TOPIC No.2-37-2 北方領土問題/日露平和条約

01. 北方領土問題 YAHOO! Japan News
02. 北方領土対策本部 by北海道総務部
03. 北方領土 byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
04. 北方領土とは 2.日露間の国境の変遷 (5)1951年 サンフランシスコ平和条約 by北海道
05. 日露和親条約(にちろわしんじょうやく)/日本国魯西亜国通好条約 -本条約によって、千島列島の択捉島と得撫島の間に国境線が引かれた。- byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
06. 樺太・千島交換条約 byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』


ロシアが北方領土を返還する可能性は極めて少ないと推察されます。日本はどのような戦略で領土を返還させるのでしょうか?


北方領土で対日けん制か 露報道、交渉後退の恐れも

2010/11/16 中国新聞ニュ−ス

 【モスクワ共同】ロシアが、1956年の日ソ共同宣言に基づき、平和条約締結後の歯舞、色丹の2島引き渡しで北方領土問題の幕引きを図ろうとしてきた従来の方針を撤回したと報じられ、メドベージェフ大統領の北方領土訪問に強く抗議した日本側への「けん制」との見方が出ている。

 大統領は昨年7月、同宣言を「唯一の法的文書」とし、これを基礎に日本と領土交渉を続けていく考えを表明。国後、択捉を加えた北方四島の帰属問題を解決して平和条約を結ぶと明記した93年の東京宣言には触れず、2島返還での決着を狙う方針を示唆していた。

 15日付のロシア紙コメルサントが報道したように、日ソ共同宣言に基づいて交渉することはないとの方針に変わったとすれば、日本の領土返還要求は完全にはねつけられたことになり、交渉がさらに後退するのは必至。

 日本外交筋は「本当だとしたら、とんでもない。真意を測りかねている」と困惑。ただ、今のところ、同宣言をめぐるロシアの公式な立場に変化は見られないといい「国際合意を破棄することはさすがにないと思う」とも指摘する。ロシア政府はコメントを出していない。

 大統領は1日の国後島への訪問後も、他の島への新たな訪問計画が明らかにされるなど対日姿勢を硬化させている。

 13日の首脳会談では菅直人首相に対し「解決できない論争より経済協力の方が有益」と主張。このままでは領土問題の解決は不可能と訴えることで、4島返還要求を崩さない日本を動揺させ、妥協を促す戦略とみられる。

駐ロシア大使、一時帰国へ 大統領、他島訪問も計画

2010年11月03日 中国新聞ニュ−ス

 2日、モスクワの日本大使館を出る河野雅治駐ロシア大使(右)(ロイター=共同)

 政府は2日、ロシアのメドベージェフ大統領の北方領土国後島訪問に関する事情を聴くためとして、河野雅治駐ロシア大使を一時帰国させることを決めた。訪問に抗議の姿勢を示すための事実上の大使「召還」で、政府の対抗措置の一環となる。一方、ロシアのラブロフ外相は2日、大統領が北方領土のうち、国後島以外の歯舞群島、色丹島、択捉島いずれかへの新たな訪問を計画していると述べた。日ロ関係の冷え込みは避けられず、平和条約締結を含む北方領土問題の早期解決は難しい情勢だ。

 在ロシア日本大使館は、河野大使が2日夜(日本時間3日未明)にモスクワを出発、3日に帰国することを明らかにした。菅直人首相は13日から横浜市で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議での大統領との会談について「まだ何も決まっていないというのが今の状況だ」とした。

 前原誠司外相は午後の記者会見で、大統領の北方領土訪問と、沖縄県・尖閣諸島をめぐる問題が絡んでいるのではないかとの見方に関し「やっぱり日米だ。地域の不安定さがある中で日米同盟の足腰を固めて強化する」と強調した。

 首相は2日夜、記者団に一時帰国について「事情を聴きたいと思い、指示した」と説明した。

【露大統領北方領土訪問】「日本を支持」と米高官 オバマ政権発足後、支持明言は初めて

2010.11.02 07:51 MSN産経新聞

 1日、北方領土・国後島の教会前で、極東サハリン州の知事と話すロシアのメドベージェフ大統領(ロイター)

 【ワシントン=佐々木類】クローリー米国務次官補(広報担当)は1日の記者会見で、ロシアのメドベージェフ大統領が北方領土の国後島を初訪問したことについて「北方領土に関しては米国は日本を支持している」と述べた。その上で、「米国は長年、日本とロシアに平和条約交渉を促してきた」とし、対話に向けた努力を求めた。

 米政府の基本的な立場は北方4島の返還を求める日本の主張を支持するものだが、オバマ政権に入って政府高官が支持を明言したのは初めて。

 クローリー氏は、北方領土問題について「十分に認識している」と述べた。

 横浜で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議直前のこの時期に、メドベージェフ大統領が北方領土初訪問に踏み切った背景については米政府高官は、「説明はメドベージェフ大統領に任せる」と述べるにとどまった。

北方領土問題の原点は樺太千島交換条約ではないぞ

2010.11.02

【産経抄】11月2日

≪歴史研究家でもあった三波は、1875年に日露間で結ばれた樺太千島交換条約が、北方領土問題の原点だと主張してきた。これによって、千島列島は、日本の領土として正式に認められている。≫

三波春夫*1がどう書いているか知らないが、北方領土領有の原点は樺太千島交換条約ではなく、その20年前に択捉島と得撫島の間を国境と定めた日露通好条約(日露和親条約、下田条約)である。

樺太千島交換条約を≪これによって、千島列島は、日本の領土として正式に認められている≫と書いているが、正式に認められたのではなく、樺太と千島を交換して、千島(得撫以北)は初めて日本の領土になったのである。不見識もはなはだしい。

三波春夫は全千島返還論を述べているのかもしれない。産経抄が同意するならそう書かなければならないが、単に分かってないのだろう。

【産経抄】

2010.11.02 02:56 MSN産経新聞

 三波春夫は生前、後援会の機関誌にエッセーを連載していた。論客としても知られた三波は、芸能界の内輪話などでお茶をにごすことはない。毎回時事問題を取り上げ、切り口もユニークだった。たとえば、昭和56年7、8月合併号のテーマは、チャールズ英皇太子の結婚式だ。

 ▼三波は、カルロス・スペイン国王が出席を取り消した事実に注目する。国王は、皇太子夫妻が新婚旅行の途中、スペインが領有を主張する英領ジブラルタルに立ち寄ることに、抗議の意志を示したのだ。「いいなあ、その心意気」と書いている。

 ▼そこで持ち出すのが、北方領土問題だ。三波は、満州でソ連軍と戦い、4年間のシベリア抑留を経験している。きのうのメドベージェフ・ロシア大統領による北方領土訪問には、筆誅(ひっちゅう)を加えずにはいられなかったはずだ。

 ▼歴史研究家でもあった三波は、1875年に日露間で結ばれた樺太千島交換条約が、北方領土問題の原点だと主張してきた。これによって、千島列島は、日本の領土として正式に認められている。さらに60年を遡(さかのぼ)って、北方領土を開拓し、日露紛争を解決した高田屋嘉兵衛の功績を知ってもらおうと、芝居を企画し歌を作った。

 ▼日本人だけでなく、ロシア人も歴史を学んでほしい。そこから本当の友好関係が生まれる。そう訴えていた三波にすれば、日ソ中立条約を破った対日参戦と、北方領土不法占拠の正当化は、歴史の捏造(ねつぞう)以外の何物でもない。

 ▼菅直人首相は、まもなく開催されるAPECで、メドベージェフ大統領の非を世界に訴え、カルロス国王のような「心意気」を示すことができるか。きのうの国会答弁を聞いていると、心もとなく思えて仕方がないが。

北方領土:「ロシア本土並み」発展加速

2010年11月01日 21時29分 毎日新聞

北方領土の国後島を訪れたロシアのメドベージェフ大統領=2010年11月1日、AP

 【ユジノサハリンスク田中洋之】北方領土の国後島を訪れたロシアのメドベージェフ大統領は1日、島の生活環境が向上していることを強調し、今後も政府主導で開発に取り組む考えを示した。旧ソ連時代を含め初の国家元首の訪問により、北方領土の「ロシア化」がさらに進むことになりそうだ。

 大統領は今回、政府の肝いりで整備が進むインフラ施設を中心に視察した。真っ先に訪れた地熱発電所は、3年前に完成したもので、古釜布(ユジノクリリスク)の電力需要の40%を賄っている。ディーゼル発電施設よりコストが3分の1で済む利点があり、計画中のもう1基の地熱発電所が完成すれば、ディーゼル発電施設は必要なくなるという。

 国後島の経済を支える水産加工コンビナート近くでは、来年の完成を目指して係留施設や3階建ての「海の駅」が建設されており、大統領は進ちょく具合を満足そうに視察した。島のテレビ放送のデジタル化も進められており、島内で視聴できるテレビのチャンネル数は現在の4から20に増えるという。

 ◇巨額予算を投入 住民流出止まる

 北方領土はソ連崩壊直後の混乱で連邦からの支援が途絶え、住民の流出が相次いだが、最近は歯止めがかかりつつある。大統領が視察した新設の幼稚園は、110人の子供を引き受けることができる。

 北方四島を事実上管轄するサハリン州当局によると、色丹島にも定員70人の幼稚園が近く完成する予定で、北方領土で子供の数が増えていることを裏付けている。大統領は「生活条件が普通になれば、人々は島にやってくる」と自信を示した。

 ロシア政府は豊富なオイルマネーを背景に07年から巨額の予算を投入してクリル(千島)諸島社会経済発展計画に着手。インフラ整備を中心とした第1期に続き、11〜15年の第2期計画では、地下資源開発や観光レクリエーション基地の整備などを掲げており、北方四島の「ロシア本土並み」の発展を目指す動きが加速しそうだ。

北方領土:露大統領訪問 日露関係冷却化は必至の情勢

2010年11月01日 21時29分 毎日新聞

 日本側の見送り要請にもかかわらず、ロシアのメドベージェフ大統領が1日午前、北方領土を訪問したことで、今月中旬のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議での同大統領訪日を控え、日露関係が冷却化するのは必至の情勢となった。尖閣諸島沖の漁船衝突事件を巡る中国の対日姿勢硬化と足並みをそろえるように、ロシアから揺さぶりを掛けられ、菅政権は外交でさらなる課題を突きつけられた形だ。

 仙谷由人官房長官は同日午前の会見で「わが国固有の領土。誠に遺憾」と表明した上で、ロシア側から「事前の正式通告はなかった」と明らかにした。また訪問の狙いについて「少々疑問に思っている。これからよく調査をしないといけない」と真意をはかりかねていることを隠さなかった。

 一方、菅直人首相は同日午前の衆院予算委員会の集中審議で「(日本の)政権交代後の政権運営に原因を求めるのは偏った見方だ。ソ連がロシアになり、西に向かっていたエネルギーが東に向かって、極東地域にかなり力を入れてきている。そういう大きな背景もある」と述べ、ロシアの国内事情を指摘した。

 今夏以後、大統領の北方領土訪問の情報が流される中、日本側は水面下で繰り返しロシア側に訪問しないよう要請してきた。先月、モスクワで開かれた日露次官級協議では「日露関係に重大な影響を与える」と伝え、慎重な対応を求めた。

 それを無視するかのように1日朝、ロシア側から大統領の北方領土訪問が報じられると、ある外務省幹部は「非常に遺憾だ。ロシア側から事前通報はなかった。現地に職員がおらず、訪問を確認するすべはない」と怒りをあらわにした。与野党からも批判があがり、民主党の鉢呂吉雄国対委員長(衆院北海道4区)は「大統領が足を踏み入れるのは妥当ではないのではないか。大変遺憾だ」と、国会内で記者団に語った。

 日露間では、APEC首脳会議の際に、菅首相とメドベージェフ大統領が会談することで調整が進められてきたが、大統領の北方領土訪問により、調整が難航する可能性も出てきた。【犬飼直幸、西田進一郎】

【露大統領北方領土訪問】なぜ国後か 国資金での発展期待 「2島返還」のシグナル?

2010.11.01 22:36 MSN産経新聞

1日、北方領土・国後島の地熱発電所を訪問しヘルメットを受け取るロシアのメドベージェフ大統領(左)(ロイター)

 【モスクワ=遠藤良介】メドベージェフ大統領が北方四島の中でも国後島を訪問先に選んだ理由の一つは、同島の人口が推定6千人以上と、最大面積の択捉島と並んで多く、産業基盤が立ち遅れていることにあると考えられる。

 択捉島は水産業を柱とした新興財閥「ギドロストロイ」の本拠地で、同島を事実上所管するクリール行政区では同社からの税収が予算の約7割を占める。領土返還への反対世論も強い。これに対し、国後島には国家資金をより重点的に投下しており、その使途を大統領自身が掌握する必要があるというわけだ。

 一方、居住者が少ない色丹島は歯舞群島とともに、1956年の日ソ共同宣言で平和条約締結後に日本へ引き渡すとされている。大統領が色丹島を訪問しなかったことは、同宣言に基づき「2島返還」を着地点と考えるロシアの“シグナル”とも解釈できるだろう。

【露大統領北方領土訪問】中露連携で対日攻勢 歪曲史観で「強い指導者」誇示

2010.11.01 23:15 MSN産経新聞

 【モスクワ=遠藤良介】ロシアのメドベージェフ大統領が1日、沖縄・尖閣諸島近海での中国漁船衝突事件で日中関係が悪化しているのを見計らったように、北方領土訪問を敢行した。中露の蜜月関係を背景に、領土問題をめぐる日本の主張を一気に封じるのが狙いだ。ロシアは今年に入り、旧ソ連の対日参戦(1945年8月9日)や北方領土の不法占拠を正当化する歴史認識でも、中国と連携を強めていた経緯がある。

 メドベージェフ大統領は2009年2月、当時の麻生太郎首相との会談で「型にはまらない独創的アプローチ」による領土問題の解決を提唱した。だが、メドベージェフ政権下では領土問題をめぐる対日圧力が強まる一方で、日本はそれに満足な対抗策を打ち出してこなかったのが現実だ。

 ロシアは今年、日本が第二次大戦の降伏文書に署名した9月2日を事実上の対日戦勝記念日に制定し、極東各地で戦勝65年の行事を行った。新記念日制定の根底には「ソ連が朝鮮や満州、サハリン(樺太)を解放し、日本の降伏を早めた」との歪曲(わいきょく)した歴史観があり、ロシアは日本の領土返還運動を「歴史の捏造(ねつぞう)」(上院議長)と称するまでに増長している。

 9月末には、メドベージェフ大統領が中国を訪問し、胡錦濤国家主席との間で終戦65年に関する共同声明に署名。対日戦で両国が共闘したとの歴史認識を中国は尖閣諸島、ロシアは北方領土の領有権主張につなげる構図も鮮明になった。

 大統領の対日強硬姿勢には、2012年の大統領選に向けて「強い指導者」像を誇示する狙いもある。国内で高い人気を誇るプーチン首相(前大統領)との「双頭政権」にあってメドベージェフ氏には目立った業績がなく、再選の道を確保する上では日本への圧力を強めて保守層にアピールすることが有効だからだ。

 露政権は今年、旧ソ連秘密警察が第二次大戦中にポーランド軍将校ら2万人以上を銃殺した「カチンの森」事件を「スターリン体制の犯罪」と認め、ポーランドとの歴史的な和解に乗り出した。ポーランドが欧州連合(EU)内の対露“急先鋒(せんぽう)”として根強く事件の真相究明を求め、ロシアはEUとの関係改善を図る上でポーランドの意向を無視できなくなったためだ。

 ソ連の対日参戦と北方領土の不法占拠も同じ「スターリン体制の犯罪」でありながら、日本に対するロシアの態度は対照的だ。裏を返せば、日本外交の限界が垣間見える。

【ロ大統領北方領土訪問】前原外相「極めて遺憾」と駐日大使に抗議

2010.11.01 18:43 MSN産経新聞

 外務省で記者の質問に答えるベールイ駐日ロシア大使=1日午後0時41分、外務省

 前原誠司外相は1日午後、ロシアのベールイ駐日大使を外務省に呼び、メドベージェフ大統領の北方領土訪問について「わが国の国民感情を傷つけ、極めて遺憾だ。抗議する」と表明した。

 同時に「訪問時の大統領の言動などを踏まえ、適切な対応を取っていかざるを得ない。この点を本国に伝えてほしい」と強調した。

 9月末に訪問計画が表面化した際、大使に懸念を伝えたことも取り上げ「それにもかかわらず、今回大統領が訪問したことは、日本との関係発展重視を表明してきたロシア政府の真意を疑わせるものだ」と指摘した。

 これに対し、ベールイ大使は「大統領の訪問は純粋な国内問題だ」と反論。「日ロ関係の悪化は双方にとって利益にならない」とした上で、至急本国に報告する考えを示した。

【露大統領北方領土訪問】ロ外相、日本の抗議に反発「大統領は行きたいところに行く」

2010.11.01 20:42 MSN産経新聞

 1日、北方領土・国後島の教会前で、極東サハリン州の知事と話すロシアのメドベージェフ大統領(ロイター) ロシアのラブロフ外相は1日、メドベージェフ大統領の北方領土訪問に対する日本の抗議は「受け入れられない」と反発し、河野雅治駐ロシア大使をロシア外務省に呼び、ロシア側の立場をあらためて伝える考えを示した。

 外相は「ロシア大統領がロシアの領土を訪問」しただけだと主張。「日本側が同様の外交措置を再び取ることは受け入れられない」と強調した。

 一方で「日ロ間の協力を困難にする一歩を踏み出すつもりはない」と述べた。

 またインタファクス通信によると、ロシア外務省筋は、日本側の反応について「理解できない」とし、ロシアの立場に変わりはないと強調した。

 大統領の訪問に先立ち、外相は10月30日「ロシア大統領は恒常的にロシアの行きたいところに行く」と述べ、日ロ関係には「いかなる関連もない」と主張していた。(共同)

他国との協議は必要ない 北方領土訪問めぐり露大統領府

2010.10.29 18:05 MSN産経新聞

 【モスクワ=佐藤貴生】ロシア大統領府当局者は28日、メドベージェフ大統領が表明した北方領土訪問について、他国の政府と協議する必要はないとの考えを示した。インタファクス通信などが伝えた。

 当局者は、「カリーニングラード州を訪れるのに、ポーランドに打診しなくてはならないのか。そんなことはばかげており、ロシアの住民にとって屈辱的なことだ」と述べた。リトアニアとポーランドの間に位置するカリーニングラードは、第二次大戦末期にソ連が占領、戦後処理で現在はロシア領となっている。

 大統領は11月中旬、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議出席のため訪日する予定で、その前後にも北方領土を訪問するとの観測が出ている。当局者は、「カザフスタンを訪問した後、(同国に近いロシアの)サラトフ州を訪れなくてはならないのか」とも述べ、大統領の北方領土訪問は必ずしも訪日の前後とはかぎらないとの見方を示唆した。

 大統領は9月末、日本固有の領土でロシアが実効支配する北方領土について、「近いうちに必ず行く」と発言、前原誠司外相は「日露関係に重大な支障が生じる」と警告している。

ロシア大統領、カムチャツカに到着 北方領土訪問見送りも

2010.9.29 09:55 MSN産経新聞

 インタファクス通信によると、ロシアのメドベージェフ大統領は29日、訪問先の中国からロシア極東のペトロパブロフスクカムチャツキーに到着した。

 日露関係筋は28日、大統領が中国訪問の後、極東サハリン州のユジノサハリンスクを経由して北方領土の国後島などを訪問する準備を進めていると明らかにしていた。大統領が北方四島渡航の起点であるユジノサハリンスクに立ち寄らなかったことで、四島訪問は見送られる可能性がある。

 サハリン州当局者によると、大統領は28日夜の北方四島周辺の天候が悪かったためユジノサハリンスクに寄らず、カムチャツカ地方に向かった。サハリンのメディアは28日、大統領の四島訪問は悪天候のため中止されたと報じていた。

 カムチャツカでは天然ガスパイプライン開通式の出席や地元知事との会談が予定されている。(共同)

露大統領「北方領土訪問」 日露関係最悪レベルの公算

2010.09.29 15:52 MSN産経新聞

極東地区のガスパイプラインの稼働式典に出席し、サインをするメドベージェフ露大統領=29日、極東ペトロパブロフスク・カムチャツキー(AP)

 【モスクワ=佐藤貴生】ロシア国営通信によると、メドベージェフ大統領は29日、訪問先の極東ペトロパブロフスク・カムチャツキーで、日本固有の領土である北方領土について「必ず行かなくてはならない。わが国にとって大変重要な地域だ」と述べ、近く訪問する意向を明らかにした。

 ソ連時代を通じ、ロシアの国家元首が北方領土を訪問した例はなく、実現すれば日本側の反発は必至。日露関係が過去最悪レベルに落ち込む公算が大きい。

露大統領、北方領土訪問を計画か サハリンで観測強まる

2010.09.28 00:47 MSN産経新聞

 中国の胡錦濤国家主席と会談後、記者会見するロシアのメドベージェフ大統領=27日、北京の人民大会堂(共同)

 【モスクワ=遠藤良介】中国を訪れているロシアのメドベージェフ大統領が29日、ロシアへの帰途に日本の北方領土に立ち寄るとの観測が、北方四島を事実上管轄するサハリン(樺太)州で強まっている。大統領全権代表が今月に入って国後、択捉両島を視察したことなどが根拠とされ、北方領土の実効支配を強化しようとするメドベージェフ政権の意向を裏付ける動きだ。

 ロシアの大統領が実際に北方領土を訪問すれば初めてとなる。クレムリン(露大統領府)、サハリン州、露外交筋は大統領の日程を確認していない。ただ、この情報を報じた地元通信社は産経新聞に「信頼できる情報源によると、大統領はサハリンを経由して少なくとも国後島を訪れ、インフラ整備の状況を視察する予定だ」としている。

 地元有力紙の編集長は、極東連邦管区のイシャエフ大統領全権代表やホロシャビン州知事が今月9日に急きょ、不自然な日程で国後、択捉両島を視察したことを明らかにし、「大統領訪問の可能性を示す間接的な根拠はある」と語った。

 北方領土をめぐっては、2007年にラブロフ外相が日露首脳会談を前に国後、色丹両島などを訪れている。今月にはロシア正教会のトップ、キリル総主教が北方領土訪問を計画、日程上の理由で中止したばかりだ。メドベージェフ大統領は今回の中国訪問で対日戦勝65周年の共同声明に署名し、北方領土返還を求める日本を強く牽制している。

対日歴史認識で連携強化 中露首脳会談

2010.09.27 11:15  MSN産経新聞

 【北京=川越一】26日から3日間の日程で中国を公式訪問しているロシアのメドベージェフ大統領は27日午前、北京の人民大会堂で胡錦濤国家主席と会談した。同大統領の訪中は2008年5月以来2度目。中露首脳の会談は今年5度目となる。

 26日、遼寧省大連市に到着した同大統領は、その足で旅順にある旧ソ連軍兵士の墓地を訪問。第二次大戦を戦った両国の退役軍人らに面会し、「いかなる歴史の歪曲(わいきょく)も許さない」などと述べた。

 胡国家主席との会談では第二次大戦終戦65周年に関する共同声明に署名する。声明には「第二次大戦の結果見直しは許さない」との趣旨が盛り込まれる見通しだ。沖縄・尖閣諸島(中国名・釣魚島)の領有権を主張して日本と対立する中国と対日史観で連携することで、北方領土の実効支配を正当化する狙いがうかがえる。

 メドベージェフ大統領は27日午後、温家宝首相や呉邦国全国人民代表大会(全人代)常務委員長(国会議長に相当)とも会談する。その後、上海万博のロシアデー記念式典に出席するため上海に移動し、習近平国家副主席と会談する。

中露首脳会談 第二次大戦65周年で共同声明

2010.09.27 22:01 MSN産経新聞

 共同声明に調印し、握手するロシアのメドベージェフ大統領(左)と中国の胡錦濤国家主席=27日、北京の人民大会堂(共同)

 【北京=川越一】中国国営新華社通信などによると、中国の胡錦濤国家主席は27日、北京の人民大会堂でロシアのメドベージェフ大統領と会談し、両国の戦略的協力関係を新たな段階に深化させることで一致、第二次大戦終戦65周年に関する共同声明に署名した。中露首脳の会談は今年に入ってこれで5度目。

 新華社は27日夕の時点で共同声明の詳細を報じていないが、声明には「第二次大戦の結果見直しは許さない」との趣旨が盛り込まれるとみられる。対日史観で連携を強化させた中露両国が、北方領土や沖縄・尖閣諸島の領有権の正当化に利用したい考えだ。

 中国の華僑向け通信社、中国新聞社によると、胡主席は会談の中で、それぞれの国家の「核心的利益」に関する重大な問題について相互の支持を継続していくことを提案。メドベージェフ大統領も国内外の問題に関し密接に協調していく必要性を強調した。

 中国は、台湾やチベット、新疆ウイグル自治区、南シナ海を中国の「核心的利益」にかかわる重要地域と位置づけている。現在、海洋資源獲得のために日本と対立を激化させている東シナ海も「核心的利益」に準ずる海域といえる。

 経済分野での結びつきを深めている中露は、石炭や核開発といったエネルギー資源や金融、投資など広範な領域に関する合意文書にも調印。領土の保全を乱す独立主義者やテロとの戦いを進めていくことでも合意した。

北方領土の初訪問を中止 露総主教 布教は活発、「国境」誇示も

2010.09.15 18:10 MSN産経新聞

 【モスクワ=遠藤良介】ロシア正教会のトップ、キリル総主教が今月下旬に計画していた日本の北方領土初訪問を中止したことが15日、ロシア正教会関係者への取材で分かった。総主教は極東訪問の一環として、20日以降に国後島と択捉島を歴訪することを希望していたが、日程と天候上の理由で断念した。

 北方四島にはロシア正教会の5つの聖堂のほかに多数の小礼拝堂が設けられており、ソ連時代の「無神論」を打破しようと積極的な布教活動が行われている。各聖堂とも日曜礼拝の参加者は30人前後と多くないものの、択捉島の神父の一人は「信徒数はこの2年間で3〜5倍に急増した」と話している。

 政権との関係を強める正教会が北方領土の実効支配を側面支援する構図もあり、2007年には歯舞諸島の水晶島に高さ3メートルの聖人像が設置された。

 キリル総主教は正教会史上初めて、20〜23日の日程でサハリン(樺太)に滞在するほか、これと前後して極東のカムチャツカ地方やサハ共和国を訪れる。

露大統領26日訪中 「対日戦勝」で共同声明 尖閣では共闘回避へ 過度の「反日」色抑制

2010.09.25 21:20 MSN産経新聞

 【モスクワ=遠藤良介】ロシアのメドベージェフ大統領が26日から3日間の日程で中国を公式訪問し、胡錦濤国家主席らと会談する。両首脳は第二次大戦終結65周年に関する共同声明に署名、対日戦で中ソ両国が共闘としたとの歴史認識を確認し日本を牽制する。ロシアは一方、尖閣諸島の漁船衝突事件で中国と距離を置き、過度の「反日」色を抑える方針だ。

 メドベージェフ大統領はまず日露戦争(1904〜05年)の激戦地でもあった大連・旅順口を訪れ、第二次大戦でのソ連軍犠牲者や日露戦争でのロシア人戦没者を追悼する行事に出席。次いで北京で胡主席と会談し、大戦終結65周年に関する共同声明を発表する。

 イタル・タス通信によると、共同声明には、中露両国が「第二次大戦の結果」を同様に評価しており、その見直しを認めないとの内容が記載される。中露首脳は今年5月、「(対ドイツ、対日の)歴史の真実を守るために連携を強める」ことで一致しており、今回の大統領訪中もこの流れを確認するものとなる。

 ロシアは「第二次大戦の結果」として日本への北方領土返還を拒否しており、対日戦勝史観での中国との連携には、日ソ中立条約を侵犯した対日参戦や北方領土占拠を正当化する狙いがある。中国がこれに乗じ、尖閣諸島についても「大戦の結果だ」などと領有権を主張し出す可能性は排除できない。

 ただ、ロシアは今回の漁船衝突事件について公式な反応を示しておらず、大統領の訪中でも尖閣問題には深入りしない見通しだ。極東の安全保障や経済関係で中国にのみ依存することへの警戒心が根底にはある。

 外交評論家のタブロフスキー氏は「尖閣問題は日中の二国間問題であり、日中関係の悪化は、日本との関係も発展させたいロシアにとってよくない」と指摘。その上で、「今回の訪中でメドベージェフ大統領は“行き過ぎ”が出ないよう巧みなかじ取りを見せるはずだ。もし中国が尖閣問題でロシアの協力を取り付けられれば、それは中国の勝利だ」と話している。

ロシア大統領、領土問題で「礼節を」と警告

2010.9.10 21:01 MSN産経新聞

 ロシアのメドベージェフ大統領は10日、日ロ両国関係の発展には「お互いに嫌なことをせず、礼節を保つことが重要だ」と警告した。岡田克也外相らが北方領土はロシアに「不法占拠」されているとの発言を続けていることなどを念頭に、領土問題で日本へのけん制を狙ったとみられる。

 中部ヤロスラブリで開かれた政策フォーラムで有識者らと会合した際に述べた。

 大統領は日ロ関係の発展はロシアの長期的な外交戦略にかなうとし、関係発展を「楽観している」とも説明。お互いに礼節を保った対応を取れば、領土問題の進展もあり得ると指摘した。

 ロシアは北方領土は第2次大戦の結果ロシア領になったと主張、日本側の「不法占拠」発言は礼節の枠を踏み越えているとし、「全く受け入れられない」と強く反発している。(共同)

対日戦勝記念日 極東でも「解放者」史観の浸透図る 中国と連携も

2010.09.03 00:33 MSN産経新聞

戦勝記念日の式典で行進するロシア海軍の水兵たち=ウラジオストク(ロイター)

 【ユジノサハリンスク=遠藤良介】「ソ連はナチス・ドイツから欧州を解放した」。こんなロシアの国定「解放者」史観が、露極東や東アジアにも広がろうとしている。戦後65年の今年になって、事実上の対日戦勝記念日を制定した大きな狙いの一つがここにある。日ソ中立条約を破って1945年8月9日に参戦、15日の日本降伏後も一方的攻撃を続けた行為を「解放戦争」に高めるため、当局は上からのプロパガンダ(政治宣伝)に躍起だ。

 旧ソ連・ロシアでは対ドイツ戦(41〜45年)が「大祖国戦争」と呼ばれ、その5月9日の戦勝記念日は最も重要な祝日とされてきた。2700万人ともされる犠牲者を出す総力戦だったからにほかならない。ロシアは「欧州の解放者」との立場を誇示し、それを国民の結束と国際的地位の向上に利用してきた。

 これに対し、ロシア側の情報でも死者8200人という対日戦は、ロシア社会での認知度が低かった。9月2日のサハリン州での行事は過去最大とされるものの、西部での対独戦勝記念日とは比べるべくもない。

 「9月2日が『人民の祝日』かと問われれば、違う」。同州機関紙のセメンチク編集長はこう認め、「新祝日の浸透には時間がかかるかもしれないが、公式メディアとして積極的に記事にするなどで盛り上げている」と語った。

 9月2日が近づくにつれ、州立の博物館や図書館は対日戦争勝利に関する特別展示を開始。ユジノサハリンスクの戦争経験者団体は市内の全学校で特別授業を行う。同団体のチュチンスカヤさん(81)は「南サハリンも南クリル(日本の北方領土)もロシア固有の領土であり、ロシアが軍国主義日本から解放した」と教えるつもりだ。

 ロシアが対日戦勝史観を軸に、中国などと日本包囲網を形成する動きもある。ロシアのブヌコフ駐韓国大使は2日の行事で日本による中韓両国の被害を強調。「ロシアは連合国との参戦に関する責務(ヤルタ秘密協定)を果たし、大戦の終結を早めた。ソ連の対日参戦は連合国の結束の強さを示した」と語っている。

ロシア漁業庁長官が近く北方領土を訪問

2010.09.02 01:23 MSN産経新聞

 タス通信によると、ロシア漁業庁のクライニー長官は1日、今夏の漁期に関する会議を開くためなどとして、近く極東サハリン島と北方領土を訪れる考えを示した。

 長官は、ロシアの漁業者は北方領土を日本との係争地域とは受け止めていないと説明。「私たちの領土であり、私たちが発展させていくということを世界中に示したい」と述べ、水産加工場などの建設を進めると言明した。(共同)

露で対日戦勝記念日 極東各地で65周年式典を開催 「日本は歴史をねつ造」と上院議長

2010.09.02 20:13 MSN産経新聞

 2日、ロシア・ユジノサハリンスクの栄光広場にある旧ソ連軍戦没者を慰霊する「永遠の火」の周囲に献花する市民ら(共同) 【ユジノサハリンスク=遠藤良介】日本が第二次大戦の降伏文書に署名した9月2日をロシアが事実上の対日戦勝記念日に制定したのを受け、極東各地では同日、戦勝65周年を祝う式典や軍事パレードが行われた。サハリン(樺太)の行事では、ソ連の対日戦を「解放」戦争だったとする発言が政官界から相次ぎ、ミロノフ上院議長は日本の北方領土返還要求を「歴史の捏造(ねつぞう)だ」と断じた。

 新記念日の正式名称は法制定の過程で、「第二次大戦終結の日」と和らげられた。しかし、その狙いが、ソ連による日ソ中立条約を破っての対日参戦や北方領土占拠の正当化にあることが改めて鮮明になった。

 北方領土を事実上管轄するサハリン州の州都ユジノサハリンスクでは2日、軍事パレードを含む式典が行われて市民ら数千人が参加したほか、「第二次大戦の教訓と現代」と題する「国際学術会議」が開かれた。

 ミロノフ議長はこの会議で、「ソ連軍は中国東北部や北朝鮮、南サハリン、クリル諸島(千島列島と日本の北方四島)を解放した」と主張し、「勝利を祝うことは、戦争の結果見直しを許さないとの警告でもある」と述べた。また、州高官は式典で、ソ連は対日戦で「ロシア固有の領土を取り戻した」などと演説し、「偉大な勝利」を祝福した。

 この日は極東の沿海州やカムチャツカ地方などでも式典や軍事パレードが行われ、中露国境のアムール川沿岸では中国側との合同行事も予定されている。

「解放戦争」の現実 白旗に猛爆撃 サハリン残留日本人 泣いて断ち切った帰国の思い

2010.09.02 20:20 MSN産経新聞

戦勝記念日の式典で行進するロシア海軍の水兵たち=ウラジオストク(ロイター)

 ロシアの“対日戦勝記念日”を大々的に祝ったサハリン(樺太)は戦前、その南部(北緯50度以南)が日本領で、約40万人が住んでいた。ここには今も、65年前の8月にソ連の苛烈(かれつ)な侵略を経験し、戦後、さまざまな事情で帰国を断念した同胞がいる。ロシアが「解放戦争だった」と主張する対日戦によって、南サハリンの地に暮らしていた住民たちの命運は翻弄(ほんろう)された。(ユジノサハリンスク 遠藤良介)

 「どの家の屋根にも大きな白旗が掲げられていたのに、ソ連の航空機はどんどん爆撃した。駅前広場はおびただしい血で、私たちは横たわる死者・負傷者をまたいで山の神社に隠れたのです」

 日本が降伏した8月15日以降、地方郵便局に勤めていた根本ミヨさん(84)=ドリンスク(旧名・落合)在住=が、避難先のユジノサハリンスク(豊原)で体験したことだ。「コルサコフ(大泊)から出るはずだった郵便船も爆撃されていた」

 8月22日には、北海道留萌沖で引き揚げ船3隻がソ連と疑われる国籍不明潜水艦の魚雷攻撃を受け、婦女子を中心に死者・行方不明者1700人以上を出した事件も知られている。

 「上空の飛行機に、何も分からない子供たちは万歳をしていた。その飛行機が銃撃をし、発電所を爆撃したのです」。ブイコフ(内淵)で終戦を迎えた魚住笑子さん(79)=ドリンスク在住=もこう証言し、「日本の降伏後にソ連が攻撃することなど思ってもいなかった」と話す。

 女性は皆、戦車などで乗り込んできたソ連兵を恐れ、髪をばっさりと切って男を装ったり、ボロを身にまとったりした。

 戦後しばらくは引き揚げの機会はあったが、経済的理由などで戻れなかったという。

 「娘を(残留)朝鮮人に嫁がせ、その金で親を引き揚げさせた人も多かった」と魚住さん。「私たち親子には金がなく、帰れなかった。引き揚げる友人たちを見送り、同じ日本人なのにと隠れて泣いていました」と回想する。

 1946年12月には米ソ協定が結ばれて国の引き揚げ事業が始まったものの、ここで対象とされたのは日本人と子供のみ。40年代末までに魚住さんは朝鮮人と、根本さんはロシア人と結婚し、子供も生まれていた。家族と暮らすためには、帰国の思いを断ち切るしかなかった。

 炭鉱労働の募集などでサハリンに渡っていた4万人ともされる朝鮮人も戦後、韓国への帰還の道は閉ざされた。残留日本人は「お前らはなぜ自分の国に帰らない」とロシア人にいじめられた上、反日感情を強めた残留朝鮮人との複雑な関係も乗り越えねばならなかった。それでも魚住さんは7人、根本さんは3人の子供をサハリンで育て上げた。

 残留日本人やその子供たちで構成されるサハリン日本人会の白畑正義会長(70)によると、十数年前には300人ほどいた会員が今では約200人。ソ連解体後に日本や韓国での永住を選んだ人もいれば亡くなった人もおり、45年9月2日までに生まれた「1世」は95人ほどに減った。

 「やはり子供や孫を残して日本に発つことはできない」(根本さん)。1世の多くは80代と高齢になり、永住帰国は難しい。その代わり、国の集団一時帰国事業で1年半に1度ほど、祖国の土を踏めるのを楽しみにしているという。

 日本の降伏後に攻撃を続けたロシアが、「戦勝」に浮かれていることをどう思うのだろうか。

 魚住さんは「戦争に勝った国よりも、負けた日本の方が立派な暮らしぶりだと言ってやる」と切り捨て、「私たちはここにいても日本人です」と力を込めた。

シベリア抑留9人処刑新たに判明 露記録、全容解明遠く

2010.08.30 01:34 MSN産経新聞

銃殺や極刑の記録があった抑留者

 【モスクワ=佐藤貴生】第二次大戦後、約60万人の日本人がソ連に連行、抑留された問題で、抑留者9人が銃殺などにより処刑されたことを示す新たな記録が、29日までに見つかった。厚生労働省は、抑留者のうち約5万5千人が日本に帰国できず死亡したと推計しているが、処刑による死亡が明らかになることはまれだ。戦後65年が過ぎても、抑留の全容解明にはほど遠いことを象徴しており、ロシアの姿勢が改めて問われている。

 新たな記録は、ロシアの歴史研究者が、モスクワにあるロシア国立軍事公文書館で発見した。館内に保管されている抑留者の生年や出生地などを記した「個人カード」を調べ、判明した。すべてロシア語表記で、ソ連の取調官の抑留者に対する尋問結果をもとに作成されたとみられる。

 記録によると、9人は終戦翌年の1946年から50年にかけて処刑された。「反革命罪」の規定があるソ連刑法第58条に違反したとの記述もあり、スパイ活動に従事したと判断されたとみられる。

 9人のカードの大半には「極刑」と書かれ、刑の執行日か死亡年月日が記されている。当時のソ連では、極刑は銃殺に処すのが通例だった。記録を発見した研究者は「死因が記入されていない人のカードでも、『極刑』と大きく書かれており、銃殺された可能性が高い」とみている。

 刑は極東ハバロフスクやシベリアのチタで執行され、20歳未満の人もいた。同じ日に3人が処刑されたケースもある。判決期日は記載されておらず、略式裁判で即決された可能性もある。

 ソ連で銃殺された抑留者について、総務省所管の平和祈念事業特別基金が発行した「戦後強制抑留史」(2005年)は、23人の氏名を掲載するにとどまっている。うち12人は産経新聞が00年7月に報じた。

 今回明らかになった9人はこれとは別だが、処刑により死亡した抑留者の総数は不明だ。厚労省は抑留者の情報に関しては「プライバシー保護の観点から、本人か遺族からの調査依頼に限って応じる」としている。このため、抑留者がどのように死を迎えたかも第三者に公表していない。

 スターリンのソ連は45年8月、日ソ中立条約を破って対日参戦した。満州などから日本軍の兵士や軍属、一般人の約57万5千人を連行し、2〜11年間にわたって鉄道建設や森林伐採などの重労働を強制し、寒さや飢えなどで約5万5千人が死亡した。

【シベリア抑留9人処刑】「対日戦勝」正当化進める露 実態隠し

2010.08.30 01:44 MSN産経新聞

 【モスクワ=佐藤貴生】戦後最大の悲劇ともいわれるシベリアなどへの日本人抑留問題は、北方領土の不法占拠と同様、終戦直前に中立条約を破り対日参戦したスターリンのソ連が引き起こした。人道に対する罪といっても過言ではない。にもかかわらず、後継国家ロシアは今年、日本が降伏文書に署名した9月2日を事実上の“対日戦勝記念日”に制定し、日本人抑留の実態などを覆い隠したまま、参戦を正当化する戦略を推し進めている。

 ロシアは1991年に締結の日ソ政府間協定を継承し、抑留中に死亡した日本人の名簿を段階的に日本側に提供してきた。昨年には、70万枚もの抑留者の経歴を記した「個人カード」の情報の引き渡しも始まった。だが、戦後40年以上が経過した後の情報提供開始は、遅きに失したというほかない。宅地造成や墓地の移動、ロシア人との合葬などで遺骨の発見、特定はますます困難を極めている。

 さらに、ロシア側の不誠実な対応も目につく。91年の協定には、「日本人死亡者の埋葬地が適切な状態に保たれるよう努めること」と明記されている。だが、昨年ロシアの抑留者墓地を訪れた元抑留者は「墓の荒廃がひどい」と証言する。ロシア政府は抑留者墓地の整備費を、ほとんど予算に計上していないという。

 抑留者本人はもちろん、その子供の世代も高齢化が進み、一刻も早い実態解明が待たれている。チチハル(現中国黒竜江省)の特務機関長で、ソ連に抑留された田中義久さんの長女、内田和子さん(75)=名古屋在住=は「墓地はもちろん、どこに収容されていたかもいまだに分からない。ソ連は許せない」と話す。

 一方で、スターリンのソ連が2万人以上のポーランド人を連行、銃殺した「カチンの森事件」(40年)では今年、歴史的な和解が実現した。ロシアとポーランドの首相が初めて現場で顔を合わせ、70周年の追悼式典に参加した。

 ポーランドは欧州屈指の対露批判派として知られ、ことあるごとにロシアの高圧的な対外政策を批判してきた。同事件をめぐる対露不信もその一因だ。

 領土問題が横たわる日露関係と同列には論じられない。が、真の相互信頼関係を築こうと考えるのなら、日本政府もポーランドのように「言うべきことは毅然(きぜん)と言い続ける姿勢」を堅持すべきだろう。

露ビザで北方領土入り「軽率だった」 旅行会社社長が反省

2010.08.28 11:11 MSN産経新聞

 日本人9人がロシアの査証(ビザ)を取得して北方領土入りした問題で、ツアーを企画した福岡市の旅行会社社長が28日朝、帰国途上の経由地ロシア極東サハリン州ユジノサハリンスクで共同通信の取材に応じ「非常に軽率だった。お客さんにも迷惑をかけて、深く反省している」と語った。

 日本人がロシアのビザで北方領土を訪れないよう自粛を求めた1989年の閣議了解について、社長自身は認識していたがツアー客は知らなかったといい、社長は「すべて旅行を企画したわたしの責任。もう二度とこういうことはしない」と話した。ツアー客は記者の問いかけに無言を貫いた。

 ツアー客8人と旅行会社社長の一行は23〜27日まで国後、択捉両島を巡った。28日、サハリンから日本に帰国する。(共同)

【グローバルインタビュー】「対日戦勝記念日」への弁明 露の親日派議員に聞く

2010.08.22 07:00 MSN産経新聞

露下院のボリス・レズニク下院議員

 ロシアで日本が第二次大戦の降伏文書に署名した9月2日を事実上の「対日戦勝記念日」に制定する法改正が成立したことについて、下院の対日議連会長を務める与党・統一ロシアのボリス・レズニク議員(70)に聞いた。レズニク氏は新記念日の正式名称が「第二次大戦終結の日」で「日本を特定したものではない」と強調したものの、その発言からは新記念日制定の根底にある歴史認識で日露間の溝が大きいことも改めて浮き彫りになった。(モスクワ 遠藤良介)

 −新記念日に対する考え方は

 「この日付は単に第二次大戦が終結した日とされている。われわれは、ただでさえ露日間に難しい問題(北方領土問題)があるのに、関係を複雑にしたくはない。(当初、極東から提案されていた)『軍国主義日本に対する勝利』などではなく、われわれには第二次大戦の終結ということが重要だ。実際、戦争はたいへん過酷なものだった。それが勝利に終わったことはわが国にとっても世界にとっても重要な事実だ」

 「さまざまな議論の中では、なぜ日本を特定するのかというのがあった。われわれはドイツにもルーマニアにも、イタリアにも勝った。われわれだけでなく、国際社会が(勝ったの)だ。だから、『日本に対する戦勝』と名付けるのは正しくない」

 −この法が成立した経緯は。90年代半ばからの話だと思うが

 「発祥は極東、まずはサハリン(樺太)だ。極東では第二次大戦に参加した人がたいへん多い。西部の前線で戦争が終わった後、大きな戦力が極東に転戦させられたからだ。彼らが退役軍人などの団体でイニシアチブをとった。彼らにとって、戦争は(対ドイツ戦争の終わった)5月9日ではない。戦争は9月に終わった。そうしたイニシアチブを地方議会が支持し、長らくロシア議会でも検討されて最終的に法的な形式となった」

 −下院の雰囲気はどのようなものだったか。第1読会だけで即決されたが

 「誰かが反対するような法案ではなかった。すべての議員と会派に、これが記念日であるとの理解があった。実際に戦争が終わり、第二次大戦ではわが国に多大な人的犠牲があった。ソ連、ロシアだけでなく、全世界にとっての悲劇だった。世界的に9月2日を終戦の日として祝っているはずだ。日本でもそうではないかと思う」

 −日本では8月15日が終戦の日だ

 「日本が自らナチス・ドイツとの枢軸国として行動したのだ。われわれは戦争の終結がすべての国にとって悲劇の終わりだという立場だ」

 −なぜ今年になって、この法が成立したのか

 「さまざまな提案があった。『軍国主義日本に対する戦勝』を祝うなど。われわれ健全に思考する政治家はその提案を支持しなかった。露日間に横たわる困難な問題を解決するのに1年また1年と時が過ぎているのだから。私は対日議連を率いており、長らくいわゆる北方領土問題について議論してきた。(日本側との)面会でこの問題が取り上げられないことはない。これ以上頭痛の種は必要ない。今回の記念日は退役軍人を含めて皆を満足させ、まとめるものであり、どこからも反対はなかった」

 −新記念日にかかわる元軍人はどのくらいいるのか

 「極東戦線に参加した元軍人に関する集計は取られていないので分からない。基本は大祖国戦争(対独戦争)の参加者であり、その人たちは高齢化して、最も若い人たちでも83歳とか84歳になっている。毎年、多数が亡くなっている」

 −たしかに「軍国主義日本に対する戦勝」といった名称でこそなくなったが、日本との戦争が念頭に置かれている。それ以外に、ロシアは2月の軍事ドクトリン改定で「ロシアへの領土要求」を主要な軍事的脅威に掲げ、最近は極東での軍事演習で択捉島の演習場を使用した。日露関係を悪化させる要素をいくつも挙げることができる

 「第1に、演習については、いかなる国も自らを守らなくてはならず、軍は訓練を行わなくてはならない。大規模な演習は世界的に普通のことであり、(他国に対する)いかなる脅威でもない。今日、択捉島には小規模な部隊しか残っておらず、長らくクリル諸島(日本の北方四島と千島列島)に師団はない」

 「第2に、歴史の不愉快なページのみを取り出すべきではない。われわれには1905年に(日露戦争で)日本がロシアの艦隊を沈めたことが面白くないし、互いに不愉快な歴史のページというのはある」

 −軍事ドクトリンの「領土要求」については

 「全世界でそういうことになっている。もし自国への領土要求があるのなら、それがファンタジーだとしても、軍人は潜在的に紛争となりえるすべての原因を検討しなくてはならない。紛争の原因となる問題は取り除かねばならない」

 −ロシアにとっての領土問題は事実上、日本だけとなっている

 「たいへん難しい問題で、すぐに解決できるものではない。しかし、われわれは自らの提案をしており、立場を近づけねばならない。経済、文化、政治の各分野で協力を深め、信頼関係を強固にしないといけない」

 −日本側には、ロシアが日本との関係を正常化する必要がないと考えているのではないかとの懸念がある。つまり、領土問題を放っておいても日本のビジネスはやってくると

 「われわれは日本との経済関係に満足していない。われわれが関心をもつ高度技術やイノベーション(革新)技術は共有されておらず、日本側は接触にこない。だが、これは(日本にとって)先見の明のある政策とはいえない」

 「たいへん率直に言えば、今日の日本はこうしたテクノロジーをもっている唯一の国ではない。韓国も中国もたいへんな進歩を遂げており、ロシアはこれらの国とたいへん集中的で深い経済的協力をしている。日本はやや高慢に、ロシアなしでもやっていけると考えている。日本の多くの政治家と会ってきたが、ロシアに対する先見の明はあまり見えてこない」

 −経済関係について言えば、領土問題の存在以外にも、ロシアでのビジネスがやりにくいとの問題があるのではないか

 「この点では、まずロシアが悪い。1980年代末から90年代初頭にかけて、日本のビジネスは信頼をもってロシアに来たのに、その多くがだまされた。多くの人がビジネスを奪われ、巨額の資金を失ったために警戒心が残っている。だが、今のロシアはビジネスの構造や性格も含めて変わり、ロシアは国としてビジネスを守ることを保証している。それでも、再び信頼を勝ち得るのは容易なことではない」

 −記念日の問題に戻ろう。多くの日本人はソ連と戦争をしたとは考えていない

 「東京とベルリンはファシストの側だった」

 −日本は日ソ中立条約を守った

 「しかし、日本はナチス・ドイツと外交合意を結んでいた。(ソ連が)戦闘行動に入らなかったことについては色々な説明があるが、やがてこちら(西部)での戦争が終結し、あちら(極東)のことに注意を払わないわけにはいかなくなった。(日本人は)ソ連やロシアに立腹するのではなく、ナチス・ドイツと接触した自国の指導部に立腹すべきだ」

 −ソ連が開戦したのは1945年8月9日だ

 「すでに事実上、戦争状態にあったのだ。日本がベルリン、東京、ローマの同盟に入っていたのは事実であり、それからは逃げられない」

 −それによって日ソ中立条約を破ったことは正当化されない

 「当時の指導部は日本がヒトラー連合の一員として責任を負わねばならないと考えた。米軍が原爆を落としたことだって、いつになっても正当化されない。これは不適切な反応であり、復讐(ふくしゅう)だった。歴史にはさまざまな誤りも悲劇もあったが、誤りを繰り返さないために超然と歴史を見なくてはならない」

 −下院で新記念日の法案が可決された際、一部議員は「ソ連が朝鮮、満州、サハリン、クリル諸島を解放し、第二次大戦終結を早めた」と趣旨を説明した。賛成か

 「賛成だ」

 −日本が連合国に降伏を通告した8月14日、ソ連は満州の重要都市を全くコントロールしていなかった。ソ連が北方四島に上陸したのは8月の末だ

 「歴史を深追いするのに意味はない。15年ほど前にソウルでひどいものを見た。たいへんな数の老女たちが抗議行動をしている。日本兵らに乱暴された人々だという。中国も日本に対してはそれなりの請求がある」

 −日本は戦後、韓国や中国に対して謝罪し、公式的に戦後処理の問題は終結している。しかし、ソ連が中国や朝鮮を解放したとみなすことができるのか

 「深入りはしない。さまざまな解釈がある。ロシアにはこんな詩がある。『歴史は続く。毎日が非凡だ。歴史家にとって興味深い歴史ほど、現代人にとっては悲しいことだ』と。当時の人々にはさまざまな考えがあるのであり、当時の朝鮮の人にもそれなりのものがある」

 −付け加えるなら、記念日は9月2日だが、ソ連軍が(北方四島の)最後の島を占拠し終えたのは9月5日だ。矛盾ではないか

 「コメントしない」

■ボリス・レズニク氏■

 1940年2月生まれ。極東ハバロフスクの共産党高等学校卒。イズベスチヤ紙の記者を経て、2000年から下院議員。与党・統一ロシア党員。下院情報・情報技術委員会の副委員長や対日議連会長を務める。

【写真劇場】ソ連の日本侵攻65年 密約の地ヤルタ 南の海で生まれた北方領土問題

2010.08.10 11:59 MSN産経新聞

【写真劇場】ヤルタ会談が行われたリバディア宮殿から近い絶壁の上に建てられたかつての貴族の別荘「ツバメの巣」。現在はイタリア料理の高級レストラン。ヤルタ随一の観光名所となっている=7月2日、ウクライナ・ヤルタ(内藤泰朗撮影) ■シーン1

 ソ連軍が終戦直前の1945(昭和20)年8月9日、日ソ中立条約を破り、日本に侵攻して65年がたった。ロシアは、そのとき奪った日本固有の領土、北方四島を不法に占拠したままだ。北方領土問題は45年2月、黒海の保養地ヤルタで、ソ連の独裁者スターリンが米英両国の首脳と会談し、対日参戦を密約したことで運命づけられた。日本にとって数々の悲劇を生むきっかけとなった米英ソ3カ国の密約の地、ウクライナ・ヤルタを7月初旬に訪ねた。

 ■不条理の始まり

「黒海の真珠」−。

 ロシア人たちがそう呼ぶクリミア半島の中でも、風光明媚(ふうこうめいび)な保養地として帝政時代から知られてきたヤルタ。その最も美しい「黒海の真珠」までの日本からの道のりは実に長かった。

 東京からモスクワまでは空路約10時間半。さらにクリミア半島の中心都市シンフェロポリへは飛行機で2時間余りだが、接続が悪く翌日まで待つ。空港からバスで揺られて3時間。うっそうとした森が続く山を越え、南国の陽光に青く輝く海が眼下に見えたときは、正直ホッとした。丸1日以上の旅の末、到達したヤルタは、南海の真珠のように輝いてみえた。

 そのヤルタに65年前の2月、日本の敵国であった米国のF・ルーズベルト大統領と、英国のチャーチル首相がスターリンと第二次大戦終結に向けた協議のために集まった。このとき、ソ連の対日参戦と千島列島占拠を認めた密約が結ばれた。南国の海辺の保養地で、北方領土問題のタネは植え付けられたのだ。

 ソ連はその後、ヤルタ密約を根拠に日本に侵攻し、そのちょうど1週間後に世界に終戦を宣言した日本に対して一方的な侵略を続けた。かつて一度たりともロシア領となったことがない択捉(えとろふ)、国後(くなしり)、色丹(しこたん)、歯舞(はぼまい)群島の北方四島までも占拠し、併合した。

 さらにソ連は、満州(中国東北部)や樺太(現サハリン)などにいた日本人を連行しシベリアでの強制労働に従事させた。不条理の始まりだった。

 ■シーン2 正当化された侵略の歴史 会談の「真実」?

 ヤルタ会談が行われたリバディア宮殿に行った。宮殿は、革命政権に銃殺されたロシア最後の皇帝ニコライ2世が建設した別荘で、その後、ソ連に接収された。皇帝から奪った宮殿で、日本の領土略奪談義が行われたのも歴史の皮肉といえる。

 それでも、宮殿の女性ガイドさんは、誇らしげにこう説明した。「ヤルタ会談は第二次大戦後の国際秩序をつくり、大戦後、半世紀以上にわたり世界平和の礎となりました。その事実は世界が認めるところです」

 それではと、少しイジワルな質問をぶつけた。終戦60年の2005年、ブッシュ米大統領(当時)が欧州歴訪中に、ヤルタ密約がもたらした欧州の分断と圧政をさして「密約は歴史上最大の誤りの一つだ」と述べたことについて尋ねた。

 だが、「そんな政治的な発言は、会談の真実でも、歴史でもありません」とバッサリ。

 でも、「戦後の平和は米ソ両国の冷戦という『冷たい平和』でしたよね」と切り返すと、今度は「ルーズベルト大統領が長生きしていたら、米ソ両国は同盟国になっていた。それくらい両者の仲はよかった」と驚くような解説をした。価値観が異なる両国の同盟などあり得ない話だが、ガイドさんは終始、会談の重要さを強調した。日本侵略への批判は最後まで一言も聞けなかった。

 ソ連の侵略を正当化する歴史の歪曲(わいきょく)は、ソ連が崩壊しウクライナになっても続いていた。

 そこには、ウクライナの特殊事情がある。ソ連崩壊後に独立したウクライナは、欧州への統合を目指すが、クリミア半島は18世紀にロシア帝国に併合されて以来、ロシアへの帰属意識が強い土地柄なのだ。人口もウクライナ人が20%に対し、ロシア人が65%と逆転しており、言葉もロシア語、歴史観もロシアが中心だ。観光客もほとんどがロシア人だ。彼らは、クリミア半島が「法的にはウクライナ領だが、われわれが実効支配している」と公言する。

 ヤルタ密約の負の遺産を取り除く努力が、終戦65年のいまもまだ必要とされている。(文・写真:内藤泰朗/SANKEI EXPRESS)

       ◇

 ■ヤルタ会談 1945年2月4〜11日、クリミア半島のヤルタで、米国のF・ルーズベルト、英国のチャーチル、ソ連のスターリンの3首脳が会談し、ソ連の対日参戦のほか、戦後のドイツ、中・東欧における勢力範囲を決め、戦後世界秩序の基礎になった。東西冷戦の始まりとされる。

露に遺憾の意を伝達 「戦勝記念日」で外務省

2010.07.27 18:29 MSN産経新聞

 岡田克也外相は27日午後の記者会見で、日本が1945年に第2次大戦の降伏文書に調印した9月2日を事実上の「対日戦勝記念日」とする改正法を成立させたロシアに対して「現在の日ロ関係にとってふさわしいとは思えない」と遺憾の意を伝えたことを明らかにした。

 27日昼、日本外務省の欧州局参事官が在日ロシア大使館の臨時代理大使に電話し「北方領土の元島民らの感情を考えると法改正は残念だ」と強調。「今後の日ロ関係に否定的な影響を及ぼさないよう適切に対応してほしい」と求めた。

日本の批判封じる戦術 「対日戦勝記念日」法が成立

2010.07.26 00:20 MSN産経新聞

 【モスクワ=遠藤良介】ロシアのメドベージェフ大統領は25日までに、日本が第二次大戦の降伏文書に調印した9月2日を事実上の対日戦勝記念日に定める法改正案に署名し、同法は成立した。新記念日の正式名称は「第二次大戦終結の日」。消息筋によると、大統領府は議員らの法案提出に先だって記念日名から「対日戦勝」を外すよう政界を指導し、日本の反発を封じる戦術をとった。日本外務省も表だった批判を抑えている。

 法改正は「軍の名誉と記念日法」を修正し、9月2日を新たな記念日に加えた。従来の対ドイツ戦勝記念日(5月9日)に加えて対日戦勝記念日を設けるもので、旧ソ連による日ソ中立条約を破っての対日参戦や北方領土の占拠を正当化する狙いがある。有力議員らが今月2日に提出し、下院が7日、上院が14日にスピード可決した。

 消息筋は、この法改正が昨年から政界指導部で協議され、大統領府の意向が強く反映されていることを明らかにした。一部観測筋には、日本で昨年、北方領土を「わが国固有の領土」と明記した改正北方領土特措法が成立したことへの報復だとする見方も出ている。

 対日戦勝記念日の制定は、北方領土を事実上管轄するサハリン(樺太)州の議員らが1990年代から陳情。98年には上下両院で法案が可決されたものの、当時のエリツィン大統領が拒否権を発動して廃案にした経緯がある。

 日本外交筋は今回の法改正について、「日本の立場を理解してもらうため、あらゆる方面に働きかけた」とし、「新記念日は日本を標的としたものではない」との認識を示している。

 他方、露有力議員らは法改正の趣旨を「旧ソ連軍が中国東北部と北朝鮮、南サハリン(樺太)とクリール諸島(日本の北方四島と千島列島)を解放し、第二次大戦の終結を早めた」などと説明。新記念日の制定を機に、ロシアでこうした歪(わい)曲(きょく)された歴史認識が流布され、領土交渉にも悪影響を与えるのは必至だ。

 「国の西部では対独戦勝65年を盛大に祝ったのに、東部で何もないのはおかしい」。露政界筋は対日戦勝記念日が制定された理由をこう説明し、ロシアが「戦勝国」の地位を極東でも誇示していく方針を確認した。戦後65年の節目をとらえ、9月2日には極東部で大々的な「対日戦勝」行事が行われる可能性がある。

「対日戦勝記念日」制定 露大統領が法改正案署名 北方領土返還要求けん制

2010.07.25 18:21 MSN産経新聞

 クレムリン(ロシア大統領府)は25日、メドベージェフ大統領が同日までに、日本が第二次大戦の降伏文書に調印した9月2日を新たな記念日とする法改正案に署名したことを発表した。事実上の「対日戦勝記念日」を制定することで、旧ソ連による日ソ中立条約を侵犯しての対日参戦や北方領土の占拠を正当化する狙いがある。

 法案は「軍の名誉と記念日法」を修正し、9月2日を「第二次大戦終結の日」とする内容。有力下院議員らが今月2日に下院に提出し、7日に下院、14日に上院で可決されてスピード成立した。法案提出にあたっては、クレムリンが記念日名から「対日戦勝」の名称を外すよう指導し、日本からの批判を封じる戦術がとられた。(モスクワ 遠藤良介)

ロシアが“対日戦勝記念日”制定 北方領土占拠を正当化へ

2010.07.08 09:20 MSN産経新聞

 【モスクワ=遠藤良介】ロシア下院(定数450)で7日、日本が第二次大戦の降伏文書に署名した9月2日を新たな記念日に制定する法案が賛成350で可決された。すでに政府の支持は得られており、近く大統領の署名を経て発効するとみられる。従来の対独戦勝記念日(5月9日)に加えて“対日戦勝記念日”を設け、旧ソ連による対日参戦や北方領土の占拠を正当化するのが狙いだ。

 法案は「軍の名誉と記念日法」を修正し、9月2日を「第二次大戦終結の日」とする内容。下院のザワルジン防衛委員長らが2日に提出し、スピード採決された。国営イタル・タス通信によると、同委員長は新記念日について「祖国と連合国の責務に身をささげた同胞に関する記憶の印だ」と説明している。

 国営ロシア通信は与党・統一ロシアの有力議員、サブリン氏の話として、「ソ連軍は極東で日本の関東軍を粉砕、中国東北部と北朝鮮、南サハリン(樺太)とクリール諸島(日本の北方四島と千島列島)を解放し、第二次大戦の終結を早めた」などと伝えた。

 旧ソ連は日ソ中立条約を破って1945年8月9日に対日参戦。日本がポツダム宣言の受諾を通告した同月14日以降も攻撃を続け、8月28日〜9月5日に北方四島を占拠した。

露軍、択捉島で大規模演習 日本の要求無視

2010/07/06 中国新聞ニュ−ス

 【ウラジオストク共同】ロシア国防省は6日までに、北方四島・択捉島で軍事演習を実施したと発表した。ロシア極東軍管区の広報担当者によると、演習は3日と4日に行われた。岡田克也外相は2日の記者会見で、北方四島は日本固有の領土との立場から軍事演習を行わないよう求めていたが、ロシアはこれを無視した形となった。

 広報担当者は共同通信に「北方四島ではソ連崩壊後で最大規模の軍事演習」と説明した。第2次大戦終結65年の節目にロシアが北方四島への主権をあらためて誇示した格好で、日本側の強い反発が予想される。

 4日付の国防省の発表によると、ロシア軍は択捉島のオクチャブリスキー演習場で兵士約1500人のほか、計200の軍用、特殊車両などを投入し、非合法勢力の包囲と壊滅に関する演習を行った。6月下旬から今月8日までロシア極東、シベリアの両地域で行われている大規模軍事演習「ボストーク2010」の一環という。

 岡田外相の発言に対し、ロシア外交筋は同国営メディアに「ロシアはどこであれ、ふさわしいと思う場所で軍事演習をする権利がある」と反発していた。

 「ボストーク2010」は演習期間中、約2万人の兵士や約40隻の艦艇、70機以上の航空機を投入。ロシア軍のマカロフ参謀総長は「極東の安全保障と国益の保護」が目的と述べ、「具体的な敵国を想定したものではない」と主張した。

英、ソ連の支配に肯定的 北方領土問題で80年機密文書

2010/07/05 中国新聞ニュ−ス

 【ロンドン共同=小熊宏尚】英外務省極東部が1979年末、北方領土問題で英国は「日本に同情」しつつも、北方四島に対するソ連(当時)の実効支配は「国際的諸合意で認められているとの考えに傾いている」と、ソ連側に肯定的な見解を示す機密文書を作成していたことが5日、分かった。共同通信が英公文書館で情報公開法に基づき文書を入手した。

 文書はサッチャー政権初期、80年1月3日の同部日本課のスタンプが入っている。英国が50年代、日本の4島返還要求を支持しなかったことは明らかになっていたが、その後は88年に日本支持を表明するまで見解を示さない政策を継続。ソ連寄りの見解を80年代に入ってまで維持したことは知られていなかった。

 ソ連支配を追認することで極東地域の不安定化を回避し、欧州を含めた世界全体の安定を優先させたい意向があったとみられる。

 英国は国連安全保障理事会の常任理事国で、四島を含む千島列島の主権放棄を明記した51年のサンフランシスコ講和条約の共同起草国。北方領土問題に関係が深い有力国の見解は、ソ連の強硬姿勢に影響を与えた可能性もある。

 79年12月20日付文書「日ソの北方領土問題」は外部からの質問への回答として作成。「(英国は)時折、日本に同情を示すかもしれないが、ソ連のこれら全地域(北方四島)の支配は、われわれが参加した国際的諸合意で認められているとの見解に傾いている」と記述。この見解は「択捉と国後については歯舞、色丹より一層明確」とした。

 「国際的諸合意」とは講和条約や、英米がソ連の対日参戦の見返りに千島列島の引き渡しを認めた45年のヤルタ協定などとみられる。

 ただ、同文書に添付された72年作成の別の機密文書では、英国が一方の主張を認めても効果はない上「この問題に介入しても(外交的)リスクが大きく、得るものは少ない」ため「日ソどちらの主張も是認できない」と強調。最も賢明な政策は「山上に座り、虎たち(日ソ)の戦いを見守ること」とした。

 英国が88年に日本支持を表明したのは、日本側の強い働き掛けに加え「冷戦終結が近づき、ソ連にかみつかれる可能性を気にする必要が薄れた」(専門家)ことなどが理由とみられている。

冷徹な英国の外交判断 欧州安定視野に追認

2010/07/05 中国新聞ニュ−ス

 【ロンドン共同=小熊宏尚】英国が北方領土問題で日本の主張に距離を置いたのは、1945年に始まったソ連の実効支配を追認、固定化した方が、結果的に欧州の安定にもつながるとの冷徹な外交判断があったとの見方が出ている。

 日本の千島列島の主権放棄を定めた51年のサンフランシスコ講和条約を米国と共同起草した英国は、第2次大戦終了直後から、北方四島の法的地位を分析してきた。

 英外務省が72年、過去の経緯をまとめた極秘文書「日ソ“北方領土”問題背景情報」によると、英国はソ連が北方四島を一定期間、実効支配したことを理由に国際法上「ソ連は恐らく主権を獲得した」と判断。条約起草時には、書き方によっては日本の領土返還要求の根拠となり得るため、日本が放棄する千島列島の範囲の記載に反対した。

 英米の外交文書などを基に北方領土問題を分析した早稲田大大学院の田中孝彦たなか・たかひこ教授は自著で、英国には当時、この問題が日本に軍を駐留させる米国とソ連の「武力紛争に発展すれば、余波はヨーロッパに波及するであろうとの懸念が存在」したと指摘。ソ連支配の追認で、極東と世界を安定させる狙いがあったとみる。

 一方、異なる見方もある。丹波実たんば・みのる・元ロシア大使は、在京英代表部が本国へ51年に送った「日本が放棄する千島列島の範囲をあいまいにしておけば、この範囲をめぐって日本とソ連は永遠に争うことになり、西側連合国に利益となるであろう」との趣旨の極秘電報を著書で紹介。「英国外交は恐ろしい」と感想を述べている。

北方領土:ビザなし渡航第3陣が帰港 現地でファッションショーも

2010年07月05日 毎日新聞

プロ顔負けのポーズで観客を魅了するロシア人女性=択捉島で3日

 北方領土へのビザなし渡航の日本側第3陣64人(団長・武山信一・連合連帯活動局長)が5日、国後、択捉両島での4泊5日の交流を終えてチャーター船で根室港に帰港した。両島では、島に暮らすロシア女性をモデルにファッションショーを開催。特に択捉島では島始まって以来のファッションショーとあって、見物に訪れた100人以上のロシア人の心を魅了した。

 同島の芸術学校で行われたショーには、14〜49歳の女性19人が出演。元島民2世でファッションデザイナーの加藤徹さん(60)=東京都世田谷区=が手掛けたカラフルな衣装をまとい、プロ顔負けの視線やステップを踏んだ。会場からは「ブラボー」の声も飛び、興奮はピークに。

 ガリーナ・ダリニチュークさん(44)は「人生で初めての経験。『年なので出られない』と断ったが、衣装を見て決めた。出てよかった」と喜んでいた。

 一方、医療専門家交流グループ(団長・志谷真啓医師)の5人は両島の医療水準の視察や、日本が人道支援で受け入れた患者の現状の聞き取り調査などをした。 【本間浩昭】

“対日戦勝記念日”法案を提出/露下院/参戦正当化に向け審議

2010.07.02 MSN産経新聞

 【モスクワ=遠藤良介】ロシア下院で2日、日本が第二次大戦の降伏文書に署名した9月2日を新たな記念日に制定するよう求める法案が提出された。従来の対独戦勝記念日(5月9日)に加えて“対日戦勝記念日”を設けようとするもので、旧ソ連による日ソ中立条約を侵犯しての対日参戦や北方領土の占拠を正当化する動きだ。

 国営ロシア通信などによると、法案は「軍の名誉と記念日法」を修正し、9月2日を「第二次大戦終戦の日」に定める内容。筆頭提出者のザワルジン下院防衛委員長は「連合国の名における日本の降伏文書で第二次大戦は終結し、旧ソ連が連合国の責務に従って対日参戦したことの正当性が確認された」と趣旨を説明している。

 ラブロフ外相は同日、極東ハバロフスクでの政府会合で「9月2日には太平洋での終戦65周年が祝われるだろう」などと述べ、この法案が成立しうるとの見通しを示した。

 “対日戦勝記念日”は長年、日本の北方領土を事実上管轄するサハリン(樺太)州の議員らが陳情。「軍国主義日本に対する戦勝」といった名称をあえて冠さずに有力議員による法案提出に至った形だ。ただ、下院の今会期は9日までで、9月2日以前の法案成立には不透明な部分も多い。

 北方領土はロシアにとって事実上、唯一の領土問題となっており、「戦勝65周年」を節目に日本を牽制(けんせい)する動きが活発化している。

露、極東で大規模演習 北方領土めぐり日本牽制

2010.07.01 MSN産経新聞

 【モスクワ=遠藤良介】ロシア軍が今月8日までの日程で、極東とシベリアを舞台とした今年最大規模の軍事演習を行っている。遠隔地での部隊展開など機動力を増強するのが最大の狙いで、ロシアが進めてきた軍改革の成果を検証する意味合いもある。ロシアにとって事実上、唯一の領土問題として残る北方領土をにらみ、日本を“仮想敵国”とみなす姿勢も鮮明だ。

 この演習は6月29日から始まった「ボストーク(東)2010」。陸海空軍などから最大約2万人の兵員と地上兵器2万5000点、航空機70機、船舶30隻が投入されている。国営イタル・タス通信によると、マカロフ参謀総長は演習の狙いについて、「極東の国境での安全を保障し、仮想敵から国家利益を守ること」などと説明している。

 演習は遠隔地での戦闘を想定し、海や空からの戦力展開や部隊の長距離移動、全軍による兵站の確保を重視。ロシアの欧州部やウラル地方から輸送機で部隊だけを移送し、極東・シベリアの拠点で武器を供給する戦闘方法も訓練される。

 国防省機関紙「赤星」がこれまでに報じたところでは、演習では日本の北方領土・択捉島にあるオクチャブリ演習場も使用。海軍と連邦保安局(FSB)傘下の国境警備隊の連携も重点課題とされている。

 ロシアは今年2月に改定した軍事ドクトリンで「ロシアと同盟国への領土要求」を主な軍事的脅威として掲げ、北方領土問題を抱える日本を強く牽制(けんせい)している。また、マカロフ参謀総長は、フランスからの購入交渉を進めているミストラル級強襲揚陸艦について、「クリール諸島(日本の北方領土と千島列島)では上陸部隊を急派する手段が必要だ」とし、極東に配備する考えを示している。

 ロシアは2008年秋以降、軍のスリム化と即応力の向上を主眼とした「第二次大戦後で初めての本格的な軍改革」に乗り出している。同年8月のグルジア紛争で軍備の立ち遅れや機動力に大きな不安が残ったことが直接の契機となった。

 改革は、12年までに兵力を113万人から100万人に圧縮し、4段階だった部隊編成を「軍管区−軍−旅団」に改変するのが柱。作戦立案から後方支援までを統合的に行える組織づくりも課題だ。軍は、地理的条件の厳しい極東・シベリアで、軍改革の進度と実効性を確かめる方針だ。

日露首脳会談/「出口論」の原則で領土交渉を

2010年07月01日 The Sekai Nippo

 カナダで開催された主要8カ国(G8)首脳会議(サミット)で菅直人首相は、ロシアのメドベージェフ大統領と就任後初めて会談した。北方領土問題については具体的な進展がなかった一方、ロシアは日露間でエネルギーなどの大規模プロジェクトを発展させていくことへの期待を表明した。菅首相は、領土問題が進展しなければ経済協力も行わないという「出口論」の原則に立ち返り、4島一括返還に向け、腰を据えて交渉を行うべきだ。

経済協力に期待を表明

 旧ソ連は1945年、日ソ中立条約を一方的に破棄し対日参戦した。北方四島はこの時に不法占拠され、現在もその状態が続いている。領土問題を放置したまま、建設的な日露関係を築くことはできない。

 菅首相は首脳会談で、「変貌著しい国際環境にあって、領土問題を含め、日露関係を前進させる条件は以前より整っている」と指摘し、「鳩山(由紀夫)前首相が力を入れたこの問題の最終的解決のため、首脳レベルで前進を図っていきたい」と呼び掛けた。

 鳩山前首相は昨年9月、11月の日露首脳会談で、メドベージェフ大統領が昨年2月に麻生太郎元首相に提案した「独創的なアプローチ」の具体的内容を提示するよう促してきた。これに対し、メドベージェフ大統領は「冷戦思考で議論しても意味はない。プラグマティック(実質的)な解決をしたい」などと述べるだけで、それ以上の何らの説明も行わなかった。

 菅首相は鳩山前首相の姿勢に触れることで、「独創的なアプローチ」についての回答を引き続き求める立場を示したことになる。

 ロシアは領土問題であいまいな発言を繰り返してきた。メドベージェフ大統領もまた「独創的なアプローチ」という言葉で日本側の期待を高めさせ、日露原子力協定や日露税関相互支援協定など重要な外交成果を得たが、領土問題については先送りを続けてきた。

 メドベージェフ大統領は菅首相の呼び掛けに対し「双方に受け入れ可能な建設的な解決策を模索していきたい」と応じた。その一方で、サハリンの液化天然ガス生産などエネルギー関連や、それ以外の分野でも日露間の大規模な経済協力の進展に期待を表明した。

 しかし、領土問題に具体的な進展がないまま経済協力ばかりを先行させれば、不法占拠を黙認するという誤ったメッセージとなりかねない。4島一括返還に対する菅首相の強い決意が問われている。

 昨年、北方四島を「わが国固有の領土」と初めて明記した改正北方領土問題等解決促進特措法が成立した。ロシアは日本を非難しているが、領土問題に対する誠意は全く見られない。こうした頑なな外交姿勢は改めるべきだ。

早急に次回日程確定を

 首脳会談では、次回の会談日程を決めることができなかった。日露両政府は早急に日程を確定することで、今回合意した「首脳レベルでの接触を通じた領土問題の前進」を図っていく必要がある。

日露首脳会談、政府間接触続け領土問題前進を

2010年06月27日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【トロント=小川聡】菅首相は26日昼(日本時間27日未明)、ロシアのメドベージェフ大統領とカナダ・ムスコカで会談し、北方領土問題について、首脳同士を含む両政府間の接触を続けて前進を図ることで一致した。

 首相は「領土問題を含め、日露関係を前進させる条件が以前より整ってきた」と指摘。大統領は「領土問題は両国関係の中で最も難しい問題だが、双方に受け入れ可能で建設的な解決策を模索したい」と応じた。

北方四島ビザなし交流:「政治色の排除を」 露側第1陣が帰島 /北海道

2010年06月16日 毎日新聞

 兵庫県を訪れていたビザなし交流ロシア側第1陣の48人は6泊7日の交流を終えて15日、根室市根室港からチャーター船で北方四島の各島に戻った。

 帰港前の会見で、サハリン州でビザなし交流を担当する政府同行者、セルゲイ・ポノマリョフさん(59)は「政治のことがもっともっと少なかったら、すべて素晴らしい」とし、独立行政法人の北方領土問題対策協会が作成したロシア語会話集の地図に「クリル(北方四島)がロシアに入っていない」と指摘。今年から領土問題がテーマの対話集会が中止となったことについて「普通の人と人との交流を否定したわけではない。対話の政治化はやめてほしい」と述べ、ビザなし交流での政治色の排除を改めて求めた。

 一方、国後島の地区議会職員、ナジェージダ・クドレフスカヤさん(45)は、阪神大震災の展示施設「人と防災未来センター」(神戸市)の訪問について、「まるでいま地震に遭っているような大スクリーンの映像で、女子生徒2人が泣きだして外に出たほど」と強い印象を語った。

 生後10カ月で北海道東方沖地震(94年)を体験している同島のアントン・ゴトフツェフさん(16)は「地震後、僕も6年ほど大陸に避難した。当時のビデオも見ているし、両親からも話を聞いていた。(展示を見て)自分の所でもまた起きるかもしれないと思った」と語った。【本間浩昭】

ふるさと切手に「北方領土」抜け落ち 絵柄ミスで販売中止

2010.06.11 MSN産経新聞

北海道のイメージ図から北方領土の一部が抜け落ちるミスが見つかり、販売を中止したふるさと切手「ふるさと心の風景 第7集」

 日本郵政グループの郵便事業会社は10日、今月1日に発売したふるさと切手「ふるさと心の風景 第7集」の販売を一時中止したと発表した。切手シートの背景に描かれた北海道のイメージ図から、択捉島など北方領土の一部が抜け落ちるミスが見つかったため。約22万シートを既に発売しているが、切手部分の絵柄に問題はなく、通常通り使用できる。1シートに80円切手10枚が印刷され、小樽市の運河など北海道各地の風景を絵柄にしている。

仏製揚陸艦は北方領土向け

2010.06.08 23:29 MSN産経新聞

 ロシア軍のマカロフ参謀総長は8日、フランスからの購入交渉が行われているミストラル級強襲揚陸艦について、日本の北方領土を含む千島列島の防御を目的に極東に配備することが不可欠との認識を示した。インタファクス通信によると、マカロフ氏は「極東地域では必要な時に上陸部隊を急派できる移動手段が必要だ」と述べた。ロシアはフランスからミストラル級4隻を購入する交渉を進めている。1隻あたりの価格は6億ユーロ(約653億3300万円)と報じられている。(モスクワ 遠藤良介)

「菅新首相は未知数、路線継承望む」…ロシア

2010年06月04日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【モスクワ=山口香子】ロシアで菅新首相の知名度は、日ソ共同宣言をまとめた鳩山一郎首相の孫、鳩山首相に比べて格段に低い。

 特に外交方針については「未知数」(タス通信)との受け止めで、「後継者が路線を継承することを望む」(3日の外務省声明)との慎重な論調が目立つ。

 露国営テレビは4日、菅氏について、2004年7月に遍路姿で四国霊場の巡礼をした際の映像を交え、舌鋒(ぜっぽう)鋭い論客だが短気で酒好きなどと紹介したが、日露関係の展望には触れなかった。

 一方、日露平和条約締結交渉の停滞は避けられないとの見方もある。有力紙コメルサントは3日、タス通信のゴロブニン東京支局長の署名記事を掲載。鳩山氏が半年から1年以内に北方領土交渉を進展させると約束したが、政権交代により「誰もこの約束に責任を持たないだろう」と指摘した。

「北方領土は正攻法で交渉を」木村・北大教授、和歌山「正論」懇話会

2010.05.25 20:34 MSN産経新聞

 和歌山「正論」懇話会の第61回講演会が25日、和歌山市内のホテルで開かれ、木村汎(ひろし)・北海道大学名誉教授が「ロシア双頭政権の対日政略−鳩山政権への提言」をテーマに講演した=写真。木村氏は、鳩山政権の北方領土問題解決に向けての姿勢について「日露関係の最優先課題とみなしているが、この難問を解決するための格別の妙案、具体的手だてを持っていない」と述べた。

 また、ロシア側が提案している「独創的なアプローチ」については「北方領土問題を両国合意による法と正義の原則を基礎に解決することを明言した東京宣言(平成5年)を軽視している」と批判した。

 さらに、ロシアのメドベージェフ大統領とプーチン首相の「双頭体制」は、経済援助を優先させたいとの思惑があると指摘。「日本側はロシア側のペースに乗せられることなく、北方領土の歴史的経緯と返還要求の正当性を主張すべきだ」と強調した。

対日戦勝記念日を法制化へ ロシア、北方領土要求けん制か

2010.03.26 20:38 MSN産経新聞

 26日付のロシア紙「独立新聞」は、「対日戦勝記念日」を定める法案が近くロシア下院に提出され、法制化される公算が大きいと報じた。日本が第2次大戦後、降伏文書に調印した9月2日を記念日とする見通しという。

 ロシアは北方領土問題で「第2次大戦の結果の見直しは許さない」としており、戦勝を強調することで日本の領土要求をけん制する狙いとみられる。

 同紙によると、大統領府に近い筋は、法案は政権上層部の承認を得ており、上下両院を通過し、大統領の署名で発効する可能性が高いと説明。休日扱いにはしない方針。(共同)

正教会トップが北方領土へ 露が支配の既成事実化図る

2010.03.20 01:23 MSN産経新聞

 タス通信は19日、ロシア正教会トップのキリル総主教が9月23〜27日に極東のサハリン島のほか、北方領土の択捉島と国後島を訪問すると報じた。ロシア正教会はクレムリンとの関係が深く、北方領土支配の既成事実化を目指す政権側の意向が働いた可能性がある。

 北方領土を事実上、管轄するサハリン州のホロシャビン知事は19日、総主教と会談した際、訪問が第2次大戦終結65周年の節目に「彩りを添える」ことになるとして歓迎した。

 正教会の当局者は、北方領土の両島ではソ連崩壊後の約20年間で、弾圧されていたロシア正教が復興したと説明。「今年は(サハリンで)日本側に日本兵の遺品を引き渡す式典も予定されている」としているが、総主教が出席するかどうかには触れていない。(共同)

北方領土で入港税要求 ロシア、主権の既成事実化狙う

2010.03.10 22:59 MSN産経新聞

 北方四島のロシア人住民と日本人の元島民の後継者らが相互に行き来する「ビザなし交流」に関する日露実施団体の代表者間協議が10日、ロシア極東サハリン州の州都ユジノサハリンスクで行われた。日本側関係者によると、ロシア側は日本船にかかる入港税を納付するよう事実上要請した。ビザなし交流をめぐり、露側が入港税問題を提起したのは初めて。「不法占拠」状態の北方領土に対する主権の既成事実化が狙いとみられる。

 この日の協議でロシア側は、ビザなし交流に関して「入港税の問題がある」と提起した。日本側は実施団体間で取り扱うテーマでないとし、今後外務省がロシア政府と協議していくことになった。

 日本側が提起を受け入れれば、北方領土に対するロシアの「主権」を事実上、容認することにつながる。前原誠司沖縄・北方対策相は昨年12月、「四島交流は両国の法的立場を害さないことを前提に行ってきた」として、入港税支払いには応じない姿勢を示している。

 ビザなし交流をめぐっては、今年度事業でもロシア側が日本側に出入国カードの提出を求めたが、日本側が拒否した経緯がある。

 代表者間協議は日露双方が翌年度の渡航計画案を提示し話し合う場で、毎年この時期に開催されている。日本からは「北方領土問題対策協会」「北方四島交流北海道推進委員会」、ロシア側からサハリン州の実施団体の代表者が参加した。

年3回の日露首脳会談を 北方領土解決へ岡田外相

2010.03.07 23:52 MSN産経新聞

 岡田克也外相は7日、北海道根室市内で開かれた北方四島の元島民との意見交換会などで、北方領土問題の早期解決に向け、日露首脳会談を年内に3回開催することを目指してロシアとの調整を進める考えを表明した。鳩山由紀夫首相とロシアのメドベージェフ大統領との会談について「昨年は2回だったが、今年1年でそれを上回れればと思う」と指摘。「国際会議の場を利用し、機会があれば必ず両首脳が会えるようにしたい」と述べた。

岡田外相が北海道訪問 政権発足半年、北方領土に打開の見通し立たず

2010.03.06 18:19 MSN産経新聞

 岡田克也外相は6日、札幌市内で講演し、ロシアとの北方領土をめぐる交渉について、「政治と経済を車の両輪として(交渉を)動かしていく」と強調した。ただ、鳩山由紀夫首相は昨年9月の政権発足にあたって、半年以内に「(領土)問題解決に道筋をつける」としたものの、具体的な進展がないままに過ぎようとしている。

 外相はロシアが日本の協力を期待する極東、東シベリアでの天然資源開発などの産業誘致を挙げ、「車は片方だけでは動かない。領土問題を中心とした政治を含めて両輪で動かしていこうと(ロシア側に)提案している」と述べた。

 講演後の記者会見では、「鳩山首相、メドベージェフ大統領、プーチン首相がいるこの時期に何とか領土交渉を前進させないといけない」と訴えた。

 昨年9月と11月に行われた2度の日露首脳会談で、メドベージェフ大統領は領土交渉に関し、型にはまらない「独創的アプローチ」に言及した。しかし、昨年末に訪露した岡田外相に対し、ラブロフ外相は国際法上根拠のない北方4島占有について「第2次世界大戦の結果、国際法で確定している」と述べ、「首脳会談で示した大統領の姿勢とは違う」とする岡田外相との間で激論になった。

 1月末には北方領土の国後島沖で、北海道の漁船2隻がロシア国境警備隊のヘリコプターから銃撃を受ける事件が発生するなど双方の対立は深まっており、局面打開の展望はみえない。

【日々是世界 国際情勢分析】ロシアで報じられた「北方領土の日」

2010.02.16 07:13 MSN産経新聞

北方領土返還要求全国大会で挨拶する鳩山由紀夫首相=2月7日午後、東京都千代田区の九段会館(矢島康弘撮影)

 2月7日に東京・九段会館で行われた、「北方領土返還要求全国大会」の模様は、ロシアでも手厚く報じられた。民主党政権になって初めて迎えた北方領土の日とあって、就任以来、問題解決に向けて強い意欲を示す鳩山由紀夫首相(63)がどんな発言をしたかが注目を集めたようだ。

 ロシア国営テレビ、ベスチはこの日、警備が強化された東京都港区のロシア大使館前からの現場中継で報道。街宣車が「北方領土を返せ」とがなり立てる映像とともに、九段会館での鳩山演説の中身を伝えた。

 ベスチはその中で、鳩山首相が「2島返還で、平和条約という結論はあり得ない」と主張しつつも、「ロシアにとって、経済的、科学的に発展している日本と仲良くなることは、大きなメリットがある」と訴えたことを紹介した。北方四島が不法占拠されているという政治家らの発言があった中で、首相演説には同様の言及がなかったことは「注目に値する」と伝えた。

 メドベージェフ露政権の高官は昨年来、日本から「不法占拠」発言が伝わる度に、抗議の姿勢を明確に表明しており、鳩山演説には日本の立場を示しながらも一定の配慮があったとのニュアンスをにじませた。

 8日付の独立新聞(電子版)は、「北方領土問題の解決が最も果たしたい一番大きな思い」との鳩山発言を見出しにして報道。祖父の鳩山一郎元首相は1956年の日ソ共同宣言調印の立役者で、鳩山家はロシアと因縁深い関係があることを改めて紹介している。

 そのうえで、民主党政権が北方領土問題で、これまでの自民党政権とは違うかどうかや、政治的緊張が経済関係の進展にどう影響するかを分析する日本研究の専門家の見解を伝えた。

 ロシア極東研究所日本研究センターのビクトル・パブリャチェンコ所長は、「四島返還」要求については、鳩山政権と前政権との間に相異点はなく、日本政府の交渉姿勢にも変化は表れていないと強調し、「貿易経済関係の前進と、領土問題の交渉において、特に新しい段階には入っていない」とコメントしている。

 ロシア外務省は、この領土返還要求全国大会の開催の後、「友好的な協力関係の発展には役立たない」との不快感を示している。

 パブリャチェンコ所長はしかし、記事の中で、日露関係は経済的な関心を基に発展していると指摘した。「日本の大企業はロシアへの関心度を増しており、現在、中小ビジネスの分野への投資準備も行っている」とし、領土問題が解決しなくても両国の結びつきは強まるという見通しを明らかにした。「日本国民は北方領土関連の催しにはあまり関心をもっていない」との現状も分析してみせた。

 一方、ニュースサイト、プラウダ・オンライン(8日付)は、「ロシアとの新しい一ページを開きたい」と意欲を示す鳩山首相が、結局は、領土交渉に譲歩しないという態度に出てきたことから、「日本政府は、過去もそうであったように、平和条約を締結したくない。こうして、ロシアとの関係発展は凍結し続けるのだ」と論じている。

 7日付のロシア大衆紙、モスコフスキー・コムソモレツ(電子版)は、同日のロシア大使館周辺の物々しい街宣活動を引き合いに出して、「1875年の樺太・千島交換条約に基づき、日本の領土として画定した」とする占守島までの千島列島全体の領土返還を求める日本共産党の主張を披露。「日本の共産党の主張は、おそらく、北方領土問題に関して、最も過激なようだ」と伝えている。

露外務省が「北方領土返還大会」に不快感

2010.02.09 19:51 MSN産経新聞

 ロシア外務省は9日、東京で鳩山由紀夫首相も出席して7日に開かれた「北方領土返還要求全国大会」に関して声明を発表、日ロ間の「友好的な協力関係の発展には役立たない」と不快感を表明した。

 声明は、日ロの領土問題では「歴史的、法的に適切な理解に基づく、双方が受け入れ可能な解決が必要だ」とあらためて強調。両国の関係強化に向けた協力を進めることが必要だと指摘した。(共同)

北方領土返還 「一番大きな思いだ」 首相ら全国大会に参加

2010.02.07 12:53 MSN産経新聞

北方領土返還要求全国大会で挨拶する前原誠司・北方担当大臣=7日午後、東京都千代田区の九段会館 (矢島康弘撮影)

 北方領土返還の実現を目指す「北方領土返還要求全国大会」が7日昼、東京都千代田区の九段会館で開かれ、元島民と関係閣僚、与野党国会議員、自治体関係者らが参加した。

 鳩山由紀夫首相はあいさつで、祖父の一郎氏(故人)が首相当時に日ソ共同宣言に調印したものの、領土問題が残った点に言及。「(ロシアの)メドベージェフ大統領との首脳会談で、まだ道のりは長いと思ったが、2島返還という結論は有り得ない」と述べた。

 さらに、「鳩山が最も果たしたい一番大きな思いが北方領土解決だ。色々なアプローチがある。この世代で問題を解決したい。道は必ず開ける。どうぞ一緒に戦いましょう」と決意を強調した。 

 政府は、北方四島が日本の領土と確認された1855年の日露和親条約(通好条約)締結日の2月7日を「北方領土の日」と定めている。今年は、旧ソ連が戦後、北方領土を不法占拠して65年に当たる。

 首相は就任時、政権発足から半年で問題解決に道筋をつけると表明したことがある。

【主張】北方領土の日 四島返還に首相の決意を

2010.02.07 02:26 MSN産経新聞

 7日は北方領土の日である。昨年9月の政権交代後初めての「北方領土返還要求全国大会」が東京の九段会館で開かれ、鳩山由紀夫首相も出席する。今年は、旧ソ連が戦後、北方領土を不法占拠して65年に当たる。首相にはぜひとも、北方四島の返還に向けた強い決意をみせてほしい。

 この日は、領土返還への要求運動を全国的に展開するため29年前に制定された。政府(内閣府)や地元北海道を含む官民の関係団体によって毎年、全国大会が開催されている。返還運動の原点ともなったこの日に、鳩山首相自らがロシアへの抗議の姿勢を表明することで、返還要求の機運を盛り上げることが重要だ。

 しかし、鳩山首相の従来の発言には不安を禁じ得ない。野党時代には「4島の一括返還では1000年たっても(北方領土は)還(かえ)らない」と、ロシアへの譲歩やむなしとも取れるような見解を周囲に語った。首相就任に際しては、政権発足から半年で北方領土の問題解決に道筋をつけるとしたが、その後、はっきりした政府方針は示されていない。

 ロシア国境警備隊は先月29日、北方領土の国後島沖で操業中の日本漁船2隻の船体に直接射撃を加えた。協定区域からの離脱への警告というが、人命が損なわれても停船命令に従わなかった方が悪いという強硬姿勢である。

 プーチン首相はじめ旧ソ連国家保安委員会(KGB)出身者らシロビキ(武闘派)が政権を主導するロシアに、領土交渉の進展を期待するのは厳しい状況にある。それは民主党政権になっても変わっていないことを認識し、対露戦略を立てなければならない。

 今年も、全国大会では、高齢化が進む北方領土の元島民や島民2世らが旧ソ連に奪われた故郷への熱い思いを語る。そして大会の実行委員会として、早期返還を政府に訴えるアピールと、ロシアに4島返還を求める特別決議を採択する方針だ。

 しかし、政府も名を連ねる実行委のアピール案は、「4島の一括返還」から「一括」の文言が落ちている。ロシアに誤ったメッセージを与えたくないとの「政治的な判断」で、ここ数年書き込まれていない。こうした弱腰こそが誤ったメッセージになっている。

 4島一括返還という日本の譲ってはならない原則こそ鳩山首相は語るべきである。


現場に「領土問題軽視」の誤ったメッセージ送る恐れ 北方領土も記述後退

2009.12.25 10:09 MSN産経新聞

日韓で領土問題になっている竹島(1998年6月17日撮影)

 高校の学習指導要領解説書に竹島が明記されなかったことは、韓国に領土問題で「後退」との印象を与えかねないことに加え、解説書にほぼ準拠して編纂(へんさん)される教科書や、教育現場に「領土問題軽視」の誤ったメッセージを送る恐れがある。

 鈴木副大臣は「高校段階での大綱化は民主党が主張してきた」と説明するが、第二次世界大戦の解説では小中学校の解説書で新たに盛り込まれた「沖縄戦」が高校でも明記されており、大綱化は「竹島」というわずか2文字の記述を見送る理由になっていない。

 また、中学解説書では北方領土について「ロシア連邦によって不法に占拠されている」として「不法に」の表現を新たに追加したが、高校では「不法に」の表現は省かれており、領土問題に関してトーンダウンした印象は否めない。

 民主党の支持団体である日教組では、傘下の北海道教職員組合が昨年11月、竹島について「韓国の主張が事実にのっとっている」、北方領土について「日本固有の領土式の観点ではなく、アイヌ民族や戦争との関係でとらえさえて考えさせる」などとした資料を各校に配布。領土問題への意識の低さは共通している。

 竹島については外務省ホームページなどで「歴史的事実に照らしても、かつ国際法上も明らかに我が国固有の領土」「韓国による占拠は不法占拠」とした政府見解が示されている。

 高崎経済大の八木秀次教授は「竹島を明記しなかったのはアジア重視の現政権の姿勢の表れと考えられ、これが文科省の最新の方針だと受け取られれば、今後編纂される教科書にも影響を与える。政府見解が変更されていないのに、その時々の政治力学で教育や教科書の内容が影響を受けることは、あってはならない」と話している。

「祖父と同じ選択を」露、2島返還で解決要求

2009年09月04日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【モスクワ=金子亨】インターファクス通信によると、ロシア外務省のネステレンコ情報報道局長は3日、モスクワ市内で記者会見し、北方領土問題について「(民主党代表の)鳩山氏が、ソ連との共同宣言に署名した祖父の鳩山一郎(元首相)のように正しい選択をするよう望む」と述べた。

 平和条約締結後、歯舞、色丹の2島を引き渡すと明記した1956年の日ソ共同宣言に基づき、2島返還での解決を図るよう新政権に求めたものといえる。

ロシア、北方領土への支援拒否 「日本が四島買収」と住民も支持

2009/08/09 北海道新聞

 【ユジノサハリンスク大能伸悟】ロシア外務省が、日本側から北方領土への人道支援の受け入れ停止を表明したことについて8日、国後、択捉両島のロシア人住民からは「(支援は)もう必要ない」との声があがった。

 「助けてくれてありがとう」。択捉島の無職マリヤ・イワノワさん(68)は、ディーゼル発電所、医療機器など、これまでの人道支援に感謝する。だが「支援は日本が四島を買収するためのもの。ロシアは貧しくはない」として、人道支援を事実上拒否したロシア政府の判断を支持した。

 択捉島の無職アレクサンドル・プラズニコフさん(56)も「人道支援は屈辱的。日本は政治目的に利用している」と厳しい。

 一方で、支援の全面的な停止を心配する声も聞かれた。国後島の会計士タチアナ・ヤキモワさん(59)は「日本で子どもを治療させたい親はたくさんいる」と話す。ロシア政府は、人命にかかわるケースでは柔軟に対処するとしているが、ヤキモワさんは「子どもの医療支援だけは続けてほしい」と強調した。

四島への支援物資拒否 ロシア外務省表明

2009/08/07 北海道新聞

 【トビリシ(グルジア)加藤雅毅】ロシア外務省は7日、北方領土への日本からの人道支援物資に関し、今後受け入れない意向を日本側に通告したと発表した。日ロ友好の象徴として続いてきた支援物資の事実上の受け取り拒否で、ビザなし渡航の四つの枠組みの中の一つである人道支援事業は、曲がり角を迎えた。

 同外務省は同日、モスクワの在ロシア日本大使館を通じ、日本側に伝えた。外務省欧州局ロシア支援室は「ロシア外務省の意向を受け、今後の人道支援のあり方を検討していきたい」としている。ロシア側が拒否を通告してきた人道支援物資の供与については、廃止も検討する見通しだ。

 日ロ関係はこのところ、北方領土を「わが国固有の領土」と明記した改正北方領土問題等解決促進特別措置法(北特法)の問題をめぐってロシア側が反発を強めるなど、ぎくしゃくした状態が続いている。

 しかし、日ロ外交筋によると、ロシア側は今回の受け入れ中止にあたり、「現在の現地の社会・経済情勢を考慮したもので、政治的な問題とは何ら関係がない」と説明したという。

 ロシア外務省の発表によると、ロシア側はこれまでの人道支援に感謝を表明。「人の健康と命が危険にさらされた場合」には、相互に支援しあうとしており、人道支援として行われている患者受け入れ事業は継続する意向とみられる。

 人道支援事業をめぐっては今年1月、支援物資を積んだ船が根室から国後島に向かったが、ロシア側が出入国カード提出を求めたため、日本側は「四島をロシア領と認めることになる」として提出を拒否、物資を渡さずに根室に引き返した。この後、四島を担当するサハリン州政府内で、支援物資不要論が浮上していた。

 1月に持ち帰った支援物資について、同支援室は「既に提供が決まっているもので、ロシア側に引き渡したい」としている。

 1990年代前半から始まった人道支援事業では当初、ディーゼル発電所や宿泊施設も設置されたが、現在は医療支援が中心。現地の住民から高い評価を得ているとされてきた。

ロ、2島返還決着を堅持か 日ソ共同宣言を基礎に交渉

2009年07月11日 中国新聞ニュース

 サミットを終え、記者会見するメドベージェフ・ロシア大統領=10日、イタリア・ラクイラ(AP=共同)

 【ラクイラ10日共同】ロシアのメドベージェフ大統領は10日、主要国(G8)首脳会議(ラクイラ・サミット)の閉幕に際して記者会見し、日本との北方領土問題について、平和条約締結後の歯舞、色丹の2島引き渡しを定めた1956年の日ソ共同宣言を「唯一の法的文書」とし、これを基礎に交渉を続けていく考えを示した。

 大統領は昨年7月の北海道洞爺湖サミットの前に共同通信などと会見した際、国後、択捉を加えた北方四島の帰属問題を解決して平和条約を締結すると明記した1993年の東京宣言を日ソ共同宣言と並ぶ領土交渉の基礎と位置付けていた。今回の発言はこれより後退し、2島返還で決着を図る従来の方針を崩していないことを示唆したと言える。

 麻生太郎首相は9日に大統領と会談したが、日本側の期待に反し、ロシア側から新たな提案がなかった。

北方領土のビザなし交流、露が継続確認

2009年07月10日 読売新聞 YOMIURI On-Line

 【ラクイラ=松浦一樹】ロシアのプリホジコ大統領補佐官(外交担当)は9日、当地での日露首脳会談後、北方領土の住民と日本の関係者が往来するビザなし交流を継続する方針を確認した。

 日本の国会が「改正北方領土問題等解決促進特別措置法」を成立させたことに反発し、ロシア上院はビザなし交流の凍結を求める声明を採択していた。

北方領土問題、前進図る 日ロ首相が会談

2009年05月12日 中国新聞ニュース

 麻生太郎首相は12日夕、ロシアのプーチン首相と官邸で会談した。日ロ間最大の懸案である北方領土問題について、メドベージェフ大統領との間で先に合意した「独創的なアプローチ」による解決を目指す方向で、プーチン氏からも前向きな取り組み方針を引き出したい考えだ。

 プーチン氏は会談冒頭、北方領土問題を念頭に「あらゆる方法で日ロ関係を発展させる用意がある。どんな難しい問題でも友人同士の間では解決できると確信する」と表明した。

 両氏は東シベリア開発、エネルギー・環境、経済分野の協力強化で一致する見通し。会談後には原子力協定などの署名式に出席する。

 麻生首相は世界的な金融・経済危機や、テロとの戦いなど国際的課題に日ロが共同対処するため関係を発展させる必要があると強調。領土問題を決着させた上で、平和友好条約を締結する決意をあらためて示す。また、7月にイタリアで開かれる主要国首脳会議(サミット)の際に、日ロ首脳会談を行う方針を確認するとみられる。

 このほか両氏は北朝鮮問題、核軍縮、地球温暖化対策をめぐっても意見交換する方向だ。

領土解決は尚早とプーチン氏 3・5島論の評価も避ける

2009年05月10日 中国新聞ニュース

 【モスクワ9日共同】11日に来日するロシアのウラジーミル・プーチン首相(56)が9日までに共同通信など日本の一部報道機関と会見し、日ロ間最大の懸案である北方領土問題について「解決のためには条件づくり、あらゆる方面での関係発展が必要だ」と述べ、解決への条件が整っていないとの認識を示した。2期8年大統領を務めた実力者のプーチン氏が昨年5月の首相就任後、日本メディアと会見したのは初めて。

 首相は、日本が返還を求める北方4島をめぐり谷内正太郎政府代表が述べたとされる「3・5島返還案」については「日本政府はまだ自らの立場をはっきり固めていない」と指摘し、ロシア首脳として初めてコメントしたが、同案に対する直接の評価は避けた。さらに経済協力などで日ロの相互信頼を確立すべきだと強調した。

 領土問題で従来のロシアの主張の枠を超えない首相の発言は、2月の麻生太郎首相とメドベージェフ大統領の首脳会談で合意したと日本政府が発表した「新たな独創的で型にはまらないアプローチ」への日本側の高い期待感に反するものだ。日本は7月のイタリアでの主要国(G8)首脳会議(サミット)の際に予定される日ロ首脳会談への戦略の練り直しを迫られそうだ。

 首相は訪日の主要課題を経済貿易関係の強化と位置付け、日ロ原子力協力協定の署名が実現するとの見通しを示した。また日本が建設を強く求めた東シベリア−太平洋石油パイプラインは予定通り建設すると述べ、日本とのエネルギー協力推進に意欲を見せた。

首相「大幅譲歩」の憶測も 北方領土で政権浮揚?

2009/02/22 中国新聞ニュース

 麻生太郎首相が北方領土問題の決着による政権浮揚を狙い、「ロシアへの大幅な譲歩を考えているのでは」(日ロ外交筋)との憶測が広がっている。次期衆院選で政権交代を狙う民主党も「内閣支持率が低迷する中、領土交渉進展で一発逆転を狙うのか」(幹部)と警戒し始めた。

 首相はメドベージェフ大統領と十八日に会談し、北方領土帰属問題の進展に向けた「型にはまらない独創的なアプローチ」で合意。記者団に「四島返還、二島返還と双方が主張して進展しなかった」と譲歩に前向きな姿勢を示した。

 自民党幹部は「首相は四島の帰属問題解決という従来の基本的立場をあきらめ、歯舞、色丹、国後の三島返還や、択捉を含めた四島の面積等分返還を考えている」と分析する。

 首相は外相当時の二〇〇六年九月、共同通信などのインタビューで「二島ではこっちが駄目、四島では向こうが駄目。間を取って三島返還というのは一つのアイデア」と発言。同年十二月には衆院外務委員会で、面積を考慮した分割案も検討する考えを示した。

 今回の首相発言に関し、外務省幹部は「従来の発想にとらわれない例えとして発言しただけ」と説明している。首相も十九日の衆院予算委員会で「四島の帰属問題が一番肝心」と沈静化を図ったが、メドベージェフ氏との四月の再会談やプーチン首相との五月の会談を模索しており、成果を得たい考えだ。

政府、領土で本格調整 日ロ首脳会談受け着手

2009/02/19  中国新聞ニュース

 【ユジノサハリンスク(ロシア極東サハリン州)18日共同=岡村康隆】政府は十八日、麻生太郎首相とメドベージェフ大統領が北方四島の帰属問題に関し「型にはまらない独創的な新たなアプローチ」での解決を目指す方針で一致したことを受け、本格的な領土交渉に向けた調整に着手する。

 ロシア側が提案した「独創的なアプローチ」は具体的な内容が明らかになっておらず、政府は交渉過程でロシア側から腹案を引き出す考えだ。

 ただ、これまでは「三島の帰属画定」「二島先行論」「面積による等分案」などが浮上するたび、国内の強い反発で挫折した経緯があり、妥協点を見いだすのは容易でない。プーチン首相の五月来日が固まったことから、それまでに具体的な交渉の道筋が付けられるかが焦点となる。

 両首脳は天然ガス開発協力について、日本の資源エネルギー庁とロシアのガスプロム社が協議していくことで合意。ロシア側の出入国カード提出要求で中止された日本の北方四島住民に対する人道支援事業に関し、速やかな再開に向け努力することでも一致した。

 首相は上海協力機構議長国のロシアが三月に開くアフガニスタンに関する国際会議に日本が参加する意向を伝えた。海洋や陸上の生態保全に関する協力を強化するため、近く日本で専門家によるシンポジウムを開くことも決まった。

対日関係発展の障害にせず 領土問題、ロ外交政策概念

2008年07月15日  中国新聞ニュース

 【モスクワ15日共同】ロシアのメドベージェフ大統領が対外政策の基本指針となる新たな「外交政策概念」を承認し、対日関係では北方領土問題を念頭に「過去から引き継がれた問題」の解決に向けて努力を継続する方針を示す一方、同問題が両国関係発展の障害になるべきではないと強調した。大統領府が15日、明らかにした。

 日本側には領土問題の対立でロシアと平和条約が締結されていないことが経済交流の阻害要因になっているとの主張がある。しかし、ロシア側は領土問題にとらわれず、経済分野などで両国関係を全面的に発展させていくべきだとの立場をあらためて明確にした形だ。

 また、外交政策概念はアジア太平洋地域で最重要国と位置付ける「戦略的パートナー」の中国、インドに次いで日本に言及。日本との「善隣関係」や「創造的パートナーシップ」を重視する姿勢を見せた。

領土解決の決意確認 プーチン氏年内来日も 日ロ首脳会談

2008年07月08日  中国新聞ニュース

 福田康夫首相は8日夕、北海道洞爺湖町のホテルで、ロシア新政権発足後初めてメドベージェフ大統領と会談し、最大懸案の北方領土問題に関し「交渉を誠実に行い、最終的解決へ前進させる決意が双方に存在」すると確認した。解決には首脳同士の政治決断が重要との認識で一致。大統領は「解決すれば、両国関係は最高水準に引き上げられる」と意欲を示した。プーチン首相(前大統領)の年内来日に向け調整することでも合意した。ただ両首脳から、領土問題の解決策に関する踏み込んだ言及はなく、交渉の停滞を打開できるかは予断を許さない。

 会談で、福田首相は「日ロ関係を高い次元に引き上げるためには、領土問題を解決し(日本)国民のわだかまりを取り除く必要がある。高度の政治問題であり、最高指導者の決断が重要だ」と強調。大統領は、これに同意し「解決すれば、現状の両国関係を抜本的に変えられる」と述べた。平和条約の未締結状態が関係進展の支障になっているとの観点から、領土問題の早期解決が必要との立場で一致した。

 ロシアが2006年に拿捕した日本漁船の船体を国営企業に譲渡した問題をめぐり、首相が返還を求めると、大統領は「領土問題が未解決であることに起因しており、早く解決されれば、本件のような事案もなくなる」と述べた。

 大統領は北朝鮮の拉致問題について「よく理解しており、(解決へ)協力していきたい」と約束した。

領土交渉の対応焦点 首相、25日からロシア訪問

2008年04月24日  中国新聞ニュース

 福田康夫首相は25日からロシアを訪問し、26日午後にモスクワでプーチン大統領や次期大統領のメドベージェフ第1副首相とそれぞれ会談する。5月の大統領交代を前に、北方領土問題の交渉加速を強く働き掛ける方針で、ロシア側の対応が焦点になる。7月の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)で主要テーマになる地球温暖化防止に向けた協力も要請する意向だ。

 首相は、プーチン大統領との会談で、東アジア・太平洋地域の安定と繁栄を目指して「両国関係を高い次元に引き上げる」との方針を確認。ロシア側の要望が強い東シベリア開発や省エネ対策などをめぐる経済・技術協力の促進に関して協議する。サミットで来日予定のメドベージェフ氏とは、温暖化対策で緊密に連携していくことで認識の一致を図る。

 北方領土問題では、平和友好条約の締結にはあくまでも4島返還が必要との日本の立場を説明。北朝鮮の核開発問題に関しても意見交換する。

北方領土に北朝鮮労働者 低賃金でロシア企業が活用

2007/09/01  中国新聞ニュース

 【モスクワ1日共同=佐々木健】ロシア政府が大規模なインフラ整備に着手した北方領土で、ロシア企業と契約した北朝鮮労働者らが建設工事に従事していることが一日分かった。離島での低コストの労働力確保が狙いとみられ、国後島の当局者によると、中国、旧ソ連諸国からも含め計三十人前後の外国人が建設現場などで働いているという。

 ロシアは千島列島(クリール諸島)で今年から北方領土での実効支配の既成事実化を狙ったとみられる「社会経済発展計画」に着手しており、外国人労働者の派遣がさらに拡大すれば、計画を底辺で支えることになる。

 日本の外務省は「外国人労働者の情報は確認していない」と話している。

 国後島の古釜布(ロシア名ユジノクリーリスク)では現在、ロシアの労働ビザ(査証)を得てユジノサハリンスクの会社に雇用された北朝鮮の労働者約十五人が、ロシア政府が発注した裁判所の建設工事に従事している。

 いずれも本国に妻子を残してきた二十八―四十歳の男性で、工事現場で質素な自炊生活を送り、国後島の当局者は「まじめな働き手として重宝されている」と説明する。

 一人当たり月二万ルーブル(約九万円)以上が支払われる契約だが、労働者が手にするのはその一部といわれる。北朝鮮の地方出身という男性は、手取り額については言及を避けながらも「仕事は気に入っている」と話している。

 北方領土で外国人労働者の導入が始まったのは今年春ごろとの情報があるが、別のロシア当局者は昨年からだと説明している。

 この当局者は「外国人労働力の活用は先進国ならどこでもやっている。ロシアのために働きたい者は誰でも受け入れる」と述べた。

水晶島に3メートルの聖人像 ロシア、「自国領」誇示

2007年07月26日 中国新聞ニュース

 【モスクワ26日共同】北海道に近接する北方領土・歯舞諸島の水晶島で、高さが約3メートルあるロシア正教の聖人の銅像が教会関係者や国境警備当局らの協力で建てられたことが26日、北方領土の消息筋の情報で分かった。

 同じような聖人像は国の守護の象徴として、ロシアの極東や南部の国境沿いに設置されてきたという。北海道根室市の納沙布岬からわずか約7キロの水晶島に聖人像を建てたロシア側には、同島を自国領と見なしていることを強く示す狙いがある。

 情報によると、聖人像が水晶島に建てられたのは24日。重さは約1トン。モスクワ郊外でロシアの彫刻家の手で制作され、極東サハリン州まではロシア当局の航空機が空輸。水晶島の国境警備隊駐屯地近くの設置予定地にはヘリコプターにつるされて運ばれた。設置の際には聖職者が祈りをささげた。

 水晶島にはこれまでもロシア正教の礼拝堂や十字架が建立されている。

北方四島 返還求めデモ行進 根室市民ら100人

2007/02/06 The Sankei Shimbun Web site

 「北方領土の日」を翌日に控えた6日、北方領土返還を求めて首都圏や北海道根室市の住民ら約100人が東京・西新宿でデモ行進した。道立北方四島交流センターによると、根室の住民が参加して東京都内で行進したのは戦後初めて。

 根室市、中標津町など1市4町で構成する「北方領土隣接地域振興対策根室管内市・町連絡協議会」(北隣協)が主催した。長谷川俊輔・根室市長は参加者を前に「戦後60年が過ぎても解決せず、元島民の半数以上が他界した」と述べた。

 行進には根室市内の女子高校生3人も制服姿で参加。そのうち1人は「祖父が元島民で、中学生の時に関心を持った。地元の人々の思いを伝えたい」と話した。作家の上坂冬子さんも「2島とか3島(返還を求める)という話が出ているが、そんなおかしな話はない。分割する理由などない」と強調した。

(2007/02/06

四島返還方針に変更なし 面積等分発言で答弁書

2006/12/24 The Sankei Shimbun Web site

 政府は24日の臨時閣議で決定した答弁書で、麻生太郎外相が北方四島を日露両国で面積により等分する案とも受け取れる発言をしたことに関し「北方四島の面積についての質問に答えたもので、北方領土問題に関する従来の政府の方針を変更するものではない」と四島返還を引き続き求める方針を示した。

 麻生氏は13日の衆院外務委員会で民主党の前原誠司氏から「北方四島の大きさをしっかり分かって議論しているのか」と質問され、「島の面積も考えず二島だ、三島だ、四島だという話になれば、勝ち負けの話になり双方の合意がなかなか得られない」と述べた。答弁書は、この質問について「外務省として質問を事前に承知していなかった」と明らかにした。

 鈴木宗男衆院議員の質問主意書に対する答弁書。

外務省、ロシア側の抗議に対し「違法操業なし」と回答

2006/08/30 The Sankei Shimbun 東京朝刊から

 外務省は30日、北方領土付近の海域で日本漁船39隻による大掛かりな領海侵犯があったとしてロシア政府が日本側に抗議していた問題に関し「日露間の『貝殻島昆布協定』に基づいており違法操業ではない」とロシア側に回答した。

 坂場三男外務報道官が同日午後の記者会見で明らかにした。

 ロシア側は29日、北方領土の歯舞諸島・貝殻島付近の海域で27日朝に多くの日本漁船が領海侵犯をしたと外交ルートを通じて日本側に抗議。外務省は、これに関し調査したところ、日本漁船37隻が協定に基づいた通常のコンブ漁を行っていたことが判明したとして、ロシア側に伝達するとともに再度の事実確認を求めた。

領土問題「空白の5年間」のツケ 対露交渉進まず

2006/08/20 The Sankei Shimbun 東京朝刊から

 北方領土・貝殻島付近で漁船「第31吉進丸」がロシア国境警備艇に銃撃され、1人が死亡した事件は、外務省の塩崎恭久副大臣がモスクワに出向いて交渉したが、拘束された船員の即時釈放すら実現せず、領土問題に対するロシアの強硬姿勢が改めて明確になった。小泉純一郎首相は、5年以上に及ぶ在任期間中、北方領土問題の解決を主要な政治課題にしなかったのは確かで、「空白の5年間」のツケは、次期政権に重くのしかかることになりそうだ。

 「ロシアの動きは不気味だ。気を抜けない」。ロシア情勢に詳しい政府高官は、昨年来、次のように警告していた。「日中関係が悪化するとロシアがそれに付け込む構図は100年前から変わっていない。しかも原油の高騰で油田を持つロシアは強気だ」

 日露関係は、冷戦崩壊直後からしばらくは、比較的良好な状態が続いた。橋本龍太郎首相とエリツィン露大統領(いずれも当時)が平成9年に交わしたクラスノヤルスク合意と、翌年の川奈会談では北方領土問題に解決の兆しも見えた。

 しかし、プーチン政権誕生で状況は一変した。プーチン大統領は領土問題で一切譲歩しない考えを堅持。日本側も外務省内の一部が「2島先行返還論」を主張するなど混乱し、交渉は停滞。小泉首相は、プーチン大統領と12回も首脳会談を行いながら、領土問題では何の成果もなかった。首相自身も16年9月に北方領土を洋上視察した以外は、目立った取り組みをしてこなかった。

 こうした中起こった漁船銃撃事件は、北方領土の恒久占領を志向するプーチン政権の姿勢を如実に示したものといえる。

 これに対し、日本側は、麻生太郎外相が事件当日の16日、ロシアのガルージン駐日臨時代理大使に「北方領土はわが国の領土であり、到底容認できない」と抗議した。しかし、21日から「人道上の見地」から択捉島の病人5人を北海道の病院に受け入れる方針を決めるなど腰の引けた対応ぶりも目立ち、「この5年間、領土問題などでどれだけの実績をあげたのか」(鈴木宗男衆院議員)との批判が高まりつつある。

【北方領土をめぐる最近の主な日露間の動き】

《平成5年10月》 エリツィン大統領訪日。細川護煕首相と北方四島の帰属問題を解決して平和条約を早期に締結するとの「東京宣言」を発表 

《9年11月》 訪露した橋本龍太郎首相とエリツィン大統領の非公式首脳会談で、東京宣言に基づき2000年までに平和条約を締結するよう全力を尽くすことで一致(クラスノヤルスク合意)

《10年4月》 訪日したエリツィン大統領との非公式首脳会談で橋本首相がウルップ島と択捉島間に国境線画定することを提案(川奈提案)

《同年11月》 小渕恵三首相との首脳会談でエリツィン大統領が北方四島での共同経済活動促進のため4島を「特別地域」とすることを提案

《15年1月》 小泉純一郎首相とプーチン大統領との首脳会談で「日露行動計画」を採択。平和条約の早期締結への決意を確認

《16年6月》 首脳会談で領土問題を解決しての平和条約締結の必要性を再確認。プーチン大統領は領土問題の討議を避けないことを表明

《同年12月》 プーチン大統領が記者会見で「日ソ共同宣言」(1956年)に基づく歯舞、色丹の2島返還による決着に言及。「4島返還要求は奇異」とも指摘

《17年11月》 プーチン大統領訪日。首脳会談で両国が共に受け入れられる解決を見いだす努力をすることで一致。共同声明の発表は見送り

《18年7月》 小泉・プーチン両首脳の12回目の会談。北方領土問題交渉の加速で一致したが、共同声明の発表は見送り  ※肩書は当時

ビザなし交流の延長要請 日本、北方領土めぐり

2006/01/20 The Sankei Shimbun

 塩崎恭久外務副大臣は19日午後の記者会見で、日本が北方領土の「ビザなし交流」の期間延長をロシア側に提案していることを明らかにした。毎回5日間程度の現状を最大1カ月程度に延長するよう求めているとみられ、今後の日露外相会談などで回答を求める方針。

 塩崎氏は「領土問題が解決されるまでは交流事業を進めることで合意を得ている。さまざまなボールを用意しながら投げている段階だ」と強調した。

 ビザなし交流は、日露の相互理解増進などを目的に1992年から始まり、北方四島の元島民、領土返還運動関係者らとロシア側の現在の島民らが四島と日本を相互訪問している。(共同)

ロシア官房長官、領土問題「必ず解決される」・安倍氏に応答

2006/01/10 NIKKEI NET

 安倍晋三官房長官は10日、来日中のロシアのナルイシキン官房長官と首相官邸で会談し、北方領土問題について「領土問題を解決し平和条約を締結することが重要だ」と指摘。ナルイシキン氏は「未解決の問題は経済分野を含めたあらゆる分野で関係を進展させる中で必ず解決される」と応じた。

モスクワで今夏、和食コンテスト 日ロ協会、市内300店に呼び掛け

2006/01/08 The Hokkaido Shimbun Press.

 日本とロシアの民間交流に取り組む日本ロシア協会(東京)は1956年の日ソ共同宣言から今年で50周年となることを記念し、今夏にモスクワ市内で日本料理店を対象にした料理コンテストを開くことを決めた。北方領土問題をめぐる日ロ交渉が進展しない中、身近な食文化を通じ両国の民間交流を図る目的だ。

 ルシコフ・モスクワ市長が代表を務める日ロ交流団体「ロシア21世紀委員会」と共催し、同市内のすし、焼き鳥、おでんなど日本料理店約300店に参加を呼び掛ける。各店の料理人に自慢の和食を披露してもらい、服部栄養専門学校(東京)の服部幸応校長ら料理専門家が審査する予定だ。

 ロシアでは最近の健康食ブームで、モスクワを中心に日本料理店が乱立気味。同協会によると、アジア系住民が経営する「日本料理店」の中には、中華風や韓国風にアレンジした「和食」を提供する店も多いという。この状況にロシア21世紀委員会がしびれを切らし、日ロ協会に対し「日本料理の本当の味をモスクワ市民に教えてほしい」と打診、コンテストを開くことになった。

 同協会の長峰義博事務局長は「一連のイベントでは政治問題を議論することに加え、料理を通し気軽に、正確に日本の文化や伝統を伝える機会にしたい」と意気込んでいる。

政府、北方領土の患者受け入れ拡大

2006/01/07 NIKKEI NET

 政府は北方四島住民支援の一環として、北方領土で病院治療を受けている若者の国内受け入れを拡充する。2006年度は今年度より5人多い15人を受け入れる。北方領土の返還交渉は停滞しているが、日本国内に比べ医療設備が不足する現地では日本での治療支援への期待が高く、住民の対日感情の好転や日ロ関係改善にもつながると判断した。

 同事業は03年度に開始。札幌市の北海道大学病院や根室市立根室病院で、手術やリハビリ治療を実施している。

ロシア、千島列島に624億円投入…返還要求をけん制

2005年10月14日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【モスクワ=五十嵐弘一】ロシア政府は13日、閣議で、北方領土を含む千島列島(クリル諸島)の社会経済発展計画(2006年から15年)の追加措置を承認した。

 グレフ経済発展・貿易相によると、10年間で156億ルーブル(約624億円)を投入するという。

 また、タス通信などは12日、露政府当局者の話として、07年から4年間は、毎年20億ルーブル(約80億円)から25億ルーブル(約100億円)を投入する計画であることを明らかにしている。今年11月に予定されるプーチン大統領訪日を前に、北方領土に対するロシアの主権を強調し、日本の返還要求をけん制する狙いがあるとみられる。

 同当局者によると、港湾、空港、道路、ヘリポートの整備のほか、住宅、学校、病院の新設が中心となる。電力部門では地熱発電を推進、域外からの石油・石炭に依存している現状の改善を目指すという。

北方領土に6倍の予算 ロシア、来年度計上へ

2005/10/10 The Sankei Shimbun

 インタファクス通信によると、ロシアのグレフ経済発展貿易相は10日の閣議で、北方領土を含むクリール諸島の社会基盤整備のため、来年度は本年度の約6倍に上る予算を計上することを明らかにした。

 プーチン大統領の訪日を11月に控え、厳しい生活環境への島民の不満を和らげるとともに、4島返還を迫る日本政府に対し、北方領土がロシアの領土であることを強調する狙いがある。

 同相は「空港や港湾、道路、発電所整備を最優先する」と説明。具体的金額には言及しなかったが、同相のこれまでの発言から15億ルーブル(約60億円)程度とみられる。

 極東全体の基盤整備には本年度の2.5倍の約180億ルーブルが計上される。(共同)

4島返還あらためて要求 首相、露大統領に

2005/09/28 The Sankei Shimbun

 小泉純一郎首相は28日夜、ロシアのプーチン大統領が北方4島返還を拒否する見解を示したことについて「4島は日本に帰属するという問題を解決してから平和条約を締結しようということだ。ロシアにはロシアの考え方があるが、それを今後の協議でどう解決していくかだ」と述べ、4島返還を求める方針をあらためて強調した。首相官邸で記者団の質問に答えた。

 11月に日本で行われるプーチン大統領との首脳会談への影響については「交渉に入る前に、大統領も自分の立場をはっきり言っておこうということではないか」と指摘。その上で「(領土問題は)話し合いで解決していかなければならない。難しい問題であることは重々承知している」と述べた。(共同)

四島返還、国民として許せない 領土問題で露経済相

2005/09/17 The Sankei Shimbun

 ロシア極東を視察中のグレフ経済発展貿易相は17日、サハリン州ユジノサハリンスクで記者会見し、北方領土問題について「私の管轄外だが、引き渡しは国民として許せない」と述べ、返還を拒否する見解を示した。

 同相は、北方四島を含む千島列島(クリール諸島)の基盤整備のため来年度、15億ルーブル(約59億円)の特別予算を計上、連邦予算からの投資額は今年の10倍になると強調した。また同州に自由経済ゾーンを設置、ユジノサハリンスクにスキー場を建設する計画も明らかにした。(共同)

北方領土返還求め3000人 “原点の地”根室で大会

2005/08/28 The Sankei Shimbun

 北海道根室市で28日、北方領土の返還を求める「2005北方領土返還要求北海道・東北国民大会」が開かれ、元島民や青森県など東北地方の関係者約3000人が参加した。

 同大会は毎年札幌市で開かれていたが、ことしは戦後60年の節目の年ということもあって、返還運動の“原点の地”である根室市で1978年以来の開催となった。

 大会では、国後島の元島民の男性(72)が、ソ連軍が島に侵攻してきた時の様子を話した。

 藤原弘根室市長は11月にロシアのプーチン大統領の来日が予定されていることについて「具体的な進展があることを望む」と期待を寄せた。

 この日は、北方領土問題に関する講演も開かれ、参加者らは熱心に聞き入っていた。(共同)

「北方領土問題は選挙運動」 ロシア大統領全権代表

2005/08/02 The Sankei Shimbun

 ロシア極東連邦管区のプリコフスキー大統領全権代表は2日、北方領土問題は「日本の政治家の選挙運動」とし、ロシアにとっては「存在しない問題だ」と主張した。極東ハバロフスクで記者団に語った。

 郵政民営化関連法案の参院採決の結果次第では衆院解散・総選挙もあり得る日本の政治情勢をにらんだ発言とみられる。

 代表は「平和条約がなくても日露の経済関係は良好に発展している」と指摘。領土問題を解決して平和条約を締結するとの日本の立場を踏まえ、平和条約は不要との見解を示唆した。(共同)

「択捉島からは出てゆかぬ」露国防相 北方領土視察 露紙報道

2005/08/02 The Sankei Shimbun

 【モスクワ=内藤泰朗】「ここからは出てゆかない」−。ロシア紙イズベスチヤは一日、こんな見出しで、北方領土を視察したイワノフ国防相同行ルポを掲載し、択捉(えとろふ)島駐留ロシア軍の施設や待遇が、この三年間で大幅に改善されたと伝えた。

 それによると、択捉島では、イワノフ国防相の訪問を前に、新しい「将校クラブ」が開館。同国防相は、さらに同島の軍人の待遇改善や、インフラ(社会基盤)整備を行うことを約束した。

 同紙の記者は、旧日本軍が建設した同島唯一の古びたブレベスニク飛行場に到着し、軍用トラック「カマズ」で近くの軍事基地まで一時間かけて到着。「島には舗装道路はなく、身の丈の半分ほどの直径のタイヤを履いたトラックがもっとも信頼できる交通手段だ」と強調した。

 ルポは、記者が島の軍人に「敵は誰なのか」と聞くと、無言のまま日本の方角を向いたと伝えている。

平和条約の提案用意ない 北方領土問題で露外相

2005/07/15 The Sankei Shimbun

 インタファクス通信によると、ロシアのラブロフ外相は14日、北方領土問題に関し「ロシアはプーチン大統領の訪日時に平和条約に関するいかなる提案も用意していない」と述べた。11月予定の大統領訪日を前に、歯舞、色丹の2島返還で平和条約締結を目指す方針のロシア側に対し、4島返還を主張して歩み寄らない日本側をけん制したとみられる。

 外相はさらに「日露間に平和条約がないことは、すべての分野で障害にはなっていない。最近トヨタ自動車もサンクトペテルブルクに工場を建設した」と述べた。

 また「市場経済の日本では、政府が(民間企業に)投資を強制することはできない」とし、平和条約を締結すれば日本からの投資が拡大するとの見方に否定的な認識を示した。(共同)

領土問題は「侵略」の帰結 露、歴史認識盾に返還拒絶

2005/07/03 The Sankei Shimbun

 ロシア外交誌メジドナロドナヤ・ジーズニ最新号は、1945年の旧ソ連軍による北方領土占領を日本軍国主義の侵略行為の帰結と位置づけ、日中、日韓関係を先鋭化させた「日本の歴史認識の誤り」を論拠に、北方四島返還を拒絶する内容のガルージン駐日公使の論文を掲載した。

 同誌編集陣にはラブロフ外相、イワノフ安全保障会議書記らが名を連ね、論文は事実上プーチン政権の見解とみられる。

 第2次大戦終結60周年を契機に、日中関係悪化に関する論文とともに掲載し、歴史教科書や靖国神社問題と北方領土問題の共通性を強く示唆する編集となっている。

 論文はトヨタ自動車の進出など日本とロシアの経済関係の拡大傾向を歓迎する一方で、北方領土問題の起源に言及。「日本がナチス・ドイツの同盟国としてヒトラーの対ソ戦を支援したことを忘れてはならない」と指摘した。

 さらに「日本はアジア、太平洋地域での軍国主義侵略をごまかそうとしている」と批判。「日ソ中立条約に反して参戦したとしてソ連を侵略者に仕立て、罪のない被害者のように振る舞っている」とし、北方領土のロシア実効支配は「不当占拠」とする日本の主張に真っ向から反論した。

 プーチン政権は、平和条約締結後の歯舞、色丹2島の引き渡しを明記した56年の日ソ共同宣言を基礎に、北方領土問題の打開を図る方針だ。だが、歴史認識問題を絡めることで、2島の引き渡しでさえ、本来は義務ではないとの主張を強めるとみられる。(共同)

北方四島:ビザなし交流、今年も開始 露第1陣が根室港に

2005年04月23日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 北方四島とのビザなし交流が今年も始まり、ロシア側訪問団第1陣79人(団長=セルゲイ・プロトポポフ南クリル地区選挙委員長)が22日、日本のチャーター船で北海道根室市の根室港に着いた。14年目の今年は択捉・ウルップ島間に国境線を定めた日露通好条約から150年、さらに戦後60年の節目の年の交流となる。

 一行は5泊6日の日程で同条約ゆかりの静岡県下田市を訪問。条約が調印された同市の長楽寺でオオシマザクラの記念植樹をしたり、津波で死亡したロシア人を埋葬した玉泉寺で献花する。対話集会、家庭訪問などの交流行事も組まれている。今年の交流日程などを固める代表者間協議も25日に下田市で開かれる。

 ゴルバチョフ・旧ソ連大統領(当時)の提案で92年に始まったビザなし交流は、これまでに日露双方で約1万2000人が参加した。今年は高橋はるみ知事が5月末に国後、択捉両島を訪問するなど、約1000人が参加する予定。【本間浩昭】

日露通好条約きょう締結150年 北方領土打開策を模索

2005/02/07 The Sankei Shimbun

 日露が国交を開き、北方四島を日本の領土と定めた日露通好条約の締結から7日で150年を迎える。その一方、今年は旧ソ連が四島を不法占拠して60年でもある。今年は通好150周年の記念行事が集中し、プーチン露大統領の訪日も予定されるが日露領土交渉の解決に向けた糸口は依然としてみえない。7日は「北方領土の日」。領土問題の歴史的経緯と現状を検証する。

 【日本】政府は歯舞、色丹、国後、択捉の北方4島の帰属問題を解決したうえで平和条約を締結するとした1993年の「東京宣言」に基づき、領土問題を解決すべきだとの立場を堅持。平和条約締結後に歯舞、色丹の二島を引き渡すとした日ソ共同宣言は「冷戦時代に締結された宣言であり、これに基づき解決を図ろうとするのは、時代や国際環境が大きく変わったことからみておかしい」(外務省幹部)と、ロシア側を真っ向から牽制(けんせい)する。

 1月にモスクワで行われた日露外相会談で、町村信孝外相が「二島だけの返還は受け入れられない。四島の帰属を明確にすれば、返還時期やその方法は柔軟に対応する」と四島返還を要求。ラブロフ外相は二島返還のみで最終的な決着を図りたい考えを示し、議論は平行線をたどった。

 日本側は、今年前半とされるプーチン大統領の訪日の際に「共同声明」などの形で政治文書をまとめ、領土問題の前進を図りたい考えだが、「ロシア側の態度はかたくなだ。現実的な対応を考える必要がある」(同)として、首脳会談では経済・貿易交流の促進や北朝鮮など東アジア情勢をめぐる意見交換などに重点を置くべきだ、との意見も出始めている。

 かつて日本側は、98年4月の首脳会談で、当時の橋本龍太郎首相がエリツィン大統領に、ウルップ島と択捉島の間に国境線を画定し北方四島の主権は日本にあることを認めれば、施政権の返還はロシアが同意するまで先送りするとの「川奈提案」を打ち出し、交渉を国境線画定方式に変更したこともある。だが、ロシア側は拒否した。

 プーチン大統領が2000年9月の森喜朗首相との首脳会談で「日ソ共同宣言」の法的有効性に言及したことに着目した日本側は、歯舞、色丹の二島の返還方法と国後、択捉の二島の帰属問題を同時に協議する「並行協議」を打診した。ロシア側がこれをも拒否したことで、「領土交渉は暗礁に乗り上げた」(外務省幹部)との認識が強い。今回も打開策を見いだすことはできそうにない。両国関係全般にしても「劇的な前進は望み薄だ」(日露関係筋)とみられている。

                  ◇

 【ロシア】「なぜ今、第2次大戦の結果を見直すようなまねをするのか」「われわれは戦勝国ではなかったのか」「ロシアは譲歩しているのに、なぜ日本は譲らないのか」−。ロシアで最近起きている北方領土問題をめぐる議論は、こうした言葉に集約される。

 ソ連の歴史では、60年前のソ連軍による対日参戦は「ナチス・ドイツの全体主義者と同盟を組んでいた軍国国家・日本をたたくため、連合国からの要請を受け行われた正義の戦争」なのだ。

 北方領土も、60年前の2月、黒海のクリミア半島にある保養地ヤルタで開かれた米英ソ首脳会談で、米英両首脳がソ連の対日参戦への「報酬」として認めたものだった。

 そんなソ連史観に立脚する多くの現ロシア指導者たちにとっては、「なぜ、南クリール諸島(北方四島)を日本に譲らなければならないのか理解できない」(ロシュコフ駐日ロシア大使)。ここに問題の根はある。

 プーチン政権は、隣接する中国やカザフスタンとの国境を画定した。が同時に、戦勝60周年に当たる今年、「全体主義に勝利した偉大な国」として愛国心を高揚させ、国民の一致団結につなげようともくろむ。

 ロシアはいま、日ソ中立条約を破り日本に侵攻した事実や、北方領土を不法に実効支配する現状など、ソ連が犯した歴史的な誤りを認め、歴史観を修正する情勢にはない。同政権が、日露両国間に現存する1956年の日ソ共同宣言に立ち戻り、歯舞、色丹の二島返還で問題解決を図る戦術に出てきたことにも、それは表れている。

 これまでの首脳外交も重要だが、ソ連史観が支配し続ける現状で、問題の根本的な解決は望めないだろう。ロシア側で北方領土問題に関心が出てきた今年はチャンスである。日本は交渉中だとして沈黙するのではなく、恐れずに主張し、誤った歴史観を正していこうという世論の形成に打って出る新たな戦略が求められている。(モスクワ 内藤泰朗)

四島帰属「粘り強く交渉」 北方領土返還で全国大会

2005/02/07 The Sankei Shimbun

 北方領土問題の早期解決を目指す「北方領土返還要求全国大会」が7日昼、東京・九段会館で開かれた。小泉純一郎首相は風邪で静養のため欠席、あいさつを代読した山崎正昭官房副長官は「日本とロシアのさらなる発展のためには北方領土問題の解決が不可欠だ」と指摘し、政府として「粘り強く交渉を進める」と強調した。

 同時に「領土問題を解決して真の信頼関係に基づく戦略的パートナーシップを構築することは、双方の利益にかなうことをロシア側にも理解してもらう必要がある」とした。

 町村信孝外相はプーチン大統領訪日を前に、ロシア側が歯舞諸島と色丹島の「二島返還」論を強めていることに関し、四島の帰属を明確にした上で平和条約締結を目指す政府の方針を重ねて強調した。大会には小池百合子沖縄北方担当相や与野党の代表者らも出席。高齢化が進む四島の元島民が、1日も早い領土問題解決を訴えた。

 択捉以南の北方四島は1855年2月7日に締結された日露通好条約で日本領土と確認された。政府は150年に当たる今年を「大きな節目の年」と位置付け、全国で関連行事などを展開し、返還要求運動を盛り上げていく考えだ。(共同)

北方領土返還反対で集会 ロシア日本総領事館前で

2005/02/07 The Sankei Shimbun

 インタファクス通信によると、日本での「北方領土の日」に当たる7日、同領土を管轄するロシア極東サハリン州ユジノサハリンスクの日本総領事館前で、北方4島の日本への返還に反対する数百人規模の集会が開かれた。

 同州の与野党相乗りによる初の統一行動。主催者の1人であるポノマリョフ州議会議員は「7日の日本での(集会などの)行動は、日本とロシア国民の歴史の記憶を否定しようとしており、不愉快だ」と批判。外務省を通じ、日本での過激な行動をやめるよう抗議するとしている。

 さらに「北海道を訪れる島民へ日本側が手渡す土産には、クリール諸島(千島列島)などは『(日本の)北方領土』と書いてある」と指摘。「日本がこの心理戦に国家として資金援助していることに抗議する」と述べた。(共同)

露大統領訪日へ準備難航 駐日大使が日本批判

2005/01/26 The Sankei Shimbun

 ロシアのロシュコフ駐日大使は、26日付のロシア紙ブレーミャ・ノボスチェイ掲載の会見で、ことし春とみられるプーチン大統領の公式訪日について「日本は北方領土問題で4島返還の強硬姿勢を変えず、重大な訪問を前に、何の前進も検討されていない」と述べ、日本の責任で準備が難航しているとの強い不満を示した。

 また「重い具体的な成果がなければ、訪問の妥当性が問われる」と述べ、領土問題で日本が妥協しなければ、早ければ4月とされる訪日の時期決定も難しくなるとの考えを示唆した。

 インタファクス通信が25日、事前に会見内容を伝えた。

 領土問題では、4島の主権確認を求める日本側と、1956年の日ソ共同宣言に基づき、歯舞、色丹2島返還で決着を図りたいロシア側の立場が対立。大使は「訪問で成果を挙げるには共通の理解が必要だが、日本が乗り気でなく作業が停滞している」と語り、合意文書の領土に関する表現で原則的な対立があることを認めた。

 大統領訪日をめぐっては、今月の町村信孝外相の訪露で、準備加速と3月前半のラブロフ外相訪日で合意している。(共同)

現実的な解決策を模索 北方領土交渉で町村外相

2005/01/22 The Sankei Shimbun

 町村信孝外相は22日午後、北海道新篠津村での会合で、北方領土交渉について「このまま平行線で交渉を続けても(日露双方に)利益にならない。基礎、基本をわきまえ、どこかで現実的な解決策を見いだすという難しい外交交渉をやらなければいけない」と述べた。四島一括で帰属確認する基本方針を維持しながらも、将来的に柔軟な対応を検討する可能性を示唆したものとみられる。

 町村氏は14日のラブロフ外相との会談に触れ、「(北方四島のうち)2つは返すが、(日本が)それ以上よこせとは何ごとだ、日本も4でなく2で折り合えと、平たく言えばそういう主張だ」と、二島返還による決着を強く迫られたことを明らかにした。

 また、中国の軍事力に関して「毎年予算が2けた以上伸びてもいいが、もうちょっとオープンにしてもらわないと困る。隣に住んでいる国としては少々の不安を覚えざるを得ない」と透明性を高めるよう求めた。(共同)

「これ以上の譲歩」無理 露外交委員長、二島返還での決着主張

2005/01/18 The Sankei Shimbun

 ロシアのコサチョフ下院外交委員長は17日、今月14日の日露外相会談を踏まえ、北方領土問題について「(二島返還が)ロシア側ができる譲歩のすべて。これ以上の譲歩をロシア側から期待することは無意味なことだ」と述べ、ロシア側の主張する「二島返還」で領土問題を決着させる以外に選択肢はないとの考えをあらためて強調した。共同通信とのインタビューで答えた。

 プーチン政権与党である「統一ロシア」に所属する外交族の重鎮である同委員長の発言は、プーチン大統領の意向を反映しているといえる。

 委員長は、二島返還について「(本来ならば)ロシア世論も受け入れられない妥協で、政治的には勇気ある決断だった」と指摘。北方四島の領有権はロシア側にあるが、ロシアは「好意」で二島返還まで譲歩したにもかかわらず、「日本側からは何の反応もない」と、四島返還を主張してロシア側に歩み寄る姿勢を見せない日本を非難した。

 委員長は「領土問題の解決には(ロシアの)世論の方が大事だ」と述べ、問題解決の突破口をプーチン大統領の政治決断に求めている日本側にくぎを刺した。

 その上で、「東シベリアからの石油パイプライン建設や日本の自動車メーカーのロシア生産工場建設など経済協力を進めれば、雇用が創出される。そうすれば、ロシア人にとって日本が身近な存在になり、(領土問題に対する)世論も急速に変わっていくだろう」と述べた。(共同)

 ロシアのコサチョフ下院外交委員長の会見での発言要旨は次の通り。

 一、(二島返還が)ロシア側ができる譲歩のすべて。これ以上の譲歩を期待することは無意味なことだ。

 一、二島返還はロシア世論も受け入れられない妥協で、政治的には勇気ある決断だった。

 一、ロシア側は好意で二島返還まで譲歩したが、日本側からは何の反応もない。

 一、領土問題解決のためにはプーチン大統領の政治決断も大事だが、(ロシアの)世論の方が大事だ。

 一、石油パイプライン建設や自動車メーカーのロシア生産工場建設など経済協力を進めれば、雇用が創出される。そうすれば、ロシア人にとって日本が身近な存在になり、(領土問題に対する)世論も急速に変わっていくだろう。(共同)

日露政府、大統領来日で共同声明を検討

2005/01/15 The Sankei Shimbun

 日露両政府は15日、今年4月にも想定されるプーチン大統領の来日時に、両国関係の全般に関する共同声明か政治文書を発表する方向で検討に入った。

 ロシアの世界貿易機関(WTO)加盟問題や退役原子力潜水艦の解体作業など十分野程度の個別テーマに関する文書の作成も検討しており、各テーマを包括するような声明または文書となる見通し。懸案となっている北方領土問題解決の必要性にも言及する方向だ。

 両政府は、北方領土問題で大きな進展が見込めない中、大統領来日の意義を高めるために何らかの文書作成が必要だと判断。1月中にも事務レベルで、個別分野について文書の作成状況を点検し、3月前半に予定しているラブロフ外相の来日時に最終決定する方向で調整している。

 14日に行われた町村信孝外相とロシアのラブロフ外相との会談でも文書の作成について協議した。

露大統領「二島返還で決着」 日ソ共同宣言実行を強調

2004/12/24 The Sankei Shimbun
 【モスクワ=内藤泰朗】ロシアのプーチン大統領は23日、クレムリンで内外記者団を前に会見し、日露両国が平和条約締結後に歯舞、色丹の二島を日本に引き渡すとした1956年の日ソ共同宣言を早急に現実化し、両国関係を発展させなければならないと述べ、二島返還で領土問題の決着を求める考えを改めて強調した。

 大統領はまず、日露関係が「貿易面などで発展しているものの、第2次大戦後いまだに平和条約がないことが両国関係の発展を妨げている」と不満を表明、領土問題を解決したうえで関係発展を目指したいとの意向を示した。

 ただ、その方法については、日ソ共同宣言が両国で批准された合意文書であることをあげ、「ソ連の後継国であるロシアはそれを守ろうとしているが、日本が四島を持ち出すのは不可解だ」と指摘。二島の引き渡しについても「いつ、どのように行うかは今後の交渉による」と語った。

 大統領は、来年の訪日を予定しているが、訪日時期についての質問には答えなかった。

                  ◇

 <外相訪露前に牽制>

 ロシアのプーチン大統領が日ソ共同宣言に基づき、北方領土を二島返還で決着させる考えを改めて示したことで、四島一括返還を求める日本政府は、対露政策の抜本的な練り直しを迫られそうだ。

 町村信孝外相は来年1月、プーチン大統領の来年前半の来日実現に向けて訪露。北方領土返還交渉に関するロシア側の出方を探る構えでいたが、大統領に、機先を制された格好になった。

 ロシア側は11月の日露首脳会談前から、プーチン大統領、ラブロフ外相が示し合わせたように二島返還論を発信、日本側に揺さぶりをかけている。かつて、二島先行返還論といった誤ったシグナルを送って対露交渉に混乱を招き、日本側が首脳会談であえて主要議題から北方領土問題をはずしたことがあった。今回のロシアの対応も、こうした経緯が尾を引いている可能性がある。

 日本政府は「真意を見極める必要がある」(外務省首脳)とし、「四島の帰属を明確にして平和条約を締結する方針に変わりはない」(小泉純一郎首相)との立場を崩していない。

 しかし、記者会見でプーチン大統領は、訪日に関する記者からの質問に一切答えなかった。また、ロシア側は、東シベリアの石油を運ぶパイプライン建設をめぐり、日本と中国のいずれかのルートとする方針確定を先延ばしし、日本側の動揺を誘っている。政府・与党の一部にはロシア側の出方に警戒感が強まっており、日本政府は、対応に苦慮することになりそうだ。【2004/12/24 東京朝刊から】

露駐日大使、2島返還基礎に決着の意向を示唆

2004/09/24 読売新聞 Yomiuri On-Line
 ロシアのアレクサンドル・ロシュコフ駐日大使は24日、東京・丸の内の東京会館で開かれた読売国際経済懇話会(YIES)で講演した。

 大使は、日露両国での「世論と歴史的評価の違いが、領土問題の最大の障害になっている」と指摘し、世論が好転し、「過去を忘れさせる」関係を築くことが、北方領土問題の解決につながるとの認識を示した。日露間で妥協がなった「一例」として、歯舞、色丹の返還による平和条約の締結を定めた1956年の日ソ共同宣言を挙げ、2島返還を基礎に決着を図る意向を強くにじませた。

 大使は、日露関係が2003年1月の小泉首相訪露以来、「飛躍を遂げた」と評価。北方領土問題の解決には、「過去についての論争でなく、双方の国家、国民に受け入れられる妥協を将来に目を向けて探さねばならない」と述べた。ただ、日本の4島一括返還要求を「テコでも動かない対応」と批判し、日本側の譲歩を求める姿勢を鮮明にした。

 大使就任前にロシア代表として参加していた北朝鮮の核問題をめぐる6か国協議の見通しについては、北朝鮮が11月の米大統領選までは再開に応じないとの見方を示し、次回協議は「最も早くて今年末か来年初めになる」と述べた。


日露平和条約に意欲表明 プーチン大統領

2001.02.27 【モスクワ27日=共同】The Sankei Shimbun
 二十七日のインタファクス通信によると、三月一日からのベトナム訪問を控えたプーチン・ロシア大統領はベトナム共産党機関紙ニャンザンのインタビューで、「日ロ平和条約締結に向けた交渉を続ける」と述べ、日本との関係改善に強い意欲を示した。

 大統領は「戦略的安全保障がロシアの対アジア太平洋外交の大方針」とする文脈の中で特に対日関係に言及。大統領は「日本との通商経済分野での協力関係をさらに推進したい」とし、経済をてこにした関係拡大に意欲を表明した。

 一方で、米国がアジア太平洋地域での第三国によるミサイル発射の脅威を口実に本土ミサイル防衛(NMD)導入を狙っていると指摘し、日米の戦域ミサイル防衛(TMD)と併せ、あらためて反対する立場を示した。

ロシア側は全否定 大統領の「四島占領は誤り」発言

2001.02.24(01:16)asahi.com
 北方四島の占領をめぐって日本で報道されたプーチン大統領の発言について、ロシア外務省のロシュコフ外務次官(日本担当)は23日、「大統領は、それに近いことすら発言したことはない」と全面的に否定した。日本での報道ぶりに対し、「遺憾であり、森喜朗首相自身がしっかりと騒ぎを抑えてくれたと信じている」と語った。インタファクス通信が伝えた。

 これに関連して、東京発のイタル・タス通信は同日、日本の外務省幹部の話として、今回の報道は「森首相の早期辞任を求める首相側近の政治家による発言」に基づくものだと伝えた。同幹部は「ロシア大統領を怒らせ、イルクーツク首脳会談前の雰囲気を壊すことで森首相に打撃を与えることを狙ったものだ」と語ったという。

 イルクーツクでの首脳会談について、ロシュコフ次官は「ロシアや日本の国内情勢のいかんにかかわらず、両国関係は進展しなければならないという前提で、ロシア側は会談の準備を進めている」と語った。

「四島奪ったのは誤り」ロ大統領が森首相との電話会談で

2001.02.24(00:40)asahi.com
 ロシアのプーチン大統領が13日の森喜朗首相との電話会談で「スターリンの政策は間違っていた。(北方)四島を奪ったのは誤りだった」と発言していたと、首相側近が22日、語った。河野洋平外相らは否定しているが、首相周辺はこうした発言を明らかにすることで、来月25日の日ロ首脳会談が前進するような印象を与え、森喜朗首相の退陣論に水をかける狙いがあるようだ。

 13日の電話会談では、次の日ロ首脳会談の日程が決まった。プーチン大統領は領土交渉に前向きな姿勢をみせながらも「周りに反対する人がいる。ロシアの外務省だ」とも語り、ロシア国内の事情が、領土交渉の妨げになっている、という見方も示したという。

 こうした大統領の発言について、河野外相は23日の記者会見で「承知していない。そういうことはないと思う」と否定。福田康夫官房長官も「そういう話し合いは行われていない。それは(会談ではなく)『怪談』だ」と語った。

 北方領土問題について、政府内には「プーチン大統領は、この問題を本当に解決したいと思っている。森首相も大統領との交渉に自信を持っている」という見方がある。

首脳会談、3月25日にイルクーツクで開催 日ロ合意

2001.02.13(23:57)asahi.com
 森喜朗首相は13日夜、ロシアのプーチン大統領と電話で会談し、日程が決まっていなかった日ロ首脳会談を3月25日にイルクーツクで行うことで合意した。

 電話は首相からかけ、約15分間話した。首相は1月の日ロ外相会談で「2月25、26両日」で固まった首脳会談の日程をロシア側が一方的に「3月下旬」への延期を通告してきた経緯について「日本ではロシアの対応は意外で残念だとの強い反応が出た」と指摘。「この不幸な事態が長年培ってきた日ロ関係の流れを損ねてはいけないと思う」と述べた。

 大統領は「日程の延期は純粋に技術的な問題」と釈明したうえで、3月25日の日程を提案。首相はこれを受け入れ、「(2000年中の平和条約締結をめざす)クラスノヤルスク合意以降の成果を総括し、平和条約交渉の新たな基盤を築きたい」と要請。大統領も「中身のある会談にしたい」と応じた。

 日本外務省や与党内には「ロシア側の態度は不誠実であり、しばらく冷却期間を置いた方がいい」と、4月以降に先送りすべきだとの意見が支配的だった。

 半面、「日本側からロシアの提案を拒めば、今後の交渉に悪影響を及ぼしかねない」(日ロ交渉関係者)との指摘も出ていた。最終的に、プーチン大統領に親近感を抱く森首相が「こう着状態にある領土交渉の糸口を首脳レベルで見いだしたい」(周辺)と、ロシア側の提案を受け入れる決断をした。

北方領土の日 領土交渉、日露にらみ合い

2001.02.08 The Sankei Shimbun
政府と自民2つの窓口 揺れる二元外交

 「北方領土の日」の七日、「北方領土返還要求全国大会」が東京都千代田区の九段会館で開かれたのをはじめ、各地で街頭キャンペーンやパネル展などが開かれた。しかし、北方領土問題を含めた日露平和条約交渉は、イルクーツクで予定される首脳会談の日程さえ決まらない状況が続いており、日露ともにまず内部の意思統一を図る必要に迫られているようだ。

 昨年十一月にブルネイで行われた日露首脳会談で合意されたイルクーツクでの会談については、今年一月の日露外相会談でいったん合意された二月二十五、二十六日の日程が白紙に戻り、四月下旬以降への先送りが固まっている。首脳会談の性格について日本側は当初、二〇〇〇年までの平和条約締結に全力を尽くすとしたクラスノヤルスク合意に対する総括と、今後の交渉への基礎作りの二つを挙げていたが、開催時期が大きく遅れたことで、後者の比重が高まりそうだ。

 日本側は昨年九月のプーチン大統領来日をきっかけに、国境画定を優先させる「川奈提案」から、歯舞(はぼまい)諸島、色丹(しこたん)島の二島返還を明記した一九五六年の「日ソ共同宣言」の有効性の確認に交渉の中心を移した。

 自民党の鈴木宗男総務局長や外務省の欧州局幹部らがこうした方針を強く進めているのに対し、「四島一括返還」を重視する外務省の一部からは「面積ではわずか(四島全体の)七%にすぎない二島にこだわりすぎているのではないか」と交渉の意義を疑問視する向きもある。

 クラスノヤルスク合意や川奈提案の当事者で発言が注目されてきた橋本龍太郎行革・沖縄北方担当相は六日の記者会見で、沖縄政策に関連して「外交の二元化というような形を作ってはいけない」と強調。当面は森喜朗首相、河野洋平外相を支える姿勢を示す一方、「今はいろんなことを積み重ねてルールを作っていかなければならない」としている。ただ、橋本、河野両大臣に加え、鈴木氏もロシア側との接触があることから、「窓口が一元化していないため、多元外交にもなりかねず、そこをロシアに付け込まれることにもなりかねない」(自民党閣僚経験者)との厳しい指摘があるのも事実。首脳会談延期による「冷却期間」は、こうした国内の体制立て直しへの貴重な時間ともなりそうだ。

 一方、ロシア側もいったん決まった首脳会談の日程を白紙に戻した背景には「ロシアにも領土交渉をできるだけ遅くした方がいいという勢力と、日本との関係をきちんとした方がいいという勢力があり、綱引きが行われている」(外務省幹部)との見方が強い。ロシア外務省と大統領府との意思疎通の不足や、「プーチン大統領自身がまだ態度を決めかねている」(政府筋)との指摘もあり、ロシア側の出方も不透明な状況だ。

         ◇

 ☆北方領土の日 一八五五年二月七日(旧暦安政元年十二月二十一日)、伊豆・下田で調印された日露通好条約で、択捉(えとろふ)島とウルップ島との間に両国の国境が画定され、初めて択捉島以南の北方四島が国際約束で日本の領土と認められた。その後、両国間で結ばれた樺太千島交換条約(一八七五年)、ポーツマス条約(一九〇五年)でも北方四島は日本の領土として扱われている。日本政府はこうした歴史的意義を踏まえて、昭和五十六年一月の閣議了解で、「北方領土の日」を創設した。

河野外相がロシア外相に首脳会談日程を戻すよう要請

2001.01.19(20:16)asahi.com
 河野洋平外相は19日、ロシアのイワノフ外相と電話で約20分間会談した。イワノフ外相は先の外相会談で2月25、26両日にいったん固まった日ロ首脳会談の日程を約1カ月延期するよう求めた理由について、(1)大統領は2月下旬に韓国訪問を予定しており、日ロ首脳会談を行うイルクーツクから韓国に直行することになるが、日ロ首脳会談は独立した会談にするのがふさわしい(2)3月下旬なら十分な時間が確保できる、の2点をあげた。

 河野外相は「3月下旬の日程は外相会談では出なかった。全く納得できない」と抗議したうえで、「2月下旬の日程で再考してほしい」と要請。改めて調整を進めることになった。

 電話はロシア側からあり、イワノフ外相は「迷惑をかけたとすれば非常に申し訳なかった」と陳謝した。

河野外相、プーチン大統領に会えず 首脳会談は2月に

2001.01.17(21:19)asahi.com
 日ロ両政府は17日、森喜朗首相とプーチン大統領との首脳会談を2月25、26両日にイルクーツクで行うことで合意した。河野洋平外相がモスクワ市内で記者団に明らかにした。ロシア側は16日の外相会談で「2月の最終週か3月第1週の週末」と提案。2月中を希望する日本側と調整していた。プーチン大統領は2月末に韓国、ベトナム訪問を予定しており、首脳会談後、イルクーツクから直接、ソウルに向かうとみられる。

 一方、日本側が17日中の実現を申し入れていたプーチン大統領と河野外相との会談は、ロシア側が「大統領の日程が窮屈で会えない」と日本側に伝え、見送られた。

首脳会談はイルクーツクで、日程確定せず 日ロ外相会談

2001.01.16(22:28)asahi.com
 河野洋平外相は16日(日本時間同日午後)、ロシアのイワノフ外相とモスクワ市内の外務省別館で約3時間20分、会談した。森喜朗首相とプーチン大統領の首脳会談をイルクーツクで行うことでは合意したが、日程については「一両日に確定する」(河野外相)として、先送りされた。日本側は今回の外相会談で、2月中の首脳会談の実現に向けて、ロシア側と日程を確定させたい考えだったが、さらに調整が行われることになった。

 会談の席上、イワノフ外相は「近くイルクーツクで開かれる首脳会談で、両国関係が極めて重要な段階になると確信している」と述べた。これに対し、河野外相は「意味のある会談になるよう準備しなければならない」と応じた。ただ、河野外相は会談後、日ロ首脳会談の日程について、「近いうちに行うが、具体的な日取りは、一両日中に確定することになる」と記者団に語った。

 平和条約交渉をめぐっては、「2000年までに平和条約を締結するよう全力を尽くす」としたクラスノヤルスク合意が期限切れになったことを踏まえ、日ロ間で、交渉加速のための新たな方策づくりが進められている。2月中の日ロ首脳会談は、今後の交渉継続に向けた足場づくりの意味合いがあるため、日本側としては、日程確定に力を入れていた。

 会談ではこのほか、四島の帰属の問題を解決して平和条約を結ぶとした東京宣言(1993年)など、93年以降の日ロ間の合意文書を盛り込んだ共同資料集の改訂版や、平和条約締結の重要性に関する世論啓発事業の覚書について、両外相の署名も行われた。

日ロ首脳会談、「2月実現」めざす 河野外相表明

2001.01.13(19:57)asahi.com
 河野洋平外相は14日、リヤドでの同行記者団との懇談で平和条約締結に向けた日ロ首脳会談の日程について「2月に実現したいと思っている」と述べ、16日に開かれるイワノフ・ロシア外相との会談で2月中の開催を確定させたいとの考えを改めて強調した。首脳会談の日程については、ロシア側が2月中の開催に難色を示しているといわれる。

 16日の外相会談で河野外相は、2000年までに平和条約締結を目指すとしたクラスノヤルスク合意が期限内に達成されなかったことを受け、「そのことに対する(日ロ)双方の評価について話し、総理の訪ロにつなげたい」とした。交渉の道筋については、「(北方領土)四島の帰属をはっきりさせ、国境線を画定することで平和条約を結ぶというのが我々の一貫した目的だ」とし、2島返還を記した1956年の日ソ共同宣言やクラスノヤルスク合意を踏まえた新たな交渉の枠組みづくりを目指す考えを示した。

ロシア外務次官が領土問題解決の長期化を示唆

2001.01.13(22:01)asahi.com
 ロシアのロシュコフ外務次官(対日担当)は13日、インタファクス通信に対し、16日の日ロ外相会談や2月にも予定されている日ロ首脳会談で北方領土問題の解決を期待するのは時期尚早、との考えを述べた。「主権や国民の自尊心、歴史的経緯などが複雑に絡み、明日、明後日、3年後、10年後などと期限を区切って解決することは困難であり非生産的だ」とも述べ、問題解決の長期化をにおわせた。

 日本側はイルクーツクでの森喜朗首相とプーチン大統領の首脳会談の日程を15日からの河野洋平外相の訪ロで固めたい意向。首脳会談で、2000年までの平和条約締結に全力を尽くすとしたクラスノヤルスク合意に代わる「新たな方策」をめぐって交渉進展を目指しているが、同次官の発言はロシア側の慎重姿勢を表すものといえる。

日ロ首脳会談、ロシア側「2月予定なし」に日本側反論

2001.01.12(23:13)asahi.com
 ロシア外交当局者は12日、インタファクス通信に対し、日本側が2月の開催を求めているイルクーツクでの森喜朗首相とプーチン大統領の日ロ首脳会談について、「2月にそのような会談の予定は入っていない」と述べ、3月以降にずれ込む可能性を示唆した。

 これに対し、丹波実・駐ロ大使は同日、「2月中に行うとの日ロ双方の方針に変化はない」と反論した。

 日本側は首脳会談の日程を15日からの河野洋平外相の訪ロで固めたい意向で、2月中旬の開催をめざしている。日本側はこの首脳会談を、行き詰まる平和条約交渉での「新たな方策」を打ち出す節目と位置づけており、早期開催の希望をロシア側に打診している。

プーチン大統領、北方領土問題で新提案も

2001.01.10【モスクワ10日=共同】The SAnkei Shimbun
 タス通信によると、ロシュコフ・ロシア外務次官は十日、色丹、歯舞二島の返還を明記した一九五六年の日ソ共同宣言を「法的な前例」として複数の試案を検討中だと指摘し、プーチン大統領が領土問題解決に向け、将来新提案を行う可能性を示唆した。十五日からの河野洋平外相の訪ロに関連して述べた。

 試案の内容は不明で、二月半ばにシベリアのイルクーツクで予定される日ロ首脳会談の場で大統領が提案を行うかどうかは明らかでないが、領土問題解決に向け、プーチン政権が積極的に取り組み始めたことを示す発言とみられる。

 次官は「条約締結問題について現在実務レベルで協議中だ」と指摘。現時点で色丹、歯舞二島はロシアの領土との基本的立場を示しながらも、問題の解決は最終的に「(大統領という)最高レベル」で行われることになると言明した。

 一方で次官は「現在でも共同宣言については異なった解釈がある」と述べ、外相同士だけでなく、実務レベルの「冷静な討議」が必要だと強調、「二島先行返還論」も出ている日本側をけん制した。

 次官はこれまでに、共同宣言を基礎に「二島返還」による領土問題の最終決着を示唆している。

河野外相が中東、ロシア訪問に出発

2001.01.08 The Sankei Shimbun
 河野洋平外相は八日午前、成田発のキャセイ航空機で、カタール、アラブ首長国連邦、クウェート、サウジアラビアのペルシャ湾岸四カ国とスウェーデン、ロシアの計六カ国訪問に出発した。新たな対湾岸外交方針「河野イニシアチブ」(仮称)を表明するほか、ロシアでは二月にも予定される日ロ首脳会談に向け、大詰めの協議を行い、十八日帰国する予定。

イワノフ露外相会見「2島で早期解決を」

2000.12.21【モスクワ21日=高木桂一】The Sankei Shimbun
領土問題 大統領意向と一致

 ロシアのイワノフ外相は二十一日夜、下院内で産経新聞と会見し、北方領土問題で、平和条約締結後に歯舞(はぼまい)、色丹(しこたん)両島を日本に引き渡すとした日ソ共同宣言(一九五六年)を最も重要な根拠として早期に解決すべきだとの考えを強調するとともに、プーチン大統領もその意向であることを明らかにした。

 同外相が、日ソ共同宣言をベースに領土問題を解決する姿勢を表明したのは初めて。ロシア側で浮上している二島返還で領土問題の最終決着を図るという見解の“追認”を示唆したものといえる。

 年明けに訪露する河野洋平外相との日露外相会談では、同宣言の解釈をめぐる双方の対立が改めて表面化し、領土交渉の停滞が決定づけられる可能性も出てきた。

 会見でイワノフ外相は、今年一年間の日露間の平和条約交渉の総括について「現実的な利益を生んだ」と述べ、前進があったとの評価を下す一方、一月の日露外相会談の重要な目的は「平和条約締結に向けた対話の継続にある。双方の積極的な交渉を停止させてはならない」と強調した。

 これは、二〇〇〇年末までの同条約締結への努力をうたったクラスノヤルスク合意(一九九七年)が形がい化されたばかりか、「二島先行返還論」の噴出で、日本側の対露戦略が分断するなど、領土交渉が完全に、ロシア側のペースになったことを歓迎する意図をにじませたものともみられる。

 そのうえでイワノフ外相は「プーチン大統領も外務省も一九五六年の日ソ共同宣言が平和条約締結のための最も重要で現実的な文書だと考えている。両国の議会もこれを批准し、容認している」と述べ、同宣言をもとに領土問題の早期解決を目指すロシア側の立場を主張した。

 また、「大統領は最も困難な国際問題の交渉に積極的に乗り出している。二〇〇一年が平和条約締結に向けて、日露両国の立場が近づく、重要な年になるものと期待している」と語った。

日ロ平和条約、年内締結を断念 会見で河野外相

2000.12.19(13:52)asahi.com
 河野洋平外相は19日の閣議後の記者会見で、来年1月16、17日にロシアを訪問し、イワノフ外相との平和条約交渉に臨むと発表した。日ロ間には「2000年までに平和条約を締結するよう全力を尽くす」とした1997年のクラスノヤルスク合意があるが、河野外相は「懸命に努力してきたが、(北方)四島の帰属の合意ができなかった」と述べ、年内の条約締結断念を正式に表明。新たな期限設定については「濃密な議論ができる」と積極姿勢を示す一方、「ロシア側はプラスでない部分があると考えているようだ」とも語り、現状では合意は難しいとの認識を示した。

 平和条約交渉では、森喜朗首相が11月にブルネイでプーチン大統領と会談した際、年内にもイルクーツクで改めて首脳会談を開くことに合意。だが、その前提となる事務レベル協議で、ロシア側が56年の日ソ共同宣言について「歯舞、色丹の2島返還で最終決着」との解釈を示し、「残り2島も継続協議」とする日本側との違いが鮮明になった。

 双方の隔たりは大きく、外相の訪ロが年明けにずれ込んだことで、森首相の訪ロも先送りとなり、平和条約交渉は来世紀に仕切り直しを迫られることになった。

2島先行返還に懸念 橋本沖縄開発庁長官

2000.12.14(20:18)asahi.com
 橋本龍太郎行政改革相・沖縄開発庁長官は14日、朝日新聞社などのインタビューに応じ、難航する北方領土問題に関して、「2島先行返還論がロシアに悪いシグナルを送っていなければいいが、と非常に心配している」と述べ、政府・自民党の一部で浮上している1956年の日ソ共同宣言に基づき歯舞、色丹の2島を先に返還させるという案に懸念を示した。

 橋本氏は1月からの中央省庁再編に伴い、行革相と沖縄・北方対策担当相を兼務することになっている。橋本氏は北方領土問題について、2島先行返還論が、日本が4島返還の方針を放棄したとの印象をロシア側に与えかねないと指摘し、「4島の(日本)帰属を認めたうえで2島の先行返還ならけっこうだが、2島を還して終わりなら、とても我々は持たない」と語った。

 一方、沖縄問題では、米軍普天間基地の代替施設に15年間の使用期限をつけるという地元側の要求について、「重みをきちんと受け止めたうえで、これから話し合いを進めることになる」と述べた。沖縄県が改定を求めている地位協定について、「神聖不可侵、不磨の大典とは思っていない」と述べたうえで、見直しに時間をかけるよりも運用の改善で対応する方が早いとの認識を示した。

外相、2島先行返還論を否定 条約は4島の帰属決定後

2000.12.06(22:45)asahi.com
 河野洋平外相は6日、ロシアとの平和条約交渉について「(北方)4島の帰属を決めて平和条約を締結するのが我々の基本的な考え方で、まったく政府の考え方は変わっていない。そこははっきりさせたい」と述べた。政府内の一部に浮上している歯舞、色丹の「2島先行返還論」を否定したもので、2島返還を先行させて中間条約を結ぶことも「考えていない」と退けた。朝日新聞などのインタビューに答えた。

 また河野外相は、日ソ共同宣言(1956年)について「日本側は以前から、有効なのは当然だと言ってきた」と述べ、宣言の有効性を確認することに重要性はないとの認識を示した。自らのロシア訪問については「年内を視野に考えているが、具体的な日取りは決まっていない。ロシア側も外交日程が窮屈なようだ」と語った。

 河野外相の訪ロ次第で、森喜朗首相もイルクーツクでプーチン大統領と会談することになっている。河野外相はこの点について、5日の記者会見で「首脳会談の意味をどう持たせるか、いま一生懸命作業している状況だ」と述べた。

ロシア政府 「歯舞、色丹返還で決着」

2000.12.02【モスクワ1日=高木桂一】The Sankei Shimbun
北方領土問題 日ソ共同宣言での日本の解釈と対立

 北方領土問題でロシア政府は三十日、平和条約締結後に歯舞(はぼまい)、色丹(しこたん)両島を引き渡すとした一九五六年の日ソ共同宣言に基づき、二島返還で最終決着を図るとの意向を日本政府に伝えた。日露外交筋が明らかにした。ロシア側の見解は、同宣言では残る国後(くなしり)、択捉(えとろふ)両島の帰属をめぐる交渉も継続することが合意されていたとする日本側の立場と完全に乖離(かいり)するもので、領土問題棚上げを狙うロシア側の意図が浮き彫りになった。ロシア政府の見解は、モスクワで三十日行われた東郷和彦・外務省欧亜局長とロシアのロシュコフ外務次官を代表とする平和条約交渉をめぐる協議で同次官から提示された。

 日露外交筋によると、協議ではプーチン大統領が九月の訪日時に有効性を再確認した日ソ共同宣言の解釈について集中的に議論された。ロシア側は、平和条約締結後の歯舞、色丹両島返還を明記した同宣言第九項は、二島のみの返還で領土問題を最終決着するとの解釈だと主張、日本側が応じれば数年以内に二島返還を実現させる用意があるとの立場を表明した。

 日本側は、四島の帰属問題の解決をうたった九三年の東京宣言などを根拠に妥協しないとの方針を重ねて強調したが、ロシア側は四島の帰属問題を前提とした交渉を継続することになれば、日ソ共同宣言に基づく二島返還の実現も困難との見解を示すなど平行線をたどったという。

 日本側は一日も続行した協議で妥協点を探ったが、領土交渉の最大の基礎となる日ソ共同宣言の解釈をめぐって対立が露呈したことで、日本側が目指す平和条約締結交渉の加速化に向けた実のある内容を打ち出すことは当面、困難な情勢となってきた。

 また、三十日の協議では、年内に予定されている日本の外相の訪露は今月二十日以降となり、森喜朗首相のイルクーツク訪問とプーチン大統領との日露首脳会談の開催は年明けにずれ込む方向になったという。

森首相の訪ロ、来月にずれ込み 北方領土難航で

2000.12.01(23:52)asahi.com
 東郷和彦・外務省欧亜局長は1日、平和条約交渉をめぐるロシア外務省との協議を終えた。外交筋によると、今回の協議で1956年の日ソ共同宣言の歯舞、色丹の2島引き渡し条項(第9項)をめぐる日ロの立場の違いが明確となった。今後、森喜朗首相の訪ロの前提となる「交渉の進展」は厳しい情勢だ。当初12月とされた首相訪ロは実現しても来年1月にずれ込む見方が強い。

 首相訪ロの準備となる河野洋平外相の訪ロは今回の協議結果を検討して外相自身が判断する。訪ロの場合は今月中になる見通しだ。

「公式なクレームは日本だけ」 ロシア外務省がけん制

2000.11.30(13:08)asahi.com
 ロシア外務省のポスノフ法制局国境部長は29日、インタファクス通信に対し、「領土問題に関するクレームを公式なレベルでつけてくるのは日本だけだ」と述べ、ロシアが抱える約10件の国境問題の中で突出していることを強調した。「ある種のクレームは社会的論議のレベルで起こっている。中国やフィンランドとの間で発生した問題は交渉によって解決されるはずだ」と語った。

 今年末までに平和条約を締結するよう全力を尽くすとしたクラスノヤルスク合意の期限が迫り、森喜朗首相が訪ロに強い意欲を見せる中、四島返還には応じられないとのロシア側の立場を明確に示して日本側をけん制する狙いがあるとみられる。

プーチン大統領投げた日本の柔道少年ら、ロシアへ招待

2000.11.30(22:07) asahi.com
 プーチン・ロシア大統領を一本背負いで投げ飛ばした日本の柔道少年と少女が、12月4日からロシアに招待されることになった。ロシア柔道連盟によると、9―10日に同国中部マグニトゴルスクで開かれるロシア大統領杯国際柔道大会を見学するほか、大統領の故郷サンクトペテルブルクなども訪れる。

 招待されるのは、7月の沖縄サミットの際に対戦した沖縄県の志喜屋周君(中学3年)、9月の公式訪日の際に東京・講道館で相手をした東京都の五味奈津実さん(小学4年)の2人とその家族ら8人。柔道大会にはプーチン大統領も出席する予定で、再会が実現しそうだ。

 河野洋平外相が11月2日にモスクワで大統領を表敬した際、大統領から「2人を両親とともに招待したい」と伝えられていた。

2島返還認めず ロシア外務省高官

2000.12.01(00:31)asahi.com
 ロシアを訪問した東郷和彦・外務省欧亜局長は30日、ロシュコフ・ロシア外務次官と会談し、難航する日ロ平和条約交渉の打開に向けて協議した。ロシュコフ次官は同日、イタル・タス通信に対し、「ロシア側は1956年の日ソ共同宣言の有効性は確認しているが、歯舞、色丹の2島返還を記した条項(の有効性)は認めていない」と述べた。詳細はなお不明だが、日本側の解釈と根本的に食い違う主張をロシア側が述べた可能性がある。

 同通信によると、会談では日ソ共同宣言の解釈をめぐって双方が意見交換した。東郷局長は外務省の一部で主張されている日ソ共同宣言を足場とした「歯舞、色丹の2島先行返還」論について、ロシア側の感触を探ったと見られる。日ロ外交筋によると、会談は30日だけの予定だったが、1日も続けられることになった。

 一方、ロシュコフ次官は会談前、同通信に対し、「ロシア側は平和条約締結への妥協策を模索しているが、4島返還にこだわる日本側にその姿勢がない」と批判。2島返還を記した日ソ共同宣言についても「領土問題に関しては仮定の意味に過ぎない」と述べ、2島返還の現実性に否定的な考えを示していた。

 森喜朗首相は訪ロに強い意欲を示しているが、東郷局長に続いて訪ロする予定の河野洋平外相との協議で、北方領土問題で何らかの進展があるのが首相訪ロの条件とされている。

訪ロ実現に意欲 森首相、ロシア国防相と会談

2000.11.29(20:54)asahi.com
 森喜朗首相は29日、来日中のロシアのセルゲーエフ国防相と首相官邸で約20分間会談した。森首相は「日ロは今いい関係にある。残っているのは領土問題だ」と述べ、30日に予定される平和条約交渉をめぐる事務レベル協議に触れたうえで、「その結果次第では外相も訪ロすることになろう。互いの立場を理解し、もし可能なら、出来るだけ早いうちに(自分の)訪ロを実現させたい」と伝えた。森首相はプーチン大統領と早期にイルクーツクで会談することで合意している。

 このあと河野洋平外相もセルゲーエフ国防相と会談。「日本にもいろんな主張がある。全力を尽くして日ロの友好関係を増進すべきだという人もいれば、慎重な人もいる。国民をうまくリードして信頼関係を作っていくことが必要で、それはロシアも同じだろう」と述べた。国防相は「同感だ」と応じた。

 また、国防相は河野外相との会談で、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)情勢について「状況は改善の兆しが出てきた」としたうえで、緊張緩和が進めば「北朝鮮が軍備を削減する可能性は十分にある」との認識を示した。極東シベリア地域のロシア軍を20%削減することについては「この地域では軍事情勢が安定している」と述べた。

森首相、年内にも訪ロへ 日ロ首脳会談で合意

2000.11.15(23:23)asahi.com
 ブルネイを訪問中の森喜朗首相は15日、ロシアのプーチン大統領と平和条約交渉の進め方について約1時間話し合った。平和条約交渉に一定の前進があれば、森首相が年内にロシアのイルクーツクを訪れて再会談することで合意。森首相に先立って河野洋平外相がロシアを訪問して交渉加速のための「新たな方策」を詰めることになった。首脳会談では新たな方策に関して突っ込んだやりとりがあった模様だが、両国は内容を明らかにしていない。日本では森首相の退陣論が強まっており、訪ロが実現するかはわからない。

 プーチン大統領は会談の冒頭、「日ロ間の関係は改善の兆しが見えている。この兆しは、経済的な関係でも、国際間の協力でも見られる」と評価したうえで、森首相の訪ロを招請。首相は「両国がお互いに歩み寄って最大限の努力をすることが重要だ」と応じた。さらに会談の終わりに首相は「具体的な前進を図ることができるならば自分も年内にも訪ロする用意はある」と逆提案し、プーチン大統領が「ぜひイルクーツクで歓迎したい」と述べ、年内の再会談を目指すことで一致した。

 北方領土問題について森首相は「日本は四島の帰属問題を解決して平和条約を締結すべく真剣に考えてきた」と述べ、国境線を画定すれば北方四島の施政権返還は当面求めないとする「川奈提案」を「今でも最良の案と考えている」と強調。9月の訪日の際、プーチン大統領が「平和条約締結後に歯舞諸島と色丹島を日本に引き渡す」とした1956年の日ソ共同宣言の有効性を認めたことについて「一歩前進であり、先の日ロ外相会談のやりとりを踏まえて年末までさらなる実質的な前進を目指していきたい」と提案した。

 これに対してプーチン大統領は「川奈提案は日本側がいろいろなことを考慮して譲歩した案だと思うが、ロシアの立場を十分に踏まえたものではないと思う」と川奈提案を受け入れられない立場を改めて説明。そのうえで、「日ロ双方が受け入れ可能な解決案を求めて、鋭意交渉を継続していく用意がある」と交渉継続を強く働きかけた。

4島一括返還崩さない 日ロ平和条約締結交渉で官房長官

2000.11.09(22:35)asahi.com
 福田康夫官房長官は9日、朝日新聞記者などのインタビューに応じ、日ロ平和条約締結交渉に関連して「4島一括返還を崩すわけにはいかない。そこは一貫した日本側の主張として、ロシア側に提示する」と述べ、政府内の一部で取りざたされている「2島先行返還論」はとらない考えを強調した。森喜朗首相の年内訪ロの可能性については「アジア太平洋経済協力会議(APEC)の際の日ロ首脳会談で、訪ロの時期が決まっていくことになるが、いまスケジュールをはっきり言える段階ではない」と述べるにとどめた。

 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との関係については「金正日総書記との意思疎通を効果的に行っていくことが極めて重要だ」と述べ、難航している国交正常化交渉を打開するためには首脳会談が必要との考えを強調。ただ、その可能性については「準備が整えば、会うこともあろうかと思うが、現時点では具体的な日どりを検討する状況にない」と述べた。

領土問題の具体的進展なし 日ロ外相会談

2000.11.04(02:02)asahi.com
 ロシア訪問中の河野洋平外相は3日午後(日本時間同日夜)、イワノフ外相とモスクワ市内の外務省別館で約3時間会談した。両外相は、平和条約交渉を加速するための新たな方策の年内具体化を目指すことで合意。作業の進展によっては年内に再び会談することで一致したが、領土問題の具体的な進展はなかった。

 河野外相は平和条約問題について「これまでの合意や宣言を土台に、双方の首脳が言う『法と正義』の観点から解決するのが大事だ」と指摘。イワノフ外相は日ソ共同宣言(1956年)など過去の合意をすべて順守することを確認し、「ロシアは(領土問題を)回避することは考えていない。すべての事情を考慮し、徐々に前進しなければならない」と語った。

 日本政府内の一部には、「平和条約締結後に歯舞諸島と色丹島を日本に引き渡す」とした日ソ共同宣言を足がかりに、まず2島の返還を認めさせ、残る国後、択捉2島は継続協議とする案が浮上している。しかし、残り2島の返還が棚上げにされかねないとして政府全体の方針にはなっておらず、この日の外相会談でも「2島先行返還論」につながる新提案は「一切なかった」(外務省筋)としている。

 河野外相は会談を前に記者団に対し、「私に与えられた任務はあくまでも4島返還だ。この原則、考え方から踏み出すことは私に与えられた権限にはない」と述べ、「2島先行返還論」は取らない考えを明言していた。

あくまで四島返還の原則守る、と河野外相 日ロ領土交渉

2000.11.03(20:55)asahi.com
 ロシア訪問中の河野洋平外相は3日午前(日本時間同日午後)、日ロ平和条約交渉について「私に与えられた任務はあくまでも四島返還だ。この原則、考え方から踏み出すことは私に与えられた権限にはない」と述べ、日本政府内の一部に出ている歯舞、色丹の「二島先行返還論」は取らない考えを明言した。ロシアのイワノフ外相との会談に先立ち、モスクワ市内のホテルで記者団に語った。

 河野外相は、条約交渉に臨む基本姿勢として「これまで幾つかの合意があったが、主として90年代の合意を頭において話をする」と述べ、四島の帰属の問題を解決して平和条約を結ぶとした東京宣言(1993年)などをもとに対応していく考えを表明した。

 政府内には、「平和条約締結後に歯舞諸島と色丹島を日本に引き渡す」とした日ソ共同宣言(56年)を足がかりに、ロシアにまず二島の返還を認めさせ、残る国後、択捉二島については継続協議とする案が浮上している。プーチン大統領は9月の来日時に共同宣言の有効性を確認しており、こう着状態の打開策として期待する声もあるが、「二島先行返還論」は四島の主権確認を棚上げにしかねないとして政府全体の方針にはなってはいない。

 河野外相は、ロシア側が解決の糸口としてこの宣言を持ち出した場合でも「『それは四島の話でしょうね』と言うだけだ」と述べ、日ソ共同宣言が必ずしも「二島先行返還論」につながらないことも強調した。

森首相の年内訪ロも検討 ロシア外務次官

2000.10.24(01:08)asahi.com
 イタル・タス通信によると、訪日中のロシアのロシュコフ外務次官は23日、記者団に対し、「森喜朗首相が年内にロシアを訪問する問題は検討されている」と述べ、首相の訪ロの可能性があることを明らかにした。

 ロシュコフ次官は同通信に対し、年内の平和条約締結に向け全力を尽くすとしたクラスノヤルスク合意について、「何らかの解決に至るために最後の瞬間までの対話が必要だ」と語った。

日ロ平和条約交渉に新たな方策で合意 次官級協議

2000.10.24(01:14)asahi.com
 平和条約締結をめぐる日本とロシアの次官級協議が23日、東京都内で開かれ、難航している平和条約交渉を加速するために、年内に新たな方策を具体化することで合意した。また、日ソ共同宣言(1956年)の有効性を改めて確認するとともに、北方四島の帰属問題の解決が平和条約締結に重要だとの認識で一致した。

 協議には日本側から加藤良三外務審議官、ロシア側からロシュコフ外務次官らが出席した。ロシア側は平和条約締結問題について「日ロ間の関係改善の中で、解決がより現実になると考えており、妥協の模索のために努力したい」と述べ、今後も平和条約交渉を続ける意向を表明した。平和条約をめぐっては、「2000年までに平和条約を締結するよう全力を尽くす」としたクラスノヤルスク合意の達成が困難な状況で、日ロ両国で新たな方策を策定することになった。ただ、具体案は検討中で、11月の河野洋平外相の訪ロや森喜朗首相とプーチン大統領との会談で焦点となりそうだ。

 「平和条約締結後に歯舞諸島と色丹島を日本に引き渡す」とした56年の共同宣言については、9月の日ロ首脳会談で、プーチン大統領が有効性を認めている。ただ、その後、ロシア側から「両国には解釈の違いが存在した」(ロシュコフ次官)との指摘がなされ、共同宣言の解釈をめぐって、日ロ間で混乱が起きていた。

北方四島の帰属論議は平行線 総務庁長官の択捉島訪問

2000.09.17(19:44)asahi.com
 北方領土返還運動を担当する国の行政機関トップとして初めて北方四島を訪問した続訓弘・総務庁長官が17日午後、北海道根室市の根室港に帰港した。

 続長官は全国の中学社会科教諭を中心にしたビザ(査証)なし交流訪問団(団員60人)の一員として14日から択捉島へ渡り、北方四島の帰属問題を解決して平和条約を早期締結するよう島民に訴えた。しかし、続長官の訴えに対して、択捉島のロシア人島民の反応はおおむね冷淡で、議論は平行線で終わった。

 現職閣僚の北方四島訪問は、1998年6月に鈴木宗男・北海道開発庁長官(当時)が国後、択捉両島を訪問して以来。続長官が2人目となった。

北方領土返還に反対世論増加 ロシアの調査財団発表

2000.09.16(20:05)asahi.com
 プーチン政権時代になって北方領土の返還反対派が増えつつある?――。ロシアの民間世論調査機関「世論財団」が14日に公表した結果によると、「北方領土を日本に引き渡すのに反対」と答えたのは59%を占め、前年同期の調査より7ポイント伸びた。

 調査はプーチン大統領の訪日後の今月9日、ロシア各地の1500人を対象に実施した。エリツィン大統領時代の同様の世論調査では、「引き渡し絶対反対」は1996年が76%、97年が60%、99年春は47%と減少傾向にあった。しかし、「強い国家」をスローガンに掲げるプーチン氏が首相に就任した99年秋には52%に回復し、今回の調査で増加傾向が明らかになった。

 ソ連崩壊後のエリツィン時代に打ち砕かれた愛国意識が、プーチン氏の出現とともに再燃させられたことも影響しているようだ。

二島返還「解釈に違い」 日ソ共同宣言でロシア外務次官

2000.09.12(01:45)asahi.com
 ロシアのロシュコフ外務次官(対日政策担当)は11日、日ソ間の国交を回復した1956年の日ソ共同宣言の、平和条約締結後に歯舞諸島と色丹島を返還するとうたった規定について、「宣言の調印直後やそれ以後も、両国には解釈の違いが存在した」と述べ、日ロ双方の専門家レベルで解釈を詰める必要性を指摘した。必ずしも規定通りの返還容認の立場をとらないとの考えを示唆したものとみられ、今後の平和条約交渉でのロシア側の出方が注目される。イタル・タス通信に語った。

 共同宣言については、ゴルバチョフ・ソ連大統領(当時)が有効性の確認を拒否。エリツィン前大統領が間接的に確認したが、プーチン大統領が今回の訪日で初めて、明示的に宣言を確認した。日本政府側は、二島返還の規定を含めて、ロシア側が態度を明確にしたものと受け止め、歓迎していた。

 同次官は、「二島の引き渡し問題で、われわれは困惑していた」と明言。「調印から44年がたち、状況の多くが変化した」などと指摘し、「二島返還の部分を中心に、日ロの専門家が宣言の解釈を協議していく必要がある」と述べ、従来の平和条約交渉の枠組みに追加して、宣言解釈をめぐる専門家レベルの折衝を求める可能性を明らかにした。

 当時のソ連は、宣言の調印後の60年、日米安保条約の改定に反発して、二島返還規定の無効を通告する対日覚書を発した。ロシア外務省内には、今もこの覚書の線を有効とする強硬論があるが、同次官のいう「解釈の違い」が何を指すのかははっきりしない。

 次官によると、ロシア政府は大統領の訪日前に56年宣言についての立場を検討し、「法的な効力が継続している以上、否定することは不可能だ」との結論を出した。これが東京での大統領発言につながったと見られる。だが次官は、同宣言の効力について、戦争状態の終結、外交関係の回復などを挙げただけで、二島返還部分への言及を避けた。

 大統領訪日中、日本側から二島返還を軸にした新たな提案が示されたとの報道があったことに対し、次官はこれを明確に否定した。ただ日本政府内には、二島返還規定を足がかりに打開しようとの動きもあることから、今後の交渉を前に日本側をけん制するのが狙いのようだ。

領土「取引」にニェット! ロシア紙がプーチン氏評価

2000.09.05(23:08)asahi.com
 「プーチンは『背広なし外交』に終止符を打った」(イズベスチヤ紙)――。プーチン大統領の日本公式訪問をめぐるロシア国内の報道は、「領土問題で譲歩しなかった」という点でおおむね好意的だ。日本は金を絡めて領土の取引を迫っている、と受け止められており、きっぱり「ニェット(否)」を伝えた、との思いがにじんでいる。

 5日付の同紙は「思いがけないプレゼントのない訪問」との見出しを掲げ、北方4島の主権を日本が持つ代わりにロシアの施政権を認める「川奈提案」を大統領が拒否したことを評価した。1997年のエリツィン大統領(当時)と橋本龍太郎首相(同)とのクラスノヤルスク合意は、日本への「思いがけないプレゼント」だったというわけだ。「ボリス・リュウ」の親密さも、日本側が非公式な場で大統領を口説いている――と映っていた。そんな時代は終わり、正式な形の交渉が始まるとの論調だ。

 「プーチンはクリル諸島(北方領土の意)を渡さなかった」の見出しを掲げたブレーミャ・モスクワニュース紙は、森首相の「外交下手」に言及。最初の首脳会談で外交辞令もそこそこに、断固たる口調で領土問題を持ち出した森首相のやり方にあきれた、とするロシア側同行筋の話を伝えている。

日ロ首脳が交渉継続を共同発表へ 5日午前、再会談

2000.09.05(01:43)asahi.com
 森喜朗首相とロシアのプーチン大統領は5日午前、東京・元赤坂の迎賓館で3回目の会談をし、北方領土問題を含む平和条約締結を話し合う。

 4日の第1回会談では国境線画定をめぐる双方の主張は食い違い、「2000年までに平和条約を締結するよう全力を尽くす」としたクラスノヤルスク合意の実現は困難な情勢だ。

 しかし、両首脳は年内に会談を重ね、平和条約交渉を継続していくことには合意し、共同発表する見通しとなった。領土問題の歴史的経緯について1992年に作った共同作成資料集をもとに、その後の経過を加えた新資料を作ることでも合意する。

 大統領は4日夜の首相主催の夕食会で、「森首相とは明日、国連ミレニアム・サミットに出発する」としたうえで、11月にブルネイで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)にも共に出席し、会談する考えを明らかにした。首相は年内の訪ロ実現に意欲的で、日ロ首脳の会談は年末に向けて活発になる。年内の平和条約締結は厳しい見通しでも、交渉継続を両首脳が表明することで、日本側としては、可能性を探る姿勢を示したい考えだ。

 一方、4日午後の2回目の会談では平和条約交渉はせず、朝鮮半島情勢や経済協力について意見交換した。首相は、日本と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との国交正常化交渉について「日朝間には大きな隔たりがあるが、10月の交渉では双方の接点を見いだすための作業をしていく」と説明。大統領は「北朝鮮に国際的交渉システムに入ってもらうことが大事だ。日朝間の関係が発展していることを歓迎する」と表明した。

 大統領は、朝鮮半島情勢について「現在進んでいるプロセスを肯定的に見ている。南北朝鮮が平和的、自主的に施策を展開していることを歓迎する」と述べ、朝鮮半島に緊張緩和の兆しが生まれていることを評価した。

 国連の安全保障理事会の改革については、首相が「常任・非常任理事国の拡大へ流れを作りたい」と強調。大統領は「日本が常任理事国になるのを支持する」と表明した。

モスクワ提案の解釈を変更 ロシア外相

2000.09.05(01:14)asahi.com
 ロシアのイワノフ外相は4日夕、東京都内で記者会見し、日ロ首脳会談に関連して、「平和条約は国境線画定問題の解決を含まねばならない」と述べた。

 ロシア側は1998年、モスクワでの首脳会談で、実際の国境線画定は先送りし、当面は、幅広い分野での協力関係を盛り込んだ「平和友好協力条約」を結ぶとの提案を示していた。イワノフ外相の発言は、このような中間的な条約は、平和条約に代わるものではないとの認識を示したものだ。

 日本側は、モスクワ提案について、「4島の帰属の問題を解決して平和条約を結ぶ」とした93年の東京宣言に反すると、反発してきた。ロシア外相の発言は、日本側の解釈に歩み寄った形だ。

プーチン大統領が来日 森喜朗首相と首脳会談へ

2000.09.03 The Sankei Shimbun
 プーチン・ロシア大統領は三日夕、日本公式訪問のため大統領専用機で羽田空港に到着した。森喜朗首相は四、五の両日に計三回、約五時間にわたり大統領と首脳会談を行い、こう着状態に陥っている北方領土問題の進展を目指す。

 「二○○○年末までの平和条約締結に全力を尽くす」とした両国政府のクラスノヤルスク合意の期限が迫る中、森首相は「四島の北端に国境線を引き、日本は当面ロシアの施政を認める」という「国境画定方式」による解決をあらためて提案、大統領に政治決断を求める。ただ、プーチン大統領は領土問題で強硬姿勢を崩しておらず、どのように今後の交渉の道筋を付けるかが焦点となる。

 日本政府は平和条約交渉の継続や、両国の国境画定委員会の作業を加速させるための新たな指針の策定などを盛り込んだ合意文書を交わす方針でロシア側と最終調整しており、首脳会談では首相の早期訪ロでも合意する見通しだ。

 四日午前の第一回会談の議題は平和条約問題で、首相と大統領が両国の主張をぶつけ合う。この後、大統領は夫人とともに皇居で天皇、皇后両陛下と会見、宮中午さん会に出席する。

 会談は四日午後、五日午前にも行われ、両国の経済協力などの合意文書の署名式の後、両首脳が共同記者会見する。

 続いて大統領は経団連を訪問し、財界代表らと会談。午後からは橋本竜太郎元首相、鳩山由紀夫民主党代表らと会談する。

 死者百人以上を出したロシアの原子力潜水艦事故を配慮して娯楽的性格の行事は中止されたが、柔道を愛好する大統領は日本滞在の締めくくりに講道館を訪問し、五日夜、国連ミレニアムサミット出席のためニューヨークに向け出発する。

北方領土の返還を否定 プーチン・ロシア大統領

2000.09.03(13:58)asahi.com(時事)
 ロシアのプーチン大統領は3日、訪日前に訪れた極東サハリン州のユジノサハリンスクで、日本との平和条約交渉に関して「クリールの返還は全く話に上っていない」と述べ、北方領土の返還には応じられないとの強硬姿勢を強調した。

 同大統領が北方領土の返還を明確に否定したのは初めて。4日から東京で行われる森喜朗首相との首脳会談を前に、ロシアの強硬姿勢を改めて内外に示すことで、日本側をけん制する狙いがあるとみられる。 

過半数が北方領土返還を支持 ロシアの民間ラジオ調査

2000.09.02(19:17)asahi.com
 ロシアの民間ラジオ「モスクワのこだま」が1日午後、プーチン大統領の訪日を前に北方領土問題について電話で聴取者の意見を調べたところ、54%が「平和条約の締結を早めるために」日本への返還を支持する結果が出た。

 ロシア政府は、領土での譲歩に対する世論の根強い反対を、北方領土の返還は困難とする主な理由としてきた。同ラジオはモスクワが主な放送エリアで改革派的な聴取者が多く、ロシア全体の意見を反映するとは必ずしもいえない。しかし、ロシア政治の動向を常に先取りする首都で、政府の立場と大きく異なる結果が出たことは注目される。

 同ラジオによると、5分の間に1969人が回答し、うち1064人が返還に賛成した。

クラスノヤルスク合意「破棄すべき」露の対日責任者/大統領訪日時「日本に伝達を」/領土問題後退も

2000.07.29【モスクワ28日=高木桂一】The Sankei Shimbun
 ロシア外務省の対日政策の責任者の一人、ミハイル・ガルジン・アジア第二局次長が二十七日にモスクワで開かれた「外交・国防政策評議会」で、二〇〇〇年末までの平和条約締結に全力を尽くすとした日露間のクラスノヤルスク合意(九七年十一月)について「破棄すべきだ」と述べた。ガルジン氏は九月初旬のプーチン大統領の公式訪日の際に、これを日本側に伝える必要があるとの意向を示しており、領土問題解決に向けた動きが後退する公算が大きくなった。

 クラスノヤルスク合意は当時の橋本龍太郎首相、エリツィン大統領の間で確認され、エリツィン氏の後継者であるプーチン大統領も継承することを公式に表明していたが、ガルジン氏の「破棄発言」は、ロシア側の領土問題を含めた対日政策の転換を示すものとして波紋を呼びそうだ。

 外交・国防政策評議会は、政府・軍の幹部や政策決定に影響力をもつ専門家らで構成する非公開の協議機関。「日露関係」を主要テーマに意見交換された二十七日の会議には、約三十人が参加した。

 出席者の一人によると、「外務省の代表」として発言に立ったガルジン氏は、日露関係を強化する方針は不変との認識を示し、「東京宣言(九三年)やモスクワ宣言(九八年)など過去の日露間の合意を確認する必要はある」と述べながらも、「南クリール諸島(北方四島)問題は棚上げしなければならない。四島における日本の主権は認めてはならない」と断言した。

 また、クラスノヤルスク合意について「エリツィン前大統領は過ちを犯した。プーチン大統領は訪日の際に約束の破棄を日本側に伝えるべきだ。そうすればプーチン氏の(国内的な)イメージ強化につながる」と指摘。「訪日の課題は、領土問題は最優先すべき重要な問題ではないということを日本側に説明することだ」とも語った。

 同評議会での発言内容は近く、プーチン大統領に報告されるという。

 ガルジン氏は外務省の前日本課長で、九七年十一月の日露首脳会談でエリツィン大統領の通訳も務めた。

 【クラスノヤルスク合意】日本が返還を主張する北方領土問題解決を含めた平和条約の早期締結を確認した一九九三年(平成五年)の東京宣言に基づき、平和条約の締結目標期限を二〇〇〇年とした。その後、ロシアは領土問題と平和条約を切り離すよう提案している。

日ロ首脳会談、東京で7月20日開催

2000.06.22(19:58)asahi.com
 来月の九州・沖縄サミット(主要国首脳会議)に出席するために訪日するロシアのプーチン大統領と森喜朗首相の首脳会談が、サミット前日の7月20日、東京で行われることになった。会談では懸案の平和条約締結問題や、韓国と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の南北首脳会談を受け、朝鮮半島情勢や東アジアの安全保障体制についても協議されると見られる。

 日ロ首脳会談は森首相が就任直後の4月末、ロシアのサンクトペテルブルクで行われて以来。プーチン大統領は来月18日に中国を訪問、その後、北朝鮮を訪れ、日本に入る予定だ。

 日本側は会談で「2000年末までに平和条約を締結するよう全力を尽くす」としたクラスノヤルスク合意の実現に向け日ロ協議を加速させたい意向だ。また、朝鮮半島が緊張緩和の動きを見せる中、ロシアは朝鮮半島外交に本腰を入れ始めている。中朝両国の訪問直後の訪日だけに、ロシアの朝鮮半島外交への取り組みも注目される。

日ロ平和条約問題で、22日にモスクワで次官級協議

2000.06.13(19:27)asahi.com
 外務省は13日、平和条約締結問題を話し合う日ロ合同委員会の次官級分科会を22日にモスクワで開くと発表した。日本から外務省の加藤良三外務審議官ら、ロシアからロシュコフ外務次官らが出席する。日本側としては、「2000年末までに平和条約を締結するよう全力を尽くす」としたクラスノヤルスク合意の実現に向けた本格的な協議の場としたい考えだ。8月末から9月初めに予定されるプーチン大統領の公式訪日の調整や、ロシア側が提案している閣僚級による日ロ貿易経済委員会の開催時期などについても話し合うとみられる。

北方領土問題は今年が節目

2000年5月13日 17時21分共同
 続訓弘総務庁長官は13日午後、北方領土視察のため訪れた北海道羅臼町で記者会見し、「現地の声は東京で聞くより深刻だ。8月末にはプーチン・ロシア大統領の来日もあり、今年が節目だ。国民世論に訴え、懸命に努力したい」と強調した。同時に、返還要請運動特別集会を根室で年内に開くとともに、元島民が高齢化していることを念頭に体験談集の作成などに取り組む考えを示した。

ロシア新大統領が8月末に日本を公式訪問

06:43a.m. JST April 30, 2000
 ロシアのプーチン次期大統領は29日夜、ロシアを訪問中の森喜朗首相との会談で、今年8月末に日本を公式に訪れることで合意した。森首相は、7月下旬の九州・沖縄サミット(主要国首脳会談)直後に、東京で公式な日ロ首脳会談を行いたいと提案していた。

平和条約交渉の継続を確認 日ロ首脳会談

06:35a.m. JST April 30, 2000
 ロシアを訪問中の森喜朗首相は29日午前(日本時間29日午後)、サンクトペテルブルクの美術館で、プーチン次期大統領と会談した。懸案の平和条約の締結問題について両首脳は、日ロ両政府が積み重ねてきた一連の合意や宣言を「完全に順守」する考えで一致。新政権でも平和条約交渉を継続していくことを確認した。さらに首相は、7月下旬の九州・沖縄サミット(主要国首脳会議)直後にも東京で公式な日ロ首脳会談を行いたいと提案した。

 会談後の共同記者会見で首相は、プーチン氏の公式訪日について首脳会談では詰められなかったものの、「本日中には決めたい」と再会談での決着に意欲を示した。一方、プーチン氏は会談後、「今年中に実現する」と述べたが、具体的な時期は両国の外務省間で検討したい考えを示すにとどまった。ただ、5月に指名する新首相を日本に派遣する考えは明らかにした。

 プーチン氏は今月4日の鈴木宗男首相特使との会談で、九州・沖縄サミットでの訪日を公式訪問に切り替えるか、今年秋に改めて公式訪問するかの2つの日程を提案していた。

 首相としては、今年末までという目標を掲げたクラスノヤルスク合意での平和条約締結の期限が迫るなかで、サミット直後の首脳会談はプーチン氏に交渉を加速させるよう決断を促すカードでもあった。しかし、プーチン氏が領土問題の決着に消極的なロシア外務省の意向を受けた形で時期の確定に慎重な姿勢を示したため、今後の交渉の行方は定まっていない。

 両首脳は会談で、21世紀に向けた日ロ関係のあり方について、全般的に約2時間話し合った。このなかで、北方領土問題を解決して平和条約を結ぶとした1993年の東京宣言や、97年のクラスノヤルスク合意など、両国政府で確認してきた交渉の経緯を踏まえ、「平和条約締結が両国の提携に大きな意義がある」という認識を確認した。

 プーチン氏は九州・沖縄サミットへの協力を約束、首相は2003年のロシアでのサミット開催実現に協力を表明した。

       ◇

<日ロ平和条約交渉の流れ> 1993年10月、細川護煕首相とエリツィン大統領が会談し、北方4島の帰属の問題を解決して平和条約を締結、両国関係を正常化するとの「東京宣言」をまとめた。97年11月、クラスノヤルスクで橋本龍太郎首相とエリツィン大統領が「東京宣言に基づき、2000年までに平和条約を締結するよう全力を尽くす」ことで合意した。翌98年4月、静岡県川奈での橋本・エリツィン会談で、国境線を画定すれば2島返還も当面棚上げするとの譲歩案を日本側から示したが、同年11月の小渕恵三首相のロシア訪問の際、大統領が川奈提案を拒否、国境線画定を先送りして平和友好協力条約を結ぶ対案を提示した。(肩書は当時)

領土で腰引くプーチン政権

2000年4月28日 14時52分【モスクワ共同】
 ロシアのプーチン次期大統領は29日のサンクトペテルブルクでの森喜朗首相との非公式首脳会談で、対日外交のデビューを果たす。しかし政権基盤の足固めを最優先するプーチン氏にとって、国内感情に火を付けかねない北方領土問題は現時点では深入りしたくない問題。今回の首脳会談を含め、当面腰が引けた対応に終始する可能性が高い。

橋本元首相、ロシアのエリツィン前大統領と会談

00:30a.m. JST April 23, 2000
 ロシアを訪問中の橋本龍太郎元首相は22日、エリツィン前大統領とモスクワ郊外の別荘で、昼食をはさみ約4時間会談した。在任中に築いた個人的親交を将来の日ロ関係につなげるのが狙いで、橋本氏は会談後、記者団に対し、サンクトペテルブルクでの森喜朗首相とプーチン次期大統領との非公式首脳会談を29日に控え、「首脳会談を円滑に進めるための側面支援はできたと思う」と語った。また、エリツィン氏が「今年秋に日本を訪問したい」と語ったことを明らかにした。

 橋本氏はエリツィン氏に森首相の横顔を紹介し、今も緊密な連携があるというプーチン氏に伝えるよう依頼。エリツィン氏は24日にプーチン氏と会談する予定で、その場で伝えることを約束した。

 また、自らの後継者として引き抜いたプーチン氏について、エリツィン氏は「7年間、彼の仕事ぶりを見ていた。よく仕事をし、正直で誠実な人物だ」と評価し、「べたぼめ」に近かったと明かした。

「ロシア大統領訪日は秋」 日本担当の外務次官語る

8:43p.m. JST April 07, 2000
 対日関係などを担当するロシアのロシュコフ外務次官は6日、朝日新聞記者と会見し、プーチン次期大統領の日本公式訪問について、「秋ごろが合理的ではないか」と語った。プーチン氏自身は4日、鈴木宗男・首相特使との会談で、7月の九州・沖縄サミット(主要国首脳会議)での訪日を公式訪問に切り替える日程も提案したが、これを事実上修正し、秋への先送りを求める意向を示したものだ。また公式訪問では、両国が新政権に移行したことを踏まえ、日ロ関係の基本を確認する新宣言のような文書づくりを目指す考えも明らかにした。

 次官は、4月下旬にモスクワ以外のロシアで開催することが合意された森喜朗新首相とプーチン氏との非公式会談について、「サミットの議題を打ち合わせるとともに、両首脳の個人的な友好関係をつくることに目的がある」と指摘。懸案の平和条約締結問題などを突っ込んで協議することに消極的な姿勢を見せた。

 また、会談場所は「双方に便利がよく、森首相がご覧になったことのない興味深いロシアをお見せしたいと考えている」とし、来週中には日本側と正式に合意したいと語った。

 北方領土問題など平和条約交渉をめぐっては、「これまでの交渉の経緯もあるし、実務担当者も代わっていない」と述べ、新政権に移行したからといって急な進展はありえないことを示唆。2000年までに条約締結に全力を挙げるとしたクラスノヤルスク合意に対し、「この合意で両国関係は大きく前進したが、条約は双方が合意しなければ署名できない」として、年内決着は困難との見方を示した。

 公式訪問の日程では、プーチン氏が示したサミット直後は「1つの可能性だ」とし、平和条約交渉などで対応を準備するうえで秋が望ましいと語った。

小渕首相の訪ロを調整へ プーチン氏の大統領当選で政府

01:19a.m. JST March 28, 2000
 ロシア大統領選でプーチン大統領代行が当選したことを受けて、日本政府は7月の九州・沖縄サミット(主要国首脳会議)前に、小渕恵三首相が訪ロして非公式首脳会談を開く方向でロシア側と調整に入る。プーチン氏の政治基盤が固まれば、エリツィン大統領の辞任で「振り出し」に戻った平和条約交渉に改めて取り組む環境が整うと判断した。5月の連休時期などを軸に日程を調整する。しかし、新政権が日ロ間の領土問題をどう判断するかは明確でなく、小渕首相はまずプーチン氏との個人的な信頼関係を築いたうえで、懸案解決への道筋を描こうという考えだ。

 非公式首脳会談の開催地には、プーチン氏の故郷であるサンクトペテルブルクが候補に上がっている。外務省幹部は「ロシアが民主国家として落ち着いていく。いよいよ日ロ交渉もできる」と受け止めている。

 前回の日ロ首脳会談は1998年秋にモスクワで開かれており、今回はロシア側が訪日する番。日本側はサミット前の訪日を打診しているが、ロシア側の感触は厳しいといわれている。首相は26日、那覇市での記者会見で、「首都モスクワ以外の都市で会談することもやぶさかではない」と述べ、首相自身がロシアに乗り込み、非公式の形でも早期に会談したいとの意向を示している。

 ロシア側にとっても、サミットは、国際社会での大舞台だ。議長を務める小渕首相とあらかじめ意見交換しておきたいとの意向があるとみられており、ロシア側も前向きに対応すると外務省はみている。

 しかし、日本政府内には「リーダーがどう考えているかが問題だ」(ロシア担当者)と冷めた見方もある。日ロ関係に積極的に関心を示したエリツィン前大統領と違って、プーチン氏が領土交渉をどうとらえているのか、「ここ数年間の路線を継承する」との発言以上の具体的なものが伝わってきていない。2000年末までに領土問題を解決し平和条約締結を目指すとした97年のクラスノヤルスク合意の期限が迫りつつある中、交渉の仕切りなおしが始まる。

プーチン来日は大統領選後に調整 日ロ外相会談

11:24p.m. JST February 11, 2000
 河野洋平外相は11日、ロシアのイワノフ外相と外務省で約2時間半会談した。日本側が九州・沖縄サミット(主要国首脳会議)前に要請しているプーチン大統領代行の来日について、両外相は3月26日の大統領選後に日程を調整することで合意。大統領選ではプーチン氏の当選が確実視されており、プーチン氏が国内基盤を固めた段階で平和条約交渉が再び本格化する見通しになった。両外相は、これまでの日ロ間の合意に基づき条約交渉を継続することも確認した。

 昨年末にエリツィン氏が辞任し、プーチン氏が政権を引き継いで初の日ロ外相会談。河野外相は「先輩たちが築いた東京宣言、クラスノヤルスク合意、川奈提案、モスクワ宣言という協力と信頼の精神を大切にしていきたい」と強調。イワノフ外相は「対外政策の継承はプーチン大統領代行の(就任後)最初の声明にもある考え方だ。大統領代行は対日関係の基本路線を完全に支持する」と述べ、両国間の合意を継承して平和条約交渉にあたる考えを示した。

 日ロ間では、1993年に、北方四島の帰属問題を解決して平和条約を結ぶとした東京宣言をまとめ、97年のクラスノヤルスク合意で2000年という目標年次を盛り込んだ。だが、ロシア国内の混乱やエリツィン氏の指導力の衰えで、交渉は暗礁に乗り上げている。

日ロ合意の継続を強調

2000年2月10日 11時23分 共同通信社
 青木幹雄官房長官は10日午前の記者会見で、ロシアのイワノフ外相が2000年までの日ロ平和条約締結を目指すとしたクラスノヤルスク合意の実現は困難との考えを書面で回答したことについて「2000年までに北方四島の帰属問題が解決され、平和条約を締結すべく交渉が継続するということで政府の考え方は一致している」と述べ、クラスノヤルスク合意の継続を求めていく考えを強調した。

川奈提案取り下げが浮上

2000年1月23日 16時02分 共同通信社
 日ロ平和条約交渉で争点となっている北方領土問題をめぐり、日本側が国境線画定方式を柱とする「川奈提案」をいったん撤回し、モスクワ宣言(1998年)に基づいてあらためて解決策を模索するとの構想が小渕恵三首相の周辺などで浮上してきた。日ロ関係筋が23日明らかにした。エリツィン大統領辞任を機に、領土問題解決を平和条約とは切り離すとしたロシア側対案の取り下げを促すのが狙い。

ロシア新大統領訪日に努力

2000年1月4日 12時09分 共同通信社
 青木幹雄官房長官は4日午前の記者会見で、今春の訪日が予定されていたロシアのエリツィン大統領が辞任したことについて「本人の訪日は無理だが、引き続きその延長上にあると考えているので、最大限の努力をしていく」と述べ、北方領土問題の進展のため、新大統領の早期訪日を働きかけていく考えを示した。

平和条約締結へ密接協力を

2000年1月2日 12時14分 共同通信社
 小渕恵三首相は辞任したロシアのエリツィン前大統領、大統領代行に就任したプチン首相に12月31日付でそれぞれ親書を送った。外務省が1日夜、発表した。小渕首相はプチン首相に代行就任の祝意を表し「日ロ関係の着実な進展という歴史の流れをさらに進め、2000年までに平和条約を締結するよう全力を尽くすべく密接に協力していこう」と呼び掛けた。

大統領辞任で日本政府が北方領土問題の見直し迫られる

11:22p.m. JST December 31, 1999
 エリツィン大統領の辞任で、日本政府は、日ロ間の最大の懸案である領土問題について「2000年までの平和条約締結に全力を尽くす」というクラスノヤルスク合意によるアプローチを全面的に見直さざるを得なくなった。エリツィン氏が予定していた今春の来日も「白紙から考える必要がある」(外務省筋)としている。エリツィン氏が後継に指名しているプチン大統領代行が、対日関係を重視し、トップダウンで領土問題を打開しようとした「エリツィン路線」を引き継ぐかどうか。これの情報収集と分析に全力を挙げている。

 小渕恵三首相は31日夜、「東京宣言、モスクワ宣言などの一連の合意に基づき、2000年までに平和条約を締結するよう全力を尽くすべく、ロシアの新たな指導者と協力していく」との談話を発表した。エリツィン氏と橋本龍太郎前首相が結んだクラスノヤルスク合意にあえて触れたところに、プチン氏に対して領土問題に積極姿勢を示すよう期待するメッセージが含まれている。

 政府は、この時点でのエリツィン氏の大統領辞任はまったく予想していなかった。ただ、エリツィン氏の病状によってクラスノヤルスク合意によるアプローチは、すでに行き詰まっていたため、日ロ関係が急変することはないとの見方が強い。

ロシア外務省、来春の大統領訪日を確認

00:02a.m. JST December 29, 1999
 ロシア外務省のラフマニン情報局長は28日の記者会見で、エリツィン大統領が来春に訪日することを改めて確認した。丹波実・駐ロシア大使とカラシン外務次官が27日に会談し、「来年1月末に東京で行われる両国外相会談が大統領訪日準備の重要な段階になる」との認識で一致したことを明らかにした。大統領訪日については今月中旬、ドイツ・ベルリンでの主要8カ国(G8)外相会談の場で、イワノフ・ロシア外相が河野洋平外相に来春の実施を確認している。

ロシアのエリツィン大統領、「来春に訪日」と言明

00:18a.m. JST December 17, 1999
 ロシアのエリツィン大統領は16日、クレムリンでの新任大使の信任状奉呈式で丹波実駐ロシア大使に「来年春に日本を訪問する。それは私が約束した通りだ」と述べた。大統領が来春の訪日方針を自ら言明したのは初めて。

 大統領は奉呈式でのあいさつでも日ロ関係に触れ、「日本との善隣関係は最近の数年で新しい発展を遂げた。この肯定的な傾向を固定することが大切だ」と強調した。

 今月初めに訪日したロシア外務省のカラシン次官は、大統領訪日で「大統領の強い指示で、来春実現ということで準備している」と述べ、今年中の訪日延期を正式に伝えていた。

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