TOPIC No.2-154 個室ビデオ店火災

01. 個室ビデオ byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

煙感知器を無点検か 放火のビデオ店、指摘も報告せず

2008/10/06 中国新聞ニュ−ス

 十五人が死亡、十人がけがをした大阪市浪速区の個室ビデオ店放火殺人事件で、煙や熱の感知器を設置した約五年前から、個室ビデオ店が消防法で定められた半年に一回の定期点検をまったく実施していなかった疑いがあることが六日、関係者の話で分かった。

 設置から約五年間、大阪市消防局に点検結果を報告しておらず、立ち入り検査で指摘後も改善しなかった。出火当時、避難誘導灯が消えていた疑いなどが既に判明しており、浪速署捜査本部は感知器の作動状況も詳しく調べる。

 市消防局によると、消防法は半年に一回の定期点検のほか、三年に一回の結果報告を定めている。個室ビデオ店からの報告は一度もなく、昨年五月の立ち入り検査で不備を指摘しても報告はなかったという。

 同店に感知器を設置した消防設備販売会社(大阪府枚方市)によると、二〇〇三年十一月、熱感知器三十三個、煙感知器三個、避難誘導灯七台を設置した。同社は点検業務もこなすが、一度も依頼されていないという。

 避難誘導灯は個室が並ぶスペースには四台設置されており、店内から避難した客が「出火当時は消えていた」と証言。

 また、ビルの非常ベルがすぐに止まったとの証言があり、ビル六階に住む男性管理人が大阪市消防局に「誤作動と思い、切った」と説明したことが明らかになっている。

「戸籍売り金つくった」 ビデオ店放火殺人の小川容疑者

2008/10/05 中国新聞ニュ−ス

 十五人が死亡、十人が負傷した大阪市浪速区の個室ビデオ店放火殺人事件で、無職小川和弘おがわ・かずひろ容疑者(46)=現住建造物等放火と殺人などの容疑で逮捕=が「戸籍を売って金をつくった」と関係者に話していたことが五日、分かった。

 小川容疑者はこれまでの浪速署捜査本部の調べに「生活保護を受けるような生活が惨めで、死のうと決めた」などと供述しており、捜査本部は動機の背景となった経済的な困窮を示す事実とみている。

 同日、小川容疑者の自宅マンションを家宅捜索。押収資料から戸籍売買などの裏付けを進める。

 小川容疑者の知人男性によると、小川容疑者は昨年四月ごろには約六百万円の借金があった。昨年末には心臓を悪くして入院し、住んでいた賃貸マンションの家賃を延滞した。

 退院後のことし一―二月ごろになって「戸籍を売って金をつくった。戸籍は後でまた戻す」と話したという。

 戸籍売買については他人の戸籍を使って偽装結婚するケースなどがあり、小川容疑者の戸籍も悪用された可能性がある。

 また、小川容疑者が一時期「内田」の姓を名乗っていたことも判明、捜査本部は関連を調べる。

 供述によると、小川容疑者は今春から生活保護を受け、九月分の家賃は支払っていた。事件前の数日間は個室ビデオ店などを転々とし、自宅に帰っていなかった。

「テレクラ王」出会い系などで下火、個室ビデオ店に業変

2008年10月05日 asahi.com

 15人が死亡した放火事件の現場となった大阪・難波の個室ビデオ店「試写室キャッツなんば店」は数年前、個室で見知らぬ異性からの電話を待つテレホンクラブから、個室ビデオ店に業態を変えていた。「テレクラの先駆け」と呼ばれた有名店だったが、ブームの下火とともに、用途変更届けを出さないまま姿を変えて時代の波に乗り、「難波で一番安い宿」との評判を得ていた。経営実態は複雑で、責任の所在はどこにあるのか。

 個室ビデオ店「キャッツ」グループを経営しているのは有限会社「スクラム」。大阪、京都、神戸で計6店の個室ビデオ店を展開している。

 本社の所在地は、大阪市北区の繁華街のビルに入るグループのテレホンクラブだ。事件後、入り口には休業の張り紙がある。

 大阪府警や関係者によれば、スクラムは00年5月に設立され、個室ビデオ店のほか、テレホンクラブも経営している。

 民間信用調査会社や複数の関係者によると、スクラムの親会社は「アバンサール」。法人登記には「不動産」や「経営コンサルタント」とある。本社事務所はスクラム近くのビルの一室にある。

 事務所にいた男性は「スクラムの事務所もここだ」と話した。キャッツグループの元従業員は「店長には何の権限もない。『アバンサール』が実質的に経営していた。スクラムという会社は聞いたことがない」と打ち明ける。

 民間信用調査会社は「(経営形態の)詳細は判明していない」としている。

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 「アバンサールは業態をどんどん変えることで有名だった」。大阪市内の別の個室ビデオ店で働く従業員はこう話す。

 だが00年代、テレクラは、インターネットや携帯電話を使った出会い系サイトなどの影響で下火になった。警察庁によると、99年に全国で3000以上あったテレホンクラブは、07年に500店舗以下まで激減。その間、スクラムが設立され、個室ビデオ店や性風俗店などの経営に乗り出した。「目のつけ所がいい人だった」と経営者を知る関係者はそう話す。

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 キャッツなんば店の利用料金は1時間コース500円。宿泊できるナイトコース(午後11時〜翌午前10時)は1500円だった。

 「難波で一番安く宿泊できる場所」。30代のフリーター男性はそう聞いて利用したことがあるという。

 だが、個室ビデオ店に用途を変えても大阪市に変更届けを出さず、用途は「事務所」のまま。07年5月、消防局の立ち入り調査で指摘され、2カ月後に届け出た。

 火災後、店側が十分な初期消火や避難誘導をせず、排煙機能を持つ窓を石膏(せっこう)ボードでふさいでいたなど、ずさんな防火態勢が相次いで発覚。火災の1週間前にキャッツなんば店を利用した会社員の男性は「ただでさえ狭い店内の通路に、ごみが入った大きな袋やジュースの在庫が積み上げられていた」と証言する。

 アバンサールの幹部は、朝日新聞の取材に「キャッツはスクラムが運営しているので直接は関係がない。ただ、今は警察で事情を話したり、他の店舗の点検なども含めて忙しいので、取材にきちんと応える準備ができていない」と話した。

 業界に詳しい関係者や登記簿によると、アバンサールは約25年前、テレクラ「キャッツ」を開業。当時、関西では先駆け的な存在だった。流行に乗って店舗を拡大。全盛期、大阪の風俗業界で、2大グループの一つといわれ、「テレクラ王」と呼ばれた。経営者はレーシングチームの運営にかかわり、芸能人との交友関係もあったという。

個室ビデオ店放火:天井裏から煙広がる 1〜2分で充満か

2008年10月04日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 大阪市浪速区の個室ビデオ店の放火殺人事件で、東大阪市の無職、小川和弘容疑者(46)=殺人容疑などで逮捕=が個室内で放火した際、煙は天井裏へ抜けて広がった後、一気に店内に降下して充満した可能性が高いことが分かった。その間わずか1〜2分で、逃げ遅れの一因となったとみられる。大阪府警浪速署捜査本部は個室を再現して燃焼実験を行い、煙の流路などを調べる。

 捜査本部と大阪市消防局の現場検証の結果、小川容疑者がいた個室周辺の天井の燃え方が激しく、一部は焼け落ちていた。小川容疑者が持ち込んだバッグに放った火はソファなどに燃え移った。ポリウレタン製のソファは燃えやすく、炎上して石こうボード製の個室や廊下の天井を焼き、穴を開けた。煙はこの穴から間仕切りのない天井裏で広がり、店内を覆うように降下したらしい。

 煙は通常、空気より軽く、秒速3〜5メートルで流れるという。このため約220平方メートルの店全体に充満するのは、1〜2分程度しかかからなかったようだ。

 店の窓は南側に2カ所しかないうえ、いずれも内側に石こうボードが張られていた。このため、北側と東側の各1カ所の出入り口のほかは、煙は排出されなかった。捜査本部は、一気に店内を覆った煙が滞留したことも、南側に犠牲者が集中した一因とみて調べる。

【個室ビデオ店火災】音信不通、引き取り人いない…犠牲者、それぞれの事情

2008.10.04 MSN産経新聞

 大阪市浪速区の個室ビデオ店「試写室キャッツなんば店」の放火事件で、犠牲者や重症者の多くは免許証や携帯電話を持っていなかった。キャッシュカードや電車のICカード、電話番号のメモ…。府警はこうした所持品から身元を割り出したが、ほぼ半数の人は住民票の住所地に住んでいなかったり、家族と音信不通だったり。遺体の引き受け手のない人や、身元を明かそうとしない負傷者もおり、何らかの事情を抱える境遇にあった。火災現場に居合わせた店員は「亡くなったのは常連ばかり。みんないい人だった」と肩を落とした。

 「何をしてるのかなと気になっていた。家もなく転々としてたのかと思うとやるせない…」。犠牲者の大阪市内の30代男性を幼いころから見守ってきた近所の女性(63)は突然の悲報に絶句した。

 男性は10年ほど前に相次いで両親を病気で亡くし、市営住宅で弟と2人で暮らしていた。数年前に近くの銭湯で掃除の仕事を見つけ、「よく働く」と評判だった。しかし、銭湯は閉店。兄弟は今春、家賃の滞納で市営住宅を退居し、行方はわからなかったという。

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 2日昼過ぎ、50歳くらいの男性が現場を訪れた。「ここに来れば手がかりがあると思って」。来るはずの競艇場に知人が姿を見せず、「事件に巻き込まれたのでは」と心配になった。

 知人の名は「みやちゃん」。日雇い作業員の仲間だが、本名は分からない。みやちゃんは前日、競艇で勝ち、一緒に酒を飲んだ後、「今日は難波のキャッツに行くわ。また明日」と言って別れたという。

 身元が判明している犠牲者や負傷者に「みや」とつく人はおらず、今も安否は不明。現場を訪れた男性も浪速署を訪ねてみてはとの周囲の声をさえぎり、そのまま現場から立ち去った。

 心肺停止状態で救出され、意識不明になっている男性(47)は、朝7時から夕方まで定食屋、午後7時から11時過ぎまではキャバレーのホールスタッフとして働いていた。1日の労働時間は17時間前後。八尾市内に部屋を借りていたが、定食屋に近いキャッツなんば店で夜を明かすことが多かった。

 病院に見舞いに来たキャバレーの上司は「うちで働き始めてから5年半。無断欠勤は一度もなかった。事件当日は店に来ないので、まさかと思って警察に問い合わせた。彼はこちらが心配するぐらい一生懸命働いていた。なぜそんなに働くのかと聞くと、『高齢の両親の面倒をみるためお金が必要だから』と答えていた」と振り返った。

 しかし、実際には、男性は数年前に奈良県の実家を出たきり、音信不通だったという。

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 犠牲者の中には、ごく普通に家族と暮らしていた人もいるが、遺族は完全に口を閉ざしている。個室ビデオ店は「風俗店」というイメージが強いためのようだ。

 東京都町田市に住むコンピューター会社社長の男性(61)宅では事件後、インターホンの呼び掛けに応答がなかった。隣に住む女性(50)によると、社長は妻と娘の3人暮らしで、おしどり夫婦として知られていたという。

 3日午後、現場に花を供えに訪れた取引先の男性(50)は「数日前に電話したとき、発注していたソフトが完成したと話していたので、今回持ってきてくれるつもりだったのでは。コンピューターの知識がすごくて優秀な方だった。非常に残念です」。

 社長がなぜ個室ビデオ店に宿泊していたのか。周囲にも分からないままだ。

完全に『個』の世界 歌舞伎町 個室ビデオ店で宿泊体験

2008年10月4日 東京新聞

 十五人が死亡した大阪市浪速区の個室ビデオ店放火殺人事件は、個室ビデオ店が安価な宿泊場所として利用されている実態を浮き彫りにした。東京都心の個室ビデオ店の防火態勢は万全か。四日未明から朝にかけて、新宿・歌舞伎町の個室ビデオ店に泊まってみた。 (佐藤大)

 金曜日の夜とあって酔客でごったがえす西武新宿駅周辺。雑居ビルには数十メートル間隔で個室ビデオ店が並ぶ。派手な看板に「ホテルがライバル」などの文字が躍る。

 終電時間が近づくと店に入る人が目立ち始める。都内在住の男性会社員(30)は「事件のことは知っているけど、それはそれ、これはこれ」とほろ酔い気味。西東京市の男子大学生(29)も「たまに利用している。危ないとか言ったら、カラオケボックスとかも同じなんで。やっぱり安さが魅力ですね」と事件後も抵抗感は薄い様子だ。

 入店すると、棚に所狭しと並ぶアダルトDVDが目に飛び込んできた。一般の映画DVD、コミックも置いてはあるが、申し訳程度。スーツ姿のサラリーマン五、六人が黙々と物色している。料金は二時間千円から十二時間三千円まで。自動券売機で六時間二千円のコースを選ぶ。

 客への配慮か、フロントの店員の顔は、のれんで見えないようにしてある。火災への不安を口にしてみると、店員は「(大阪の店と違って)うちは出口が二つありますから」と自慢げに言った。

 個室は幅一メートルほどのコの字形の通路を挟んで一フロアに十五部屋ほど。通路は外開きのドアが開くと、人は通れない。共用スペースにはトイレやシャワールームがある。

 二畳ほどの個室に、リクライニングシートや大型テレビ、DVDプレーヤーのほか、パソコンやフロント直通のインターホンも。至れり尽くせりではあるが、窓はなく、圧迫感がある。

 個室や廊下の天井を見上げると、自動火災報知機があった。通路には消火器や誘導灯もある。しかし、コの字の一番奥にある避難口のドアにはカギがかかり、客が開けることはできなくなっていた。防犯上の理由と思われるが、火事があれば、奥の部屋から逃げられなくなる可能性がある。

 個室での視聴にはヘッドホンしか使えない。外部から遮断され、完全に自分の世界に入り込む。何か起きた時、気付いて逃げることはできるだろうか−。心配で眠りは浅かった。

個室ビデオ店放火:7店で17件違反 東京消防庁検査初日

2008年10月03日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 大阪市浪速区の個室ビデオ店放火事件を受け、東京消防庁が3日に実施した個室型店舗に対する一斉立ち入り検査で、渋谷消防署管内の個室ビデオ店9店のうち、7店で計17件の違反が見つかった。検査は11月28日まで行われ、不備があれば改善を指導する。

 違反の内訳は▽防火戸の下に物を置くなど防火設備の閉鎖作動障害(4件)▽誘導灯の未設置など消防用設備等違反(3件)▽年間に最低2回義務づけられている消火・避難訓練の未実施(2件)−−など。個室ビデオ店が入居する9棟のビルでは他の店舗についても検査し、127件の違反があった。【佐々木洋】

【個室ビデオ店火災】記者も恐怖を実感 歌舞伎町と池袋の店舗ルポ

2008.10.03 MSN産経新聞

 個室フロアには目につかない消火器、ヘッドホンで視聴するしかないテレビ…。2日夜、東京都内の繁華街の個室ビデオ店に入ると、火災で15人が死亡した大阪市浪速区の個室ビデオ店と同じように、火と煙から逃れることが難しい状況が実感できた。利益至上主義が防火対策をおろそかにしているのか。全国でも有数の2つの繁華街で個室ビデオ店を回ってみた。(高久清史、国府田英之)

ふさがる通路

 全国屈指の歓楽街、新宿区の歌舞伎町。その中の雑居ビルに入居する個室ビデオ店に入った。受付で2時間1000円のコースを選び、個室フロアに続く階段を上ると、1人がやっと通れる広さだ。「火事になって逃げるとき、非常に危険」。そう直感する。

 個室フロアに上がると、幅1メートルほどの通路が見える。通路の左右に個室があり、ドアを引くと通路はふさがってしまった。障害は多い。

 「消火器は受付のフロアに2つ用意してある」と店員は言うが、肝心の個室フロアにはないのだろう。自動火災報知機は−。店員は「各階に備えている」と説明するが、目視では確認できなかった。

 「通路を広くして金が高くなったら使う方も困る。酔っぱらいは熟睡してしまって、(火災報知機などの安全設備は)意味がない。怖ければ来なきゃいいし…」。この店から出てきた30代の飲食店員の男性は、安全よりも安値優先のようだった。防火対策なしでも需要と供給のバランスが取れている。

聞こえぬ恐怖

 「6時間2000円」「12時間3000円」。豊島区の池袋駅にほど近い路地沿いにある個室ビデオ店。その看板に書かれている“売り文句”だ。

 2日深夜、30代のサラリーマンが酔っぱらった様子で店に足を向けた。「ヘッドホンをつけると室外の様子が分からなくなるから心配だけど、安いから来てしまう。喫茶店とかでは疲れは取れないでしょ」。そう言い残して姿を消した。

 この店の個室は30室。廊下は2人がすれ違えるぐらいの幅があり、火災報知機や誘導灯、消火器が備え付けられている。防火意識の高さがうかがえる。

 ただ、テレビにスピーカーがついておらず、ヘッドホンでしか視聴できない。店員は「火事があったらインターホンで知らせる」と言うが、ヘッドホンをしていたら聞こえない。そのときは「部屋のカギを開けてお知らせします」と抑揚のない声で答えてきた。店員が逃げるのに必死だったらと考えると、怖くなった。

【個室ビデオ店火災】故意の犯行「どう対応したら…」

2008.10.02 MSN産経新聞

 大阪市浪速区で起きた個室ビデオ店火災。現場となった「試写室キャッツなんば店」は消防法上は大きな問題がなかったにもかかわらず大惨事につながった。平成13年の歌舞伎町ビル火災などを受け法改正も進み、店舗側も一定の防災対策を進めていたにもかかわらず、放火によって繰り返された悲劇。「故意の犯行にどう対応したら良いのか」。同業者たちの悩みは深い。

 大阪市都島区の個室ビデオ店の男性店長(30)は、ひどく酔った客や著しく不審な客には入店拒否などの対応をとっているという。この店では個室ビデオ店を狙った強盗事件が相次いだこともあり、警備会社とも契約。店には催涙スプレーも備えつけている。さらに「大きな荷物を持っているときは、預からせていただくこともある」というが、それでも「意図的な犯罪を食い止めるのは難しい」と話す。

 また、東大阪市内のある個室ビデオ店の店長は「挙動不審な客がいたら、退室後に部屋を確認をすることはあるが、利用中には少々のことがあってもなかなか確認はできない」と打ち明ける。

 全国約1360店舗のネットカフェや漫画喫茶が加盟する業界団体「日本複合カフェ協会」顧問の若松修さんは「ネットカフェの場合は個室といっても間仕切り程度だがビデオ店は天井まで仕切りがある完全個室型だったため、利用客が火事に気づきにくかったのではないか」と、多くの死者が出た理由を分析。その上で、今回のような犯罪について「完全には排除できないかもしれないが、会員制を取ることが抑止力になると思っている」と強調する。

 一時期、ネットオークション詐欺などの温床となった反省もあってネットカフェなどでは近年、身分証提示を求める会員制の店舗が増えている。半面、個室ビデオ店では、身分証が必要なケースはほとんどない。さらに24時間営業のところも多く「不審人物が入り込む余地がある」という指摘もある。

 一方、ネットカフェ難民の実態調査を行っているNPO法人「釜ケ崎支援機構」によると、住居を失ってネットカフェなどを転々としている人のなかに、個室ビデオ店で暮らす“個室ビデオ難民”もおり、30〜50代の男性が多いという。

 個室ビデオの利用価格帯は、一晩1500円程度。ネットカフェの価格帯1000〜2000円の中間程度にあたるうえ「部屋ごとに完全に区切られている個室ビデオ店の方が過ごしやすい」と話す人も少なくないという。

【個室ビデオ店火災】46歳男「生きていくのが嫌になり」放火

2008.10.01 MSN産経新聞

 1日午前2時55分ごろ、大阪市浪速区難波中の雑居ビル1階の個室ビデオ店「試写室キャッツなんば店」(島本和典店長)から出火、鉄筋7階建てビルの1階部分約40平方メートルを焼いた。この火事で男性客15人が死亡したほか、10人が病院に搬送され、1人は意識不明の重体。大阪府警捜査1課は浪速署に捜査本部を設置し、火元の個室を使用していた男を、殺人と殺人未遂、現住建造物等放火の疑いで逮捕した。

 捕まったのは、大阪府東大阪市加納、無職、小川和弘容疑者(46)。「生きていくのが嫌になり、ライターで荷物に火を付けた。煙が充満して怖くなり店の外に出た」と供述しているという。

 調べでは、小川容疑者は同店の個室で自分のキャリーバッグ内の新聞紙に火をつけ、15人を殺害するなどした疑い。供述によると、小川容疑者はこの日午前1時半ごろ、友人の男性に連れられて来店。友人とは別々の個室に入り、その後、放火したという。友人とされる男性もこの火事で入院している。

 捜査本部や消防などによると、同店内にはビデオを試写する個室が32室あり、店内には当時、客26人と店員3人がいた。大きな火の手は上がらなかったが、全室に煙が充満。犠牲者の多くは個室内で発見され、数人が通路に倒れていた。大半の客が出火当時すでに寝ていたとみられ、煙が充満しているのに気付かずに逃げ遅れた可能性が高いという。捜査本部は同店の防火設備や避難誘導に問題がなかったかについても、業務上過失致死傷や消防法違反容疑などで調べる方針。

 1日は、消防法施行令の改正により、カラオケボックスや個室ビデオ店、ネットカフェなどに自動火災報知機の設置が義務づけられた日だった。

 現場は南海電鉄難波駅の西約150メートルの飲食店やビルが立ち並ぶ繁華街。近くには、なんばパークスや府立体育会館などがある。

【個室ビデオ店火災】40代無職男、殺人・放火容疑で逮捕

2008.10.01 MSN産経新聞

 15人が死亡した大阪・ミナミの個室ビデオ店火災で、浪速署捜査本部は1日、殺人と現住建造物等放火の疑いで、火元とみられる個室を利用していた東大阪市加納の無職、小川和弘容疑者(46)を逮捕した。小川容疑者は当初「たばこに火をつけた」「寝ていた」などと話していたが、その後、自ら火をつけたことをほのめかしているという。また、別の客が、小川容疑者が出火直後に店員に駆け寄り、何か話しているのを目撃している。

 捜査本部は店内を現場検証して詳しい出火原因を調べ、遺体の身元確認を急ぐ。また、防火設備や避難誘導に問題がなかったか、業務上過失致死傷や消防法違反容疑でも調べる。

 捜査本部や大阪市消防局によると、同店内にはビデオを試写する個室が32室あり、店内には出火当時、客26人と店員3人がいたという。大きな火の手は上がらなかったが、全室に煙が充満。死亡した15人の多くは個室内で発見され、数人が通路に倒れていたという。

 死亡した男性15人はいずれも客。ほかに客やビルの管理人ら32〜77歳の男女10人が一酸化炭素(CO)中毒などで病院に搬送され、うち1人が意識不明の重体、2人が重症を負った。

 捜査本部などは、大半の客が出火当時すでに寝ており、煙が充満しているのに気付かず逃げ遅れた可能性が高いとみて詳しい状況を調べている。

 一方、総務省消防庁は原因調査のため職員7人を現地に派遣した。 

【個室ビデオ店火災】大阪の各自治体消防が緊急査察

2008.10.01 MSN産経新聞

 大阪市浪速区で未明に発生したビデオ店の火災で15人が犠牲になったのを受け、府内の各自治体の消防は1日、管内の個室ビデオ店やカラオケ店など同様の施設に対する緊急査察を行った。

 大阪市の中央消防署(大阪市中央区)は消防隊員ら11人を5つの班に分け、個室ビデオ店11カ所を検査。避難口を示す誘導灯や、火災感知器が届け出通りに設置されているかなどを入念にチェックした。

 今回の火災現場となったキャッツの姉妹店「試写室キャッツ心斎橋店」では、火災報知機前の通路に段ボールなどが置かれていたため、隊員らが消防法上の操作障害に当たるとして店員に口頭指導した。

 また、出入り口付近に設置された木製のしきりが避難経路を狭めているとして、撤去を要請。店側は即座にハンマーなどを使って取り除いた。検査に立ち会った男性店員は「出火原因にかかわらず火災で亡くなられたのは事実。市消防局の指導には粛々と従います」と話していた。3日までに市内345店舗に入る予定という。

 一方、周辺の自治体でも急遽(きゅうきょ)、特別査察を行った。

 豊中市消防本部では、消防署員16人が、市内のカラオケ店やインターネットカフェなど計19店舗を点検。火災報知機や消火器の設置状況、避難経路が荷物でふさがれていないかなどを確認し、従業員に安全対策について指導した。査察を終え、予防課の冨永昌秀課長補佐は「大きな不備はなかったが、今後も徹底して啓発活動を定期的に行いたい」と話していた。

 池田市では19年1月、隣接する兵庫県宝塚市のカラオケボックス火災発生直後の緊急査察で、防災管理者の未選任や火災報知の未設置などを確認しており、今回も同様の不備がないかを点検した。

 吹田市消防本部は御堂筋線江坂駅周辺などの個室ビデオ店3店舗に査察を行い、うち2店舗で出火時の避難誘導や通報の担当者を定めた消防計画を作成していなかったほか、可燃性のカーテンで窓を覆っていた不備があったため、指導を行った。箕面市消防本部は市内8カ所を点検し、3カ所で不備を確認した。高槻や茨木などの消防本部も管轄内の同種店舗をリストアップしており、2日以降に査察を行う方針。

 泉佐野市消防本部は市内の個室ビデオ店とインターネットカフェの2店舗を査察。個室での喫煙など火気管理状況や自動火災報知機など消防用設備の維持管理状況などを重点的に点検した。訓練の定期実施や消防用設備の前に置かれた箱の撤去などを指導した。

 堺、高石両市でつくる消防組合が解散して発足したばかりの堺市消防局では2日、市内の個室ビデオ店5店とテレホンクラブ2店の管理状況をチェックする特命査察を行う。査察は消防署員と市指導監察課職員との合同。特命査察は、昨年6月の東京都渋谷区の女性専用温泉施設の爆発事故以来となる。

【個室ビデオ店火災】警察や行政に立ち入り検査の権限なく、進まぬ実態把握

2008.10.01 MSN産経新聞

 個室ビデオ店は一般的に風俗店と思われがちだが、法的には風俗店とみなされていない。店内で視聴できる映像ソフトの大半が「性的」でない限り、風俗営業の届け出も不要だ。実際、大阪府内で風俗営業の届け出をしている個室ビデオ店は一切ないという。このため、警察や行政に立ち入り検査する権限はなく、店舗の実態把握は進んでいない。

 府警によると、府公安委員会に風営法上の届け出が必要な個室ビデオ店は、性的な映像などを提供する「店舗型性風俗特殊営業」に当たるケース。ただ、警察庁の運用基準では、提供する映像ソフトの7〜8割をアダルト分野が占める店舗に限られる。ほとんどの個室ビデオ店が一般映画なども取りそろえているため、届け出の必要がないとみられる。

 府警幹部は「アダルト映像と映画のソフトが半々ぐらいなら法的に問題ない。犯罪の温床になっているともいえず、これまで実態を把握する作業はしていない」と打ち明ける。

 個室ビデオ店は一つ一つの部屋が狭いのも特徴。風営法では、室内で飲食物を提供する喫茶店やネットカフェは5平方メートル以下の個室を設置できないが、飲食物を提供しない前提の個室ビデオ店はこの規制も当てはまらないという。

 また、18歳未満の入店を制限する法や条例も存在しない。府青少年健全育成条例では、カラオケボックスやネットカフェなど5業種で夜間の18歳未満の入店を規制しているが、個室ビデオ店は対象外だ。府青少年課は「個室ビデオ店は自主的に18歳未満の入店を制限しているところが多く、新たに規制しようという動きは今のところはない」と話している。

【個室ビデオ店火災】11時間滞在で1500円 大都市で増加

2008.10.01 MSN産経新聞

 15人が死亡した個室ビデオ店と同じタイプの店舗は、大都市を中心に増加傾向にある。多くは繁華街で終夜営業し、DVDなどを鑑賞できる。2000円以下で一晩を過ごすことができ、ホテル代わりに利用する客も多い。

 火災現場となった大阪市浪速区の「試写室キャッツなんば店」は、午後11時以降の最大11時間の料金が1500円。DVDのほかテレビやインターネットも利用でき、軽食も提供する。

 ソファベッドがあり、店側は「高級ホテル並み」とPR。ウェブサイトでは「ネットカフェより安く利用でき、終電を乗り過ごした方の愛用者が急増中」と宿泊目的の利用を呼び掛けていた。

 アダルトビデオが見られる店も多いが、大阪府警の関係者は「一般のビデオも見せる場合は風営法上の届けも不要。正確な店舗数や営業実態などに不明な点が多い」と話している。

【個室ビデオ店火災】危険潜む雑居ビル 法改正後も火災相次ぐ

2008.10.01 MSN産経新聞

 大阪市浪速区で15人が死亡した火災。悲劇の舞台になったのは、またも繁華街の雑居ビルだった。防火設備や避難経路確保などについて消防当局の指導が徹底しにくく、対策を強化した平成14年の改正消防法施行後も同様のビルでは火災が頻発していた。

 大阪市消防局によると、火災が発生した雑居ビルは七階建てで、延べ床面積は1318平方メートル。飲食店や会社のオフィスが立ち並ぶ繁華街の一角にある。死亡した15人は、ビルの中で煙を吸ったり逃げ遅れたりしたとみられる。

 13年9月、東京・歌舞伎町の雑居ビルで火災が発生し店員や客など44人が死亡した。翌14年10月、改正消防法が施行され、事前通告なしに消防が雑居ビルに立ち入り検査できるようになったほか、防火対策を怠り改善命令に従わないテナントへの罰金が最高1億円に引き上げられた。

【個室ビデオ店火災】生死の境目は部屋の場所 “うなぎの寝床”奧に犠牲者集中

2008.10.01 MSN産経新聞

 生死の境目は借りた個室の場所だった。15人が死亡した大阪・難波の個室ビデオ店火災。犠牲者のうち12人は火元よりも奥の個室や廊下で発見された。店の出入り口は2カ所あるものの、個室エリアには1カ所だけ。さらに奥行きが深い“うなぎの寝床”のような構造になっていたため、奥にいた人は一瞬で脱出ルートを失っていた。店内には避難口となる窓や排煙設備はなく、建築基準法に抵触する恐れもあり、救助隊員らは「特殊な構造が被害を拡大させた」と憤った。

 猛烈な炎と熱気を鎮めながら、救助隊員が個室エリアの奥に進んでいくと惨状が広がった。小部屋のソファに横たわり、眠るように亡くなっている人、脱出を試みて力尽き、ドアのそばで倒れている人。ほとんどが30〜50歳代の会社員風の男性で、ビジネスバックが無残に転がっていた。

 「生死の境目は激しく燃えた自販機コーナー周辺より奥の部屋にいたか、手前の部屋にいたかだった」。現場活動を指揮した大阪市消防局の木村雅之さんは無念そうに振り返った。

 15人の発見場所は、火元とみられる自販機コーナー近くで3人、それより奥にある個室や廊下で12人。一方、救助された3人は出入り口近くの個室に集中していた。

 同店は、ビデオやDVDを並べた陳列棚エリアと試聴用の個室エリアに分かれている。個室エリアは店内西側の約4分の3を占めるが、店外への直接の出入り口はなく、客はビデオやDVDを店内東側の陳列棚エリアで返却した後、ようやく店外へ出られる構造になっていた。

 また、個室エリアの通路は幅約1・6〜1・2メートルと狭く、人がすれ違うのがやっとのうえ、外開きのドアが一斉に開くと通路をふさぎ、避難できなくなる構造だった。「このうなぎの寝床のような構造が被害を大きくした原因」と木村さんは指摘する。

 さらに新たな問題も浮上。市消防局によると、同店は消防法が定めた消火器や屋内消火栓、火災報知機などの消防用設備は適正に備えており、消防法上明らかな欠陥は見つかっていない。しかし、同店のような窓がない構造の「無窓居室」は、建築基準法で排煙設備を設置するか、防火性能の高い建材を使用するよう定められているにもかかわらず、個室エリアには小さな明かり取りが1つあるだけで避難口となる窓や排煙設備もなかったという。

 大阪市建築指導部によると、今回の火災では、店内に黒煙が立ち込め、天井や壁が激しく焼損。防火性能の高い建材を使用していなかった可能性が高く、同部と市消防局は合同検査に乗り出す方針だ。

【個室ビデオ店火災】「こんな現場は初めて…」消防隊員、惨状を語る

2008.10.01 MSN産経新聞

 15人が死亡した大阪・ミナミの個室ビデオ店火災。深夜の繁華街、猛火にあぶりだされた宿泊客らが、逃げまどう中、消防のプロたちもあまりの惨状に顔色を失った。「こんな火災現場は初めて…」。消火活動を指揮した大阪市消防局警防部の木村雅之さんは当時の状況を振り返り、こう話した。

 消防指令に一報が入ったのは午前2時59分。救助隊は2隊8人が1階と上階に別れて進入した。現場は1階から激しく火が出ており、店外で男性が倒れていたという。

 猛煙で50センチ先も見えない状況。救助隊はライトで部屋を照らしながら前に進み、両側に試写室が並ぶ廊下の真ん中付近で熱気が立ち込めいったん撤退したが、消火剤をまいて火の勢いを弱まらせた後、店内の奥に倒れた人を救出した。ソファに寝ころんだままの人やいすに腰かけたまま人が多く、「一瞬で煙に巻かれたような状態だった。遺体は顔がすすけた程度で、やけどの跡はあまりなかった」という。木村さんは「生きているうちに助けたかった」と無念そうな表情を浮かべた。

 また、市消防局は1日午前、同市西区の消防局庁舎で記者会見を行い、昨年5月にキャッツを立ち入り調査した際、重大な問題はなかったことを明らかにした。

 消防法では、同店には消火器や屋内消火栓、火災報知機、避難器具、誘導灯、連結送水管の設置が義務づけられている。市消防局は平成19年5月に立ち入り検査を実施、個室ビデオ店への用途変更届の提出など4点の是正を指導したが重大な欠陥はなかったという。

大阪・ミナミの個室ビデオ店で火災、15人死亡

2008.10.01 MSN産経新聞

 1日午前3時ごろ、大阪市浪速区難波中3の雑居ビル「檜ビル」1階の個室ビデオ店「ビデオDVDキャッツ難波店」の店員から、「火事です。建物の中です。中に人がいます」と119番があった。鉄筋7階建て延べ約1320平方メートルのうち1階部分約60平方メートルを焼き、約1時間40分後に消し止められた。大阪府警浪速署や大阪市消防局によると、この火災で店内にいた客15人の死亡を確認。客やビルの管理人など10人が一酸化炭素(CO)中毒や煙を吸いこんだ気道熱傷などで病院に搬送されたが、うち3人が重症という。

 同市消防局によると、店内には出火当時、客26人と店員3人がいたといい、死亡したのは全員が男性。重軽症者10人の内訳は、32歳から77歳の男性9人と、ビルの近隣で気分が悪くなった女性(51)1人。

 浪速署の調べでは、同店内にはビデオを試写する個室が32室あり、同店の店長によると、そのうちの1室から出火したとみられるという。また、同店は宿泊もできることから、終電に乗り遅れた人たちがホテル代わりに利用することも多いといい、同署は、個室にいた大半が出火当時にはすでに寝ていたため、火災に気付かず逃げ遅れた可能性が高いという。

 出火当時、店内にいた兵庫県伊丹市の会社員(37)は「入店してテレビを見ていると、火が出ているようなにおいがした。店内は電気が消えていて、煙が充満していたので周囲は何も見えなかった」と、興奮した様子で話した。

 現場は、南海電鉄難波駅の西約150メートルの飲食店やビルが立ち並ぶ繁華街。消防車など約40台が出動するなど周囲は騒然とした。

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