TOPIC No.2-4 定年延長・年金制度改正

Index
a. 定年延長/雇用延長、b. 年金制度改正、c. 確定拠出年金(日本版401k)、d. その他

TOPIC No.2-4b 年金制度改正


01.年金問題 YAHOO!ニュース
02.年金未納問題 YAHOO!ニュース
03.年金改革 読売新聞Yomiuri On-Line
04.年金 by all about
05.国民年金って何? 社会保険庁
06.国民年金法等の一部を改正する法律案の概要
07.年金制度の改正について! byしのづか社会保健労務士



年金番号、人口の2倍超 100歳以上、死亡者も?

2010/08/06 中国新聞ニュース

 公的年金の記録を管理するため本来は1人に一つ割り振られている基礎年金番号が、100歳以上では人口より5万5千件多いとの調査結果を日本年金機構が5日までにまとめた。実際の100歳以上人口は約4万人で、番号数は倍以上になっている。

 結婚、離婚による氏名変更や転職歴を考慮せず、同じ人に重複して番号を交付してしまったケースが多いとみられるが、既に死亡している人の番号が含まれている可能性もある。

 年金機構は今後、各番号に登録されている個人情報を突き合わせ、同一人物を割り出すなど番号重複の解消を進める。住民基本台帳ネットワークとも照合する予定だ。

 ただ各地で高齢者が所在不明になっている問題でみられるように、死亡届が自治体に出されていないと住基ネットとの照合に効果は期待できない。機構は「想定外だ」と頭を悩ませている。

 調査は、昨年4月の基礎年金番号数と同10月の推計人口を1歳ごとに比較。20歳以上の全加入者・受給者では人口を約123万件上回っていた。

 年齢別では、60歳以上は番号の方が人口より92万6千件多い。一方、20代前半は番号交付の作業が追いついておらず、人口より91万8千件少ない。母国に帰った外国人の番号が消されていないケースもあった。

 番号重複のまま記録が未統合だと「宙に浮いた記録」の状態になり、本来よりも年金受給額が少なくなる恐れがある。

厚生年金10兆円超の赤字 08年度、不況で運用悪化

2009/08/04 中国新聞ニュース

 社会保険庁は4日、2008年度の年金特別会計の時価ベースでの収支決算を発表した。サラリーマンが加入する厚生年金が10兆1795億円、自営業者らの国民年金が1兆1216億円の赤字になった。

 社保庁によると、時価ベースでの集計が始まった01年度以降、両年金とも赤字幅は最大。厚生年金は2年連続、国民年金が3年連続の赤字となった。

 昨年9月の「リーマン・ショック」後の世界的な金融危機による株価の大幅下落と円高による為替差損で、両年金の積立金運用の収支が悪化したことが響いた。

 厚生年金は07年度の5兆5909億円から2倍近く赤字幅を拡大。国民年金も7779億円から大幅に赤字を積み増した。

 社保庁は「年金財政にただちに影響が出ることはない」と説明しているが、今後も厳しい運用が続けば年金財政の圧迫要因となりそうだ。

 08年度末の積立金残高は厚生年金が116兆6496億円で前年度比13兆5314億円の減少、国民年金が7兆1885億円で同1兆2789億円の減少となった。

 また、積立金については04年の年金改革で「必要に応じて取り崩し、給付に充てる」と制度変更された。これを受けた取り崩し額は厚生年金が3兆3605億円、国民年金が1737億円。

「現役収入の50%」割れ 将来の年金、納付率現状なら

2009/04/15 中国新聞ニュース

 公的年金の財政見通しをめぐり、国民年金の保険料納付率が現行水準のまま向上しない場合、将来の厚生年金の給付水準(所得代替率)は政府が約束した「現役世代の収入の50%」を割り込み、49・3%程度に落ち込む、との厚生労働省の試算が十四日、明らかになった。

 二〇〇七年度の実際の納付率は63・9%だったが、厚労省は今年二月に公表した年金の財政検証で、納付率を80%と設定。そのうえで所得代替率は50・1%を維持できるとしていたが、「現実離れした前提に基づく試算」との批判があらためて強まりそうだ。

 厚労省は同日、民主党の要求に応じ、「納付率が1ポイント変動するごとに所得代替率は0・05―0・06ポイント変わる」との試算結果を提示。納付率を80%ではなく実績値に近い65%に置き換えると、所得代替率は49・20―49・35%となる。

 納付率が78%を割り込むと、所得代替率は50%を維持できなくなる計算だ。国民年金の納付率が厚生年金の給付に影響を与えるのは、公的年金ではいずれにも共通の土台となる基礎年金部分があるため。

 厚労省は「社会保険庁が納付率を80%にアップさせる目標を掲げており、妥当な前提だ」としているが、〇八年度の納付率は昨年十二月現在、60・9%で前年同月比1・9ポイント減と悪化。改善に向けた具体的な見通しは立っていない。

 二月の財政検証は、納付率や出生率、経済指標などの見通しを一定の数値に設定した基本ケースでは、所得代替率は〇九年度の62・3%から徐々に下がるものの、三八年度以降50・1%を維持できる―との内容だった。

無年金の恐れ、51万人にも 宙に浮いた記録が原因で

2009/04/08 中国新聞ニュース

 総務省は八日の衆院厚生労働委員会で、年金の受給資格を得られる二十五年以上の加入期間があるのに、記録が宙に浮いているために無年金となっている人が最大で推計五十一万人に上ることを明らかにした。民主党の長妻昭氏への答弁。

 五十一万人の中には、障害年金を受け取っていて実際には無年金ではない人や死亡者も含まれる可能性もある。しかし、社会保険庁は無年金の人や今後加入を続けても受給権を得られない人は百十八万人と推計しており、記録漏れが原因の人が相当数を占める疑いも出てきた。

 五十一万人との推計は、総務省所管の「年金記録問題検証委員会」が二〇〇七年十月に公表した、「宙に浮いた」記録五千九十五万件のサンプル調査に基づく。調査結果では、全体の1%が二十五年以上の加入期間を持つ記録とされていた。

 また、これに関連し、舛添要一厚生労働相は基礎年金番号を割り振られず宙に浮いたままになっている記録約三百十一万件のうち、加入期間が十年以上二十五年未満の二十四万件について、記録の持ち主に六月から注意喚起の通知を送る方針を表明した。

 基礎年金番号のない人は「ねんきん特別便」「ねんきん定期便」とも対象外とされている。

年金運用5・7兆円の赤字 昨年10―12月、過去最悪

2009/02/27 中国新聞ニュース

 国民年金と厚生年金の積立金を市場で運用する「年金積立金管理運用独立行政法人」は二十七日、昨年十―十二月の運用結果について、世界不況の影響を受け五兆七千三百九十八億円の赤字となったと発表した。

 同法人の前身である特殊法人が市場運用を始めた二〇〇一年度以来、四半期ベースでは最悪の赤字額。〇七年度からの通算では約十四兆五千億円の損失となり、〇六年度末に約百五十兆円あった積立金の一割近くが二年足らずで失われたことになる。

 〇八年度の収支は四―十二月で既に八兆六千七百三十八億円のマイナス。今年一月以降も市場は低迷が続いており、〇八年度通期の赤字額は〇七年度の五兆八千四百億円を上回り、最悪を更新するのが確実な情勢。

将来の年金給付2割目減り 現役収入比で50・1%

2009年02月23日 中国新聞ニュース
 

 厚生労働省は23日、5年ごとに行う公的年金の財政検証に基づく今後約100年間の将来試算を発表した。現役世代の収入に比べた厚生年金の給付水準(所得代替率)は、厚労省が基本とするケースで50・1%と、政府が2004年に約束した50%を維持できるとしたが、現行の62・3%に比べると2割目減りする。

 経済が低迷し出生率が低い最悪ケースでは、所得代替率は43・1%まで低下。50%維持のケースも、積立金の運用利回りや賃金が大幅に高まることを前提にしており、「100年安心」の体裁を保つための楽観的な試算との批判も強まりそうだ。

 所得代替率は夫が平均賃金で厚生年金に40年加入、妻が40年専業主婦というモデル夫婦世帯で計算する。基本ケースの年金月額は09年度の22万3000円から38年度は26万3000円(現在価値換算)と増えるが、所得代替率は04年想定時の50・2%からも微減した。

 試算の前提として、厚労省は将来の経済指標と合計特殊出生率についてそれぞれ高位、中位、低位3通りの予測値を設定。両方を掛け合わせた9通りのケースで所得代替率を計算した。

 経済、出生率とも中位の基本ケースの場合、年金財政を維持するための給付抑制措置が12年度から38年度まで続く。代替率は50%を維持するものの、04年に想定した抑制期間17年間が、現下の不況や積立金の運用損を受け、27年間に長期化。

金融危機で赤字4・2兆円 年金運用、7―9月期

2008/11/29 中国新聞ニュース

 年金積立金管理運用独立行政法人は二十八日、厚生年金と国民年金の積立金の市場運用が七―九月期は四兆二千三百八十三億円の赤字だったと発表した。九月の米証券大手リーマン・ブラザーズの破たんを引き金にした世界的な金融危機による国内外の株価下落が原因。

 これにより、二〇〇八年度上半期の市場運用は、二兆九千三百四十一億円の赤字となった。十月以降も、金融危機に伴う世界的な景気後退懸念から株式市場は低迷しており、五兆八千四百億円の赤字だった〇七年度に続き二年連続でマイナスとなる恐れが出てきた。

 厚生労働省が年明けに設定する〇九年度からの短期の利回り目標にも影響を与えることになりそうだ。

 累積黒字は〇七年度末現在で約七兆四千億円で、〇八年度も赤字が続けばさらに減ることになる。同法人は、赤字がただちに年金給付額などに影響することはないとしているが、予想通りの利回りを達成できないと、将来の給付水準などに影響を与える可能性がある。

 四半期ごとの運用状況では、七―九月期は金融危機の元となった米サブプライム住宅ローン問題を受けて株価が下落した今年一―三月期の五兆四百七十六億円に次ぐ巨額赤字。四―六月期は約一兆三千億円の黒字で、一年ぶりに赤字を脱したばかりだった。

 収益額の内訳では、国内株式が約二兆六千億円、外国株式が約一兆七千億円の赤字。債券では、外国債券が約四千億円の赤字を出したが、国内債券は約五千億円の黒字だった。

 九月末時点の市場での運用資産額は、九十二兆九千二百七十三億円。

年金運用5兆円の赤字 07年度、5年ぶり

2008年07月03日 中国新聞ニュース

 国民年金と厚生年金の積立金の市場運用で、2007年度は年間で約5兆円の赤字だったことが3日、分かった。運用主体の「年金積立金管理運用独立行政法人」が4日、発表する。

 赤字は5年ぶり。同法人の前身である特殊法人「年金資金運用基金」が市場運用を始めた01年度以降では、年間を通じての赤字は01年度(約1兆3100億円)、02年度(約3兆600億円)の2回あったが、最悪の赤字額となった。

 米サブプライム住宅ローン問題を受けた国内外の株価下落が響いた。06年度末までの累積では約13兆円の黒字を上げており、年金給付にすぐに影響を与えることはないが、今後も市場低迷が続けば年金財政の圧迫要因になりそうだ。

 年金積立金は全体で約150兆円あり、うち100兆円弱を同法人が市場で運用している。07年度は昨年12月時点では約7900億円の赤字にとどまっていたが、08年1−3月期に運用状況がさらに悪化した。

年金紙台帳の再整理を指示 舛添氏、保管倉庫を視察

2008年01月16日 中国新聞ニュース

 舛添要一厚生労働相は16日、1957年以前の厚生年金記録の紙台帳約1365万件が保管されている埼玉県内の倉庫を視察した。視察後、記者団に「うち約6万件が本来の番号順に整理されていない」と述べ管理状況がずさんであることを明らかにした上で、記録確認などの際、すぐに紙台帳を探し出せるよう順番通りに並べ替えて再整理する考えを表明した。

 舛添氏は「宙に浮いた」約5000万件の統合作業に関し「紙台帳とコンピューター上の記録を照合するのに記録が順番通りに並ばず、あるかないか分からないのでは話にならない」と指摘。「管理方法を見直し、作業が円滑にできるように全力を挙げたい」と強調した。

 社会保険庁によると、紙台帳の記録はコンピューターに入力済みで、倉庫には約4300個の段ボールに分け保管。都道府県別に年金手帳の番号に従って整理されているが、約6万件は以前に担当者が元の位置に戻さず、別に仕分けされているという。

年金運用、1.6兆円赤字 サブプライム問題の影響で

2007/12/05 中国新聞ニュース

 国民年金と厚生年金の積立金を市場で運用する「年金積立金管理運用独立行政法人」は五日、今年七―九月期の運用状況について、手数料などを差し引く前の収益である「総合収益額」が一兆六千三百二十八億円の赤字だったと発表した。

 米サブプライム住宅ローン問題を受けた株価下落や円高ドル安などが影響した。四半期ごとに公表している運用状況が赤字となったのは、昨年四―六月期以来。

 同法人の野島康一のじま・こういち審議役は「サブプライムローンを証券化した金融商品は保有しておらず、影響はあくまで間接的なもの。今後の収益予想は難しいが、市場環境は現在も厳しい」と話している。

 利回りを示す「修正総合収益率」は、今年四―六月期はプラス2・75%だったが、七―九月期はマイナス1・80%に下落。半年間を通じた収益は、前期の黒字二兆三千七百五十二億円の大半を今回の赤字で食いつぶす形となり、七千四百二十四億円の黒字となった。

 同法人が保有している市場運用資産(時価ベース)は、九月末で九十一兆二千七百八十七億円。構成比は国内債券54・39%、国内株式19・97%、外国株式14・88%、外国債券10・46%など。

 サブプライム問題をめぐっては、国内の銀行、保険、証券などで関連した損失が〇八年三月末までに合計で約六千二百六十億円に膨らむ見通しとなっている。

05年度の年金、42・8兆円 2・87人で1人支える

2007年11月29日 中国新聞ニュース

 厚生労働省は29日、2005年度の公的年金制度全体の財政状況をまとめた。国民、厚生年金と公務員などの共済で年金給付費は前年度比約1兆1500億円(2・8%)増の42兆7694億円だった。

 現役加入者は約7045万人、受給権者は約3287万人で、加入者が多い国民、厚生年金で見ると、いずれも加入者2・87人で受給権者1人を支えている計算だった。

 給付費の内訳は、国民年金が約14兆5900億円、厚生年金が約21兆9900億円、公務員と私立学校教職員の各共済で計約6兆1900億円だった。

 保険料収入は26兆3242億円で、保険料率の引き上げなどにより前年度から約6700億円(2・6%)のプラス。

 積立金の残高は、株式などの運用利回りが当初の予想を上回り、時価ベースで初めて200兆円を超え、約204兆9000億円となった。

基礎年金を全額税方式に 経団連会長が検討要請

2007年09月20日 中国新聞ニュース

 日本経団連の御手洗冨士夫会長は、20日の記者会見で、公的年金制度について「制度の抜本改革を議論し、基礎(年金)部分は税制で補うという、税制と社会保障の一体改革を検討してもらいたい。私は基礎年金には税金を充てた方がいいと思う」と述べ、政府、与党や野党に対し、基礎年金の財源を全額税で賄う方式の検討を要請した。

 基礎年金財源の全額税方式は、民主党が7月の参院選でマニフェスト(政権公約)に掲げた。御手洗会長の発言は、民主党の政策に一定の理解を示したものといえ、今後の社会保障制度の改革論議に一石を投じた形だ。

 政府は、2009年度に基礎年金の国庫負担割合を現行の3分の1から2分の1に引き上げる方針だ。しかし残りの財源には、保険料を充てる社会保険料方式を維持するとしている。

 御手洗会長は、全額税方式を導入する場合の財源については「無駄を省き歳出削減しても足りない分は、消費税で補うべきだ」と強調した。

524万件に名前なし 宙に浮いた年金記録の1割

2007/09/10 中国新聞ニュース

▽社保庁「照合に支障ない」

 社会保険庁は十日、基礎年金番号に統合されず「宙に浮いた」年金記録約五千万件のうち、約一割の約五百二十四万件に名前が入力されていなかったとの調査結果を、総務省の年金業務・社保庁監視委員会に明らかにした。

 国民年金約千二百件のほかは、すべて厚生年金の記録。約五千万件の記録をめぐっては、安倍晋三首相が「すべての記録の名寄せ(照合)を来年三月までに完了する」と明言した。社保庁は「年金手帳番号は確認できるため、名前がなくても名寄せ作業に支障はない」としている。

 社保庁によると、名前が欠けていたのはいずれも、コンピューターによる年金記録のオンライン管理が完成する一九八○年代半ば以前のもの。同庁は六○年代初めから、旧式の磁気テープに年金手帳番号や名前、生年月日、性別を収録して記録を管理していた。このテープの記録に名前のないデータが多く、オンラインに入力し直す際にそのまま放置されたとみられる。

 社保庁は「磁気テープ時代に名前が省かれた理由は、古いことで分からない。法令違反ではないはず」と説明している。

23件中15件は警察にも相談せず 社保庁職員の着服

2007/09/10 中国新聞ニュース

 社会保険庁は十日、職員による国民年金保険料などの着服について再調査結果を発表し、刑事告発しなかった計二十三件のうち十五件は警察にもまったく相談せずに告発を見送っていたことを明らかにした。

 着服した職員計五十人のうち四十一人は免職処分を受けたが、着服が判明する前に退職していたため社保庁として処分できなかったケースが六人いた。また、各社会保険事務所に処分の判断を任せていた一九九七年度以前に着服が判明した三十人のうち三人は停職十二―二月の処分にとどまっていた。社保庁本庁の職員が着服していたケースもあった。

 社保庁は、これ以外にも各社会保険事務所などが過去の着服事案を隠しているケースがないか、再確認する方針だ。

企業年金124万人に未払い 住所など把握せず 1544億円請求漏れ

2007年09月06日 東京新聞朝刊

 転職などで厚生年金基金を脱退した会社員らの年金資産を運用し、年金を給付する「企業年金連合会」は五日、本来受給資格があるのに住所不明で受給請求書が届かないなどの理由で、二〇〇六年度末の受給資格者の三割近い約百二十四万人が受給できておらず、未払い総額が千五百四十四億円に上る、と発表した。

 連合会は、企業の中途脱退者や倒産などで解散した厚生年金基金の加入者らを対象に年金を支給。厚生年金基金のある企業に一カ月以上勤めれば受給資格ができ、中途脱退者は六十歳になった翌月、解散基金加入者は国の厚生年金受給権発生の翌月から受給できる。

 一人で複数の企業に勤めるケースもあり、未請求件数は百四十七万七千件に上った。内訳は、中途脱退者が百四十万九千件(未払い額千三百七十八億円)、解散基金が六万八千件(同百六十六億円)。一人当たり平均年額は中途脱退者が約一万九千円、解散基金が約三十万円。中途脱退者は加入期間五年未満が92・2%を占め、年額一万円未満が六割以上に上ったが三十万円以上も三千件あった。解散基金は年額三十万円以上が四割近い二万六千件と最多だった。

 膨大な未請求者が存在する理由について(1)加入記録が移った後に転居したり、姓が変わったりして請求書が届かない(2)本人が死亡したのに届け出がない(3)加入期間が短く、退職後かなりの年月が経過し受給資格があると認識していない−などと連合会はみている。

 連合会では「記録はすべて正確に保管してあり、請求があれば支給する体制は整っている」と説明、電話による相談窓口を設ける。平日は午前九時−午後九時、土日祝日は午前九時−午後五時まで。フリーダイヤル0120(458)865。

<メモ>企業年金連合会 厚生年金の上乗せ年金である厚生年金基金のある企業を通常10年未満で退職した人や、廃業などに伴い解散した厚生年金基金に加入していた人の年金記録や資産を引き取り、運用して年金を支給する業務を行っている民間団体。歴代理事長には厚生労働省幹部OBが多く就任している。現在約2400万人の年金記録を管理し、うち60歳以上の約400万人が年金受給資格を有しているが、実際に支給されているのは約276万人にとどまっている。

21日にも処分内容集約 年金着服で厚労・総務相合意

2007/09/06 中国新聞ニュース

 舛添要一厚生労働相と増田寛也総務相は六日午後、市町村の職員が総額二億円以上の国民年金保険料を着服していた問題について会談し、職員の処分内容や刑事告発の有無などについて再調査し結果を速やかに公表することで合意した。

 全国の市町村に対する再調査の結果は二十一日をめどに集約される方向だ。

 総務相を訪ねた舛添氏は会談で「市町村が一番の伏魔殿だ。盗っ人は最後の一人まで、草の根をかき分けても探し出さないといけない」と指摘。「行政の長が刑事告発の姿勢を示さないと年金制度の再構築はあり得ない。逮捕者が出ることもあると腹をくくって対応したい」と、厳しい姿勢で取り組む考えを強調した。

 増田氏は「調査は大至急やらないといけない」と応じるとともに、「過去に公表もせず甘い処分があったのも事実で、何も(対応を)していないものもあるようだ。実態を把握した上で、国民に分かるよう公表したい」と述べた。

 これ受け社会保険庁は全国の市町村に対し、あらためて着服の有無を調べた上、(1)処分内容(2)告発状況(3)着服額の返済状況(4)市町村での公表内容―の回答を求めることを決定。十四日までに各地の社会保険事務局に回答を求める。

 社保庁職員による着服事案に関しては、職員が受けた判決内容や当時の新聞記事などまで徹底的に調査し早急に結果を取りまとめる。

市区町村でも着服2億円 国民年金保険料など

2007/09/03 中国新聞ニュース

 公的年金の記録不備問題に絡み、一九六一年度の「国民皆年金」スタート以降、二〇〇一年度まで国民年金保険料の収納事務を扱っていた市区町村で、職員らによる保険料着服が二十三都道府県の四十四自治体で総額二億七十八万円に上ることが三日、社会保険庁の調査で分かった。

 また社保庁職員による年金保険料などの着服は、六二年度の同庁発足から〇六年度までに計五十件、総額一億四千百九十七万円と新たに判明。いずれも総務省の年金記録問題検証委員会に同庁が資料を提出した。

 納付記録はすべて訂正済みで給付には影響がないとされるが、これまでに不正が指摘されていた社保庁だけでなく、市区町村職員の着服が多数発覚したことで、年金記録をめぐる国民の不信感はさらに高まりそうだ。

 自治体職員の着服は、古くは六六年度から、収納事務を国に移管する直前の〇一年度までに各地で発生。回数で最多の三件が起きた栃木県日光市では、八四―八七年度にまたがる事例だけで五千七百三十六万円に上った。

 一方、社保庁職員による着服は、年金保険料が二十二件(約三千四百万円)、給付された年金が十三件(約八千万円)、健康保険関連の給付金などが十五件(約二千八百万円)。計五十件のうち三件で被害弁済できていない。四十一人を免職、三人を停職としたが、ほかは職員の退職や死亡などで処分していない。

 刑事告発したのは二十七件、うち十一件で有罪。社保庁が自発的に公表したのは二十四件にとどまった、同庁は「九八年度以降はすべて処分、公表している」という。

 八月三十一日に閣議決定された政府答弁書では、社保庁職員の着服などの不正は九五年以降で二十六件、総額約一億千三百万円とされていた。

日本、群抜く高齢国に 国連、年金制度充実を提言

2007年06月20日 中国新聞ニュース

 【ニューヨーク20日共同】国連経済社会局は19日、「高齢化する世界における発展」をテーマにした報告書「世界経済社会調査2007」を発表し、2050年には日本が先進国の中で「群を抜く高齢化国」になると指摘した。

 報告書は、全世界的に、1950年代に47歳だった平均寿命が、2045−50年には75歳まで伸びると予測し、国や地域を問わず高齢化社会の到来は避けられないと強調。お年寄りが安心して暮らせるよう年金制度の充実を求め、経済成長を持続させるため女性や高齢者に対する雇用拡大を提言した。

 報告書によると、日本で60歳以上の人が人口に占める割合は05年には26%だが、50年には42%に拡大すると予測。この間、米国は17%から26%の伸びにとどまる見込み。

 高齢化する期間も極めて短く、フランスでは65歳以上の割合が7%から14%に増えるまでに100年近くかかり、さらに21%になるまでに40年かかるが、日本は7%から21%までわずか40年で到達する見通しだ。

2時間半、システム障害 年金相談が一時ストップ

2007/06/10 中国新聞ニュース

 神奈川、兵庫、福岡など全国二十三県の百三十カ所の社会保険事務所で十日午前八時半から、公的年金の記録を管理する社会保険庁のオンラインシステムに接続できず、相談に来た加入者らの記録照会ができなくなった。社保庁などの作業により約二時間半後の午前十一時前に全面復旧した。

 公的年金記録の管理不備問題で社保庁に対する批判が強まっている中でのシステム障害の発生は、社保庁への信頼を一段と低下させた。

 社保庁は、ホストコンピューターのプログラムに不具合があった可能性があるとみて障害の原因を調べている。

 全国三百九の社会保険事務所では週末の九、十両日、自分や家族の年金記録の確認を希望する加入者らに対応するため臨時に相談窓口を開設。システム障害で照会ができなくなった各事務所では、相談に訪れた人たちに対し、照会結果を後日郵送するとして取りあえず申請書類に記入してもらう措置を取った。

 社保庁によると、午前九時半に相談を開始するため、各事務所の職員が午前八時半にシステムを起動しようとしたが、接続できなかった。

 障害が発生したのは神奈川、兵庫、福岡のほか、秋田、群馬、山梨、新潟、静岡、岐阜、富山、石川、福井、岡山、徳島、香川、高知、愛媛、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄の各社会保険事務局管内にある社会保険事務所。

 システムは、都内にあるホストコンピューターと全国の社会保険事務所などをオンラインで結び、加入者らの保険料納付など公的年金に関する記録を照会できる。

 障害が発生した福岡県直方市の直方社会保険事務所では、業務開始前から並んでいた約二十人に相談に対応できないことを説明した。

「最大1400万件」不明 年金記録不備、厚労相認める

2007/06/06 中国新聞ニュース

 社会保険庁の年金記録不備問題で、基礎年金番号に統合されず該当者不明のまま「宙に浮いた」記録約五千万件とは別に、紙台帳で管理されていた厚生年金の手書き記録の一部が社保庁のコンピューターに入力されず、未統合のままとなっていることが六日、分かった。野党は「最大で千四百万件に上る可能性もある」と指摘。追及を一段と強める構えだ。

 問題の記録は一九五〇年代前半までのもので、持ち主は厚生年金を早期脱退した現在の高齢者。年金額が減ったり無年金になるなどの不利益を受けている恐れもある。

 六日の衆院厚生労働委員会で、民主党の長妻昭氏が「五千万件とは別に(未統合記録が)あるということでよいか」と質問。柳沢伯夫厚生労働相は「結果としてそういうことになる」「統合されていない記録もある」と述べた。

 ただ未統合分の件数について、柳沢氏は「持ち合わせていない」と答弁。長妻氏は「(未統合の)五千万件が六千万件になるかもしれない」と今後明示するよう求めた。

 委員会質疑などによると、問題の記録は「旧台帳」と呼ばれ、一九五四(昭和二十九)年四月以前に会社勤務をやめ、厚生年金を脱退した人の保険料納付状況などが記されている。旧台帳分の記録件数は、社保庁が確認できる八七年時点で約千四百三十万件。

 年金の支給開始が近づき、受給者本人から記録確認を受ける際などに旧台帳に該当する事例はその都度、データ入力して基礎年金番号に統合しており、現在の未統合件数はこれより減っているという。

 厚生年金制度は四二年に労働者年金制度として始まり、旧厚生省は加入者の記録を四種類の紙台帳で保存。これを六二年発足の社保庁が引き継ぎ、八〇年代に記録管理をオンライン化すると同時にすべてマイクロフィルムに収めた。その上で三種の台帳分はいずれもコンピューターにデータ入力したが、旧台帳だけは入力漏れのままだった。

訂正には一定の証拠必要 年金記録で社保庁

2007/06/05 中国新聞ニュース

 参院厚生労働委員会は5日午後も、社会保険庁改革関連法案の質疑を続け、社保庁が管理する公的年金記録の不備問題に質問が集中した。

 社保庁、加入者本人の双方に記録がない場合の訂正をめぐり、社保庁の青柳親房運営部長は「さまざまな材料を寄せ集めないといけない。(以前勤務した事業所の)同僚や事業主の証言も有力な材料であることを否定しないが、何か1つだけですべてが解決するということではない」と述べ、訂正には一定の客観的な証拠が必要との認識を示した。

 記録問題を審査するために設置が決まった第三者委員会と、既に存在している「社会保険審査会」との関係について、青柳運営部長は「審査会は一定の権限が与えられた国の機関なので、第三者委員会がどのような結論を出しても不服であれば、審査会に不服申し立てができる。審査会の決定が最終的な決定になる」と述べた。

 柳沢伯夫厚生労働相は、記録問題で社保庁に対する国民の批判が強まっていることについて「今こうしたことが明らかになった段階では、十分な対応ができていないというご批判は甘んじて受けなければならない」と述べた。

年金特例法案を強行可決 きょう衆院通過

2007/05/31 中国新聞ニュース

 社会保険庁管理の年金記録の不備により年金に不足がある受給者が、本来の支給額を受け取れるようにする「年金時効撤廃特例法案」が三十日夕の衆院厚生労働委員会で自民、公明の与党の賛成多数で可決された。法案内容、審議とも不十分として反対する野党を押し切り、与党が約五時間の審議で採決を強行した。

 柳沢伯夫厚生労働相は質疑で、記録訂正により年金額が増えたのに時効により減額されている受給者が二十五万人で、追加支給することになる総額は約九百五十億円に上るとの推計を明らかにした。このうち国庫負担は約六十億円。今後に判明する分は含んでいない。

 与党は三十一日の衆院本会議で、社会保険庁改革関連法案とともに可決、参院に送付する方針。

 政府は特例法案採決に先立ち、約五千万件に上る該当者不明の年金記録の受給者との照合作業を一年程度で終えるとの方針を発表した。政府、与党には一連の対策を矢継ぎ早に打ち出すことで、七月の参院選に向け年金問題が争点になることを回避したいとの思惑があるとみられる。

 年金受給をめぐっては現行でも社保庁のミスなどで欠落した保険料納付記録が年金受給開始後に判明した場合、受取額が増額される。ただ差額は時効の規定により、さかのぼって五年間分しか受け取れないため、特例法案は時効を撤廃した。

 同法案は、与党が年金記録不備問題に対する国民の批判の高まりを受け二十九日に議員立法で提出したばかり。野党は与党の国会運営について「強引で拙速だ」と批判、三十一日の衆院本会議に柳沢厚労相の不信任決議案、桜田義孝衆院厚生労働委員長、逢沢一郎衆院議院運営委員長の解任決議案をそれぞれ提出する構えだ。

 野党は二十五日の厚労委で社保庁法案を強行採決したことなどを理由に三十日の同委で桜田委員長の不信任動議を提出したが、自民、公明の反対多数で否決された。

記録復元の長期化必至 原則は本人の「申請」

2007/05/31 中国新聞ニュース

 社会保険庁の年金記録不備問題で、政府が三十日に公表した対応策は「二○○八年度までに五千万件の未処理データの処理を完了する」とスピード感を強調しているが、この目標は社保庁が管理記録の照合作業を終える期限にすぎない。基礎年金番号と統合されず「宙に浮いた」未処理記録が完全に解消されるには、かなり長期間かかりそうだ。

 今回の対応策でも、受給者側が何もしなくても、政府がコンピューター内部の記録を自動的に復元して年金の支給額を補正してくれるわけではない。社保庁は受給者本人の申し出を前提に支給するという「申請主義」を崩していないからだ。来年十月ごろに社保庁から郵便物を受け取った人は、中身を注意深くチェックする必要がある。

 社保庁の今後の手順は、まず受給者記録と未処理記録の照合(突き合わせ)を通じて「記録漏れ」情報を一つ一つあぶり出す。その上で個々の情報に基づき、名前や生年月日などから該当するとみられる受給者に対し、「記録に漏れがありませんか」と郵送で通知、注意を呼び掛ける。

 ただし、この通知では「Aさん名義のX年―Y年の分はあなたの記録ですか」など具体的な情報は示されない。「本人であると百パーセント断定できないのに、詳細な個人情報を開示できない」(社保庁幹部)ためだ。

 記録漏れの可能性を通知された人は、心当たりがあれば社会保険事務所の窓口に足を運び、自分の記録を復元するよう申請。社保庁側はこれを受け、本人の申告内容と個別の情報が一致することを確認して記録を統合、訂正する。

 通知を受けた受給者がこうした手続きを踏まない限り、未処理記録の解消は進まない。しかも、五千万件の中には住民票を移動せず転居を繰り返した人など「追跡が難しいデータが多い」(幹部)。一九八○年代まで手書きで管理していた記録の紛失例も指摘され、混乱が長引くことも予想される。

社保庁法案の採決見送り 与党、31日に衆院通過図る

2007/05/29 中国新聞ニュース

 自民、公明の与党は二十九日、衆院本会議で同日予定していた社会保険庁改革関連法案の採決を見送り、年金記録不備問題で受給者を救済する「年金時効撤廃特例法案」を国会提出した。社保庁法案とセットで早急に衆院を通過させる方針だ。

 同特例法案について与党は三十日の衆院厚生労働委員会で可決し、社保庁法案とともに三十一日の衆院本会議で採決、参院に送付し、今国会で成立させたい考えだ。

 一方、民主党など野党は年金記録不備問題に関する審議が不十分などとしており、社保庁法案の採決に合わせ柳沢伯夫厚労相の不信任決議案などを提出する。七月の参院選をにらんだ与野党の激しい駆け引きが続きそうだ。

 社保庁法案について、与党は当初、二十九日午後の衆院本会議で可決し、参院に送付する方針だった。しかし、安倍晋三首相が同特例法案の提出を指示したことや出口となる参院の自民党側の意向を受けて、両法案を同時に処理すべきだと判断したとみられる。

 これに対し民主党は二十九日の役員会で「与党は社保庁が管理する年金記録の不備問題について審議を尽くさないまま二十五日の衆院厚労委で採決を強行した」として、柳沢氏のほか桜田義孝衆院厚労委員長の解任決議案を提出することを確認した。

時効撤廃し満額支給へ 与党、年金特例法案提出

2007/05/29 中国新聞ニュース

 自民、公明両党は二十九日午後、社会保険庁が管理する年金記録の不備により、受け取った年金に不足がある受給者に本来の支給額を過去にさかのぼって満額支払うことを可能にする「年金時効撤廃特例法案」を国会に提出した。

 現行制度でも、社保庁側が保存する保険料の納付記録に欠落があったことが後で判明すれば、正しい記録に基づく受給額との差額を受け取ることができる。しかし、会計法が定める時効により五年間分しか支給されないため、特例法案はこの時効を撤廃した。既に死亡している受給者の遺族も差額支給の対象にする。

 また記録の管理があまりにもずさんだったとの反省から、政府に対し年金の個人情報を正確な内容とするため万全の措置を講じる責務を規定した。

 提出に先立ち自民党は、年金記録の不備問題への対応を検討する緊急調査委員会の初会合を党本部で開き、約五千万件に上る該当者不明の年金記録が誰のものか確認する作業を一年程度で完了するよう政府に求める方針を決めた。

 中川秀直幹事長は会合後の記者会見で「作業は膨大で時間を要するが、行政の怠慢、不作為の問題であり、行政の責任において早急に決定し、完遂させたい」と強調。また午前の会見では年金記録の不備問題について「歴代の社会保険庁長官の責任も明確化しないといけない」と述べた。

領収書なくても確認手続き、首相が年金支給漏れ対策表明

2007年05月26日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 安倍首相は25日の衆院厚生労働委員会で、保険料の納付記録が年金額に反映されない「公的年金の支給漏れ問題」に関する政府・与党の対策を明らかにした。

 時効となる過去5年を超える支給漏れも、全額補償する救済法案(議員立法)を秋の臨時国会に提出することに加え、受給者が領収書をなくしていても、保険料納付の事実を確認する新たな手続きを策定する方針を打ち出した。

 さらに、該当者不明の納付記録約5000万件の全件調査を今後2年程度をめどに実施し、問題の全容解明を目指す。

 安倍首相は委員会で、「国民の視点に立って、行うべきことはすべてやるように指示した。救済の立法措置は、政府・与党一体となって実現に努力する」と強調した。

 年金支給漏れをめぐっては、自分の年金額や加入歴に疑問があっても、過去に保険料を納めたことを証明する領収書がなければ、社会保険事務所の窓口などで門前払いされることが大きな問題となっていた。

 だが、「数十年も前の領収書を持っている方が珍しい」との批判が強いことに配慮し、政府は、領収書がなくても可能な新たな確認手続きを策定するとした。具体的には、会社勤務の事実がわかる履歴書や社員名簿なども審査対象とし、合理性があれば、領収書に代わる証拠として認める考えだ。

 一方、国会審議では、社保庁のミスで、10年以上にわたる支給漏れ被害者の存在も判明し、過去5年分しか国が補償しない現行の時効制度の適用を除外すべきだとの意見が出ていた。

 5000万件の全件調査では、問題がありそうな約2880万件を中心に、年金受給者の「名前」「生年月日」「性別」などで検索し、関連がありそうな記録が見つかれば、本人に注意喚起する通知を行うとしている。検索には新しいソフトウエアの開発が必要で、調査には約10億円の費用がかかるとしている。

 また、年金の加入期間が25年に満たない無年金者も、市町村が保管する古い書類も含めて、関連する記録がないかどうかを調べる。記録が見つかれば、年金受給権が発生する25年以上の加入期間を満たす可能性があるためだ。

 このほか、社保庁のコンピューター内の記録の原本である手書き資料やマイクロフィルムとの照会作業を実施するとした。

5千万件、誰の記録? 基礎年金番号に未統合

2007/05/25 中国新聞ニュース

 衆院厚生労働委員会の審議では、民主党が「年金記録五千万件が誰のものか分からなくなっている」と記録の未統合問題を追及してきた。これに対し、柳沢伯夫厚生労働相は二十五日の答弁で、既に年金を受給している人の記録から確認に乗り出す方針を示した。

 未統合問題は、一九九七年に基礎年金番号が導入されたことに伴い、本来は公的年金加入者一人につき一つの記録に統合されるべきだったのに、統合されないままの記録が多数残っていることを指している。

 九六年までは、同じ個人の年金でも、国民年金か厚生年金かなどの種類や、勤務先が違えば別々に番号が付与されていた。例えば就職して厚生年金に加入、転職して厚生年金に加入し続け、その後自営業になった人は二つの厚生年金番号と一つの国民年金番号を持っていた。

 基礎年金番号スタートで、加入者には新たな番号が与えられ、過去の加入記録は新番号の下に名寄せ(統合)された。しかし、九六年以前の記録五千九十五万千百十三件が、現在まで誰の記録にも統合されないまま残っている。社会保険庁は「既に死亡した人の記録も少なくない」「年金支給が始まる際に順次統合を進めており、実害はない」などと説明。

 だが受給年齢である六十―七十九歳の記録が千九百万件、生年月日が不明の記録も約三十万件あることが判明。この記録が統合されることで加入期間が増え、年金額が増える人もいるはずだ。

 審議ではこれとは別に、未納分の保険料を過去にさかのぼってまとめて納付する「特例納付」の記録が社保庁に存在しないケースが多いことも分かった。記録がなければ年金額にも反映せず、「年金が消えた」という被害の訴えも少なくない。

 このほか、二○○一年四月から○七年二月までの六年間で、受給者の申し立てにより年金額が変更されたケースが約二十二万件あったなど年金への不信感を強める事例が次々に明らかになった。

5年間の時効撤廃を表明 首相、年金記録不備で

2007/05/25 中国新聞ニュース

 安倍晋三首相は二十五日午後の衆院厚生労働委員会で、公的年金の記録不備問題をめぐり、時効により本来の受給額との差額を過去五年間分しか受け取れない受給者について、この規定を撤廃して特別立法で救済する方針を明らかにした。

 これを受けて与党は、社会保険庁改革関連法案の採決を強行、自民、公明両党の賛成多数で可決した。二十九日の衆院本会議で可決して参院に送付し、今国会での成立を目指す。

 現在は、加入者の申告などで過去の保険料納付記録が確認されて受給額が増えても、さかのぼって五年間分しか支給されない。時効が撤廃されれば、過去の全期間分の支給が受けられる。領収書がなくても別の資料で納付が確認されれば認められる仕組みをつくるが、証明ができない限り支給が受けられないという事情は変わらず、どれだけの人が救済されるかは不透明だ。

 柳沢伯夫厚生労働相は、誰のものか特定できない約五千万件の年金記録について「最も問題なのは、年金を現に受給している方に支給不足が起こっているケースだ」と強調。五千万件のうち、六十歳以上か、生年月日が特定できない約二千八百八十万件について、年金を受給している約三千万人のデータと照合し、一致したケースなどについて本人に確認を求める考えを示した。ただしシステム構築に時間がかかるため、早くても二○○八年度になる見通し。

 また民主党が「一九八○年代に旧式の手書き台帳の記録をコンピューターに移した際、入力ミスが起きた可能性が高い」と指摘していることを受け、手書き台帳とコンピューターの記録を照合する考えも示した。

 社保庁改革法案の採決では、野党側が阻止するため、委員長席に詰め寄るなど騒然となった。法案は、社保庁の年金部門を非公務員型の新しい公法人「日本年金機構」に引き継ぎ、業務を広く民間に委託し、悪質な滞納に対する強制徴収は国税庁に委任する内容。

野党「年金不信が拡大」 参院選視野に対決色強める

2007/05/25 中国新聞ニュース

 野党各党は二十五日夜、与党が衆院厚生労働委員会で、野党の反対を押し切り社会保険庁改革関連法案を採決、可決したことについて「年金に対する不信感が拡大する」(福島瑞穂社民党党首)などと一斉に反発した。参院選を視野に各党は社保庁に関連する一連の問題を「政府、与党のいいかげんさ、横暴さを明らかにする格好の材料」(民主党関係者)と位置付け、安倍政権への対決姿勢を強めていく構えだ。

 ただ、安易に審議拒否に踏み切ることには「世論の批判を招き、一方で審議は与党が勝手に進めていきかねない」(民主党国対筋)との懸念がある。具体的な対抗戦術については世論の反応を慎重に見極めたうえで、週明け二十八日の幹事長、国対委員長会談などで決める方針。

 審議拒否以外では柳沢伯夫厚労相の不信任決議案提出や、桜田義孝衆院厚労委員長の解任決議案提出、衆院本会議場での長時間演説などが浮上している。

 採決後、民主党の鳩山由紀夫幹事長は、都内での街頭演説で、同庁による公的年金の加入記録の管理不備問題に関し「あて先不明の年金が五千万件ある。ここにいる誰かが必ずもらえない。一人でも多く救済したい」と訴えた。

 共産党の穀田恵二国対委員長は記者団に「解決策を明確に出さないまま質疑を打ち切るのは許せない」と強調。福島党首も「五千万人の年金記録が宙に浮いており、責任をはっきりさせてから成立を図るべきだ」と指摘した。国民新党の亀井久興幹事長も「問答無用の採決は許されない」と批判した。

労働時間10%減目標 10年後、高齢者就業率66%に

2007/04/07 中国新聞ニュース

 経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)が6日開かれ、既婚女性や高齢者の就業率引き上げやサラリーマンの労働時間短縮などの数値目標を明示した専門調査会の調査報告について議論した。報告は、働きたい人が働ける環境づくりや、有休休暇の完全取得など既存の働き方の転換を提言。さらに議論を深め、政府の行動指針にまとめることで合意した。

 諮問会議の労働市場改革専門調査会(会長・八代尚宏国際基督教大教授)がまとめた報告は、「働き方を変える、日本を変える−ワークライフバランス(仕事と家庭の両立)憲章の策定」と名付けられ、仕事と家庭のバランスを個々人の価値観で調整できる社会を目指すことを求めた。

 この中で、10年後の就業率については、25〜44歳の既婚女性で71%、60〜64歳高齢者は13ポイント引き上げ66%と具体的な数値目標を示した。

 また、フルタイム労働者の年間実労働時間の平均を現在の2040時間から1割短縮し、1810時間にする目標も掲げたほか、完全週休2日制の完全実施▽有給休暇の完全取得▽残業時間の半減−で達成できるとしている。

 主婦や高齢者らにとって、就業しないことが有利にならないよう税制や社会保障など制度面を見直すことが必要とも指摘。施策をまとめるため政労使による合意形成の仕組み作りを求めた。

 ただ、諮問会議のメンバーからは「労働時間の短縮は難しい」などの批判も噴出した。安倍首相は「長時間労働で経済が成り立つのはおかしい。ワークライフバランスは少子化対策の観点からも重要」と、報告を柱にした行動指針を取りまとめる考えを示した。

              ◇

 【労働市場改革の平成29年数値目標】

 就業率 15〜34歳の既卒男性   93%(89%)

     15〜34歳の既卒未婚女性 88%(85%)

     25〜44歳の既婚女性   71%(57%)

     60〜64歳        66%(53%)

     65〜69歳        47%(35%)

 フルタイム労働者の年間実労働時間  1810時間(2040時間) 

 (注)カッコ内は平成18年の数値

年金の運用益2.3兆円 10−12月期も黒字

2007/03/06 The Sankei Shimbun WEB-site

 国民年金と厚生年金の積立金を市場で運用する「年金積立金管理運用独立行政法人」は6日、昨年10−12月期の運用状況について、手数料などを差し引く前の総合収益額が2兆3795億円の黒字だったと発表した。黒字は2四半期連続。利回りを示す修正総合収益率は3.08%。国内株式が好調だった。

 平成18年度を12月末まで通算すると、総合収益額は2兆7372億円の黒字、修正総合収益率は3.63%。

 市場運用額(時価)は昨年末時点で81兆8975億円。構成比は国内株式22.72%、国内債券50.5%、外国株式15.21%、外国債券10.65%などだった。

厚生年金、現役の51%台 低出生率でも維持可能

2007/02/06 中国新聞ニュース

▽成長率次第で50%割れも

 厚生労働省は六日、厚生年金を受給するモデル世帯の給付水準(所得代替率)について、二○二六年度以降も現役世代の手取り収入の51・6%が確保できるとの新たな試算を正式に公表した。ただ、成長率の鈍化や少子化の一段の進行がみられた場合は、所得代替率が50%を割り込むとの見通しも併せて示した。

 昨年末に公表された新たな人口推計に基づく試算。○四年の年金改革の際より合計特殊出生率(一人の女性が生涯に産む子供数の推計値)が低くなったものの、政府が○四年当時に維持可能だとした所得代替率50・2%を上回る結果となったのは、景気の回復や好調な積立金の運用を反映したためだ。

 前提条件によって数値が変わる微妙な結果ともいえ、国民の関心の高い年金問題だけに、論議を呼びそうだ。

 ○六年度のモデル世帯の年金受給額は二十二万七千円で所得代替率59・7%。試算によると、代替率は徐々に低下するが、経済成長が順調な「基本ケース」では(1)出生率が一・五五まで回復すれば二○年度以降の代替率54・2%(2)新人口推計通りに一・二六だと二六年度以降51・6%(3)一・○六まで落ち込めば三一年度以降49・4%−となる。

 一方、○一−○二年ごろの経済動向を踏まえた○四年当時の経済見通しのまま、同様の出生率を当てはめた「参考ケース」では(1)二九年度以降50・3%(2)三五年度以降46・9%(3)三八年度以降43・9%−になるとした。

 年金財政は、受給者と支え手の人口構成、保険料収入や積立金の運用に影響する経済動向などに左右される。従来は、五○年の合計特殊出生率が一・三九になるとの見通しだったが、新人口推計では五五年に一・二六になるとの予測だったため、新たな年金財政試算が行われた。

 また、経済見通しは、一月に内閣府が発表した「日本経済の進路と戦略」に準拠。「一一年度に名目成長率3・9%を達成」と仮定し、長期的な実質成長率を1・0%としている。

年金額訂正、3年で11万件 受給者指摘で社保庁調査

2006/11月27日 中国新聞ニュース

 国民年金や厚生年金の受け取りが始まった受給者からの指摘を受け、社会保険庁が年金額や加入期間の誤りを訂正した事例が、2003−05年度の3年間で計約11万6000件に上ることが27日、同庁の内部調査で分かった。

 転職に伴う加入記録を受給者本人が申請し忘れたり、過去の勤務先がボーナス額を誤るなど受給者本人側に原因があるケースと、社保庁の記録管理ミスによって生じたものがあり、それぞれの割合は不明。

 訂正は、03年度が3万6751件、04年度4万5454件、05年度3万3925件。02年度以前の件数は把握していないという。民主党の指摘で調査を始めた。

 社保庁は1997年、それまで年金制度ごとに異なる年金番号を付与していたのに代え、加入者1人ずつの「基礎年金番号」を導入。複数の番号を持つ人の記録の統合作業を始めたが、従来の手書き記録をコンピューターに移し替える際、誤入力した可能性も指摘されている。

 同庁は、08年4月から本格的に開始予定の「ねんきん定期便」で全加入者に加入記録などを毎年伝えることで、こうした訂正につながる記録漏れを減らしたい考え。ただ、04年3月開始の58歳になった人への記録通知制度でも、今年9月末までに通知した約415万人のうち約37万人が再調査を請求しており、今後も記録漏れの指摘は増えそうだ。

年金の信頼性問われる 17年度、3万4000件の記録訂正

2006/11/24 The Sankei Shimbun 東京朝刊から

 社会保険庁は24日、平成17年度に、すでに年金を受給している人の年金額や加入期間を3万3925件訂正したことを明らかにした。9年の基礎年金番号導入時などに、年金記録の記載誤りや記載漏れがあったのが主な原因とみられる。本人の申し出によって判明したのが大半で、未払いや過払いがこれ以外にも多数生じている可能性があり、年金の信頼性が改めて問われそうだ。

 調査は7月に国会議員の資料請求に応じ、本人確認を踏まえた年金額確定後、全国の社会保険事務所から業務センターに訂正依頼のあった件数を集計した。この結果、15年度は3万6751件、16年度は4万5454件の訂正があったことも分かった。

 17年度末の年金受給者は約3650万件、同年度の新規受給者は約190万件で、訂正の多くは新規受給者から見つかったとみられる。

 調査では訂正理由を把握していないが、8月末から行われている納付記録相談では、転職経験者が複数の年金手帳を持っていたり、氏名の漢字の読み間違いで記録が継続されていなかったりした例があった。社保庁はこうした入力誤りに加え、年金額確定後に古い年金手帳が見つかったケースなどがあったとみている。

 柳沢伯夫厚生労働相は同日の会見で、「(訂正件数が)あまりにも多いと、社保庁の記録がどれだけ正しかったのかという信頼性にもかかわる」と懸念を示した。

団塊夫婦5500万円 年金額、保険料の4倍

2006/10/02 中国新聞ニュース

 団塊の世代(一九四七−四九年生まれ)のサラリーマンの年金受給額は保険料負担に対して四・一倍、生涯の受給総額は夫婦で五千五百万円−。厚生労働省が団塊の世代が将来受け取る厚生年金の標準的なケースを試算したところ、こんな結果だったことが一日分かった。

 保険料総額に対する受け取る年金総額の割合(給付負担倍率)は、同時に試算した団塊ジュニア世代(七一−七四年生まれ)より有利。ただ、老後の生活を年金だけで賄うには不十分とも指摘されている。

 試算は、平均的な収入で四十年間厚生年金に加入した会社員の夫と、専業主婦の妻というモデル世帯を前提とした。団塊世代は中間の四八年生まれ、団塊ジュニア世代は最も出生数の多い七三年生まれで推計した。受給期間はそれぞれの平均余命までとした。

 試算によると、四十八年生まれの人は、厚生年金の報酬比例部分を六十歳、基礎年金に相当する定額部分を六十四歳から受け取るが、加入期間中の保険料負担額(事業主負担を除く本人分のみ)が計千三百万円なのに対し、受給額は計五千五百万円。給付負担倍率は四・一倍に達した。六十七歳の時点で、受給総額が負担総額を上回って「元が取れる」計算となった。

 一方、団塊ジュニア世代の支給開始年齢は六十五歳から。保険料負担額(同)計三千七百万円に対し、受給額は計九千二百万円。給付負担倍率は二・五倍で、団塊世代の六割程度にとどまる。受給が負担を上回るのは六年遅れの七十三歳だ。

 また、現役世代の賃金(手取り)と比較した年金給付水準を示す所得代替率は、団塊が54・7%、団塊ジュニアは50・2%という。

離婚したら年金いくら? 分割見込額を通知 10月から

2006/09/28 The Sankei Shimbun 東京朝刊から

 来年4月に始まる離婚時の厚生年金分割に備えて、社会保険庁は10月から離婚を考えている人を対象に「離婚したら老後にどれくらいの年金を受け取れるか」を知らせるサービスを始める。分割後の老齢年金の見込額を提供することで、離婚しても老後生活していけるかどうかの判断材料にしてもらうのが目的だ。

 年金分割は平成16年の年金制度改正で決まったもの。19年4月以降に離婚する夫婦が、事実婚を含む婚姻期間中に支払った保険料に応じて、その間の厚生年金を合算して最大50%まで分割できるようになる。分割にはもちろん、双方の合意が必要で、まとまらない場合は裁判に委ねる。

 10月から実施する社保庁の情報提供は、制度導入を半年後に控え、「準備と判断の材料にしてもらう」(社保庁)ための措置。

 年金の支給見込み額がある程度分かる50歳以上の人には、(1)離婚しない場合の額(2)最大限(50%)分割した額(3)希望する分割割合の額−の3パターンを提供する。

 一方、49歳以下の場合は、分割の対象となる婚姻期間中に夫婦双方が支払った保険料の記録などを通知。このデータをもとに社会保険労務士などに相談すれば、大まかな年金額が推計できるようにする。

 情報提供の希望者は10月以降、年金手帳や戸籍謄本などを社会保険事務所に持参して申し込む。事実婚の場合には、家族全員の記載がある住民票が必要になる。

 申し込みは全国の事務所でできるが、結果は住居のある事務所から通知する。窓口で受け取るか郵送かも選択できる。

 社保庁は、照会しても、もう一方の当事者には伝えないようにする。ただ、来年4月以降は、離婚後の照会に限って、元配偶者にも同じ情報を知らせる。

年金見込額通知 50歳以上全員と35、45歳 来年度から

2005/09/10 The Sankei Shimbun東京朝刊から

 社会保険庁は9日、年金の信頼回復策の一環として、厚生、国民両年金加入者への年金見込額の通知サービスを平成19年度から拡充する検討に入った。現在は50歳以上の希望者に限って照会に応じているが、これを希望の有無にかかわらず50歳以上全員に通知するほか、35歳と45歳も対象に加える考え。社保庁は20年度に「ポイント制」による本格的な通知システムを導入する予定だが、保険料不正免除問題で年金不信が強まったため、早急にサービス向上を図る必要があると判断した。

 年金を将来いくら受け取れるかの見込額については、人生設計に深く関係することから、国民の関心が強い。

 社保庁は現在、年金受給年齢が近づいた50歳以上の希望者に限って照会に応じている。拡充案では、本人が社保庁に照会を申し込まなくても、50歳以上の加入者全員に年金見込額を通知する。また、年金加入状況の通知を行う予定にしていた35歳と、さらに45歳にも見込額を通知する案を軸に調整を進めている。

 社保庁では、保険料の納付実績を点数化して見込額を一目で分かるようにするポイント制の導入を決め、20年4月からの実施に向けて準備を進めている。拡充案ではポイント制の前倒しも浮上したが、コンピューターシステムの修正費用が多額で、時間的な余裕もないことから、50歳以上に行っている照会サービスを充実させることになった。

 19年度中の実施を検討することになったのは、保険料不正免除問題で国民の年金不信を改めて招いたためだ。国民に年金見込額や年金加入記録を示すことで、信頼を少しでも回復させたいとの狙いがある。

 ただ、実現には予算が必要となるため、社保庁は「最終的には次期政権の判断」(幹部)としている。自民党総裁選に立候補し、次期首相就任が有力視される安倍晋三官房長官は「どれぐらい(保険料を)払い、将来いくらもらえるかを国民に通知する仕組みを、なるべく早く実行しなければならない」と主張している。

議員年金、「共済」と統合案…与党が近く検討会設置へ

2005年09月26日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 自民、公明両党は25日、国会議員互助年金(議員年金)を廃止して、国家公務員共済年金へ統合する案を軸に検討する方針を固めた。

 自民党の与謝野政調会長が25日、テレビ朝日報道番組で「自民党と公明党は(議員年金を)廃止しようという方針だ。議員が無年金になっては困るので、共済年金に引っ越してもらう」と述べた。

 与党は近く議員と専門家からなる検討会を設け、来年の通常国会に関連法案を提出する考えだ。

 これに関連し、自民党幹部は「世代別に両党から議員を選び、専門家も加えた10人以内の検討会を早急に設置したい」と語った。

 公明党は衆院選前に、〈1〉年金受給中の元議員らの受給額を10%削減する〈2〉議員年金を将来的に厚生年金と共済年金に一元化する――との案をまとめた。与党の検討会はこの案をベースにするとみられる。民主党は今国会に廃止法案を提出する予定だ。

 ◆議員年金=10年以上在職した国会議員が引退後、65歳から受け取ることができる。毎月約10万円、期末手当から約3万円を10年間払い込めば、議員を辞めた後に年間400万円余を受け取ることができる。在職3年以上10年未満でも、納付金の8割は戻る。優遇されているとの批判が出ていた。

首相、議員年金見直し指示 厚生・共済年金の一元化も

2005/09/23 The Sankei Shimbun

 小泉純一郎首相は22日夜、首相公邸での与党幹部との夕食会で、与党として議員年金について現行制度見直し案の取りまとめを早急に検討するよう指示した。また「被用者年金の一元化をぜひやりたい。自公両党で早速、どういう段取りでやるか取り掛かりたい」と述べ、厚生年金と共済年金の一元化に向けた具体策の検討を始めるよう求めた。

 議員年金については公明党の神崎武法代表が「早急に処理する必要がある」と指摘し、(1)現在の受給者の給付額を一律10%減らすよう修正(2)最終的には廃止し被用者年金と統合―との公明党案を説明。首相は「まず(現行制度を)廃止して暫定的にどうするか。どういうアプローチの仕方があるか、政策責任者で考えてほしい」と述べ、与党の政策責任者間で早急に検討するよう指示した。

 自民党幹部は議員年金見直しについて、来年の通常国会で処理することになるかとの記者団の質問に対して「そうなるだろう」と述べた。(共同)

年金さらに官高民低 最大年73万円差→45年後には152万円

2005/09/18 The Sankei Shimbun

厚労省など試算 一元化議論へ拍車

 サラリーマンと公務員の年金を比べると、現在は公務員世帯の方が年間五十四万−七十三万円多く、四十五年後には年間百十四万−百五十二万円に差が拡大することが、厚生労働省などの試算で明らかになった。政府・与党は、サラリーマンと公務員の年金の一元化を年金改革の柱にすえる考えだが、官民格差が今後、拡大する見通しとなったことで、一元化議論に影響を与えそうだ。(福島徳)

≪「職域加算」≫

 サラリーマンの年金である厚生年金と公務員の年金である共済年金。その決定的な違いは「職域加算」の有無だ。国家公務員や地方公務員の共済には職域年金という三階建て部分が加算される“特典”がある。「一般的に、本体(二階部分)に二割増しのイメージ」(厚労省)という。

 このため、夫婦二人の老齢年金(共済は退職年金)は、平成十七年度は月額でサラリーマン世帯が二十三万三千円に対して、国家公務員は二十七万八千円、地方公務員が二十九万四千円となり、四万五千−六万一千円上回る。

 さらに四十五年後の平成六十二年度には、サラリーマンが月額四十九万一千円なのに対して、国家公務員五十八万六千円、地方公務員は六十一万八千円と、月額で九万五千−十二万七千円に格差は拡大する。

 保険料率はサラリーマンが低いわけではない。国家公務員共済(国共済)を所管する財務省によると、同共済の保険料率は14・638%で、厚生年金の保険料率14・288%をやや上回るものの、地方公務員共済(地共済)に至っては13・738%でサラリーマンよりも低い。

 にもかかわらず、年金額が高い最大の理由は職域加算の存在。さらに公務員の平均年収がサラリーマンよりも高いこと。保険料算定のもとになる標準報酬月額(月給に相当)は、いずれも平成十五年度ベースで、共済は国家公務員が四十一万九千円、地方公務員は四十六万九千円。対して厚生年金は三十六万円。

 もっとも、共済側にも言い分がある。共済は年金支払いに備えるための積立金が厚生年金に比べて潤沢。仮に厚生年金と規模が同じと想定すれば、国家公務員は一・五倍、地方公務員は二・三倍の積立金がある計算で、厚生年金に比べて財政にゆとりがある。背景には、昭和三十年代に厚生年金の約二倍の保険料率を設定していたことなどがある。財務省では「今、保険料率を低く抑え、給付を厚くできるのは過去の運営努力」と強調する。

≪公務員特典≫

 ただ、共済年金の支払いには一兆八千億円余りの税財源が投入されていることも見逃せない。共済年金制度が導入されたのは国家公務員が昭和三十四年、地方公務員が三十七年。それ以前は退職後、税を財源とする恩給制度で所得保障をしてきた。この経緯から、今も共済には「追加費用」として税財源があてられ、平成十五年度は国家公務員に五千百八十七億円、地方公務員に一兆三千三百五十二億円が投入されている。両共済の収入総額の二割強を占めており、追加費用がなければ、今のような手厚い給付は不可能といえる。

 財務、総務両省は「あくまでも経過措置」と強調するが、共済制度導入以前に公務員歴のある人には生涯、税財源があてられるうえ、遺族年金の支給もあり、極めて長期にわたって税財源の投入が行われることになる。

 公務員の遺族年金には転給制度という特典がある。遺族年金の受給対象は(1)妻(夫)子(2)父母(3)孫(4)祖父母−の順で受給者が決まる。厚生年金は受給者が亡くなれば年金は払われなくなるが、共済は、例えば遺族年金を受け取っていた妻が亡くなれば、その子や父母に引き継がれ、極めて長期にわたって支給が続く。

 衆院選でサラリーマンと公務員の年金一元化をマニフェスト(政権公約)に掲げた与党が圧勝したことで、今後、政府・与党が両者の年金一元化に乗り出すことになる。しかし、共済側は、さまざまな特典を放棄してまで、財政状況がより厳しい厚生年金と統合して、給付水準を低めるようなことは避けたいのが本音だ。

                   ◇

 【職域加算】基礎年金(国民年金)に上乗せする所得比例の年金で、共済年金は厚生年金に相当する部分(二階建て)に加え、独自の年金として二階部分の20%相当の職域年金が加算される。この加算部分を職域加算という。

国民年金の赤字3倍に 厚生年金は黒字転換

2005/08/04 The Sankei Shimbun

 社会保険庁は3日、自営業者やパート労働者が加入する国民年金の2004年度決算の収支が、3年連続で赤字になったと発表した。赤字額は1707億円で前年度の500億円から3倍以上に膨らんだ。

 加入者が減少したのに加え、保険料納付率が改善せず保険料収入が減少。この結果、収入が1968億円減と大幅に減少した。一方、支出も受給者の減少で減ったが、減少額は761億円減と収入減を大幅に下回った。保険料は改正年金改革関連法の施行で、05年度から引き上げられたものの、納付率は60%台と低迷。今後も納付率が大幅にアップしない限り、国民年金財政は厳しい状況が続きそうだ。

 一方、民間のサラリーマンが加入する厚生年金は、国に代わって公的年金の運営を代行している厚生年金基金の代行返上による移換金収入が約5兆4000億円と大幅に増加したため、2年ぶりに黒字に転換。しかし、景気低迷などで相次いでいる代行返上分を差し引くと実質的には5兆1495億円の赤字。前年度の実質的な赤字3兆8000億円より増加した。

 将来の年金給付に備える積立金は、厚生年金が137兆6619億円で2509億円を積み増したのに対し、国民年金は赤字を埋めるために積立金を取り崩したため、残高は1620億円減の9兆6991億円となった。

 厚生年金は加入者数が増加に転じたほか、昨年10月から保険料率が引き上げられたため、保険料収入が2112億円増となるなど、収入は全体で1兆7455億円増えた。一方、支出増は1兆1717億円にとどまったため、収支は3379億円の赤字から2359億円の黒字に転換した。(共同)

年金運用基金が累積赤字解消 8000億円を初の国庫納付

2005/07/14 The Sankei Shimbun

 厚生労働省は14日、厚生年金と国民年金の積立金を運用する特殊法人「年金資金運用基金」の2004年度の運用結果が2兆2419億円の黒字だったと発表した。積立金は両年金の保険料収入から年金給付額を差し引いたもので、同基金の運用が黒字となったのは2年連続。旧年金福祉事業団から引き継いだ資産を含む運用の結果は、04年度末の累積で6008億円の黒字となり、発足以来初めて累積赤字を解消した。

 黒字が一定基準を上回ったため、本年度は国の厚生年金勘定に7522億円、国民年金勘定に600億円の計8122億円を納付、それぞれの年金給付に充てられる。国庫納付も発足以来初めて。

 基金は、積立金など87兆2000億円を運用。収益率が15.43%に上った外国株を中心に運用益を上げた。基金は「世界的な景気回復基調や、為替の円安効果があった」と分析している。

 公的年金の積立金は、基金のほか財政融資資金へも預託されており、04年度の金利収入は約1兆7200億円と見込まれることから、積立金全体の運用益は約3兆9600億円の黒字になる見通しだ。

 年金積立金は2000年度まで、全額を旧大蔵省資金運用部に預託した上で、旧年金福祉事業団が借り入れて運用していた。01年度から、旧年福事業団から累積損約1兆7000億円を含む資産を基金が引き継ぎ、現行方式となった。06年度からは新たに発足する「年金積立金管理運用独立行政法人」が、基金の業務を継承する。(共同)

 <公的年金の積立金> 厚生年金と国民年金の保険料収入から、年金給付額を差し引いた残額を、将来の給付に充てるため積み立てた資金。かつては日本道路公団などへの財政投融資の原資だったが、厚生労働省が01年度から特殊法人「年金資金運用基金」を通じて内外の株式や債券で自主運用を始めた。一部は財投債の購入に充てられている。国家公務員、地方公務員、私立学校教職員の共済年金は積立金をそれぞれで運用している。(共同)

社保庁職員ら80人処分、懲戒免職は2人 元長官らの監督責任も

2005/04/25 The Sankei Shimbun

 社会保険庁元地方課長の汚職事件に絡み、贈賄側企業「カワグチ技研」と関連会社から多数の同庁職員が接待や餞別(せんべつ)を受け取るなどしていた問題で、厚生労働省と社保庁は25日、職員2人を懲戒免職にしたほか、当時の上司の監督責任を問い元次長ら在職の4人を厳重注意とするなど計80人の処分を発表した。また、退職して処分できない元長官ら11人は国庫に寄付を求める。

 特定の業者との癒着で中央官庁がこれほどの大量処分をするのは異例。社会保険庁の一連の不祥事をめぐる処分はこれでほぼ終了した。

 処分は25日付で、内訳は免職2人。4−1カ月間の減給10分の1が計7人、戒告29人、訓告31人、厳重注意7人。免職は社会保険業務センターの中山喜志男・記録管理部長(56)と酒井豊・愛知社会保険事務局総務課長(47)。

 中山部長は経理課課長補佐時代などに5回のゴルフ接待旅行を受けた。酒井課長は経理課班長時代にゴルフ接待旅行を4回受け、20万−30万円の餞別と高級腕時計をもらった。

 減給や戒告は10万−1万円の金品やゴルフ接待を受けたりした幹部で、栃木社会保険事務局長らが含まれる。中元や歳暮を数回受け取った職員は訓告や厳重注意とした。

 社保庁は1月、退職者を含め職員100人が2社から金品・接待を受けたとの内部調査結果を公表。利害関係者からの接待などの禁止を定めた国家公務員倫理規定を逸脱しているとし、21日の国家公務員倫理審査会で処分内容が話し合われた。

 カワグチ技研は、金銭登録機の導入をめぐり元地方課長から便宜を受けた見返りに現金50万円を渡したとして、1月に社長が贈賄罪で有罪判決を受けた。昨年まで5年間の社保庁との契約総額は関連会社と合わせ、40億円近くに上った。元地方課長は1月に懲戒免職になり、収賄罪で有罪判決を受けている。(共同)

障害年金の支給認める 無年金問題の判断避ける

2005/04/22 中国新聞ニュース

 成人学生の国民年金加入が任意とされていた時期に未加入のまま重い障害を負ったため、年金が受け取れないのは制度の不備が原因で違憲として、福岡県の男性(39)が国に不支給処分の取り消しと二千万円の賠償を求めた訴訟の判決で、福岡地裁の一志泰滋裁判長は二十二日、年金受給資格があったと認め、不支給処分を取り消した。賠償請求は棄却した。

 判決理由で一志裁判長は「原告は二十歳未満時に障害の前兆にあたる症状で診断を受けており、受給資格があった」と指摘し、国の立法上の不作為や憲法違反については判断しなかった。

 未成年時に障害を負った場合は、成人した時点で障害基礎年金を受け取ることができる。判決後、弁護団は「現実的な救済をしており、実質的に勝訴と考えている」と話している。

 学生無年金障害者訴訟は九地裁で起こされ、東京、新潟、広島の三地裁判決が国側の立法不作為や憲法違反を認めた。しかし、三月の東京高裁判決で、障害者側は逆転全面敗訴した。

 訴状などによると、男性は、大学入学後の未成年時に不眠などの症状を訴えて病院で受診。その後、二十歳を過ぎた時期に精神疾患と診断された。両親が障害基礎年金を申請したが、未加入を理由に不支給処分となり、二度の審査請求も棄却された。男性は現在、重度の障害で、介護なしでは日常生活が困難という。

 原告側は「制度の不備を解消せず、学生の不利益を放置したのは憲法違反で、救済のための立法を怠った」と主張。国側は「制度の設計は立法府の広い裁量権に委ねられる」と反論した。

 障害者側が初めて勝訴した東京地裁判決をきっかけに、昨年十二月、同じ境遇の元学生、主婦を救済するため月額四万〜五万円を支給する特別障害給付金支給法が成立。今年四月から施行された。

7―9月の年金積立金運用結果、572億円の赤字

2004/12/16 読売新聞 Yomiuri On-Line
 厚生労働省は16日、年金資金運用基金が今年7―9月期に年金積立金を運用した結果が、572億円の赤字だったことを明らかにした。運用結果が赤字になったのは、2003年1―3月期に4347億円の赤字を記録して以来。

 原油価格の高騰や、日米ともに景気の減速懸念が高まったことから、時価総額で全体の22%を占める国内株式の運用が低迷したことが原因だ。全体の13%を占める外国株式は、円安傾向のため円ベースでの収益は黒字となった。

 一方、今年4―6月期が株高によって3900億円の黒字だったことにより、今年度上半期(4―9月)の運用結果は3328億円の黒字だった。

政管健保、09年度の累積赤字3700億円に…社保庁

2004/12/13 読売新聞 Yomiuri On-LIne
 社会保険庁は13日、中小企業のサラリーマンらが加入する政府管掌健康保険(政管健保)の2005―2009年度の収支見通しをまとめ、同保険事業運営懇談会に報告した。

 それによると、現在の保険料率(年収の8・2%。労使折半)では、赤字の穴埋めに使う事業運営安定資金が2008年度には枯渇し、2009年度には同資金の累積赤字が3700億円に達する。

 厚生労働省は2006年の通常国会に医療制度改革関連法案を提出する予定だが、同庁は「制度改正などで医療費適正化が進まなければ、今後、保険料率を引き上げる必要が生じる」と分析している。

 収支の悪化は、加入者の高齢化などにより、保険給付や老人保健制度への拠出金などの支出が増加しているためだ。

 同庁の試算によると、政管健保は、単年度収支では、2005年度は400億円、2006年度は100億円の黒字だが、2007年度に700億円の赤字となり、2008年度には1700億円、2009年度は3000億円と赤字額が増加する。

 また、中小企業のサラリーマンの賃金上昇率を全体より0・3%低めに見積もった試算では、2006年度には収支が均衡し、2007年度に1000億円の赤字となる。以後、2008年度は2100億円、2009年度は3600億円と赤字額が膨れ上がる。事業運営安定資金の累積赤字も2009年度には5200億円に達するという。

社保庁、職員用マッサージ機予算要求を停止

2004/11/07 読売新聞 Yomiuri On-LIne
 年金保険料の無駄遣いとの批判が出ている社会保険庁の職員用マッサージ機について、同庁は、各社会保険事務局・事務所に一律5万円を支給していた「健康管理器具経費」を来年度、予算要求しないことを決めた。

 同庁によると、同経費は毎年度、1560万円を計上し、都道府県ごとの社会保険事務局と全国265の社会保険事務所に均等配分。事務局・事務所は毎年度、それぞれが必要と判断した健康器具を購入していた。5万円を超えるマッサージ機などは、年金保険料で賄われている一般事務費のうち、職員の仕事の効率を高めることを目的とした「職務能率向上経費」(今年度2億1000万円)から一部支出する場合もあったという。

社保庁の監修料「分配」、代々ノンキャリアの独壇場

2004/11/07 読売新聞 Yomiuri On-LIne
 6日明らかになった社会保険庁による組織的な監修料の管理・分配システムは、ノンキャリア職員の間で代々引き継がれ、厚生労働省から異動してくるキャリア職員に知らされることのない「ノンキャリア利権」だった。システムの“元締”の経理課予算班を経験した幹部職員は、ノンキャリアトップの課長職に上り詰めるケースが多く、社保庁OBの1人は「予算班は、庁内で最も力がある部署だった」と証言した。

 全国の社会保険事務所などで使う金銭登録機の納入を巡り、情報機器販売会社「カワグチ技研」から現金50万円のわいろを受け取ったなどとして、収賄罪で起訴された元同庁地方課長・渡辺俊之被告(56)も、1992―93年にかけて、経理課予算班に在籍していた。地方課長はノンキャリアの出世コースの中で、“最高峰”の1つだ。

 渡辺被告が関係者に、「(経理課勤務当時も)監修料の分配はあったが、今より金額は少なかった」と漏らしたことがあった。

 20年近く前に経理課予算班で勤務したOB職員は「組織的なものは昔はなく、最近になって始まったのではないか」と話す。警視庁捜査2課も、監修料の組織的な管理・分配システムは十数年前に始まり、次第に金額も膨らんでいったとみて、社保庁関係者から詳しく事情を聞いている。

 経理課は、同庁の本庁の各課から吸い上げた監修料の中からタクシー代分を取り置いており、同課担当者の机の中には、3千万円以上の現金が保管されていることもあったという。

 キャリア職員の多くはこうした実態を知らされておらず、キャリア職員として社保庁で勤務したことがある厚労省OBは、「普段の仕事でも(ノンキャリア職員の部下からは)情報が上がってこないなど、距離を感じていた。組織的に監修料を管理していたなんて許せない」と憤った。

 監修料問題は、尾辻厚労相や、約400人に上る幹部職員らが給与の一部を自主返納する事態に発展した。厚労省では今後、国庫補助事業と、厚労省による買い上げ部数が発行部数全体の半数以上を占めるケースについては、監修料を一切受け取らないことを決めた。

 こうした厚労省の対応に、社保庁での勤務経験がある同省キャリア幹部の1人は、「ルールを明確にして不透明な会計をなくすことは大切。しかし結局は、キャリアとノンキャリアの壁を徹底的に取り払い、課題に一丸となって取り組まなければ、社保庁の真の改革はあり得ない」と言い切った。

40万人が年金受給資格に足りず 厚労省初めて公表

2004/08/10 The Sankei Shimbun
 厚生労働省は10日、国民、厚生両年金の受給資格期間の原則25年に満たないため、年金が受給できない可能性のある65歳以上の人が、全国に約40万7000人いることを初めて明らかにした。

 中には、公務員などの共済年金に加入していた期間を合算すれば受給資格を満たす人もいるため、納めた保険料が掛け捨てになる人が実際にどのくらいいるかは不明という。

 国民年金法などによると保険料納付期間が原則25年にならないと受給資格が得られない。ただ、国民年金には70歳までの特例任意加入制度が、厚生年金には70歳以上でも受給資格を得るまで加入できる高齢任意加入制度があり、こうした制度を活用すれば受給が可能になる人もいる。

 制度別の内訳は、国民年金だけが19万3000人、厚生年金だけが12万4000人で、複数の制度に加入していた人は9万人いた。年齢別では65歳が13万2000人で最も多く、70歳以上でも10万1000人いた。男女別では、男性17万2000人に対し、女性は23万5000人いた。

 民主党の長妻昭衆院議員の質問主意書に答えた。

社会保険庁、年金保険料で防音壁建設や楽譜購入

2004/08/10 The Sankei Shimbun
 厚生労働省は10日、社会保険庁社会保険業務センター高井戸庁舎にある厚生室の防音壁建設費の一部に年金保険料を充てていたことを明らかにした。職員の福利厚生を名目に年金保険料で楽譜や譜面台も購入していた。

 民主党の長妻昭衆院議員の質問主意書に対する答弁書で分かった。長妻氏は「年金保険料をこんなものにまで使うとは、度を越している」と批判している。

 答弁書によると、社会保険業務センター高井戸庁舎では、職員が休憩時間などに楽器を演奏するための厚生室を建設した。ただ、具体的な建設費については言及しなかった。また、楽譜、譜面台購入にそれぞれ2993円、4200円を支出した。

 さらに、年金保険料で購入した公用車の更新に際して、自動車販売業者に下取りに出した車を社会保険庁職員が相場より安く購入したケースが3件あったことや、公用車2台をそれぞれ下取り価格1050円で業者に「投げ売り」(長妻氏)していたことも明らかになった。

 厚労省は答弁書で、同庁職員による下取り公用車購入について「法令に違反するものではないが、誤解を招きかねず、慎むべきだ」としたが、長妻氏は「社保庁職員による下取り車の購入は役得と言えるものだし、業者への下取り価格も妥当な額とは思えない」などと反発している。

実質赤字は3・8兆円 03年度の厚生年金

2004/08/06 The Sankei Shimbun
 社会保険庁は6日、2003年度決算で初めて3000億円余りの赤字に転落した厚生年金について、厚生年金基金の代行返上による移換金約3兆5000億円の一時的増収がなければ、赤字額は実質的に約3兆8000億円まで膨らんでいたと発表した。

 一方、自営業者らが加入する国民年金の03年度決算も2年連続赤字で、赤字額は500億円。前年度同様、国民年金積立金から取り崩して補てんした。

 厚生年金の赤字は、厚生年金積立金から2913億円を初めて取り崩し、穴埋めした。

 年金制度改革関連法の成立で、10月から保険料は毎年引き上げられるが、同庁は「赤字傾向は厚生年金が09年度、国民年金で08年度まで続く」(幹部)としている。

 厚生、国民両年金とも03年度予算ベースでは黒字を見込んでおり、予想以上に年金財政が悪化していることをあらためて印象づけた。

加給年金9億円を過払い、社保庁が設定ミス

2004/08/06 読売新聞 Yomiuri On-Line
 社会保険庁は6日、65歳未満の配偶者や18歳未満の子供がいる場合に老齢厚生年金に加算される加給年金を、本来は支給対象ではない約3400人に誤って支給していたと発表した。過払いの総額は約9億円となる見込みだ。

 同庁は対象者と個別に連絡を取って説明した上で、過払い分の返納を求めていくことにしている。

 加給年金は、配偶者に加入期間が20年以上ある老齢厚生年金が支払われる場合、支給されない。だが、同庁が1999年6月に給付システムを見直した際、コンピューターのプログラムの設定に誤りがあり、2004年1月にミスに気づくまでの間、停止されるべき加給年金が支払われていたという。最も多い人で、約114万円が誤って支給された。

 これとは別に、老齢厚生年金の年金額の算定にあたって、本来は対象ではない収入を算定の基礎となる額に誤って算入してしまったため、全国の91人に対し、総額約20万円の年金を払い過ぎていたことも明らかにした。これもプログラムの誤りによるものだと説明している。

 年金の支給ミスでは7月下旬、約1800人に対して、老齢基礎年金に特例的に上乗せされる振替加算の払い過ぎが明らかになったばかりで、同庁のずさんな事務処理が改めて浮き彫りになった。

国民年金の保険料納付率63・4%、11年ぶりに改善

2004/07/28 読売新聞 Yomiuri On-Line
 
 社会保険庁は28日、自営業者らが加入する国民年金の保険料納付率の2003年度の納付実績をまとめた。

 納付率は63・4%となり、過去最悪だった前年度より0・6ポイント上昇し、1992年度以来で11年ぶりに改善した。

 だが、保険料免除者が増えたことが納付率上昇の主な要因で、厚生労働省が目標としている「2007年度の納付率80%」の目標を達成するのは困難との見方が多い。

 2003年度末の被保険者数は2240万人で、前年度に比べて3万人増加した。

 納付率を年齢別にみると、40―44歳が低下した以外は上昇しており、特に34歳以下の若年層の上昇幅が大きかった。

 だが、若い世代ほど納付率が低い状況は続いており、20―24歳の納付率(48・6%)と5割を切ったままとなっている。

 地域別では、沖縄県の納付率が43・2%と最も低く、大阪府(54・1%)、東京都(58・2%)、宮崎県(59・9%)が続いた。納付率が最も高かったのは島根県の76・1%で、以下、新潟県(75・7%)、長野県(73・8%)、秋田県(73・7%)だった。33都道府県では上昇したが、14県は低下した。

 納付率が上昇の一因となった保険料免除に関しては、納付対象者が約35万人減ったことになる。

 前年度の所得が少なかったため保険料が全額免除となった人は2003年度末で約165万人で、前年度より約21万人増加。生活保護など受けている法定免除者は3万人、学生納付特例者は14万人それぞれ増加した。

 仮に保険料免除者を納付対象者に算入して計算し直した場合、2003年度の納付率は51・4%で、前年度(52・2%)より0・8ポイント悪化したことになる。

 国民年金の空洞化問題に関しては、民主党など野党が、国民年金に相当する部分の財源を全額税で賄う改革案をすでに示しており、抜本改革を求める声は今後さらに高まりそうだ。

小沢氏が代表就任辞退 自身も6年間未加入

2004/05/17 中国新聞ニュース
 民主党の小沢一郎代表代行は十七日、自身に国民年金未加入期間があったことが分かったとして、新代表の就任を辞退することを決めた。

 国会議員に加入が義務付けられる以前の一九八〇年四月から八六年三月までの六年間が未加入だった。小沢氏は「これでは小泉純一郎首相の未加入問題を追及できない」と説明しているという。

 民主党は十八日夕、党本部で両院議員総会を開催し、小沢氏を代表に選出する予定だった。菅直人代表の辞任に伴う民主党の代表選びは、振り出しに戻った形だ。

 小沢氏は昨年九月に旧自由党を解党し民主党に合流したばかり。

 小沢氏は、菅氏の辞意表明を受け後任人事の調整に当たった岡田氏から代表就任を要請され、十四日に受諾した。その際、小沢氏は党規約通りに代表選を実施するよう求め、執行部も受け入れたが、ほかに立候補の動きはなく、両院議員総会では小沢氏の当選が無投票で承認される見通しだった。

基礎年金番号、導入後も114万人に複数付与

2004/05/26 読売新聞 Yomiuri On-Line
 20歳以上の国民にそれぞれ割り振られる基礎年金番号が、114万人以上に複数与えられていたことが26日、社会保険庁の調べで明らかになった。

 番号があることを知らなかったり、年金加入時に番号を届け出なかったりして、新番号が付与されたのが原因と見られる。

 社会保険庁によると、1997年1月の制度導入後の番号を調べたところ、氏名、生年月日、性別、住所の4項目が完全に一致した114万人が、複数の番号を持っていたという。同庁は「届け出書類の基礎年金番号が空欄の場合は本人や企業に確認しているが、それでも分からない場合は新たに番号を付与せざるを得ない」としている。

 一方、制度導入前は加入する年金によって番号が異なっていたため、現在も1人が複数の番号を持つケースが残っている。同庁は98年から今年3月までに、このうち1330万人に重複の可能性があると通知し、630万人に重複があったことが判明した。

 この630万人と97年以降の114万人については、すでに加入記録が1本化されている。同庁は今後、未通知の550万人に照会し、回答のあった分は2006年度までに1本化する方針だ。

 加入者が複数の番号を持っていることを届け出ないままだと、加入記録が1本化されず、将来受給できる年金を満額、受け取れない可能性もある。ただ、社会保険庁では「年金受け取り開始の時点で改めて照会するので、現実にはこうしたケースはほとんどないはずだ」としている。

「今国会で成立させる」 年金改革法案で首相

2004/05/17 The Sankei Shimbun
 小泉純一郎首相は17日昼、年金制度改革関連法案の取り扱いについて、今国会で成立させた上で、自民、公明、民主の3党合意に基づき、年金制度の改善策について協議する意向を示した。自らの国民年金に未加入期間があったことについては「国会で説明していけば分かっていただけると思う」と強調した。

 首相官邸で記者団の質問に答えた。

 細田博之官房長官と安倍晋三幹事長ら自民党執行部は同日昼の協議で、年金法案の今国会成立を目指す方針を確認した。

 首相は、共同通信などの世論調査で年金改革関連法案の今国会成立を見送るべきだとの回答が60%以上に上ったことに関連して「これは成立させて、3党合意があるから改善策を講じていく」と述べた。

 細田官房長官は記者会見で世論調査結果について「残念だ。参院の議論を通じて国民の理解を深め、今国会で成立させていただき、新しい年金の枠組みに入ることが年金制度の構築にとって必要だ」と強調した。

 全議員の国民年金保険料の納付状況公開を求める声が強いことに対しては「個人の自由だし、ほとんどの方が自らの判断で対応している。問題あるとは思っていない」と述べた。

 首相の未加入問題について細田氏は、問題ないとの認識を示しながら、14日の飯島勲秘書官の説明について「年金制度の詳しい経緯や考え方について舌足らずの面もあった」との見方を示した。首相が予備校時代には加入義務があったとの指摘に対しては「私はよく存じない。観念的、論理的には払いなさいということだったかもしれない」と述べた。

小泉首相に年金未加入期間 義務付け前の6年11カ月

2004/05/14 中国新聞ニュース
 小泉純一郎首相(自民党総裁)に国民年金保険の未加入期間があったことが十四日、明らかになった。飯島勲秘書官が同日夕、首相官邸で緊急記者会見し、加入が義務付けられる前の一九八〇年四月から八六年三月までの六年間と衆院議員当選前の十一カ月に未加入期間があったことを公表した。小泉首相は記者団に「政治責任は全くない」と強調した。

 首相はこれまで自らの納付状況に関し、衆院議員当選前も含めて完納していると説明していた。法律上問題がないとしても、野党が「虚偽説明」と厳しく追及するのは必至。年金制度改革関連法案の審議に影響を与えることが予想され、首相の責任も問われそうだ。

 飯島氏によると、当選前の十一カ月は@首相が予備校生の六二年一月から三カ月間A実父急死によりロンドン留学から帰国した直後の六九年八月から七〇年三月までの八カ月間。飯島氏は「浪人中のため加入手続きをとらなかった」「ロンドンに戻ることも考えていたため加入しなかった」とそれぞれ説明した。

 八〇年からの六年間についても「国会議員は年金制度上任意加入とされていたため、法律上問題がないことを確認して加入しなかった」と説明。それ以降に未納期間はなかったとしている。飯島氏は社会保険庁に問い合わせた結果でなく、小泉事務所での過去の支払い記録から判明したと説明した。

 首相はこれまで記者団に、六十歳以前の年金納付状況について「きちんと払っています」と説明。衆院議員当選前についても「(未納は)ありません」と述べていたが、具体的な納付状況については説明を避けていた。

 自民党を除く各党が所属国会議員の公表に踏み切る中、首相は消極的な姿勢に終始。十三日には「個人個人が発表すればいい」「個人の判断に任せる」と記者団に語っていた。

民主5委員長が辞任 年金保険料未納で引責

2004/05/13 中国新聞ニュース
 民主党参院議員の角田義一国家基本政策委員長(群馬選挙区)ら四氏が十三日、国民年金保険料未納問題の責任を取り、参院の常任、特別委員長の辞表を倉田寛之参院議長などに提出した。

 同党衆院議員の石井一決算行政監視委員長(比例近畿)も同日、河野洋平衆院議長あてに委員長の辞表を届けた。国民年金保険料の未納問題をめぐる与野党議員の責任問題は一段と拡大。年金改革関連法案をめぐる参院審議への影響は確実だ。神崎武法代表らの未納が発覚した公明党の対応にも批判が強まりそうだ。

 辞表を提出したのは角田、石井氏のほか、平野貞夫財政金融委員長(比例代表)、簗瀬進内閣委員長(栃木選挙区)、桜井充金融経済特別委員長(宮城選挙区)。

 角田氏らによると、国民年金保険料未納期間は、角田氏が七年十カ月(一九八九年七月〜九七年六月)、簗瀬氏七年七カ月(九四年七月〜二〇〇三年三月)、平野氏三年七カ月(九二年三月〜九五年十月)、桜井氏五年四カ月(八七年十二月〜九三年四月)。

 角田氏らは辞表提出後の記者会見で「結果責任として辞めさせていただく。申し訳ない」(角田氏)と陳謝。角田氏は「年金法案は公明党案だから、(公明党幹部の未納の)責任は重い。自民党も全議員の納付状況を明らかにした上で、審議に臨むべきだ」と述べた。

 平野氏は「国会決議をして納付状況を開示すべきだ。これが(年金法案の)審議入りの前提だ」と強調。これに関連して民主党国対幹部は「与党の未納閣僚の辞職を迫っていくために先手を打った」と指摘した。

 保険料未納問題では、福田康夫官房長官、菅直人民主党代表が既に引責辞任。十二日には公明党の神崎武法代表、冬柴鉄三幹事長ら十三人に未納があったことが発覚、同党は神崎、冬柴氏ら十二人の処分を発表した。

年金保険料未納は33人 民主が納付状況公表

2004/05/13 中国新聞ニュース
 民主党は十三日午後、国民年金保険料の未納問題をめぐり所属議員の保険料納付状況の調査結果を公表、衆院十七人、参院十六人の計三十三人に未納期間があったことを明らかにした。十七日までに常任幹事会を開き処分する考えだ。未納があった羽田孜元首相は六日付で党最高顧問を辞任した。

 北橋健治幹事長代理は十三日午後の記者会見で「国民の年金に対する不信感を高めることになり、深くおわび申し上げる」と陳謝。「納付状況を唯一公表していない自民党に対し、速やかな公表を強く求める」と強調した。

 民主党の調査で未納期間は十二年〜一カ月。主な未納者は辞任表明した菅直人代表(十カ月)、鳩山由紀夫前代表(八年九カ月)、横路孝弘副代表(五年八カ月)ら。金融経済特別委員長を辞任した桜井充氏の未納期間は国会議員になる前だったため含まれていない。

 調査は(1)国会議員が国民年金に強制加入となった一九八六年以降(2)初当選以降―を条件に納付状況を集約した。民主党出身の中野寛成、本岡昭次衆参副議長は会派を離脱しており対象外とした。

神崎代表らをけん責処分 公明党の年金保険料未納は13人

2004/05/12 The Sankei Shimbun
 公明党の神崎武法代表は12日午後、国会内で記者会見し、自らと冬柴鉄三幹事長らを含む同党所属の国会議員13人に国民年金保険料の未納期間があったとの調査結果を発表した。同時に12人の処分も公表し、神崎、冬柴両氏はけん責、北側一雄政調会長ら7人が戒告、3人が党役職の解任となった。

 神崎氏は会見で、進退問題について「一連の未納問題を改善することに全力を尽くすことも責任の取り方だ」と述べ、辞任する考えのないことを強調した。ただ、党内や支持母体の創価学会には夏の参院選を前に「神崎氏が前面に出ては選挙を戦えない」との声も出ており、執行部は厳しい局面に立たされた。

 未納があったのは衆院議員7人、参院議員6人。保険料を支払っていなかった期間は、神崎氏が6カ月、冬柴、北側両氏は8カ月だった。15年11カ月の森本晃司、9年10カ月の風間昶、9年9カ月の山下栄一の3参院議員については、長期にわたっていることを重くみて中央幹事などの役職を解いた。

 石田祝稔衆院議員は未納期間が2カ月のため「軽微」として処分はなかった。

 神崎氏は会見で「国民の皆さまに大きな不信感を与え、抗弁のすべもない」と陳謝した。

≪公明党の未納議員と処分≫]

 公明党が12日公表した国民年金保険料未納の所属国会議員と処分は次の通り。(かっこ内は未加入・未納期間、追納後の正味未払い期間)

 【衆院議員】

 ▽戒告 北側一雄政調会長(8カ月、8カ月)、遠藤乙彦氏(4年3カ月、2年3カ月)、池坊保子氏(3年11カ月、3年9カ月)、漆原良夫氏(6年7カ月、4年7カ月)

 ▽けん責 神崎武法代表(6カ月、6カ月)、冬柴鉄三幹事長(8カ月、8カ月)

 ▽処分なし 石田祝稔氏(10カ月、2カ月)

 【参院議員】

 ▽役職解任 森本晃司参院副会長(15年11カ月、15年11カ月)、風間昶参院副幹事長(11年10カ月、9年10カ月)、山下栄一参院副幹事長(11年9カ月、9年9カ月)

 ▽戒告 千葉国男氏(4年2カ月、2年2カ月)、山本保氏(1年4カ月、1カ月)、福本潤一氏(4年、2年)

 ■公明党の処分規定 党規約によると、党員が党綱領または規約に背く行為、党の名誉を傷つける行為、党議に背く行為などをした場合は、中央規律委員会または都道府県規律委員会が規律処分をすることができる、としている。処分は(1)戒告(2)けん責(3)謹慎(4)役職解任(5)離党勧告(6)除名−の6段階となっている。

年金改革法案が衆院通過 14年連続で保険料引き上げ

2004/05/11 中国新聞ニュース
 後半国会最大の焦点となっている政府提出の年金制度改革関連法案は十一日午後の衆院本会議で、税、保険料を含めて社会保障制度を一体的に見直すとした付則などを追加する修正の上、自民、公明両党などの賛成多数で可決、参院へ送付された。六月初めには成立する見通し。

 自公両党と民主党が合意した付則は、このほか「公的年金制度の一元化を展望」するとした。与野党協議によっては、法案で今後十四年間引き上げるとした保険料や、給付水準の再検討があり得ることを容認した。

 民主党は付則の追加には賛成する一方で政府原案に反対との方針で臨んだが、小沢一郎代表代行と藤井裕久元蔵相が本会議を欠席、数人が途中退席するなど造反した。

 法案は、サラリーマンが加入する厚生年金の保険料(現行13・58 %、労使折半)を、今年十月から年0・354%ずつ引き上げ二〇一七年度以降は18・30%で固定。自営業者らの国民年金の月額保険料(現行一万三千三百円)も、〇五年度から年二百八十円(名目賃金上昇率で変動)ずつ上げ、一七年度以降は月額一万六千九百円となる。

 現役世代の減少などに応じて給付水準を抑制する「マクロ経済スライド」も導入。給付水準は会社員のモデル世帯(四十年加入、妻は専業主婦)で、現役の手取り年収の50%確保を明記した。

 国民年金保険料の徴収対策では、所得に応じた多段階減免制度の導入や、市町村から未納者の所得情報を取得できるよう改正。未納保険料の追納期間を二年から五年に延長するなどの対策は議員立法で別に処理する方針。

 基礎年金の国庫負担割合は〇九年度までに二分の一へ引き上げ。パート労働者への厚生年金の適用拡大は法施行後五年をめどに検討。賃金に応じて給付額を削減する在職老齢年金制度の七十歳以上への拡大や、離婚時に夫の厚生年金分割も可能とした。

 政府、与党は民主党との合意に基づいて、衆参の厚生労働委員会の下に「一元化問題を含む社会保障制度の在り方小委員会」と、与野党協議会を設置する方針。参院での法案審議とは別に行う予定で、年金、医療、介護全般の給付と負担の議論の行方も今後、焦点となる。

健保保有の遊休保養所、賃貸可能に・厚労省が通知

2004/05/09 NIKKEI NET
 厚生労働省は企業の健康保険組合が保有する保養所や体育館について、今年度から売却できない場合に限って賃貸を認める方針を決めた。これまでは組合員の福利厚生を本業とする健保組合の業務拡大は望ましくないとして、賃貸を禁じていた。ただ遊休不動産の売却が進まず財政悪化に苦しむ組合も目立つため、賃貸の解禁で資産の有効利用を促すことにした。

 主に大企業の会社員が加入する健保組合は戦後、観光地などで組合員向けの保養所を競って建設した。ただ民間宿泊施設の増加などで利用率が低下。さらに企業の人員削減による保険料収入の減少や高齢者医療費の増加で健保組合の財政が悪化し、最近は保養所の廃止が相次いでいる。

菅氏、進退問題に発展…年金法案3党合意に不満続出

2004/05/08 読売新聞 Yomiuri On-Line

 国民年金未加入・保険料未納問題の責任をとって福田官房長官が辞任した問題に関連し、民主党では7日、年金改革関連法案を巡る自民、公明両党との3党合意に不満が続出した。合意の了承は持ち越され、国民年金未加入問題を抱える菅代表の進退問題にも発展してきた。

 一方、小泉首相は、年金制度を改善して国民の信頼回復に全力を挙げる考えを表明すると同時に、未納が判明している福田氏以外の6閣僚は辞任させない方針を示した。

 民主党は7日、両院議員懇談会などを開き、3党合意を了承する党内手続きに入った。しかし、出席者からは「世間的には自民党に丸め込まれたと見られている。白紙に戻す選択肢もあり得る」などと反発が噴き出したため、了承が得られず、10日に再び両院議員懇談会を開くことにした。

 この日の懇談会では、菅氏の進退についても、「けじめをつけるべきだ。いくら説明しても、国民には言い訳としか取られない」と、辞任を求める意見が相次いだ。菅氏は「出処進退は自分で判断する。私には2つの責任がある。未納問題と3党合意だ」と述べ、3党合意の行方を見極めたうえで、進退を判断する考えを示した。

 これに関連し、菅氏は7日夜、「3党合意が実行できない場合は、党首の責任だ」と語った。

 党執行部の1人は7日夜、「辞任はタイミングの問題だ。3党合意にこれだけ反対者が出ている状況ではもたない」と述べ、辞任は避けられないとの見方を示した。党内では、「菅氏が代表を辞任する代わりに、3党合意を了承することで混乱を収拾するしかない」との指摘も出ている。

 小泉首相は7日夕、首相官邸で記者団に、「これから未納をなくす処置をとることが必要だ。(社会保障制度全般を見直す)与野党の協議機関が始まるので、改善策を講じる。批判はしっかり受け止め、よりよい制度を作っていきたい」と述べた。

 首相は同日、未納が明らかになっている麻生総務相や谷垣財務相ら6閣僚に個別に電話し、引き続き閣僚にとどまるよう指示した。首相は同日午後の衆院厚生労働委員会でも、「仕事に全力を傾注していただきたい。過去に未納があっても、今後、辞任を求める考えはない」と強調した。

 7日夜には、福田氏の後任の細田博之官房長官と、細田氏の後任の杉浦正健官房副長官の認証式が皇居で行われた。

 両氏はこれに先立って首相官邸で記者会見し、ともに年金を完納していることを明らかにした。

6月にもEUと首脳協議 拡大後初、協調を確認へ

2004/05/08 The Sankei Shimbun
 政府は8日までに、日本と欧州連合(EU)議長国、欧州委員会との定期首脳協議を6月下旬にも東京で開催する方向で調整に入った。外交日程や国際情勢をみながら具体的日程を詰める。

 中・東欧10カ国の新加盟により25カ国体制にEUが拡大後、初の首脳協議となる。日本としては、イラク復興に向け国連を中心とした国際協調体制確立の必要性をEU側と確認したい考え。北朝鮮の核開発や拉致問題、直接投資の促進など日・EU間の諸課題についても話し合う。

 日本側から小泉純一郎首相や川口順子外相、EU側からは議長国アイルランドのアハーン首相、欧州委員会のプローディ委員長、パッテン委員(対外関係担当)らが出席する予定。

 協議では2001年に採択された「日・EU協力のための行動計画」の点検や、拡大EUの基本法となる「欧州憲法」などについても意見交換する見通し。05年は「日・EU市民交流年」となっており、観光促進策なども協議する予定。

 首脳協議は1991年からほぼ年1回開催され、今回で13回目。

福田官房長官が辞任 年金保険料未納で引責

2004/05/07 中国新聞ニュース
 福田康夫官房長官は七日午前の記者会見で、国民年金保険料未納問題をめぐる対応の不手際の責任を取って辞任する意向を表明した。既に小泉純一郎首相も了承している。

 福田氏は「年金未納問題で国民の信頼を失ったことはざんきに堪えない。私の対応の不手際で内閣のスポークスマンとして政治不信を増幅したことをおわび申し上げる」と述べた。

 内閣の要である官房長官辞任は、小泉政権にとって深刻な打撃となった。福田氏と同じく保険料が未納だった中川昭一経済産業相ら他の六閣僚や、民主党の菅直人代表の進退問題にも波及する可能性がある。

 福田氏は二〇〇〇年十月に森内閣で官房長官に就任。今年四月に歴代の官房長官として在任期間一位になっていた。

◇  ◇

 福田康夫官房長官の七日の記者会見発言は次の通り。

 昨日、与野党間の話し合いにより、年金改正法案の取り扱いについて合意されたが、これまでに私自身も含め閣僚の中に年金の未加入、未納の問題があったことが判明し、政治に対する国民の信頼を失ったことはざんきに堪えない。

 さらに私自身の年金保険料未払い発表までの対応の仕方に不手際があり、内閣のスポークスマンとして、また内閣提出法案の取りまとめ役である内閣官房の責任者として、政治不信を増幅してしまったことに国民の皆さまにおわびを申し上げたい。年金改正法案の取り扱いについて三党合意がなされたこの機会にけじめをつける意味で、内閣官房長官の職を辞したいと考えている。

自公民合意 年金一元化含め見直し 19年めどに結論 法案、今国会で成立2004/05/07 The Sankei Shimbun

 年金制度改革関連法案について自民、公明両党と民主党は六日、衆参両院の厚生労働委員会のもとに小委員会を設置、年金一元化を含む社会保障制度の全般的な見直しなどを盛り込んだ三党幹事長名による合意文書を取り交わした。文書では平成十九年三月をめどに結論を得て随時実施するとしている。これにより、年金改革法案は付則を追加する修正を経た上で、十一日の衆院本会議で採決され、衆院を通過、今国会での成立は確実になった。

 合意文書では国会での小委設置と並行し、十六年から年金一元化を含めた社会保障制度全体の一体的見直しのための与野党協議会設置を明記。年金保険料については、社会保障制度の検討状況や経済・社会情勢の変化などに応じ、検討を加えていくとしている。

 また、国会議員の国民年金保険料の未納再発防止策として、(1)国民年金の未加入者と未納者に対する通知、督促を適正に行うための措置を講じる(2)勘違いなどによる未納は事後納付できるように今国会中に法改正を行う(3)民間閣僚は共済年金加入とするよう今国会で政令改正を行う−との改善策で合意した。

 一方、六日の与野党協議では、野党側が要求した各党による所属議員の年金保険料加入状況の公表については、与党側が「個々の議員が判断することだ」と拒否したため、合意に至らなかった。これに関連、自民党の安倍晋三幹事長は同日夜の記者会見で、「未加入議員には加入するよう文書で指示する」と述べた。

 与野党合意を受けて、衆院厚生労働委での与党単独採決に伴う国会混乱は収拾され、国会は正常化する。

 七日には小泉純一郎首相が出席して衆院厚生労働委が開かれ、年金改革の審議を今後さらに徹底するとの趣旨の委員会決議を行う。

 民主党は年金改革法案自体には反対するが、付則部分には賛成する方針だ。

 民主党の岡田克也幹事長は六日夜の記者会見で、「一元化について百パーセントの担保はとれていないが、一定の前進になったと思う。あとはこれからの議論と国民世論の後押しが必要となる」と評価した。

                  ◇

 ≪合意内容骨子≫

 一、衆参両院の厚生労働委員会に小委員会を設置し、年金一元化を含む社会保障制度全体の一体的見直しについて、平成19年3月をめどに結論を得て随時実施

 一、与野党による社会保障制度全体の見直し協議会を設置し、16年から検討

 一、年金保険料は社会保障全体の検討状況や経済・社会情勢の変化に応じ検討を加える

 一、11日の衆院本会議で政府案に付則を追加する修正を行う

 一、国民年金の未納者に対する通知・督促を適正に実施

 一、勘違いなどによる未納者については事後納付できるよう今国会で法改正を行う

 一、民間閣僚は共済年金に加入できるよう今国会で政令改正を行う

年金未払い288億円、過払い91億円 社保庁、7万9700人分ミス

2005/04/02 The Sankei Shimbun

 社会保険庁は一日、平成十五年六月に大規模な年金支給ミスが発覚したことを受けて給付システムの総点検を行った結果、既に公表した分も含め、平成三年から約七万九千七百人対し、過払いや未払いなど年金の支給ミスがあったと発表した。金額が判明しているのは計三百八十億九百万円。内訳は過払いが約二万二千三百人への約九十一億千五百万円、未払いが約四万五千四百人への約二百八十八億九千四百万円。このほか、過払い・未払い額が明らかになっていない人も約一万二千人いるとしている。

 未払いの最高額は約千三百万円で、過払いの最高は約八百万円。同庁は謝罪の手紙とともにミスを通知、未払い分は給付し、過払い分は返納してもらう手続きをしている。

 ミスは「妻への老齢厚生年金支給に伴って停止される加給年金の支給が続けられた」「複数の年金受給権を持つ人の年金計算額を間違った」など二十七のケース。

 調査に時間がかかったことについて、同庁は「対象者への個々の問い合わせなどで取りまとめに長時間を要した」としている。

厚年基金、850万人に激減 代行返上、解散など増加 2004年03月25日 The Sankei Shimbun
 代表的な企業年金である厚生年金基金の加入者が2003年度末で約200万人減の約850万人に落ち込み、1990年度以来の1000万人割れとなる見通しとなったことが25日、分かった。運用難による負担増に企業が耐えかね、代行返上や解散などが相次いだことが要因。企業年金の中核だった基金の先細りは、サラリーマンの老後に影を落としそうだ。

 厚年基金は企業や、同業種の団体などで設立され、厚生年金など公的年金に上乗せし独自の給付を行ってきた。「代行制度」に基づき厚生年金保険料の一部も肩代わりし運用、給付もしている。

 基金数は97年度以降減少に転じ、株価下落や退職者増加で財政が一段と悪化。さらに、昨年9月から代行制度で過去に受け取った保険料の国への返上が認められたことで、離脱が進行。返上した基金は、今年3月半ばまでにトヨタ自動車など大規模な企業年金を含め189基金に達した。

 この結果、03年度末の基金数は前年度から250以上減少し、約1400になる見通し。加入者数と基金数は、ともにピーク時の1225万人(97年度)と、1883基金(96年度)の7割の水準にまで落ち込むことになる。

 すでに代行部分の保険料受け取りを停止し、過去の保険料返上を準備している基金も現在、なお約560ある。このため、04年度は基金数と加入者の減少がさらに加速する見通しだ。

 厚年基金全体の資産額は約50兆円だが、昨年春までの株価下落などで将来の必要な給付額に対し10兆円近い不足額があるとみられる。政府は今回の年金制度改正関連法案に基金の負担軽減策を盛り込んだが、抜本的な財政健全化は困難とみられ、企業の「基金離れ」に歯止めがかからない状況だ。

年金運用計画:市場投入は5兆8000億円 社会保障審が答申 2004年03月22日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)は22日、厚生年金と国民年金の04年度の積立金運用計画を坂口力厚労相に答申した。新たに市場に投入するのは5兆8000億円で、今年度の新規投入額の12兆1000億円から半減する。新規増額分が半減したのは、財投債(特殊法人の資金調達のために発行する国債)が今年度の5兆7000億円から7兆5000億円へと膨らんだことなどのため。

 年金資産全体の構成比率は、国内株式が6%から7%へと引き上げ、国内債券は83%から79%へと引き下げる。外国株式は4%から5%、外国債券は2%から3%へと変更する。

基礎年金の全額税負担を否定 厚労相 2004年03月22日 The Sankei Shimbun
 坂口力厚生労働相は21日夜のNHK番組で、基礎年金(国民年金)を消費税の引き上げなどによりすべて税で負担することについて「消費税を上げさせていただいても年金だけでなく、医療、介護でより多くの財源が必要となるかもしれない。2分の1ぐらいの国庫負担でお許しいただきたい」と述べ、否定的な考えを示した。

 これに対し、連合の笹森清会長は「年金制度の空洞化を直すのが一番重要で、連合(の独自改革案)は基礎年金の税方式に踏み込んだ。消費税的なものは3%で済む」と指摘、日本経団連社会保障委員会の福沢武共同委員長も「国民全員が負担すべきだ。新たに(税を)設けてもいいし、いまの消費税の5%を9−10%に上げてもいい」と述べ、労使とも基礎年金の全額税負担を主張した。

年間所得1千万円超の世帯でも未納率12・1% 国民年金保険料 2004年03月19日 The Sankei Shimbun
 国民年金保険料の未納問題で、年間所得が1000万−1200万円の世帯の未納率が2001年度末で12・1%だったことが19日、厚生労働省の調査で分かった。所得別の納付状況を分析した結果、高所得世帯と低所得世帯の未納率に大きな差がないことが判明。「払えるのに払わない悪質な人がいる」(坂口力厚労相)実態が裏付けられた形だ。

 社会保険庁は今年2月、沖縄県で未納者への強制徴収に着手したが「高所得世帯でも未納者は少なくない。十分な所得があって督励しても納めない人には同様の措置を取る」としている。

 同省は、国民年金の加入対象の11万世帯を無作為に抽出し、市町村から各世帯の所得情報を得て、分析した。

 未納率が最も高かったのは所得が「200万−300万円」の世帯の19・0%で、ほぼ5世帯に1世帯の割合。次いで「300万−400万円」が17・7%、「100万−200万円」の17・4%の順。

 一方、「900万−1000万円」は11・5%、「1000万−1200万円」も12・1%、「1200万−1500万円」でも9・2%で、高所得世帯の未納率も10%前後あった。

 所得は総収入から必要経費を差し引いた額で、未納者には特例で免除された学生や、失業などで納付が困難として申請し免除された世帯は含まれていない。

 社会保険庁は、02年度の保険料未納率(納められるべき保険料総額に対する未納額の比率)は約4割としているが、今回は、世帯に占める未納世帯数の割合を調べた。

 <国民年金制度> 自営業者や農林漁業従事者、学生などが加入する公的年金制度。20歳以上から60歳未満が対象で、保険料は月額1万3300円だが、未納者の増加で空洞化の懸念が指摘されている。生活保護者や低収入の場合は保険料は免除される。2002年度からは、納付率アップを狙った保険料の半額免除制度も導入した。

厚生年金水準:少子化の進行で46%に低下 厚労省試算 2004年03月16日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 厚生労働省は16日の参院予算委員会で、合計特殊出生率(1人の女性が一生に産む子供の数、02年1.32)が少子化の進行で想定以上に下がった場合、モデル世帯の厚生年金給付水準(現役男性の平均手取り収入に対する年金額の割合、現行59.3%)が政府公約の50%を割り込み、46.4%に低下するとの試算を明らかにした。

 厚労省の国立社会保障・人口問題研究所は02年1月、2050年の合計特殊出生率について、標準ケースでは1.39(中位推計)に上向くとの推計値を公表。これを前提に厚労省は今回の制度改正案でも23年度以降の年金水準は50.2%を維持できると試算した。

 研究所は02年に少子化が進行するケースの低位推計(2050年に1.10)も公表しているが、人口が低位推計で推移すれば、31年度以降の年金水準は46.4%に下がる。

 研究所は97年1月公表の中位推計で2050年の出生率を1.61、低位推計で1.38と予想。ところが、人口の伸びが見込めず、5年後の02年時点では中位推計を、97年時点の低位推計に近い1.39へ下方修正した。02年時点の中位推計では同年の出生率を1.33と見ていたが、実績値は1.32で、厚労省の推計値には「楽観的過ぎる」との批判が出ていた。政府は過去の年金改革では中位推計に基づく試算をしてきた。

 今国会に提出された年金制度改革関連法案は、将来の年金水準を「50%以上維持」と明記した。少子化が進んだ場合の対応について坂口力厚労相は同日の参院予算委で、毎年0.354%ずつ引き上げて17年度以降、年収の18.30%に固定する予定の厚生年金保険料率(現行13.58%、労使折半)の毎年の引き上げ幅を大きくすることなどで、年金水準50%を維持する考えを強調した。

 同法案は年金水準が50%を切ることが予想される場合に「所要の措置を講ずる」と定めており、厚生年金保険料率を18.30%からさらに引き上げる余地を残している。【吉田啓志】

年金制度改正:厚生労働省案に経済4団体「絶対反対」

2003年11月18日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 日本経団連、日本商工会議所、経済同友会、関西経済連合会の経済団体4団体は18日、厚生労働省が公表した年金制度改正案に反対する決議を行った。焦点の厚生年金保険料率(現行13・58%、労使折半)を22年度以降に20%に固定するほか、年金水準を現役時の50%以上とする同省案について、4団体は「絶対反対」とし、「年金給付抑制や基礎年金の税方式化などの抜本改革を進めるべきだ」と主張している。

 4団体は同省案に反対する理由として「保険料率の引き上げは雇用コストの上昇となり、大企業、中小企業の収益を圧迫し、国際競争力の低下を招く。新規雇用にも悪影響を及ぼす」などを挙げている。しかし、年金財源については、消費税率引き上げを主張する日本経団連、経済同友会に対し、引き上げ反対の日商の足並みがそろわず、「税方式化」とのあいまいな表現にとどまった。

 経済同友会の北城恪太郎代表幹事は同日の会見で「小泉改革のうち、年金制度を抜本改革しないことには失望だ。構造改革とは大きな政府ではなく、小さな政府を目指すことだ」と主張した。【川口雅浩】

中高所得者の年金課税強化 住民税の均等割を増額 政府税調

2003年11月18日 The Sankei Shimbun
 政府税制調査会は18日、2004年度税制改正答申の骨格を固めた。中高所得者の高齢者が受け取る年金収入への課税強化や住宅ローン減税の規模を縮小した上での延長、個人住民税の「均等割」(年間3000−4000円)の増額などが柱。財政状況が厳しい中、04年度予算で一般会計に占める税収の割合を50%以上に維持するため減税を抑制、増税色の濃い内容となった。

 年金課税については、年金収入が実質的に非課税となっているため、勤労世帯との格差が問題視されている。来年1月から65歳以上の夫婦世帯は収入のうち、約285万円までが非課税となるが、現役の夫婦世帯は約156万円。

 このため政府税調は、厚生年金などの収入から一定額を控除できる公的年金等控除の縮小を求める。ただ、年金以外に収入のない低所得者に負担増にならないよう配慮し、年金額に応じて控除率が変わる定率部分のうち、一定額以上の控除率を引き下げるなどの案が浮上している。

 最大500万円が所得税額控除できる住宅ローン減税は、規模縮小を条件に延長を認める。現行制度では来年に最大150万円に縮小され、05年には廃止される予定だが、財務省内には最大300万−350万円の控除案が浮かんでいる。

 一方、国土交通省は現行の500万円の2年延長を要望。与党内には制度拡充を訴える声もあり、調整は難航しそうだ。

 定額で負担を求めている均等割は、政府内では上げ幅を1000−3000円で検討している。行政サービスを受ける住民に広く負担を求める税なのに、現状では住民税の2%を占めるにとどまり、応分の負担水準に戻す必要があると判断した。

 公明党が年金課税の強化とともに、基礎年金の国庫負担引き上げ財源として求めている所得税定率減税の段階的廃止については、景気への影響が大きいとして否定的な見解を盛り込む方針だ。

 28日に答申を小泉純一郎首相に提出。その後、与党が税制改正作業に入るが、来夏の参院選に配慮して増税を先送りする可能性もある。

保険料を年収20%に固定、給付50%維持 厚労省が年金改革案

2003年11月17日 The Sankei Shimbun
 厚生労働省は17日、2004年の年金制度改革案を発表した。5年ごとに給付水準や保険料を見直す方式を改め、厚生年金の保険料は04年度から毎年引き上げ、22年度以降は年収の20%(労使折半)に固定。労働力人口の減少や平均余命の伸びに対応し自動的に給付水準を抑制する方式を導入。積立金も取り崩し、将来的に現役世代の手取り年収の50%程度を確保できるとした。

 同省は年内に政府案をまとめ、来年の通常国会に関連法案を提出する方針。与党は同日、会合を開き協議を始めた。しかし、財務省などは一層の給付削減を求めており、厚労省案が不可欠とした基礎年金(国民年金)の国庫負担割合の2分の1への引き上げのための財源確保など課題は山積、年末の政治決着までもつれ込む公算が大きい。

 厚労省案は、厚生年金の保険料率(現行・年収の13・58%)を来年10月から毎年0・354ポイントずつ引き上げる。平均的な世帯(夫会社員、妻専業主婦)の給付水準は現在の59・4%から54・7%まで徐々に下がるが、少子化が予想より進んでも50%を下限とした。

 平均的な会社員の場合、毎年約1万円ずつの負担増。国民年金は保険料が05年から年間7200円ずつ負担が増え、11年度以降は月額1万7300円に固定。約140兆円ある年金積立金は2100年に1年分の給付額(現在価格で25兆円)を残すように取り崩して給付に充て、保険料の上昇を抑制する。

 世代間格差の不満の高まりを受け、高額所得の高齢者にも負担を求める。年金課税強化を打ち出し、70歳以上でも働いている人には厚生年金保険料の支払いを求める。

 パート労働者については、週労働時間が20時間以上の人にまで厚生年金の適用を拡大。労使折半のため、保険料負担が増加する業界への配慮として経過措置を設ける。

 女性と年金の問題では、会社員と専業主婦の世帯の場合、夫が支払う保険料を夫婦が共同して負担したとみなし、夫婦それぞれに基礎年金と厚生年金を支給。離婚時には、厚生年金を分割する仕組みもつくる。

 国民年金の保険料未納対策に徴収対策も強化し、保険料の納付実績を点数化するポイント制も導入するとした。

 <厚労省の年金改革案骨子>

 一、厚生年金の保険料は2004年度から毎年引き上げ、20%で固定(22年度以降)

 一、社会・経済情勢に応じて緩やかに給付水準を切り下げ、下限は50%

 一、週20時間以上働くパートは厚生年金に加入

 一、離婚時に厚生年金を夫婦で分割

 一、基礎年金の国庫負担を3分の1から2分の1に引き上げ

 一、積立金は給付費の1年分まで取り崩し

 一、働いていれば70歳以上からも保険料徴収

 一、国民年金の保険料は05年度から毎年引き上げ、月額1万7300円で固定(11年度以降)

 2004年の年金制度改革をめぐる厚生労働省案について、テーマごとにポイントを探った。

 【保険料】厚生年金は04年度から引き上げが始まる。年収約572万5000円の平均的な会社員(月収36万7000円、ボーナス2回で計3・6カ月)の場合、本人分の保険料は従来より年1万円程度増える。年収300万円の場合は年5300円程度、同800万円の場合で年1万4000円程度の負担増。国民年金の場合は05年度から月600円、年7200円程度負担が増える。

 【給付水準】現役世代の手取り年収と比べた給付水準の下限を50%に設定しているが、あくまでモデル世帯で、所得によって大きく異なる。月収36万7000円の標準世帯(妻専業主婦)の場合、25年の給付水準は54・7%(現行59・4%)。月収20万円の世帯では80・3%(同87・3%)と高いが、月収60万円の世帯では42・7%(同46・4%)にとどまり、世帯の所得が高いほど現役世代と比べた給付水準は低い。

 【マクロ経済スライド方式】新たに年金をもらう人の額は1人当たり賃金の伸び率、既に年金をもらっている人の額は前年の消費者物価の伸び率に基づいて改定する。ただし今後10年程度、賃金や物価が上昇している場合に限り、少子化(公的年金加入者の減少率、0・6%程度)と高齢化(平均余命の伸び率見込みに基づく調整、0・3%程度)の影響を合わせ、0・9%程度を上昇分から差し引く。少子高齢化の進行に合わせて年金額を抑えるのが狙いだが、前年度の金額は下回らないようにする。

 【年金積立金】厚労省は将来の高齢化を見越し、5年分程度の積立金を保有、運用収入を給付に充てる「永久均衡方式」を採用してきた。今回、同省は95年かけ、支払準備金程度(給付費1年分)を残して取り崩す「有限均衡方式」に方針転換した。

 【国庫負担引き上げ】20歳以上の国民に共通の基礎年金(国民年金)に国庫から投入する税金の割合(現行3分の1)を2分の1にする問題について、04年度に一気に引き上げる案と、5年間で段階的に引き上げる案を併記。約2兆7000億円の財源確保は、公的年金等控除の見直しによる年金課税に言及したものの、具体策は政府・与党の調整に委ねた格好だ。

 【在職老齢年金】60歳から64歳までの働く高齢者について、年金の2割を1律カットする現行の仕組みが廃止されるが、厚生年金加入者の年齢制限(70歳未満)を撤廃して70歳以上でも在職中は保険料を支払い続けることにする。男性は25年、女性は30年にかけ、年金支給開始年齢を65歳へ段階的に引き上げているが、再引き上げは見送り。65歳以上の希望者には、前回改正で廃止された「繰り下げ受給制度」を復活させる。

 【パート労働者の厚生年金加入】現在、労働時間が正社員の4分の3未満の短時間労働者には厚生年金が適用されていないが、厚労省案は1週間の所定労働時間が20時間以上の人に厚生年金を適用する。保険料を負担していない専業主婦ら「第三号被保険者」を減らすのが狙い。低賃金が多いパート労働者に配慮、現行の標準報酬の下限(月9万8000円)より低い特別な区分を設け、保険料負担を軽減する。

 【少子化対策】育児休業中の厚生年金加入者を対象に、子どもが1歳になるまでとしている保険料の免除期間を3歳まで拡大した。出産後、会社から勤務時間の短縮措置を受けながら働く人には、育児期間前の月収に基づき保険料を納付したとみなす制度を創設する。

 【年金分割】専業主婦の家庭内での貢献を目に見える形にするため、夫が支払う厚生年金保険料の納付記録を分割。原則として夫婦がともに65歳になった時点で、年金分割の効力を発生させることにした。専業主婦が中高年で離婚した場合、老後は自らの基礎年金しかもらえず、働いても高い賃金が望めないなどとする批判にこたえた。

 【遺族年金】会社勤めの経験がある妻が65歳から遺族年金を受け取る場合、現行では1自分の厚生年金と基礎年金2夫の厚生年金の4分の3と自らの基礎年金3夫の厚生年金の2分の1と自らの厚生年金の2分の1と基礎年金−の3つの選択肢がある。しかし1以外では、妻が自ら納めた保険料に基づく年金の全部か一部が受け取れない。このため、妻本人の厚生年金の全額受給を基本とし、差額分を遺族厚生年金として支給する仕組みに変える。子どものいない若い妻は現在、生涯にわたって遺族厚生年金を受給できるが、20歳代については受給期間を5年間とする。

 【障害年金】現行制度は「1人1年金」の原則があり、1階部分と2階部分の年金は同じ種類でなければならない。このため、障害基礎年金と厚生年金を同時受給できる仕組みにし、障害者が働いた期間に応じて年金を受け取れるようにする。

 【国民年金保険料】国民年金には所得に応じて全額免除と半額免除の制度がある。今後、保険料が段階的に引き上げられることから、保険料を納めやすい仕組みにする必要があるとし、多段階の免除制度を創設する。厚労省は「4分の3」と「4分の1」免除を新設する方向で検討中だ。

 【ポイント制】保険料納付実績を年ごとに点数化、本人に通知する制度を新たに導入する。自分の年金が増えていくことを実感できるようにし「保険料を払っても将来、いくらもらえるのか分からない」などとする若い世代の年金不信を和らげるのが狙いだ。

 少子高齢化で現役世代の保険料負担が重くなりすぎるのを避けるため厚生労働省がまとめた年金改革案は、今までにない給付削減に踏み切ったのが特徴だ。だが、経済団体などは「それでもまだ負担が重い」と反発している。老後の支えとなる年金はどうなるのか。厚生年金について、給付と負担を検証した。

 現在の保険料率は13・58%(労使折半)で、妻がずっと専業主婦だったモデル世帯の年金月額は23万8000円。現役世代の手取り収入の約6割(59・4%)を確保するという考え方で設計されている。高齢者夫婦世帯の平均支出月額約26万7000円でみると9割弱を賄える額だ。

 だが、この給付水準を維持すると少子高齢化の進展で将来の保険料率は22・8%まで跳ね上がる。このため、改革案では上限を20%に決め、その範囲内で給付を調整する方式を導入した。

 ▽実感はかなり苦しい

 保険料率20%だと少子化が現状程度で進んだ場合で給付は54・7%まで徐々に下がる。現在価値に置き換えると約21万9000円で1割弱の削減。交際費などのいわば「ゆとり」部分は大幅に縮小するが、それでも衣食住と教養娯楽費などまでは賄える計算だ。

 ところが同じ20%でも、少子化が予想以上に進み経済も悪化すると給付は50・8%まで削減される。年金額では約20万4000円。ゆとり部分は完全に吹き飛ぶ。

 しかも、モデル世帯の年金月額は夫が40年間保険料を払った満額の場合。社会保険庁の2001年度調査では、実際に高齢者夫婦世帯が最初に受け取った年金額は平均で約22万7000円と、モデル世帯より約1万円低い。これをもとにすると、将来の年金額は基礎的な生活を賄うぎりぎりになり、実感ではかなり苦しくなる恐れが強い。

 ▽20%では活力失う

 一方、現役世代の負担をみると、年収572万5000円の平均的なサラリーマンの場合で保険料は毎年1万円程度増えていき、現在の約38万9000円(本人負担)が最終的には約57万3000円になる。

 保険料は労使折半なので、同じ分だけ企業負担が増加する。このため、経済団体などは「活力が失われ経済成長にも悪影響がでる」として、保険料率の上限を16%程度とするよう要求している。

 これだと給付水準は40・9%。年金額では約16万4000円まで落ち込み、厚労省が改革案の柱にすえた「生活の基本的な部分を支える給付水準の確保」が大きく崩れることになる。

年金制度改革:「給付水準は50%程度」 小泉首相

2003年10月28日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 小泉純一郎首相は28日、NHKの報道番組で来年の年金制度改革について「給付水準はやっぱり50%程度でしょうね」と述べ、現役時代の平均所得の半分程度の給付額は確保すべきだとの考えを示した。

 また、将来的に負担する年金保険料について「(個人負担は給料の)10%がサラリーマンにとっては限界じゃないでしょうか」と指摘。現在、労使折半で13.58%の保険料を段階的に引き上げた場合でも、20%程度が限界だとの見方を示した。首相が給付水準や保険料で具体的な数値を示したのは初めて。

年金届け出忘れに救済措置 厚労相、04年改革で対応

2003年10月19日 The Sankei Shimbun
 主婦らが勤務先の会社を退職したり、夫が会社を移った際などに国民年金への加入届け出を忘れ、老齢基礎年金を減額されている問題について、坂口力厚生労働相は18日夜、高松市で講演し、2004年の公的年金改革で救済措置を取る方針を明らかにした。

 厚労相は「年金を変わると言いそびれた人が18万人もいる。もう一度、届け出忘れをした人にチャンスをつくりたい」と述べ、未届け問題の解決に強い意欲を示した。

 厚生省(当時)は、1995年から2年間、届け出を忘れていた専業主婦らを対象に、届け出をし直せば年金を減額しない特例措置を取った。厚労省は、04年の改正では、届け出を忘れた人が申し出れば、いつでも過去にさかのぼり記録を変更、減額しない措置を検討している。

 厚労相は、基礎年金の国庫負担割合引き上げに伴う財源については、「毎年30兆円もの赤字国債を発行している。ムダを省いた分は借金返済に使うべきだ」と述べ、野党が主張する公共事業費などの削減による財源確保案を批判した。

「共働き増え打撃小さい」財務省、年金給付額の引き下げ主張

2003年08月23日 The Sankei Shimbun
 財務省は23日、2004年の年金改革で、年金給付額の引き下げを最優先課題として主張していく方針を明らかにした。配偶者の受け取る年金が上乗せされる共働き夫婦が増えていることから、年金生活者への打撃は小さいとしており、高額所得者の給付削減も目指す。

 政府の経済財政諮問会議は6月にまとめた構造改革の指針となる「骨太の方針」(第3弾)で、支給開始年齢見直しの検討を盛り込んだが、同省は9月の自民党総裁選や、その後想定される衆院解散・総選挙を控え、支給年齢の引き上げは実現困難な情勢だと判断。

 一方、厚生労働省は、基礎年金の国庫負担割合を3分の1から2分の1に5年かけて段階的に上げる方針を盛り込みたい考え。しかし、財源確保策として有力視される消費税率引き上げで、小泉純一郎首相が「在任中は実施しない」としているため、財務省は当面、国庫負担上げは棚上げし給付抑制を求めることにした。

 現行の年金制度では、夫が65歳以上、妻が60歳以上の専業主婦をモデルとしており、この場合の夫婦の受給額は基礎年金と厚生年金を合わせ月額23万6000円。共働きだった夫婦は、妻の勤務年数に応じて厚生年金が上乗せされる。

 女性の就業が増えているため、財務省は妻が厚生年金を全く受け取れない夫婦は少ないとみており、平均的な夫婦は現行モデルより多く受給していると主張する考えだ。

 高額所得者の給付削減について、塩川正十郎財務相は高額所得者が年金給付を辞退した場合、相続税課税の優遇措置を利用できるようにすべきだという考えを示しており、具体策を検討する。

年金給付維持で積立金の大半取り崩しも 坂口厚労相

2003年08月17日 The Sankei Shimbun
 坂口力厚生労働相は17日、NHKの討論番組に出演し、将来の公的年金の給付水準を一定程度に維持するため、約140兆円に上る積立金の大半を取り崩し、給付に充てることも必要との考えを示した。厳しい年金財政への対応が狙いで、今月中にもまとめる2004年の公的年金制度改正の私案に盛り込む考えだ。

 厚労相は、将来的な年金の保険料について年収の20%(労使折半)を上限とする一方、給付水準は最低でも現役時代の年収の50%を維持する考えを重ねて強調。

 その上で、年金の積立金について「将来も積み立てていく必要があるのかとの問題がある。今後、団塊の世代やその子供が年金受給者になっていく。(そうした事態を)乗り切るため、できれば積立金を使わせていただきたい」と述べた。

 具体的には、22世紀初頭までに1年分の年金給付に必要な額(約20兆円と推定)を残したうえで、残りの100兆円余の積立金を順次、給付に充てるとしている。

 積立金は運用収入を年金財政に組み入れることで保険料上昇を抑制し、年金制度の安定につなげる狙いがあるが、ここ数年は株安の影響で運用の赤字が続いている。

 厚労相は、財源難を理由に財務省が反対している基礎年金の国庫負担割合引き上げについては「どんな税制改革ができるかにかかっている」と指摘。その上で「最悪の場合、すぐにできなくても4、5年かけて、ということはあり得る」と述べ、段階的な引き上げを容認する考えを示した。

 <公的年金積立金> 国民年金と厚生年金の保険料から支給した年金の残りを積み立てた資金。運用収入は年金財政に組み入れており、2002年度末で約141兆円(時価)。01年度から自主運用を開始したが、株安などの影響で02年度の運用赤字は約3兆600億円を記録した。

悪質未納者1万人リスト作成 国民年金対策で社会保険庁

2003年08月14日 The Sankei Shimbun
 国民年金保険料の納付率が過去最悪となった問題で社会保険庁は14日までに、所得や財産があるにもかかわらず保険料を納めない悪質な未納者約1万人をリストアップして強制徴収に乗り出す方針を決めた。9月にも全国の社会保険事務局にリスト作成を指示。最終的な督促にも応じない場合は、預貯金などの差し押さえ手続きに入る構えだ。差し押さえの実施は来年になるとみられる。

 国民年金は20歳以上の学生や自営業者、農林漁業者らに加入が義務付けられている。加入者は約2200万人。2002年度の保険料納付率は62・8%で過去最悪となり、未納者は全体の約4割にも達した。

 「これ以上放置できない」と危機感を強めた社会保険庁は今月4日、「今後5年間で納付率を80%に回復させる」ことを目標に国民年金特別対策本部を設置して徴収強化に乗り出している。

 強制徴収は1988年度から90年度にかけて計5件が実施されており、13年ぶり。未納者のリストアップは、昨年度の未納者のうち所得や財産があるにもかかわらず、長期間納付していない悪質な人を全国の社会保険事務所で抽出する。一事務所約30人程度で全国では約1万人になる見通しだ。

 対象者には「最終催告状」を送付し、戸別訪問などで納付の意思などを確認した上で、それでも納付に応じない人から強制徴収に入る予定だ。

 国民年金 自営業者や農林業者、無職者、学生らが加入する。保険料は定額で月額1万3300円。満額(40年加入)で月額6万6000円の支給を受ける。最近では特に20歳代で2人に1人しか納めていないなど未納問題が深刻になっている。サラリーマンが加入する厚生年金の保険料は給料から天引きされるが、国民年金は本人が手続きしなければならないため未納がおきやすい。

施設売却:雇用・能力開発機構が投げ売り

2003年08月12日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 厚生労働省所管の特殊法人、雇用・能力開発機構(旧雇用促進事業団)が、全国2070カ所の勤労者福祉施設を売却している問題が強い批判を招いている。売却済みの1563施設のうち、799施設の値段が1万500円以下に設定されるなど、常識外れの安値で売りさばいているためだ。施設の建設財源はすべて雇用保険料。本来は失業者のために使うべき公金を、役所と特殊法人の裁量で無計画に投入し、その結果についてはだれも責任を取ろうとしない事態がまかり通っている。【吉田啓志、鈴木直】

 香川県三豊郡大野原町は、人口約1万3000人。レタス、タマネギが主産物の農業の町だ。

 町の中心部に今年4月、カギっ子を放課後に預かる「子どもセンター」がオープンした。前身は76年に完成した雇用・能力開発機構の農村教養文化体育施設(建設費5800万円)。00年3月、町が同機構から時価の564万9000円で買い取り、2500万円かけて改修した。

 ところがその1年後、同機構は全国で投げ売りを始めた。三豊郡内でも今年3月、六つの売れ残り施設が各町に一律1万500円で払い下げられた。三野町は、同機構から「買わないと取り壊される」との文書を受け取り、勤労者体育センター(建設費約8000万円)を1万500円で購入した。結局、郡内で時価買いをしたのは、大野原町だけだった。「買った当時は投げ売りなど想定もしていなかった」と同町の担当者は語った。

 雇用・能力開発機構による勤労者福祉施設などの売却は、99年10月から始まった。全2070施設のうち2060施設の土地は市町村の所有。処分方法は建物を解体するか、市町村に買い取ってもらうしかなかった。

 時価売却に応じる自治体が少なかったため、厚生労働省は00年12月、国有財産売却の際のルールを援用し、時価1億円以上は105万円▽1億円未満は10万5000円▽1000万円未満は1万500円▽100万円未満は1050円――という基準を作った。

 同機構は、これまで1563施設を計8億4000万円で売却。しかし総建設費1980億円の0.4%に過ぎない。厚労省職業安定局は「施設の維持・管理に年間100億円もかかっていた。早く売却する必要があった」と釈明するが、投げ売り問題を追及している民主党の長妻昭衆院議員は「民間なら1円でも高く売れるよう必死に動き回るのに、手紙を出して購入を求める程度で済ませている」と、同機構の努力不足を指摘する。

 雇用保険料の使い道は、「失業給付」と「雇用安定・能力開発・雇用福祉3事業」の2通りがある。01年度の保険料収入2兆9348億円のうち19%にあたる5519億円が3事業に使われた。

 保険料を財源にした勤労者福祉施設などの建設は、雇用保険法64条を根拠にしている。ただ、実際にどこに何を作るかについては、地元の要望をもとに旧労働省が決めてきた。本来は、自前で福利厚生施設を作れない中小企業従業員のために保養所などを作るという趣旨だったが、98年3月に営業を開始したスパウザ小田原(神奈川県小田原市)のようにゴルフ練習場、高級レストランなどを併設した豪華な施設も登場した。

 スパウザ小田原は総事業費455億円だったにもかかわらず、同機構は小田原市に8億数千万円での譲渡を持ちかけている。同市は7月末、施設取得後に世界的ホテルチェーンのヒルトン・インターナショナル社に運営を委託すると発表した。

 小泉内閣が01年12月にまとめた「特殊法人等整理合理化計画」は、年金資金運用基金など4法人にも休養施設の売却などを求めている。しかし、ほとんどは投資額をはるかに下回る額しか回収できていない。特殊法人が施設を建設して公金を焦げ付かせる構図が浮き彫りになっている。
 同計画は特殊法人の休養施設や保養施設について、(1)年金資金運用基金と労働福祉事業団には廃止(2)簡易保険福祉事業団には運営費交付金の廃止(3)日本私立学校振興・共済事業団には意義が薄れたりしたものの整理――を求めた。

 年金資金運用基金は年金を原資として、約1950億円を投じて全国13カ所で保養施設「グリーンピア」を建設した。しかし、不採算ぶりから05年度末までに全廃され、地方公共団体に譲渡されることに。既に6施設の運営を停止したものの、これまでに売却できたのは高知県土佐市の「グリーンピア土佐横浪」の一部分で、売却額は4億8200万円にとどまる。【平元英治】

国民年金で対策本部設置 徴収強化 80%目標

2003年08月04日 The Sankei Shimbun
 自営業者らが加入する国民年金の保険料未払いが深刻化している事態を受け、厚生労働省と社会保険庁は4日、坂口力厚労相を本部長とする国民年金特別対策本部を設置した。

 今後5年で納付率を80%に回復させる目標を設定、強制徴収を含めた徴収強化に乗り出す。

 厚労相はこの日の会合で「年金制度は自分のためだけでなく、お互い支え合って生活する中で存在するものと理解してほしい」と強調した。

 具体策として、未納率が高い青森、東京、大阪、兵庫、福岡、宮崎、長崎、沖縄の8都府県の社会保険事務局を強化対象に指定。社会保険庁職員を派遣して重点的に指導する。

 また、十分な資産があるのに納付拒否をする人に対する預貯金の差し押さえなど強制徴収を視野に、所得や資産情報の入手に向けた法整備を検討するほか、保険料の免除制度も見直す。

 2002年度の未納率は過去最悪だった前年度の29・1%から8・1ポイント上昇して37・2%へ大幅に悪化した。

国民年金、約4割が未納 未納額は1兆円に

2003年07月24日 The Sankei Shimbun
 社会保険庁は24日の社会保障審議会年金部会で、自営業者らが加入する国民年金の保険料を納めなかった人の割合を示す2002年度の未納率が、過去最悪だった前年度の29・1%から8・1ポイント上昇して37・2%へ大幅に悪化したと発表した。未納額は1兆円に上る計算だ。

 未加入者を含めると、本来の国民年金対象者の4割が保険料を納めておらず、「国民年金の空洞化」が進んでいる実態が浮き彫りになった。

 空洞化の進行が、年金不信に拍車をかけることは必至。04年の年金制度改正に向けた政府、与党の議論にも影響を与えそうだ。

 厚生労働省、社会保険庁は8月1日付で坂口力厚労相を本部長とする特別対策本部を設置。今後5年で収納率を80%に上げることを目標に、免除制度の見直しや保険料の強制徴収実施に向けた法整備などを検討する。

 厚労省は未納率上昇の理由について(1)02年度から市町村が行っていた保険料徴収事務を国に移管した(2)所得が少ないなどの保険料全額免除者を絞り込んだため未納者が増加した(3)長引く不況−と説明するが、根底には深刻な年金不信がある。

 02年度の保険料全額免除者は前年度の277万人から144万人にほぼ半減。この措置で納付対象者は1683万人から1836万人に増えたが、前年度に全額免除されていた人の未納率は85・5%に上った。

 年代別では20歳代の未納率が高く、20−24歳が52・6%で最悪、25−29歳も50・6%で5割を上回った。都道府県別では沖縄県が61・3%で最も高く、大阪府が46・7%でこれに次いだ。

 未納率は1997年度に20%台になってから急激に悪化した。

過去最悪3兆円の赤字 年金積立金の02年度運用

2003/07/23中国新聞ニュース
 厚生労働省は二十三日、公的年金の積立金を運用する特殊法人「年金資金運用基金」の二〇〇二年度運用結果を発表。世界的な株安と円高の影響で単年度の赤字は三兆六百八億円と過去最悪になり、旧年金福祉事業団から引き継いだ資産を含めた累積損失は六兆七百十七億円に膨らんだ。損失拡大による年金財政の悪化で、将来の年金給付への影響も懸念される。

 厚労省が〇一年度に始めた積立金の自主運用は、二年連続で巨額損失を計上。坂口力厚労相は運用体制の見直しに繰り返し言及しており、〇四年の公的年金改革でも焦点の一つになりそうだ。

 政府の特別会計は〇二年度末に約百四十七兆円の積立金を計上しているが、これが時価ベースで約百四十一兆円に目減りしたことになる。

 積立金のうち年金資金運用基金は〇二年度末で五十兆二千億円を運用。国の財投債引き受け(十八兆六千億円)を除く三十一兆六千億円を振り向けた市場運用で、二兆五千八百七十七億円の損失が生じた。これに旧年福事業団から引き継いだ借入金の支払利息などを合わせ、損失合計は三兆六百八億円。

 運用損失の内訳は市場運用の二割を超える国内株式が二兆四百五十二億円、一割強の外国株式で一兆四千六百八十億円。約六割を占める国内外の債券は、世界的な金利低下(債券価格は上昇)の影響で九千二百五十四億円の利益を上げた。

 巨額の運用損失を出したものの厚労省運用指導課は、財政融資資金からの利子収入が〇二年度で約三兆三千億円あることを強調し「年金制度の維持に必要な水準を確保した」としている。だが国内の株式市場は最近の急回復も頭打ちで、積立金の運用環境が改善するめどは立っていない。

年金受給まで雇用保障を 厚労省が報告書案

2003年07月18日 The Sankei Shimbun
 厚生労働省の研究会は18日、今後の高年齢者向け雇用政策の基礎となる報告書案をまとめた。

 厚生年金の支給開始年齢の引き上げに対応し、年金が受給できる65歳までは年齢を理由に辞めさせられないシステムの整備が急務だと主張している。

 同省は、この報告書を基に今秋から労働政策審議会で、高齢者雇用安定法の改正作業に着手。来年の通常国会に改正法案の提出を目指す。

 ただ、経済界は、足元の経済環境の厳しさから、高齢者の雇用保障を法的強化するのに難色を示すのは必至。一方、労働組合は積極的で、具体策がまとまるまでには曲折がありそうだ。

 研究会は、大学教授ら学識経験者で構成、今年4月から検討してきた。

 現行制度は、60歳未満の定年を禁じた上、定年延長などによって、65歳まで雇用を確保することを企業の努力義務としている。

 報告書は、団塊の世代が近く60歳に達し、年金の支給開始年齢が段階的に引き上げられていることから、年金と雇用の接続が緊急の課題だと指摘。

 支給開始年齢にあわせて定年も段階的に引き上げるべきで、それが困難な場合でも、希望者全員を対象とする再雇用制度などの導入を求めている。

給付水準は年収50−55%に 厚労相

2003年06月29日 The Sankei Shimbun
 バンコク訪問中の坂口力厚生労働相は29日、同行記者団に対し、2004年の公的年金制度改正について、将来の年金給付水準は現役時代の年収の50−55%を維持する方針を表明した。8月に政府、与党に提示する厚労省の改革案に盛り込む。

 本年度から復活した年金物価スライド制を来年度に適用する場合も、引き下げ幅は今年の消費者物価下落率分(03年度政府見通し0・4%減)にとどめ、2000−02年度の凍結分1・7%は適用せず小幅に抑える意向を明らかにした。

 これに対し財務省は大幅な給付抑制や物価スライドの凍結分上乗せを求めており、今後、年金財源対策などをめぐる政府、与党内の綱引きが激化するのは必至だ。

 厚労相は、現在の年金給付水準59%を将来とも維持することは困難と指摘し、「50−55%くらいは維持しないと、国民の将来の不安につながる。経済が好転し、少子化に歯止めがかかれば、54−55%も夢ではない」と表明。併せて保険料率の上限を20%に設定する考えを重ねて示した。

 物価スライド制の適用問題では「もしやるとしても、今年1年間(の消費者物価下落率)分だけ対応する。過去の凍結分は考えていない」と言明した。

 また年金資金の運用をめぐり「株式市場に公的資金を投じないと株が上がらないこと自体がおかしい。年金は安全に運用するのが望ましい」と株式市場での運用見直しを訴えた。財政制度等審議会が見直しを求めている生活保護の老齢加算(70歳以上)についても「一度考える必要がある」と語った。(共同)

国民年金:バブル後、未納者増加 「余裕ある人」から強制徴収

2003年06月21日 [毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 社会保険庁は、来年度から国民年金の保険料滞納者のうち、家計に余裕がある人を対象に強制徴収に乗り出す。放置すれば保険料を払っている人の不公平感が高まり、現役世代全体で高齢者を支えるという公的年金制度の理念が崩れかねないためだ。滞納者は老後に納付額に見合った年金しか受けられず、このままでは将来、無年金・低年金の高齢者が増えかねない、との懸念もある。

 現在、自営業者ら国民年金保険料(月1万3300円)を自分で支払う「第1号被保険者」は2154万人。経済的事情による支払い免除者(506万人)を除く未納者は265万人に達している。

 保険料納付率も年々低下。70年代までは95%程度で推移していたが、その後バブル崩壊なども加わり、01年度は70.9%に落ち込んだ。

 納付率は若いほど低く、▽24歳以下54.0%▽25〜29歳56.8%▽30〜34歳61.0%▽35〜39歳67.4%――など。一方、99年に厚生労働省が未納者11万人を抽出調査したところ、未納者のうち年収400万円以上の人が4割以上おり、民間の個人年金加入者も13%いた。

 同庁は、未納者の増加が公的年金制度への不信感や納付意欲の低下を招き、それがまた納付率を下げるという悪循環に陥っているとみており、強制徴収に踏み切ることにした。国民年金法は強制徴収を認めているが、実際には88年から90年にかけて実施した例があるだけ。この時は、5人が財産を差し押さえられた。

 通常未納者には、はがき→電話→戸別訪問の順で納付を「お願い」しているが、法的拘束力はなく、2年間で時効を迎える。そこで同庁は今回、戸別訪問しても納付しない場合、再度はがきを出し、その後、法的拘束力のある「督促状」を出すことにした。その時点で時効が2年間延長されるため、その間さらに説得したうえで、それでも納付を拒めば、財産差し押さえもする考えだ。【鈴木直】

国民年金:専業主婦らの届け出忘れ相次ぐ 老後に減額

2003年06月21日 [毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 サラリーマンの夫の扶養を受ける専業主婦ら国民年金の「第3号被保険者」が、3号の届け出を忘れ、老後の年金を減額されかねない事例が相次いでいる。厚生労働省は救済に乗り出すが、本人の不注意による場合は救済対象から外れる可能性もある。心当たりのある人はまず社会保険事務所に問い合わせてみることが大切だ。一方で国民年金の未納率は3割となり、同省は滞納者うち経済的に余裕のある人を対象に強制徴収に乗り出す。【松村由利子、吉田啓志】

 札幌市の主婦、Aさん(54)は4月、夫の年金について調べるために社会保険事務所を訪れ、自分の年金も確認したところ、「未納になっています」と言われ青ざめた。

 公務員の夫と結婚して以来、Aさんはずっと専業主婦だ。10年ほど前、友人に誘われて生命保険会社の研修を約1カ月間受けたことがあったが、結局外交員にはならなかった。ところが研修といっても実際には入社したことになっており、Aさんは知らないうちに国民年金の第3号被保険者からサラリーマンなどが対象の第2号被保険者になっていたのだ。

 95、96年度の2年間、国が届け出漏れを救済するための特例を設けた際、Aさんは自分の年金を確認するために区役所に出向いていた。しかし窓口で「今、働いていませんか」「サラリーマンの奥さんですか」と尋ねられ、「それなら大丈夫」と言われ、自分も安心した。Aさんは「もし60歳になるまで空白に気づかなかったら、受給資格の25年間に満たず、年金が全く受け取れないところだった」と憤る。

 関東地方に住む主婦、Bさん(55)は、会社員の夫(58)が早期退職する際に、社会保険事務所について行き、偶然、パート勤務を短期間したことで空白期間が生じていたことを知った。パートを辞めた後に3号の届け出をしなかったことが原因だった。市役所で自分の年金について尋ねた際、「空白期間はありません」と言われて安心していたという。

 法律や税務を含めたライフマネジメントに携わる「ファイナンスクリニック」代表、籔本亜里さんは、「市区町村の年金窓口と社会保険庁事務所が連動していなかったのは問題だ」と話す。

■厚労省、05年度にも救済措置■

 現行制度では届け出漏れに気づいた時点で届けても、2年間さかのぼって国民年金に加入できるだけ。10年後に気づいた場合、8年間は未加入扱いとなる。支給される年金が1年につき約2万円で、空白期間の8年をかけて年額16万円程度、支給が減ってしまう。Aさんはこの例に近い。

 また原則、基礎年金は通算25年以上公的年金に加入しないと受給できない。届け漏れ期間が長く、加入が25年に満たなくなると、無年金になるおそれもある。

 旧厚生省は95年4月から2年間、届け出漏れに気づいた人が届け出れば、3号制度発足の86年4月までさかのぼり、過去の減額分を帳消しにする特例制度を実施。136万人が救済された。Aさんは確認したものの、それに気付くことはでっきなかった。

 最近では不況によるリストラで、勤務先を変わる例が増えている。夫が次の会社に移るまでに空白が1日でもあれば、妻はその間扶養から外れ、3号でなくなる。夫が次の会社に就職し、再び3号に戻った時に届け出を忘れる例が少なくないようだ。

 届け出漏れを防ぐため、同省は02年4月、それまで本人が市町村窓口で行わなければならなかった3号の届け出を、夫の勤務先が社会保険事務所に届け出る方式に変えた。それでも、会社は02年4月以前の届け出漏れ分まで面倒を見ない。会社が届け出を忘れるケースもある。

 このため、厚労省は05年度にも再度特例期間を設け、86年にさかのぼって救済する意向だ。前回の特例制度終了後、現行の「2年間遡及」の救済を受けた人のうち18万8000人は届け漏れ期間が2年を超えており、同省は最低19万人は救済検討対象になるとみている。ただ、同省内には本人の過失度合いが大きい人を救うことに対する慎重論も強く、一律に救済した前回と違い、次回は対象を一定程度絞り込むことを検討する。

■「3号」の届け出漏れの主なケース■

・一時会社勤めをした専業主婦が、退職時に「3号」に戻る届け出をしなかった

・生命保険会社で外交員講習を受けた際、厚生年金に加入したことに気づかなかった

・パート勤務のつもりだったが、事業主が厚生年金加入手続きしていた

・夫が会社を辞め、新しい勤務先に移る際に「3号」の届け出をしなかった

◆ことば=第3号被保険者

 サラリーマンなど厚生年金、共済年金などの加入者(第2号被保険者)に扶養される20歳以上60歳未満の配偶者で、年収130万円未満の人。主に専業主婦で、条件を満たした際に社会保険庁への届け出が必要。自分で保険料を支払わなくても、満額で月6万6000円の老齢基礎年金が支給される。

厚労省法人の資産処分、1万500円が6割 中国地方 '03/6/21 中国新聞地域ニュース

 厚生労働省は二十日、同省所管の特殊法人、雇用・能力開発機構が全国に保有している体育センターなど計二千七十施設の売却状況を発表した。売却済みの千五百七施設の売却総額は約七億二千六百万円で、体育館が千五十円で売却されるなど建設費(約千七百五十億円)の0・4%しか回収できなかった。同機構をめぐっては、各地で極端な安値売却が問題になってきたが、全体像が明らかになり、あらためて厚労省の無駄遣い体質に批判の声が上がるのは必至だ。

 中国地方五県では、体育館など百六十九施設を総額六千七百二十二万八千八百七十五円で売却。安値売却が問題視される中で、さらに五十三施設の売却が予定されている。

 五県別では、売却された施設が最も多かったのは広島で四十六。山口、岡山がそれぞれ三十七で続いた。鳥取は二十五、島根は二十四だった。

 売却価格別では、一万五百円が呉共同福祉施設(呉市)▽尾道共同福祉施設(尾道市)▽倉敷勤労者体育センター(倉敷市)―など計九十九施設で全体の59%を占める。

 十万五千円での売却も、海田共同福祉施設(広島県海田町)▽因島勤労者体育施設(因島市)▽岩国中高年齢労働者福祉センター(岩国市)―など五十三施設に上った。このほか安芸府中商工センター(広島県府中町、七十万八千七百五十円)など三施設が百万円未満での売却だった。

 一方、最高売却額は、柳井共同福祉施設(柳井市)の二千五百九万五千円。宇部勤労者総合福祉センター(宇部市、五百四十万七千五百円)▽下関勤労者総合福祉センター(下関市、四百六十七万七千七百五十円)▽木次勤労者総合福祉センター(島根県木次町、三百八十五万三千五百円)―など計十四施設が百万円以上で売却されていた。

 売却予定施設には、広島勤労者職業福祉センター(広島サンプラザ、広島市西区)、福山勤労総合福祉センター(備後ハイツ、福山市)などが含まれている。

厚生年金収支、制度発足以来初めての赤字

2003/06/14 読売新聞 Yomiuri On-Line
 厚生労働省が14日までにまとめた厚生年金の2001年度財政状況によると、同年度収支は6999億円の赤字で、制度発足以来初めての赤字になったことがわかった。

 不況のあおりで保険料収入が減り、積立金の市場運用も低迷していることが主な要因だ。

 厚生年金の2001年度の収入は28兆5819億円で、支出は29兆2818億円だった。

 収入のうち、保険料収入は前年度比マイナス0・6%の19兆9360億円。企業倒産やリストラなどで、加入者数が前年度より61万人も減ったことなどが影響した。

 支出では、高齢化の影響で厚生年金給付費が前年度より2・4%増加、約19兆6228億円となった。

 厚労省は1999年の財政再計算で、2001年度に4兆1000億円の黒字になるとの将来見通しを立てていたが、2001年度は見通しを大幅に下回る結果となった。

転職先への年金移動可能に

2003年06月12日 The Sankei Shimbun
 厚生労働省は12日の社会保障審議会年金部会で、確定給付型の企業年金に加入するサラリーマンが転職先に年金の原資を移動できる新制度の検討を表明した。元の企業から厚生年金基金連合会を通じて転職先企業へ移管する形を想定している。

 また、政府税制調査会が検討している公的年金の税制見直しに関連し、負担能力のある高齢者に対する税負担を容認。その条件として課税分の税収を年金財源に充てる考え方を示した。委員から「高齢者世代と現役世代との間に税負担のひずみをもたらしている」などと優遇措置縮小を認める意見が相次いだ。

 このほか、代表的な企業年金である厚生年金基金が解散する際、厚生年金基金連合会に納付するよう義務付けられている最低責任準備金を減額する特例措置を提案した。

 現在の年金制度で原資の移動が可能なのは双方ともに運用によって給付額が変動する確定拠出型の場合だけ。それ以外のケースは脱退一時金が支給されるが、次の資金として引き継げず、年金額が減少してしまう問題点が指摘されている。

 特例措置は、近年の株式市場低迷などで厚年基金の運用利回りが悪化し、将来の給付に備えて積み立てる責任準備金が、解散時に確保できていない基金が急増している問題への対応。

 厚年基金の責任準備金は5・5%の運用利回りが前提。これを下回っている厚生年金本体の運用実績に準じて、納付金額を減額する。納付不足分の長期分割納付や金利の設定も検討課題としている。

 厚労省によると、2002年3月末で、1736基金のうち264基金が責任準備金を下回る資産しか持っていなかった。

■厚生年金 民間企業に勤めている人が加入する公的年金。保険料には基礎年金の保険料も含まれており、個人と事業主が折半して負担する。保険料率はボーナスも含めた総報酬の13・58%。企業の倒産やリストラなどで加入者数が減少傾向にあるのに対し、高齢化により受給者が急増している。

年金制度活用で新たな少子化対策 厚労省

2003年05月30日 The Sankei Shimbun
 厚生労働省は30日の社会保障審議会年金部会で、育児休業期間中に厚生年金保険料が免除されている子育て支援措置を、現行の子どもが1歳になるまでを3歳までに延長するなど、年金制度を活用した新たな少子化対策を提示した。

 少子高齢化が急速に進めば保険料を支払う若年層が一層少なくなり、将来、年金財政を揺るがすことは避けられないと判断して検討を求めた。

 これに対し、養育する子どもの数で保険料負担や年金給付に格差が生じることに否定的な意見もあり、議論を呼びそうだ。

 育児休業中に厚生年金保険料を免除されている人は14年度で約5万7000人。加入者全体の0・18%にすぎない。

 一方、育児・介護休業法は昨年改正され、3歳未満の子どもを育てている労働者に対し、事業主は育児休業に準じる措置を取ることが義務付けられた。

 厚労省はこうした育児環境の変化を踏まえ、支援対象者を拡大するため保険料免除期間の延長を提案した。

 併せて育児休業を取らなくても就業時間が短縮して賃金収入が減り、将来の給付が減額される問題点を指摘。保険料を減免するとともに、育児期間前の標準報酬で保険料を納めたとする「みなし規定」を適用する考えを示した。

 さらに(1)育児のために離職した人にみなし規定を適用(2)自営業者ら国民年金加入者も保険料を免除(3)専業主婦についても夫の保険料を減免−などの案を示した。

厚生年金基金の94%が赤字、全体の赤字額は最悪更新

2003/04/04 読売新聞Yomiuri On-Line
 代表的な企業年金である厚生年金基金で、将来の年金支払いに必要な資産を確保できていない赤字基金が全体の94%に上っていることが、厚生労働省が4日まとめた厚生年金基金2001年度決算で明らかになった。基金全体では、将来必要な年金支払い額よりも6兆5200億円が不足しており、“赤字額”は過去最悪を更新した。

 決算結果によると、国内株式市場の低迷により、年金資金の運用利回りは平均でマイナス4・34%となり、前年度に続いて資産が目減りした。このため、1737基金(昨年3月末現在)のうち1640基金で、将来に必要な年金支払い額よりも資産が不足していた。

 基金全体で見ると、積立金の合計は4540億円だったのに対し、不足額は6兆9800億円に上り、“赤字額”は前年度(4兆3800億円)に比べて大幅に増えた。

 資産が目減りすると、企業が不足分を埋め合わせなければならないため、基金の解散も相次いでいる。厚労省によると、2001年度には59基金、02年度には過去最多の73基金が解散した。

消費税、相続税を充当 年金改革負担増で提案

2003年04月01日 The Sankei Shimbun
 経済財政諮問会議の民間議員は1日、2004年の年金制度改革の論点整理を示し、国庫負担の財源は、消費税や相続税などが適当とするとともに、実質非課税である年金給付の税制も見直す必要があると提案した。

 政府は基礎年金の国庫負担を現行の3分の1から2分の1に引き上げる方針だが、引き上げには安定的な財源が必要。世代間の公平をできるだけ確保するために高齢者にも応分の負担を求める。

 諮問会議は今後、社会保障審議会と並行して年金制度改革を審議し、6月にまとめる「骨太の方針2003」に制度改革の基本方針を盛り込む。12月に政府案を決定する方針。

 論点整理は、どのような制度を選択するにしても給付の抑制、保険料の引き上げは避けられないと指摘。ただ、厚生年金の保険料(現行は年収の13・58%)を厚生労働省試案の「20%ないし18%程度と考えるのが適当か」として大幅な引き上げの再検討を求めた。

 将来の保険料引き上げを抑制するための公的年金の積立金については「高齢化のピークに積立金を保有し続けることは合理的ではない」として規模を縮小するべきだとの考えを示した。

 また、年金給付が貯蓄に回り相続されるケースもあることから、相続時には国庫負担分を返納することなども検討すべきだと指摘した。

原労省、年金資金の株式運用継続へ 分科会意見書案

2003年03月07日 asahi.com
 巨額の損失を出している公的年金積立金の株式運用について、厚生労働省の社会保障審議会年金資金運用分科会は7日、今後も株式投資を続けることが妥当とする意見書案をまとめた。今後の課題として、04年の制度改革に合わせた投資配分や運用指標の見直しをあげた。これを受けて同省は特殊法人「年金資金運用基金」を通じた株式の運用を継続する方針だ。

 意見書案は、市場運用による収益のぶれを防ぐためには投資対象をできるだけ多くする長期分散投資が基本とし、「株式と債券を組み合わせた運用が妥当」とした。全額を国債運用に切り替えた場合、賃金や物価が上昇する局面では収益の確保が難しく、年金給付の増大に追いつかないことや、金利動向によっては損失が生じる可能性を指摘し、「債券保有割合を高めることが必ずしも安全性を高めることにならない」とした。

 ただ、一部の委員からは「株式市場や経済に対する国民の心配にていねいに答える視点が欠落している」との指摘が出た。運用責任の所在に関する意見もあったが「運用にリスクが伴うのは仕方ないことで、結果責任は問わないのが常識。ルールの明確化や情報開示で対応すべきだ」(若杉敬明・分科会長)との見解が示されるにとどまった。

 現在約150兆円ある厚生年金などの積立金は、政府の財政融資資金や財投債での運用以外に、年金資金運用基金が30兆円弱を市場で自主運用している。02年9月末現在で、国内株式には7兆円程度の年金資金が投入されており、全額が自主運用となる08年度では国内債券に68%、国内株式に12%が配分される計画だ。

 90年代以降市場が低迷する中で、自主運用は元本割れが続いており、01年度の累積損失は約3兆円、02年度に入っても半年で約2兆円の巨額損失が発生している。年金資金の株式運用は、01年末に閣議決定した特殊法人等整理合理化計画で、04年の制度改革までに運用のあり方の再検討が求められていた。


サラリーマンの年金一元化、時期は明示せず 政府懇談会

2001.02.28(21:49)asahi.com
 現在5つに分かれているサラリーマンの公的年金制度の一元化を議論する政府の「公的年金一元化懇談会」(座長・神代和俊放送大教授)は28日、21世紀初頭のうちに一元化の枠組みをつくるとする報告書をまとめた。だが、具体的な時期については明示できなかった。

 報告書は、2002年4月に農協職員らが加入する農林漁業団体職員共済組合(農林年金)を民間サラリーマンの厚生年金に統合し、2004年度までに国家公務員共済組合(国共済)と地方公務員共済組合(地共済)の年金財政を調整し保険料を同水準にすることを検討するべきだとした。

 これでサラリーマンの年金制度には、公務員グループと民間グループの2つができる。報告書は、残る私立学校教職員共済は2004年度までに2つのグループ間での位置づけを検討し、ほかの制度と比べて低い保険料率を前倒しで引き上げるように求めた。

 年金制度の一元化は、財政単位を拡大することで制度を安定させ、各制度の間での保険料負担のばらつきをなくすねらい。農林年金と統合しても厚生年金の保険料率は変わらない見通しだが、国共済と地共済の財政調整では、現時点から見ると地共済側の保険料率が上がるとみられる。

 報告書を受け、政府は3月半ばに一元化の方向を閣議決定し、農林年金を厚生年金に統合する法案を今国会に提出する。

年金自主運用で国債売却あり得る 社会保障審分科会長

2001.02.27(22:55)asahi.com
 社会保障審議会(貝塚啓明会長)は27日、国民年金と厚生年金が保有する140兆円を超す積立金のうち、約3割を株や外国資産に投資することなどを盛り込んだ「年金積立金の運用の基本方針」を答申した。答申後の記者会見で若杉敬明・同審議会年金資金運用分科会長(東大教授)は、4月から厚生労働省が年金積立金の自主運用を始めるにあたって、国債価格が下がるような国家財政の運営が行われる時には国債の売却もあり得るとする考えを明らかにした。

 自主運用を行う基金が一部を売却したり売却の意向を表明したりするだけで、市場や政府の財政運営に大きな影響を与えることが予想される。

 厚生年金や国民年金の積立金は、現在は財政投融資制度を通じて財務省が運用している。自主運用が始まると、年金積立金に直接、大量の国債が組み入れられることになる。

 若杉分科会長は、郵便貯金の自主運用では国債を償還まで持ち切ると決めているが、年金にはその必要はないとし、「国債を持ち続けると決めるのは(市場原理を活用する)財投改革の精神に反する。国民の期待を裏切らないよう国に強く要望する」と述べた。

 また、同席した分科会委員の米沢康博横浜国立大教授は「積立金の収益を上げるために、国債の比率を下げることはあり得る。(インフレに合わせて利回りが変わる)インフレ連動債など、年金にふさわしい国債の発行も求めていく」と語った。

 具体的には、4月に年金福祉事業団を改組して発足する年金資金運用基金が、分科会の意向のもとに判断していくという。突然大量の国債を売買するのではなく、事前にメッセージを市場に流す方法を今後探る。財務省が市場関係者らを招いて国債について意見交換をする国債市場懇談会を参考にするという。

企業年金法案を閣議決定

2001.02.20(10:43)asahi.com
 政府は20日、将来給付する額が決まっている企業年金について定めた「確定給付企業年金法案」を閣議決定した。20日中にも国会に提出する。法案は企業年金に十分な積立金があるかを定期的に検証することを義務づけるとともに、国の厚生年金の一部を代行して運用・給付している「厚生年金基金」の代行部分を国に返上することを認めるなどの内容を定めている。企業年金が破たんした会社の従業員に対する「支払保証制度」の導入も検討されていたが、今回の法案には盛り込まれず、検討を続けることになった。

厚生年金の代行部分、株現物での返上認める方針 政府

2001.02.02(14:34)asahi.com
 厚生年金の一部を代行管理している企業の厚生年金基金が来年度にも、代行部分を国に返上する問題で、財務、厚生労働の両省は、厚生年金基金が代行部分の運用資産として保有している株を現金化せず、現物で返上することを認める方針を決めた。現金で返上するためには10兆円規模の株式売却が必要とみられるため、経済界から株価対策として、現物返上を認めるよう求める声が出ていた。政府は、現金での納付を義務づけている財政法など関連法の改正案などを、今国会に提出する方針だ。

 現物での返上にあたっては、原則として株価は返上時の時価で評価する。ただ、株の形での現物返上を自由に認めると、リスクの大きい銘柄の株も国が大量に保有することになる可能性がある。こうした事態を避けるため、両省は、現物返上に使う株式銘柄の構成などのルールを詰めている。

 私的年金である企業の厚生年金基金は、公的年金である厚生年金の一部の約25兆円について、代行して管理・運用している。長引く景気低迷と超低金利で、厚生年金基金は運用利回りが予定利率に追いつかず、深刻な経営問題になっており、経済界は代行部分の返上を求めていた。

中小企業退職金共済の掛け金助成を削減 厚生労働省

2001.02.01(19:35)asahi.com
 厚生労働省は1日、中小企業退職金共済制度(中退共)への加入を促すために続けている、事業主に対する2年間の掛け金助成を削減すると発表した。優遇されすぎとの批判に配慮した。退職金制度が整っていないパートなど短時間労働者に対しては新規加入の際の助成を厚くする。省令を改正し、4月1日から施行する。

 中退共は、単独では退職金制度を運営できない中小企業から、特殊法人の勤労者退職金共済機構が掛け金を集めて運用し、退職金を払う制度。

 これまでは新しく加入する事業主に掛け金の3分の1を、加入したその月から24カ月間、国が助成していた。今後は助成額に月5000円の上限を設け、助成率を2分の1とするが、期間は加入後4カ月目から12カ月に改める。全体では削減になるとみられる。

 中退共の退職金は、掛け金の納付が12カ月未満の場合は掛け捨て、12カ月から23カ月までは受給額が掛け金の積み立てた総額を下回る掛け損となり、長期加入者の退職金の財源に回る仕組みなので、その部分に手厚く助成するのは好ましくないと判断した。

 パートなど短時間労働者への助成率は3分の1から6割以上に引き上げる。

国と地方の公務員年金、2004年までに「財政統合」へ

2000.11.09(22:00)asahi.com
 公務員の年金である国家公務員共済組合(国共済)と地方公務員共済組合(地共済)を所管する大蔵、自治の両省は、9日開かれた政府の「公的年金一元化懇談会」(座長・神代和俊放送大教授)で、2004年までに2つの年金制度の財政を一元化すると表明した。両制度の財政統合は4年前の閣議決定で方向づけられているが、具体的な日程が示されたのは初めてだ。現状では地共済の年金保険料が引き上げられ、行革に伴って年金財政が悪化している国共済が引き下げられることになりそうだ。

 両共済は制度や組織は残すものの、保険料率が国共済で月給の18.39%、地共済が16.56%と格差があるのを同じ水準にする。

 被用者の年金制度の一元化では1996年の閣議決定で、公務員の国共済と地共済が財政安定化のための措置を検討するとされていた。民間の農林漁業団体職員共済組合(農林年金)は厚生年金への統合を希望しており、残る私立学校教職員共済(私学共済)が厚生年金に統合するかどうかが焦点になっている。

農業者年金、公費投入総額は3兆円超 農水省見通し

2000.09.22(03:19)asahi.com
 加入者の激減で事実上破たんした農業者年金の救済に必要な公的資金が、これから将来にわたる総額で3兆円を超えるという農水省の見通しが21日、明らかになった。投入される公的資金は、今後10年足らずで1兆円以上に達し、その後10年間で残りの大半が投入されるとみられる。専業農家を主とする加入者約28万人、受給者約75万人のために巨額の税金を使う自民党などの農村優遇策に対して都市部を中心に批判も予想され、今国会で「農村か都市か」をめぐる政策上の争点にもなりそうだ。

 農業者年金は国民年金に上乗せする形で支給される強制加入の公的年金。救済策を盛った法案が臨時国会に提出される予定だ。救済策では、現役世代の保険料を引退世代の年金として仕送りする形の「賦課方式」をやめ、加入者が積み立てた資金と運用益を老後に受け取る積み立て方式に移行する。これに伴い、現在の受給者や、移行前まで保険料を負担してきた加入者に支払う年金の原資がなくなるため、実際に受給している人の年金額を平均約1割削減したうえで、その給付分は国費で賄うことにしている。

 当初の救済案では、農水省は、年金額の削減幅を平均で3割としたが、自民党や農業団体などの強い反発で8月に約1割削減で決着した。農水省が当初、自民党の農業者年金小委員会に口頭で報告した試算は、3割削減を前提として、2兆5000億円程度が必要としていた。削減幅の圧縮で国の持ち出しが増えるため、農水省幹部は「3兆円台半ばになるのは確実」とみている。

 政府は農業者年金の制度発足時から公的資金で支援しており、1998年度の国庫助成は年金給付額約1700億円の45%に達している。これまでの公的資金の投入総額は約1兆8000億円にのぼる。

 今回の救済策で給付を1割削減しても、ここ4、5年は、年間1500億円を超す公的資金が必要と、農水省はみている。公的資金投入の試算は、積み立て方式への移行直前に20歳で加入した人が80歳程度まで生きたと仮定している。このため、理論上は、公的資金投入の期間は60年程度となる。

企業年金法、サラリーマンの受給権確保へ4省検討

2000.08.19(03:04)asahi.com
 大蔵、厚生、通産、労働の4省が検討している「企業年金法」の骨格が固まった。国の厚生年金に上乗せされる厚生年金基金や税制適格年金といった企業年金について、サラリーマンの受給権の保護を打ち出したうえで、現行制度を再編し、現在は厚年基金だけの積み立て不足の解消義務を全面的に課すなど統一的なルールを定める。また、厚年基金は掛け金のほかに、厚生年金の一部を国に代わって運用する制度だが、運用難で重荷になっている国の「代行」部分の返上を認める方針だ。一方、企業が倒産した場合などに備える支払い保証制度の導入は経済界の反発が強く、調整が難航し、受給権の保護は不十分な形になっている。政府は来年の通常国会に法案を提出したい考えだ。

 代表的な企業年金の厚生年金基金と税制適格年金は景気低迷や低金利を背景にした積立金不足から、給付額を引き下げたり解散したりするケースが相次いでいる。厚年基金は法律で規制され、積み立て不足の解消も義務づけられていても、基金の解散で給付を十分に受けられない例がある。企業が信託銀行などと契約して運営する税制適格年金は、設立しやすく自由度が高い半面、年金財政を監視する仕組みが不十分とされ、基金に比べ受給権が守られないのが実態だ。

 新法では企業年金制度は「企業型」、「基金型」、現行の厚年基金の3つに再編される。

 適格年金は主に「企業型」に移行させ、企業が信託銀行などに運用をゆだねる形態はそのままに規制を加える。厚年基金の代行部分を返上した残りは「基金型」とし、運用主体は基金となる。返上された代行部分は厚生省が特殊法人を通じて運用する。代行部分を抱える現行の厚年基金も残る。

 統一ルールでは、積み立て不足の解消を義務づけるため、掛け金を引き上げるか、企業が穴埋めするか、給付の削減を説得するかなどの対応を迫られる。また、年金財政を毎年度、検証し、加入者に対する運営状況や財政状況の情報開示を義務づける。さらに、転職などでマイナスにならないように、どれだけの期間勤務すれば年金受給権を得られるかを明示する。

 支払い保証制度をめぐる論議は昨年来、進められたが、経済界と厚生省との意見の対立が大きく、決裂した状態になっている。

 一方、税制の優遇については、掛け金を払うときは非課税、一定額を超える給付を受けたときに課税する方向が有力だ。特別法人税(運用資産の1%、現在は低金利で凍結中)は適格年金にかかり、厚年基金にはかからないが、この課税を廃止することも検討されている。ただ、政府内には大蔵省を中心に慎重論がある。

 企業年金法は、来年1月からの導入をめざす確定拠出年金(日本版401k)を対象からはずし、年金額を約束する確定給付型に絞っている。

確定拠出年金で提携/住友系金融4社と三井系金融4社

2000.08.10The Sankei Shimbun
 住友生命保険、住友銀行など住友系金融四社と、さくら銀行、中央三井信託銀行など三井系金融四社は十日、来年から導入される確定拠出年金制度(日本版401k)の運営、管理分野で業務提携すると発表した。来年四月には住友銀とさくら銀が、来年十月には住友海上火災保険と三井海上火災保険が合併予定で将来性が見込める401k分野で提携することにした。

 新会社は「ジャパン・ペンション・ナビゲーター」。九月に設立し、十月の営業開始を予定している。資本金は二十五億円で、出藻范ヲは住生、三井生命保険が二五%、住友銀、さくら銀が各一五%、住友信託銀行、中央三井信託、住友海上、三井海上はそれぞれ五%になる。

国民年金保険料、半額免除の対象は年収440万円以下

2000.06.17(00:25)asahi.com
 丹羽雄哉厚相は16日、東京都東村山市で記者会見し、2002年度に導入される国民年金保険料の半額免除制度について、対象となる人の所得の範囲を、夫婦と子ども2人の標準世帯で年収約440万円以下とする方針を表明した。自営業者や学生ら約2000万人いる国民年金の「第1号被保険者」の約3割が対象になる水準だという。近く政令を公布する。

 今年3月に成立した年金制度改正関連法で、1号被保険者については2002年4月から、一定の低所得の場合は申請すれば保険料の半額を納付しなくてもいいことになり、具体的な所得水準は政令で定めるとされていた。

 国民年金の保険料は月額1万3300円。それが段階的に上がり、最終的に月2万4800円になる。2004年までに国民年金に税金を投入する割合が2分の1(現行は3分の1)に引き上げられても、月1万8200円となる計算だ。

 半額免除制度では、老後に受け取る年金額について、半額免除期間は全額納付した期間の3分の2と評価される。改正前は、無理をして保険料を全額納付するか、全額免除を受けてその期間分は3分の1の年金額でがまんするかという選択しかなかった。このため、保険料上昇に備えて中間的な選択肢を設けた。

女性の年金見直し検討会、7月に設置 厚生省

2000.06.16(20:57)asahi.com
 丹羽雄哉厚相は16日の東京都東村山市での記者会見で、女性の年金制度を見直すために設ける有識者らの検討会の論議を7月から始めることを明らかにした。委員は16人で、社会保障や税制などの専門家のほか、主婦もメンバーに入った。会社員や公務員の妻ら保険料を免除されている「第三号被保険者」にも保険料負担を求めるかどうかや、世帯単位で設計している制度を個人単位に改めるかどうかなどを含めて検討し、2001年度末までに結論をまとめたいという。

国民年金前倒し支給の増額を正式決定

2000.06.06(21:37)asahi.com
 政府は6日の閣議で、国民年金(基礎年金)を前倒しで受給する場合の「減額率」を縮小し、受給額を増やす政令改正を正式決定した。来年4月から受け取り始める人が対象。支給開始を本来の65歳から1カ月早めるごとに受給額を0.5%ずつ減らし、最も早い60歳で受け取る場合の減額率は30%(現行42%)で現行より1.2倍程度受給額が増える。一方、65歳より遅く受け取る場合の「増額率」も縮小される。65歳より1カ月遅らせるごとに0.7%増やし、70歳では42%(現行88%)増額される。

国民年金前倒し支給の増額を内定 政府

2000.06.05(21:13)asahi.com
 政府は5日の事務次官会議で、現在65歳から支給される国民年金(基礎年金)を60歳以降に前倒しで受給する場合の「減額率」を縮小し、受給額を増やすようにする政令改正案を内定した。最も早い60歳から受給する場合の減額率は現行の42%から30%とされ、受給額は逆に58%から70%に増える。また、65歳より遅く受け取る場合の「増額率」も縮小する。6日の閣議で正式決定し、2001年4月から実施する。

 現在は1年単位で定めている減額率は、改正案では1カ月単位となり、支給開始を65歳から1カ月早めるごとに0.5%ずつ上乗せする。40年間保険料を納めた人の国民年金は月額約6万7000円で、60歳で受け取る場合は現行の約3万9000円が改正後には約4万7000円になる。

 増額率は1カ月遅らせるごとに0.7%ずつ上乗せし、70歳で受け取る場合には42%(現行88%)になる。

蔵相、基礎年金国庫負担引き上げの前倒しに慎重

11:27a.m. JST May 16, 2000 asahi.com
 宮沢喜一蔵相は16日の閣議後の記者会見で、丹羽雄哉厚相が基礎年金の国庫負担の前倒し引き上げに言及したことについて、「早く政府の考えを述べなければ年金制度の維持が難しいと考えたのだろう」と一定の理解を示しながらも、「困ったと思っている。平成16年(2004年)までには財源をととのえて、そういうことを考えることになっているが、財源問題については、かねての各党間の合意から一歩も動いていない」と述べ、早急な引き上げには慎重な考えを示した。

基礎年金の国庫負担率、来年度にも2分の1に引き上げへ

00:59a.m. JST May 15, 2000 asahi.com
 丹羽雄哉厚相は14日、三重県四日市市で記者会見し、基礎年金の国庫負担の割合を、来年度にも現行の3分の1から2分の1に引き上げる方向で検討に入ることを表明した。今国会で成立した年金制度改正関連法の付則では、2004年までに2分の1への引き上げを図るとしているが、丹羽厚相は「年金に対する国民の不安を早く解消することが大事だ」と、「前倒し」の理由を説明した。

 引き上げには2兆4000億円程度の財源が必要で、扶養控除などの税制や歳出の見直し、一時的に年金保険料の積立金を借りる形にすることなども検討する考えだが、将来的な消費税率アップも含めた議論を呼びそうだ。

 法成立後間もない時期での厚相発言の背景には、公的年金の保険料負担が重くなっており、国庫負担を早く増やすべきだとの声が強まっているという事情がある。現在凍結されている保険料の値上げも、国庫負担割合の引き上げと同時に解除されることになっているため、年金財政の悪化を避けるためにも早期引き上げが必要と判断、公明党が早期実現を求めていることにも配慮したとみられる。

 丹羽厚相は、2分の1への引き上げによって、国民年金の保険料は月3000円ほど、厚生年金の保険料率(月収に占める保険料の割合)は約1%、それぞれ引き下げることができるようになる、と説明。国庫負担率が3分の1のままなら2020年には国民年金保険料は月2万4800円、厚生年金の保険料率は27.6%だが、2分の1に引き上げればそれぞれ1万8200円、25.2%になる、と試算している。

 ただ、引き上げに必要な財源をどう調達するかが問題だ。丹羽厚相は「財源を消費税に求めるのは困難。赤字国債発行も現時点では考えていない」と語り、行財政改革や歳出削減のほか、140兆円にのぼる年金保険料積立金から一時的に借りることも検討する考え。しかし、政府・与党内の調整はこれからで、難航も予想される。

厚年基金3年連続で減少

2000年5月13日 16時24分共同
 代表的な企業年金である厚生年金基金の1999年度末の基金数は、前年度末に比べて23少ない1835と3年連続で減少したことが13日までに、厚生省の調べで分かった。超低金利などで年金資産の運用環境が不透明なことから、積み立て不足の解消が困難と判断した企業が、基金の解散に踏み切ったのが主因。企業負担の軽い確定拠出年金が来年1月に導入される予定で、今後も基金の解散が続きそうだ。

厚生省が女性の年金を本格見直しへ 5月にも検討会設置

6:15p.m. JST April 24, 2000
 厚生省は、会社員や公務員の妻らの保険料を免除している国民年金の「第3号被保険者」制度を含め、女性の年金制度の本格的な見直しに取り組む方針を固めた。不公平感をなくすため専業主婦にも保険料負担を求めることの是非や、給付と負担の制度設計を現在の世帯単位から個人単位に移すことなどが課題となる。早ければ5月にも有識者による検討会を設置し、制度改正をめざす。

 結婚退職や子育て後の再就職など、生活の変化によって将来の年金額が大きな影響を受けないよう、年金制度の中での女性の位置付けを確立することが、見直し作業の主眼だ。

 第3号被保険者は、厚生年金や共済組合の加入者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者で、年収130万円未満の人。専業主婦を中心に現在は約1200万人いる。

 1986年4月に施行された年金制度改正で、無年金にならないよう、それまでは任意だった国民年金(基礎年金)への加入を義務づけた。保険料を負担せず、老後は基礎年金を、夫が死亡した場合は遺族年金を受け取ることができる。基礎年金は、離婚した場合でも支払われる。

 しかし、この制度に対しては、「自営業者の妻や単身の女性、共働きの女性に比べて不公平だ」「女性の就労意欲を妨げている」などの批判が多い。

 丹羽雄哉厚相も3月下旬の参院国民福祉委員会で、「現在の制度は女性の間で中立になっていない」との批判に、「社会の実態を踏まえ、幅広く検討する必要がある」と答えた。

 ただ、厚生省の内部には、収入のない専業主婦に保険料を負担させると滞納や未加入が増える「空洞化」につながり、離婚した場合に無年金となる恐れもあることから、慎重な意見がある。

 半面、専業主婦の間からは、保険料を負担しても年金受給権を得たいとの声があり、女性個人が保険料を負担すれば年金意識の向上につながるとの積極的な見方もある。

年金改革法が成立、4月施行 支給水準を5%減

2:45p.m. JST March 28, 2000
 厚生年金の給付水準の抑制などを柱とする年金制度改革関連法が28日午後の衆院本会議で、自民、自由、公明の与党3党の賛成多数で可決、成立した。民主、共産、社民の野党3党は反対した。厚生年金の報酬比例部分について、2000年4月に新たに受け取る人から支給水準を5%減額。支給開始年齢も13年度から段階的に引き上げ、25年度に完全に65歳となる。年金額の賃金スライドも凍結するなど、将来に向け支給水準の大幅なカットが決まった。

 記名投票で採決され、賛成337票、反対135票だった。

 今回の改正は、急速な少子高齢社会に対応し、受給者の給付水準を抑える一方で、保険料を支払う若年層の負担を軽減することに力点を置いた。厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢も、13年度から段階的に65歳に遅らせることが決まり、今年4月1日で38歳以下の男性と33歳以下の女性は65歳まで年金が受け取れなくなる。

 基礎年金財源の中の国庫負担割合を、04年までに現行の3分の1から2分の1に引き上げることも付則に明記された。これには安定した財源の確保が前提となるが、昨年の臨時国会から4カ月以上かけた審議でも確保策などの議論は深まらず、課題を残した。

 国庫負担の引き上げが実現した場合、今回の改正に基づく厚生年金の25年度の保険料率は、現行制度を変えないケースでの34.5%(労使折半)から25.2%(同)に抑えられ、国民年金の保険料の上昇幅も縮小される。

 法案は昨年11月に臨時国会で審議入り。衆院厚生委員会で与党3党が採決を強行し国会が一時混乱。参院で今国会への継続審議となったため、参院本会議での採決後、改めて衆院に送付されていた。(時事)

年金法案、衆院厚生委で可決 28日の本会議で成立へ

7:20p.m. JST March 24, 2000
 衆院厚生委員会(江口一雄委員長)は24日、給付水準の抑制を柱とする年金制度改正関連法案の採決を行い、自民、自由、公明の与党3党の賛成多数で可決した。民主、共産、社民の野党各党は「審議が十分ではない」と採決に反対したが、与党側が押し切った。政府・与党は、公務員などの共済年金の支給水準抑制などを内容とする共済4法案とともに、28日の衆院本会議で可決、成立をめざす。

 年金法案の柱は、将来の年金保険料の負担増を避けるため、(1)2000年度以降に厚生年金の報酬比例部分の給付水準を現行より5%減らす(2)働く世代の賃金の伸びを給付額に反映させる「賃金スライド」を凍結する(3)2013―2025年度にかけて、厚生年金の報酬比例部分の受給開始年齢を段階的に60歳から65歳まで遅らせる(女性は5年遅れ)――など。基礎年金の財源に占める国庫負担割合を2004年までに2分の1に引き上げる(現行3分の1)ことも盛り込んでいる。

 民主党などの野党側が給付水準抑制などに反対し、廃案を求めて抵抗したため、法案の成立は年度末ぎりぎりまでずれ込むことになった。

給付水準抑制する年金法案、参院委で可決 野党は猛反発

00:56a.m. JST March 22, 2000
 公的年金の給付水準の大幅抑制を柱とする年金制度改正関連法案は21日夕、参院国民福祉委員会(狩野安委員長)で、自民、自由、公明の与党3党などの賛成多数で可決された。2000年度以降に厚生年金の報酬比例部分の給付水準を5%減らすなどの抑制案をめぐって、民主党など野党は強く反発していたが、与党は慎重審議を求める野党を押し切る形で採決に踏み切った。与党は22日に参院本会議で可決したうえで、衆院に送って24日にも可決、成立をめざす。野党は採決の無効を訴え、狩野委員長の解任決議案を提出して、対決姿勢を強めているが、最終的には成立もやむを得ないとの判断だ。

 年金法案は、少子高齢化が進む中、現役世代の保険料負担を増やさず、給付水準を抑制することで、年金制度を維持することをめざした。具体的には、(1)2000年度以降に厚生年金の報酬比例部分の給付水準を現行より5%減らす(2)働く世代の賃金の伸びを給付額に反映させる「賃金スライド」を凍結する(3)2013―25年度にかけて厚生年金の報酬比例部分の受給開始年齢を60歳から段階的に65歳に遅らせる(女性は5年遅れ)などが盛り込まれている。

 また、基礎年金の財源に占める国庫負担割合を、2004年までに現行の3分の1から2分の1に引き上げることも付則で定めている。ただ、論議された保険料の引き上げはすでに、不況を理由に見送られている。

 これに対し、民主党など野党側は「高齢者の雇用延長が明確でないなか、年金の支給開始年齢を引き上げることは許されない」と強く反発していた。

 21日の参院国民福祉委は、中央公聴会と2時間半の質疑を行った。休憩後、自民党が採決を提案したのに対し、野党側は「審議は十分ではない」と反発したが、狩野委員長が職権で委員会を再開。野党議員が委員長席を取り囲み、怒号が飛び交う中、採決は挙手で行われた。

厚生年金65歳支給に

2000年3月21日 20時39分
 参院国民福祉委員会は,21日夕、給付水準の抑制や支給開始年齢の65歳への引き上げを盛り込んだ年金制度改正関連法案を自民、自由両党と公明・改革クラブなどの賛成多数で可決した。

 与党は22日の参院本会議で可決後、衆院に送付し、24日の衆院本会議で可決、成立を目指しており、年度内成立が確実となった。

 野党3党は同日夜、狩野安委員長の解任決議案を提出した。

厚生省など企業年金基本法制定めざす 加入者の保護重視

07:17a.m. JST March 04, 2000
 厚生、労働、大蔵省は3日、公的年金に上乗せして支給される企業年金について、加入者の受給権などを盛り込んだ企業年金基本法(仮称)の制定をめざす方針を固めた。景気低迷で年金の給付額を引き下げる企業が相次いでいることもあって、加入者が年金を受け取る権利を保護し、企業側の責任を明確にするとともに、公的年金の一部の運用を受け持つ厚生年金基金の「代行制度」を見直して企業側の負担を減らすことなどをめざす。早ければ来年の通常国会に法案を提出する予定だ。
 年金の受給権については、米国の「従業員退職所得保障(エリサ)法」のように、企業年金の加入者の権利保護を目的とした法整備を日本でも求める声が強まっている。政府が来年1月の導入を目指す確定拠出型年金(日本版401k)の加入者保護も含めて検討する方針だ。

 国の厚生年金に企業が上乗せする厚生年金基金は厚生年金の一部の運用を代行している。この代行分を国に返上することを認めるかどうかが焦点となるが、厚生省内には慎重論もある。厚生年金基金は代行制度が重荷となり、財政難から解散する基金も増えている。

年金法案、衆院厚生委で可決 与党が野党を押し切る

11:15p.m. JST November 26, 1999
 給付水準の抑制を柱とする年金制度改正関連法案は26日夜、衆院厚生委員会で自民、自由、公明の与党3党の賛成多数で一部修正の上、可決された。慎重審議を求める民主、共産、社民の野党議員が採決を阻もうと委員長席を取り囲み紛糾する中で、与党議員が採決を押し切った。野党は29日以降の国会審議を拒否する構えだが、与党は法案を29日にも衆院本会議で可決して参院に送り、今国会での成立をめざす。年金問題での与野党の対決は激しさを増すとみられ、週明けの国会で予定されている補正予算案の審議などにも影響を及ぼしそうだ。

 衆院厚生委は26日、採決に反対する野党が江口一雄委員長(自民)の着席を阻むなどしたため、終日紛糾した。並行して与野党は事態打開のため国対委員長会談を断続的に開いた。この中で野党側は、26日に採決するという日程を取り消すよう要求。与党側が応じなかったため物別れに終わった。与党は採決を先送りしても、野党側の態度は変わらないと判断、採決に踏み切った。採決に反発する野党3党は、29日の衆参両院の本会議をはじめ国会審議をすべて拒否する方針だ。

 年金法案は、5年に1度の制度見直しに伴うもの。主な内容は(1)2000年度以降に厚生年金(報酬比例部分)を受け始める人への給付を5%減らす(2)働く世代の賃金の伸びを給付額に反映させる「賃金スライド」を凍結する(3)2013―25年にかけて厚生年金の支給開始年齢を現行の60歳から段階的に65歳に引き上げる(女性は5年遅れ)――などだ。

 厚生省は当初、先の通常国会での成立をめざした。しかし、基礎年金(国民年金)の財源をめぐり、保険料と税でまかなう社会保険方式を堅持したい自民党と、全額を税に変えるよう主張する自由党の間で協議が難航。最終的に、▽財政方式を含めて幅広く検討する▽当面2004年までに、安定した財源を確保し、国庫負担の割合(現行3分の1)を2分の1へ引き上げる、との内容を付則に明記。財源問題の決着を先送りして先の通常国会末にようやく提出にこぎつけたが、審議には入れなかった。

与党国対委員長が衆院議長に年金法案の経過報告

10:20p.m. JST November 26, 1999
 自民党・古賀誠、自由党・中西啓介、公明党・草川昭三の与党国会対策委員長は26日夜、国会内で伊藤宗一郎衆院議長に会い、衆院厚生委員会での年金制度改正関連法案の採決の経緯を報告した。古賀氏らは「正当な手続きに従って採決」したことを説明。伊藤議長は「国会運営が円滑にいくよう野党と話し合いをしてほしい」と要請した。これを受けて、古賀氏が民主党の川端達夫国対委員長に、与野党国対委員長会談を再度開くよう申し入れたが、民主党側は拒否した。

給付抑制の年金制度改正関連法案に自自が合意

03:07a.m. JST July 10, 1999
 自民、自由両党は9日、政策担当責任者が会談し、2000年度以降に厚生年金を受け取る人への給付を五%減らすなど給付抑制を柱とする年金制度改正関連法案を今国会に提出することで合意した。保険料の上昇を抑制するため、基礎年金(国民年金)の国庫負担率について、現行の3分の1から2分の1に引き上げることをめざす方針を法案の付則に明記することでも一致。年金制度の抜本改革に向けて自自両党で直ちに協議を始めることを確認した。ただ、今国会の会期が8月13日までと残り少ないことや、与野党の修正協議も予想されることから今国会では継続審議となり、法案処理は秋に予定されている臨時国会以降となる見通しだ。

 社会保険方式を前提とする年金制度改正法案の今国会提出をめぐっては、自由党が基礎年金について、消費税を財源とする全額税方式とするよう主張し、政府・自民党との調整が難航。国会提出の時期も厚生省がめざした今年3月から大幅に遅れていた。

 合意した年金制度改正法案は(1)2000年度以降に厚生年金(報酬比例部分)を受け始める人への給付を5%減らす(2)働く世代の賃金の伸びを給付額に反映させる「賃金スライド」を凍結する(3)2013―25年にかけて厚生年金の支給開始年齢を現行の60歳から段階的に65歳に引き上げる(女子は5年遅れ)――などが柱。法案の付則に、基礎年金の国庫負担率(現行3分の1)を、当面、2分の1に引き上げることをめざす方針を明記。財源については、次の見直しの時期にあたる2004年までに結論を得ることとした。現行の社会保険方式を維持するのか、税方式とするのかは、消費税の取り扱いを含めて抜本的な見直しについて両党で直ちに協議を開始することにした。

年金の報酬比例部分、段階的廃止へ

(3:01a.m. JST September 26, 1998)
 厚生省は25日、年金支給開始年齢を60歳から65歳に引き上げる中での経過措置として特別支給されている老齢厚生年金の「報酬比例部分」の支給を、2010年度前後から約15年かけて段階的に廃止し、2025年をめどに完全な65歳支給を実現する方針を固めた。少子高齢化がピークを迎える2025年時点での給付総額を抑制することを狙ったものだが、連合などは「高齢者の雇用状況は厳しく、65歳まで働ける環境は整っていない」として反発している。

TOPIC No.2-4d その他(年金について)


「引退後はハワイ」ブーム 物価高が悩み

2001.01.13(15:17)asahi.com
 引退後、常夏のハワイで数カ月暮らしてみるのが、中高年の間で静かなブームになっている。観光旅行ではなく、外国生活を体験しながら英会話や趣味に挑戦しようという人たちだ。ハワイは観光なら入国査証(ビザ)なしで90日まで滞在できるうえ、日系人や在留邦人も多いので違和感が少ない。日本食も容易に入手でき、滞在施設も整っている。ただ、ほとんどの食料品を輸入に頼るハワイは米国でも物価が高い。あこがれのハワイで暮らすには、年金だけではやや苦しいようだ。

 ホノルルのビルの一室に昨年11月下旬、日本からきた中高年ら十数人が集まった。長期滞在希望者のためのセミナーだ。主催は海外での長期滞在を支援する日本の財団法人「ロングステイ財団」。一行はハワイでの生活や医療などの説明を受け、バスでスーパーや貸部屋を見てまわった。

 引退した人や、定年を控えた人たちが「一度は外国生活を体験してみたい」と考えた時、人気が集まるのはハワイだ。2−3カ月の滞在を目指す。ホテル暮らしではなく、貸しアパート形式の「コンドミニアム」で自炊するスタイルだ。

 ●豪なら5分の1

 下見にハワイを訪れ、2週間ほど住んでみる人も多い。3年前に貿易会社を引退、昨年11月に約2週間の予定でハワイを訪れた東京都三鷹市の丸山雅夫さん(62)、弘子さん(62)夫妻は「前から住んでみたいと話していた。煩わしい日本の冠婚葬祭から解放される。ただ、ワイキキ周辺では生活コストが高い」。将来の選択肢として考えるという。

 福島県郡山市の松田渉三さん(54)、美智子さん(48)夫妻は昨年春、呉服店を閉めて引退した。余生を楽しもうと話し合った末、「日本には、外国のような貸部屋も少ない」と、11月にハワイでコンドミニアムを借りた。

 2週間滞在して感じたのは物価の高さだった。「バスでワイキキから離れた所まで行って買い物をしてみたが、オーストラリアで同じように短期間滞在した時は5分の1で済んだ。日本食にこだわると、生活費は日本の方が安い」

 ●年金だけでは…

 札幌市で華道教授をしている三好恭子さん(53)は昨年10月初めから3カ月滞在。人生の骨休めに、英会話を学ぼうと学生ビザを取って来た。ハワイ大学の外国人向けクラスに入学したが、学生はほとんど日本人。普段はあまり英語を必要としないため、英語の勉強にはならなかった。1カ月ほどで受講をやめ、近くの地域センターでフラダンスを習うことにした。

 3カ月契約で借りたワイキキ近くの部屋の家賃は月1450ドル(約16万7000円)で、食費が800−1000ドル(約9万2000円−約11万5000円)。「交通費や雑費などを合わせると、1カ月に30万円はかかります」。ほかに航空運賃が約8万円、ハワイ大の授業料が1カ月半で約16万円。「月20万円ほどの年金だけでは、ハワイ生活は無理でしょうね」

 ●大震災が転機に

 5年前、大手ビール会社を定年退職した兵庫県川西市の住谷茂一さん(64)、ちか子さん(64)夫妻は、年に数回ハワイに住む。阪神大震災で家が全壊。退職金をつぎ込んで再建することも考えたが、家賃7万4000円の県営住宅で我慢し、残りの人生は年金をベースにハワイで過ごそうと決めた。

 1カ月の出費はやはり約30万円になる。「生活費は高い。22万円程度の平均的な年金だけでは賄えない」。だが、食事、足の便、宿泊施設、言葉の面から、「やっぱりハワイ」と気に入っている。

 ハワイで長期滞在者向けの会社を経営するロングステイ社の大塚真介社長は「物価が高いといっても、地元の人と同じ食材ですませば日本よりは安いはず」と話す。アドバイスは「ハワイで病気やケガをした時に備えて日本で傷害保険を買ってくること」だそうだ。

無年金障害者、札幌で支給求め提訴

2000.12.25(16:45)asahi.com
 国民年金に未加入だった学生時代に精神障害と診断され、一方で北海道知事から障害基礎年金の不支給処分を受けた札幌市の男性(39)が25日、「保険料の支払い能力がない学生にも受給資格は与えられるべきだ」などとして道知事を相手に、不支給処分の取り消しを求める訴訟を札幌地裁に起こした。

 学生の国民年金加入は1991年に強制になったため、こうした任意加入時に障害者になった「無年金障害者」は全国に数多くいると言われ、現在、国の社会保険審査会で全国の学生無年金障害者38人が集団で救済を訴えている。男性は今年9月に請求を棄却され、先行して提訴した。

 訴状などによると、男性は小学生のころから脳神経外科で投薬を受けるなどしていた。21歳で大学生だった男性は82年3月、精神障害と診断されたが、国民年金への加入が任意で入っていなかった。

 98年4月、道知事に障害基礎年金の支給を求めて裁定を請求したが、「病気と診断された時点で20歳に達していたのに、国民年金に未加入だった」として不支給決定を受けた。道社会保険審査官への審査請求は同年10月、国の社会保険審査会への再審査請求は今年9月に棄却されている。

 男性は、国民年金法は満20歳未満に初診があれば無条件で障害基礎年金の支給を定めているとして、「保険料の支払い能力がないのは20歳以上の学生も同じで、学生に同法を類推適用しないのは、法の下の平等を定めた憲法14条などに反する」と主張。また、幼少時に精神障害の初期症状で通院していたとし、初診は20歳前とみなすべきだとも主張している。

 訴えに対し、道法制文書課は「訴状を見て対応を検討したい」としている。

年金資金2兆円を元本保証のないリスク運用へ

2000.12.23(02:25)asahi.com
 厚生省の「年金積立金の運用の基本方針に関する検討会」(座長=若杉敬明・東大教授)は22日、現在は大蔵省に運用を任せている厚生年金や国民年金積立金を2001年度から自主運用するための基本方針を報告書にまとめた。10年以内に、150兆円程度の積立金の3割近くを株式や外国債券など元本保証のない資産で運用し、年4.5%という高い利回りを目指す。2001年度の場合、実質的な自主運用枠となる2兆円のほとんどを元本保証のない資産に振り向け、半分の1兆円程度を国内株式で運用する内容だ。厚生省はこの報告書を社会保障審議会に諮問、来年2月には正式方針として決定する。

 報告書によると、年金積立金資金は68%前後を国債や財投債など安全性が高い国内債券で運用する。

 しかし、12%程度は国内株式、8%程度は外国株式、7%程度は外国債券といった元本保証のない資産で運用する。5%程度は年金給付などのため、換金しやすい短期資産で運用するとしている。

 現在は年金福祉事業団が大蔵省資金運用部から約27兆円を借り入れる形で、株式には約7兆円投資している。こうした「自主運用」が150兆円の全体に広がることになる。

 若杉座長は「短期的に見れば株は上がり下がりがあるが、30年以上の長期間で見れば物価の上昇を上回る値上がりをしており、安定した収益が期待できる」と説明している。

 年金積立金の運用資金は2001年から7年ほどかけて、大蔵省から厚生省に順次返還される。3割近くを元本保証のない資産で運用する報告書通りの構成にするのは10年ほどかかりそうだ。

 厚生省は、こうした自主運用のほか、大蔵省の資金繰りに協力するため、大蔵省が発行する財投債も引き受けることになっている。このため、実質的な「自主運用枠」は2兆円程度になる見込みだ。

主婦の年金加入「空白期」問題、社保事務所が独自に救済

2000.10.21(03:00)asahi.com
 サラリーマンの妻が短期アルバイトをした後に「紙一枚」の届け出をしなかったため国民年金加入歴に「空白」が生じ、将来の年金が減る問題で、独自の判断で空白期間をすべて帳消しにする「温情救済」をしている社会保険事務所があることが分かった。法律上は2年間しか空白期間を消せず違法な措置となるが、現場では「本人が知らない間に空白が生じており気の毒だ」などと、しゃくし定規の法律適用を避けている。救済により、年金受給額に年間最大24万円、生涯で数百万円の違いもでる。

 関東地方に住む主婦(50)は、8年前に生命保険会社で2カ月だけ働いた。会社が厚生年金の加入手続きをしたことを知らず、辞めた後も国民年金の届け出をしなかった。今年になって空白問題を知り市の窓口にいくと、担当者が社会保険事務所に連絡をとり、「特別に8年間すべての空白をなくす」措置を受けた。

 この社保事務所では「個別の事情で判断するが、知らぬ間に加入と脱退の手続きがとられている場合、本人に責任を負わせるのは気の毒。1カ月に数件は救済している」という。

 また、西日本に住み、同じように生保での短期アルバイトで8年間の空白が生じた主婦(49)も、今年夏、県の社会保険事務局の判断で空白がすべて帳消しとなった。この事務局は「一定の基準にあてはまれば基本的に救済している」と独自の温情救済を認めながらも、「本庁(社会保険庁)に知られたらやめざるをえない」と苦渋ものぞかせた。

 こうした救済は、空白問題を報じた朝日新聞への主婦らの投書で分かった。「自分も空白が生じた」との投書を寄せた56人のうち、7人が「特別な救済を受けた」としていたため、朝日新聞がそれぞれの担当窓口に事実を確認した。

 56人のうち、生保勤務が原因だったのは43人と約8割を占めた。生保では、外交員の数を増やすことも営業成績につながり、年間十数万人が入れ替わっており、届け出漏れが起きやすい状況になっている。

 社会保険庁年金保険課は「2年を超えて、3号未納を解消することは法律上はできないことになっている。仮にそのような事例があるなら、遺憾であるとしかいえない」と話している。

地方公務員共済の破たん相次ぐ 年金財政の悪化が響く

2000.12.19(13:54)asahi.com
 市町村職員らの加入する地方公務員共済組合が年金財政の悪化で破たんする例が相次いでいる。今春は秋田、福岡県久留米、大牟田、長崎県佐世保の4市の共済が立ちゆかなくなり、県の市町村職員共済に統合された。来春は山口県下関市の共済が統合を検討している。また、破たん寸前の北九州市は、政令指定都市の共済が法律上、県組織に統合できないため、自治省に救済を求めている。高齢化で年金受給者が増える一方、支える現役世代が行革で減っていることが響いている。地方と国の公務員年金の財政統合が打ち出されるなか、最も弱い部分から崩れ始めた形だ。

 地方公務員の共済組合は全部では85。市町村職員は都道府県単位で47のほか、横浜、大阪など指定市で10ある。それとは別に、宇都宮、岐阜市なども単独や、周辺市と共同で24の「都市職員共済組合」をつくる。都道府県職員や警察、公立学校職員もそれぞれ共済をもつ。

 破たんが相次いでいるのは都市職員共済だ。かつて職員側の力が強く、市職員として別に健康保険組合をもったため、年金の共済組合を単独でつくったといわれる。一時は30あったが、1980年代の広島県呉市、昨春の鹿児島市、今春の4市の破たんで現在は24に減った。

 職員と市の折半する保険料と積立金の運用益の収入が、OBへの年金支給などの支出を下まわり、赤字となっている共済が大半だ。佐世保市の場合は99年度、約7億円の赤字。95年度から赤字が続き、積立金を取り崩してきた。大牟田市も99年度は約3億円の赤字。久留米市も2002年度以降に赤字転落の見込みとなった。秋田市は健保組合の財政破たんが統合のきっかけだった。

 下関市も99年度ですでに赤字が6億円以上。山口県市町村職員共済組合によると、来春の統合を目指して調整しているが、県の共済自身も黒字が4億円余りしかなく、統合で赤字に陥る心配がある。

 北九州市は98年度から赤字になり、99年度には赤字額が11億円余りに膨らんでいる。今年3月末の積立金が630億円あるが、2000年度も13億円余りの赤字が見込まれる。県レベルでは、宮崎県市町村職員共済組合が99年度に赤字に転落した。

 地方公務員共済組合法は、都市職員共済を県レベルに統合することは認めているが、県と指定市の共済をほかに統合する道はない。自治省福利課は「県や指定市単位の共済組合を統合できるように法律を改正する必要があるかもしれないが、いまのところその予定はない」と話している。

 公務員年金の財政は共済ごとの落差が大きい。佐世保、大牟田、北九州市は1人の受給者をほぼ1人の現役職員が支えていた。比較的余裕がある千葉県や埼玉県の市町村職員共済は3人以上で1人を支える。地方公務員共済組合と国家公務員共済組合は、2004年度をめどに年金財政を1本化する方針が決まっているが、個別の共済の内容はばらばらだ。

厚生年金基金の株式10兆円が市場に放出の可能性

2000.10.18(03:04)asahi.com
 公的年金である「厚生年金」の一部を代行管理している民間企業の「厚生年金基金」が、来年度にも代行部分を国に返上するのに伴って、約10兆円の株が株式市場に一気に放出される可能性があることが17日、明らかになった。企業側は代行部分の運用資産として大量の株式を保有しているが、国に返上するには運用資産を「現金化」して納付しなければならないと規定されているためだ。しかし、低迷が続く株式市場には、それだけの規模の株を消化する力はないとの見方が強まり、厚生、大蔵など関係5省庁は市場への影響を避けるため、現物(株式)での代行返上が可能かどうか検討を始めた。

 民間サラリーマンの年金で、基礎年金に上乗せされる公的年金の2階部分である厚生年金の一部の約25兆円について、私的年金である企業の「厚生年金基金」が代行して管理・運用している。

 厚生省、労働省、大蔵省、通産省、金融庁の関係5省庁は、来年初めの通常国会に提出する予定の企業年金法案に、この代行部分を国に返上することを認める条文を盛り込む方針だ。長引く不況と超低金利の下で、企業の厚生年金基金は軒並み、運用利回りが予定利率に追いつかず、巨額の差損が発生、深刻な経営問題となっている。経済界は「代行返上」を強く求め、国もこれを認めることにした。

 ところが、「代行部分」は厚生年金基金(51兆円)の半分に当たる約25兆円にのぼる。このうち株式売却でねん出されるとみられる規模は「10兆円程度」(関係省庁幹部)。これは東京市場の株価上昇を支えた外国人投資家による昨年1年間の買い越し額に相当する。

 財政法などの関連法によると、国庫への納付は現金とされている。このため企業側は、返上資金をねん出するため一斉に運用資産の株を売却する可能性があり、軟調な株価がさらに下落する要因になるのは避けられない。

年金相談も「お盆ラッシュ」 普段の倍近い人出

2000.08.14(23:53)asahi.com
 年金相談もお盆ラッシュ――。例年、多くの会社が夏休みに入るこの時期は、社会保険事務所の年金相談窓口が込み合う。東京都足立区の事務所には14日、200人以上が相談に訪れた。「普段の倍の人出。200人を超える日は年に数えるほどしかない」という状況に、相談員5人がフル稼働しても、待ち時間は1時間前後に及んだ。

 6日付の本紙に「サラリーマンの妻がアルバイトで厚生年金に加入した際、必要な届け出をせず、将来の国民年金額が減ってしまった」という記事が掲載されたのがきっかけで、「届け忘れ」に気がついたという専業主婦からの問い合わせが目立っている。

 神奈川県内の社会保険事務所では「これまで200件以上の電話がかかってきた」という。「全国では相当な数になったのではないか」と社会保険庁の担当者もいう。

 社会保険事務所で、自分の年金歴と、夫がサラリーマンであることを確認するなどした後で、実際の届け出は最寄りの市区町村役場に行くことになる。年金の記録を一元的に管理するのは社会保険事務所、国民年金の受け付けは市区町村が行うからだ。

 サラリーマンの妻は、夫の転職時にも届け出を忘れやすい。都内の市役所の担当職員は「説明してもなかなか分かってもらえない。仕組みから変える必要があると感じている」という。

 年金相談は、電話を含め1998年度には2318万件。9年前より約3割増えた。年金制度が複雑化するにつれて、1件の相談時間は延びるばかりだという。

議員年金優遇くっきり 厚生年金平均の2倍強

3:13p.m. JST May 15, 2000 asahi.com
 厚生年金の給付が大幅に減らされるなか、引退した国会議員の年金である議員年金の受給額が平均449万円と、厚生年金の平均210万円の2倍強にのぼるなど、極めて優遇されていることがわかった。6月予定の総選挙を前に引退を表明している自民党の原健三郎元衆院議長が年額741万円、竹下登元首相が675万円、社民党の村山富市元首相が527万円となる。永年在職議員への年金額の水準が妥当かどうかには議論もあるが、議員年金は在職10年で受給資格を得られ、ほかの厚生年金や地方議員の年金などとも併せて受給でき、給付財源の3分の2は税金で賄われている。国会での見直し論議もない。

 議員年金は国民共通の基礎年金とは別に、上乗せされて支給される。また、議員の前にサラリーマンなら厚生年金、公務員なら共済年金など、ほかの公的年金も併せて受給できる。

 国会議員の場合、給付額は退職時の歳費の3分の1が基準となる。現行は在職10年で年額412万円。在職期間が1年延びるごとに約8万2000円増額される。

 在職54年の原・元衆院議長の場合、給付額の算出基準の上限である「在職50年」を超えるため、残りの4年分は切り捨てられる。在職50年以上の議員は、議員年金とは別に、毎年500万円の憲政功労年金が支給される。竹下氏の在職年数は42年、村山氏は24年。

 約750人の国会議員が、引退議員と遺族と合わせて約870人の年金を支える。現職議員が払う保険料は月額10万3000円。不足分は国庫から払われる。2000年度は給付額29億8000万円のうち国が20億3000万円を負担する。

厚生年金保険料の滞納で事業所の差し押さえが増加

03:05a.m. JST April 30, 2000
 厚生年金や健康保険という社会保険料の徴収をする社会保険事務所が、滞納した事業所の預金や売掛金を差し押さえる――そんな強制処分が1998年度には全国で約1万7000事業所、額で前年より3割以上多い約1100億円にのぼったことが厚生省社会保険庁の集計でわかった。労使で折半する保険料負担が不況で重荷になり、滞納する中小・零細企業が増えているうえに、社会保険庁が徴収方針を強化していることが背景にある。差し押さえを引き金にした倒産も出ている。

 社会保険庁によると、98年度に社会保険事務所が差し押さえで確保した保険料は、1099億円と前年度比で34%増えた。対象の事業所数は約1万7600で7%増えた。

 大都市部をみると、東京都は金額で43%増の329億円と大幅に増えた半面、事業所数では5%減って約6200だった。社会保険庁は、差し押さえ金額が増えたために事務量が増えて、対象事業所数が減ったと見ている。愛知県も金額は43%増の110億円に対して、事業所数は14%減の約1300だった。

 大阪府は金額は21%減の73億円ながら、事業所数は15%増の約810。福岡県は金額で4倍の12億円、事業所数で1.5倍の約230に急増している。

 4都府県を除いた地区では金額で37%、事業所数でも20%増えた。差し押さえは大都市部以外の社会保険事務所でより増えていると見られる。

 99年度分の保険料は今月末が支払期限。差し押さえの集計は今後になる。

 一方、倒産などのために結局徴収できずに社会保険事務所が損失処理した保険料の額は97年度まで増えていたが、98年度には前年度比で約4億円減って約190億円となった。売掛金や銀行預金を倒産前に差し押さえることも含めて、積極的な徴収活動の結果が出ていると見られる。

 社会保険庁によると、差し押さえは、社会保険事務所が、保険料の納付期限後に督促状を出し、それから10日たっても払わないと実施できる。同庁年金保険課の原田昭雄課長は「滞納を放置すると、保険料を納めてくれなくなる。1カ月の滞納ですぐに差し押さえをすることはないが、明確な基準はない。滞納額の多い企業は労働者の数も多いので優先度が高くなる」と説明している。

厚生年金に未加入の事業所が80万以上

2:20p.m. JST April 16, 2000
 厚生年金加入が義務づけられている法人事業所のうち実際に加入していない事業所は1998年度に80万以上にのぼることが、政府の統計をもとにした推計でわかった。厚生年金の加入事業所は98年度に戦後初めて減少し、その後も減り続けている。不況で保険料の負担感が強まり、中小零細企業の加入が進まない一方で、脱退するケースも目立っているからだ。

 厚生年金制度は、常勤の経営者や従業員がいる法人事業所を対象としている。厚生省はそのすべてが加入していないことを認めているが、未加入の実態については公表されていない。

 実際に事業をしている法人事業所の統計としては、徴税活動をもとにした国税庁の「法人企業の実態」調査がある。それによると株式会社や有限会社などの法人数は98年度末で約251万。一部に共済年金の対象事業所などもあるが、厚生省はこの数字が「厚生年金に加入すべき事業所の法人に近い」としている。

 一方、厚生省によると、厚生年金に加入する事業所は98年度末で前年度比約1万9000減の約169万。これを国税庁統計の約251万から差し引いた約82万が未加入の規模と推計され、厚生省年金課も「その数字で大きくは違わない」としている。厚生年金の加入は大企業の場合、1社で数カ所の事業所が対象になることもある。実際の法人数としては少なくなり、未加入の事業所はさらに多い可能性もある。

 法人企業数に対する厚生年金加入事業所の数の割合を仮に「推計加入率」として計算すると、86年度末の62%から97年度末には69%まで増えたが、98年度末には67%に下がったことになる。

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