TOPIC No.2-5b 2000年-2006年(米国経済)


米住宅市場鈍化、世界経済のリスク要因に IMF見通し

2006/09/07 The Sankei Shimbun
 

 【ワシントン=渡辺浩生】国際通貨基金(IMF)は6日、世界経済見通しの一部を公表し、日本が規制緩和を継続し、農業分野において貿易自由化を推進することが、潜在成長率を大幅を引き上げるかぎになるとの認識を示した。

 また、米住宅市場の鈍化が世界経済の先行きにとって大きなリスク要因になっているとの分析も示し、持ち家価格上昇を担保に消費者が借り入れを増大させていることに警鐘を鳴らした。

 一方、生産性の伸びが米英と比較して欧州は劣っている点を指摘し、市場開放を進めることで成長産業への資源配分が容易になるとの見解を強調した。

米経済、減速の兆しも FRB地区連銀景況報告

2006/06/15 The Sankei Shimbun
 

 【ワシントン=気仙英郎】米連邦準備制度理事会(FRB)は14日、米景気の現状をまとめた地区連銀景況報告(ベージュブック)を発表した。4月半ばから6月上旬にかけての米経済は「拡大が続いたが、減速の兆しも目立ってきた」と指摘した。特に、物価について、「大半の地区で、調査した企業からコストの上昇に対する懸念が示された」としてインフレ圧力の拡大に対する懸念を強調した。

 同日発表された5月の米消費者物価は、エネルギーと食品を除くコア指数が3カ月連続で前月比0.3%上昇しており、米金融市場では、今月28、29日に開かれる米連邦公開市場委員会(FOMC)で、17回目の利上げがあるとの観測が強まっている。

 12連銀のうちで、アトランタ、カンザスシティー、リッチモンド、サンフランシスコの4連銀が景気拡大の鈍化を報告。ボストン、シカゴ、ニューヨーク、フィラデルフィアなど7連銀が、景況は前回4月の報告と同様で変化がないと回答した。フィラデルフィア連銀だけは景況は改善と報告した。

 今回の報告は6月5日までの経済指標に基づいて、全米に12ある地区連銀がそれぞれの景気情勢をまとめて報告した。次回FOMCの討議の際のたたき台になる。

米最大の訴訟? 通信3社に22兆円要求

2006/05/17 The Sankei Shimbun
 

 米通信大手3社が米国家安全保障局(NSA)による令状なしの通話記録収集に協力したとされる問題で、米国内18州に住む28人が16日までに、総額2000億ドル(約22兆円)の損害賠償や、令状なしの記録収集差し止めを3社やブッシュ米大統領、NSAに求める大型訴訟をニューヨーク連邦地裁に起こした。  原告も兼ねるブルース・アフラン弁護士は「米国でも最大規模の訴訟と思う」としている。

 訴訟は、NSAの要請を受けて記録を提供していたと報じられたAT&T、ベライゾン・コミュニケーションズ、ベルサウス計3社の顧客である推定2億人を代表した集団訴訟の形を取っており、記録提供はプライバシーの侵害で米憲法や通信法などに反すると主張している。

 訴訟に対し、ベライゾンは同日、テロ対策をめぐるNSAとの協力関係の有無については「確認も否定もしない」としたうえで、NSAから顧客の国内通話記録提供の要請を受けたことも実際に記録を提供したこともない、と事実関係を全面否定する声明を発表した。

 ベルサウスも15日、NSAとの協力関係を否定する声明を発表している。(共同)

米0.25%追加利上げ、5年ぶり年5%に

2006/05/11 The Sankei Shimbun
 

 【ワシントン=気仙英郎】米連邦準備制度理事会(FRB)は10日、当面の金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、短期市場金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.25%引き上げ、年5.0%とすることを全会一致で決定し、直ちに実行した。また、公定歩合も同じ幅だけ引き上げ、年6.0%にした。

 FOMCは、景気拡大と原油高に対する警戒を示しており、利上げによるインフレ抑制を優先させた。利上げは一昨年6月以来、0.25%ずつ16回連続で行われており、上げ幅は4.0%になった。5.0%は、2001年3月以来となる。

 FOMCは、声明で、「インフレを抑制するために、さらなる引き締めが必要かもしれないが、引き締めの幅とその時期は、経済指標を見てインフレをどう評価するかにかかっている」と強調。FRBのバーナンキ議長が4月末の議会で、「利上げを停止することもあり得る」と証言したが、今回のFOMCはむしろ、引き締めの可能性を強調する内容になった。

米長期金利が上昇、1年8か月ぶり高水準

2006年03月04日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【ニューヨーク=小山守生】3日のニューヨーク債券市場は、米欧の利上げ継続や、日本銀行の量的金融緩和策の解除が近いとの観測から、長期金利が上昇(債券価格は下落)した。

 指標となる10年物米国債利回りは前日比0・06%高い4・69%で取引を終え、終値ベースでは2004年6月29日以来約1年8か月ぶりの高水準となった。

米銀純利益、5年連続で過去最高 融資増が主因

2006/03/01 The Sankei Shimbun

 米連邦預金保険公社(FDIC)は28日、2005年の米国銀行の純利益が前年比9.6%増の1342億ドル(約15兆6000億円)で、5年連続で過去最高を更新したと発表した。

 米経済の好調を反映した融資増が主因。しかし「バブル」といわれる住宅市場に減速の兆しが目立ち始めており、FDICは「好環境は永続しない」と先行き不透明感を指摘した。

 金利収入は3185億ドルに達し、前年を8.1%上回った。一方、企業倒産や企業の経営悪化などに伴う貸倒引当金は2.4%の増加にとどまった。不良債権の償却額は1.4%減の315億ドル。

 好業績の結果、05年は米銀の破たんが1件もない「初めての年」(FDIC)。経営に不安のある「問題行」の数も52行と、データの残っている36年間で最少になった。(共同)

米、次世代戦闘機の開発計画縮小 F35、予算2000億円削減

2006/02/08 The Sankei Shimbun

 ラムズフェルド米国防長官は7日、上院軍事委員会の公聴会で証言し、2007会計年度(06年10月―07年9月)の国防予算案に関連し、次世代のF35戦闘機をめぐり当初開発計画の一部を縮小、約18億ドル(約2100億円)の予算削減を行ったことを明らかにした。

 国防総省は英ロールスロイス社などが受注した同戦闘機の代替エンジン開発の中止を検討。ブレア英首相がブッシュ米大統領に開発継続を求め、「直談判」していたが実らなかった。

 国防総省は国防費として前年度比6.9%増の約4393億ドルを要求。ただ長引くイラク駐留の影響もあり、F35計画の一部が撤回となったことで、緊密な米英関係に水を差した格好だ。

 公聴会で国防長官は「正しい決定だと考える」と主張。ウォーナー委員長(共和党)が「英国はイラクでの最も確固としたパートナーだ。注意深い配慮が必要だ」とくぎを刺す一幕もあった。

 ブレア首相はブッシュ大統領への書簡で、開発中止は米英の「戦略的協力」を脅かすと継続を要請していた。(共同)

1月の米失業率4.7% 4年半ぶり低水準

2006/02/03 The Sankei Shimbun

 米労働省が3日発表した1月の雇用統計(速報、季節調整済み)によると、失業率は4.7%と前月比で0.2ポイント改善し、2001年7月(4.6%)以来、4年半ぶりの低水準となった。景気動向を敏感に反映するとされる非農業部門の就業者は前月比19万3000人増えた。

 就業者数の増加は金融市場の予想(27万5000人程度)を下回ったが、昨年12月分が当初発表の10万8000人から14万人に上方修正されており、全体としては景気の拡大を背景に雇用情勢が着実に改善していることを裏付けた。

 米連邦準備制度理事会(FRB)が3月末に追加利上げに踏み切るとの見方が強まりそうだ。

 就業者の内訳をみると、建設業は4万6000人増と比較的高い伸びを示し、当初マイナスとされた前月分もプラスに修正された。製造業は7000人の増加、小売業などサービスは全体で13万5000人増えた。

 1月の平均時給は16.41ドルで0.07ドル増加、製造業の週平均労働時間は40.8時間で3カ月続けて同じだった。(共同)

米GDP急減速1.1%成長 10―12月期、個人消費低迷

2006/01/28 The Sankei Shimbun

 米商務省が27日発表した2005年10―12月期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は、年率換算で前期比1.1%増と前期(4.1%増)から急減速し、02年10―12月期(0.2%増)以来、3年ぶりの低い伸びにとどまった。個人消費と設備投資の低迷が響き、金融市場の事前予想(2.8%程度の増加)を大きく下回った。

 05年通年の成長率は前年比3.5%増。米中枢同時テロが起きた01年以来、4年ぶりに前年(4.2%)を下回った。

 ブッシュ政権は06年の成長率を3.4%と予測、底堅い成長が続くとみている。米連邦準備制度理事会(FRB)は今月31日の連邦公開市場委員会(FOMC)で追加利上げを決める見通しだが、景気動向次第では利上げ休止の時期が焦点になりそうだ。

 10―12月期の内訳を見ると個人消費は1.1%増と4年半ぶりの低い伸び。値引きキャンペーンの中断による自動車販売の落ち込みが響き、耐久財が17.5%減と大幅に落ち込んだ。設備投資は2.8%増、高水準を維持してきた住宅投資も3.5%増といずれも前期の伸びを下回った。

 輸出から輸入を差し引いた純輸出(外需)の寄与度はマイナス1.18%と成長率の押し下げ要因となった。総合的な物価動向を示すGDPデフレーターは年率3.0%の上昇だった。(共同)

米住宅着工33年ぶり高水準 05年、一戸建ては過去最高

2006/01/20 The Sankei Shimbun

 米商務省が19日発表した昨年1年間の住宅着工件数(速報)は、206万4700戸と前年比で5.6%増加し、1972年(約236万戸)以来、33年ぶりの高水準を記録した。値上がり期待と景気拡大を背景に「バブル」と指摘されるほど活発な住宅投資が続いたためだ。

 特に主力の一戸建ては6.4%増の171万4300戸に達し、統計上比較できる59年以降の最高を更新した。

 連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ効果で投資熱はやや沈静化しているが、今後、価格急落などが起きれば個人消費や景気全体に影響が及ぶ可能性がある。全体の前年比プラスは5年連続。

 一方、同時に発表された昨年12月の着工件数(速報、季節調整済み)は年率換算で193万3000戸と前月に比べ8.9%減少し、9カ月ぶりに200万戸の大台を割り込んだ。一戸建てが2けた減となったためで金融市場の事前予想(205万戸程度)を大幅に下回った。(共同)

米、4.3%成長に 7―9月期、上方修正

2005/12/01 The Sankei Shimbun

 米商務省が30日発表した今年7―9月期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み)改定値は、年率換算で前期比4.3%増となり、速報値から0.5ポイント上方修正された。2004年1―3月期以来の高い伸びで、4.1%程度の増加とみていた金融市場の予想も上回った。米経済はハリケーン被害を乗り越え底堅い景気拡大を続けている。

 内訳は、景気のけん引役である個人消費が4.2%の増加。輸入が横ばいから2.1%のプラスに修正されたため、輸出から輸入を差し引いた外需の成長寄与度はマイナス0.25%となり、下押し要因に転じた。

 住宅投資は8.4%増と大幅に上方修正され、バブルとの懸念もある住宅ブームが続いていることを示した。設備投資も8.8%増に上方修正された。(共同)

GMリストラ計画を批判 米最大労組の議長

2005/11/24 The Sankei Shimbun

 米国最大の労働団体、米国労働総同盟産別会議(AFL・CIO)のジョン・スウィーニー議長は23日、自動車最大手ゼネラル・モーターズ(GM)の3万人に上る人員削減計画を批判する声明を発表した。

 議長は「製造業の従業員に(小売り最大手の)ウォルマート・ストアーズ並の低賃金を押しつけようとしている」と非難。規模縮小ではなく、品質向上による販売拡大で業績の改善を図るべきだと指摘している。

 GMは21日、9工場の閉鎖に加え、当初2万5000人規模としていた削減数に5000人上積みする経営再建策を発表。これに対し、医療費負担の大幅削減ではGMと合意した全米自動車労組(UAW)が反発。AFL・CIOも有力加盟労組UAWの支援強化に乗り出すことになり、GMの再建計画の先行き不透明感が高まっている。(共同)

米GM、9工場閉鎖し3万人削減へ

2005/11/14 The Sankei Shimbun

 米自動車最大手ゼネラル・モーターズ(GM)のワゴナー会長は21日、北米にある組立工場など9工場とサービスなど3拠点について閉鎖あるいは大幅な減産を実施、従業員削減数も5000人上積みして3万人にすると発表した。販売不振が続き、本業の自動車生産を大幅に縮小して経営を立て直す。

 同社は2008年までに年間生産能力を02年より約3割減の420万台に落とし、08年までに2万5000人としていた人員削減数も5000人上乗せして全社員の9.2%に相当する3万人に拡大した。合理化計画で06年末までに70億ドル(約8300億円)のコストを低下させる方針だ。

 GMは、最大の業績悪化要因だった従業員・退職者の医療費負担を年間10億ドル削減することで、全米自動車労組と合意したばかり。

 しかし、同社の決算は四半期ベースで4期連続の赤字を計上している上、販売不振も続く。GMと関係が深く、米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用申請をした米自動車部品最大手デルファイが、ストライキに入るとの観測もGMの経営に打撃を与えるとして株価が下落を続けており、再度の再建策発表に踏み切った。(共同)

ゴールドマン・サックスは小口転売か 三菱自株

2005/11/14 The Sankei Shimbun

 三菱自動車は14日、株主の米証券大手ゴールドマン・サックスのグループ会社から、三菱自の株式約5億4815万株を売却したと同日付で報告があったと発表した。ゴールドマンの株式の保有比率は、売却前の13.45%から1.04%に大きく下がった。

 売却先は明らかにしていないが、三菱自によると大株主の上位の構成に変動はなく、ゴールドマンは国内外の多数の機関投資家などに小口で転売したとみられる。三菱自は、三菱重工業など三菱グループ主導の経営再建策に影響はないと判断している。

 週明け14日の東京株式市場で三菱自動車株は、ゴールドマンの大量売却が嫌気されて売られ、午前の終値は前週末比32円安の267円と、大幅に下落した。売買高は3億株に迫り、東証一部で最多となった。

 三菱自は11日、大株主だったドイツ・米国の自動車大手ダイムラークライスラーが、保有する三菱自の株式(12.42%)をゴールドマン・サックスに売却したと発表。一方でゴールドマンが、これを機関投資家に売却したことが明らかになっていた。(共同)

GMとフォード、赤字決算  経営再建、模索続く 医療費・年金、重荷に

平成17(2005)年10月23日 The Sankei Shimbun

 【ワシントン=気仙英郎】米自動車メーカー大手のゼネラル・モーターズ(GM)とフォード・モーターが七−九月期決算でそろって赤字転落するなど、業績悪化に歯止めがかからない。ガソリンの高騰で販売不振に拍車がかかったうえ、従業員の医療費や年金負担も重荷だからだ。

 GMの七−九月期決算は、北米市場での販売が振るわず、最終損益は十六億三千三百万ドルの赤字で、四・四半期連続の赤字決算となった。ガソリン高で主力の大型スポーツ用多目的車(SUV)が売れず、自動車事業の赤字は前年同期の八千八百万ドルから二十億九千五百万ドルに拡大。投資銀行アナリストの間では、GMの十月の米市場シェアが「二十五年ぶりの低水準になる」との見方が強い。

 フォードの七−九月期決算も二億八千四百万ドルの赤字で、二〇〇三年十月−十二月期以来、四半期ベースで七期ぶりの赤字転落。構図はGMと同じで、SUVからの消費者離れが加速した形だ。

 GMのワゴナー最高経営責任者(CEO)は決算発表で「全米自動車労組(UAW)との医療費削減は合意した。〇六年の原材料コストを十億ドル削減する」方針を打ち出したほか、生産縮小で収支を改善するという。

 フォードもUAWとの医療費削減交渉に加え、大規模な工場閉鎖や人員削減策を来年一月をメドに発表することを明らかにしているものの、販売回復への青写真は示していない。

 コスト削減だけでなく「売れる車作り」が求められており、リストラを柱にした経営再建への模索が続きそうだ。

ハリケーン被害、保険金支払い最大600億ドルに

2005年09月10日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【ニューヨーク=北山文裕】米調査会社リスク・マネジメント・ソリューションズ(カリフォルニア州)は9日、超大型ハリケーン「カトリーナ」の損害に対して保険会社が支払う保険金総額が最大600億ドル(約6兆6000億円)に達するとの試算を発表した。

 1992年に米国に被害をもたらした大型ハリケーン「アンドルー」(約215億ドル、現在価値に換算)の3倍に及ぶ規模で、保険業界の経営にも大きな打撃となりそうだ。同社は保険金支払額を直近の試算で200億〜350億ドルとしていたが、被害の拡大を踏まえて大幅に上方修正した。

米航空業界の損失1兆円超 ハリケーンで燃料高騰

2005/09/10 The Sankei Shimbun

 米航空業界団体、航空輸送協会(ATA)は9日、超大型ハリケーン「カトリーナ」直撃に伴うジェット燃料価格の高騰で、航空業界全体の今年の損失額は100億ドル(約1兆1000億円)に上るとの見通しを示した。同時に米政府に対しジェット燃料にかかる連邦税について6億ドル規模の減税を要請した。

 原油価格高騰で燃料コストが膨れ上がり、収益を圧迫していたところに、ハリケーンが追い打ちを掛けた。

 一部大手が、米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)申請の可能性に言及するなど、航空業界の経営環境は悪化を続けている。(共同)

被害250億ドル 米大手証券見通し

平成17(2005)年09月06日 The Sankei Shimbun

 【ヒューストン=岡田敏一】ロイター通信によると、大型ハリケーン「カトリーナ」の被害総額について、米証券大手ゴールドマンサックスは、ハリケーン被害では過去最大の約二百五十億ドル(約二兆七千五百万円)との見通しを明らかにした。

 また、今後の復興需要について、「来年の第二、ないし第三・四半期までに、米国経済の成長率を1%程度押し上げる」との可能性を指摘した。

楽観論後退「経済は当面減速」 損害1000億ドル予測も

平成17(2005)年09月04日 The Sankei Shimbun

 【ワシントン=気仙英郎】大型ハリケーン「カトリーナ」による被害状況が明らかになるにつれ、好調を維持してきた米経済が当面、減速を余儀なくされるとの見方が広がっている。

 米政府や連邦準備制度理事会(FRB)は「減速は一時的」との見方を崩していないが、経済的損失額は一千億ドル(約十一兆円)を超えるとの予測も出ており、百五億ドルの緊急補正予算を迅速に可決した米議会からは早くも追加的な景気刺激策を求める声が出始めている。

 英国での休暇を切り上げ帰国したスノー米財務長官は二日、グリーンスパンFRB議長と会談し、「カトリーナの被害で景気が三カ月程度、減速することになるが、悪影響が長期化することはない」との認識で一致。会見でスノー長官は、「今後の復興需要がむしろ経済成長を押し上げるだろう」と語った。

 しかし、日を追うごとに被害状況の大きさが明らかになり、楽観的な見方は後退している。

 米民間調査会社のリスク・マネジメント・ソリューションズは二日、経済的損失額は一千億ドルを超えるとの予測を発表。当初は最大二百五十億ドルとの見通しを示したが、堤防決壊でニューオーリンズ市が壊滅状態となったため、修正した。

 また、米大手証券ゴールドマン・サックスも同日、第三、第四・四半期の実質GDP(国内総生産)は0・5−1%低下するとの試算を公表した。

 米下院のブラント共和党副院内総務は二日、緊急に記者会見し、「米経済の成長を維持するには、景気刺激策を検討する必要がある」との考えを強調。具体的な措置として被災者への緊急援助や徴税停止、環境規制の緩和などを挙げた。

 金融引き締めを続けるFRBに対し、利上げ停止による景気てこ入れを求める圧力も強まっており、金融市場ではFRBが二十日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを見送るとの観測が浮上している。

GDP0.5ポイント押し下げ 米格付け会社、ハリケーン被害で見通し

2005/09/02 The Sankei Shimbun

 米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は1日、超大型ハリケーン「カトリーナ」が米経済に及ぼす影響について、7―9月期の国内総生産(GDP)を0.5ポイント押し下げるとの見通しを発表した。

 しかし、支援活動や復興事業が最終的にGDPに寄与するため、米経済が受ける影響は「限定的」と指摘。10―12月期から来年7―9月期にかけて、復興事業により各四半期ごとのGDPは0.2ポイントずつ引き上げられるとしている。(共同)

米、中国製繊維製品に輸入制限 協議終了直後に

2005/09/02 The Sankei Shimbun

 米商務省は1日、中国製のブラジャーなどの繊維製品2品目の輸入急増が国内市場を混乱させているとして、緊急輸入制限(セーフガード)の発動を決めたと発表した。

 米中両国は中国製繊維製品の対米輸出規制をめぐり、日程を延長して1日まで北京で協議したが合意できなかった。その直後の発動決定は中国側の譲歩を求める米政府の強硬姿勢を象徴しているといえそうだ。

 同省は同時に、セーフガード発動を検討している綿セーターなどほかの4品目に対する決定期限を10月1日まで延長すると発表した。中国は7日の米中首脳会談前に繊維協議を決着させたい意向とされるため、中国側に時間的猶予を与える狙いがあるとみられる。

 新たに輸入制限の対象になったのは、ブラジャーのほか合成繊維織物。米政府は今年、既に綿ニットシャツやブラウスなどに制限を発動している。世界貿易機関(WTO)の輸入割当制度が今年1月に撤廃された影響で、安価な中国製衣類の対米輸出が急増。米国内メーカーが幅広い品目で制限を求める事態となっている。(共同)

米FF金利0.25%上げへ 年3.5%に

2005/08/10 The Sankei Shimbun

 米連邦準備制度理事会(FRB)は9日、金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)を開催した。景気拡大を踏まえ、インフレ予防を目的に政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0・25%引き上げ、年3・5%にするとみられる。結果は同日午後(日本時間10日未明)に公表される予定。

 利上げを実施すると、昨年6月に金融引き締めに転じて以来、10回連続となる。これまではすべて0・25%ずつ利上げしてきた。

 米経済は原油高の逆風下でも底堅い成長が続き、グリーンスパンFRB議長も楽観的な見通しを繰り返し示している。市場関係者は、FOMC後の声明が今後の利上げペースにどの程度触れるかに注目している。(共同)

米、30年債発行を来年再開 財政赤字恒常化

2005/08/04 The Sankei Shimbun

 米財務省は3日、いったん停止していた30年物国債の発行を2006年から再開すると発表した。連邦政府が恒常的な財政赤字を抱える中、資金調達手段を多様化するため。最近の長期金利低下を借り入れコストの低減に反映させる狙いもある。

 米政府は財政収支の黒字化にともない超長期債である30年債の発行を01年秋に停止していた。クオールズ次官(国内金融担当)は声明で「最も低いコストで政府借り入れを賄うことができる」と再発行の意義を強調した。

 30年債の再発行は来年1−3月期から半年に1度とする計画で、年間発行額は200億−300億ドル(約2兆2000億―約3兆3000億円)程度となる見通し。

 米国の財政状態は、景気拡大による税収の増加で、短期的には赤字の縮小が見込まれている。しかし、ブッシュ大統領が内政の最重要課題に掲げる公的年金改革では、制度移行のため一時的に巨額の財政負担が必要になるとみられている。このため30年債の発行再開は、中長期的な政府の借り入れ需要に備えた布石の意味もある。

 フランスや英国ではさらに償還期間の長い50年物国債の発行が始まっている。(共同)

米財政赤字22.8%減 05会計年度

平成17(2005)年10月16日 The Sankei Shimbun

 【ワシントン=気仙英郎】米財務省は十四日、二〇〇五会計年度(〇四年十月−〇五年九月)の米財政赤字が前年度比22・8%減の三千百八十六億千五百万ドル(約三十六兆三千億円)となったと発表した。景気が堅調に推移し税収が増えたため、過去最大だった〇四年度の四千百二十八億ドルから大幅改善した。

 ただ、赤字規模は〇四、〇三年度に次いで過去三番目の高水準。〇六年度以降には、今年八月以降に起きたハリケーン被害に対する復興費がかさむため、ブッシュ政権の掲げる〇九年度までの赤字半減の目標達成は難しいとみられている。

 〇五年度の歳入は個人、法人とも税収が増加したため、前年度比14・6%増の二兆千五百四十三億五百万ドルだった。一方、歳出はイラク駐留経費や公的年金などが増加したため、7・9%増の二兆四千七百二十九億二千万ドルとなった。

米貿易赤字拡大 8月、590億2900万ドル

2005/10/14 The Sankei Shimbun

 米商務省が13日発表した8月の貿易収支の赤字額は、モノとサービスの取引を合わせた国際収支ベース(季節調整済み)で590億2900万ドルと前月比1・8%増加、2カ月ぶりに前月を上回った。高値が続く原油価格と景気拡大に伴う輸入の大幅な増加を背景に、過去3番目の赤字となった。

 国・地域別で最大の赤字相手国である対中国分は4・6%増の184億6800万ドルと過去最大を更新。7月に実施した人民元の切り上げは今のところ赤字削減につながっていない。

 1・8%伸びた輸入は総額で過去最大の1672億500万ドル。石油輸出国機構(OPEC)諸国などからの石油関連製品輸入が引き続き増えたほか、中国製繊維製品の輸入も高水準で推移。航空機や自動車輸出が堅調だった輸出も総額で1・7%増の1081億7600万ドルと最大を更新した。

 国・地域別にモノの取引による赤字額(通関ベース、季節調整前)をみると、対日赤字は0・6%減の65億9000万ドルと対中国の約3分の1。欧州連合(EU)は112億9200万ドル、OPECは89億8300万ドルと、いずれも過去最大となった。(共同)

米、0.25%の利上げ 物価抑制で11回連続

2005/09/21 The Sankei Shimbun

 米連邦準備制度理事会(FRB)は20日、連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、原油急騰によるインフレ抑制に向け政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.25%引き上げ年3.75%とすることを賛成多数で決定、直ちに実施した。利上げは昨年6月に金融引き締めを開始して以来、11回連続で計2.75%分に達した。

 FOMC声明は、ハリケーン「カトリーナ」による被害で米経済の「支出や生産、雇用が短期的に後退するだろう」としながらも「持続的な脅威ではない」と明言。一方で、エネルギー価格の急上昇が「インフレ圧力を高める可能性がある」と強調し、金利引き上げにより物価上昇を予防する姿勢を鮮明にした。

 声明は同時に「金融緩和が経済活動を支援し続ける」として「慎重なペース」で引き締めを続ける方針を重ねて表明。次回会合(11月1日)でも利上げを続行するとの見方が金融市場で優勢だ。

 ただFF金利は既に景気に中立的とされる水準(3―5%)に届いており、今後ハリケーンの影響が経済指標に相次いで表れると予想される中で、FRBが利上げ継続と停止をめぐり難しい判断を迫られるのは必至だ。

 FRBは市中銀行への貸出金利である公定歩合も0.25%引き上げ年4.75%とすることを承認した。(共同)

米、0.25%追加利上げ FF金利3.25%に

2005/07/01 The Sankei Shimbun

 米連邦準備制度理事会(FRB)は30日、連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.25%引き上げ年3.25%とすることを全会一致で決定、即日実施した。決定後に発表されたFOMC声明で、市場関係者の間では金利引き上げ打ち止め感が遠のき、次回8月以降も追加利上げする観測が強まった。

 利上げは昨年6月末に引き締めへ転じてから9回連続で計2.25%分。すべて0.25%刻みで、景気拡大下でのインフレ予防と、依然低い金利水準の修正が狙いだ。

 今回の追加利上げでFF金利は約4年ぶりの水準に回復した。

 FOMC声明は「慎重なペース」で金融緩和を解除する方針を重ねて表明。「金融政策はなお緩和的」と明記するとともに、原油高騰でも景気が「引き続き堅調に拡大している」と強気の見方を強調している。金融市場関係者の間ではFOMCでの追加利上げは継続するとの予想が優勢だ。

 米経済は金融引き締めから1年が経過しても実質4%程度の堅調な成長と雇用増を維持。予想外の長期金利低下で引き締め効果がそがれているものの、物価も比較的安定しておりFRBのかじ取りはひとまず成功を収めた格好だ。

 FRBは同時に、市中銀行への貸出金利である公定歩合も0.25%引き上げ年4.25%とすることを承認した。(共同)

 米連邦公開市場委員会(FOMC)の声明要旨は次の通り。

 一、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.25%引き上げ、年3.25%にすることを決定した。

 一、金融政策はなお緩和的であり、生産性の向上と相まって経済活動を支援し続ける。

 一、エネルギー価格は一段と上昇したが、経済は引き続き堅調に拡大している。

 一、労働市場の状況は緩やかな改善が続いている。

 一、インフレ圧力は高いままだが、長期的なインフレ期待は十分抑制されている。

 一、適切な金融政策により、持続的成長と物価安定の達成に対する上振れと下振れのリスクはほぼ等しくなるはずだ。

 一、基調的なインフレは比較的低水準にとどまると見込まれ、金融緩和は慎重なペースで解除できると信じる。物価安定維持の責務を果たす上で必要な場合は、経済見通しの変化に対応する。

 一、政策決定は全会一致。

 一、公定歩合を0.25%引き上げ、年4.25%にすることを承認した。(共同)


米財政赤字:10年間で213兆円に 04年度から 議会試算

2003年03月08日 Mainichi INTERACTIVE
 【ワシントン竹川正記】米議会予算局(CBO)は7日、04会計年度(03年10月−04年9月)予算教書を受け、04年度から10年間の財政赤字総額が1兆8200億ドル(約213兆円)にのぼるとの見通しを示した。テロ防止の安全保障支出増大に加え、ブッシュ大統領が提案した約6700億ドル規模の追加景気対策や高齢者医療保険制度改革などが財政を圧迫すると予想している。

 また、単年度では04年度が3380億ドルの赤字と予測。05年度以降は赤字幅が減少していくものの、単年度黒字化は見込めないとの見方だ。試算には、対イラク攻撃の戦費は含まれておらず、米政府が開戦に踏み切った場合には、財政赤字が1千億ドル規模で上乗せされるのが必至だ。今後、議会などで、ブッシュ政権の財政運営をめぐって激しい批判が起こることも予想される。

米失業率、5.8%に上昇 エコノミスト予想より悪化

2003年03月07日 asahi.com
 米労働省が7日発表した2月の失業率は5.8%となり、前月より0.1ポイント悪化した。同時に発表された非農業部門の就業者数は、1月中に30万8000人も減少し、単月としては01年11月以来の大幅な減少となった。事前のエコノミストの平均予想よりもはるかに悪く、市場にはショックな数字だ。

 1月は就業者数が18万5000人の増加(改定値)で、失業率も低下していた。雇用情勢の急変は、イラク情勢が緊迫し、米景気に暗い影を投げかける中、企業が雇用に慎重になっていることが示されている。

 就業者の内訳では、製造業が5万3000人の減少、小売業などサービス部門も20万4000人の大幅な減少だった。

エンロンが示したアメリカ型経済の欠陥

2002年02月11日 田中 宇
 さる1月25日未明、アメリカ・ヒューストン市の高級住宅街の路上で、巡回中の警察官が、駐車していた新車のメルセデス・ベンツの車内で一人の男性が死んでいるのを発見した。男性の頭には銃弾が打ち込まれており、手には38口径の拳銃が握られていた。傍らには遺書らしき書きつけも置いてあり、警察は自殺と断定した。

 男性は43歳のクリフォード・バクスターという人で、昨年5月までエンロンの副会長をしていた。昨年12月初めにエンロンが倒産し、捜査当局や議会が不正経理などについての調べを始めていた。バクスターは、自分に対する不正の嫌疑に耐えられず、自殺したのではないか、と報じられた。バクスターは、辞任前にエンロンのストックオプション(自社株を買う権利)を行使して3500万ドルを手にしていた。

 ところがその後、エンロン関係者の中から、バクスターは自殺するはずがないのではないか、という声が聞かれ出した。昨年5月にバクスターがエンロンを辞めたのは、自社の経理処理に不正があるのに会長らがそれを改めようとしないことを指摘した上での抗議の辞任だった。

 バクスターが死んだのは、議会に証人喚問される直前で、精神的な圧迫があったのか、ふだんはタバコをあまり吸わないのに、ヘビースモーカーになっていたという。こうした状況は「自殺」を思わせるものだが、その一方で彼は死の何日か前に「ボディガードを雇わないといけないかもしれない」と漏らしていたという。

 別の報道では、バクスターは知人から「ボディガードを雇った方がいいのではないか」と忠告されたが、不要だと答えていたという。とはいえこの報道でも、バクスターの家族は皆、彼の死は自殺ではないと考えている、と指摘している。(関連記事)

 バクスターをよく知っているエンロンの社員は、彼は嘘が嫌いなまじめな人で、だからこそ自社の不正経理の拡大が耐えられなかったのだ、と考えている。そんな彼なので、議会や捜査当局が話を聞かせてほしいといえば、自殺するのではなく、逆にエンロンの不正の仕組みを洗いざらい話すのではないか、というのだった。

 バクスターは、エンロンの内情を「知りすぎていた」から、それをばらされることを恐れた何者かが彼を殺したのではないか、と疑うエンロン社員もいた。

 遺体が発見されたときの状況にも不審な点があった。一つは拳銃が手に握られていたことで、頭を撃って自殺した場合、銃弾発射の反動で拳銃は手から離れ、握られているのではなく近くに転がっている状態で発見されるはずだ。また、その拳銃は地元テキサス州で登録されておらず、誰の拳銃なのか分からないままである。

 また、遺体を乗せた車が発見されたのは、大通りの真ん中で、車はUターン用の中央分離帯の切れ目に停車していた。自殺する場所として、そんな場所を選ぶ人がいるだろうか。また、警察は「今後の捜査のため」を理由に、現場で見つかった遺書らしき書きつけを公開していない。(関連記事)

 ▼CEO交代はエンロン創設者の責任回避策?

  バクスターが昨年5月に抗議の辞任をしたということは、そのときすでにエンロンの内情はかなり行き詰まっていたということが考えられる。

  エンロンの創設者でCEOだったケニス・レイは、一昨年から自分が保有する自社株を売り始めていたことが分かっており、倒産後、これは自社の崩壊を見越した「売り逃げ」だったのではないかと疑われている。レイは自社株の売却で1億ドル以上を手にしている。

  その一方で一般の従業員は、給料の一部としてもらった自社株を売ることを社内規定で禁じられ、倒産とともに自社株が急落するのを見ているしかなかった。

  昨年2月には、レイはCEO(経営責任者)の座を、自分の部下だったジェフリー・スキリングに譲り、自分は会長に退いた。ところがスキリングは昨年8月、譲り受けたCEOの座を突然手放し、退職してしまった。その翌日、経営責任者に戻らざるを得なくなったレイに宛ててエンロン幹部がメールを出し、不正な会計処理を止めるよう忠告している。

  レイは、不正な会計処理を始める前に、自分がその責任を取らずにすむようにCEOをキスリングにやらせることにしたが、やがてキスリングがそれに気づき、策略にはまりたくないので辞任した、という筋書きを感じ取れる。

  エンロンのドル箱は、石油や天然ガス、電力の先物販売だった。石油やガスは国際相場の上下によって価格が変動するが、電力会社や工場などは、相場の上下に合わせて自分が売っている電気や製品の値段を上下させることができないので、石油などの仕入れ値が一定になることを望んでいる。

  エンロンはその需要を使い、何カ月か先に決まった値段で石油や電力を売ることを契約してお金をもらう先物ビジネスで利益を出し、さらにその先物契約の権利を売買する市場を作り、自ら売り買いして利益を増やした。

 ▼ウソだった高成長

  こうなると、商品が「エネルギー」だというだけで、やっているビジネスの仕組みは株式や債券の取引と同じだった。株や債券の市場には、1980年代に不正が多かった反動で厳しい監視があり、不正防止策がとられているが、エンロンが90年代後半に急拡大させたエネルギー先物市場は、政治献金のばらまきが功を奏し、不正防止強化策の立法が進まなかった。

  ところが、一昨年後半からの景気後退でアメリカのエネルギー需要が縮小し始め、エンロンのビジネス戦略は破綻に向かった。エンロンは、先物の契約が取れた段階で利益を計上してしまっていたが、実際には相場が予想と逆の方向に動いたときは損失が出てしまっていた。

  エンロンは3000社もの子会社(決算に反映させなくて良い関連会社)を作って損失をそこにつけ替え、その損失を子会社間で移動させて紛らすことで、利益の部分だけを外部に見せていた。だが、景気後退と原油価格の低下によって損失が膨らみ、隠せない状態となった。(関連記事)

  利益が出ている間は、株価が上がり、従業員は給料の中の現金支給を減らして自社株を買う権利(ストックオプション)をもらうことを希望し、会社にとっては経費削減ができた。ところが損失が出てしまうと株価が下がり、従業員にも現金支給が必要となり、経費が増えてしまう。銀行も金を貸すときに高い金利を要求するようになり、やがて貸してくれなくなってしまう。

  だからエンロンの経営者には粉飾決算が必要だったが、昨年初め以降、それがますますひどくなり、会社の首脳が危機を感じて次々と辞める事態となったのだった。9月のテロ事件後、アメリカの景気はいっそう悪くなり、10月には粉飾によって損失を隠すことができなくなり、4年前の1997年から実は利益が出ていなかったのだとする決算の修正を発表するに至った。

 エンロンはまさにこの4年間、利益を毎年急増させる決算を発表し、株価を急上昇させ、経済雑誌や証券アナリストから絶賛されていた。エンロンは自ら、そのすべてがウソだった、と発表したのだった。これ以後、エンロンの問題は犯罪の色を帯びることになった。

 エンロンがどのような経緯で破綻したかについては、ホワイトハウスが情報公開をできる限り防ごうとしているため、明らかにされていない部分が大きい。米政府の首脳たちが911テロ事件の発生を事前に知っていた可能性があるということと合わせて考えると、エンロンの破綻は911後の石油相場の動きと関係している可能性もある。

▼グローバルスタンダードの崩壊

 エンロンの破綻は、単に一つの大企業がつぶれたということを越えた、世界的に重大な意味を持っている。「グローバルスタンダード」と呼ばれている経済システムの根幹をなす、株式投資、ストックオプション経営、会計事務所などに対する信頼が、この事件を機に失われてしまったからである。

 近年のアメリカでは、株式投資は老後の年金など、一般の人々の人生に不可欠な部分のお金の確保に使われてきた部分が大きい。エンロン株は、アメリカで最も優良な銘柄の一つとされていたため、それを組み入れた投資信託や年金基金が多かった。株式投資は、アメリカ経済の成長を支える愛国的な行為である、と思われていた。

 ところが、超優良企業のはずのエンロンは、実は八百長で株価をつり上げていた。しかも政府の首脳にはエンロンの関係者が多く、議会がエンロン関係の情報公開を求めても、大統領府はそれを拒否している。

 政府や財界を信じて株式に財産を託していた人々は、生活資金を失っただけでなく、株を買うことは愛国的な行為などではなく、政府と企業にカモにされることなのだと考えるようになっている。

▼露呈したストックオプション経営の限界

 エンロン破綻が持つ世界的なもう一つの意味は、アメリカから世界に広がった、ストックオプションなど株式を使って会社のコストを下げる経営方法が、株価が下落する景気後退の時期には会社に大打撃を与えてしまうと分かったことである。

 アメリカの景気が悪くなったため、ストックオプションを活用して急成長した(ように見えた)会社が、エンロン以外にも次々と破綻している。たとえば海底ケーブル事業のグローバル・クロッシングという会社がそうである。この会社の首脳は、自社の破綻を予見して自分の持ち株を売り、巨額の利益を手にしたインサイダー取引の疑いを持たれている。

 ついこの間まで最新の経営手法だと思われていたストックオプションに頼る経営が、実は株価が右肩上がりの間しか通用しないバブル経済そのものだという指摘は、以前から出ていた。

 たとえば、イギリスの経済専門家によると、ネットワーク機器の優良メーカーとされるアメリカのシスコシステムズは、1998年に13億5000万ドルの利益を計上したが、もしシスコが給料や報酬のすべてをストックオプションではなくお金で払っていたとしたら、この年の決算は49億ドルの赤字になっていた、と試算されている。

 こうした警告が発せられていたものの、景気が良い間は、ストックオプションが一種の粉飾決算の容認であるという見方をする人は少なかった。こうした状況は今後変わる可能性が大きい。

▼会計事務所の腐敗

 もう一つ「会計事務所」に対する信頼が失われたことも重大だ。エンロンが数年間にわたって行っていた損失のつけ替えによる利益の水増しは、合法と違法の間のグレーゾーンにある会計手法で「積極型会計」(aggressive accounting)などと呼ばれているが、これは会計事務所が入れ知恵し、協力しない限り、実現するものではない。

 エンロンの会計を担当していたのは、アーサー・アンダーセンというアメリカ最大級の会計事務所の一つである。アンダーセンの担当者は、エンロンの不正が発覚する直前の10月、エンロン社内の関係資料をシュレッダーにかけて粉砕するよう指示していた。

 このことは、当局側がこの指示のメモを押収したため発覚したが、アンダーセン本社は、担当者が個人的にやったことだとして、この担当者を解雇して話を終わらせようとしている。だが、アンダーセンは前述のグローバル・クロッシングなど他の倒産会社でも「積極型会計」の手法をとっており「なるべく多くの仕事を依頼してもらうため、企業側を喜ばせようと違法すれすれの会計を行ったに違いない」と米議会などから攻撃されている。

 会計事務所は、企業が不正をしないように監視するのが役割なのに、アンダーセンのような優良とされていた世界規模の会計事務所が不正に荷担していたということは、エンロン以外にも無数の会社が不正経理を行い、それを会計事務所が承認していた可能性がある。エンロン事件は、アメリカ経済を正しい状態に維持するための、いくつもの機能の信頼を失墜させてしまったことになる。

▼とられない再発防止策

 このような状況に対してブッシュ政権がとり得る選択肢は、(1)不正を取り締まって再発防止策を立法する、(2)何とかして景気を上向かせてこれ以上の不正暴露を防ぐ、(3)米国民の関心を他にそらす、といったところだろうが、(2)と(3)は行われている反面、(1)は表向きにしか行われていない。

 911テロ事件の発生を誘発したことは、国民の関心を他にそらし、政府批判するマスコミを売国奴扱いできるという利点があった。エンロン事件の報道が過熱してくると、国防長官が「911より大きなテロが今後あるかもしれない」などと発表したりしている。

 また最近、米当局は「景気が上向いてきた」とさかんに発表しているが、そこにどの程度政治的な統計数字の歪曲が含まれているか、猜疑心を感じるところだ。そして「再発防止策」はとられるかわりに、大統領府は議会の真相究明の動きを妨害している。

 今後アメリカの景気が回復した場合、これ以上の不正の暴露が防がれ、政府批判も下火になるかもしれない。しかし、それはアメリカの政財癒着の構造が温存されることを意味している。今回はごまかせても、いずれ破綻するだろう。

 アメリカ政府はこれまで、日本や他のアジア諸国などの経済体制を「コネ重視型資本主義」(crony capitalism)と呼び、「腐敗体質や情報公開不足を改めない限り、アジアの成長はない」などと主張してきた。

 アジア通貨危機の後、腐敗体質を改めるためだとしてIMFがとった政策が、実はアジア諸国の経済を破壊するばかりだったということが指摘された後も、アジア経済の問題点は政財の癒着体質と情報公開不足にあるというアメリカ政府の主張自体は正しいとされていた。ところが、エンロン事件が示したのは、アメリカ経済には、下手をするとアジア以上に腐敗と癒着体質、情報公開不足が多い、ということだった。

 アメリカ政府が、エンロンのような政界と癒着した自国企業の情報公開不足を大目にみていた反面、アジア諸国に対しては厳しい批判を続けていたという事実は、情報公開や腐敗防止策をさせることでアジアの企業を弱体化させるのが真の目的だった、という見方が正しかったことを表している。

米、GDP成長を10年平均で3.2%予想

2001.03.01(12:59)asahi.com
 米政府は28日に発表した2002年度(2001年10月―2002年9月)の予算教書の中で、2001年(暦年)の国内総生産(GDP)の実質成長率を2.4%と予想した。2002年から10年間の財政見通しの前提となるGDPの実質成長率は、平均3.2%と見積もった。

 史上最長の10年近い景気拡大をおう歌した米国経済は、急速に成長が鈍化し、現在はゼロ成長近辺にあるとみられている。予算教書は、今後10年で5兆6000億ドルにものぼる財政黒字を予想した上で、それを減税や民間が保有する政府の債務の削減などにあてる計画。しかし、米国の景気低迷が続けば税収が減り、財政赤字に転落する危険性が指摘されている。

 記者会見をしたダニエルズ行政管理予算局(OMB)長官は「予算教書は、非常に控えめな経済見通しに基づいている。成長率の予測は民間エコノミストの平均値よりも低く、GDPに対しての税収の見積もりも非常に慎重に行った」と強調した。

グリーンスパンFRB議長、追加利下げを示唆

2001.03.01(10:31)asahi.com
 米連邦準備制度理事会(FRB)のグリーンスパン議長は28日、米下院金融サービス委員会で証言を行い、「1月の(2回にわたる)利下げ後も、米経済の低迷が続くリスクがある」と述べ、追加的な利下げが必要という考えを示唆した。目先の米景気については2週間前の上院での証言よりもやや悲観的になった。ただ、米経済の先行きを楽観視する見方も示し、市場ではFRBが3月20日の連邦公開市場委員会(FOMC)を待たずに緊急利下げに踏み切る可能性は薄らいだと受けとめられ、相場は続落した。

 半年に1度の議会証言では、上下院とも同じ内容になるのが普通だが、グリーンスパン議長は今回の証言で「消費者心理の動向を注意深く見守る必要がある」という表現をあらたに入れ、1月の利下げ後も好転する様子をみせない消費物心理に懸念を示した。

 また、金融市場で資金の出し渋りが見られることについて、前回の表現にあった「一部は回復した」とした部分を削り、「市場参加者は依然として神経質になっている」と述べた。

 一方で、同議長は「自動車や住宅販売はわずかに弱まっているだけ」との楽観的な見通しも示し、これを受け株式・債券市場には「FRBは定例のFOMCまで利下げを見送る」との見方が広がった。

米おもちゃネット販売「eトーイズ」 破産法申請適用へ

2001.02.27(19:49)asahi.com
 米おもちゃ販売でネット業界大手「eトーイズ」は26日、経営が行き詰まったため近く連邦破産法適用の申請をする、と発表した。ネット業界で草分け的な存在だったが、競争激化と米景気減速で資金繰りが急速に悪化し、ネットバブルの縮小が続いていることを浮き彫りにした。

 1996年の創業後、人件費などを抑えるオンラインビジネスの利点を生かして急成長し、この分野でネット業界トップに躍り出た99年は株価も80ドル台に急騰。その後は業績悪化で急落し、この日は9セントに落ち込み、同社は株式について「価値がない」と警告した。赤字続きのまま、債務は2億7400万ドル(約320億円)に膨張。投資家にそっぽを向かれ、買収してくれる流通企業もみつからなかったので、3月8日をめどにネット上のサイトを閉鎖し、約1000人いた全従業員を解雇する。

 過去3年間の損失は4億3000万ドルに達した模様だ。他社より値段が高ければ、その分を払い戻す商法などで拡販の負担が増し、配送センターの建設などで事業コストも膨らんだ。おもちゃ販売大手トイザラスがネット小売最大手アマゾン・ドット・コムと組んで攻勢を強めるなど、競争激化のなかで望みをかけた昨年の歳末商戦期の売上高が予想の半分ほどの1億3000万ドルにとどまり、景気減速がだめ押しをした格好だ。

FRB利下げ観測、5.0%の見方有力に

2001.02.27(22:39)asahi.com
 米連邦準備制度理事会(FRB)がいつ追加利下げに踏み切るかに市場の関心が集まっている。3月20日に予定されている次の連邦公開市場委員会(FOMC)を待たずに緊急利下げするとの観測が強まっており、短期金利の誘導目標であるフェデラルファンド(FF)レートを0.5%幅切り下げ、年5.0%にするとの見方が有力だ。

 米景気の急速な悪化を受け、FRBは1月3日に過去10年で3回目の緊急利下げを実施。1月31日の定例のFOMCでも利下げをし、FFレートは合計1.0%幅切り下げられた。

 先週から市場の一部で緊急利下げの可能性が取りざたされていたが、注目を集めたのは、元FRB理事で米投資銀行ベア・スターンズのチーフエコノミスト、ウェイン・エンジェル氏が23日に出したリポート。「28日にグリーンスパン議長が下院で議会証言するまでに、0.5%幅の利下げに踏み切る可能性が60%」と予想した。

 グリーンスパン議長は13日の上院での議会証言では、追加利下げを示唆しながらも、やや楽観的な経済見通しを示していた。通常、下院での議会証言の原稿は上院と同じものを使うが、FRBは26日になって、「28日の証言内容を修正する」と発表。これを受けエンジェル氏が利下げの確率を80%に引き上げるなど、緊急利下げ観測に拍車がかかっている。

米大統領補佐官が「強いドル」支持を改めて強調

2001.02.22(18:15)asahi.com
 リンゼー米大統領補佐官(経済担当)は21日、ワシントン市内で開かれた記者会見で「我々はみな『強いドル』を支持している」と話した。オニール財務長官の発言で為替市場が混乱したため、新政権内の為替政策は一致していることを強調した。

 オニール財務長官は先週、ドイツ紙とのインタビューで「強いドルは強い経済の結果であって、強いドル政策を追求しているわけではない」と述べた。イタリアで主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)が開かれる直前だったため、市場は政策変更のサインと受け取って、一時ドル相場が大きく反応した。

 オニール財務長官は会議終了後の記者会見で「もし強いドル政策を変更するなら、ヤンキーズの球場を借り切って政策変更を発表しますよ」と話し、火消しに躍起となった。

 「強いドル」が米国外からの投資を呼び込み、米経済の力強い成長を支えるというのが、前クリントン政権のルービン財務長官以来の考え方だ。これに対し、アルミ会社の経営者だったオニール氏は輸出振興のために「ドル安」を望むのではないか、とのうわさがつきまとってきた。

 リンゼー大統領補佐官は「私の知る限り、オニール財務長官は、ヤンキースタジアムを借りていない」と冗談めかしながら、オニール財務長官との違いがないことを強調した。

FRBグリーンスパン議長が追加利下げを強く示唆

2001.02.14(02:51)asahi.com
 米連邦準備制度理事会(FRB)のグリーンスパン議長は13日午前、米上院銀行委員会で半年に1度の証言を行った。当面の米国景気について「下ぶれリスクが高い」と発言。また、企業の生産調整ペースが早まっていることから「FRBは以前より積極的に対応する必要がある」と述べ、追加利下げに踏み切る考えを強く示唆した。2001年10―12月期の経済成長率の予想も前回(2000年7月)より大幅に下方修正した。

 一方で、長期的な米国経済について「現在の調整が終われば経済活動は活発化する」とも述べ、現在、ゼロ成長に近いとされる米景気の調整局面も、2001年後半には回復基調に乗るとの見方を示した。

 FRBは2001年1月3日と1月31日に利下げを行い、主要短期金利を合計1.0%引き下げた。議長は証言の中で、エネルギー価格の高騰が家計や企業の購買力の足を引っ張ったなどの理由で、2000年夏以来の景気減速も加速したなどと分析。「積極的な金融緩和に踏み切った」と説明した。

 さらに消費者心理が落ち込む可能性や、金融機関の貸し渋り、海外の経済の減速などが、景気をさらに下降させるリスクがあることも認めた。

 ただ、情報技術(IT)の進展は生産性を高めており、遠からず、消費や設備投資を再び活発化させ、過剰在庫は比較的短期間で望ましいレベルに落ち着くだろうと、今後については楽観的な見方を示した。

 FRBは前回(2000年7月)の報告で、2001年の実質国内総生産(GDP)成長率を前年比で3.25―3.75%(2001年10―12月期の前年比年率換算)と予想したが、今回は、2.0―2.5%と大幅に下方修正し、景気認識の厳しさを示した。

ルービン氏が大型減税批判

2001.02.12【ニューヨーク11日=共同】The Sankei Shimbun
 ルービン元米財務長官は十一日付のニューヨーク・タイムズ紙に寄稿、ブッシュ大統領が提案した大型減税について「財政政策として極めて深刻な誤りだ」と厳しく批判、財政規律を堅持するよう促した。

 ルービン氏は、一兆六千億ドルを超える減税は連邦予算の赤字を増大させ、結果的に「金利上昇と、消費者と産業界の信頼感の減少を招く」と指摘した。

 その上で、現在の景気後退への対応策としても「減税は有効な景気刺激策とはならない」と延べ、米国経済が八○年代後半の不況期から立ち直った経験を踏まえ「ようやく獲得した財政規律を堅持し、国家財政の健全性を著しく損なうような過度の減税は行うべきでない」と主張した。

 ルービン氏は財政黒字の使途について、国債償還と中低所得層を対象に絞った適切な規模の減税の二本立てが望ましいとした。

モトローラ、従業員削減新たに4000人

2001.02.10【ニューヨーク9日=青木伸行】 The Sankei Shimbun
 米通信機器大手のモトローラは九日、半導体部門で最大四千人を年内に削減すると発表した。削減する四千人は全従業員(十四万人)の約三%、半導体部門(三万四千人)の約一二%に当たる。在庫過剰などによる半導体の不振に伴う措置と説明している。

 モトローラは製造部門の統合など広範な経費削減策を計画しており、今回の削減とは別に、イリノイ州の携帯電話工場を閉鎖し二千五百人を解雇すると先月発表したばかり。

 同社は今年の半導体部門の収益見通しを、当初の前年比三五−四〇%増から同一〇−一五%増に下方修正していた。

米イートイズ、全員解雇へ ネットでがん具販売

2001.02.06【ニューヨーク5日=共同】 The Sankei Shimbun
ピーク時80ドルの株価も1ドルに

 インターネットによるがん具販売の米イートイズは五日、現在残っている従業員二百九十三人全員に解雇を通告したと発表した。販売不振による資金繰りの悪化で、三月末ごろには手元資金が枯渇するためとしている。

 同社は合併や資産売却の道を探るとしているが、全員解雇で事業継続の道はほぼ消えたとみられ、米ネット株バブルの崩壊が、有力ネット企業に引導を手渡す典型例となりそうだ。

 同社は昨年のクリス}ス商戦で、ネット小売り大手のアマゾン・コムなどと激しい販売競争を展開。しかし折からの景気減速などで十分な売り上げを達成できず、年明け直後には約千人の従業員のうち七百人の解雇を発表していた。

 店頭株式市場ナスダックでのイートイズの株価はピーク時には八十ドル以上あったが、ここ一カ月以上、一ドルを割り込んでいる。

米大統領、1兆6千億ドルの大型減税提案へ

2001.02.06(11:38)asahi.com
 ブッシュ大統領は5日、大幅な所得税減税計画を今週後半に議会に提案すると発表した。最高税率が約40%の所得税を33%に引き下げ、5段階ある税率を4段階に簡素化するなど、選挙中に公約した減税案とほぼ同じ内容。大統領選の総得票数でゴア氏を下回ったにもかかわらず、強い姿勢に出た。議会民主党の中には「富裕層を利するものだ」という反発が強く、そのままの形で実現する可能性は小さい。

 ブッシュ大統領は「夫婦と子供2人の家庭で年間1600ドルの減税となる」と効果を強調した。2002年から10年間の減税とする場合、規模は1兆6000億ドルになると見積もられている。ブッシュ大統領は、急ブレーキのかかっている米景気を回復させるため、減税を今年1月にさかのぼって適用したい意向も示した。

 所得税減税のほか、相続税の段階的な廃止や、共働き家庭に対する税負担の軽減などを含む。詳細は8日に発表される見通し。

 現在、米国の所得税制は、15%、28%、31%、36%、39.6%の5段階の累進課税となっている。ブッシュ大統領の案は、これを10%、15%、25%、33%と全体的に引き下げるとともに簡素化するというもの。大統領選での最大の争点となり、ゴア副大統領は「1%の富裕層が42%の減税分を得る」と批判していた。


米の失業率、1月は4.2% 99年9月以来の高水準

2001.02.03(00:28)asahi.com
 米労働省が2日に発表した1月の雇用統計によると、失業率は前月より0.2ポイント上昇し、4.2%となった。1999年9月以来、1年4カ月ぶりの高い水準となり、米国の景気の減速を裏付けた。

 米連邦準備制度理事会(FRB)は、1月中に2度の利下げを行ったが、今後の雇用情勢もみながら、さらなる利下げを検討していくことになる。

 ただ、同時に発表された非農業部門就業者数は、前月比で26万8000人の増加となり、市場の予想を大幅に上回った。民間部門が21万4000人、政府部門が5万4000人の増加だった。前月の就業者数の増加が小さかった反動との見方もあるが、一方的に雇用情勢が悪化しているわけではないことも示している。

 民間の内訳をみると、製造業が6万5000人減少した一方、建設業が14万5000人、サービス業が8万1000人増加した。すでに景気後退入りしているといわれる製造業の不振がはっきりしたが、人手不足の産業もあり、米景気は「まだら模様」といえる。

 賃金インフレをみる上で注目されている平均時給は、前月と同じ14.02ドルで、インフレ懸念は依然、小さい。

米経済成長率、1.4%に減速 昨年10―12月期

2001.01.31(23:10)asahi.com
 昨年10―12月期の米国の国内総生産(GDP)の実質成長率は、年率換算で前期比1.4%増(速報値)にとどまった。米商務省が31日、発表した。昨年7―9月期の2.2%成長を下回り、1995年4―6月期の0.8%成長以来、5年半ぶりの低さとなった。企業の設備投資が約9年ぶりに前期比減少に転じるなど、米国景気の急速な減速を裏付けた。

 米国では今年に入って、さらに消費者心理の冷え込みがはっきりしてきている。米連邦準備制度理事会(FRB)が31日午後2時すぎ(日本時間1日午前4時すぎ)に、0.5%幅、場合によってはそれ以上の大幅利下げに踏み切る、と市場関係者はみている。

 昨年10―12月の数字で顕著なのは、企業の設備投資が前期比1.5%減となり、92年1―3月期以来のマイナスとなったことだ。昨年7―9期が7.7%増だったのに比べると、企業が急速に投資に慎重になったことが読みとれる。住宅投資も2.5%減で2期連続の減少となった。

 一方、GDPの3分の2を占める個人消費も2.9%増にとどまり、7―9月期の前期比4.5%増から減速した。

 物価動向を示すGDPデフレーターは前期比2.1%の上昇で、物価は落ち着いている。

 昨年全体のGDPの実質成長率は、年前半の高成長のおかげで、年5.0%成長となり、84年の7.3%成長以来、16年ぶりの高さとなった。

米0.5%追加利下げ濃厚 FRB議長、景気減速見通し

2001.01.26(23:32)asahi.com
 米連邦準備制度理事会(FRB)は30、31日の両日、定例の連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、短期金利の誘導目標となるフェデラルファンド(FF)金利の水準を決める。FRBは今月3日に緊急会合を開き、0.5%幅下げて、年6.0%としたばかりだが、その後も景気の減速を示す報告が相次ぎ、追加利下げは確実な情勢。むしろ市場の関心は下げ幅だ。グリーンスパンFRB議長が25日の議会証言で、景気の現状を悲観的に見通したため、0.25%より0.5%という大幅引き下げが有力とされている

 「米経済は急速に減速しており、現在はゼロ成長に近いだろう」。グリーンスパン議長は25日、上院予算委員会の公聴会でこう述べ、景気が失速に近い状態であることを分析してみせた。米経済の成長率は、昨年4―6月期で5.6%と高かったのに対し、7―9月期で2.2%と、潜在成長率といわれる3―3.5%を下回った。10―12月期は、さらに低成長となるのが確実だ。

 同議長は25日、「インフレ圧力は例外的に小さい」とも述べたため、「月末の利下げは0.5%という大幅なものに間違いない」(エコノミストのデビッド・ジョーンズ氏)との観測が強まり、債券相場が急騰(利回りは急低下)した。長期金利の指標となる30年物の利回りは、前日引け水準を0.07%下回る5.59%で取引を終えた。

ネット部門の人員17%削減へ 米NYタイムズ

2001.01.08(12:58)asahi.com(時事)
 米新聞大手のニューヨーク・タイムズ社は7日、コスト削減策の一環としてインターネット部門「ニューヨーク・タイムズ・デジタル」で従業員の約17%に相当する69人を削減すると発表した。

 米景気の減速を背景とした最近の広告収入の減少に対応した措置。同部門は、同社が発行するニューヨーク・タイムズ紙などのサイトを運営しているが、赤字となっている。

昨年12月は13万3000人削減 米企業

2001.01.05 【ニューヨーク4日=共同】The Sankei Shimbun
 昨年十二月の米企業の人員削減計画は、減速する米景気に対応して急増、前年同月比約三倍の十三万三千七百十三人と、統計をとり始めた一九九三年以降、最大になったことが、米人材サービス会社のチャレンジャー・グレイ&クリスマスが四日発表した調査結果で分かった。

 昨年一年間の削減計画は、前年比九・一%減の六十一万三千九百六十人。しかし、昨年十−十二月期は、前年同期の約一・九倍の二十二万千六百六十四人で、景気減速が鮮明になった昨年後半以降に企業が削減数を増やしたことが分かる。

 昨年十二月は、米小売りチェーン大手モンゴメリーウォード(イリノイ州)の倒産による約二万八千人の従業員解雇の発表や、自動車最大手のゼネラル・モーターズ(GM)の約一万五千人のリストラ発表など大型の人員削減計画が相次いだ。

 業種別では、小売業の三万九千七百三十一人が一番多く、自動車産業が続いた。

FRB、公定歩合を0.25%再利下げ 年5.5%に

2001.01.05(11:51)asahi.com
 米連邦準備制度理事会(FRB)は4日理事会を開き、市中銀行に対する貸出金利である公定歩合を0.25%幅引き下げ、年5.5%にすると発表した。FRBは3日、短期金利の誘導対象にしているフェデラルファンド(FF)金利を0.5%幅引き下げ年6.0%に、公定歩合を0.25%幅引き下げて年5.75%にしたばかり。公定歩合の追加の引き下げにより、FFレートと引き下げ幅をあわせた。

 米国では市場金利全体に大きな影響を与えるFFレートの変更が注目されており、公定歩合は象徴的な意味合いが強い。FRBは3日に緊急の連邦公開市場委員会(FOMC)を開きFFレートの変更を決めたが、同日の声明で、理事会決定事項である公定歩合をさらに0.25%幅引き下げる用意があることを発表していた。公定歩合の変更は、地区連銀が理事会に対し承認を要請する形で行われ、理事会の前日までに議題にあげることが必要で、今回は地区連銀からの追加の利下げ要請を承認した。

 3日の公定歩合の引き下げが0.25%幅にとどまったことは、地区連銀のトップとFRBのグリーンスパン議長との間で、FFレートの0.5%幅の引き下げが事前に話し合われていなかったことを示している。市場関係者は「3日のFFレートの0.5%幅の引き下げが、グリーンスパン議長の強い指導力で急きょ決まったことを示すものだ」とみている。

NY株急騰、緊急利下げでナスダックは史上最大の上げ

2001.01.04(11:56)asahi.com
 3日のニューヨーク株式市場は、米連邦準備制度理事会(FRB)の緊急利下げを受けて相場が急騰。ハイテク株の多いナスダック店頭市場の総合指数は、前日比で324.83ポイント高い2616.69ポイントと、昨年12月半ば以来、約半月ぶりに2600ポイント台を回復して引けた。上げ幅、上昇率(14.17%)ともに過去最大。大企業中心のダウ工業株平均の終値も、同299.60ドル高い1万945.75ドルと、11月上旬以来、約2カ月ぶりに1万900ドル台を回復した。

 市場関係者の間では、今月中に緊急利下げがあるとの観測も出ていたが、「年初の大幅な金利引き下げは驚き」(米国株トレーダー)と受けとめられ、利下げが発表された午後1時(日本時間の4日午前3時)直後には、前日の急落で、割安感の出ていたハイテク株に買いが殺到。ナスダック指数は一気に300ポイントを超えて上昇した。

 「利下げによって企業の資金調達コストが軽減され、収益悪化に歯止めがかかるうえ、消費者の購買意欲も刺激される」(米証券大手)との連想から、金融、流通株を中心に幅広い銘柄に買いが広がり、ダウ平均は一時、1万1000ドル台をつけた。

 今後の見通しについては、「地合いが好転し相場は当面、上昇基調となる」(エコノミストのラルフ・アカンポラ氏)との楽観的な見方も出ているが、今年前半の経済成長率は低水準にとどまるとの予測が大勢で、「株価の本格的な回復は、今年後半になる」(同マイケル・モラン氏)との見方が有力だ。

米10年物金利4%台、利下げ期待で急低下

2001.01.03(20:01)asahi.com
 年初2日のニューヨーク金融・債券市場では、株安などを受けて米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げへの観測が強まったことなどから、米国債に買いが集まり、価格は急上昇、金利は急低下した。長期金利の指標のひとつである10年物国債の利回りは、前年末引け水準を0.2%幅下回る4.91%で終了し、1999年2月以来、約1年11カ月ぶりに5%を下回った。

 長期金利の代表的な指標、30年物国債の利回りは0.12%幅低下の5.34%で引けた。株式相場が急落したため、より安全な投資先である国債に資金が集中したことと、「株安、消費減退、景気後退の負の連鎖につながる前に、FRBが緊急利下げに踏み切る可能性が高い」(米投資銀行)との思惑が強まった。

米クリスマス商戦、値引き競争が激化 景気減速が背景

2000.12.22(22:08)asahi.com
 米国で小売り業の最繁忙期にあたるクリスマス商戦が、最終盤を迎えた。例年なら、クリスマスを過ぎた26日から始まる在庫一掃の割引セールが、今年は2週間も早い今月半ばから始まった。米景気の減速感が強まり、消費支出が前年よりかなり鈍っているためで、何とか財布のひもを緩めてもらおうという各店の苦肉の策だ。昨年末に人気を集めたオンライン店舗も、値引き競争に参入している。

 「25%引き」「50%引き、それをさらに30%引き」。ニューヨークの中心部にある百貨店大手メイシーズの婦人服、紳士服売り場では、大きな値引きの札が目を引く。この店では、クリスマス商戦中の割引は恒例だ。だが、「こんなに大幅な値下げは異例のこと」と女性店員。店内は買い物客でごった返すものの、「高額品の売れ行きはいま一つ」と言う。

 百貨店大手シアーズ・ローバックは全米の主要都市の店舗で、土曜日の早朝に20ドル(約2200円)以上の買い物をした顧客全員に、一律10ドル値引きする作戦を取った。衣料品専門店の最大手ギャップは、主な皮革製品をほぼ半値に下げた。日用品の小売り最大手ホーム・デポは、約1000店で大半の商品を10%引きとした。「ここ4、5年では最大の値引き競争」と、流通専門家のジョン・モリス氏は言う。

 全国小売り連合会によると、今月の第3週(10―16日)のショッピング・モールの来客数は、前年同期に比べ9.6%減り、モール内の百貨店への来客数は同14.4%減少した。国際ショッピングセンター協議会の調べでは、モール内に並ぶ専門店の同第3週の総売上高は、前年同期比12%減。どの店も、積み上がる在庫に危機感を強めた。

 11月からの株価急落で、前年のような資産効果がなくなったことや、金利高、ガソリン価格の高騰などで、家計支出が鈍っていることが背景にある。最近になって、大企業が相次ぎ人員削減を発表したことも、消費意欲を急速に冷え込ませた。

米の対日貿易赤字が過去最高に 10月の統計

2000.12.20(00:37)asahi.com
 米商務省が19日発表した10月の貿易統計で、モノの取引に関する対日貿易赤字が84億1600万ドル(通関ベース、季節調整前)となり、過去最大を更新した。日本からの自動車などの輸入が伸びたためで、前月比38.1%増だった。米国の景気が減速感を強めている中での対日貿易赤字の急増は、来年1月に発足する新政権の対日経済政策に微妙な影響を与える可能性がある。

 モノとサービスの取引を合わせた国際収支ベース(季節調整済み、速報)で、前月比1.6%減の331億8400万ドルとなった。過去最大だった9月よりは下回ったものの、依然高い水準を保っている。輸入は1244億1500万ドル、輸出は912億3100万ドルだった。

日米経済の先行きに懸念、ユーロ買い強まる NY外為

2000.12.16(10:35)asahi.com
 週末15日のニューヨーク外国為替市場では、日米経済の先行きに対する懸念が強まっているのを背景にユーロが買いを集め、対ユーロの円相場は一時、1ユーロ=101円34銭まで急落。7月末以来、約4カ月ぶりに101円台に入った。その後は円が買い戻され、前日比で85銭円安ユーロ高の1ユーロ=100円74銭で取引を終えた。

 円は対ドルでも売られ一時、1ドル=112円75銭まで下落した後、前日比で67銭円安ドル高の1ドル=112円62銭で引けた。

 関西興銀の破たんが伝わったことや、日本銀行の速水優総裁が景気は「踊り場にある」との見方を示したことで、日本の景気回復に不安感が広がっている。

米国の失業率4%割れ続く 10月の雇用統計発表

2000.11.03(23:46)asahi.com
 米労働省が3日に発表した10月の雇用統計によると、失業率は前月と同じ、3.9%だった。今年4月と前月に記録した30年ぶりの低失業率と同率で、労働市場は相変わらず、ひっ迫していることを示した。

 賃金の上昇ペースもやや高めになっており、米連邦準備制度理事会(FRB)は引き続き、インフレ警戒的な姿勢を維持していくことになるとみられる。

 非農業部門の就業者数(季節調整済み)は前月に比べ13万7000人増えた。

 インフレ圧力を測る指標として注目されている平均時給は前月比0.06ドル上昇し、13.89ドルだった。伸び率でみると0.4%で、やや高くなっている。

 米景気の減速を示す指標が多い中で、労働市場はほぼ完全雇用の状態が続いている。

米で反ダンピング関税「山分け」法が成立

2000.10.29(23:48)asahi.com
 クリントン大統領は28日、ダンピング(不当廉売)認定された製品にかけられる反ダンピング関税の収入を、ダンピング提訴をした企業に分配する「バード修正法案」を含む農業歳出法案に署名、同法は成立した。ダンピング提訴企業が関税収入を「山分け」する形となるこの法案には、日本や欧州などが強く反発、大統領の拒否権発動を求めていた。しかし、11月7日の大統領選を前に、クリントン大統領は農業予算の成立を優先した。

 海外からの鉄鋼製品の輸入急増に反発を強める有力鉄鋼メーカーを地元に抱えるバード上院議員(民主党)が提案。鉄鋼ダンピングと関係の薄い農業歳出予算の中に、修正法案を付帯するという巧妙な形を取った。このため修正法案についての審議は一度もないまま法案が成立してしまい、自由貿易推進派の共和党議員らは怒っている。

 政権内にも、「反対だ」(バーシェフスキ通商代表)との意見はあった。しかし、修正法案だけ取り出して大統領が拒否権を行使することは、制度としてできない。選挙の直前だけに農家への多額の補助金などを含む農業歳出法案には拒否権を発動しにくい状況だった。

 日本や欧州には、バード修正法が成立すると、ダンピング提訴の乱発を招くとの危ぐが強い。世界的に類をみない制度だけに、各国に広がっていけば、自由貿易への脅威となる。

 また、関税収入についての世界貿易機関(WTO)のルールにも反するとみて、日本政府はWTOへの提訴を視野に2国間協議を申し入れ、法再修正などの努力を求める方針だ。

米貿易赤字・4カ月ぶりにやや縮小 対中赤字が過去最大

2000.10.20(00:27)asahi.com
 米商務省が19日発表した8月の貿易赤字は、モノとサービスの取引を合わせた国際収支ベース(季節調整済み、速報)で、294億4100万ドルだった。前月比7.1%の減少で、減少は4カ月ぶり。原油価格が7月よりは下がったことなどから過去最大にはならなかったが、依然として高水準の赤字が続いている。

 輸出は930億2200万ドル、輸入は1224億6200万ドルで、いずれも過去最大を記録した。輸出入とも産業機械などの資本財が伸びた。

 対日赤字は前月比10.1%減の67億6400万ドル(通関ベース、季節調整前)だった。一方、対中赤字は前月より12.6%も増え86億100万ドルと、対日赤字を大きく上回り、過去最大を記録した。

米ネットバブルが崩壊 新たな業態で生き残りに懸命

2000.10.09(12:07)asahi.com
 過去最長の米国の好景気を支える情報技術(IT)産業のなかで、成長が注目されていた新興の米インターネット関連企業の経営難や事業閉鎖、大量解雇などが急増している。市場シェア(占有率)を優先するあまり、利益を軽視して拡大路線に走った強気の経営戦略が破たんし、4月以降のハイテク株式相場の低迷が資金繰りに拍車をかけている。多くの企業がライバルや業容拡大をめざす業界大手に買収されたり、ネット上とは別に現実の店を開いたりして生き残りに懸命だ。ただ、解雇された人たちの多くが容易に再就職でき、「ネットバブルの崩壊」は過熱していた米経済を適度に冷ます効果を与えている、との見方もでている。

 「大きな声で言えないが、行き詰まった事業を内密に清算している会社が12社ほど、我が社のルートを使って山と積まれた在庫を処分しつつある。1年前は閑古鳥が鳴いていたが、いまはお客が殺到している。予想どおりにネットバブルがはじけたおかげだ」と話すのは、米国で急成長しているネットを使った在庫処分ビジネス最大手のオーバーストック・ドット・コムのパトリック・バーン最高経営責任者(CEO)(37)。破たんしたネット小売り企業などから、装身具やパソコン、宝石、工具、スポーツ用品、家電、雑貨などの在庫を小売価格の3割で買い取り、個人の客らに市価の半値弱で売りさばく。

 破壊的な低価格が好評で、年商は昨年の12倍の5000万ドル(約54億円)に伸びる見通しだ。複数の事業ですでに1億ドルを超す個人資産があるとされるバーン氏は、「破たん企業の多くは、売りさばく成算もないのに一流ブランド品の在庫を積み上げた。赤字処分なので、その企業にお金を出した株主や金融機関は損するが、ここでは消費者が得をする」と話す。

 「買い物商品情報サービスのプロダクトピアが、とうとう事業を閉鎖へ」「医療サービスのウェブMD、1100人を削減」「娯楽情報のキブが事業を停止した模様」……。ネット系企業の倒産や事業閉鎖、解雇などの個別情報をネットで公開している「沈んだ会社ドットコム」のホームページには、今月は6日間だけで31件が載り、前月同期間の5倍の勢いだ。105件を記録した9月は、倒産6件、資産売却など10件、事業閉鎖21件、CEOの辞任や社員解雇68件にのぼった。

 ネット企業への逆風を浮き彫りにしたのが、「あなたの言い値でショッピング」というユニークなビジネスモデル特許のネット商法や、マイクロソフトの共同創業者ポール・アレン氏ら大物投資家の支援を追い風にして、派手な宣伝で急成長してきた安値販売最大手プライスライン・ドット・コムの失速だ。5日、食料品や生活用品などの雑貨と、ガソリンの販売をしてきた子会社ウェブハウスクラブが破たんし、その事業をやめることを発表した。子会社とは関係ない航空券などの販売は継続する。

 約1億ドルの資金が調達できなかったためで、創業者のジェイ・ウォーカー氏は、「金融市場はインターネットの企業に対して気が短くなっている」と無念そうだ。ウォーカー氏の損失は2億ドルとみられる。

 プライスラインは、スーパー約7000店とガソリンスタンド約6000店と提携し、客が希望する安値で売ってくれる店をネットで探し出す商法があたり、顧客は200万人に達した。7―9月期の売り上げ見通しは、前年同期より2.2倍の約3億4000万ドルと堅調にみえる。

 しかし、採算を度外視した商法がたたり、赤字が膨れ上がっていた。実績のある航空券ビジネスと違い、雑貨やガソリン類は在庫がきくので値引き商法に適さなかった。さらに、「大手メーカーの多くがブランドイメージの低下を恐れ、値引きしてくれなかったため、多くの商品を自前で値引きし、赤字を雪だるま式に膨らませた」(関係者)という。

 店を結ぶネットワーク機能だけで5億ドルといわれる設備投資の負担も重く、「新たな客を1人獲得する販促費100ドルに対し、1人当たりの売上高は40ドルに満たない」という過当競争が子会社を直撃した。

 プライスラインの株価は昨年、株式公開とともに160ドルを超えていたが、いまは当時の30分の1の5ドル台に暴落。客から「希望した値段で買えなかった」などの不満も急増し、今月になって本社拠点のあるコネティカット州の検察当局が消費者関連法違反の疑いで捜査を始めたり、株主らが損害賠償の集団訴訟を起こしたりするなど、創業以来の厳しい状況に立たされている。

パソコン関連 もう成熟産業?/ナスダック、ハイテク株下落

2000.10.08【ワシントン7日=土井達士】The Sankei Shimbun
米での家庭普及率、6割と頭打ち

 米株式市場のナスダック総合指数が六日、五月後半以来の安値を記録するなど、コンピューター関連を中心とした米主要ハイテク産業株の株安が続き、業界が代表的な成長産業から“成熟産業”に変化している可能性を指摘する声が出ている。米国家庭でのパソコン普及率が約六〇%に達して頭打ち傾向が強まっているうえ、“インターネット・バブル”の崩壊による新興ネット関連企業の不振によるサーバー需要の低下などが、その背景となっている。

 九月の半導体大手インテルに始まり、パソコン大手のアップルやデルなどが相次いで当面の業績見通しを下方修正した。これらの企業はもちろん関連株の売りも相次ぎ、ハイテク企業の比率が高いナスダック指数の大幅安につながり、六日の終値は三三六一ポイントと、今年前半につけた高値から三五%も下落した。

 インテルやデルは、業績下方修正の主な理由に「ユーロ安などによる欧州市場での不振」を挙げているが、その他にも「米国内市場のコンピューター需要が停滞しつつある傾向を示している」(ベア・スターン社アナリストのネフ氏)との見方も少なくない。今のところインターネットを利用していない米国民の五七%が「今後もネットを利用する意思はない」とした世論調査結果など、すでに市場が成熟期に入ったことを示唆するデータもみられる。

 米IT(情報技術)関連調査企業のIDCは「今年第三・四半期の米国のパソコン販売は前年同期比一〇・六%増加し堅調が続く」と予想しているが、別の予測では二〇〇二年にパソコン販売数が前年を下回るとするものさえある。このため、需要の伸びを不安視する声も上がっている。

 こうした見方に呼応するかのように、株価下落は成長性に見合ったものとの分析も出てきた。米国を代表する株式ストラテジストであるゴールドマン・サックスのコーエン氏は下落を「好ましい」と評している。

米長期金利が急上昇、原油高でインフレ懸念台頭

2000.09.16(10:33)asahi.com
 15日のニューヨーク金融・債券市場では、原油価格の急上昇に伴うインフレ懸念の台頭で、長期金利が急上昇(債券価格は下落)した。米長期金利の指標となる30年物国債の利回りは、前日引け水準を0.09%上回る5.90%で引け、7月19日以来、約2カ月ぶりの高水準となった。

 米市場ではこれまで、生産性の向上を背景に「インフレなき高成長」が続くという見方から、長期国債が買われ、長期金利が低下。今年1月半ばから、30年物の利回りが10年物を下回るという「長短金利の逆転現象」が起こっていたが、今月13日から30年物が売られ、逆転現象が解消されている。

NY株が大幅下落、原油高とユーロ安の懸念広がる

2000.09.16(09:56)asahi.com
 15日の米株式市場は、ハイテク銘柄の多いナスダック店頭市場の総合指数が、前日より78.63ポイント安い3835.23ポイントと大幅に下落し、3900ポイント台を割り込んで引けた。大企業中心のダウ工業株平均の終値も、前日より160.47ドル安い1万927.00ドルと下落し、約1カ月ぶりに1万1000ドル台を割り込んだ。

 ソフトウエア大手、オラクルの発表した4―6月期の売上高が、市場関係者の予測を下回ったことや、有力ハイテク企業が相次ぎ、業績悪化の見通しを発表したのをきっかけに、コンピューター、通信、ソフトなどのハイテク銘柄が軒並み下落した。

 原油価格の高止まりとユーロ安による輸出減の影響で、素材、消費関連の大手企業の利益も圧迫される、との懸念からダウ平均はじりじりと下げ足を速め、この日の最安値に近い値で取引を終えた。

米失業率、4.0%で前月と変わらず

2000.08.05(00:05)asahi.com
 米労働省が4日に発表した7月の雇用統計によると、失業率は4.0%となり、前月とかわらなかった。雇用の伸びは鈍化しており、市場関係者の間では米連邦準備制度理事会(FRB)が8月に利上げをしないという見方が大半になってきている。

 民間就業者は13万8000人の増加で、前月の24万2000人よりも伸びが鈍った。インフレ圧力を測る指標として注目されている平均時給は、前月比6セント上昇し、13.76ドルだった。

米GDPの4―6月実質成長率は5.2%

2000.07.29(01:23)asahi.com
 米商務省が28日発表した今年4―6月期の国内総生産(GDP)の実質成長率(速報値)は、前期比年率換算で5.2%となった。同日修正された1―3月期(4.8%)より加速した。米国の潜在成長率は3.5―4%程度とされるため、米国景気が依然として過熱気味に推移していることを示した。個人消費は減速しているため見方は割れているが、米連邦準備制度理事会(FRB)が、来月に予定される連邦公開市場委員会(FOMC)で3カ月ぶりに利上げに踏み切る可能性は、依然として残っている。

 GDP統計の7割弱を占める個人消費の伸びは、3.0%となり、前期(7.6%)より大幅に減速した。しかし、企業の設備投資は前期比で19.1%も伸び、住宅投資も3.9%増と堅調だった。この結果、GDPは、4期連続で4.5%以上の伸びを示した。

米FRB議長、8月の再利上げに含み

2000.07.21(01:43)asahi.com
 米連邦準備制度理事会(FRB)のグリーンスパン議長は20日、米上院銀行委員会で半年に1度の証言を行い、2000年の米国経済について「個人消費などが鈍化の兆候を見せているものの、インフレ懸念が去ったと結論づけるには時期尚早」と述べ、過熱気味だった米景気が持続可能なペースまで減速したかどうかの判断について、慎重な姿勢を示した。

 FRBは昨年6月以来、6度にわたって利上げを実施してきたが、先月の連邦公開市場委員会(FOMC)では金利を据え置いた。この日の議長証言は、来月22日のFOMCでの再利上げの可能性に含みを残したといえる。

 グリーンスパン議長は個人消費の鈍化が続き、情報技術(IT)による生産性の向上が続けば、景気拡大の持続に対する当面の脅威は弱まるとしながらも、「不安な要因が遠のいたとみるには早過ぎる」とし、労働市場のひっ迫や原油価格の高騰が今後、賃金や物価を押し上げる可能性が残っていると指摘した。

 FRBは20日、議会に提出した経済報告書で、2000年の実質国内総生産(GDP)成長率の見通しを、4―4.5%とし、2月時点から上方修正した。

 グリーンスパン議長の証言を受け、20日の米株式市場は、米国経済のソフトランディングの可能性が高まったと受け止めたことから、ハイテク銘柄の多いナスダック店頭市場の総合指数が一時、前日終値より120ポイントを超えて上げ4100ポイント台を回復、大企業中心のダウ工業株平均も150ドル以上上昇して、1万800ドル台となった。

スイスの銀行グループUBSが米投資銀行を買収へ

2000.07.12(13:17)asahi.com
 スイスの銀行グループUBSが、米国第4位の投資銀行ペインウェバー(本社・ニューヨーク州)を120億ドル(約1兆2800億円)で買収する見通しとなった。有力経済紙フィナンシャル・タイムズが11日の電子版で、両社とも12日の取締役会で合意を得た後、合併を発表すると伝えた。

 UBSは、米国市場への本格進出の足がかりとしてペ社を吸収する方針。グループ傘下の投資銀行UBSウォーバーグを補強する形で、顧客基盤と預かり資産の拡大を狙う。

 ぺ社は、120年以上の歴史をもつ。今年6月にテネシー州の証券大手を買収し、営業力を拡大したばかり。現在は、約2万人の従業員のうち、投資相談にあたる営業職を8000人以上抱え、顧客は270万人、預かり資産は4750億ドル(約49兆8000億円)に及ぶ。

米の6月の失業率4.0%

2000.07.09(23:09)asahi.com
 米労働省が7日発表した6月の雇用統計によると、失業率は4.0%となり、前月比で0.1%幅低下した。非農業部門の就業者数は1万1000人の小幅増加にとどまった。雇用市場のひっ迫は続いているものの、全体的には市場を驚かせる数字ではない。米連邦準備制度理事会(FRB)が8月に利上げに踏み切るかどうかは、今後の指標次第といえそうだ。

 就業者の内訳をみると、民間全体で20万6000人増加したが、国勢調査の終了に伴い政府の臨時職員数が大幅に減った。インフレ圧力を測る指標として注目されている平均時給は、前月比5ポイント上昇し、13ドル71セントだった。

米財政黒字2000億ドル突破

2000年5月13日 9時41分【ワシントン共同】
 米議会予算局(CBO)は12日、2000会計年度(1999年10月―2000年9月)の財政黒字額が初めて2000億ドルを突破する見通しになったと発表した。

 好景気で税収が予想を上回る伸びになっていることが原因。今年1月時点の黒字予想額(1760億ドル)を大幅に上方修正したことになる。

米国の4月の失業率3.9% 約30年ぶりの低水準

00:31a.m. JST May 06, 2000 asahi.com
 米労働省が5日発表した4月の失業率(軍人を除く)は、季節調整済みで3.9%と、前月から0.2ポイント低下し、1970年1月と並ぶ約30年ぶりの低水準となった。景気動向を反映する非農業部門就業者数は前月比34万人増と、事前の予想通り大きく増えた。またインフレの判断材料となる賃金は引き続き上昇基調をたどっており、労働需給がひっ迫していることを示した。 (時事)

米大統領、石油価格低下でインフレは落ち着くと判断していると表明

00年5月6日 11時10分[ワシントン 5日 ロイター]
 
 クリントン米大統領は、石油価格の低下にともない、米国内インフレ率も緩やかな伸びとなるとの予想を示し、これが連邦準備理事会(FRB)にとって朗報となると述べた。

 同大統領は記者団の質問に対し、「きのう発表されたインフレ統計はきわめて心強いもので、コアインフレ率が2.4%前後で推移していることを示すものだ。全般的なインフレ率もこの水準をめざし、石油価格も落ち着きつつある」と述べた。

 そのうえで、「これはFRBにとってのみならず、米国民や米国企業にとっても非常な朗報だ。生産性は情報技術(IT)の発達によって上昇を続けており、インフレがきわめて落ち着いた動きを示すなかで、驚くべき経済成長率と低い失業率の実現を可能にした」と述べた。

 クリントン大統領が、どの経済指標を念頭において発言したのかは明らかになっていない。

 労働省が4日発表した第1・四半期の米非農業部門労働生産性は年率2.4%上昇だった。 一方4月14日発表された、3月の米消費者物価指数(CPI)の食品とエネルギーを除くコア指数が前年同月比2.4%の上昇となっていた。

「クォンタム・ファンド」米株急落で多額の資産消失

05:58a.m. JST April 30, 2000
 著名投資家ジョージ・ソロス氏が率いる大手ヘッジファンドの「クォンタム・ファンド」は、3月から4月の米ハイテク株下落に伴い、運用資産が昨年末に比べて21億ドル(約2200億円)余りも目減りした模様だ。ファンドの広報担当者は28日、運用責任者のスタンレー・ドラッケンミラー氏が辞任することを明らかにした。

 ファンドの資産は、昨年末で103億ドル(約1兆900億円)だったのが、今月中旬で82億ドル(約8700億円)まで減ったとみられる。

 1989年から運用責任者を務めたドラッケンミラー氏のもとで、ファンドは平均して年率30%と高い利回りを誇っていたが、ハイテク関連株への思い切った投資が、ナスダック店頭市場の乱高下などで裏目に出た。

米国の上半期の財政赤字が縮小 3年連続の黒字が確実に

9:40p.m. JST April 21, 2000
 米財務省は20日、2000会計年度上半期(1999年10月―2000年3月)の連邦政府の財政収支を発表した。収支は355億6800万ドルの赤字で、前年同期に比べ27.1%減少した。米国財政は例年、上半期の赤字が膨らむ傾向にあるが、年間で約1243億6000万ドルの黒字となった前年よりも上半期の赤字が縮小したことで、2000年度も3年連続で黒字となることが確実、と財務省では見ている。

 税収などの歳入は、好景気を反映して好調に推移、前年同期比7.8%増の8773億4000万ドルとなった。歳出は、社会保障や医療保険の支出が増えて同5.8%増の9129億800万ドルだった。

「米経済は引き続き力強い」と共同声明 G7が閉幕

10:41a.m. JST April 16, 2000
 米株価急落の影響分析と対策が最大の焦点となった主要7カ国蔵相・中央銀行総裁会議(G7)がワシントンで開かれ、日本時間の16日午前7時前、共同声明を発表して閉幕した。共同声明は、米株価急落問題に直接、言及しなかったものの、「米経済は引き続き力強く、インフレと失業率は抑制されている」としている。日本に対しては「持続的な内需主導の成長を支援するマクロ経済政策が重要だ」とした上で、「日本の当局はゼロ金利政策との関連で、デフレ懸念の払しょくを確実にするため、十分な流動性を供給する」としている。

 為替については「主要通貨間の為替相場はファンダメンタルズを反映すべきだ」と指摘。過去2回連続で盛り込まれた「円高懸念の共有」という表現が消えた。

 G7に先だって、宮沢喜一蔵相は15日午前、米財務省でサマーズ財務長官と会談。日本側は景気回復を確実にするため当面、ゼロ金利政策を維持することを表明した。日米蔵相会談には、速水優日銀総裁、グリーンスパン連邦準備制度理事会(FRB)議長も同席。前日に過去最大の下げ幅を記録した米株価の動向などについて話し合った。

 これに対しサマーズ財務長官は「米国経済はまだまだ強い」と説明した。日本側は宮沢蔵相が、森喜朗政権でも景気回復が日本の最優先課題であることに変わりがないことを説明。ゼロ金利解除に意欲を見せた速水総裁は、将来的な解除の方向に触れたもので、個人消費を含む景気の自律回復が展望できるまでは、ゼロ金利政策を含む日本の取り組みに変化がないとする考えを説明し、理解を求めた。

 日銀が、G7直前にゼロ金利解除に前向きな姿勢を見せたのは、国内景気の自律回復に対する強気の見方が背景にあるためだが、米国や国際通貨基金(IMF)は「日本にはまだデフレ懸念がある」としており、認識にずれがある。

日米蔵相会談、日本側が当面ゼロ金利政策の維持を表明

01:50a.m. JST April 16, 2000
 米株価急落の影響分析と対策が最大の焦点となった主要7カ国蔵相・中央銀行総裁会議(G7)が15日正午過ぎ(日本時間16日未明)から、ワシントンで開幕した。それに先だって、宮沢喜一蔵相は15日午前、米財務省でサマーズ財務長官と会談した。日本側は景気回復を確実にするため当面、ゼロ金利政策を維持することを表明。宮沢蔵相はG7開催直前に、記者団に対し、G7では円だけでなく為替相場全体の安定で合意する見通しを明らかにした。

 日米蔵相会談には、速水優日銀総裁、グリーンスパン連邦準備制度理事会(FRB)議長も同席。午後のG7に向け、前日に過去最大の下げ幅を記録した米株価の動向などについて話し合った。

 これに対しサマーズ財務長官は「米国経済はまだまだ強い」と説明した。日本側は宮沢蔵相が、森喜朗政権でも景気回復が日本の最優先課題であることに変わりがないことを説明。ゼロ金利解除に意欲を見せた速水総裁は、将来的な解除の方向に触れたもので、個人消費を含む景気の自律回復が展望できるまでは、ゼロ金利政策を含む日本の取り組みに変化がないとする考えを説明し、理解を求めた。

 開幕したG7でも、欧州やアジアに比べ景気回復の出遅れ感が強い日本経済の財政・金融政策が焦点になる。ただ今回のG7声明では円だけに絞った為替政策への言及はしない見通しだ。

 日銀が、G7直前にゼロ金利解除に前向きな姿勢を見せたのは、国内景気の自律回復に対する強気の見方が背景にあるためだが、米国や国際通貨基金(IMF)は「日本にはまだデフレ懸念がある」としており、認識にずれがある。

 G7各国の関心は、米国株式市場が史上最大の下げ幅を記録したことの影響に集まっている。週明けの日本市場などでも株価や為替が大きく動く可能性があり、景気へのマイナス材料になりかねない。このため、G7では、打撃を最小限にとどめるための政策協調が緊急課題になる。

 G7では、このほか、ユーロ安やIMFの役割見直し、貧困国への債務削減の取り組みなども取り上げられる見通しだ。

NY株下落は崩壊の始まりか一時的調整か

11:36a.m. JST April 15, 2000
 14日のニューヨーク株式市場で株価が史上最大の下げを記録したことに対して、高騰を続けた株価の崩壊が始まるのか、一時的な調整にとどまるのか、米国内でも見方が割れ、週明け以降の市場の動きを警戒する空気が広がっている。過熱気味の景気を安定成長軌道に戻すことを政策課題とする米政府や米連邦準備制度理事会(FRB)にとって、株価の一定の下落・調整は不可欠。しかし、過度に下落すれば、史上最長に達している現在の景気拡大がストップする恐れもある。

 米ホワイトハウスは、「株価の下落にはコメントしない」と表向きは平静さを保っている。しかし、ある米政府関係者は「過熱気味の景気を冷やす適正な調整になるのか、週明けの市場を見極めたい」と極めて慎重な構えも見せている。

 この日の株価の下げは、同日発表された3月の消費者物価指数がエネルギーと食料品を除いたコア部分が前月比0.4%増と1995年1月(0.4%増)以来、約5年ぶりの大幅上昇したことがきっかけになった。原油価格の高騰分を除いても物価全体が上がっていることを示したことで、市場が「インフレの芽を摘む目的で予防的利上げを繰り返してきたFRBの出遅れ・政策運営の失敗」と受け取ることができる余地を残しており、政策当局には「嫌な下げ方」(同関係者)となっている。

 「『FRBの出遅れ』との見方が市場に広がると、株価はさらに下落しかねない。一方でインフレ傾向が続けば、FRBは利上げを継続せざるを得ず、株価にはマイナス。加えて株安の逆資産効果から景気を過度に傷つけ、安定成長軌道に戻す目的が果たせなくなる」と金融関係者は指摘している。

米長期金利が引き続き下落し5.79%に

0:11p.m. JST April 05, 2000
 米長期金利は4日も引き続き下落し、指標となる30年物米国債の利回りは、前日より0.08%幅低い年率5.73%に下落し、ほぼ昨年5月下旬以来の低水準となった。

 株式相場の下落傾向で、より安全性の高い債券に投資資金が移る「質への逃避」が起こり、債券の価格が上昇して利回りが低下している。米連邦準備制度理事会(FRB)が先月下旬、5回目の利上げを実施したにもかかわらず、長期金利は下落が続いている。

米長期金利が10カ月ぶり低水準に下落 年率5.83%

1:10p.m. JST April 01, 2000
 米長期金利が下落傾向を強めている。指標となる30年物米国債の利回りの終値は31日、前日より0.03%幅低い年率5.83%に下がり、昨年5月下旬以来ほぼ10カ月ぶりの低水準となった。米株式相場が乱高下していることを嫌って、資金が国債市場に避難しつつあるためで、「不安定な市場展開を象徴している」(債券トレーダー)という。米政府が財政赤字の削減を背景に国債を買い戻し、発行量を抑えていることも金利下落を促している。

米国の景気拡大10年目へ 最長記録を更新中

8:33p.m. JST March 31, 2000
 米国の景気拡大は4月から10年目に突入する。30日朝に発表された昨年10―12月期の実質経済成長率は年率換算7.3%と、ほぼ16年ぶりの高い伸びを記録したのに続いて、今年に入っても勢いに目立った衰えは見られていない。

 景気拡大は、今年2月に107カ月目に入り、過去最長だった106カ月の景気拡大(1961年3月―69年12月)を更新中だ。

 現在の米国経済は、好調な個人消費に加え、輸出も1月分の貿易統計で前年同月比8.2%増と高い水準を維持している。米連邦準備制度理事会(FRB)が公開した今年2月初めの連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録でも、0.25%の利上げ決定に対して、景気過熱・インフレ台頭への懸念から、「何人かが、0.5%の利上げが望ましい、と述べた」「FOMCは、もっと果敢に(利上げに)動くべきだ」との異論・注文があったほどだ。

米国が0.25%の追加利上げ、公定歩合は5.5%に

07:21a.m. JST March 22, 2000
 米連邦準備制度理事会(FRB)は、二十一日、金融政策の最高決定機関である連邦公開市場委員会(FMOC)を開き、代表的な短期金利のフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を0.25%引き上げて、年6.0%に設定、即日実施すると発表した。公定歩合も0.25%引き上げられて年5.5%になった。

 株価急騰に象徴される過熱気味の景気をさまし、将来のインフレを回避するのが狙い。二月に続く利上げで、昨年六月以降の引き締め局面では五回目となるが、まだ利上げは続くと予想されている。

 FRBは声明で、経済情勢は二月のFMOC時点とほぼ同じだとして、「需要の増加ペースが潜在的な供給の伸びを上回り続け、それがインフレをもたらすような不均衡を生むことを懸念する」としている。

 また、今後の経済情勢について声明は「リスクはインフレ圧力が高まる方向に傾きつつある」と指摘、「インフレ警戒」型の政策運営姿勢を続けることを示した。これを受けて市場では、年内にさらに1,2回、0.25%ずつ政策金利が引き上げられる可能性があるとみている。(時事)

13人が報酬100億円超す

2000年3月20日 16時02分【ニューヨーク共同】
 米経済誌フォーブス4月3日号は、過去約1年間に就任した米企業のトップのうち、13人について、報酬が1億ドル(約106億円)を超えたと伝えた。いずれも電子商取引など新ビジネスにスカウトされたトップで、うち2人は女性。同誌は、複数年契約ではあるが、最高経営責任者(CEO)の報酬は1億ドルの時代に入ったとしている。

米、インフレ加速予防で5度目の利上げへ=引き締めの一環に−公開市場委

00年3月18日 14時4分【ワシントン18日時事】
 米連邦準備制度理事会(FRB)は21日に金融政策の最高意思決定機関である連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、当面の金融政策を協議する。株高を背景に消費者の需要が高まる一方で、供給サイドでは労働市場での需給関係がひっ迫するなど需給不均衡が顕在化してきているため、インフレ加速を予防するため再利上げに踏み切るとみられる。米国の利上げは昨年6月以来5回目。現在5.75%にあるフェデラルファンド(FF)金利(日本のコールレートに相当)の誘導目標が0.25%引き上げられて6.0%に、公定歩合も同率引き上げられて5.5%となる公算が大きい。 

米経済成長、持続可能な水準を超えている恐れある=ケリーFRB理事

00年2月19日 13時2分[ボニータスプリングズ(米フロリダ州) 18日 ロイター]
 米連邦準備理事会(FRB)のケリー理事は、米経済が持続不可能なペースで成長している公算があるとし、そのため、インフレ圧力が再燃する恐れがある、と述べた。

 同理事は講演で、経済は非常に力強く成長しており、この2月で107カ月目を記録し過去最長期となった現在の景気拡大には、終結の兆候がみられない、と語った。

 同理事は、インフレ高進を伴なわずに長期的な景気拡大を可能とする、持続可能な経済成長率について、現在のところ、具体的な水準はどの程度なのか明確には分からない、と述べた。

 そのうえで、「FRBの同僚らとともに、われわれは事態を極めて注意深く見守っており、持続可能な成長率がどの程度なのか理解に努めている。恐らくは、失業率が徐々に低下を続けている事実が、経済成長率が持続可能な水準を上回っていることをもっとも雄弁に物語る証拠ではなかろうか」と述べた。

99年米貿易赤字は史上最高、原油高騰と国内経済好調が要因=商務省

00年2月19日 13時2分[ワシントン 18日 ロイター]
 
 米商務省は、1999年通年の米貿易赤字が史上最大の2713億1000万ドルとなったと発表し、その要因として、原油価格が前年水準の2倍を超えて高騰していることや国内経済が好調で輸入が急増したことを挙げた。

 同省は、米国内の力強い消費需要を反映し、カナダ、中国、日本、西欧諸国、メキシコといった主要貿易相手国との貿易赤字がすべて史上最高レベルに達したとした。99年通年の米国の輸出額もこれまで最高の9584億9000万ドルを記録したものの、輸入急増に相殺された。

 米国の99年通年の対日貿易赤字は739億2000万ドル、対日輸出は574億8000万ドルで、94年以来の低水準となった。

 99年12月の原油価格は、1バレル当たり22.67ドルで1年前の2倍を超える水準となり、赤字拡大の主要な要因の一つとされている。これは、91年1月の22.98ドル以来の高水準。

GEのウェルチ会長、昨年の報酬は98億円

4:25p.m. JST March 14, 2000
 米複合企業ゼネラル・エレクトリック(GE)が証券取引委員会(SEC)に13日提出した報告によると、同社のジャック・ウェルチ会長が昨年受け取った報酬は前年比32%増の総額9310万ドル(約98億2000万円)だった。うちストックオプション(自社株購入権)の権利行使分は4850万ドル。

 GEは報告の中で、「世界で最も尊敬され、成功した企業の一つにしたというウェルチ氏のリーダーシップを考慮すると、この水準の報酬はふさわしい」との見方を示した。GEの昨年第4四半期の純益は30億9000万ドルで、1892年の創立以来、四半期としては史上最高を記録した。(時事)

乱高下続く米金利市場 構造的変化の兆し

11:45a.m. JST February 13, 2000
 米債券市場で、急降下していた長期金利が一転して急上昇するなど、金利が乱高下している。米財政赤字の大幅削減とともに、これまで安定していた米国債の発行見通しが一気に不透明になり、利回りを決める債券価格が「バンジージャンプのように激しく揺れ動いている」(債券トレーダー)ためだ。

 長期金利の指標となる30年物米国債の利回りは、終値ベースで過去1カ月間、2年7カ月ぶりの高水準をつけた後、2カ月半ぶりの低水準に急降下し、計約0.6%幅も揺れ動いた。「アジアやロシア金融危機で世界市場が混乱した1998年に匹敵する混乱」(市場関係者)という。

 利回りの急落に拍車をかけたのが、米財政赤字の削減で国債を大量に償還し、発行量を少なくする米政府の2日の発表。希少価値のでた30年物国債の需要が高まり、価格と逆に動く利回りが急降下した。長期と中・短期の金利水準が逆転する「ねじれ現象」も起きた。さらに市場の混乱に輪をかけたのが、9日のサマーズ米財務長官の発言だ。

 米政府債の流通量の減少は30年物国債にとどまらず、中期財務証券など広範囲に及ぶことを示唆したため、減るのは30年物とばかり思っていた投資家の大方の予想が外れ、「政府の姿勢が分からない。国債に近寄らないほうが賢明」と、国債にそっぽを向く投資家が増えた。その結果、米国債の入札は17年ぶりの不振となり、金利が再び急上昇した。

 激しい値動きで、市場には「相場を読み間違えた証券大手や有力投資銀行、ヘッジファンドが巨額損を被った模様。いずれ米金融当局が市場の安定に乗り出すのではないか」(米銀トレーダー)との観測が流れている。

 30年物米国債の利回りは、企業が起債するときの資金調達コストや住宅ローン金利など、幅広い金利水準を左右する。証券会社からは「こんなに不安定では、おう盛な資金需要を満たして景気を支えている社債発行にも悪影響がでかねない」との声が上がっている。

米株式市場、ナスダックが最高値更新

10:37a.m. JST February 05, 2000
 米株式市場は4日、ハイテク銘柄の多いナスダック店頭市場の総合指数が続伸し、終値は前日より33.16ポイント高い4244.14ポイントに上がり、2週間ぶりに史上最高値を更新した。この日発表された1月の米雇用統計が堅調な景気拡大を裏付けた、との見方から、好決算が見込まれるハイテク企業の株式を中心に値上がりした。

 ナスダック指数は1月21日に最高値(4235.40ポイント)を記録して以来、インフレ懸念とともに10%近く急落したが、「インフレ圧力はさほど高くない」(米証券大手)などの楽観ムードとともに急回復した。今週は5日続伸し、1週間の上昇幅357.07ポイントは週間としては過去最大となった。米財政赤字の削減を背景に長期金利が急落したことも、投資先として有利になった株式市場への資金流入に拍車をかけた。

 一方、大企業銘柄の値動きを示すダウ工業株平均の終値は前日より49.64ドル安い1万963.80ドルに下がった。2日の利上げで耐久消費財や住宅などの販売がマイナスの影響を受けるとの見方などを反映し、「重厚長大型」の業種を中心に値下がりした。市場関係者からは「利上げ効果はじわじわ浸透する。ハイテク業界にも影響を与え、ハイテク銘柄の高騰も次第に息切れするだろう」(中堅投資会社)との声が上がっている。

米、0.25%再利上げ、インフレ警戒鮮明に

1:18p.m. JST February 03, 2000
 米連邦準備制度理事会(FRB)は2日、連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、公定歩合と短期金利の指標となるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標をともに0.25%引き上げ、それぞれ年5.25%、5.75%とし、即日実施した。FRBは利上げに関して声明を発表、「米国経済の主たるリスクはインフレ圧力の増大にある」と述べた。FRBは、株価の一層の高騰や消費の過熱を防ぎ、米経済を安定成長軌道に戻すことを目指しており、引き続き、金融政策は引き締め基調で臨む構えだ。

 FRBによる利上げは昨年6月以降、4回目。FFレートの引き上げは、昨年6月、8月、11月に続き、公定歩合の引き上げは8月、11月に続く措置。3月21日の次回FOMC以降も追加的利上げに踏み切る、との見方が早くも台頭している。

 FRBはFOMC後の声明について、次回FOMCまでの基本的な政策スタンスを示す従来方式から、経済の現状に対する判断を示すよう改めたが、その中で「(供給の伸びを上回って総需要が増加していく)傾向は、インフレを助長し、米国経済の記録的な景気拡大を損ねかねない」として、インフレに対する警戒姿勢を鮮明に打ち出した。

 米国経済の景気拡大は、2月に過去最長の107カ月目に入った、と見られ、現在も、過熱気味に推移している。特に国内総生産(GDP)の7割弱を占める個人消費は、株高と低失業率に支えられて、10―12月期に年率換算で5.3%増と極めて高い水準を記録。今年に入っても勢いが衰えていない、と見られている。

 エコノミストらも「消費者や投資家の先行きに対する楽観的な見方を修正する必要がある」と指摘しており、FRBによる引き締めが当面、続きそうだ。

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