TOPIC No.2-31K 人民元/切上げ

Index
01人民元 byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
02中国の外国為替レート(仲値) 中国通信社
03外国為替換算 byYAHOO! FINANCE
04人民元動向 byYAHOO!ニュ−ス
05人民元動向 byサ−チナ
06人民元改革 byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
07人民元切上げの問題のまとめ
08人民元為替投資の注意点 by為替王
09人民元 切り上げ
10中国人民元がドルを抜く日 (2004年10月12日) 田中 宇 国際ニュース解説



人民元が最高値更新 11営業日続伸

2010.08.09 MSN産経新聞

 週明け9日の上海外国為替市場の人民元相場は、中国人民銀行(中央銀行)が取引の基準値を最高値の1ドル=6.7685元に設定したことを受けて11営業日続伸、終値は前週末比0.02%元高ドル安の1ドル=6.7671元となり、2005年の人民元改革以降の最高値を更新した。

 当局が当面の元高を容認しているとの見方が広がったほか、前週末に発表された米雇用統計が振るわなかったことからドル売りが優勢となり、元は一時、1ドル=6.7644ドルまで上昇した。(共同)

【上海摩天楼】世界の常識裏切り続け、人民元ショックから5年

2010.08.02 MSN産経新聞

 中国人民銀行(中央銀行)が1994年1月から続けた人民元の対ドル連動に幕を引き、「通貨バスケットを参考とする管理フロート(変動相場)制」の導入と、約2・1%の切り上げを同時に実施して世界を驚かせた2005年7月の「人民元ショック」から5年が経過した。

3回の調整局面

 5年の間に人民元相場をめぐる政策で3回の調整局面があった。直近ではカナダでの20カ国・地域(G20)首脳会合を控えた6月19日、人民銀行による「人民元相場の弾力化」の声明で元高容認ともとれる姿勢を示したことだ。

 だが3回の調整局面はいずれも、元安政策を原則とする中国当局のかたくなな姿勢を改めて証明しただけだった。1985年のプラザ合意後の劇的な円高にも似た「元切り上げ」を想像した国際社会の期待感は、ことごとく裏切られている。

 最初の調整局面は、2007年7月の相場許容変動幅の拡大だ。「管理フロート制」は、人民銀行がその日の相場の中間値(基準値)を定め、その上下の一定の範囲内だけの相場変動を認めるものだが、この範囲を上下0・3%から0・5%に広げた。

 05年7月以降の緩やかな元高傾向は許容幅拡大でいくぶん急な上昇カーブを描いたが、08年夏までの3年間に対ドルで20%ほどしか上昇しなかった。1ドル=240円ほどだった円が、プラザ合意後の1年で152円まで40%近く急騰したことを考えれば、このときの元の上昇幅は小幅だ。

 08年夏には、米国発の金融危機を理由に、人民元を対ドルに連動させる事実上の固定相場に逆戻りさせてしまった。これが2回目の調整局面だが、国内対応に振り回されていた米国はこのとき、中国に圧力をかける余力もなかったようだ。

 各国が金融危機対応の政策を元に戻す「出口戦略」を模索する中で高まった元高圧力を受けて、今年6月には3度目の調整局面となる「弾力化」を高らかに宣伝した。だが、その後の相場上昇もわずか1%ほど。輸出の先行き不透明感や、海外からの投機資金流入への警戒感などが背景だ。

 人民銀行当局者は「弾力化の声明は元高だけを意味しない。対ユーロ相場を考慮した通貨バスケットで考えれば、大きく元安に振れる可能性もある」と発言。国際社会を牽(けん)制(せい)しつつ為替問題で主導権を握ろうと機会をうかがう思惑が透けてみえる。「弾力化声明」という小幅な譲歩で、G20でやり玉に挙げられる事態や米国の「為替操作国」認定の回避にも成功した。

政治的な相場形成

 そもそも中国に柔軟な通貨政策を期待する方が甘いのかもしれない。国際経済との結びつきによる相場形成ではなく、もっぱら国内事情に基づく政治的な相場形成が原則だからだ。

 53年に英ポンドに固定された人民元相場は72年、通貨バスケットを活用した変動制に移行したが、79年に改革開放政策が始まるまでは1ドル=2元前後という実勢よりも割高なレートで「強い元」が政治的に宣伝されてきた。

 改革開放政策による百八十度の政策転換に伴い、81年には「外貨兌(だ)換(かん)券(FEC)」という“第2紙幣”を発行。“禁じ手”の二重相場制で外資を迷わせながら元安が続いたが、94年にはFECを廃止。外国人には紙くずだった人民元の水準に合わせた二重相場制の解消という荒療治に出る。その結果、1ドル=8・28元前後の元安に固定して輸出黄金時代を築いた。

 今後は内需拡大が中国の成長戦略のカギとなる。一部の金融当局者などの間では、輸入増や海外でのM&A(企業の合併・買収)で有利になる元高容認も視野に入るが、輸出産業と製造業が抱える数千万人の労働者の雇用確保に向け、元安維持を求める守旧派の政治圧力が立ちはだかる。

 元安維持という政治相場には中国の民間セクターの「期待」も大きい。上海の有力経済紙、第一財経日報が、輸出入を手がける国内企業180社にアンケート調査を行ったところ、「今後1年間の人民元相場の変動幅」の予想で最も多かった回答は「5%以下」の52・3%だった。「変わらない」とみる26・7%と合わせると、実に79%の企業が「大幅な元高なし」とみていることになる。

 国内政治が最優先の中国にあって、国際社会が求めるような本格的な元の弾力化や国際化が実現するまでには、まだ時間がかかりそうだ。(上海 河崎真澄)

人民元、一時最高値を更新 初日取引で6・7元台に

2010/06/21 中国新聞ニュ−ス

 【北京共同】中国人民銀行(中央銀行)が人民元相場の弾力化を発表して初日の取引が21日、上海の外国為替市場で行われ、一時1ドル=6・7969元まで上昇した。2008年9月につけた取引時間中の水準を更新し、05年7月の人民元改革以降の最高値を更新した。6・7元台に乗せたのも改革後初めて。

 21日午前に人民銀行が発表した基準値からの上昇幅は、1日の変動幅の上限である0・5%に近い0・45%に達し、世界的な金融危機を受けて2年近くほぼ凍結状態にあった相場が動き始めた。市場関係者は「銀行などが断続的に人民元買いに動く中、当局は上昇が緩やかになるように為替介入をしているようだ」と話した。

 中国は金融危機の兆しが出ていた08年夏から2年近くにわたり元相場を1ドル=6・8元台でほぼ固定し、この間の日々の値動きはわずかだった。

 市場では年内に3%程度の元高に向かうとの見方が支配的だ。今後の市場の見通しについて、野村証券(香港)の孫明春そん・めいしゅんチーフエコノミストは「年内と来年は緩やかな元上昇が続くだろう」と指摘し、年末に1ドル=6・65元、来年末に同6・30元の水準まで元高が進むと予想している。

 元高期待の高まりを受けて先物市場では、人民元は1年物で一時1ドル=6・62元に急上昇。21日の基準値と比べ1年後に元が約3%上昇することを市場はすでに織り込んだ。

元相場、安定維持を強調 中国の温首相が切り上げに反論

2010/03/14 中国新聞ニュ−ス

 【北京共同】中国の温家宝おん・かほう首相は14日、全国人民代表大会(全人代=国会)終了後に北京の人民大会堂で記者会見し、海外から切り上げ要求が強まっている人民元相場について「低すぎない」と反論、今後も元相場を「合理的でバランスの取れた水準」で基本的に安定を保つとあらためて強調した。

 温首相は、元相場の安定が金融危機で失速した世界経済の回復に貢献したと指摘。さらに「(他国の)為替相場を強制的に切り上げようとすることに反対する。元相場の改革に役立たない」と述べるとともに、米国に対し財政再建などを求めた。

 また、中国の貿易のうち50%は加工貿易で、輸出に占める外資企業の割合も大きいとして「中国に対し貿易制限措置を取るのは、自国の企業に打撃を与えるのに等しい」とけん制した。

 回復基調が鮮明になっている中国経済については「多くの企業の経営状況は根本的には改善していない」と指摘。引き続き積極的な財政政策で高めの経済成長を維持するとともに、経済の構造調整とインフレ対策にも配慮し、政府目標の国内総生産(GDP)8%成長実現を図る姿勢を示した。

 半面、住宅価格の高騰で一部にバブル懸念も出ていることから「金利を合理的な水準に保つ必要がある」と述べ、利上げの可能性に触れた。

 気候変動問題では「引き続き各国と協力して気候変動に対応するプロセスを進める」と述べたが、「共通だが差異ある責任」の原則を堅持する考えを強調し、今後も先進国と一線を画す方針を明らかにした。

昨年末の中国外貨準備、過去最高 日本の2倍以上

2010.01.16 MSN産経新聞

 【上海=河崎真澄】16日付の中国英字紙チャイナ・デーリーなどによると、中国人民銀行(中央銀行)がまとめた昨年12月末時点の中国の外貨準備高は前年末比23・3%増の2兆3992億ドル(約218兆円)と過去最高を記録した。

 中国は2006年にそれまで外貨準備高で世界一だった日本を追い抜いていた。昨年末の日本の外貨準備高は1兆494億ドルで、中国の半分以下。

 昨年12月に再び拡大に転じた貿易黒字に加え、海外から大量のホットマネー(投機資金)が流入し外貨準備高を押し上げている。欧米からの人民元の切り上げ圧力も強まりそうだ。

中国は人民元を切り上げるべき=次期通商担当欧州委員

2010年01月13日 ロイター

 [ブリュッセル 12日 ロイター] 欧州委員会の次期通商問題担当委員に就任するカレル・デフフト氏(ベルギー外相)は12日、中国は世界の貿易不均衡を是正するために人民元を切り上げるべきだと述べた。

 同氏は記者団に対し、人民元の切り上げは景気回復を後押しし、中国のみならず他の国の利益にもなるとし「欧州連合(EU)と中国の間の貿易の観点からも、人民元の切り上げは行われるべきだ」と語った。

 デフフト氏はこれに先立ち欧州議会で自身の政策を公表。そのなかで、中国は「通貨の不均衡のような難しい問題に対処する能力を示すことで責任を示すべきだ」と述べた。

 経済・通貨問題担当委員に就任予定のオリ・レーン氏も前日、欧州議会で、ユーロの対人民元相場は「欧州の景気回復に対する潜在的なリスクである」と発言したばかり。

 中国の12月の輸出は前年比17.7%増と、エコノミスト予想の4.0%を大幅に上回って増加した。前年比で輸出が増加に転じたのは1年2カ月ぶり。輸入は55.9%増。予想は31.0%増だった。

 アナリストは、単月の貿易統計の結果だけで中国政府が為替政策を変更することはないとみている。ただ一部エコノミストは、中国の輸出が今後も高水準を維持した場合、人民元相場は3月末ごろから上昇し始めるとの見方を示している。

中国、人民元経済圏の構築に野心

2010/01/06 朝鮮日報/朝鮮日報日本語版 北京=崔有植(チェ・ウシク)特派員

 中国のアジア市場攻略のけん引役は金融だ。中国工商銀行、中国建設銀行など大手銀行がその主役として挙げられる。合併・買収(M&A)や支店開設を通じ、香港・マカオなどの中華圏だけでなく、アジア全体にネットワークを拡大している。

 時価総額世界1位で中国最大の銀行である工商銀が最も積極的だ。工商銀は昨年下期から、タイ・バンコクに本店を置くACL銀行の買収を進めている。ACL銀はタイ全土に16支店を持つ商業銀行。工商銀は昨年9月、バンコク銀行が保有するACL銀行の株式28.13%を取得する契約を結び、タイ財務省の保有株式(30.61%)についても取得交渉を進めている。

 工商銀は昨年11月、マレーシア中央銀行から商業銀行の営業認可を受け、現地法人設立に着手した。マレーシアは東南アジア諸国連合(ASEAN)で中国との貿易額が最も大きい国。2008年の中国との貿易規模は535億ドルに達する。工商銀は08年にマカオの誠興銀行の株式79.9%も取得し、マカオでも金融業界の掌握を進めている。

 建設銀も攻撃的にアジアに進出している。06年にバンク・オブ・アメリカの香港子会社の全株式を取得し、香港に進出を果たしたのに続き、昨年11月には米AIGが香港に設立したクレジットカード会社AIGFを7000万ドルで買収した。

 中国の銀行がアジアへの進出を拡大するのは、中国・ASEAN自由貿易協定(FTA)を活用し、東南アジアに「人民元経済圏」を構築するための長期的な布石だ。香港・マカオでの銀行やカード会社の買収は、先進的な金融テクニックを学ぶことが狙いとみられる。

 中国政法大の楊帆教授(経済学)は「中国とのFTA発効とともに、アジア各国は人民元を積極的に受け入れるだろう。今後5年以内に人民元がアジアで広く流通するはずだ」と指摘した。

人民元、5年以内に東南アジアで流通へ=いずれ日韓でも?―専門家予測

2010-01-04 Record China

 2010年1月3日、東南アジア諸国連合と日中韓(ASEAN+3)が2000年5月に取り決めたチェンマイ・イニシアティブは、昨年12月に総額1200億ドル規模のマルチ化(複数国通貨の一本化)で各国が合意。

 これによりアジア地域の金融協力はより具体的な一歩を踏み出した。こうしたなか、広州日報は「ASEAN自由貿易地域における中国企業の目覚しい進出により、人民元は5年以内に東南アジアで流通するようになる」との専門家の意見を掲載した。

 広東省の主力産業の1つである靴製造業はその製品の大部分を海外に輸出している。広東靴製造販売業商会の呉航(ウー・ハン)秘書長は業界内の声として「人民元決済の貿易が望ましい」と発言。

 すでに国営企業の一部は試験的に人民元決済を実施しているという。さらに呉秘書長は「同省で生産される靴のほとんどが海外ブランドの委託生産であり、製造工場はわずかな加工賃しか得られない。ASEAN自由貿易地域は中国企業にとって独自ブランドを販売できる魅力的な巨大市場であり、世界に進出する足がかりになる」と期待を寄せている。

 経済学の専門家である中国政法大学の楊帆(ヤン・ファン)教授は「近い将来、東南アジア諸国は率先して人民元を受け取るようになる」と断言する。

 「中国経済と緊密な関係を築いている国や地域から人民元は流通するようになり、最初は香港。次が東南アジア諸国で、最後が日韓」と説明。楊教授はさらに「東南アジアで人民元が一般的に流通するようになるのは5年以内」との予測を明らかにした。

 だが同地域での人民元の両替自由化は金融不安やマネーロンダリングなどの不法行為を招くとして反対の姿勢を示している。(翻訳・編集/本郷)

中国を操作国に認定せず 米、危機背景に「安定」優先

2009/04/16 中国新聞ニュ−ス

 【ワシントン16日共同】米財務省は十五日議会に提出した半期に一度の外国為替報告書で、中国の人民元について「(本来価値に比べ)過小評価されているとの見方を続ける」と引き続き切り上げを求める考えを表明した。ただ、競争上の優位のため人為的に相場を維持する「為替操作国」には認定しなかった。

 中国が米国債の最大保有国として不況にあえぐ米経済を下支えしていることに加え、六カ国協議離脱を表明した北朝鮮を引き戻すためにも、同国との関係が深い中国を通貨問題で必要以上に刺激するのを避け、安定した対中関係の維持を優先させる方針を示した。

 オバマ政権は経済・外交全般の課題を閣僚級で話し合う「米中戦略・経済対話」を新設し、存在感を増す中国との協調路線を推し進める戦略。

 ガイトナー財務長官は声明で「中国は人民元相場の柔軟性を高める措置を取り、政府高官は一月にさらなる取り組みを約束した」と述べた。一方で、この取り組みを「内需主導の経済成長に向け、経済を構造改革する政策の始まりとすべきだ」と強調。今後も貿易収支の不均衡の是正などを求める考えを示した。

 長官は一月、議会答弁書で「オバマ大統領は中国が人民元レートを操作していると信じている」と指摘。オバマ政権が中国を操作国に指定するかどうか注目されていた。

人民元相場操作の指摘に反論 中国人民銀副総裁

2009年01月24日 中国新聞ニュ−ス

 【北京24日共同】24日の新華社電によると、中国人民銀行(中央銀行)の蘇寧副総裁は、米次期財務長官へ指名されたガイトナー氏が中国は人民元の為替レートを操作していると指摘したことに対し、「事実に合ってないばかりか、金融危機の原因分析を誤った方向に導く」と反論した。

 ガイトナー氏は上院財政委員会に提出した書簡で、中国による「人民元の為替レートの(不正な)操作」に言及、元の切り上げが必要との認識を示した。蘇副総裁は「言い訳をすることで保護主義を助長すべきではない」と指摘した。

 ガイトナー発言は、中国国内でオバマ政権の対中経済姿勢の「第一声」と受け止められ、反発が出ている。中国は日本を抜き世界最大の米国債保有主で、元切り上げは中国が保有している米国債の元ベースでの価値低下を意味するためだ。米新政権の人民元切り上げ要求が強まった場合には、中国側で米国債売却論が高まる可能性がある。

【円ドル人民元】「強いドル」という欺瞞

2009.01.24 MSN産経新聞

 米国の新財務長官に指名されているガイトナー・ニューヨーク連銀総裁の議会証言によると、オバマ政権経済チームは「強いドル」を推進し、通貨調整で「総合戦略」を検討中という。中国については人民元を不当に安く操作していると認定し、「オバマ大統領は中国の為替慣行を変えるためにあらゆる外交手段を動員する」とも強調した。オバマ政権が矛先を中国に向ける一方で、ドル安・円高を是正するなら日本にとって結構なことだが、「強いドル」というレトリックにだまされてはいけない。

 変動相場制に移行した1970年代以降、米政権が「強いドル」戦略を実行したのは、80年代初めのレーガン政権1期目と、ニューヨーク・ウォール街の要請に応じて世界の余剰資金をひきつけようとしたクリントン政権の一時期に過ぎない。あとはおしなべて「ドル安」政策に傾斜した。

 唯一の例外がブッシュ前政権の対円政策である。ブッシュ大統領は小泉純一郎首相(当時)の改革路線を後押し、2003年から翌年2月にかけての日本財務省による大規模な円売り・ドル買い介入を黙認した。円安傾向を受けて日本からは巨額の超低金利資金が米金融市場になだれ込み、住宅ローンなどの債務をまかなった。ドルはユーロや英ポンドなど欧州通貨に対しては下落したが、証券化商品の開発で欧州の余剰資金を引き寄せることに成功した。

 ところが2008年9月の「リーマン・ショック」で米国発金融危機が世界に伝播した。バブルにまみれたドルの金融商品を800兆円以上も買い込んだ欧州の金融機関が直撃を受けたため、欧州通貨などに対してドル相場は反転した。

 混とんとした国際通貨情勢の中でオバマ政権が今後、どんなドル戦略を発動するだろうか。

 07年末での米国の対外債権総額は17兆6400億ドルに上る。単純に計算して、ドル相場平均で10%下落すると、米国は1兆7640億ドルの為替差益を得ることになる。これはオバマ政権による財政支出拡大に伴う財政赤字見込額を優に上回る。30%のドル安で5兆2920億ドルに上り、金融危機の元凶になった証券化商品10兆8400億ドルの価値が半分に減っても十分補填(ほてん)できる。

 ユーロ安・ドル高で米国の欧州資産が目減りしても、基軸通貨ドルに挑戦してきたユーロは自滅同然だ。問題は米国債の最大の保有国、中国である。オバマ政権は機先を制して人民元切り上げ圧力をかけ、中国が金融パワーをてこにした政治的影響力を行使しにくくする。

 円はどうか。米連邦準備制度理事会(FRB)のゼロ金利容認とは対照的に、日銀はゼロ金利を拒絶したため、金融資産をドルよりも円で運用するほうが有利になり、ドルが売られ、円が買われる。放置して日本が困れば、ドル買い介入して米国債を買い増すだろう。中国も米国債を買わないと人民元は高くなる。オバマ政権の通貨戦略とは、ドル安容認路線しかないようだ。(編集委員 田村秀男)

広がる人民元経済圏――真田幸光教授に聞く

2009年01月21日 NIKKEI NeT プロの視点 アジアが変える日本 鈴置高史編集委員

 中国が人民元の国際化に乗り出した。アジアの通貨・金融に詳しい愛知淑徳大学の真田幸光教授に中国の狙いや今後の展開を聞いた。真田教授は「中国はゆっくりとだが国益をかけて着実に、東南アジアや韓国に人民元経済圏を広げていこう」と予測した。

使われれば国際通貨

 ――2008年末、中国政府は東南アジア諸国連合(ASEAN)や香港などとの取引に関し、限定的だが人民元建てで決済することを初めて認めた。

 「中国は東南アジアという弱い通貨の国々で人民元の国際化を始めたということだ。一方、ドルやユーロ、日本円との競合は当面避けるだろう。今の時点で強い通貨の世界に人民元が流通すれば、人民元に対するアタックが起きかねないからだ。だから、当分の間、人民元は日本などからは『閉じた通貨』に見え続ける。半面、弱い通貨の国からは『国際的な通貨』に成長したと映るだろう」。

 ――人民元はいわゆるハードカレンシーではない。それでも国外で使われるのか。

 「逆説的な言い方だが、ある通貨が世界で使われるようになるとハードカレンシーと呼ばれるのだ。もちろん、ハードカレンシーと認められるに必要な条件はある。安定性、交換性、流動性だ。すでに香港では人民元が流通している。ほんの少し前までは、香港の商人は人民元など受け取らなかった。 が、今や人民元は、『米ドルにペッグした香港ドルと比べても安定性は低くはない』との評価を得た。今後、香港や東南アジアでの決済を公式に認め、交換性を高めてやれば、人民元はますます使われるようになる。そして、使われるほどに流動性が増す。通貨は『使われれば勝ち』なのだ」。

華僑の多い東南アジアから

 「東南アジアを人民元デビューの舞台に選んだのは華僑が経済力を持つため中国が影響力を発揮しやすいこともあるのだろう。専門家の間では、事実上の人民元建て決済がすでに始まっているとささやかれている。それは以下の手法だ。東南アジア在住の華僑の多くは中国国内の銀行に人民元の口座を持つ。彼らが中国に何かを輸出した際、代金はこの口座に人民元で振り込ませる。その分のドルは中国の子会社が本社に送る……」。

ドル支配を崩すオセロ

 ――人民元の国際化で中国が得るものは何か。

 「国威発揚もある。が、外交、安全保障面などの実利も大きい。中国と東南アジアとの取引に加え、次第に東南アジアの国々の間での取引にも人民元が決済通貨として使われるようになっていこう。こうなれば、中国政府は自国とは関係なくとも、人民元決済でなされる世界のすべての取引をモニタリングできるようになる。これまでは米国が世界中のドル決済取引をモニタリングし、テロ国家やテロ組織の怪しい取引を監視してきた。これからは中国もそうした力を持つ。もちろん人民元が絡む取引を米国にモニタリングされなくもなる」。

 「中国はオセロゲームのように人民元経済圏を広げていくだろう。東南アジアに続き、巨額の援助を実施しているアフリカ諸国などにもいずれは人民元を使うよう求めるだろう。ただ、中国は中国人らしく、急ぎはしないと思う。米国との摩擦を避けるためだ。旧ソ連時代に『共産圏の中での国際通貨』ルーブルを運営していたロシアが最近、通貨の復興を目指している。中国はとりあえずルーブルを表に立て米国からの風圧を避ける戦法もとるかもしれない」。

韓国も人民元決済へ?

 ――「韓国も人民元決済を始める可能性がある」と予測しているが(「ウォン防衛に必死の韓国=2008年12月11日参照)。

 「昨年12月、韓国銀行は中国人民銀行との間で通貨スワップ枠を広げた。増加分に関しては、通貨は米ドルではなく人民元・韓国ウォンを使うとの約束だ。今後、韓国銀行がスワップ協定を発動し人民元を借りる際には、韓国政府が中国国内の銀行に人民元口座を開く必要がある」。

 「さらに、両国間の貿易金融で外貨が足りなければスワップされた人民元が決済に使われていくことも十分ありうる。中国が最大の貿易相手である韓国にとって、人民元の使い勝手は悪くない」。

 「『韓国は外貨準備の一部も人民元で持つ』という情報まで流れ始めた。韓国銀行が非公式に流してしているフシがある。『東南アジア各国も人民元を外貨準備に組み込むようだから』との言い訳めいた理由も、この情報にはくっ付いている。予めリークすることで韓国内外の反応を見ようということか、あるいは納得させたいということなのかもしれない」。

通貨でも米国離れ

 ――中国がドル体制を揺さぶる中で韓国が人民元経済圏に入り込んで行くとしたら、米国はどう見るのだろうか。韓国はすでに外交的にも軍事的にも米国から離れ始めている(A HREF="http://www.nikkei.co.jp/neteye5/suzuoki/20080630n5b6u000_30.html">「韓国の反米牛肉暴動と中国」=2008年7月2日参照)。

 「米国からすれば裏切り行為に写るだろう。世界も、韓国の米国離れが通貨でも起きた、と見なすだろう。ブッシュ前政権は韓国の米国離れを放置はしなかった。しかし、オバマ新政権は、やや、だが、現実を認める方向に行くかもしれない」。

 ――中国との通貨スワップ増枠は、今回の通貨危機の中で国際通貨基金(IMF)の救済を避けるために韓国側から中国に依頼したものだ。米中間のそんな微妙な立ち位置に自らを追い込むぐらいなら、素直にIMFに救済を求める手もあったのではないか。外交全般で見ても、韓国はスワップ枠を提供する日米中いずれの国とも、小さな揉めごとさえ起こせなくなっている。

 「韓国はとにかくIMFへ行くのが嫌だったのだろう。今は、IMFに行かずにいかに危機を乗り切るか、だけに神経が行っている。前回の危機の際(1997年)、私はソウルに駐在していた。98年初め、あるホテルのレストランで韓国政府高官がIMFの担当者に異常なほど低姿勢で対応しているのを目の当たりにした。二度とIMFの世話になりたくはない、という韓国人の思いは分からないでもない」。

 ――私も韓国の財務相経験者から「当時、急遽向かった米国で、IMFの担当者から緊急融資の条件の紙をぽんと投げられた」という苦い記憶を聞かされたことがある。「メキシコ用」と印刷された部分を斜線で消し、手書きで「韓国用」と書き直してあったことや、ポロシャツを着た担当者が不機嫌で、休みの日に楽しんでいたゴルフから呼び出されたように見えたことも。

真田幸光(さなだ・ゆきみつ)愛知淑徳大学教授。1981年東京銀行入行。ソウル、香港などに勤務。98年に大学に転じた後はアジア各国の政府や商議所のアドバイザーも務める。

「人民元経済圏」は出現するか?

Mar 24 2009/2009年01月12日 「人民網日本語版」

 米国金融危機が世界にもたらしたダメージを受けて、世界の国々は次のことを認識するに至った。一国の通貨を土台として世界的な決済システムを構築して、同国と世界経済の動きに従っていくことは、不安定で不確実なことであり、これでは真の意味で世界経済のさらなる全面的な発展を推進することも難しくなる。世界は今、多元的な国際通貨決済システムを必要としており、こうした状況の中で人民元の地域化や国際化の実現が見通される。そう遠くない将来、人民元を主要決済通貨とする人民元経済圏が出現する可能性がある。

 現在、人民元は中国周辺国家で広く流通しており、国境貿易取引で大量に使用されているほか、ここ数年は大陸部の観光客が大陸部外で巨額の人民元を消費している。人民元は長年にわたり価格の安定を保ち、東南アジア地域では日本円を抜いて「第二の米ドル」と呼ばれるようになった。中国経済の実力が急速に高まり、貿易や金融分野の開放レベルがますます向上し、金融をめぐる環境が段階的に改善されるのに伴い、人民元の地域化・国際化の条件が一層整ってきた。将来的に国際通貨システムにおける重要な通貨となることは確実で、中国もより積極的かつ主体的に国際金融システムの改革に参与するようになり、世界経済の安定的成長にふさわしい貢献をするようになることが予想される。

 2008年12月24日に開催された国務院常務会議では、広東省、珠江デルタ地域と香港澳門(マカオ)地域、広西チワン族自治区、雲南省と東南アジア諸国連合(ASEAN)との貨物貿易で、人民元決済を試験的に行うことを決定した。今回の試験的決済は規模が1千億元を超えており、限られた範囲での試験的決済ではあるが、中国政府が人民元の国際貿易決済ツール化を推進する上で、重要かつ実質的な一歩を踏み出したことを示している。これに先立ち、中国はロシアと合意を結び、今後は両国の中央銀行によるルーブル・人民元決済業務を拡大することを決めた。韓国との間でも二国間通貨相互両替合意を結んでいる。

 人民元の地域化、国際化の歩みが加速するのに伴い、1カ所ないし2カ所の人民元国際決済センター設立が急務となっている。上海と香港はいずれも国際貿易が発達した地域であり、人民元による国際貿易決済を推進する上でそれぞれに長所を備えている。香港は開放の歴史が長いうえ、大陸部から独立した国際化された金融市場があり、1990年代以来長期に渡り人民元の域外市場が存在してきたという強みがある。人民元の国際化が一歩ずつ順を追って進むのに伴い、香港は中国金融の前進基地としての役割やモデルケースとしての役割を一層発揮することが出来るようになるとみられる。

 国務院が発表した「当今の金融による経済発展の促進に関する若干の意見」の30条では、香港の非金融企業による人民元建て債券の発行を認め、香港における人民元業務の発展を支援し、周辺国・地域との貿易における人民元の決済規模を拡大するとの政府方針が明確に打ち出されている。香港にとっては、こうした政策は、中国政府が香港の人民元域外市場の中心への発展を支援するとともに、これまでシンガポール、香港、韓国などにあった人民元域外市場を香港に集約することを意味している。また未来の域外人民元市場の登場により、従来の決済不能だった人民元建て金融派生商品(デリバティブ)は姿を消し、人民元建て債券が新たに加わって同市場は一層厚みを増すことが予想される。

 また一方で、資金源の豊富さや人民元の監督管理の利便性、より広い金融サービスの対象範囲などからみて、上海も香港にはない強みを備えており、人民元決済センターを設立するのに大変ふさわしい場所だといえる。上海と香港が連携する形で協力を強化するのが最も適切だ。香港と上海は人民元決済に関して、矛盾や排除の関係にあるのではなく、合理的かつ有効に業務を分担して協力し合う関係にあるべきだ。上海は国際金融センターとなる上で抱える制約や不足点を現実として十分に認識し、人民元の国際化プロセスが加速する状況において、人民元経済圏の成立過程で占める位置や役割、将来の発展戦略などを重点的に研究し、人民元の国際化決済センターや取引センターになるべく積極的に動く必要がある。(編集KS)

元高加速 見えぬ対策 インフレ抑制/輸出業者保護 中国で論争

2008/07/17 FujiSankei Business i.

 外為市場における急ピッチな人民元の上昇をめぐって中国内部で論争が起きている。ブルームバーグによると、元高に悲鳴を上げる輸出業者の保護を求めた商務省が16日までに、上昇ペースを鈍化させるよう国務院(内閣)に対し異例の要請を行った。人民元は金融当局の管理下にある“官製相場”で市場原理は働きにくい。国務院側はインフレ抑制を目的に上昇を加速させたい立場にあり、双方のミゾは決して浅くない。(河崎真澄)

 ■6・5元が限界?

 人民元の相場は中国人民銀行(中央銀行)が対ドル取引の基準値を定め、その上下0・5%が1日の許容変動幅。16日の基準値は1ドル=6・81280元で2005年7月21日の2・05%の切り上げから、16・01%上昇している。だがこのところ元高ピッチが加速しており今年はすでに6・7%上昇。昨年の2倍以上のペースを記録している。

 元高でドル建ての製品価格が上昇すると輸出業者の市場競争力が落ちるのは円高時の日本と同じだ。中国の6月の輸出額の伸びは前年同期比17・6%と5月の同28・1%から10ポイント以上スローダウン。商務省では輸出産業の保護が必要だとしている。同省の高虎城次官は、「輸出業者への元高影響を調査しており適切な時期に政策を提言する」と述べ、元高懸念を示した。

 中国の輸出業者が耐えうる元高水準として、北京大学では「1ドル=6・5元まで」との調査結果を公表しているが、現在の上昇ペースが続けば、数カ月内にこの「危険水域」に到達してしまうのは確実という。

 ■下期は減速予測も

 ただ、輸出業者と商務省のタッグの前に立ちはだかるのは、国務院でマクロ経済を統括する国家発展改革委員会や、財政省、税関当局、中国人民銀行などの厚いカベ。中国の消費者物価指数(CPI)上昇率は2月に8・7%を記録。中国ではインフレ進行が社会不安に結びつきやすく、元高による輸入原材料費の抑制などでインフレ傾向に歯止めをかけたい国務院側の焦りの背景もそこにある。

 膨張を続ける貿易黒字に対する欧米からの激しい非難も元高ペースを速める要因のひとつ。1〜6月の中国の貿易黒字は990億3000万ドル(約10兆3000億円)と巨額で、欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁は9日、「人民元が過小評価されている」と述べた。ポールソン米財務長官も引き続いての元高加速を求めている。洪水のような「メード・イン・チャイナ」の輸出への批判を、元高の加速でかわしたい、との思惑も見え隠れする。

 中国内部の「力関係」としては商務省と輸出業者のチームの方が弱い。だが元高ピッチ論争に関し、米証券大手リーマン・ブラザーズでは、「国務院も成長維持や雇用創出による社会安定を無視できないため、元高調整の可能性もある」との見方から、「年内の元上昇率は下期、2%に減速する」と予測。ギリギリの論争が続きそうな情勢だ。

【数字でみるアジア】(22)中国の外貨準備高1兆6800億ドル

2008/07/09 FujiSankei Business i.

 中国の外貨準備高は2008年3月末時点で実に約1兆6800億ドル(約178兆円)に上る。日本を抜いて世界最大となった中国だが、今後も加速度的な拡大が続くとみられている。

 中国の外貨準備高は貿易黒字の蓄積を背景に03年から急速に拡大。あっという間に06年2月に日本を抜いた。地元企業とともに、海外から安価な労働力の活用を目的に生産拠点としての投資が集まり、輸出拡大による貿易黒字が増大。さらに投機資金の流入などで06年後半に1兆ドルを突破し、現在では主要8カ国(G8)合計額と比べても突出した額となっている。

 中国金融当局はこれまで主に外貨準備で米国債の運用をしていたが、膨大な外貨の活用手段として昨年、国家ファンドを設立して資金運用を始めた。

 膨大な外貨準備の存在が、緩やかな引き上げを進めてきた人民元の為替政策にも影響が出るとの見方も出始めている。(坂本一之)

【数字でみるアジア】(21)元なお加速10%上昇も

2008/07/04 FujiSankei Business i.

 膨大な貿易黒字を稼ぎ出して独り勝ちする“元凶”として欧米からやり玉に挙げられているのが中国の通貨「人民元」の為替レート。2005年7月に約2%の切り上げを実施したが、中国金融当局は管理下に置いている人民元の再度の大幅切り上げに難色を示している。一方で毎日の為替レートの推移で徐々に元高への誘導を演出している。

 丸紅経済研究所の調べでは人民元の対ドル為替レートは通年で06年に約3.2%、07年は約6.5%上昇と加速した。今年はすでに6月末までの半年間で約6%上げており、通年では10%に達するとの見方も市場に出ている。対中貿易で巨額の赤字を抱える米国からの人民元再切り上げ圧力を、ゆるやかな元高誘導でかわそうとの作戦だ。

 中国は再度の大幅な切り上げは輸出産業にダメージを与えて経済失速につながると懸念しているようだ。1985年「プラザ合意」で一気に数十%の円高に見舞われてショック状態に陥った日本の轍(てつ)は踏みたくないと考えているに違いない。(坂本一之)

米中戦略経済対話 中国外貨準備高が突出

2008/06/19 FujiSankei Business i.

 ■4月末、G7合計超え1兆7600億ドル

 中国国務院(政府)直轄機関である中国社会科学院は、中国の外貨準備高が今年4月末段階で1兆7600億ドル(約188兆3200億円)に達したとの推計をまとめた。日米独など主要7カ国(G7)の外貨準備高合計をすでに大きく上回っている。中国の外貨準備は3月末の1兆6843億ドルから1カ月で757億ドル増加した。安すぎる人民元の為替相場が背景にあるとする国際社会は「元高圧力」を強めているが、中国当局は緩やかな元高誘導や米国からの輸入の拡大措置で批判をかわす戦術だ。(坂本一之)

 外務省経済局の資料によると、2002年末段階で2911億ドルだった中国の外貨準備高は、長年にわたって世界トップの座にあった日本を06年2月にあっさり抜いて首位となった。同年10月には世界で初めて1兆ドルの大台に乗せたが、その後も加速度的に増大を続けている。低価格品の欧米市場への怒濤(どとう)のような輸出による貿易黒字や、外資による投資が支えている。今年3月末からの1カ月では1時間に1億ドル以上の外貨を蓄積した計算になる。

 今年4月末段階で中国の外貨準備高の規模は、日本の9824億ドルの約1・8倍であり、米の633億ドルの実に約28倍に達する。G7の合計は概算で1兆2300億ドルほどしかない。

 共産党機関紙、人民日報などによると、中国社会科学院の裴長洪・財政貿易経済研究所長は、「十分な外貨準備の維持は中国のような大国には必要だ」とした上で、「人民元が国際的な信用を獲得するための重要な基礎だ」と主張。13億人を抱える中国経済の成長維持や、自国通貨の安定に外貨準備高の規模が欠かせない、との判断を示した。

 こうした中国の「独り勝ち」が目立つなか、17日から米ワシントン郊外のメリーランド州アナポリスで開かれている「第4回米中戦略経済対話」では、ポールソン財務長官など米側が人民元の為替政策に、一段の改革を中国側に求めた。安すぎる人民元の為替相場が貿易黒字を生み外貨を稼ぎ出しているとの批判だ。

 中国は中央銀行である中国人民銀行が、人民元の対ドルレートを完全な管理下に置いて、いわば「官製相場」で為替取引を行っている。このため中国は、米中戦略経済対話の初日である17日に、05年7月の人民元の約2%の切り上げ後、初の1ドル=6・8元台突入を演出した。大幅な人民元の切り上げによる国内輸出産業へのダメージを懸念する中国として、米ドルに対して大幅な切り上げは望まないが、緩やかなペースながら当局が元高に誘導しているとのポーズを示した。

中国、今年5回目の預金準備率引き上げ

2008年06月07日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【北京=寺村暁人】中国人民銀行(中央銀行)は7日、金融機関の預金準備率(預金総額のうち中央銀行に預け入れる額の比率)を、現行の16・5%から17・5%に引き上げると発表した。

 15日と25日の2段階に分けて、0・5ポイントずつ上げる。

 引き上げは、5月に続いて今年5回目。銀行の資金を吸収して市中のカネ余り状態を解消し、インフレや投資過熱を沈静化させる狙いだ。

 ただ、四川大地震の被災地域の金融機関は、復興向けの資金需要に配慮して、当面は据え置く。

 中国の消費者物価上昇率は、今年2月から前年同月比8%台の高水準が続いており、インフレ対策が政府の喫緊の課題となっている。

中国「人民元高」ピッチ加速 今後1年間で10%も 米証券大手が予測

2008/06/06 FujiSankei Business i.

 中国の通貨「人民元」の対ドル相場上昇ピッチが一段と加速しそうだ。現段階で1ドル=6・9元台で推移している為替水準が来年6月には6・3元と、1年で約10%元高になるとの予想を、米証券大手ゴールドマン・サックスが5日までにまとめた。膨張が続く外貨準備高の保有コスト低減を図る中国当局が、元高加速を容認すると分析した。

 中国の外貨準備高は今年3月末で前年同期比40%増の1兆6822億ドル(約176兆6310億円)と2位の日本を大きく引き離して世界一の記録を毎月塗り替えている。急激な元高を嫌う金融当局が続行している大規模な「ドル買い元売り」介入が背景にある。

 しかし、外貨準備高の保有コストとして毎月、国内総生産(GDP)の5%に当たる150億ドルを負担しているとゴールドマンでは試算。保有コスト削減をめざす金融当局が、市場介入の規模縮小と元高容認を選択するとみて、1年後の対ドル為替水準予測をこれまでの6・38元から6・3元に上方修正した。中国人民銀行は5日の元取引基準値を1ドル=6・9394元と発表しており、ゴールドマンの予測通りになれば1年間で約10%元高になる。

 ゴールドマンはまた、現在の増加ペースが続くと中国の外貨準備高は、今年末までに2兆2000億ドルを軽く超えると予想した。

 2007年に過去最高となる2622億ドルもの貿易黒字を稼いだ中国。欧米を中心に「人民元レートの不当な安さが貿易不均衡の根源」として元高圧力を強めてきた。05年7月に約2%切り上げた後、金融当局の管理下に置かれた市場で元は現在までに約3年で15%近い上昇となっている。

 一方で、「香港ドル」は対米ドルで7・8香港ドルとなるよう連動(ペッグ)しており、人民元との逆転現象も起きている。このため香港住民の多くは香港ドルを人民元に換金して保有する動きを強めており、広東省深センの金融機関に香港住民が預けている人民元建て預金が5月末段階で400億元(約6000億円)となり、年初から60%も膨れあがった。1年間で10%元高が進めば、香港ドルへの換金時にその分が為替差益となって転がり込むとの読みからだ。(河崎真澄)

[東南アジア][中国]インドシナ半島 「中華経済圏」の様相 人民元流通、あふれる中国製品

2008-05-14 Hatena Diary

 【ハノイ=坂本一之】ベトナムなどインドシナ半島で「チャイナマネー」の存在感が日に日に高まっている。ミャンマーも含むインドシナ半島4カ国への中国からの投資は2005年前後から資源エネルギー関連を含め急拡大。同時に、中国南部の広西チワン族自治区や雲南省と陸続きのベトナムでは、中国製の家電や日用品があふれている。一部の地域では人民元も流通し、インドシナ半島は「中華経済圏」に組み込まれた様相を見せ始めている。

 ≪投資額が急拡大≫

 インドシナ半島4カ国のCLMV(カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナム)に対する中国からの投資額は05年から急増。対カンボジア投資は04年の8310万ドルが05年には4億5200万ドルに拡大し、06年は7億1710万ドルに達した。00年のわずか430万ドルから、たった6年で約167倍に膨れあがった。

 ラオスやミャンマー、ベトナムも同じ傾向。中国の対ラオス投資は04年の2820万ドルが、06年に4億2320万ドルに増加した。CLMVと中国の貿易額も急拡大。中でも中国からの製品輸出が伸び、対中貿易赤字は膨張を続けている。

 中国が資金援助してインドシナ半島で整備中の新物流網が完成すれば、対中貿易の拡大はさらに加速する見込み。また中国人観光客のインドシナ半島への大量流入も予想されている。ベトナムでは観光客数で数年内に、中国人が日本人を追い抜くとの見方もある。

 日本はインドシナ各国に政府開発援助(ODA)を実施しているが、民間企業の進出が多いタイやマレーシアほどは経済関係は深くなっていない。中国の低金利融資は機動的で、日本のODAの魅力は薄れる一方だ。このため日本政府も新たなインドシナ外交戦略で巻き返しを図っている。

 ≪日本も新たな戦略≫

 07年には、麻生太郎外務相(当時)が中国にインドシナ半島のメコン川流域に対する政策を日中で協議する対話を打診。今年4月には北京で「日中メコン政策対話」を開催し互いに同地域への政策を紹介。日中共同支援をめざしている。

 このほか日本政府は、今年1月に日・メコン外相会議を東京で開催。日本の経済支援を強く打ち出し、チャイナマネー浸透で相対的に弱まる日本の存在感浮揚を狙っている。日本の外交筋は中国当局がこの地域で日本を排除するような動きはしない、と見ている。

 ベトナムには対中投資の一極集中へのリスク回避を計る日本企業の進出も急増しているが、インフラ整備が進んでいないラオスや軍政問題を抱えるミャンマーなどへの投資は伸び悩んでいる。タイやマレーシアに進出している日系の現地企業が現地からインドシナ半島に投資することが、日本の投資活性化の突破口になるとの見方が出ている。

人民元上昇 綱渡り続く中国の過熱経済

2008年04月20日 読売新聞社説 Yomiuri On-Line

 中国通貨・人民元の対ドル相場が初めて、1ドル=6元台に上昇した。

 貿易不均衡の是正を求める米国などの要求に応えた形だが、元高がさらに進めば、また別の問題が生じてくる。中国経済は当面、難しい舵(かじ)取りを迫られよう。

 中国政府は、2005年7月、対ドルで固定だった人民元を管理変動相場制に移行させた。その後は、市場介入で元急騰を抑えてきた。昨年末までの2年半で、元は約11%しか上昇しなかった。

 ところが、最近は上昇ペースが速まり、1ドル=7元を突破した。今年の3か月半だけで、上昇率は5%弱になる。

 元高の加速を容認する姿勢に、中国政府が軌道修正したということだろう。これまでは、元高を防ぐため、大規模な市場介入で元売りを続けた。その結果、大量の元が市中に放出された。

 これが、不動産価格の高騰や一時の株価上昇など、景気の過熱をもたらした。中国政府も、こうした弊害を放置できないと判断したようだ。

 中国経済が直面する最も深刻な問題は、インフレ高騰だ。3月の消費者物価上昇率は、前年同月比で8・3%増だった。中国政府は「消費者物価上昇率4・8%」を今年の目標に掲げるが、目標達成は極めて危うい。

 ワシントンで4月11日に開かれた先進7か国財務相・中央銀行総裁会議(G7)の声明は、元高を歓迎し、一層の上昇を促した。

 ところが、元はドルに対しては上昇しているものの、対ユーロでは元安が続いている。これが、輸入インフレをうまく抑制できない原因の一つになっている。

 その中国の今年1〜3月期の国内総生産(GDP)の実質成長率は、前年同期比10・6%を記録した。昨年の11・9%成長から減速したが、なお過熱感は強い。

 中国当局は、金融引き締めに懸命だが、問題は、その効果が限定的なことだ。もう一段の利上げの必要性を指摘する声もある。

 ただし、元高と利上げが行き過ぎると、急激に景気が冷え込み、失速状態に陥る恐れもある。

 景気を先取りするとされる株価には、すでにその兆候が表れている。上海株式市場の株価指数は、ピークをつけた昨秋から半年で半分になった。バブル崩壊ともいえる状況でないか。

 個人消費など内需が主導する安定した成長に、うまく軟着陸できるか。中国経済は今、極めて難しい局面を迎えている。

人民元、初の1ドル=6元台

2008/04/11 FujiSankei Business i.

 【北京=福島香織】中国人民銀行(中央銀行)は10日、上海の外国為替市場での人民元レート基準値を1ドル=6・9920元に設定した。この日の取引で一時、同6・9907元まで上昇。結局、同6・9916元で大方の取引を終え、終値での最高値を更新した。2005年7月の約2%の切り上げ後、6元台への突入は初めて。

 人民元上昇は昨年11月から目立ち始め、月平均1・2%前後に達している。先月の全国人民代表大会(全人代=国会)でもインフレ対策として元高容認論が打ち出されていた。

 10日付の中国経済時報は、今年の元上昇幅が10%前後との見込みを伝えた。昨年の上昇率は6・9%だった。

人民元、初の6元台突入 「世界の工場」に決別 G7控え中国自信

2008/04/11 FujiSankei Business i.

 中国の金融当局が為替相場を管理している人民元の対ドルレートが10日、1ドル=6元台に突入し、3年足らずで約16%の上昇となった。11日から米国で開かれる先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)を目前にした元高局面の演出は、元安で輸出攻勢をかけ続ける「世界の工場への決別」を中国自身が宣言した、と受け止めていい。

 1978年からの改革開放路線で中国は、外資導入と輸出振興を経済成長の原動力としてきた。元レートの安さや豊富で安価な労働力を求めた日米欧などの企業が続々と生産拠点を移して輸出。その結果、中国は国内総生産(GDP)で昨年、米日独に次ぐ世界4位につけ、外貨準備高も1兆5000億ドル(約153兆円)を積み上げた。

 昨年は前年比47・7%増で過去最高の2622億ドルもの貿易黒字を稼ぎ、欧米から貿易不均衡問題で激しく突き上げられている。だが実際は、貿易黒字の60%以上は外資系企業の輸出分で、中国からみれば「人の国でもうけておいて人の国を批判する欧米人」と映る。もはや外資に頼らなくとも、自国企業や内需で経済成長を維持し、世界に影響力を及ぼしうると中国当局は判断。元高誘導を進めた。

 その証拠が、今年1月に実施した外資への優遇税制の事実上の廃止と、労働契約法による従業員への賃金大幅アップ。世界の製造業は、これに「元高」による輸出競争力の悪化が加わるトリプルパンチで、「世界の工場」とのうたい文句が終焉(しゅうえん)を迎えたことを思い知らされた。

 内需が13億人を母数とする国で勃興(ぼっこう)すれば「世界の市場」は現実のものになる。中国は途上国として歴史上初めて、世界経済をリードする立場になる。

 元高誘導は国内で急進行するインフレや、当局の為替介入によるカネ余りの抑制といった直接的な意味もある。85年の「プラザ合意」後の急激な円高を反面教師に、中国は週末のG7や6月の米中戦略経済対話(SED)などの外的環境もにらみつつ、タイミングを計って6元台に突入した。(河崎真澄)

人民元 初の7.1元台突破

2008/03/14 FujiSankei Business i.

 中国人民銀行(中央銀行)は13日、外国為替市場における「人民元」の取引基準値を1ドル=7・097元と発表した。2005年7月21日の約2%の切り上げ後、初の7・1元台突破。ドル安要因に加え、全国人民代表大会(全人代=国会)会期中に対外的なメッセージを発したい中国側の意向を反映した「全人代相場」との見方もある。

 07年は年間で約7%上昇したが、さらに年初来の基準値ベースで2・84%の元高となった。このままのペースなら、来月にも6元台に突入する可能性がある。市場関係者は、「08年通年で10%前後の元上昇を予想しており、再切り上げの可能性は低い」と話している。

 人民銀の周小川総裁は6日の記者会見で、人民元の最近の為替相場について「ある程度、国内の物価上昇を抑制する効果がある」として、一定の元高を容認する姿勢を示していた。市場では、元相場を支える人民銀の大量の元売りドル買い介入が過剰流動性を生んでいるとの指摘がある。

 昨年の中国の貿易黒字は前年比47・7%増の2622億ドル(約26兆4800億円)だった。欧米を中心に、「中国金融当局が管理する元相場が安すぎるのが貿易不均衡の原因」との反発が強まっているが、中国側は元相場の上昇ペースを速めることで批判をかわし、輸出産業へのショックも和らげる戦略のようだ。(河崎真澄)

2月の各銀行人民元建て預金残高、前年比17.22%増の40.49億元に

2008/03/13 NEWSCHINA,jp

 中国人民銀行(中央銀行)が12日に発表したデータによると、2月末時点で各金融機関の人民元建て各種預金残高は前年同期比17.22%増の40兆4900億元で、増加幅は1月末時点を2.10ポイント上回った。

 2月の人民元建て各種預金の増加額は1兆3351億元で、前年同期を8045億元上回った。種類別では、住民預金の増加額は9712億元で、前年同期を 600億元上回り、金融会社以外の企業預金の増加額は1290億元で、前年同期を5019億元上回り(前年同期は3729億元減少)、財政預金の増加額は 1586億元で、前年同期を1662億元上回った(前年同期は76億元減少)。

 2月末時点で、外貨建て各種預金残高は同8.56%減の1538ドルだった。同月の外貨建て各種預金の増加額は16億ドルで、前年同期を10億ドル上回った。(編集DS/A)

中国人民元の大幅な上昇が必要=キミット米財務副長官

2008年03月11日 ロイター

 [ロンドン 11日 ロイター] キミット米財務副長官は11日、米国は人民元の柔軟化を目指した中国の動きを認識しているが、世界の貿易や投資の不均衡を是正するためには人民元をさらに「著しく」上昇させる必要がある、と指摘した。ブルームバーグTVに語った。

同副長官は「人民元は上昇が加速してきたが、中国にとってさらに市場のバリュエーションに近づけることが重要だ」と述べた。

 一方、特に米国債市場など米国のクレジット市場については「(米国債)市場は非常に健全で、各国が投資の分散を決定しても、今後も非常に健全な状態を維持するだろう」と述べ、依然として海外の投資を引きつける上で魅力的だ、との考えを示した。

中国はインフレ抑制が可能、人民元相場はより柔軟に=人民銀行副総裁

2008年03月10日 ロイター

 [パリ 7日 ロイター] 中国人民銀行の易綱副総裁は7日、中国および各国は、国内での相殺要因と世界の物価安定への取り組みを考慮すれば、過度のインフレ水準を回避できる、との認識を示した。

 フランス中銀主催のインフレと金融政策に関する会議で述べた。

 商品価格の上昇と金融緩和によりインフレ圧力は増しているが、各国中銀の健全な政策が物価上昇圧力を抑制する、という。

 同副総裁は「なぜインフレが深刻でないのか?それは金融政策が大幅に進歩し、各国の金融当局がインフレ対策に真剣に取り組んでいるからだ」と述べた。

 中国は自国の物価上昇圧力のコントロールを楽観視しており、世界の物価上昇も「穏やかな」ものになる見通しだという。

 またこの後記者団に対し、中国では穀物の供給も備蓄も豊富で、製造業の稼働率にも余裕があるため「今年、国内インフレを容認できる水準にコントロールできると確認している」と述べた。

 人民元については、中国がこれまで為替制度改革に向けてとった行動を強調。そのうえで、市場の力は人民元相場の決定要因として重みを増すとの考えを示し、着実で安定した方法で柔軟化を進める方針を明らかにした。

人民元の上昇加速 中央銀、インフレ抑制へ容認か

2008年03月07日 asahi.com

 人民元の対ドル相場上昇が加速している。2月末に1ドル=7.1058元(基準値ベース)まで上昇し、6元台に迫りつつある。中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁は6日の記者会見で、人民元上昇が、中国政府の最重要課題であるインフレ抑制に効果があると指摘し、人民銀が上昇加速を容認するとの見方も出ている。

              ◇

 「人民元の適当な上昇や多少の加速はインフレ抑制の助けになる」

 周総裁はこの日、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の会見でこう述べ、人民元高が物価対策の一つになりうるとの認識を示した。

 周総裁は「インフレ抑制は、為替制度改革や為替相場変動の主因にはならない」としながらも「分析としては(インフレ抑制に効くというのは)正しい」と述べた。

 中国では食品を中心とする値上がりが続き、1月の消費者物価指数上昇率は約11年ぶりに7%台を記録。庶民の間には不満の声が広がっている。インフレ抑制は、温家宝(ウェン・チアパオ)首相が5日発表した政府活動報告でも最重要課題に位置付けられた。人民元が上昇すれば、値上がりが続く燃料や飼料などを割安な値段で輸入でき、食品価格などの抑制にもつながる。

 実際、人民元の対ドル相場は今年に入ってさらに上昇ペースを速めている。07年は6.9%上昇だったが、今年は2月末までに2.8%上昇。このペースが今後も続けば08年は約18%上昇になる計算だ。今週は上昇が一服したが、主要通貨に対するドル安の影響もあり、1ドル=7元突破が視野に入りつつある。

 これまで人民銀は、国内輸出産業の競争力維持のため、為替介入で人民元の上昇ペースを抑えてきたが、最近はその姿勢にも変化がみえる。

 「大部分の輸出入企業は基本的に人民元相場の変動に適応しており、変動に耐える能力は予想を明らかに上回っている」

 人民銀が2月22日に発表した07年第4四半期の貨幣政策執行報告はこう指摘。為替予約などでリスクを避ける企業も増えていることなどを挙げ「人民元高によるプレッシャーを一定程度消化している」と結論づけた。

人民元高、影響じわり 日系企業、利益減を懸念

2008/02/09 FujiSankei Business i.

 人民元の対ドル相場上昇を受け、中国で紡績など輸出産業を中心に、元高による製品価格上昇を抑えるため利益を大幅に圧縮せざるを得ないとの懸念が広がり始めた。

 外国為替市場で2007年は年間約7%の元高が進行したが、08年は米国の圧力が強まり約10%の元高も予想される。日系企業の一部でも「安さを求めて中国に移転したのに」などと不満の声が出ている。

 中国紙、上海証券報は最近、ようやく輸出が本格化してきた中国の自動車メーカーにとって元高が打撃となる恐れがあると分析。紡績の業界紙は「紡績業は輸出への依存度が高く、元高が1%進んだ場合、利益が2〜6%も減少する」との試算を紹介した。

 米国が景気減速懸念で、中国に元高の加速を求めるのは必至。現在の為替レートは1ドル=7・1元台だが、年内に6・5元台まで元高が進むとの見方が有力だ。このため中国では、ユーロ高の欧州や好景気でルーブル高のロシア向けの輸出を強化すべきだと、地元専門家は指摘する。

 中国に進出した日系企業には「元高で海外から部品や材料を安く調達できる利点もある。元高の影響はそれほどない」(ソニー)との声もある。

 ただ、技術移転により中国でほとんどの部品を調達する企業も増加。国内で部品を調達するため、元高の恩恵を受けられない。ある日系の事務機器メーカーのトップは「せっかくコスト削減の努力をしても元高で相殺されてしまう」と嘆いた。(上海 共同)

人民元、07年は約7%上昇 米の対中貿易赤字が背景

2007/12/31 FujiSankei Business i.

 中国の外国為替市場が先週末、2007年の取引を終え、人民元の対ドル相場は、この1年間で7%近く上昇した。米国が巨額の対中貿易赤字を背景に元高の加速を求めたのを背景に、前年までと比べ大幅な元高進行となった。

 中国の通貨当局が大量の元売りドル買い介入を続けていることで、人民元は中国経済の実力と見合わない安い相場で取引されているという見方が根強い。市場関係者は、08年は元高が加速する可能性が高いと予測している。

 中国は05年7月に元切り上げを実施し、1ドル=8・11元とした。その後はじりじりと元高が進み、06年は年間で3%余りの元高だった。07年は約7・8元で取引が始まり、今年最後となった28日の相場は約7・3元だった。

 不当に割安な相場で輸出を拡大しているという不満が米国を中心に強いが、中国国内でも、通貨当局が大量の元売りドル買いを続けることにより資金のだぶつきが発生。上海株が1年で約2倍に上昇するなど経済はバブル状態が続く。

 中国政府は急速な元高が輸出産業の打撃となることを懸念する一方で、元高に誘導する必要性を認識しているとみられる。上海の三菱東京UFJ銀行の田中利朗為替資金課長は「08年は7%以上のペースで元高が進行するのではないか」と語った。(上海 共同)

中国人民銀行、国外機構による人民元債発行を引き続き推進

2007/12/14 News China

 中国人民銀行(中央銀行)の呉暁?副頭取は13日、香港金融管理局などの主催により北京で行われた「財資市場サミット」の席上、「中国の債券市場の国外への開放のテンポを絶えず加速し、国際的な影響力を次第に大きくしていく」と語った。

 同氏は「総合的な経験に基づいて、当行および関連部門は積極的な施策を採用し、国外組織が中国国内で人民元債権を発行することをさらに一歩推し進めていく。例えば、国際金融会社(IFC)とアジア開発銀行(ADB)はそれぞれ、2005年に銀行間の債券市場で20億元分の人民元債権を発行する承認を得ており、現在までにIFCは20億元分の人民元債権を、ADBは10億元分を発行し終えている」と具体例を語った。

 さらに同氏は「IFCやADBなどの国際開発機構が中国国内で人民元債権を発行することは、中国の金融市場の発展と対外開放のどちらにも重要な意義を持っている。また中国自信が世界の金融市場における影響力を高めることに有利である」と国外機構による人民元債権発行の利点について語った。(編集AH/K)

人民元上昇、年率10%強に加速…対米配慮か国内事情か

2007/12/07 FujiSankei Business i.

 中国の通貨人民元の対ドル相場の上昇幅が今年11月は0・94%となり、単月ベースでは過去最速を記録した。年率では10%を超える上昇。ただ、中国が元高加速に踏み込んだのか、今月12日の第3回米中戦略経済対話を前にした一時的な「パフォーマンス」なのかは、意見が分かれている。

 人民元相場は2005年7月に、市場需給をある程度反映する「管理フロート制」に移行。対ドルの上昇幅は、06年半ばまで年率で3%で推移し、今年は同5%のペースに若干加速した。

 ただ、第2回米中戦略対話が開かれた5月は、1日の許容変動幅を拡大し、ペースも同8%台半ばに急上昇した。これについては「対中強硬姿勢の米国に配慮した手土産」(邦銀筋)との見方が有力。実際、6月からは同5〜6%の上昇率に戻った。最近の上昇加速も、5月と同様の対米配慮の可能性がある。

 一方で、中国では、急激な元高阻止のためのドル買い・元売り市場介入を背景に、市中に出回る余剰資金(過剰流動性)が拡大。株価の急騰、大都市の不動産価格の上昇など、景気過熱につながる資産バブルのリスクが高まっている。11月の上昇加速は、こうした問題に対処するため、中国人民銀行(中央銀行)がやや速い元高を許容した可能性もある。

 ただ、「10%程度の変動は日本円・ドルなら1カ月で起きる」(国際金融筋)。年率で10%前後のスピードでは、米側の不満は緩和されないとの見方もあり、年末から年明けにかけ、人民銀行がどう動くか注目される。(北京 時事)

上海市場、切り上げ以降初の1ドル=7・3元台に

2007年11月23日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【北京=寺村暁人】23日の中国・上海外国為替市場の人民元相場は、中国外国為替取引センターが取引開始直前に定める基準値が、前日終値に比べ0・0153元の元高・ドル安となる1ドル=7・3992元に設定され、05年の人民元切り上げ以降、初めて7・3元台となった。

 この日の銀行間取引では一時、対ドルで史上最高値となる1ドル=7・3912元まで値を上げた。同日の終値は7・4060元。

 人民元相場は、基準値と銀行間取引の相場がともに10月24日に初めて7・4元台となり、上昇ペースが加速した。市場では、高い経済成長が続く、中国国内のインフレを抑えるため、当局が人民元高を誘導しているという見方が強い。

人民元の上昇幅不十分 中国統計局長、元高促す

2007年11月23日 中国新聞ニュース

 【北京23日共同】23日付の中国紙、第一財経日報によると、中国国家統計局の謝伏瞻局長は22日の講演で、景気過熱に強い警戒感を示した上で「人民元の上昇幅が不十分だ」と指摘、過熱抑制のためにも元相場を一段と弾力化し元高を促すべきだと訴えた。

 元相場の弾力化は温家宝首相や周小川人民銀行(中央銀行)総裁らも表明しているが、いずれも「漸進的」に取り組むとして急速な元高には否定的。しかし、謝局長は過熱抑制のため「当面の最も根本的な措置」として相場の弾力化を挙げ、元高を促した。

 謝局長は、今年の中国の経済成長率を1−9月までと同水準の11・5%と予測。さらに「中国経済は10%成長が正常なスピード。9−11%の範囲なら受け入れられるが、それ以上ならやや高すぎる」と指摘した。

 また、中国の生産力と競争力に比べ「元の上昇幅が不十分」とし、このため輸出急増と高水準の外資の対中投資が続き、過剰流動性や過大投資、物価上昇を招くことになると強調した。

南ア銀に20%出資 中国工商銀

2007/10/27 FujiSankei Business i.

 中国最大の商業銀行である中国工商銀行は26日までに、アフリカの銀行最大手、スタンダード・バンク・グループ(南アフリカ)の株式20%を54億6000万ドル(約6200億円)で取得し、最大の株主になると発表した。

 中国企業による海外投資としては過去最大。資源獲得を視野に豊富な資金力と政府の支援を受けた大手国有企業の「走出去(海外進出)」が今後、活発になりそうだ。

 中国とアフリカの貿易は昨年、40%も増加し、アフリカにとって中国は3番目の貿易相手となった。中国政府は、資源獲得の思惑もありアフリカ外交を重視している。(北京 時事)

1ドル=7.5元を突破 中国人民銀行が基準値発表

2007.10.24 MSN産経新聞

 【北京=福島香織】中国人民銀行(中央銀行)は24日、同日の人民元取引の基準値を1ドル=7.4938元にすると発表した。元取引はドルに対し1日の変動幅が基準値の上下0.5%と定められている。7.5元突破は2005年7月の元切り上げ後初めてとなる。

 24日の上海外国為替市場の人民元相場の終値は7.4926元をつけ最高値を更新した。

 先日閉幕した第17回共産党大会に伴う会見で周小川・人民銀行総裁は「人民元は上昇方向になる」と話した経緯があり、中国共産党大会が終わったことが元高誘導の背景とみられる。

 9月初めは「年末までに1ドル=7.5元にいくか」といった観測が経済紙をにぎわしていた。22日のワシントンでの世界銀行・国際通貨基金(IMF)合同年次総会では人民元が実勢よりも割安なことが名指しで批判され、こうした外圧にも柔軟性を示す狙いがあった。

 ただ、中国では人民元の上昇は農村経済、都市部の失業率に深刻な影響を与えるとして慎重に管理されてきた。どの程度の人民元上昇スピードに農村経済や中小企業が耐えられるのかは、いまだ意見の分かれるところで、民間エコノミストの仲大軍・北京大軍経済観測センター主任は「人民元上昇を加速させるなら、社会保障システムを整備し失業対策を練らねばならない」と話している。

「人民元問題は保護貿易の口実」中国人民銀が米批判

2007/8/10 FujiSankei Business i.

 中国人民銀行(中央銀行)は今年第2四半期の「金融政策執行報告」の中で、「人民元問題は、中国に対する保護貿易措置を講じようとする一部国家の口実になっている」と指摘し、為替法案などで対中圧力を強める米国を暗に批判した。

 米国側は巨額の対中貿易赤字を背景に、人民元相場の一段の切り上げを要求。これについて、報告は「為替調整は対外不均衡の解決に一定の効果はある」としながらも、「根本的でも唯一の政策でもない」と反論した。

 報告は2005年7月の人民元切り上げと「管理フロート制」移行からの2年間を回顧し「(相場の安定した上昇により)経済構造の調整を促進し、企業、金融機関のリスク管理能力を高めた」と評価した。(北京 時事)

人民元5−10%上昇で350万人失業 中国英字紙報道

2007/06/04 FujiSankei Business i.

 中国英字紙チャイナ・デーリーによると、中国労働社会保障省はこのほどまとめた報告の中で、人民元相場が5−10%上昇すれば、非農業部門で約350万人が失業し、1000万人の農民が影響を受けるとの見通しを示した。

 非農業部門では、輸出依存度の高い繊維、衣料品、製靴、玩具、オートバイの5業種への打撃が特に大きいと指摘した。これら業種の雇用総数は2400万人(2004年)に上る。

 農業では、元高による輸入価格の低下で、大豆、綿花、冬小麦、トウモロコシの農家が影響を受けるとしている。

 人民元の対ドル相場は、05年7月の切り上げ以降、これまでに約6%上昇した。報告が「5−10%上昇」する期間をどの程度に想定しているのかは不明。(北京 時事)

変動幅を0・5%に拡大 中国、元相場弾力化を促す

2007年05月18日 中国新聞ニュース

 【北京18日共同】中国人民銀行(中央銀行)は18日、人民元取引の柔軟性を促すため、米ドルに対する変動幅をこれまでの基準値に対し一日上下0・3%から0・5%に拡大すると発表した。週明け21日から実施する。

 2005年7月の人民元2%切り上げ以来の大幅な制度改革。人民銀は、貸出・預金金利や預金準備率の引き上げも同時に発表し、金融引き締めの姿勢を打ち出した。米国と中国は22日から、ワシントンで米中戦略経済対話を開催する予定で、相場の弾力化を要求している米国に対し改革をアピールする狙いがある。

 国際的に期待が高かった人民元相場の弾力化が進み、元高のペースも速まりそうだ。ドル以外の通貨に対する変動幅はこれまでと同水準を維持。

 人民元は、05年の切り上げ後、人民銀が毎日発表する基準値に対し、上下0・3%の幅で変動する管理変動相場に移行したが、実際の変動幅は元高では今年2月に記録した0・2%強が最高だった。

人民元、対ドル7・7元突破、切り上げ後初

2007/05/09 FujiSankei Business i.

 中国人民銀行(中央銀行)は8日、外国為替市場における人民元の対米ドル基準値を1ドル=7・6951元に設定した。2005年7月21日の約2%切り上げ以降、上昇率は約5%となり、基準値で初めて7・7元台を突破した。

 最近の元の上昇ピッチの加速について、在北京の金融関係者は、今月下旬にワシントンで開催される第2回米中経済戦略対話を前に、米側の批判を緩和しようとする動きとみている。

 ポールソン米財務長官は今月2日、「中国は好景気を利用し人民元に関する行動を加速するべきだ」と述べ、さらなる元高への期待を示していた。市場には、5月の元上昇率は4月の2倍程度に加速するとの観測も流れているが、関係者は「年間で5%以内の上昇率なら中国経済に対する直接的影響はない」と話している。(北京 福島香織)

預金準備率0.5P引き上げ:深刻な過剰流動性資金

2007/04/29 中国情報局

 中国が今年第1四半期(1−3月)の経済成長率が11.1%となったことを発表して10日目となる29日、中国人民銀行は5月15日から預金準備率0.5ポイントを引き上げると発表した。経済学者は、「人民銀行にとって、預金準備率の引き上げは現在のところ最もやりやすいコントロール方法」と分析、今後もこのツールを生かした金融引き締めを進めていく可能性が高いとみている。

 経済学者の王小広氏は、「現在、資金の過剰流動性問題は更に深刻化している。今後、銀行資金の流動性を管理し、貸付の合理的成長を抑制していくマクロコントロールは続いていくものとみられる」と指摘する。

 今回発表された預金準備率の引き上げは、人民銀行にとって今年4回目となる金融市場コントロールの施策。また、2006年からカウントすれば、7回目の預金準備率の引き上げ。今回の引き上げで、預金準備率は11%となる。

 4月18日に開催された国務院常務会議(温家宝首相が主催)でも過剰流動性資金が問題視されたばかり。政府トップでも懸念事項として認識されている。王氏は、「中国の現在の貿易黒字の急拡大や投資及び貸付の急増など、いずれも資金の過剰流動性の問題と関連している」と指摘する。

 北京大学国民経済研究センターの蔡志洲研究員は、「先ごろ発表された今年第1四半期の経済統計データで、インフレ懸念が拡大している。株式市場も高騰を続けており、流動性過剰資金の問題はすでに看過できないところまできている。今後も人民銀行はじめ、政府は施策を講じていくことになるだろう」と語っている。(編集担当:鈴木義純)

中国が0・27%利上げ 7カ月ぶり、過熱投資抑制

2007年03月17日 中国新聞ニュース

 【北京17日共同】中国人民銀行(中央銀行)は17日、金融機関の貸出金利と預金金利を18日から1年物でそれぞれ0・27%引き上げると発表した。過熱気味の不動産投資や物価上昇を抑えるのが狙い。利上げは昨年8月以来、7カ月ぶり。金融機関の貸出金利は6・39%に、預金金利は2・79%に上がる。

 中国は人民元相場の上昇を避けるため巨額のドル買い介入を続けており、国内で人民元がだぶつき気味になっている。これが融資増加につながり、都市部の不動産価格上昇を招くなど副作用も大きくなっている。

 2月のマネーサプライ(M2)は前年同月比17・8%増と高い伸びで、温家宝首相も16日の全国人民代表大会(全人代=国会)閉幕後の記者会見で過剰流動性の問題に懸念を示した。

人民元が最高値更新 一時1ドル7.7353元

2007/03/08 The Sankei Simbun WEB-site

 8日の上海外国為替市場の人民元相場は、大手金融機関の相対取引で一時、1ドル=7.7353元をつけ、2005年7月の切り上げ後の最高値を更新した。終値は前日と同水準の7.7400元。(共同)

人民元が最高値更新 香港ドルの上限越える

2007年02月07日 中国新聞ニュース

 【香港7日共同】7日の上海外国為替市場の人民元相場は、大手金融機関の相対取引で一時、1ドル=7・7470元まで上昇し、2005年7月の切り上げ後の最高値を更新。同7・7480元で大方の取引を終え、終値でも最高値を更新した。

 1ドル=7・75−85香港ドルの幅で米ドルに連動している香港ドルの変動上限も初めて越えた。

 9日からドイツで開かれる先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)を前に、米国などから人民元相場の改革加速を求める声が強まっていることから、中国金融当局が人民元相場の上昇を容認しているとみられる。

 香港では人民元の影響が強まっているが、香港ドルに比べ、元は多くの規制があり、香港経済に直ちに大きな影響はないとみられている。

中国の外貨準備1兆663億ドル 06年末、30%増で首位

2007年01月15日 中国新聞ニュース

 【北京15日共同】中国人民銀行(中央銀行)は15日、2006年12月末の中国の外貨準備が05年末比30・2%増の1兆663億4400万ドル(約128兆円)に達したことを明らかにした。

 中国の外貨準備は貿易黒字の膨張などを受けて急増傾向が続いており、昨年2月末で日本を抜き世界一になり、10月末で1兆ドルを超えた。

 日本は12月末時点で8953億2000万ドルで、中国が大きく引き離している。06年の年間増加額は2473億ドルで、05年の2089億ドルを上回った。

 人民銀は急激な人民元高を防ぐために、外為市場で大量の元売り・ドル買いを行っている。これが外貨準備を膨張させるとともに、国内の通貨供給量の増加圧力になり、金融政策にも影響している。曽培炎副首相は昨年末、外貨準備を石油や希少金属など資源備蓄にも活用する考えを示しており「有効活用」を模索し始めている。

人民元が最高値更新 一時1ドル7.8180元

2006/12/14 The Sankei Shimbun

 14日の上海外国為替市場の人民元相場は、大手金融機関の相対取引でドルに対し一時、1ドル=7.8180元まで上昇し昨年7月の切り上げ後の最高値を更新した。

 7.8185元で大方の取引を終え、終値としての最高値も更新した。前日終値は7.8265元だった。(共同)

人民元、対米ドルで最高値更新 香港ドルと等価に

2006/11/28 The Sankei Shimbun

 【北京=共同】27日の上海外国為替市場の人民元相場はドルに対して一時、1ドル=7.8410元まで上昇し、昨年7月の切り上げ後の最高値を更新した。7.85元の突破は初めてで、1ドル=7.75〜85香港ドルの幅で米ドルに連動している香港ドルとほぼ等価になった。

 香港ドルに比べ人民元には多くの規制があり、香港経済に直ちに大きな影響はないとみられるが、香港の銀行などでの顧客向けレートはすでに人民元の方が高い。この傾向が続けば、長期的には香港ドルの地位低下につながる可能性もある。

 この日、人民元の大手金融機関の相対取引は1ドル=7.8436元で終え、終値も最高値となった。前週末の終値は7.8525元だった。

 香港ドルは1997年の返還以降も人民元よりやや高い交換レートを維持してきたが、人民元が切り上げ以降じりじりと値を上げた結果、対米ドル相場で肩を並べるのは時間の問題とみられていた。

 香港の中央銀行に当たる金融管理局は当面、現行の米ドル連動制を維持する考えを示している。

外資に人民元業務を開放へ

2006/11/17 FujiSankei Business i.

 中国国務院は外資系金融機関に対し条件付きで人民元業務を開放することに決めた「外資銀行管理条例」公布した。12月11日から施行される。国務院法制弁公室の宋大涵・副主任は16日の記者会見で「外資銀行に国民待遇を与える」と意義をのべ、2001年12月の中国の世界貿易機関(WTO)加盟時の公約であった「5年内の金融市場開放」を果たしたとの認識を示した。

 外資銀行の人民元業務はこれまで、外国企業や外国人向け、認可された中国企業に対して認められてきたが、今後は中国人個人向け業務も1口100万元(約1500万円)の定期預金に限り開放される。ただ、全額出資か合弁で最低資本金10億元の現地法人設立が条件となる。現地法人設立には、中国業務3年以上、2年連続の黒字などが条件となる。

 とりあえずの市場開放だが、在中邦銀筋によれば、現地法人化という条件により、大口融資を行う際に、これまでは母国本店の資産が大口融資比率の分母となっていたのにかわり、現地法人が本店扱いとなるため、大口融資業務が以前より難しくなる可能性もあるとしている。

 また個人預金市場に進出するには支店やATM(現金自動預払機)整備など膨大な投資が必要で、条例で施行で外銀進出が加速するかどうかは、未知数のようだ。(北京 福島香織)

人民元の柔軟化要請へ G7、協調確認へ

2006/09/15 The Sankei Shimbun

 先進七カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)がシンガポールで16日、開幕する。中国に人民元の一層の柔軟化を求めるほか、原油高、欧州のインフレ懸念などが世界経済の懸念材料になっていることを確認、G7が協調して対処し持続的成長を目指すことなどを盛り込んだ声明を同日夕に採択して閉幕する。

 今回のG7では不均衡の是正が重要な議題となる。参加国は巨額の対米黒字を抱える中国を念頭に他国にも協力を要請する。七月の米貿易赤字は過去最高を更新しており、人民元相場の一段の柔軟化と新興市場国の内需拡大をめぐって意見交換する。

 外国為替では、一時、1ユーロ=150円超となったユーロ高などが議論される見通しだが、前回四月のG7に引き続き、人民元の一層の柔軟化などを求めた前回の声明を基本的に踏襲する見通しだ。

 依然として高止まりしている原油価格では、声明を通じて、旺盛な需要に対応するため産油国に生産面などで投資促進を求める。(共同)

元切り上げ要求手控え 米報道官「幅広い接触」強調

2006/09/13 FujiSankei Business i.

 米財務省報道官は11日の記者会見で、中国の人民元相場について、「米中間の幅広い、複雑な経済問題の中の一つにすぎない」との見方を示し、中国側に直ちに大幅切り上げを求めることはしない姿勢を強調した。

 7月に就任したポールソン米財務長官は、16日にシンガポールで開かれる先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)に出席の後、中国を訪問する予定だが、人民元問題を前面に押し出して、中国側に切り上げを要求することは避けるとみられる。

 ただ米議会では、対中制裁を含む法案を9月中に採決しようという動きも出ており、ポールソン長官は対中政策で議会の理解を得る必要がある。同長官は13日にワシントンで、国際経済に関する演説を予定しており、この中で対中問題の基本姿勢を明らかにするとみられる。

 同報道官は、「米中の経済関係は世界でも最重要」と位置付けるとともに、「米中間には(為替問題のほかに)金融市場開放、金融監督・規制、知的財産権など、広範囲で複雑な問題がある」と指摘。「米政府はこれらを協議するため幅広い接触を行っている」と強調した。

 一方、国際通貨基金(IMF)理事会で、中国の出資比率引き上げが承認されたことに関しては、「中国が(国際機関などで)リーダーシップを発揮することを期待する」と述べた。(ワシントン=時事)

人民元、切り上げの余地あり 強含み1ドル7.95元突破

2006/09/06 FujiSankei Business i.

 中国の通貨、人民元の為替レートが4日、1ドル=7・95元の壁を突破した。国際外国為替市場でのドルの弱含みな展開が要因の1つとなっているもようだが、変動相場制への移行後の人民元の上昇幅はそれほど大きなものではなく、切り上げの余地はまだ十分にありそうだ。(上原隆)

 《続く上昇基調》

 中国人民銀行(中央銀行)、中国外国為替取引センターが発表した4日の人民元の為替レートの基準値(中心レート)は、1ドル=7・9499元となり、初めて7・95元を突破し、過去最高値を記録した。5日は7・9425元まで上昇した。

 これを受けて、新華社電や、経済日報(電子版)など中国メディアは最近の人民元の為替レートをめぐる動きを詳しく報道している。

 昨年7月21日に2・1%の切り上げを実施、米ドルに連動した固定相場制から管理変動相場制に移行して以来、人民元の為替レートはゆっくりと上昇基調を続けている。

 しかし、巨額の対中貿易赤字を抱える米国の再切り上げ要求は依然として強いものがある。

 衣料品や雑貨をはじめとする大量の中国製品が米国市場に流入することで、米国労働者の雇用機会が失われているほか、人民元の為替相場が安く設定されていることで、中国政府が事実上の輸出補助金を与えている−というのが米国政府の主張だ。

 《辛辣な批判》

 過去1年間の累計切り上げ幅は4%程度で、実質で2%という結果は、米国政府や業界が納得できるものではない。

 上海証券報は、「為替レートの変更では、米国の対中貿易赤字や失業問題を解決できない」と指摘。米国政府の切り上げ要求は「空想に過ぎない」と辛辣(しんらつ)な批判を展開している。

 極端な人民元の切り上げを追い求めれば、中国経済の構造調整や内需拡大を阻害し、国際経済にもマイナスの影響を及ぼすと強調している。

 《3つの要因》

 人民元がこのところ上昇基調を続ける要因について、中国証券報は3つの要因を挙げている。

 第1は、最近発表された米国の主要経済統計が市場の予想を下回る結果となったほか、米国が利上げを継続するかどうか見通せないため、外為市場でドルが弱含みで推移している。

 第2は、人民銀の政策が利上げ後、為替レートに重点を置くように変化しており、人民元の柔軟性を高める方向に向かっている。

 第3は、中国の貿易黒字が今年7月単月で146億ドルに達し、6月の145億ドルを上回って過去最高となったことが、人民元の先行きにプラス材料として働いている−の3点だ。

 《難しい予測》

 国内のアナリストは、人民元の上昇圧力を緩和するために、人民銀による外国為替と人民元の決済を強制する制度の廃止を提言している。

 中国企業、個人の人民元上昇への期待は高く、外貨を手に入れると、すぐ元に交換する傾向が根強いという。

 強制をやめ、企業などが手元に保有する外貨を増やすことで、人民元の上昇圧力がやわらぎ、国内を流通する通貨の過剰流動性の問題も解決できるとしている。

 今後は、外為取引のリスクを回避するシステムを備えた外国為替市場を整えることが課題で、国家外国為替管理局も具体的な市場の整備に向けた政策研究を行っている。

 中国政府は、人民元の為替相場形成を市場に委ね、「突然の再切り上げなどはない」という立場をとっている。

 年内にどこまで為替レートが変動するか、予測は難しいのが現状だ。

人民元、1ドル7元台 昨年7月の切り上げ後初

2006/05/15 The Sankei Shimbun

 【北京=福島香織】中国の人民元が15日の上海外国為替市場の取引で一時1ドル=7.9965元をつけ、昨年7月下旬の切り上げ以降初めて7元台に突入した。中国人民銀行(中央銀行)が毎朝発表する取引の基準値を1ドル=7.9982元に設定し、その後の市場取引でも元高が進んだ。上海外貨取引センターの取引終了時は1ドル=7.9976元だった。

 1ドル=7元台に入るのは、1994四年に人民元が1ドル=5.8元から8.7元に切り下げられて以来初めて。昨年7月下旬に約2%切り上げられて以降、1.4%元高が進んだことになる。

 人民銀行は切り上げ後も為替介入を繰り返し急激な上昇を抑えていたが、3月に「変動幅の弾力性を増加させる」方針を打ち出し、介入をやや控えはじめていた。

 背景には、4月下旬にワシントンで開かれた先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)で人民元の柔軟化を強く求められたことがある。中国自身、為替介入の繰り返しなどで外貨準備高が世界一規模に膨らんだうえ、今年1月段階で2000億ドル以上の米国債を保有し、人民元改革の遅れは中国にとってもマイナスになるとの認識が専門家の間で強まっていた。

 中国系香港紙『大公報』は、年末までに1ドル=7.5元台に到達するとの米投資銀行の予測を紹介。人民銀行関係者はかねてから「1年に3%以内の上昇率なら許容できる」との見方を示しており、今後、この範囲内で緩やかな上昇を誘導するとみられている。

 基準値は夜間の外為取引の結果を反映させて毎営業日の取引前に人民銀行が設定している。

中国抗議で撤回 国際会計事務所「不良債権100兆円」報告

2006/05/15 The Sankei Shimbun

 【ワシントン=山本秀也】国際的な大手会計事務所「アーンスト・アンド・ヤング」は、同社が今月初めに公表した中国の不良債権に関する報告を「撤回する」と発表した。報告は中国の銀行セクターが抱える不良債権を「9110億ドル(約100兆円)」とする大胆な分析を行い、金融関係者の注目を集めていたが、中国当局の猛烈な抗議を受け、ひざを屈した形だ。

 同社が12日に発表した声明は、問題となった今月3日付の報告について、「通常の内部的なチェックと承認を経ないまま公表された。誤った内容であり、撤回する」と説明。そのうえで、中国の銀行セクターが抱える不良債権を「約1330億ドル(約14兆6000億円)」とした中国側の公式発表について、「損失に関する客観的な根拠に基づく会計基準と、監査のもとで算定された」と全面的なお墨付きを与えた。

 声明は末尾でも「誤った報告が発表されたことをおわびし、報告に記載された誤解を招く見解を深く遺憾とする」と繰り返し、"白旗"を掲げた。

 巨額な不良債権を指摘した同社の報告に対して、中国の中央銀行にあたる中国人民銀行は8日、「中国の銀行業界の資産状況を激しく歪曲(わいきょく)し、多くの金融機関の会計監査に符合しない荒唐無稽(むけい)な内容」とする激しい批判声明を発表していた。

 アーンスト・アンド・ヤングは、中国方面では香港、マカオのほか、北京など本土の7都市で事業を展開している。中国当局と同社やりとりは公表されていないが、当初の分析を貫いた場合、同社の中国業務に重大な影響が出ていた可能性は否定できない。

中国“バブル”抑制へ貸出金利0.27%引き上げ

2006/04/27 The Sankei Shimbun

 中国人民銀行(中央銀行)は27日、金融機関から企業などへの貸出金利を28日から1年物で0.27%引き上げ、年5.85%とすると発表した。金利引き上げは2004年10月以来、1年半ぶり。預金金利は据え置いた。中国経済は高い成長を続けており、金融を引き締めて景気の過熱を抑える狙いがある。

 中国のことし1−3月の国内総生産(GDP)成長率は前年同期比10.2%に達した。特に固定資産投資は27.7%と急激な伸びを示した。(共同)

世界的金利上昇への対応が焦点 今週末からG7

2006/04/16 The Sankei Shimbun

 先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)が今週末、米国のワシントンで開かれる。原油高によるインフレ懸念を背景に米国、欧州、日本が同時に金融引き締め局面に入り、世界経済の安定に向けた財政・金融政策のかじ取りが議論される。また、人民元の改革では、G7前に開かれる米中首脳会談の結果も影響しそうだ。(本田誠)

≪人民元改革も引き続き協議≫

 G7の最大の焦点は、日米欧で同時に上昇する長期金利への対応だ。

 原油高騰などに伴うインフレ懸念を背景に、日米欧の金融当局がそろって金利の引き上げに動いており、長期金利の一段の上昇をもたらしている。今月8−9日にウィーンで開かれたアジア欧州会議(ASEM)の議長声明でも、「予想以上に早い金融市場の引き締め」との表現で、金利上昇への警戒感を表した。

 金利上昇は、新興国に向かった世界の投資資金を先進国に還流させ、新興国の資金調達に影響を及ぼす懸念があるなど世界経済の不安定要因となる可能性がある。先進各国が足並みをそろえ、新興国に配慮した対応に踏み込むか注目される。

 一方、人民元改革も引き続き主要なテーマだ。

 20日に訪米する中国の胡錦濤国家主席とブッシュ米大統領との会談では、巨額の対中貿易赤字にいらだつ議会から人民元の切り上げ圧力を受けるブッシュ大統領に、胡主席が改革の方向性をどう説明するかが焦点。

 中国は首脳会談前に着実な元高誘導を行い、人民元相場の柔軟性を演出することで、米側の圧力をかわそうとしているが、11月の中間選挙を控えて米政府も制裁措置をちらつかせ、中国に一層の柔軟化を迫る構え。

 これに対し中国は、人民元の大幅切り上げが自国経済を支える輸出減速につながるために及び腰で、中国は改革の「漸進性」(温家宝首相)を訴えて理解を求めるとみられる。G7では首脳会談の結果を踏まえ、人民元問題の取り扱いを協議することになりそうだ。

 このほか、高騰を続ける原油価格への対策も引き続き重要議題になるとみられるが、精製能力を高める投資の重要性を強調した昨年のG7以上の対応は出ないもよう。むしろ世界経済の潜在的なリスクとされる米国の財政と貿易収支の「双子の赤字」問題について、各国がどう認識を示すかも注目される。

 巨額の赤字を垂れ流す米国への資本流入に異変が生じれば、ドルが急落して世界経済に甚大な影響が及ぶだけに、G7でも建設的な議論を行うことが期待される。

米、人民元改革を重ねて要請 大統領経済報告

2006/02/14 The Sankei Shimbun

 ブッシュ米大統領は13日、2006年版の大統領経済報告を議会に提出した。一般教書演説でインドとともに「新たな競争相手」に位置付けた中国に対し、人民元制度の改革を重ねて要請、知的所有権の侵害問題でも一層の対策を促した。米景気の現状では「回復から持続的拡大局面に移行している」として、底堅い成長が続くとの楽観的な見通しを示した。

 報告は、高水準で推移する海外からの対米投資がカネの流れを偏らせていると指摘。制度改革で人民元相場が上昇すれば、中国では輸出依存でなく消費主導による成長が見込まれ、国際的な不均衡是正にもつながるとした。中国の外貨準備高が06年末までに「9000億―1兆ドル(約117兆円)に膨らむかもしれない」との見方も示した。日本に対しても「政治的に困難な」構造改革を通じて民間投資を活発にすることを求めた。

 知的所有権の侵害では、中国で流通するCDやDVDの「少なくとも90%」が海賊版との業界試算を紹介、取り締まり強化を迫った。

 06年の実質国内総生産(GDP)の成長率は3.4%、失業率は5.0%と予測。09年にかけて成長率は3.1%まで緩やかに減速するものの、堅調な消費や輸出に支えられて潜在成長率程度の伸びを確保するとした。(共同)

05年の中国、実質9.9%成長 GDP、仏抜き世界5位か

2006/01/25 The Sankei Shimbun

 中国国家統計局は25日、2005年の国内総生産(GDP)実質成長率が前年比9.9%になったと発表した。04年より0.2ポイントの小幅減速で、3年ぶりの1けた台となったが、政府目標の8%成長を大幅に上回る依然高い伸び。

 統計局は昨年末、統計の見直しに伴い04年のGDP総額がイタリアを抜き世界6位だったと発表したが、05年はドル換算でフランスを抜き5位に上昇、4位の英国とほぼ並ぶ規模になった可能性もある。

 05年のGDP総額は18兆2321億元(約260兆円)、1人当たりGDPは1700ドル(約20万円)。10―12月期の実質成長率は前年同期比9.9%。

 昨年7月の約2%の人民元切り上げにもかかわらず、過去の投資で積み上がった過剰生産の製品を国内で消化しきれず、輸出にあふれ出る構造は一段と深刻化している。今後も安定成長に向けた軟着陸が課題だが、貧富の格差による消費の層の薄さも背景にあり、短期間の解決は望めないのが実情だ。

 統計局の李徳水局長は25日の記者会見で、鉄鋼や自動車の過剰生産に強い懸念を表明した。

 昨年の固定資産投資は鉄鋼などを中心に増加し、前年比25.7%増と高い伸び。個人消費の動向を示す小売総額は12.9%増で、投資の約半分の伸びだった。消費者物価上昇率は1.8%。

 輸出は28.4%増の7620億ドル、輸入は17.6%増の6601億2000万ドルで、貿易黒字は過去最高の1018億8000万ドルに達した。(共同)

北京市、一人当たりGDP63万円 3次産業がけん引

2006/01/22 The Sankei Shimbun

 北京市政府は22日、2005年の同市の1人当たり域内総生産(GDP)が5457ドル(約63万円)に達したと発表した。

 中国国家統計局が昨年暮れに全国のGDPを見直したのに伴い、北京市は04年の1人当たりGDPを3割増の4970ドルに上方修正していた。05年はさらに増加、2000年の約2倍になった。

 05年の市全体のGDPは前年比11.1%増の6814億5000万元(約9兆9300億円)。GDPに占める第3次産業の比率は先進国並みの68%に達し、サービス業が成長をけん引していることを示した。特に不動産業は過去5年間に年平均約20%伸び、05年の同市の固定資産投資の54%を占めた。(共同)

人民元が最高値更新 切り上げ以来の大幅上昇

2006/01/21 The Sankei Shimbun

 20日の上海外貨取引センターの人民元相場は、大幅続伸した。トレーダーによると、取引終了時の相場は1ドル=8.0601元(前日は8.0673元)で、昨年7月の切り上げ以来の最高値を更新した。1日の上昇幅も切り上げ以来最大。

 国内の短期金利上昇を背景に元買いが優勢だった。この日は1ドル=8.0601―0639元で取引された。銀行が外為取引を活発化させており、今後はこうした大幅な変動が日常的になる、との声も聞かれた。(共同)

中国外貨準備、初の8000億ドル 今年中に日本超え世界一へ

2006/01/15 The Sankei Shimbun

 中国人民銀行(中央銀行)が15日発表した2005年の金融情勢の回顧によると、同年12月末の中国の外貨準備は前年比34.3%増の8189億ドル(約93兆9400億円)に達し、初めて8000億ドルを超えた。01年からの5年間で4倍近くに急増した。

 日本は8469億ドルで、世界一を維持したが、中国は年間で過去最高の1000億ドルに達した貿易黒字や、海外からの堅調な投資などが全体を押し上げており、06年中に日本を上回る可能性が高い。

 外貨準備は04年末に比べ年間で約2089億ドル増加。人民銀は国際収支の詳しい内訳は発表していないが、増加額は05年の貿易黒字約1018億ドルと直接投資実行額約600億ドルの合計を上回った。人民元高を狙った投機資金の流入もある程度影響したとみられる。

 ただ、年間の伸び率は04年末の51%増より鈍化、昨年7月に人民元を約2%切り上げて以降、人民銀が海外からの投機資金の流入規制を強化していることもあり、資金流入が鈍ってきた可能性もある。

 中国政府系シンクタンクの国家情報センターは昨年11月、高水準の貿易黒字が続くことから、06年末の中国の外貨準備は9500億ドルに達するとの見通しを示している。(共同)

中国の貿易黒字、初の1000億ドル 世界1位も

2006/01/11 The Sankei Shimbun

 2005年の中国の貿易黒字は1018億8000万ドル(約11兆6650億円)に達し、初めて1000億ドルを突破する見通しとなった。04年の約320億ドルの3倍以上の水準。AP通信が11日、中国税関総署の話として報じた。貿易黒字国の日本やドイツの05年の統計は発表されていないが、中国が両国を抜いて世界第1位となる可能性が出てきた。

 鉄鋼や繊維製品の輸出が好調で黒字が積み上がった。中国は昨年7月、人民元相場を約2%切り上げたが、輸出増に歯止めがかかる効果は出ておらず、欧米などとの貿易摩擦が激化、人民元の一段の切り上げを求める声が強まるのは必至だ。

 税関総署は10日、輸出入を合わせた05年の貿易総額を発表し、前年比23.2%増の約1兆4221億2000万ドルと初めて1兆ドルの大台を突破した04年(約1兆1547億ドル)を上回った。

 このうち輸出は28.4%増の約7620億ドルに達した半面、輸入は17.6%増の約6600億ドルにとどまり、黒字膨張につながった。国内の引き締め政策などで原材料輸入の伸びが鈍化した一方、鉄鋼や繊維、石油製品などの輸出が伸びた。

 中国は今年からの新5カ年計画では国内消費主導の成長に転換する方針を打ち出しているが、構造転換は容易ではない。(共同)

 中国の2005年の貿易黒字が前年の3倍以上に膨張したのは、過剰投資で国内の生産力が大幅に高まった結果、鉄鋼など国内でさばききれない製品などが大量に輸出に回り始めたためだ。

 中国企業は、品質より低価格を武器に輸出市場でシェアを伸ばす傾向が強く、世界貿易機関(WTO)の繊維製品輸入割当制度が撤廃されたこともあって、05年は衣料品の輸出も急増、米国や欧州連合(EU)などとの摩擦に発展した。

 中国は昨年7月に人民元の小幅な切り上げに踏み切ったが、関係業界の不満を代弁する米議会は再切り上げを強く求めるとともに、中国への報復関税を課すことを辞さない構えだ。

 中国政府は米欧に対しては輸出自主規制や航空機などの購入で理解を求めているが、生産能力ばかりが拡大し、貧富の格差で消費が伸びないことなどによる国内需給のアンバランスがそのまま、黒字拡大に反映しており、構造的な輸出圧力の高まりはことしも収まりそうにない。

 中国のWTO加盟から3年が過ぎた。名実ともに貿易大国になった中国が今後、摩擦を回避しながら経済成長を続けるためには、過小評価されている元を再切り上げするとともに、輸出に偏らない内需主導の成長へ転換することが不可欠だ。(共同)

中国、05年の貿易総額1兆4220億ドル 前年比23%増

2006/01/10 The Sankei Shimbun

 中国の華僑向け通信社、中国新聞社電によると、中国税関総署の牟新生署長は10日、2005年の貿易総額が前年比23.2%増の約1兆4221億2000万ドル(約162兆5625億円)に達したと発表した。同日の全国税関長会議で述べた。

 貿易総額は初めて1兆ドルの大台を突破した04年(約1兆1547億ドル)を大幅に上回り、米国、ドイツに次ぐ世界3位の貿易大国の地位を維持したとみられる。

 輸出入の内訳や貿易黒字額など詳細は明らかにされていないが、1―11月累計では輸出が前年同期比約30%伸びた半面、輸入の伸びは17%にとどまっている。国内の過剰投資抑制に伴い、原材料輸入が鈍化した一方、鉄鋼などの輸出が大きく伸びたことを反映した。

 貿易黒字は11月までの累計で前年年間の3倍弱の908億ドルに達しており、年間では過去最高の1000億ドル前後に達すると予想されている。(共同)

人民元再切り上げ促す 日米財務相会談

2005/12/03 The Sankei Shimbun

 先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)に出席中の谷垣禎一財務相は2日夕(日本時間3日未明)、スノー米財務長官と会談し、「中国に対して人民元のより柔軟な運用をさらに求めていく」ことで一致、再切り上げを促す方針を確認した。谷垣財務相は「経済が堅調な中、(日本の)残る課題は財政改革」と表明し、財政再建を加速していく考えを示した。

 また谷垣財務相は2年8カ月ぶりの円安水準となったドル円相場について「会談では話は出なかった」と述べ、日米が円安を事実上容認していることを示唆した。谷垣財務相は会談後、「円安は大きな意味でファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)を反映している」と述べた。

 会談では、人民元改革について、スノー長官が一段の柔軟性を強化する必要があると強調。谷垣財務相も「7月の改革を評価しており、(中国当局の)習熟に時間がかかるのも理解するが、少し時間がかかりすぎ」と応じ、米国と歩調を合わせて一層の改革を促していく考えを示した。

 谷垣財務相は財政再建について「来年6月に歳出・歳入改革の道筋を示す」とし、来年の新規国債の発行額を30兆円にできるだけ近づけるなど歳出削減に力を入れることを説明した。スノー長官は日本の取り組みに対し「勇気づけられた」と評価するとともに、郵政民営化法の成立を歓迎した。

 また米側は、企業買収を促す制度整備を要望。具体的には、外資による企業買収を容易にする「三角合併」の解禁を2007年に控え、外国企業に対して差別的な扱いをしないように求めた。

 谷垣財務相とスノー長官の会談は、G7に先だって開かれた。(共同)

 日米財務相会談のポイントは次の通り。

 一、中国人民元の一段の柔軟な運用を求めていくことで一致。

 一、ドル円相場は議題にならず、円安を事実上容認。

 一、日本は国債の新規発行額を30兆円に近づける来年度予算編成方針と、来年6月に歳出・歳入改革の道筋を示すことを説明。

 一、米国は日本の取り組みを評価。郵政民営化法案の成立を歓迎。

 一、米国は外資による企業買収を容易にする「三角合併」で、外国企業を差別しないよう要請。(共同)

中国元、切り上げ方針 来年1月に7.2%と独誌

2005/12/02 The Sankei Shimbun

 ドイツ経済誌ウィルトシャフツウォッヘ(電子版)は2日、中国政府筋の話として、中国が来年1月1日に人民元相場を現在の1ドル=8.08元から7.5元に7.2%切り上げる方針だと伝えた。

 同誌は、対中貿易赤字が続く米国の圧力を受けて切り上げを決めたとしている。

 米財務省は11月末に発表した外国為替報告書の中で、7月の人民元が小幅な切り上げにとどまったことについて、制度運営が制限的だと不満を示している。(共同)

人民元の変動幅に不満 米報告、早急な柔軟化迫る

2005/11/29 The Sankei Shimbun

 米財務省は28日、半年に1度の外国為替報告書を公表した。焦点の中国について、7月に実施した人民元の小幅切り上げなど制度変更を踏まえ「不公正な為替操作国」との認定は見送った。ただ、制度運営は「非常に制限的」と不満を表明。スノー財務長官は声明で、次回報告書までに一段の柔軟化を早急に進めるよう強く迫った。

 中国は切り上げに合わせ複数の通貨動向を参考に相場を決める制度を採用したが、実際の対ドルレートは極めて狭い変動幅に抑えられており米政府や議会の不満が強い。貿易赤字の約4分の1を中国が占める現状の打開へ向け、引き続き圧力をかけるブッシュ政権の姿勢を鮮明にした。

 一方、日本について報告書は2006年中にもデフレを脱却するとの見方を紹介した上で、そのことが「財政再建へ向けた成長政策」や「世界的な(経常収支の)不均衡是正への貢献」を可能にするとの期待を表明。

 報告書は同時に、中国をはじめアジア新興諸国の為替制度や国内金融システム改革に国際通貨基金(IMF)が「中心的な役割」を果たす必要があると強調した上で、IMFによる包括的な報告書の作成を要請した。

 今年5月に公表された前回報告書は、中国を為替操作国とは認めなかったものの「大きな制度変更がなければ米通商法に抵触する公算が大きい」として、事実上、半年以内の人民元改革を求めた。(共同)

人民元の変動幅、年内は拡大せず…中国人民銀副総裁

2005年10月26日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【北京=東一真】26日の中国紙、第一財経日報によると、中国人民銀行(中央銀行)の呉暁霊副総裁は25日、銀行業界の集まりで講演し、年内は人民元の変動幅の拡大を行わない方針を示した。

 呉副総裁は「今年はすでに時間も限られており、人民元レートの対ドルの一日の変動幅の拡大は間に合わないし、市場も受け入れない」と述べた。

外貨準備高、中国+香港が世界1位 日本を抜く

2005/10/07 The Sankei Shimbun

≪IMF公表、6月末≫

 財務省が7日発表した主要国外貨準備高によると、国際通貨基金(IMF)公表の6月末の国際比較ベースで、中国と香港の合計が8379億ドルとなり、日本(8340億ドル)を抜いて世界1位となったことが分かった。財務省によると、中国と香港の合計が日本を抜いたのは初めてとみられる。

 中国当局が人民元レート維持のため、頻繁にドル買いの市場介入した結果を反映したもようだ。

 IMFの国際比較によると、日本の外貨準備は7月時点では8301億ドル、中国本土で7159億ドル(6月)。台湾2536億ドル(7月)、ユーロ圏2137億ドル(同)、韓国2056億ドル(同)、香港1220億ドル(6月)となっている。

 また財務省が7日発表した9月末時点での外貨準備高は、前月末から42億300万ドル減って8435億6300万ドルとなり、2カ月ぶりに前月末を下回った。

 9月末の外貨準備高の減少は、米国債の金利が上昇(価格は下落)したのが主因。ユーロが対ドルで下落し、ユーロ建て資産がドル換算で下落したことも響いた。

 政府・日銀による為替介入は昨年4月から18カ月連続でゼロ。介入ゼロの期間としては、1996年3月から97年10月までの20カ月に次ぐ長さとなった。(共同)

人民元の交換業務を試行 10月から台湾当局

2005/09/28 The Sankei Shimbun

 台湾の謝長廷・行政院長(首相)は28日、中国本土に近い金門、馬祖両島内に限って10月3日から、中国の人民元と台湾元の交換業務を試験的に始めると発表した。中央通信が伝えた。

 両島と対岸の中国福建省間に限定した「小三通」(通商、通航、通信の直接開放)が2001年1月に解禁されて以降、両島を訪れる中国の視察団や観光客が増えていることに伴う措置。地元の指定金融機関で1度につき2万人民元(約28万円)を限度に交換を認めるという。今までは、人民元と台湾元の交換は認められていなかった。

 行政院長は両島以外での交換業務について、中国側との協議が必要との考えを示した。(共同)

消費税など抜本改革表明 日米財務相会談

2005/09/24 The Sankei Shimbun

≪人民元改革推進で一致≫

 先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)出席のためワシントンを訪問中の谷垣禎一財務相は23日午前(日本時間同日夜)、スノー米財務長官と会談した。財務相は定率減税全廃に続き、来年以降「消費税など全体の税体系をどう見直すかという課題がある」と述べ、税財政の抜本改革に強い決意を示した。

 これに対しスノー長官は「先の総選挙での与党圧勝は日本国民の改革を求める強いシグナルだ」と指摘、日本の構造改革進展に強い期待感を示した。

 中国の人民元については7月の改革を歓迎するとの認識で一致したが、財務相は「今のところ保守的な運用にとどまっている」などとして、一段の柔軟性を求める立場を示した。

 中国当局が同日決定したドル以外の通貨に対する人民元の変動幅拡大措置については議論しなかったが、会談終了後、日米ともに「技術的な話だ」と位置付け、全体の制度運用には重大な影響がないとの認識を示した。

 一方、財務相は「財政改革が中心的な課題となる」と表明。具体的には「社会保障や医療制度改革を進めていく」と米側に伝えた。

 財務相は日本経済について「内需主導の堅実な歩みが見られる。不良債権問題など構造改革を通じて経済の足腰が強くなった」と説明した。米側はハリケーン被害の米経済への影響について「一時的にとどまる」との見方を示した。

 原油価格の高騰について財務相は「世界経済の先行きにとって主たるリスク要因」と指摘。消費国側の石油精製能力の改善に向けた投資促進について議論した。(共同)

対円、ユーロで変動幅拡大 人民元、上下3%に

2005/09/23 The Sankei Shimbun

 中国人民銀行(中央銀行)は23日、円やユーロなど米ドル以外の外貨に対する人民元の取引について、前日終値に対しこれまで毎日上下1.5%としていた変動幅を同3%に拡大すると決定、即日実施したと発表した。ドルに対する変動幅は0.3%のまま据え置いた。中国国内で円やユーロの対人民元取引は極めて少ないが、同日ワシントンで始まる先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)直前に相場弾力化に向けた新たな措置を発表、元相場改革への努力と国際協調の姿勢をアピールする狙いがあるとみられる。

 同行は今回の措置について「元相場の形成メカニズムを改善し、銀行の相場決定やリスク回避の能力を高める」と強調。今後は7月の元切り上げ後も小幅な値動きにとどまっているドルを中心に、毎日の各通貨の取引がどれだけ柔軟な動きを示すかが焦点だ。

 中国は7月、ドルに対し元相場を約2%切り上げるとともに、円やユーロなどドル以外の複数の通貨の変動も参考にして相場を決める「バスケット制」も導入。しかし、国際市場で円やユーロが大きく変動した場合、変動幅が抑えられている中国国内での円やユーロの対人民元相場と国際市場の相場が大きく懸け離れる可能性があった。

 人民銀はこのほか、銀行が企業などにドル以外の外貨を売買する際の対顧客レートの上下の制限を廃止。ドルについても対顧客レートの制限幅を拡大すると発表した。対顧客レートは、人民元の市場での変動幅を下回る幅に設定されていたため「相場の動きによっては銀行が損をかぶる可能性があった」(金融筋)という。(共同)

 <人民元改革> 中国人民銀行(中央銀行)は7月21日、対ドルで事実上固定されていた人民元相場を約2%切り上げ、1ドル=8.11元にすることを決定し、即日実施。ドルやユーロ、円などで構成する通貨バスケットを参考にした管理変動相場制も導入した。ただ、切り上げ幅が小幅だったことなどから、対中貿易赤字を抱える米国などから追加的な措置を求める声が出ている。(共同)

人民元先物取引:東京三菱など日米欧大手6行に認可 中国

2005年09月20日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 東京三菱、三井住友銀行など日米欧の大手6銀行に対し、中国政府は、顧客企業向けの人民元先物取引への参入を認可した。外資系銀行への認可は初めて。人民元相場は現在、中国人民銀行の大規模な介入でほとんど動いていないが、将来、為替取引が自由化され、変動幅が大きくなった場合に、為替リスク回避の手段として先物商品は不可欠だとして各行が申請していた。

 認可されたのは、東京三菱銀の北京、上海支店と三井住友銀の上海、広州など5支店のほか、ドイツ銀行、シティバンク、英HSBCなど。これまで外資系には、銀行間での先物取引しか認められていなかった。

 人民元相場の動きが大きくなると、輸出入の際の為替リスクも大きくなる。将来の為替水準をあらかじめ確定しておく先物取引の解禁で、各行は顧客企業に対し、対中貿易での為替リスク回避手段を提供できる。【塚田健太】

人民元再切り上げへ攻防 いら立つ日米 時機探る中国

2005/09/06 The Sankei Shimbun

月内にAPEC財務相会合、G7

 日米両政府は、今月に開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)財務相会合や先進七カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)など一連の国際会議の場で人民元の一段の弾力化を求める見通しだ。中国が七月二十一日に人民元切り上げを発表して以降、変動幅が小幅に止まっているためで、日米両政府は人民元改革について「不十分」とみている。再切り上げ圧力が高まりつつある中、人民元改革は第二ラウンドを迎える。(吉田憲司)

 「もう少し制度の趣旨を生かした円滑な運用ができるのではないか」。財務省のある幹部は、七月二十一日に中国人民銀行が対ドルで2・1%の人民元切り上げを発表して以降の人民元の動きに不満を隠さない。

 過去最高値を更新した五日時点でも上昇幅はわずか0・23%程度。じりじりと上昇はしているものの、市場関係者の間では「実質的なドル固定相場に近い為替政策」との見方が大勢を占める。

 財務省幹部は「日々の取引をみると、人民元高に振れていた取引終了直前に人民元を売ってドルを買う市場介入で人民元安に戻すケースがみられる」と指摘。同省が水面下で中国側に対し「極端な為替介入」は避けるよう進言する場面もあったという。

               ◆◇◆

 もともと、日本政府は、人民元切り上げに伴う日本経済への悪影響を避けたいとの思いから急激な切り上げは望んでいなかったが、あまりにゆっくりとした引き上げに「慎重すぎる」(財務省幹部)と感じている。

 それ以上に対中貿易赤字の急増に気をもむ米国はイラ立ちを隠さない。現在の人民元の切り上げ水準は「米議会や米産業界が要求する20−30%の切り上げからは程遠い」(日本総研の湯元健治調査部長)とされ、夏休みが明けた米議会を中心に対中強硬論が台頭するとの観測は強い。

 ライス米国務長官も米紙ニューヨーク・タイムズとのインタビューで人民元改革について、「政策を構造的に変更しない限り国際経済の問題児であり続ける」趣旨の手厳しい発言をしている。

               ◆◇◆

 今月は八、九日に韓国でAPEC財務相会合、二十三、二十四日に米ワシントンでのG7が控える。人民元の上昇が小幅な状況が続けば、一連の国際会議の共同声明に一段の弾力化を求める文言が盛り込まれる可能性は大きい。

 また、十月には輸入品に高関税を課す対中制裁法案の米議会採決の実施や、米財務省が為替報告書の中で中国を「為替操作国」と認定する可能性も否定できない。

 中国人民銀行の周小川総裁は八月二十九日付の英紙フィナンシャル・タイムズのインタビューで、「(七月二十一日の人民元切り上げは)一回限りの調整ではない」と、さらなる切り上げの可能性を示唆した。圧力に屈した形での再切り上げを避けたい中国は「切り上げ第二弾」でも「意表をつくタイミング」(市場関係者)を狙っているとみられ、その出方が注目されている。

人民元、切り上げ後最高値 終値1ドル=8.0954元

2005/08/29 The Sankei Shimbun

 29日の上海外貨取引センターの人民元相場終値は、1ドル=8.0954元と前週末終値(8.0965元)に比べ元高ドル安になり、終値として7月21日の切り上げ実施後の最高値を更新した。また、取引時間中に一時、8.0950元まで上昇し、切り上げ後の瞬間最高値も更新した。

 市場では、胡錦濤国家主席の訪米を前にさらに元高が進むとの観測が広がっている。

 この日は1ドル=8.0950―8.0965元の範囲で取引された。(共同)

「1回限りの調整でない」 中国、人民元改革で英紙

2005/08/29 The Sankei Shimbun

 中国人民銀行の周小川総裁は29日付の英紙フィナンシャル・タイムズのインタビューで、人民元切り上げについて「これは1回限りの調整ではない」と述べ、将来の本格的な変動相場制に向けた改革の第一歩であるとの認識をあらためて表明した。

 7月に人民元相場を対ドルで2%切り上げて以降、周総裁が欧米メディアのインタビューに答えるのは異例。ただ、注目されている変動幅の今後の拡大などについては明言を避けた。

 周総裁は「中国企業などが新たなシステムに順応するには時間が必要で、市場の役割を大きくするのは段階的な道のりだ」としながらも「改革の必要性という点では中国にはコンセンサスがある」と強調した。

 投資に比べ消費の伸びが鈍い中国経済の問題点をあらためて指摘し、「為替レート以上に内需拡大政策が重要だ」との考えを示した。(共同)

9月7日に米中首脳会談 軍事、北朝鮮、人民元など焦点

2005/08/24 The Sankei Shimbun

 米政権は23日、ブッシュ大統領が9月7日にホワイトハウスで中国の胡錦濤国家主席と会談すると発表した。2003年3月の国家主席就任後、胡主席の訪米は初めて。米中首脳会談は昨年11月のチリのサンティアゴ以来となる。

 米議会などで経済の高成長と軍備増強を続ける中国に対する「脅威論」が高まる中、両首脳は中国の軍事、人権、人民元問題など米中関係を協議。また、北朝鮮核問題や対テロ戦争、台湾問題なども焦点となりそう。

 軍備増強については、国防総省が7月に公表した年次報告書で、中国の軍事力拡大が続けば長期的に日本を含めた周辺諸国にとって確実に脅威になると警告。ブッシュ大統領にとっては、中国の軍拡をいかに抑制し、透明性を向上させるかが大きな課題となる。

 北朝鮮核問題では、29日からの週に再開予定の第4回6カ国協議を踏まえ、朝鮮半島の非核化実現に向けた協調関係を確認。

 米中が相互依存を強める経済面では中国が7月に人民元の切り上げに踏み切ったことを評価しつつも、一段の改革努力を求める見通し。

 大統領が2期目の目標に掲げる「自由の拡大」をアジアでも推進する立場から、宗教を含む人権問題の改善を中国側に強く要請。台湾問題では、胡主席があらためて「台湾独立への反対」を大統領に求めるとみられる。(共同)

軍事、人民元で中国批判 胡主席訪米控えライス長官

2005/08/20 The Sankei Shimbun

 19日付の米紙ニューヨーク・タイムズによると、ライス米国務長官は同紙とのインタビューで、中国の軍事力増強に強い懸念を表明。人民元を含むさらなる経済改革の必要性を強調し、人権状況の改善を中国側に求めていく方針を示した。

 今年1月の就任以来、中国に対して肯定的な発言を続けていたライス長官が「異例の厳しい批判」(同紙)に転じた背景には、9月に予定される胡錦濤国家主席の訪米を前に、中国への不満がブッシュ政権内で高まっていることを示す狙いがあるとみられる。

 長官は中国の軍事力について「地域の権益(維持)に必要な規模を超えているように見える」と述べ、はやいペースで増強を続けていることに警戒感を表明。一段の切り上げを求める声が強い人民元改革に関しては、政策を構造的に変更しない限り「国際経済の問題児」であり続けるとの表現で、改革実施を迫った。

 さらに、「人権と信教の自由の問題についても、圧力をかけ続けていく」と明言、米中首脳会談でも主要議題の一つに据える考えを示した。(共同)

英RBSなど4外資、中国銀に出資か

2005/08/08 The Sankei Shimbun

 8日発売の中国誌「財経」は、中国の国有商業銀行大手、中国銀行が英銀行大手ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)、シンガポールの国営投資会社テマセク・ホールディングスなど四つの外資系金融機関の出資を受けることがほぼ固まったと伝えた。

 RBSとテマセクがそれぞれ9.9%ずつ、スイスの金融大手UBSとアジア開発銀行が計5%を出資する見通し。外資の出資比率は計25%近くになるとしている。

 2006年に金融分野の全面開放を控える中国は競争力の劣る国有商銀の経営改革を急ぎ、不良債権処理とともに外資の経営参加を進めている。(共同)

人民元、切り上げ後最高値 1ドル=8.1056元

2005/07/29 The Sankei Shimbun

 29日の上海外貨取引センターの人民元相場は、前日終値(8・1080元)に比べ元高の1ドル=8・1056元で引け、前日に続き21日の切り上げ実施後の最高値を更新した。切り上げ後に相場が2日続けて元高に動くのは初めて。

 市場関係者によると、この日は、じりじりと元高ドル安に動く展開。これまで目立っていた引け際の中国人民銀行の介入とみられる大口取引がなかったという。関係者は「週末でもあり、市場に任せてみたのではないか」とみている。(共同)

人民元再切り上げ迫る 米上院議員

2005/07/29 The Sankei Shimbun

 米上院のシューマー議員(民主党)とグラム議員(共和党)は28日、中国が人民元を再度切り上げない場合、輸入品に高関税を課す対中制裁法案を10月にも採決する可能性があると語った。米メディアが伝えた。

 切り上げ発表から約1週間が経過したものの、中国当局による介入で相場がほとんど動かないことへのいら立ちを示した。グラム議員は「われわれは小さな一歩を求めているわけではない」と不満をあらわにした。

 両議員は切り上げを歓迎、共同提出していた制裁法案の採決を延期する意向を表明していた。両議員の法案は、他の制裁法案に比べて中国輸出企業への打撃が大きいとされている。(共同)

市場介入繰り返す人民銀 人民元、狭い範囲で安定

2005/07/28 The Sankei Shimbun

 21日の中国の人民元切り上げ以後も、金融当局による「管理相場」が続いている。

 中国人民銀行はこれまで1ドル=8・2765元での実質的な対ドル固定相場を介入で維持してきたが、切り上げ発表後は、上海外貨取引センターでの前日終値に基づき変動させることになった。実際には人民銀が終了直前にドル買いまたはドル売り介入を行い相場を動かすパターンが目立ち、狭い範囲で動いている。

 28日の上海の外貨取引センターの人民元相場は1ドル=8・1080元で引け、前日終値(8・1128元)より元高になった。引け際に人民銀とみられる大量のドル売りがあった。

 市場関係者は「切り上げ発表から1週間の動きをみると、人民銀は8・11元を挟んで一定の幅で変動する実績を残そうとしているようだ」と総括する。

 上海市場では外貨を元に換えたい企業などの注文が主流で需給面から元高になりがちだが、人民銀は一方的な元高は容認しないもようだ。市場参加者は「毎日終了間際に介入があるようでは取引が委縮する」と指摘、今後の課題になりそうだ。

 中国では、元切り上げにより繊維や一般家電など輸出業界の競争力低下への懸念が強い一方、外貨建て債務の多い航空やエネルギー業界には元高メリットがあり、経済全体では大きな打撃はないとの見方も出ている。人民銀は企業の不安心理を大きくしないよう当面8・11元周辺で安定させる政策を続けるとみられる。(共同)

中国、人民元の再切り上げを否定

2005/07/26 The Sankei Shimbun

 中国人民銀行(中央銀行)のスポークスマンは26日、人民元の切り上げ問題に関して「2%の切り上げはさらなる切り上げを意味するものではない」とする声明を発表した。21日に発表した切り上げ幅が小幅だったことで海外を中心に近い将来の再切り上げ観測が出ているが、これを明確に否定した。

 声明は「2%という水準は中国の貿易黒字や国内企業の対応能力などから、合理的な均衡水準を根拠に決定した」と述べ、新レートの合理性を強調した。

 さらに「2%の切り上げは、為替レート形成方式の改革の第一歩だが、為替レート(自体の)調整の第一歩ではない」と指摘。将来の本格的な変動相場制などに向けた大きな流れの中の一歩ではあるものの、今後次々と切り上げしていくという意味ではないと説明し、急激な改革を避ける姿勢を示した。

 中国人民銀行の周小川総裁が切り上げ後に「今回の切り上げは第一歩」と述べたことなどから、海外では今後のレート調整に含みを持たせたとの受け止め方が出ていた。(共同)

人民元切り上げは「自主的」 中国人民銀総裁が強調

2005/07/23 The Sankei Shimbun

 中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁は23日、人民元切り上げは「中国の自主的な政策だ」と述べ、他国と協議して実施したのではないとの立場を強調した。香港の有線テレビなどが報じた。新制度に対する総裁の発言が伝えられるのは初めて。

 総裁はまた、新制度下で決まる元相場は、通貨バスケット方式から算出される数字に「(直接)連動しない」と言明。同方式はあくまで「参考」との21日の発表内容をあらためて強調、当局による相場管理を今後も続ける方針を示した。

 今後の一層の切り上げの見通しなどについては言及しなかった。(共同)

人民元切り上げ初日…中国が介入、変動幅抑え込む

2005年07月23日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【北京=東一真】通貨・人民元の切り上げ発表後、初の取引となった22日の上海外国為替市場の人民元相場は、新制度初日から通貨当局の介入とみられる元売り・ドル買い注文が入ったことなどから、ほぼ中国政府が前日に発表した基準レート(1ドル=8・11元)通りの取引となった。

 午後3時30分(日本時間午後4時30分)の終値は1ドル=8・1111元と、基準レートからわずかに元安・ドル高となった。

 中国当局が21日発表した新為替制度では、元の対ドルレートは前日の終値より上下0・3%幅で変動することを認めている。

 しかし、中国当局は取引終了間際に元売り・ドル買い介入を行った模様で、終値の基準レートからの変動幅をわずか約0・01%に抑え込んだ。

政府、人民元切り上げ歓迎

2005/07/21 The Sankei Shimbun

 政府は、中国が21日、事実上、人民元を切り上げたことを基本的に歓迎している。安価な中国製品のはんらんに一定の歯止めがかかることになり、デフレの緩和も期待できるためだ。

 しかし、人民元切り上げで中国経済の成長に急ブレーキがかかれば、日本経済にとっても大きな打撃となる。そこで「円高を乗り切ってきた日本の知恵を中国に提供していく」(財務省幹部)として、中国が経済的混乱を回避できるよう積極的に協力する姿勢も打ち出している。

 日本から中国への輸出額は急増し、米国と並ぶ貿易相手国となった。日本の景気回復は相当程度、中国に支えられている。

 加えて韓国や台湾、東南アジア諸国連合(ASEAN)も、巨大市場となった中国への依存度を高めているだけに「中国市場の成長が低迷すれば、アジア全体が混乱する懸念もある」(日本総合研究所)との指摘も出ている。

 人民元切り上げをきっかけに、財政・経常収支の双子の赤字に苦しむ米国が米産業界の意向を受け、日本の為替市場介入など他のアジア諸国の通貨政策見直しを求めてくる可能性を指摘する声もある。(共同)

中国、人民元切り上げ 対ドル変動幅を拡大

2005/07/21 中国新聞ニュース

 【北京21日共同】中国人民銀行(中央銀行)は二十一日、米ドルに対し事実上固定していた人民元相場を切り上げることを決定、即日実施した。

 これまで一ドル=八・二七六五元程度に固定されてきたが、実質的に2%切り上げられた。

 同時に、ドルだけでなく、ユーロや日本円なども含めた複数の通貨対象に連動する通貨バスケット方式も採用した。

 中国の外国為替制度の変更は、一九九四年に現行制度に移行して以来、約十一年半ぶり。元切り上げに伴いドルで換算した中国の経済規模は拡大、世界経済に一段と大きな影響を与えるのは必至だ。

米議会で対中国制裁法案相次ぐ、貿易赤字拡大に不満

2005年07月16日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【ワシントン=広瀬英治】米議会で14日、中国が通貨・人民元を対ドルで低い為替レートに事実上固定している問題に関し、新たな中国制裁法案2本が相次いで提出された。中国に報復関税などを課す法案は、今年に入って主なものだけで10本に達している。

 米議会内で中国に対する不満が高まっているのは、中国からの輸入急増で米貿易赤字が急速に拡大しているためだ。1980〜90年代に米国で日本がやり玉に挙がったのと似た構図だ。

 特に、繊維や家具などの分野で米企業は安い中国製品に市場を奪われ、「業界で毎日150人が失業している」(繊維団体)などの不満が高まっている。

 米政府は「人民元改革を求めて中国政府に圧力を強めるのは逆効果」(ジョン・スノー財務長官)として議会に自制を呼びかけている。しかし、来年の議会中間選挙に向け、これから選挙活動を本格化しようとしている議員は、人民元改革の実現に向け、具体的な行動を起こす必要性に迫られている。

8月の人民元切り上げ確信 米財務長官が発言と英紙

2005/07/15 The Sankei Shimbun

 15日付の英紙フィナンシャル・タイムズは、スノー米財務長官が6月末、中国が胡錦濤国家主席の訪米を前に8月中にも人民元の切り上げを行うとの見通しを有力上院議員らに明らかにしていたと報じた。関係者の話として伝えた。

 同紙によると、長官は対中制裁法案を議会に提出しているシューマー、グラム両上院議員らと会談した際、中国政府が8月に人民元改革に動くことを確信していると説明。このブッシュ政権による「確約」を受けたことで、両議員らは制裁法案の採決先送りを決めたという。

 中国はこれまで、人民元改革のスケジュールについては一切明らかにしていない。

 米財務省報道官は「スノー長官は人民元改革の実施時期について、時間を特定した確約などはしていない」としている。(共同)

「拙速な改革はしない」 中国首相が人民元で表明

2005/06/26 The Sankei Shimbun

 中国の温家宝首相は26日、天津で開かれたアジア欧州会議(ASEM)財務相会議の冒頭で、人民元改革に触れ「無用に拙速には動かない」と述べ、時間をかけながら慎重に対応する意向を重ねて強調した。人民元をめぐっては、日米などが米ドルに対し事実上固定されている変動幅の拡大を急ぐよう強く迫っている。首相は「各国は国情に合った為替制度を選ぶ権利がある」とけん制し、外圧には屈しないとの考えをあらためて示した。

 首相は、日米ばかりでなく、欧州でも為替制度の早期弾力化を求める動きが出ていることを意識し、アジアや欧州各国の財務相を前に「われわれはどの国にも脅威にはならない」と強調。米国不在の機会をとらえて中国の立場をアピールした。

 改革の方向性について首相は「より市場性が高く、柔軟性の高い制度を目指す」と指摘。その上で、国有銀行の改革や為替市場の基盤整備などを念頭に「影響が広く及ぶため、多くの準備作業が必要だ」と述べ、漸進的に進める意向を明らかにした。

 人民元改革を実施するに当たり考慮すべき事項としては(1)マクロ経済や雇用情勢、輸出の動向(2)周辺アジア諸国をはじめとした世界経済への影響―などを挙げた。

 財務相会議に先立ち、谷垣禎一(たにがき・さだかず)財務相が25日、中国の金人慶(きん・じんけい)財政相との会談で「(改革の)効果が出るためにも、果断な対応が必要」と、人民元改革を促した。(共同)

≪中国の為替制度≫

 中国は1994年に人民元相場の公定レートと市場レートを一本化し、「管理された変動相場制」に移行した。米ドルに対し前日に比べ上下0.3%だけ変動できることになっているが、実際には中国の通貨当局が市場介入によって、ドルにほぼ完全に連動させている。アジア金融危機の98年ごろからは1ドル=8.27元近辺で固定されている。

 人民元改革は(1)公式には上下0.3%とされている変動幅を拡大(2)中心レートを段階的に切り上げ(3)中心レート切り上げと変動幅拡大の併用(4)ドル、ユーロ、円など複数通貨に連動する形で変動を認める「通貨バスケット制」―などが想定されている。(共同)

人民元改革、早期に 谷垣財務相、中国側に迫る

2005/06/26 The Sankei Shimbun

 【天津=福島香織】谷垣禎一財務相は二十五日、アジア欧州会議(ASEM)財務相会合に出席するため訪中し、中国の金人慶財政相と会談した。この中で谷垣財務相は早期の人民元改革を求めた。また、両国は為替や税制などの協力促進に向け、閣僚級による日中財務対話を始めることで合意した。

 人民元問題について、谷垣財務相は「中国政府が決めること」と前置きしつつ、「中国経済の自由度を広げていくためにも為替制度の柔軟性が必要で、早期に対応することが望まれる。効果を得るためには果断な対応が必要」と迫った。これに対し、金財政相は「中国は責任ある対応をとる」と従来の主張を繰り返した。

 一方、日中財務対話については、できるだけ早い時期に第一回閣僚級対話を実施することで合意。事務レベルで今後、準備作業を進めることにした。

 この対話では、為替や不良債権問題のほか、中国に進出した日系企業などをめぐる税制問題などについて、両国で協力する。

対中制裁の動きに警鐘 人民元改革でFRB議長ら

2005/06/24 The Sankei Shimbun

 グリーンスパン米連邦準備制度理事会(FRB)議長とスノー財務長官は23日、上院財政委員会の米中経済関係をテーマにした公聴会で、人民元制度に不満を募らせた議会に対中制裁法案が提出されている状況について「保護主義へ戻ることは世界の、特に米国の生活水準を脅かす」(グリーンスパン議長)と指摘し、強い警鐘を鳴らした。

 一方、両氏は「中国には柔軟化の用意がある」(スノー長官)などとして、人民元改革の即時実行を重ねて要求。同時に長官は「市場動向を反映した中間的な段階を採用すべきだ」と指摘し、変動相場制への完全移行に備えた中間的な制度が今の中国には適しているとの見解を明らかにした。

 米通貨当局者がそろって議会の保護主義的な動きをけん制したのは、圧力を高めることがかえって「中国の通貨改革を遅らせかねず逆効果」(スノー長官)とみているためだ。長官はまた、中国などで米国に報復的な通商政策が広がることに懸念を示した。

 長官は事実上ドルに固定されている人民元の弾力化が、米経常赤字に代表される国際的な不均衡の是正に必要と強調。不均衡是正には、日本と欧州も成長を高めるため「力強く必要な構造改革を実行しなければならない」とくぎを刺した。(共同)

対中制裁関税へ法案提出 米下院、人民元の是正求め

2005/06/22 The Sankei Shimbun

 米下院のイングリッシュ議員(共和党)は21日、記者会見し、中国が為替操作をして人民元を意図的に安くしているとして、中国からの輸入品に制裁関税を課すための法案を提出したと発表した。ほかに超党派議員21人が共同提出者になっている。

 法案は第1段階として成立後60日以内に、中国が為替操作をしているかどうかの分析と議会への報告書提出を財務長官に要求。為替操作の事実が確認された場合は、報告書提出後30日以内に、人為的に人民元が安くされた割合と同じだけの関税を中国からの輸入品に上乗せする仕組み。

 イングリッシュ議員は「米国内の製造業者は中国の為替操作により重荷を背負わされている」と述べ、公平な貿易条件を確保するためにも人民元制度の是正が必要と訴えた。

 安い中国製品の輸入で国内の中小業者が打撃を受けていることを背景に、米議会では対中制裁を目的にした複数の法案が上下両院へ提出されている。(共同)

人民元切り上げ早急に

2005年06月13日 読売新聞 Yomiuri On-Line

日米財務相会談で一致

 【ロンドン=黒川茂樹】谷垣財務相は10日夕(日本時間11日未明)、主要8か国(G8)財務相会議前にジョン・スノー米財務長官と会談し、米ドルと事実上固定されている中国通貨・人民元の問題について、外国為替相場の変動幅を拡大するなど事実上の元の切り上げにつながる改革を早急に実行すべきだとの認識で一致した。

 会談でスノー長官は、「柔軟な為替制度への移行」を改めて訴え、人民元が対ドルで低いレートになっているため、世界貿易に不均衡が生じているとの認識を示した。谷垣財務相も、中国経済の過熱に対する懸念を示し、「中国が自らの政策の自由度を高めるという意味から、ある程度果断な対応が必要ではないか」と応じた。日本政府はこれまで中国の自主的な判断を尊重すべきだとの立場だったが、対中貿易赤字の拡大にいらだち、圧力を強めるアメリカに歩調を合わせた格好だ。

 日米が人民元改革を急ぐ必要があるとの認識で一致したのは、米国では中国の輸出ラッシュで経済界が悲鳴をあげていることに加え、日本も中国経済が変調をきたせば、世界経済の混乱につながりかねないとの懸念を強めたためだ。

 谷垣財務相は会談で「中国は大きな経済になり、過剰流動性のような状況も見られる」とも述べた。為替介入で元売りを続けていることが市場に資金をあふれさせ、中国国内でインフレ懸念が生じていることを指摘したものだ。

中国国有銀改革進まず

2005年06月08日 読売新聞 Yomiuri On-Line

不祥事相次ぐ 元切り上げに影響も

 【北京=東一真】中国の通貨・人民元の切り上げ問題をめぐり、中国政府が進めている4大国有商業銀行の改革が進むかどうかが注目を集めている。7日、日米欧の中央銀行総裁らが集まって北京で開かれた国際通貨会議(IMC)では、米中の中央銀行トップが人民元切り上げの時期を巡って応酬し、中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁は「銀行改革が切り上げの前提になる」との見方を強調した。しかし、中国の4大国有銀行では不祥事などで改革が遅れ、このままでは人民元改革がずれ込む可能性も出ている。

 IMCでは衛星中継で参加した米連邦準備制度理事会(FRB)のアラン・グリーンスパン議長が「通貨の柔軟性を増すことは中国自身の利益になる」と、人民元改革を急ぐよう中国に求めた。これに対し周総裁は「改革には準備が必要だ。まずは金融機関を改革しなければならない」と述べた。

 4大国有銀行のうち、中国銀行、中国建設銀行の2行は一昨年末に総額450億ドルに上る政府の資本注入を受け、昨年中に不良債権を処理し、株式会社に改組した。今年は香港やロンドン、ニューヨークなどで株式上場を果たす計画だ。

 しかし、今年1月、中国銀行の黒竜江省の支店長が顧客口座から8億元(約100億円)を奪って海外逃亡した。同行北京支店では4月、行員も加担した住宅ローン詐欺で6億5000万元(約85億円)に上る損失が発生した模様だ。

 中国政府は建設銀行に金融行政の若手のエース、郭樹清・国家外貨管理局長を董事長(会長)に送り込むなどしてテコ入れに懸命だ。しかし、相次いだ不祥事で「国有銀行はコンプライアンス(法令順守)に根深い欠陥がある」(日系金融筋)という投資家の懸念は広がっている。

 一方、中国工商銀行は、今年4月にやっと政府から150億ドルの資本注入を受け、株式会社化を急いでいる状況だ。中国農業銀行は、資産の傷みが激しい模様で、不良債権比率さえ公開できず、資本注入のメドも立っていない。

 金融システムの根幹である4大国有銀行の改革が進まなければ、人民元の切り上げで一時的に悪化が見込まれる中国企業の資金繰りを支えることができない。信用力がないままでは人民元改革後の為替取引に4大国有銀行が参加できず、為替市場が混乱する恐れもある。米国から事実上「10月まで」と期限を切った人民元為替改革を求められている中国政府は、難しい判断を迫られている。

人民元の切り上げ FRB議長が促す

2005年06月07日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【ワシントン=広瀬英治】アラン・グリーンスパン米連邦準備制度理事会(FRB)議長は6日夜(日本時間7日午前)、北京で開かれた国際通貨会議にワシントンから衛星中継を通じて参加した。議長は、中国が通貨・人民元を対ドルで事実上低い為替レートに固定している問題について「通貨の柔軟性を増すことは中国自身の利益につながることなので、改革が速やかに実施されるべきだと確信している」と述べ、中国が事実上、人民元を切り上げる改革を急ぐよう改めて促した。

 これに対し、中国人民銀行の周小川総裁は、人民元改革の時期について「遅かれ早かれ直面することになる」と述べる一方、「改革を行えば経済成長などに影響が出る。すべての影響を分析しなければならない」と、改革は慎重に進める必要があるとの見方を強調した。

世界経済は着実な回復、リスクは人民元の大幅変動=内閣府◇ロイター

2005年06月06日 REUTERS

[東京 6日 ロイター] 内閣府は2005年春の「世界経済の潮流」を発表し、世界経済が着実な回復を続けるなかでのリスク要因のひとつとして、中国人民元の大幅な変動をクローズアップした。

 リポートでは、世界経済は2003年後半から「着実な回復を続けている」と指摘。2005年の世界経済は、景気をけん引してきた米国と中国の成長率低下の影響などから、3.2%程度の成長になると予測した。

 リスク要因として、米中経済の急減速、原油価格の高止まり、米国の高水準の経常収支赤字、人民元の大幅な変動を列挙した。

 特に中国人民元については、大量のページを割いて現在までの議論を整理。「大幅な変動は中国の国内産業構造だけでなく、世界経済にも深刻な影響を及ぼすおそれがある」とした。

 最終的に変動相場制を目指すにせよ、何らかの経過措置的な為替制度をとる必要があることに言及。金融市場では、為替レートの切り上げや通貨バスケット制の採用、変動幅の拡大、管理フロート制への移行やそれらの組み合わせが議論されているが、こうした手法にも一長一短があり、「複数の手法を経済状況に応じて組み合わせることが望ましい」と指摘した。また、中国は中長期的に様々な構造問題を解決していく必要があるとした。

 2002年春に創刊された世界経済の潮流は、今回で第7号にあたり、内閣府では政策運営上の参考資料にあたると位置付けている。

大胆予想、人民元8月切り上げか!?

2005年05月30日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 米国を中心に人民元切り上げ圧力が強まる中、多くの人が人民元について語ってはいるものの、人民元の歴史や取引実態については意外と知らない。今回は、人民元切り上げ論で百家争鳴の仲間入りする前に基本にもう一度立ち帰り人民元の見方を整理したい。

1.人民元の歴史

 1948年1月に『中国人民銀行設立および統一新貨幣発行に関する布告』において制定された人民元(旧人民元)は、翌年1月に公表が開始される。その後インフレが勃発したことから、『新しい人民幣の発行と現行人民幣の回収に関する命令』により新人民元への切り替えがあったものの、人民元は1985年までは、公定レート(人民銀行が決定・公布していたレート)はUSD =1.5〜2.5人民元の範囲で、外貨調整レート(外資系企業の外貨の売買等に適用されたレート)はUSD=3.0人民元の水準で取引されていた。その後各々段階的な切下げがなされた後、1994年に公定レートと外貨調整レートが一本化され「人民元為替レートの統一」がなされ、USD=8.72元となった後、1997年以降は現在に至るまでアジア通貨危機の時も変動無くUSD=8.27人民元の水準で取引されている。

 さてこの歴史のポイントだが、一つは通貨制定以来一貫してドル固定制を採用していたこと。1950年、朝鮮戦争が始まり、米国との経済封鎖が行われ建前は英ポンド固定制となった間(1953年〜1972年)ですら。もう一つのポイントは、1972年から1980年まで人民元は、日米欧10カ国とマレーシアリンギ、シンガポールドルの合計12カ国によるバスケット制を採用していたこと。この二つは、中国の為替政策変更に大きな意味合いを持つ。つまり、一つには制定以降50年以上に渡って採用し続けてきたドル固定制(ここでは、香港ドルのように通貨当局がドルとの交換を保証するカレンシーボード制を指すドルペッグ制と、通貨当局がドルとの交換を保証しないドル固定制とを区別しておきたい)を変更することは、歴史的に初めての決断となることと、バスケット制については見方は分かれるが「既に経験済み」の制度を復活させるに過ぎないということである。

2.今後の人民元の辿る路は

 2001年、WTO加盟以降、中国の為替政策を語るに、従来以上に世界経済とリンクして考察する必要があることは論を待たない。高い経済成長率、巨額の貿易黒字、海外からの高水準な直接投資、潤沢な外貨準備等、人民元を取り巻く環境は当面変わらないことから、中国の為替政策変更圧力は依然残存する。中国当局が主張する、貿易収支の悪化、設備投資・個人消費低迷、不良債権処理遅延等のデメリットは確かに存在する。一方で、経済成長の致命的妨げにならないとすれば、インフレ圧力緩和、他国からの中国バッシング回避、そして何よりも(1)人民元売り/外貨買い為替介入、(2)債券売却による人民元吸収、という中央銀行の金融操作の負担軽減等のメリットも在る。こうなるとメリット、デメリット双方ある中で煎じ詰めれば、中国の為替政策変更は既に高度な「政治的決断」の領域に入っていると言っても過言でない。では何処まで決断できるのだろうか。

 足許の現行為替制度の問題点は、(1)金融自由化は遅れ、銀行間為替市場に先物市場が無いこと、(2)為替レートが市場の外貨需給をフレキシブルに反映していないこと、(3)為替レート変動による資源の最適配分のメカニズムが十分に発揮されないこと、(4)国が為替リスクを全て吸収していること、(5)経済主体には為替リスクの意識が希薄であること、等が挙げられよう。中国金融当局はこれに対応するために、例えば国際収支管理システムの整備と精緻化、為替持高枠管理の導入検討、外資系銀行に対して人民元と外貨の転換の管理強化を図っている段階である。又中国国内外為市場参加者の市場経験が浅いことや人民元為替取引手段がCFETS(中国外貨取引センター)に限定され市場インフラが先進市場に比べ未成熟である現状に鑑みれば、どう考えても変動相場制採用には一気には踏み切れまい。

仮に決断出来たとしても 

 (1)現行制度化での人民元変動幅(現行±0.3%)の弾力化が最低限採りうる為替政策変更の限界で、

 (2)将来的には複数の主要通貨をベースにした「通貨バスケット制」の再採用を睨むことを表明する。

ことが現実的と考えられる。

 ではどのタイミングでどの程度の切り上げ(変動幅拡大)を実現するかである。大胆な見方をお許し頂けるなら、早ければ実務的な準備がほぼ完了するとの説のある戦後60周年を迎える節目の月であり且つニクソンショック記念月にあたる8月か、国慶節(10月1日)前後が候補として上げられよう。ただ政治的決断となった今は、切り上げが今日や明日突然実施されてもでもおかしくないということ。又切り上げ幅だが、仮に変動幅を±10%の拡大を行い、10%の切り上げを実施しても中国の経済成長率に与える影響は1%程度と試算される(みずほ総合研究所)事に鑑みれば、モデレートには変動幅を±5−10%へ拡大して5−10%の切り上げ(6%で香港ドルと対価)、サプライズでは市場に材料出尽くし感を醸成させる意味から変動幅を±10−15%拡大して10−15%程度切り上げの二枚腰戦略で検討していると見たい。

3.人民元切り上げと日本

 問題は日本経済へのインパクト。人民元切り上げは円が現状水準に留まることを前提に、日本の競争力を一時的には上昇させよう。しかし、人民元切り上げで円が相対的に弱まる中、中国の為替管理は切り上げ後再度すぐに緩和されることはない。結果的に海外投機筋は狙いを市場規模に勝る円に移行させることは容易に予想される。又、円高阻止への日本の為替市場介入に対する米国の根深い不満から、人民元切り上げ後は介入が容易に実施できるとは思えない。人民元切り上げというインパクトは、中国よりも寧ろ日本に、つまり一時的には競争力上昇、円高阻止材料払拭感から予想外の円高を日本に強いる可能性がある。牽強付会と言えなくもないが、この時に米国の人民元切り上げ要請の真の目的が何処にあるか初めて知らされ、そして国際政治経済学がいう米国の持つ「構造的権力」(それが露骨な権力の行使であることを意識しないままに、させないまま、ある種の行為へ人を導いていく枠組み。その枠組みに一旦入れば当人たちが自発的に求められる行動にでる=「通貨燃ゆ」谷口智彦著参照)の存在を改めて実感することになるのではと思っている。今後は人民元を語ることは円の歴史を、そして円の将来を語ることになることを肝に銘じておく必要があろう。尚、円高に推移した後のドル円相場動向の見通しについては別の機会を待ちたい。(花井健、善野吉博、5月26日記)

人民元10%以上切り上げを 米、大物使い圧力と英紙

2005/05/24 The Sankei Shimbun

 24日付の英紙フィナンシャル・タイムズは、米財務省が中国当局に対し、事実上米ドルに固定されている人民元相場を10%以上切り上げるよう要求していると報じた。

 米財務省による直接の働き掛け以外に、キッシンジャー元国務長官ら大物を動員し、「米議会での保護主義台頭を防ぐため」として中国側への圧力を強めているという。

 米国は人民元相場改革の「今秋までの実施を求める」(スノー財務長官)と時期を区切っているが、切り上げ幅についても、具体的な数値目標を挙げて迫っていることが判明した。

 同紙によると、米政府はキッシンジャー氏のほか、スコウクロフト元大統領補佐官、金融大手シティグループ副会長らを通じて、中国側に人民元相場の迅速な改革を要求。

 「10%切り上げ」以外にも、対ドル相場の変動幅の拡大や、ドルのほかユーロ、円など複数通貨を対象に変動する通貨バスケット方式の採用なども求めているという。(共同)

中国へ「最後通告」 米国内 失望と期待

2005年05月19日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【ワシントン=広瀬英治】米財務省が10月までと期限を区切り、中国に人民元改革の実施を強く警告したのは、事実上の相場切り上げにつながる人民元改革になかなか着手しない中国への「最後通告」とも言える。米国内に向けて早期実施を“公約”したことで、人民元改革はブッシュ政権にとって、経済の最重要課題になったといえる。

 報告書に対する米国内の反応は、中国を為替操作国に認定しなかった失望と、期限を区切ったことで人民元改革が進むことに期待する見方が相半ばしている。米議会のリンゼー・グラム(共和党)、チャールズ・シューマー(民主党)両上院議員は17日、共同で記者会見し「報告書はブッシュ政権としては人民元に最も厳しい姿勢を見せたが、全く不十分だ」(シューマー議員)として、人民元政策を為替操作と定義づける新法案の提出を表明した。

 全米製造業者協会(NAM)は17日の声明で「中国を為替操作国に認定しなかったことに失望した」とした上で「もし中国が10月までに行動を起こさなければ、NAMは財務省に、為替操作国の認定だけでなく国際通貨基金(IMF)あるいは世界貿易機関(WTO)への人民元問題の持ち込みを求める」と、米財務省をけん制した。

 一方、ブッシュ大統領は17日、ロブ・ポートマン米通商代表部(USTR)代表の就任式典でのあいさつで、中国に対し、知的財産権の保護や貿易障壁の撤廃などを強く求めていく意向を示した。米中両政府が人民元問題の解決につまずくようだと、新たな摩擦の火種には事欠かない。

人民元改革10月までに

2005年05月18日 読売新聞 Yomiuri On-Line

切り上げ 米、中国に警告 財務省報告書

 【ワシントン=広瀬英治】米財務省は17日、主要な貿易相手国・地域の為替政策に関する半年ごとの為替政策報告書を議会に提出した。中国が通貨・人民元を対ドルで低い為替レートに事実上固定している問題について、政府間協議が必要となる「為替操作国」として認定することは見送った一方で、「この状況に実質の伴う変更がなければ(操作国に)認定せざるを得なくなる」と初めて認定の可能性に言及し、次回報告書が発表される10月までに中国が事実上の相場切り上げとなる人民元改革に乗り出すよう強く警告した。

「為替操作国」認定に言及

 具体的には、報告書は「財務省は次回の報告書をまとめるまでの半年間、中国の為替市場改革の進展を監視し続ける」と指摘し、初めて期限を区切って中国側に人民元の早期改革を迫った。

 中国に為替改革を強く求める理由として、報告書は「現在の人民元政策は(あるべき姿から)大きくゆがんでおり、中国とその貿易相手、さらに世界の経済成長にリスクを与えている」と強調した。

 同日会見したジョン・スノー財務長官は「中国に対し、ただちに完全な変動相場制に移行しろと言っているわけではない」と述べ、中国の金融システムが為替変動の拡大に順応できるよう、段階的に人民元レートの変動幅を広げていくよう求めた。

 米国は、貿易赤字の4分の1以上を対中国の赤字が占め、産業界などに、低い人民元レートが中国製品の対米輸出に拍車をかけているとの不満が高まっている。米議会で中国に対する経済制裁法案の提出が相次ぐなか、米政府が今回の報告書で、中国を為替操作国と認定するかどうかに注目が集まっていた。

為替政策報告書

 1988年の包括通商・競争力法に基づき、米財務省が半年ごとに米議会に提出する。正式名称は「国際経済と為替政策に関する議会報告書」。為替相場を不当にゆがめて対米通商を有利にしているような貿易相手を為替操作国と認定し、2国間協議で是正を求める。90年代前半までに中国、韓国などが認定されたことがあるが、順次取り下げられた。認定基準は、為替市場介入の実績などが重視される一方で「マクロ経済の動きなど多種多様な要素を検討する」(米財務省)としており、必ずしも明確ではない。

人民元切り上げ問題がはらむ中国リスク

2005/05/16 asahi.com

 あと10年たてばGDPで日本を追い抜くといわれる中国。米国に匹敵する経済大国になろうとしているが、リスクも潜在している。今後の中国の経済状況をどう読むか。間近ともいわれる人民元の切り上げをきっかけとしたリスクの可能性を解説する。

    ◇      ◇

  毛沢東(マオ・ツートン)が描かれている中国のお札は、単位が「元」。「人民元」と呼ばれるには理由がある。

 抗日戦争に続く内戦のさなか、人民解放軍は毛沢東から厳しい規律を求められていた。農民から作物や物を調達する時は借金証文を渡した。解放軍の支配地で流通するこの地域通貨のようなものが、人民元の原型になった。1949年、建国された中華人民共和国は、元に代わり人民元を国家の通貨に昇格させた。

 毛沢東時代、通貨は資本主義の象徴で、共産主義社会が訪れれば消滅する、とされていた。それが今や国際通貨の道を進みつつある。人民元の切り上げ問題はその途上で起きた出来事だ。

 人民元の切り上げはいつ?

 事実上ドルに固定されている人民元に対し、米国は「適正な価値を市場が決める変動相場制に移行すべきだ」と「切り上げ」を執拗に求めている。中国は「より弾力的な制度への改革を研究している」と慎重な構えだ。

 中国の貿易額は2004年、1兆1547億ドルとなり、ついに日本を追い越した。貿易黒字は300億ドルを超える。攻勢をもろに受けているのが米国。対中貿易赤字は1500億ドル。さらに拡大する恐れがあり、米国議会は「購買力平価で比較すると、人民元はドルより40%も低く設定されている」と非難している。

 中国のGDP(国内総生産)は04年までの10年間で3倍になった。次の10年で日本を追い越す規模になる見通しだ。米国に匹敵する大国になる中国をこのまま放置していいのか。「切り上げ」論には、そうした思いがある。

 だが中国も「日本の失敗」を教訓にしている。米国の圧力に屈し、プラザ合意で急激な「円切り上げ」を行い、同時に金融自由化に踏み切り、デフレへと転げ落ちた日本の轍は踏みたくない。

 中国は市場経済を進めながらも外貨管理は統制下に置いている。送金など国境を越える出入りは認可が必要だ。経済の安全運転には都合がいいが、統制を続ける限り、人民元は国際通貨になれないし、アジアで経済覇権を握ることもできない。国内で痛みを伴った世界貿易機関(WTO)への参加が、貿易大国への道を開いたように、カネの流れを世界とつなぐ「開放経済体制」は飛躍への条件になっている。

 「いつどんな方法を採用するか意表をつくことになるだろう」

 温家宝(ウェン・チアパオ)首相は、3月の記者会見でサプライズを強調した。切り上げは時間の問題のようだ。焦点は「いつ」と「上げ幅」である。

 「中国は追い込まれて決断することを避ける。自発的に行うなら早いほうがいい」とみる人たちからは、「5月中にも」の観測が流れる。一方、「為替先物市場が国内にないまま、変動相場制につながる切り上げには踏み切れない。市場整備と並行すれば今年中は無理」と指摘する声もある。

 元レートは94年からドルに連動している。当時は1ドル=8.7元。現在は8.27元で、変動幅は上下0.3%。この連動幅を3〜5%に広げる、という観測もある。段階的に、時間をかけて徐々に切り上げを行い、変動制に移行してゆくというシナリオだ。

 中国にとって都合がいいが、微調整の繰り返しで切り上げ圧力に耐えられるか疑問視されている。

 日本が変動相場に移行する直前、1ドル=360円から308円に切り上げられたことがあった。中国も遠からず変動制を受け入れるなら、今から相当な水準調整が必要かも知れない。

 中国バブルは崩壊するか?

 「10%程度の人民元引き上げでは市場に打ち止め感は出ない」と先進国の市場関係者はみるが、日本経済にはどう影響するだろうか。

 一般的には競争上有利と見られがちだが、みずほ総研は昨年行った調査で「30%切り上がっても日本のGDP押し上げ効果は0.3%程度」とみる。日本の景気回復を支える中国の高成長が減速するリスクのほうが怖い、という。

 中国製品と市場でぶつかり合う企業はさほど多くない。価格競争を強いられている繊維、家電、機械部品などは、すでに多くが中国に進出。日本企業にとって中国は、生産価格を下げるだけでなく、日米摩擦を回避する迂回の生産拠点にもなっている。

 元の引き上げは、輸出企業にはコスト増となる。末端価格に転嫁できなければ採算は厳しくなる。スーパーやコンビニ、飲食チェーンなどサービス業や内需を見込んで進出した自動車産業などには追い風だ。輸入原材料や部品の価格が下がる。しかし自動車メーカーは、「鉄鋼や銅など原材料価格が急上昇している。少しばかり元が上がっても焼け石に水」という。

 中国製品が値上がりするなど、消費者にとっても多少影響はあるだろうが、相殺すれば日本にとってさほど大きな影響はない。

 ただし、それは通貨調整が中国経済に衝撃を与えなかった場合の話だ。問題はリスク・シナリオが現実化した時だ。都市の不動産バブル、国有企業の赤字、銀行の不良債権など中国には波乱要因が溜たまっている。海外からの投資と高成長が問題の噴出に蓋をしてきた。マネーの逆流が経済の屋台骨を揺るがすことはアジア通貨危機でも経験した。

 中国には約1万6000の企業が日本から進出。「中国ラッシュ」に見えるが、中国の人は「日本企業は慎重すぎる」という。中国の統計では04年の投資額(実行ベース)で日本は4番目。1位香港、2位バージン諸島(実質は台湾)、3位韓国。5位は米国だが投資件数では日本を上回り、「台湾経由で投資している企業がかなりあり、実質的に米国は日本より多い」と言われる。

 日本が慎重になるのは、中国リスクが無視できないからだ。バブル崩壊から、企業のマネジメントまでさまざまな不確定要因がある。「法治より人治」といわれる中国では、危ない時こそ人脈がものをいう。統制経済は行政の裁量が働きやすい。助ける企業と見捨てる企業を当局が選別することもありうる。「反日」が潜在する中国で日本企業は有利な扱いを受けるだろうか。華人ネットワークがある台湾や香港、いざとなったら政府がバックアップする米国のような安全装置が日本企業にはない。

 元がドルと固定され、為替リスクがないことが外国から資金流入を促してきた。人民元の金利がドルより高ければ好都合だ。元の価値が上昇することが確実なら元投資は得だ。国有企業などは香港でドル資金を調達し、持ち込んで元に替える。そうして集めた余剰資金がビルや土地に投資され各地で不動産バブルを起こしている。

 過熱経済を心配する当局は金融引き締めに躍起だが、効果が出ないのは、当局の目をかいくぐって流れ込む資金があるからだ。統計で説明がつかないこの種の資金は年100億ドルを超える。密貿易や、海外の子会社との経理操作で投機資金を動かすことはたやすい。

 統制はモノやカネが足らない所で有効だが、有り余る経済ではコントロールは難しい。目を光らせても、マネーの流動を止められない。日本のバブル崩壊が、不動産融資の総量規制をきっかけに起きたように、当局が強権発動して蛇口を閉めにかかると、マネーの逆流が起こる。投機資金は臆病だ。危ないと見ると途端にとまり、逃げ出す。

 不動産価格の高騰は上海や広州(クワンチョウ)など沿岸部にとどまらず、重慶(チョンチン)、成都(チョントゥー)、西安(シーアン)など地方都市に広がっている。赤字の国営企業まで子会社を通じて投機に走っているといわれる。バブルが弾ければ企業倒産→銀行破綻→経済失速→失業の増大という負の連鎖が始まる。

 中国バブルの崩壊は、きっかけが予測もつかない。元切り上げに当局が慎重なのも、引き金になることを恐れているからだ。

 13億人の中国が混乱すれば世界が揺さぶられる。最大の問題は失業だろう。高成長の現在でさえ3億5000万人の「不完全就労」がある、と推計される。高成長が挫折すれば、億単位での失業の増加も予想される。職を失った人が周辺のアジア諸国に流出し、人口流動に拍車がかかる。

 08年の北京五輪、10年の上海万博までは成長は持続する、と見られているが希望的観測の域をでない。桁外れに大きな隣国の混乱は他人事では済まない。 (編集委員 山田厚史)

人民元改革に日米温度差、原油高には懸念…財務相会談

2005/04/16 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【ワシントン=西沢隆之】先進7か国財務相・中央銀行総裁会議(G7)などに出席するためワシントン入りした谷垣財務相は15日午後(日本時間16日早朝)、ジョン・スノー米財務長官と会談した。

 スノー長官は会談で、中国の通貨・人民元の改革を急ぐべきだとの考えを示した。これに対して谷垣財務相は人民元改革の必要性は認めたが、中国の取り組みを見守る考えを示した。人民元改革の進め方をめぐる日米の足並みはそろわなかった。

 会談でスノー長官は、「人民元のさらなる柔軟性の必要性」を訴え、人民元の対ドル・レートが低く固定されていることが、米国の経常赤字拡大につながっている、との認識を強調した。これに対して谷垣財務相は「中国政府もいろいろ考えており、いい方向で解決されることを願っている」と述べ、中国の立場に一定の配慮を示した。

 背景には、過熱し続ける中国経済が人民元改革によって失速し、世界経済に悪影響を与えることへの懸念がある。

 G7の主要議題となる原油高騰については「世界経済のリスク要因だ」との認識で一致した。また、スノー長官は米国の財政赤字削減に改めて強い意欲を示し、谷垣財務相も「(年金改革は)日本の財政改革の最大の問題だ」と述べて、ともに財政再建を急ぐ姿勢を強調した。

日銀総裁、中国通貨の変動相場制移行に慎重発言

2005/04/16 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【ワシントン=西沢隆之】日本銀行の福井俊彦総裁は15日午後(日本時間16日未明)、中国の通貨・人民元改革について「世界経済の循環メカニズムを効率化させる道具立てとしての角度から議論しないと意味がない。単に圧力をかければいいというものではない」と述べ、急激な変動相場制への移行に慎重な考えを示した。ワシントン到着時に記者団に述べた。

 G7での原油高をめぐる議論については「先進国は生産性を上げ、新興国は効率的な資源を使うという政策にウェートが移る最初の場になる」との認識を示した。

 人民元改革については、ブッシュ米大統領が14日の講演で、中国に変動相場制への移行を求める発言をしている。

「騒がしい時には実施せず」 人民元見直しで中国首相

2004/11/29 The Sankei Shimbun
 中国の温家宝首相は28日、人民元相場の見直しについて「騒がしい時にはできない」と述べ、人民元切り上げを期待する投機的な動きが高まっている時には見直しを実施しないとの姿勢を示した。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)プラス3(日中韓)首脳会談のため訪問中のラオス・ビエンチャンで記者団の質問に答えた

 温首相はまた、将来的に人民元相場の形成方法を何らかの形で見直す場合、中国のマクロ経済の安定や正常な市場メカニズム、健全な金融システムなどが最も重要な前提になることを強調した。

 その上で「中国自身と世界への影響を考慮する必要がある」と述べ、アジア経済危機当時に中国が人民元を切り下げなかったことを例に引いて国際的な影響を十分に考慮して決断する姿勢を示した。(共同)

人民元改革

2004/11/06 東奥日報

 現在の人民元相場は「管理された変動相場制」。

 市場での一日の取引の加重平均相場を基に中国人民銀行(中央銀行)が主要外貨の翌日の基準値を公表、米ドルの基準値は前日に比べ上下0.3%の範囲内で調整できる。

 1998年以後、8.277―8.280ドル近辺で事実上米ドルに固定された。

 より柔軟な仕組みに移行する改革案として、対ドル変動幅の拡大や、元と関係が深い複数の通貨で構成するかご(バスケット)をつくり、連動させる「通貨バスケット制」の採用が検討されている。(共同)

IMF、人民元改革促す報告書公表 中国は容認表明

2004/11/06 The Sankei Shimbun

 国際通貨基金(IMF)は5日、事実上米ドルに固定されている中国の人民元相場について、変動幅拡大と複数の通貨に連動させる「通貨バスケット制」の採用を提案、より柔軟な仕組みへの移行を促す報告書を公表した。中国当局はこれを歓迎する姿勢を表明し、IMFの指摘を事実上容認する考えを示した。

 この報告書は8月発表の対中年次経済審査報告のたたき台となった文書で、中国側との協議を経て7月上旬作成。中国については例年公表されていなかった。IMFは「中国側の同意」を受けて公表したとしており、現時点で中国当局が公表を認めたこと自体、「人民元切り上げ」の時期と合わせて憶測を呼びそうだ。

 中国の新華社電によると、中国人民銀行のスポークスマンは「報告書公表はIMFによる透明性向上の取り組みの一環であり歓迎する」とのコメントを発表した。

 報告書によると、中国側も人民元改革の必要性は認識しているものの「小規模な最初の動きが(投機的な)資本流入を加速させる可能性を懸念している」という。これに対してIMFは「大規模な資本流入が続けば、より大きな(為替の)対応が必要になる」と指摘した。(共同)

 <人民元改革> 現在の人民元相場は「管理された変動相場制」。市場での一日の取引の加重平均相場を基に中国人民銀行(中央銀行)が主要外貨の翌日の基準値を公表、米ドルの基準値は前日に比べ上下0・3%の範囲内で調整できる。1998年以後、8・277−8・280ドル近辺で事実上米ドルに固定された。より柔軟な仕組みに移行する改革案として、対ドル変動幅の拡大や、元と関係が深い複数の通貨で構成するかご(バスケット)をつくり、連動させる「通貨バスケット制」の採用が検討されている。(共同)

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