の「要因10項目」の一つとして、左右の輪重がアンバランスだった可能性を挙げており、測定結果をコンピューターを使ったシミュレーションなどに生かす。

日比谷線事故で全鉄道事業者対象に緊急会議 運輸省

6:47p.m. JST March 30, 2000
 営団地下鉄日比谷線の脱線・衝突事故を受け、運輸省は30日、全国の約二百の鉄道事業者の主任技術者を集め、同省内で緊急会議を開いた。日比谷線事故の概要を説明するとともに、東武鉄道やJR東日本でも脱線事故が相次いだことなどから、改めて安全対策に真剣に取り組むよう指示した。

原因究明、長期化へ

2000年3月14日 16時20分
 営団地下鉄日比谷線の脱線衝突事故は15日で発生から1週間。運輸省鉄道事故調査検討会と警視庁目黒署捜査本部は連日、事故車両やレールの検証を続けているが、脱線原因は依然解明されていない。

 検討会は今後、捜査本部と合同で事故の再現実験や日常点検データに基づくシミュレーションを実施する予定。「最低でも2、3カ月かかる」とされるなど原因究明には時間がかかりそうだ。

運輸省、脱線防止ガードの設置基準見直しを検討へ

10:08p.m. JST March 13, 2000
 東京都目黒区の営団地下鉄日比谷線の脱線・衝突事故を受けて、運輸省は13日、鉄道のカーブ個所に設置する脱線防止ガードの基準見直しに乗り出すことを明らかにした。営団はすでにガードの設置基準をこれまでより厳しくすることにしているが、事故原因によっては、他の鉄道事業者についても見直しが必要としている。

 カーブのきつさについて、運輸省令は曲線半径160メートル以上と定めている。しかし、運輸大臣の許可があれば例外が認められており、営団では半径160メートル未満の急カーブが64カ所ある。脱線事故があった場所は、半径162メートルのカーブだった。

 一方、急カーブでの脱線を防ぐために設ける脱線防止ガード(護輪軌条)については、明確な設置基準がない。運輸省の普通鉄道構造規則は「脱線の危険を及ぼす場所」としか示しておらず、設置するかどうかは事実上、鉄道各社の判断に任されていた。営団の設置基準はこれまで、半径140メートル未満のカーブとなっており、事故現場にはなかった。

 梅崎寿・運輸次官は13日の定例記者会見で「原因を十分に究明したうえで、数値的な基準を導入することの適否についても検討していった方がいい」という考えを示した。営団は事故後、運輸省の指示で脱線現場に防止ガードを設置するとともに、社内の設置基準を「160メートル未満のカーブ」に拡大する考えを明らかにしている。梅崎次官は「すべての鉄道事業者について(設置基準見直しを)どうするかは、事故原因の究明をきちんとしたうえで対処したい」と述べた。

    ◇

 <横浜市営地下鉄は省令より緩いカーブにも防止ガード設置へ>
 営団地下鉄日比谷線の脱線・衝突事故を受け、横浜市は13日、市営地下鉄のカーブ2カ所に新たに脱線防止ガードを取り付ける方針を明らかにした。21日までに設置する。

 市交通局によると、新設するのは、弘明寺―上大岡間の下り線(曲線半径165メートル)と、桜木町―関内間の下り線(同200メートル)。

 横浜市は事故後、地下鉄の車両と軌道を総点検していた。

福岡市営地下鉄でもせり上がり

2000年3月13日 13時21分
 営団地下鉄日比谷線の脱線衝突事故で起きたとみられる「せり上がり(乗り上がり)脱線」が2月中旬、福岡市営地下鉄の車両工場内でも発生していたことが13日、分かった。同市交通局によると、2月16日、福岡市西区の車両工場で、整備を終えた6両編成の車両を検車庫に移動中、最後部の左側車輪がレールの外側に脱輪した。約10メートル走り、車輪は元通りレール上に戻ったという。

重体の女性が死亡、死者は計5人に 日比谷線脱線事故

2:25p.m. JST March 13, 2000
 東京都目黒区の営団地下鉄日比谷線の脱線衝突事故で、頭を強く打って意識不明の重体だった女性が12日夜、死亡した。警視庁目黒署の捜査本部によると、女性は目黒区上目黒3丁目、会社役員横山陽子さん(32)。この事故での死亡者は計5人になった。この他にも2人の乗客が今も重体で入院している。新たに軽傷の女性(33)が名乗り出たため、事故による死傷者は計40人になった。

 捜査本部によると、横山さんは中央区銀座8丁目の勤務先に向かう途中で、大破した上り電車の6両目に乗っていたとみられるという。亡くなった5人はいずれもこの車両の乗客だったとみられる。

 横山さんは、父親が高知市で経営する輸入雑貨販売会社の役員で、東京やイタリアで商品の買い付けなどを担当していたという。

運輸省基準よりきつい急カーブ、営団に集中 64カ所も

10:48a.m. JST March 11, 2000
 日比谷線で脱線衝突事故を起こした営団地下鉄の計8路線には、運輸省令で定める鉄道のカーブの基準よりきつい急カーブが、計64カ所もあることがわかった。こうした急カーブは特例で認められてはいるが、営団の急カーブ数は首都圏の鉄道大手11事業者の合計の3分の2以上を占めている。営団は「地下鉄は使用料のかからない道路の下を選んで建設するため、カーブが連続する設計になりやすい」と説明している。急カーブには脱線防止ガードが設置されることが多いが、その設置基準は急カーブが多い営団が、他社に比べて際だって甘くなっている。

 運輸省令は、本線のカーブのきつさについて、最もきつい場合であっても曲線半径160メートル以上にするよう定めている。しかし、運輸大臣の許可があれば例外も認められている。

 首都圏に乗り入れている鉄道11事業者によると、半径160メートル未満の急カーブは、各線の合計で93カ所。このうち、営団地下鉄は64カ所で、全体の3分の2を超える。路線別でみると、例えば銀座線は25カ所、丸の内線は20カ所にのぼっている。

 ほかの鉄道のうち、JR東日本、小田急、相模鉄道はゼロ。10カ所以上ある事業者はひとつもない。

 事故があった日比谷線は11カ所。脱線が発生したカーブは半径160.1メートルで、わずか0.1メートルの差で含まれない。160メートル以上161メートル未満の急カーブは、同線だけでさらに11カ所あり、かなりの急カーブの連続であることが浮かび上がる。

 営団は急カーブの多さについて、地下鉄特有の建設コストのかかり方を理由に挙げる。トンネルの建設費が膨大であるのに対し、線路は道路の下を通れば、用地費や使用料がいらない。このため、線路はなるべく道路に沿うように設計される。さらに、カーブが民有地にかからないよう、交差点の範囲内で回り込もうとするため、急カーブが多くなる。

脱線防止レール増設へ

2000年3月10日 17時20分
 日比谷線の脱線衝突事故で、営団地下鉄は10日、脱線防止用補助レール(脱線防止ガード)の設置基準を現状より厳しくする方向で見直すと発表した。車輪のツメ部分が、徐々にレールに乗り上げる「せり上がり現象」による脱線の防止に有効とされるが、今回の事故現場には設置されていなかった。

 脱線防止ガードは本来のレールの内側にもう一本レールを設け、車輪を挟み込む形で脱線を防ぐ。

レールのざらつき引き金か

2000年3月9日 17時56分
 営団地下鉄日比谷線の脱線・衝突事故で、現場付近のレールは約3カ月前に、脱線した車両の車輪は約5カ月前にそれぞれ表面を削り取る整備作業をしていたことが9日、運輸省鉄道事故調査検討会の調べで分かった。事故車両は脱線寸前の約5メートルにわたり、右の車輪のツメ部分(フランジ)がレールに乗り上げた痕跡が残っていた。

日比谷線脱線事故 衝突前、4両目に接触

4:10p.m. JST March 09, 2000
 東京都目黒区の営団地下鉄日比谷線中目黒駅付近で、下り電車が脱線して対向の上り電車に衝突、多数の死傷者が出た事故で、警視庁目黒署の捜査本部は9日午前、営団地下鉄千住検車区=東京都荒川区南千住4丁目=で、衝突した双方の電車車両や下り線のレールの現場検証を始めた。脱線車両やレールに何らかの異状がなかったかを中心に調べ、脱線や衝突の原因を解明する。これまでの調べで、下り電車が脱線後、最初に上り電車の前から4両目の車両に接触していたことが新たにわかった。下り電車はその後、引き込み線用のポイントのレールにぶつかってさらに上り電車に近づいて6両目に衝突、大破させたとみられる。

 現場検証には運輸省の鉄道事故調査検討会も立ち会っている。

 捜査本部は、衝突した双方の車両と現場付近のレールを差し押さえた。検証作業は、脱線車両の台車部分に破損などの異状がないかどうかや金属疲労の状況などを中心に進めるとみられる。

 捜査本部によると、下り電車車両は、中目黒駅から約170メートル霞ケ関寄りの地点で、8両目の最後尾車両の前側台車が脱線、そのまま、コンクリート製まくら木の上を約50メートル走り、まず上り電車の4両目中央部分に接触後、5両目にもぶつかった。

 まくら木に残された傷から、脱線当初、レールからの逸脱は、進行方向に向かって右側に約50センチ程度だったが、保守車両引き込み用ポイント「横取り装置」に差しかかった地点の逸脱幅は約1メートルになっていた。下り電車がさらに上り線寄りに走ったことで、上り電車の6両目に激しくぶつかったらしい。捜査本部の調べでは、死亡した4人は全員6両目に乗っていた。

 また上り電車の車掌が捜査本部の調べに「反対車線の電車の脱線を目視した」と話していることが分かった。車掌は脱線の事実を認めた後、車内のマイクロホンで運転士に伝え、運転士が営団の総合指令所に連絡したという。この運転士は「(車掌から知らされるまで)何が起きたか、分からなかった」と話しているという。

 捜査本部は引き続き双方の電車の運転士や車掌らから事情を聴き、脱線から衝突に至る経緯を解明する。

日比谷線運転再開、事故現場に脱線防止ガード

3:27p.m. JST March 09, 2000
 事故発生から不通が続いていた日比谷線恵比寿―中目黒間は、9日始発から運転を再開した。脱線現場については、当分の間徐行運転を続ける予定。

 東京都目黒区の脱線現場では、午前4時40分ごろ、線路の状況を調べる試験車を走らせたあと、午前5時ちょうどに、事故後の1番列車となる中目黒発東武動物公園行き電車が通過した。

 営団は運転再開に先だって、徹夜で脱線車両と同じ型式の車両計336両の車輪や空気バネを緊急点検するとともに、現場のレール約70メートルに沿って、脱線防止ガードを取り付けた。

「こんなところでなぜ脱線?」 首かしげる鉄道関係者ら

4:56p.m. JST March 08, 2000
 駅に近づいて下り電車は、減速しながら急な左カーブを曲がっていた。8両電車の最後の車両がレールを外れたまま走り、線路から大きくはみだして、対向してきた電車に衝突した。現場はポイントの切り替えもなく、専門家らは「こんなところでなぜ脱線したのか」と、首をかしげた。自動制御ができあがった都心での大事故に驚きを隠せない。

 運輸省によると、脱線した下り電車は、トンネルを出て左カーブにさしかかった付近で脱線、車両は引きずられる状態で走り、上り線路側に飛び出し、すれちがった上り電車に接触したらしい。

 営団地下鉄によると、下り電車からはやや上り坂で、左カーブだった。制限速度は時速40キロだった。上り電車と下り電車の車両同士の幅は約80センチを確保するように設計されているという。

 通常、きついカーブの場所では、脱線した車両が対向電車に飛びでないよう「護輪軌条」と呼ばれるはみだしを防ぐ装置があるが、この場所にはなかったという。

 電車が脱線する原因としては、ポイント切り替えのトラブルや、線路や車両そのものの問題、ほかに石に乗り上げることなどが考えられる。しかし通常は、電車がポイント上を走行している間は、ポイントの切り替えはロックされているという。

 鉄道関係者によると、電車が脱線して車両間の連結部分や電線などが切断されると、電車そのものが故障を検知して自動的に止まるようになっている。また、カーブ付近など脱線のおそれがある地点には、線路敷地内に障害物が入ったことなどを検知し、電車を自動的に停止させる「限界支障報知装置」が設置されているところもある。

 ある鉄道関係者は「通常なら、少なくとも最後尾にいる車掌は、脱線の衝撃やまくら木を走行することで異常な振動に気づいて、緊急ブレーキを作動させるのでは」と話している。

 運輸省と営団地下鉄によると、車両については3年に1回、台車を分解してオーバーホールする重要部検査、6年に1回車両をまるごと検査する全般検査が義務づけられている。脱線事故を起こした車両は、1988年6月の日本車輌の製造。重要部検査は1年9カ月前、全般検査は4年8カ月前に受けていたという。営団は車軸や車輪に傷がなかったかの確認を急いでいる。

 <最近10年の主な列車事故>
1989年4月13日
長野・JR東海飯田線北殿駅構内に停車中の下り列車に、上り列車が正面衝突。157人けが

1991年5月14日
滋賀県の信楽高原鉄道の普通列車とJR臨時列車が正面衝突。42人が死亡、627人けが

1992年6月2日
茨城県の関東鉄道常総線取手駅構内で、制動装置が全く作動しないまま車止めを乗り越えた列車が駅ビル壁面に衝突、1人死亡、251人けが

1992年10月30日
長野・八ケ岳連峰、横岳ロープウエーで、駅舎コンクリートに衝突、70人けが

1992年11月3日
長崎県の島原鉄道・吾妻駅近くで列車同士が正面衝突。1人死亡、72人けが

1993年10月5日
大阪市の大阪ポートタウン線で列車が終着駅ホームを通過し、車止めに衝突。217人けが

1994年2月22日
北海道釧路市でJR根室線の特急列車が脱線、転覆。27人けが

1997年8月12日
静岡県沼津市のJR東海道線で貨物列車に普通電車が衝突。43人けが

1997年8月25日
青森・弘南鉄道弘南線館田駅構内で、発車した上り列車と、対向してきた下り列車が正面衝突。32人けが

1997年10月12日
山梨県のJR中央線大月駅構内で、信号を見落として本線に入ろうとした回送列車と本線を走行中の特急列車が衝突、両列車が脱線。負傷者63人。

1998年6月11日
高知県大方町の土佐くろしお鉄道旅客列車衝突事故、39人けが

1999年2月21日
東京・品川区のJR山手貨物線で、信号電線取りかえ工事中の作業員5人が、JR臨時回送列車にはねられ死亡

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