TOPIC No.2-153 始まった「食糧争奪戦」/穀物価格急騰/緩和へ

01. 食糧高騰、1日100円の貧困層直撃 by Gooニュース
02. 食糧危機  by YAHOO!ニュース
03. 国連(UN) by YAHOO!ニュース
04. WFP 国連世界食糧計画
05. 穀物等の国際価格の推移(2009年02月まで)
06. 穀物価格デ−タ− by東京穀物商品取引所


小麦、4月から18%上げ パンなど値上げも

2011年02月23日20時16分 中国新聞ニュ−ス

  農林水産省は23日、輸入小麦の政府売り渡し価格を4月から主要5銘柄の平均で18%引き上げ、1トン当たり5万6710円とする、と発表した。小麦の国際価格が高騰しているためで、売り渡し価格の値上げは昨年10月に続き2回連続。10%超の上げ幅は2008年10月以来になる。

 国内で消費する小麦は約9割を輸入に頼っており、今後、パンや麺類など小麦を使った製品が値上がりする可能性もある。

 小麦の国際価格は、主要産地のロシアが干ばつの影響から禁輸に踏み切った昨年8月ごろから上昇。オーストラリアの洪水などを受け、値上がりに拍車が掛かり、シカゴ商品取引所の小麦先物相場は今年1月下旬に約2年5カ月ぶりの高値水準をつけた。

 中国など新興国の需要拡大や、米国の金融緩和などでだぶついた投機マネーの流入なども価格上昇の要因とされている。

 輸入小麦は政府が全量買い取り、製粉会社などに売り渡しており、価格は毎年4月と10月に改定している。これまでの最高は08年10月改定の7万6030円。

社説:世界的インフレ 日本も備えが必要だ

2011年01月12日 02時31分 毎日新聞

 「デフレからの脱却」が永久目標のように語られる日本では、「インフレ」と言われても、ピンとこないだろう。しかし、世界の証券市場や金融当局者の関心事は、急速にインフレにシフトしている。

 顕著なのが食用油や砂糖といった食品の価格高騰だ。国連食糧農業機関(FAO)によると、国際的な食料価格指数が先月、史上最高を更新した。「食料危機」が叫ばれた2008年の水準をも上回る。特に途上国や、中国、インドなど新興国で深刻さが増しており、暴動や社会不安の再燃が心配だ。

 食料と並び、私たちの暮らしに直結する原油や鉱物の値段も上昇しており、新興国では物価全般を押し上げている。中国では、11月の消費者物価指数が前年同月比5.1%増と、年間目標の3%を大幅に超えた。

 いまや世界経済で重要な地位を占める新興国の混乱は、日本など先進国にも波及する。注視が必要だ。

 新興国ほどではないが、先進国でも、インフレ防止が今年の重要な課題となる可能性がある。ユーロ圏や英国では、すでに物価上昇率が目標を上回っている。米国でも、景気回復が予想以上のピッチで進んでいるとの見方が広がってきたようだ。

 ここで注目しなければいけないのは、日米欧の主要国が金融危機後にとった異例の金融緩和策によって、世界がかつてない金余りとなっている点だ。確かに、食料価格高騰の直接的な要因は生産国での干ばつなど異常気象である。これに高成長が続く新興国の需要増が加わり、需給の逼迫(ひっぱく)懸念が強まった。

 しかし、問題を増幅しかねないのが、市場にあふれかえるマネーの存在だ。中央銀行がタイミングよく制御しないと、思わぬ過熱を招く。

 歴史的にみて、景気にブレーキをかける金融引き締めは、金融緩和より着手が遅れがちだ。特に、失業率が高く、景気回復の実感が乏しい中での引き締めは困難である。多くの主要国が現在そうであるように、政権の力が弱く、雇用創出で支持獲得を図ろうとしている時はなおさら、早期のインフレ退治が難しい。

 しかし行動が遅れると、インフレが進み結果的に、より急激な利上げを強いられて景気を失速させる。

 「物価も金利も上がらない」が前提の政策はもはや当然でなくなったと考えるべきだ。世界経済がつながっている以上、日本も例外ではない。

 企業もこうした環境の変化に今から十分注意しておく必要があろう。牛丼など外食産業に象徴されるように、値下げ競争に明け暮れていては、経済がますます疲弊するだけだ。デフレばかりにとらわれていると、道を誤る。

韓国が食品価格上昇に対応して供給拡大策

2011年01月11日 21:45 JST REUTERS

 [ソウル 11日 ロイター] 韓国政府は11日、食料価格の上昇に対応し食料の供給を拡大するための措置を発表した。10日開催された国際決済銀行(BIS)の中央銀行総裁会議は、急成長する新興国での物価上昇が深刻化しており、インフレ期待を抑制することが重要との見解を示した。

 韓国では、食品が消費者物価指数(CPI)の約15%を占める。政府は、1月末からの旧正月の連休を前に野菜、肉、魚の供給を増やす方針を示し、対象として16品目を挙げた。

 企画財政省の高官は「旧正月を前に当該品目の需要が高まっており、今回の措置は価格安定を、さらに物価変動期待を抑えることを狙っている」と述べた。

 政府は、より長期的な措置として、穀物を直接輸入するための貿易会社を設立することを明らかにした。今年前半にシカゴに設立する。将来的に同国の穀物輸入の約30%を買い付ける予定という。

仏大統領、米仏会談で食料価格安定に向け支持求める方針

2011年01月11日 00:07 JST REUTERS

 [パリ 10日 ロイター] フランスのサルコジ大統領は、20カ国・地域(G20)会合の議長国として、米仏首脳会談で世界的な食料価格と為替の安定をとりあげ、オバマ大統領に取り組みへの支持を求める方針。

 食料価格の上昇とアルジェリアなどでの暴動を受け、サルコジ大統領には、為替相場と同様に商品価格の極端な動きへの対処について、G20参加国間の調整を求める声が強まっている。

 サルコジ大統領は、議長国としての任期中に為替システムの改革をはかりたい考え。

 仏政府はまた、商品市場の取引と価格の透明性を高めることや、商品デリバティブ取引の規制強化を国際社会に求めている。

 サルコジ大統領のあるアドバイザーは、匿名を条件に記者団に「より多国間での協調が世界の不安定性増加傾向への最良の答えだ。われわれは、この考えを米国に持ちかけ、そのようなアプローチに参加する意思があるか尋ねたい。そうすればより詳細な提案が可能となる」と述べた。

世界の食料価格が高騰 異常気象、新興国の需要拡大で過去最高に

2011.01.10 20:29 MSN産経新聞

 【ロンドン=木村正人】世界の食料価格が再び高騰している。国連食糧農業機関(FAO)の主要食料価格指数が昨年12月、世界各地で暴動を引き起こした2007〜08年の食料危機時を上回った。異常気象による不作や新興国の需要増で砂糖や油脂、穀物の価格が上昇し、米ドル安も影響した。今年、食料危機が再発する恐れもあり、先進国の中で食料自給率が低い日本は対策を迫られそうだ。

 FAOは1990年から穀物▽肉類▽乳製品▽砂糖▽油脂について月ごとの価格変化を調べ、これら5項目を総合した主要食料価格指数を発表している。2002〜04年平均を100とした昨年12月の指数は前月比8・7ポイント増の214・7で、6カ月連続上昇。それまでの最高だった08年6月の213・5を上回った。

 砂糖と油脂の指数は08年12月から2年間で、それぞれ166・7から398・4、126・4から263と2倍以上に高騰。穀物指数は昨年6月から半年で、151・2から237・6と57%も急騰していた。

 昨年、小麦輸出国のロシアとウクライナは猛暑と干ばつで農業被害を受け、小麦などの輸出を制限した。米国の通貨安政策が米ドル換算の食料価格を押し上げる一方、経済成長で中流階級が増えた新興国の中国やインドで砂糖などの需要が拡大。インドではタマネギや香辛料が値上がりし、食品価格が年率換算で18%も上昇した。

 投機マネーが利ざやを求めて商品先物市場に流入したことも価格上昇の一因となった。

 ただし07〜08年の食料危機に比べると、生産コストに直結する原油価格が08年7月に1バレル当たり145ドルまで上昇していたのに対し、現在は90ドル前後。コメ価格は08年5月に1トン当たり1050ドルまで高騰したが、現在は550ドル。08年前半に1トン当たり450ドルだった米国の小麦価格は300ドルを下回っている。

 今のところアフリカ・モザンビークや南米ボリビアで抗議活動や小競り合いが見られる程度で、途上国30カ国以上で暴動が吹き荒れた07〜08年の食料危機のような状況は起きていない。

 しかし、オーストラリアでは大規模洪水で小麦や砂糖の生産が打撃を受け、アルゼンチンでは干ばつ被害の懸念が拡大。北半球の寒波の影響も指摘される。FAOは「食料価格がさらに上昇する恐れは十分にある」として警戒を強めている。

「食糧」世界中で大幅値上がり―日本の食卓は大丈夫か!

2011/01/07 15:28 JCASTテレビWatch

今年は食料品の大幅値上がりが必至という。FAO(国連食糧農業機関)が6日(2011年1月)に発表した食料価格指数によると、昨年12月は214.7(02年〜04年を100)で過去最高を記録したという。

「ちょっと大きな話なんですけど」と小木逸平アナが「スパモニ情報局」コーナーで取り上げた。

食料価格指数は、穀物や砂糖、牛肉、食用油、コーヒー豆、カカオ豆などの主要食品の国際価格の平均を指数化したもの。FAOは食料の増産を呼びかけているが、値上がりは簡単には止まらないようだ。

背景にあるのは、砂糖はインド、小麦はロシア、食用油は中国・インド、コーヒー豆はブラジル、カカオ豆はコートジボアールなど、各国の諸事情が値上がりにつながっているという。

小木がその事情を大きく3つに分けて説明した。

その1つは新興国による食糧の奪い合い。食用油や牛肉は中国やインドが豊かになり、自国での消費量が増加している。

2つ目は天候異変。砂糖の主要生産国であるインドが09年から干ばつに見舞われてサトウキビが不作。ロシアも干ばつのため小麦が不作という。さらに、ブラジルでは天候不順でコーヒー豆が不作のうえ、好況続きで輸出品だったコーヒーを自国民も飲むようになったためという。

3つ目は政情不安によるカカオ豆の値上がり。大統領選で2人の大統領が出現したカカオ豆の産地・コートジボワールで、輸送コストがアップしているという。

専門家「一過性ではない。さらに進む」

これら値上がり要因の一部はすでに日本にも波及し、今週から食用油の2大メーカーが価格を1s当たり30円値上げした。また、大手コーヒーメーカーも業務用コーヒーの出荷価格を3月から平均15%値上げする予定だ。

砂糖やカカオ豆の値上がりで心配なのはバレンタインデーのチョコレートだが、業界によると「日本は主にガーナ産のカカオ豆を使用しているので急騰の可能性は低い」という。

この輸入品の値上がりは収まる気配はない。丸紅経済研究所の柴田明夫代表は「一過性の問題ではない。これからさらに進んでいく。廃棄を少なくすることが一つの解決法だ」と警鐘を鳴らす。

コメンテーターの松尾貴史(タレント)が「日本では(食品の)3分の1は捨てられているといわれている。アメリカでは食糧をエネルギーに使おうという発想なのですがね…」と顔を曇らせる。

日本は食糧の自給率が極端に低い割には、こうしたことへの関心は低い。

世界食料価格:12月に過去最高更新、砂糖値上がり−FAO(Update1)

2011/01/06 00:49 JST Bloomberg.co.jp

 1月5日(ブルームバーグ):世界の食料価格が昨年12月に過去最高に達したと、国連食糧農業機関(FAO)が5日発表した。砂糖や穀物、油糧種子の値上がりが影響した。2008年には食料価格の上昇を要因として、ハイチやエジプトで死者を出す暴動が起きたが、12月はこれを上回る水準に値上がりした。

 FAOがウェブサイトに掲載した月次報告によれば、FAOの食料価格指数は12月に214.7と、6カ月連続で上昇し、2008年6月に付けたこれまでの最高(213.5)を上回った。砂糖と食肉の指数が過去最高を更新したとしている。

 砂糖は2010年まで3年連続で上昇、シカゴではトウモロコシが過去4年間で最大の値上がりを記録した。2011年の穀物収穫量が世界的に「顕著な」伸びを示さない限り、食料価格は一層上昇するだろうと、FAOは昨年11月17日に指摘しいていた。モザンビークでは昨年、パンの価格引き上げ計画に対する抗議活動で13人以上が死亡した。

 FAOのシニアエコノミスト、アブドルレザ・アバシアン氏は5日、ローマからブルームバーグの電話インタビューに答え、「残念ながら、多くの不透明材料を背景に、穀物価格が上昇する可能性はまだある」と述べ、「南米での収穫で想定外の事態が起きた場合、穀物価格が値上がりする余地は相当ある」と続けた。

 12月の食料価格は前年同月比で25%上昇。中国で需要が拡大しているほか、ロシアで起きた過去50年で最悪の干ばつが穀物収穫に大打撃を与えたことなどが影響している。

 2050年には世界人口が昨年の約68億人から91億人へ増加すると予想されているが、FAOによると、2050年までに世界的な食料生産を70%引き上げる必要がある。

 原題:World Food Prices Jump to Record on Sugar,Oilseeds (Update2)

 翻訳記事に関する翻訳者への問い合わせ先:ニューヨーク 楽山 麻理子 Mariko Rakuyama

世界の食料価格最高に 昨年12月、露の禁輸で穀物上昇

2011/01/06 中国新聞ニュ−ス

 【ローマ共同=太田清】国連食糧農業機関(FAO)は5日、昨年12月の世界の主要食料価格指数が、食料危機が叫ばれた2008年6月を上回り、1990年の統計開始以来の最高を記録したと発表した。ロシアの干ばつと穀物禁輸をきっかけに、小麦など穀物の国際価格が上昇したことが要因。途上国などでの暴動を招いた食料危機再来の恐れが浮上し、国連や各国が対応策を迫られる可能性がでてきた。

 昨年12月の指数は、02〜04年の平均を100とした場合、前月比8・7ポイント増の214・7と6カ月連続で上昇。これまで最高だった08年6月(213・5)を上回った。

 新興国の需要増や先物市場への投機資金の流入で、砂糖価格が急騰したことも指数上昇につながった。

 FAOはこれまでも悪天候で小麦やトウモロコシといった穀物の生産量が減ると同時に、在庫の急減で価格が一段と高騰する懸念があると指摘。生産国に生産力の増強を図るよう訴えていた。

 項目別では、砂糖が前月比25・0ポイント増の398・4と最高を記録したほか、穀物も14・3ポイント増の237・6と6カ月連続で上昇。植物油用の種子類も高騰した。

 FAOの指数は穀物、肉類、乳製品、砂糖、種子類の5項目について、月ごとの価格の変化を追跡したもの。

資源・穀物高騰で08年危機再来 川上インフレ・川下デフレが企業挟撃

2011.01.04 21:13 MSN産経新聞

 原油や銅などの資源、小麦や大豆などの穀物が高騰し、2008年の原材料高の再来が懸念されている。中国など新興国の旺盛な需要に加え、米国の大規模金融緩和で膨らんだ投機マネーが商品市場に流れ込んでいるためだ。一方、国内消費は冷え込んだままで、製品への価格転嫁による値上げは困難な状況だ。“川上”のインフレと“川下”のデフレの挟撃が、企業を直撃する。

 ■EVは銅の塊

 年明け3日の商品市況は軒並み上昇した。ニューヨーク・マーカンタイル取引所の原油先物相場は指標となる米国産標準油種(WTI)が一時1バレル=92・58ドルまで上昇し08年10月上旬以来約2年3カ月ぶりの高値を付けた。

 同取引所の金先物相場も前年末比1・50ドル高の1オンス=1422・90ドルで取引を終え、終値としての最高値を更新した。

 丸紅経済研究所の柴田明夫代表は「今年は新興国の堅調な実需に加え、米国の金融緩和によるカネ余りで、軒並み最高値をにらむ展開になる」と予想する。

 エコカーやデジタル家電などのハイテク製品の配線に大量に使われ、国内産業に特に大きな影響を及ぼしているのが銅の高騰だ。

 ロンドン金属取引所(LME)の3カ月先物は昨年12月31日に1トン=9665ドルの史上最高値を更新。「鉱山開発の遅れもあり、1万ドル突破が視野に入ってきた」(住友商事総合研究所の鈴木直美シニアエコノミスト)。

 この5年で銅需要が倍増し、世界需要の約4割を占める中国では、高速鉄道や送電線網のインフラ整備がめじろ押しで、電線に使われる銅の相場を押し上げている。

 本格普及が期待される電気自動車は、モーターを中心に従来のガソリン車の3〜5倍の銅が使用されている。自動車用電装部品を手がける住友電工は、「銅に代わる材料を探さなければならない恐れがある」と危機感を強める。

 ■製品価格は値崩れ

 「自助努力である程度はカバーしたが、(原料高騰を)十分に吸収できていない」。JFEスチールの矢島勉副社長は、主要顧客の自動車メーカーに対し、今年1〜3月期の鋼材価格値上げへの理解を求める。

 中国の粗鋼生産の回復を受け、資源メジャーとの鉄鉱石価格交渉が10年10〜12月期に比べ8%の値上げで決着。その分の転嫁を目指すが、自動車業界が反発し交渉は難航している。

 原油高を受け、化学製品の原料であるナフサ(粗製ガソリン)も高騰。化学メーカー各社は、プラスチック原料の出荷価格を一斉に値上げする構えだ。だが、主要顧客の電機メーカーは、「3月のエコポイント終了後に、薄型テレビの大幅な値崩れは必至で、値上げに耐えられない」(大手)と悲鳴を上げ、抵抗している。

 天然ゴムの価格も2年前の約2倍に値上がりしている。タイヤメーカー各社は3月にゴム使用量の多いトラック・バス用を値上げするが、乗用車向けには、踏み切れないでいる。

 ■全国行脚へ

 穀物相場の値上がりも激しい。年明け3日のシカゴ商品取引所の小麦先物相場は、前年末に発生したオーストラリアの洪水の影響もあり、1ブッシェル(約27キロ)=8・055ドルと、終値としては約2年5カ月ぶりの高値を付けた。

 大豆やトウモロコシも軒並み、08年の水準に高騰しており、丸紅の柴田氏は「(当時のように)生産国の輸出禁止が相次いだ食料危機が再燃しかねない」と警戒する。

 砂糖、綿花、コーヒー豆などの農産物も軒並み前年比4〜5割高で推移。3月1日から出荷価格の平均15%値上げを決めたキーコーヒーの担当者は「このご時世、『仕方がない』と受け入れてくれるところはない。全国3万軒の喫茶店など取引先を一軒一軒回り、理解を得ていくしかない」と頭を抱えている。

食料、新興国の胃袋へ…国内業界実質値上げ

2011年01月02日15時18分 読売新聞

 食料の国際価格が上昇している。中国など新興国での需要が増えているためだ。

 コーヒー豆など値上げに踏み切る商品もある。だが、深刻な消費不況が続く中で小売価格へ転嫁すれば売り上げ減につながりかねないため、価格は変えないが商品の内容量を減らす「実質値上げ」の動きが広がりそうだ。

 ◆相次ぐ値上げ◆

 キーコーヒーは、家庭向けと業務用のレギュラーコーヒーの多くの商品で出荷価格を今年3月1日から平均15%前後値上げする。2006年4月に平均12%値上げして以来だ。UCC上島珈琲も「値上げも選択肢の一つ」としており、中小を含めて業界全体に値上げが波及する可能性もある。

 日清オイリオグループ、J―オイルミルズの食用油大手2社も、今年度3回目となる食用油の値上げを1月から実施する。また、砂糖業界でも11月から業務用白糖などの出荷価格が引き上げられている。

 ◆中国など需要拡大◆

 食料価格は06年から08年にかけ、投機マネーの流入などで高騰していたが、その後は落ち着いていた。最近の上昇は、中国、南米など新興国での需要が急拡大しているからだ。

 国際指標となるニューヨーク市場の先物価格は、12月に入りコーヒー豆で1ポンド(約453グラム)当たり230セントと十数年ぶりの高値をつけた。砂糖も同34セントを超える高値となっている。シカゴ市場でも大豆や小麦が同30%以上も高騰、06年〜08年の水準に迫りつつあり、これらを原料にする食用油や即席麺、パンなど幅広い食品に値上げ圧力が強まっている。

 円相場が1ドル=100〜120円前後だった06〜08年当時よりも、現在の為替水準は2割前後も円高で推移している。しかし、「すでに円高による輸入購買力の上昇分は帳消しになっている」(食品大手)のが実情だ。丸紅経済研究所の柴田明夫代表は「新興国の将来需要を先取りする格好で食料価格が決まっており、さらに上昇する可能性が高い」と指摘しており、相場の高騰は長期化する見方も多い。

 ◆転嫁難しく◆

 食品業界は、国内でデフレが進むなか、小売価格を引き上げれば販売量が落ち込む恐れを抱いている。さらに、スーパーなどの小売業界が再編・統合を通じて食品メーカーに対する価格支配力を強めていることもあり、小売価格に十分な転嫁がなされるかどうかは見通せない。

 食品メーカーには、値上げを避けるために商品の内容量を減らして原価を抑える苦肉の策が広がりつつある。来春以降に投入される新商品で、内容量を減らす動きが本格化しそうだ。だが、原料価格の上昇分は、内容量を若干減らす程度ではカバーできないため、利幅は減って食品メーカーなどは業績を圧迫されそうだ。


食料価格、過去最高値に迫る FAO、危機再来を警告

2010年11月17日20時28分更新 中国新聞ニュ−ス

 【ローマ共同】国連食糧農業機関(FAO)は17日、10月の世界における主要食料価格の指数が前年同月比で25%上昇し、食料危機が叫ばれ過去最高値を記録した2008年6月の水準に迫ったと発表した。ロシアの干ばつと穀物禁輸による小麦価格の上昇や、新興国の需要増を受けた砂糖価格の高騰などが原因。

 FAOは悪天候で小麦やトウモロコシなど世界の穀物生産量が減り、在庫の急減で一層の価格高騰の懸念もあると指摘。途上国などで暴動を招いた食料危機再来を防ぐためにも、生産国に生産力増強を図るよう訴えた。

 同指数は4カ月連続で上昇。2002〜04年の平均を100とした場合、10月は197・1に達し、08年6月のピーク(213・5)をわずか7・7%下回る水準だった。

 最貧国では今年、食料輸入価格も11%上昇すると予測され、今後、途上国経済を直撃する可能性がある。

 FAOは9月、小麦など穀物の国際価格高騰を受け、特別会合を開催、ロシアの穀物禁輸への批判などを盛り込んだ報告書をまとめた。

世界の食料価格:さらに上昇か−穀物など農産物に続き食用油も高騰へ

2010/11/01 08:43 JST Bloomberg.com

11月1日(ブルームバーグ):今年に入って農産物価格が高騰するなか、食用油価格の上昇も穀物に追い付きつつある。需要が過去最高水準に達し、在庫が過去17年で最大の落ち込みを示すと予想されているためだ。

 米農務省のデータによると、中国とインドの消費が11%増加するため、大豆油とパーム油の在庫は向こう1年間に12%減少すると予想されている。これらの食用油はスイスの食品メーカー、ネスレや英・オランダ系日用品メーカーのユニリーバの商品のほか、ヘルマン製のマヨネーズやチョコレートバー「スニッカーズ」などに広く利用されている。国連によると、食料価格は9月に、2008年の食糧危機以来の高水準に達した。この年にはハイチやエジプトで暴動が発生した。

 食品成分関連の販売・顧問会社、インターナショナル・フード・プロダクツ(ミズーリ州)の商品調達担当スペシャリスト、スティーブ・ニコルソン氏は「中国経済は成長しており、来週や来月、あるいは来年に食料消費が減少する理由は見当たらない」と指摘。「過去2000年間は食料生産を増やせたが、中国など新興国の需要に十分対応できるだけのペースで増産し危機を回避することができるだろうか」と問い掛ける。

 ブラジルやインド、中国の富の増加により穀物や乳製品、食肉、食用油の需要が拡大している。価格上昇により、株式公開しているパーム油生産会社としては世界最大のマレーシアのサイム・ダービーなどの企業が恩恵を受ける一方、中国やインドなどの政府は輸入拡大や輸出削減、在庫売却により食料価格上昇を抑制しようとしている。

 ドアン・アドバイザリー・サービシズ(セントルイス)のシニアエコノミスト、ビル・ネルソン氏によると、中国の1人当たりの植物油消費は過去10年間で2倍以上に増加している。

            農産物高騰

 今年はカナダやパキスタン、中国が洪水に見舞われる一方、ロシアや欧州全域では干ばつが発生し穀物に被害が出た。これを受け、先物8銘柄で構成するスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)のGSCI農産物指数は、トウモロコシや小麦、コーヒー、綿花主導で今年に入って30%高騰している。

 バターや大豆油など商品22銘柄で構成するCRBロイターズ米国スポット工業原料指数は10月25日に過去最高水準に達した。国連の指数によると、食肉価格は8月に20年ぶりの高水準に上昇した。

小麦輸出を一時禁止へ ロシア、価格さらに上昇も

2010/08/06 中国新聞ニュ−ス

 【モスクワ共同】ロシアのプーチン首相は5日、記録的猛暑による干ばつが広がっているため、小麦を含む穀物の輸出を一時的に禁止する措置を決めた。同措置は今月15日から12月31日まで適用される。

 ロシアが輸出している穀物のうち約85%が食用の小麦。世界有数の小麦生産国であるロシアが輸出を一時禁止することで、小麦の国際価格がさらに上昇し、日本を含む各国でパンやめんなど幅広い食品の値上げにつながる恐れが強まってきた。

 首相は5日開かれた政府の会議で、国内での穀物価格の上昇を抑え、家畜用飼料を確保する必要があると説明。「穀物の輸出を一時的に禁止することが適切だ」と述べた。

 ロシア農業省によると、今年の猛暑による干ばつで小麦の作付面積の20%が壊滅。ロシアの生産者団体は、今年の生産が昨年を20〜26%下回る7200万〜7800万トンに低下する可能性を指摘している。

 欧米の商品先物市場ではロシアの干ばつを受け7月、小麦価格が40%超の値上がりを記録した。


琵琶湖の2倍が農地への復元不能 耕作放棄で森林・原野化

2009/04/08 中国新聞ニュ−ス

 農林水産省は七日、耕作が放棄された農地の実態に関する初の全国調査結果を発表した。現状で耕作に使えない農地は約二十八万四千ヘクタールと推計、うち琵琶湖の面積の約二倍に相当する約十三万五千ヘクタールで森林・原野化が進み復元が実質的に不可能であることが分かった。

 農家に耕作の意思がない農地は三十八万六千ヘクタール(二〇〇五年農林業センサス)とされていたが、手入れされない農地の荒廃が急速に進んでいることが初めて明るみに出た形。農水省は食料自給率向上のため、耕作放棄地の営農再開を推進しているが荒廃は大きな壁となり、抜本的な対策が求められそうだ。

 調査は〇八年度に実施した。農地がない地域などを除く千七百七十七の市区町村や農業委員会を通じて、現状のままでは耕作に使えない状態の二十三万一千ヘクタールを確認。これに調査未了分も勘案し、全国で二十八万四千ヘクタールが耕作に使えなくなっていると推計した。

 このうち、草刈りや整地を行えば復旧できるのは八万二千ヘクタール、復旧に大規模な基盤整備が必要なのは六万七千ヘクタール。

 森林や原野になっており、農業利用が著しく困難とされた農地は市区町村からの報告で十万五千ヘクタール、推計分を加えると十三万五千ヘクタールに達した。この面積は耕作放棄地などを除く全国の耕地四百六十三万ヘクタールの3%に匹敵する。うち農業委員会が既に認定した分を含め、三万七千ヘクタールが「非農地」になったと推計している。

 農水省は「予想外に広い面積で森林、原野化しており、コスト的にも復旧は厳しい」と指摘している。

 農地復元が困難とされた土地の報告が多かったのは、鹿児島県(一万一千百ヘクタール)、長野県(六千六百ヘクタール)、岡山県(六千五百ヘクタール)の順だった。

 農水省は復旧が可能な農地のうち十万ヘクタール程度について、借り受ける農家への財政支援などで営農再開を図る方針だが、担い手の不足や高齢化などもあり、難航も予想される。

事故米問題「農水省の責任重大」、白書原案に異例の明記

2009年04月02日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 農林水産省が5月にまとめる2008年度版「食料・農業・農村白書」(農業白書)の原案が1日、明らかになった。

 農薬に汚染された事故米が不正に転売された問題について、農林水産省の責任を認め、省内の組織の見直しなどの必要性を指摘している。政府が閣議決定する白書で、自らの省庁の責任を明記するのは極めて異例だ。だが、農水省は職員のヤミ専従の疑いがあると知りながら隠蔽(いんぺい)していた不祥事を起こしており、事故米問題の責任を明記するだけでなく、実際に省内改革が実現するのかどうか疑問視する声もある。

 原案では事故米問題について、「(事故米の)横流しを長期にわたって見逃し、結果として消費者の食の安全に対する不安を招いた農林水産省の責任は重大」と指摘した。そのうえで「全力をあげて省内の改革を実行」と強調した。

 このほか、原案では、食料自給率の向上については、穀物の国際価格は、ピーク時に比べて低下したが、2006年秋ごろと比べると「1・5〜1・8倍の水準」と分析。食料の安定供給のために、米粉や飼料用米の利用拡大の取り組みなどが重要としている。

穀物需要の逼迫緩和へ 海外食料需給

2009/04/02 北海道新聞

 農林水産省は一日、二〇〇八−〇九年の海外食料需給リポートをまとめた。小麦、トウモロコシ、コメなど主要穀物は生産量が消費量を上回り、〇七年来逼迫(ひっぱく)していた需給は当面緩和に向かうとみている。

 小麦生産量は、価格高騰に伴う欧米の生産意欲の高まりや好天により、〇七−〇八年比11・9%増の六億八千三百万トンが見込まれ、四年ぶりに消費量を三千万トン上回った。

 道内農家が家畜飼料に多用するトウモロコシは、米国での減産で生産量が0・1%減の七億九千百万トン。ただ、消費も飼料需要が小麦にシフトして伸び悩み、八百万トンの生産超過となった。

 コメの生産量は中国、インドの増産で消費量を四百万トン上回る四億三千九百万トン。大豆、ナタネ生産も堅調な伸びが見込まれる。

 穀物価格は〇八年前半に急騰した後、下落傾向にあるが、「中長期的には、途上国の人口増加やバイオ燃料需要の増加で需給の逼迫傾向が続く」としている。

米国産玄ソバ、09年産2割値下げ 6年ぶり、穀物相場下落受け

2009年03月30日 NIKKEI NeT

 米国産玄ソバ(ソバの実)の2009年産の対日契約価格が、08年産に比べ約2割の引き下げで決着した。値下げは6年ぶり。穀物の国際相場の下落や国内の消費不振を理由にした日本側の値下げ要求を産地側が受け入れた。輸入品の2割を占める米国産が下落したことで、ソバ粉やソバ製品価格の下げ圧力となりそうだ。

 国内のソバ消費量のうち輸入品の占める割合は約7割。08年産の場合、中国産が輸入の約7割、米国産が約2割を占める。高品質の米国産は中国産より割高だが、中国産敬遠の動きなどでシェアを拡大している。

景気後退が米穀物を直撃−トウモロコシ31%、大豆28%下落か

2009/03/30 bloomberg.co.jp

 3日30日(ブルームバーグ):米国の大豆の作付面積が過去最高水準に拡大するとみられ、トウモロコシの需要は後退している。このため、相場は2年余ぶりの安値まで下落するとの見方が広がっている。

 わずか1年前には、穀物価格が過去最高値に達し、エジプトで暴動が発生、アルゼンチンでは食料が不足していた。ブルームバーグ・ニュースが先週、アナリストやトレーダー24人を対象に実施した調査によると、米国の穀物の作付面積は今年、1億6370万エーカーに達するとみられている。

 アナリストらは、大豆の作付面積が4.5%増加すると予想。一方、トウモロコシは1.5%減少するとみており、リセッション(景気後退)の影響で飼料や乳製品、エタノールのメーカーが購入を減らしているため、3月時点の在庫は20年ぶりの高水準になったと見込んでいる。

 ブローカー、A/Cトレーディング(インディアナ州)のジム・ジェルラック社長は「例年にない気象条件とならない限り、世界の需要を上回る生産態勢は既に動き出している」と指摘する。

 コモディティ・インフォメーション・システムズのビル・ゲーリー社長(68)によると、大豆の現物価格は今年、28%下落し、2007年4月以来の1ブッシェル当たり6.50ドル割れになると予想される。トウモロコシは31%下げて同2.50ドルを下回り、06年10月以来の安値になるとみられる。同氏は1961年から穀物を取引している。

 ゲーリー社長は26日、オクラホマシティーからの電話インタビューで「今回のリセッションは70年代の時よりずっと長く続き」、原材料需要の減退につながると予想。「向こう数年間、商品相場で主要な強気の動きが見られることはないだろう」と語る。同社長は昨年7月、信用収縮による相場下落を予測した。

農家の所得減少

 穀物相場の下落に伴い、過去2年間にわたって過去最高水準の利益を上げていた米国の農業経営者の所得が減少する可能性がある。農家の売上高は昨年、3675億ドル(約36兆円)に達した。所得が減少すれば、農家は、トウモロコシの種子などを販売する米モンサントや、カナダの肥料メーカー、アグリウム、農業機械メーカーの米ディーアなどの製品の購入を減らす恐れがある。米農務省(USDA)は先月、農家の09年の純利益が712億ドルと、08年の893億ドルから約20%減少するとの見通しを示した。

 ウェルズ・ファーゴ(ミネアポリス)の農業担当シニアエコノミスト、マイケル・スワンソン氏は「農家の所得は減少するほかない」と指摘。「小麦や大豆、綿花はこれ以上必要なく、トウモロコシ在庫も需要の減少に応じた量になるべきだ」との見方を示す。

 イリノイ大学の調査によると、農家が大豆の作付けを増やすのは、栽培コストがトウモロコシと比較して約32%低いからだ。市場調査会社のインフォーマ・エコノミクス(テネシー州)は13日、顧客に対し、これまでで初めて大豆の作付面積がトウモロコシを上回る可能性があるとの見方を示した。

 ブルームバーグがアナリストを対象に実施した調査の平均値によると、大豆の09年の作付面積は7911万エーカーと、08年の7572万エーカーから増加すると予想されている。

トウモロコシの作付けを削減

 大豆の作付けを増やすため、農家はトウモロコシの作付けを減らす可能性が高い。ブルームバーグの調査によると、トウモロコシの09 年の作付面積は8470万エーカーと、08年のほぼ8600万エーカーから減少する見通し。トウモロコシの3月初め時点の在庫は70億1200万ブッシェルと、前年同期比2.2%増となり、この時期としては1988年以来の高水準に達したとみられている。

 USDAは31日、2月27日から3月16日にかけて約8万6000 戸の生産者を対象に実施した調査を基に、今年初の作付け意向面積を発表する。農家の実際の作付面積は、USDAの6月の発表で明らかになる見通しだ。

翻訳記事に関する翻訳者への問い合わせ先:東京 堀江 広美 Hiromi Horie     hhorie@bloomberg.net Editor:Takeshi Awaji 記事に関する記者への問い合わせ先: Jeff Wilson in Chicago at jwilson29@bloomberg.net .

トウモロコシ価格は3〜4ドル台で 穀物関係者が見通し

2009.03.25発行 鶏鳴新聞

 アメリカ穀物協会(浜本哲郎日本事務所代表)は3月6日、東京都千代田区赤坂のグランドプリンスホテル赤坂で、米国産トウモロコシ(新穀)の需給動向などについてのシンポジウムを開いた。

 米国から招いた農業経済学の専門家らが、米国の農家やバイオエタノール業界の近況を報告し、今年のトウモロコシと大豆の作付けについては、「肥料価格の高騰や、経済状況の激変、バイオエタノール工場の収益性の急速な悪化などで、例年になく判断の難しい年となっているが、大豆の作付割合が昨年より増える」との見通しを示した。

 トウモロコシの価格については「世界の穀物在庫量は依然として大幅な低水準にあるため、長期的には、かつての2ドル台には戻らず、一段高いレベルで推移するが、昨年6月のような高水準は期待できず、いくつかの条件を想定すると、3ドル80セントから4ドルの水準で推移するとみられる」などとした。

 シンポジウムには、業界関係者ら約200人が出席、浜本代表が「今回も、昨年の収穫状況、今年の作付け動向のほか、米国産トウモロコシをめぐるホットな話題を提供したい」とあいさつし、アイオワ州立大学バイオ燃料経済学名誉教授のロバート・N・ワイズナー博士(農業経済学)が「世界経済、原油、バイオ燃料、トウモロコシ・大豆の需給動向とその関連性」、イリノイ州で非遺伝子組み換え(Non―GM)トウモロコシなどを生産するウェンデル・ショーマン博士(統計遺伝学、アメリカ穀物協会理事会書記)が「トウモロコシの生産現場から、農家の見方」、経済アナリストのロス・コーヴス氏が「米国産トウモロコシのカーボン・フット・プリント(地球温暖化ガス排出量)に関する検討」について講演した。

パンなどの小売価格、夏から引き下げへ

2009.03.22 MSN産経新聞

 食パンなど小麦を使った一部製品の小売価格が夏ごろから値下げされる見通しとなった。政府が製粉会社に売り渡す輸入小麦価格を4月から平均14・8%引き下げるのに伴い、日清製粉など製粉大手が5月から業務用小麦粉を一斉に値下げするためで、製パン最大手の山崎製パンは値下げする方向で検討している。ただ、小麦価格の上昇局面でも小売価格を据え置いたメーカーは値下げに慎重姿勢を崩しておらず、業務用小麦粉値下げに伴う対応は食品メーカーによって分かれそうだ。

 日清製粉、昭和産業、日東富士製粉の3社は5月11日出荷分から、日本製粉も5月15日出荷分から業務用小麦粉を値下げする。値下げ幅は25キログラム当たり235〜365円。製粉大手の一斉値下げは平成18年3月以来、約3年ぶりとなる。

 これを受けて、山崎製パンは一部製品の小売価格を値下げする検討に入った。高値で仕入れた在庫の調整を終える夏ごろから値下げしたい考えで、製パン最大手が値下げに踏み切れば、値下げの動きは同業他社に広がる可能性がある。

 これに対して、めん類では最大手の日清食品ホールディングスが値下げを見送る方針を示している。日清は昨年1月に17年ぶりに7〜11%の小売価格値上げに踏み切ったが、その後は小麦価格の上昇局面でも価格を据え置いており、当面は値下げが難しいという。菓子メーカーでも江崎グリコなどは他の原料価格上昇分を価格に転嫁しきれていないとしており、やはり値下げは困難との判断だ。

 政府の輸入小麦売り渡し価格は4月と10月に改定される。世界的に穀物価格が高騰した影響で最近は値上げが続いており、平成19年10月に10%、昨年4月に30%、10月にも10%引き上げられ、パンやめん類も値上げが相次いだ。だが、金融危機で打撃を受けた投機資金が穀物相場から流出したこともあって小麦の国際価格は急落しており、一部とはいえ、その恩恵が家計にも及ぶ見通しとなった。

業務用小麦粉3年ぶり値下げへ 日清製粉、5月から

2009年03月16日 asahi.com

 製粉最大手の日清製粉は16日、業務用小麦粉の卸売価格を5月11日出荷分から値下げすると発表した。政府の小麦売り渡し価格が4月から14.8%値下げされることを受けたもので、値下げは06年3月以来約3年ぶり。ほかの製粉会社も追随する見通しで、パンやめん類の値下げにつながりそうだ。

 パンや中華めんに使われる強力系小麦粉は、税抜きで25キロあたり365円、うどんやケーキに使われる中力系・薄力系小麦粉は同235円の値下げになる。

 同社は値下げ率を公開していないが、農林水産省が公表している平均的な取引価格調査(09年1月)から試算すると、それぞれ約8%、6%程度の値下げとなる見込み。昨年春ごろの価格水準になるとみられる。

 製粉大手の日本製粉(本社・東京)や昭和産業(同)も近く値下げを公表する方針だという。


フードアクション本部が発足 官民一体で食料自給率向上を

2008年10月06日 中国新聞ニュ−ス

 食料自給率向上に消費者、企業、行政が一体となって取り組む「FOOD ACTION NIPPON推進本部」が6日、スタートした。“オールジャパン”で自給率向上作戦を盛り上げたい考えだ。

 推進本部の委員は、荒蒔康一郎キリンホールディングス会長、ソムリエの田崎真也氏ら各界からの14人で構成。

 座長の小泉武夫東京農業大教授は「海外の食料生産力は弱っており、今後はお金を出しても輸入が難しくなる」と指摘。「自分たちで食べる物は自分たちで作らなければ日本は振り回されることになる」と自給率向上の重要性を呼び掛けた。

 子供向けに勉強会を開催するほか、国産農産物を使った食料品を購入した消費者にポイントを付与し、点数によって別の特産品と交換できる制度を試験的に導入する。

全農、肥料を値上げ 主要12品目は1―9割引き上げ

2008/06/27 NOIKKEI NeT

 全国農業協同組合連合会(全農)は27日、肥料を値上げすると発表した。主要12品目では2008年7月―09年6月の販売価格を現行より1―9割引き上げる。バイオ燃料の増産などを受けた世界的な肥料の需要拡大に、肥料原料の供給体制が追いついていないためで、食料価格にも影響しそうだ。

 コメや野菜など幅広い作物に使う複合肥料の「高度化成(一般)」は現在の価格より50%引き上げる。また低価格だった輸入複合肥料「アラジン」は89%の大幅値上げとなり、相対的に国産との価格差が縮小する。

JA全農、化学肥料の卸売価格を平均6割値上げ

2008年06月27日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 全国農業協同組合連合会(JA全農)は27日、2008年度(7月〜09年6月)の主要な化学肥料の卸売価格を、約12〜112%引き上げると発表した。 Click here to find out more!

 全12品目の引き上げ幅を加重平均すると6割程度の上げ幅になる。窒素やリン酸などの原料価格が過去1年で2〜3倍に高騰しているためだ。値上げは5年連続だが、幅は過去最大だ。

 JA全農は、肥料の卸売市場で全体の6割を握っている。化学肥料は、コメや麦、野菜など農産物に幅広く使われている。今回の値上げは、農産物価格を押し上げる要因になりそうだ。

食料サミットが開幕 福田首相が追加支援表明

2008/06/03 中国新聞ニュ−ス

 【ローマ3日共同】世界的な食料価格の高騰問題について議論する「食料サミット」が三日午前(日本時間同日夕)、ローマの国連食糧農業機関(FAO)本部で開幕した。食料の確保が困難になっている発展途上国への支援、生産国の食料輸出規制、バイオ燃料などの問題を議論。最終日の五日、国際社会が今後取るべき行動についての政治的なメッセージを示す宣言を採択する。

 初日の三日は福田康夫首相が演説。途上国が食料を増産できるように、種子や肥料を提供する五千万ドルの追加支援を正式表明した。

 首相は世界の食料需給を安定させるため、日本を含む世界各国が「農業生産を強化することが重要」と強調。稲わらのような食料以外の原料を使う「第二世代」のバイオ燃料の研究開発や、輸出規制の自粛を訴えた。

 ただ、事務レベルで調整している宣言の修正案では、バイオ燃料について、これまでの宣言案に盛り込まれていた「最善の生産の在り方」を探るための「国際的な政策指針」づくりが削除され、「徹底的な研究」と「国際的な対話」を求めるにとどまり、大幅に後退した。食料高騰への影響は小さいとする米国などバイオ燃料を推進する国の意向に配慮した結果だ。

 また修正案には日本などの提案として、食料の安定供給を脅かさないように「輸出制限・禁止などの貿易措置を発動しないよう各国政府に求める」との文言も記されている。しかし、輸出国側には、こうした拘束を受けることへの反対意見が強く、文言が修正されたり削除される可能性も残っている。

 七月の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)の議論につながる重要な文書だけに、ぎりぎりの調整が続きそうだ。

スリランカへ支援米…政府、10万トン程度検討

2008年06月01日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 政府が、義務的に輸入しているコメのうち10万トン程度をスリランカへの支援に充てる方向で検討していることが31日、明らかになった。

 食糧危機が広がるなか、輸入米を使った支援先としては、フィリピンに続き2か国目となる。

 関係者によると、スリランカ政府から、日本の輸入米のうち、10〜20万トン程度を支援に振り向けるよう要請があった。コメの国際価格は、最近5か月間で3倍も高騰している。スリランカも、輸入量確保が難しくなっているとみられる。フィリピンへは、20万トンを輸出する方向となっている。

価格高騰、食糧輸出規制の撤廃を…国連が行動計画

2008年05月29日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【ニューヨーク=白川義和】6月3日にローマで開幕する「食糧サミット」で、潘基文国連事務総長が発表する食糧危機打開に向けた行動計画の全容が28日、明らかになった。

 短期的には生産国の輸出規制撤廃や貧困国への緊急食糧援助、長期的にはバイオ燃料の推進見直しなどを軸とする。潘事務総長は、7月の北海道洞爺湖サミット(先進国首脳会議)で福田首相ら参加国首脳に対し、行動計画の実行に必要な資金拠出や基金設立への協力を求める方針だ。

 小麦、大豆、トウモロコシなど穀物価格はここ2年で2倍に上がり、アジアでもベトナム、インドのコメ輸出停止でタイ産米の輸出価格が高騰している。高騰は貧困層を直撃し、ハイチやエジプト、フィリピンなどで暴動が起きるなど世界的に混乱が広がっている。

 国連はこうした事態を重く受け止め、食糧サミット開催を決めると共に、食糧農業機関(FAO)、世界食糧計画(WFP)、世界銀行など関係機関で構成する食糧問題の「ハイレベル作業部会」を設立、行動計画作りを進めてきた。

 読売新聞が入手した行動計画「行動のための包括的枠組み」は、緊急措置として、食糧援助拡大や小規模農家への種、肥料支援を挙げている。さらに、輸出規制の動きが広まる中、規制については「国際価格の不安定さを増大させる」として、撤廃するか、あるいは、最小限に抑えるべきだと指摘した。インドなどは「自国の食糧確保が最優先」と主張しており、食糧サミットでの激論は必至だ。

 行動計画は長期的対策としては、途上国の農業生産性向上を挙げ、小規模農家の増産に向けた農村道路や灌漑(かんがい)施設の整備などを提言している。

 食糧高騰の一因に指摘されるバイオ燃料については、政府補助金の見直しや食糧以外の材料による開発を訴え、「食糧の安全保障に弊害をもたらさない」という国際合意を確立すべきだとしている。

 潘事務総長は6月3日、ローマで参加国首脳に行動計画を説明し、理解と協力を求める。食糧サミット最終日の同5日、参加国は政治的意思を盛り込んだ宣言を採択する予定で、行動計画は宣言を実践に移す具体策となる。

米、対北食糧支援を来月再開…分配監視活動を強化

2008.05.17 中央日報 Joins.com

米国政府が北朝鮮に対する食糧援助計画を16日(現地時間)公式的に発表した。 AFP通信などによると、米国際開発庁(USAID)はこの日の声明で、来月から1年間にわたり北朝鮮側に50万トンの食糧を提供することにした、と明らかにした。 USAIDは、米国と北朝鮮は食糧分配監視活動を大きく改善するという内容の支援再開条件に合意した、と説明した。

合意に先立ち両国はこの数週間、米国の対北朝鮮食糧支援再開条件を綿密に協議してきた。 米国は当初から、北朝鮮に支援する食糧が軍事など他の目的に転用されるのを防止できる装置が必要だ、と主張してきた。 したがって両国の今回の合意には、食糧分配監視活動を強化する具体的な内容が盛り込まれていると観測される。

国連は、北朝鮮が現在直面している人道主義的災難状況が悪化するのを防止するためには外部の緊急支援が必要だとし、国際社会の支援を訴えてきた。

米国政府は「船籍費と食糧の価格によって北朝鮮支援費用は変わる」とし「現在これらのコストが高騰しているため、北朝鮮食糧支援に総額でいくらの費用がかかるかはまだ正確に分からない」と述べた。 米国政府は「今回の決定は北朝鮮との非核化交渉とは関係がない」と明らかにしている。

米政府、北朝鮮に50万トンの食糧支援…来月から1年間

2008年05月17日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【ワシントン=宮崎健雄】米国際開発庁(USAID)は16日、深刻な食糧難に見舞われている北朝鮮に対して、約50万トンの食糧支援を6月から1年間の予定で実施すると発表した。

 約50万トンのうち、40万トンを国連の世界食糧計画(WFP)、残り10万トンを米民間活動団体(NGO)が供与する。米政府は食糧が確実に住民に届いているかを現場で監視できるよう求め、北朝鮮側が難色を示していたが、先週、米側担当者が訪朝して協議。同庁によると、「十分な監視態勢を整備することで合意した」という。米政府は人道支援を政治利用しない立場を公式には示しているが、北朝鮮で行われている核放棄交渉の進展を促したい思惑もあるとみられる。

 北朝鮮では、2007年夏の洪水被害を受けたコメやトウモロコシの生産不振や、国際的な食糧価格の高騰で、飢餓が発生する恐れが指摘されている。

 米国は1995年から2005年まで、WFPを通じ計約200万トンの食糧支援を行ってきたが、WFPが05年に撤退したのを受け、食糧支援を停止。しかし、北朝鮮が洪水被害に見舞われた昨年8月、支援再開方針を発表していた。

フィリピンへコメ緊急輸出 政府、輸入米の援助転用も

2008/05/17 【共同通信】47News

 政府は16日、コメの価格高騰の影響を受けているフィリピンに、コメ5万トンを緊急輸出する方針を固めた。また米国などから輸入し、在庫として積み上がっているコメについて、途上国への援助に活用する方向で米国政府と来週にも協議することを明らかにした。米国は特例として認める方針だ。

 いずれも日本国内で余剰となっているコメを国際的に有効活用する狙いがある。今回の価格高騰局面で、日本がコメを緊急輸出するのは初めて。

 フィリピンはコメ輸入国で、相場急騰で十分な量の確保が難しくなっている。日本政府は2005年に余剰米対策として「米穀安定供給確保支援機構」が買い上げたコメを活用し、国際相場並みの1トン当たり9万円弱で輸出する方向だ。

アフリカ開発会議:政府アフリカ支援、コメ生産「10年で倍」−−計画発表へ

2008年05月17日 毎日新聞 東京朝刊 Mainichi INTERACTIVE

 政府は、今月28日から横浜市で開かれる「第4回アフリカ開発会議」(TICAD4)で、今後10年間でアフリカでのコメの生産倍増を目指す計画を発表する。食糧高騰が深刻化する中、日本が蓄積する稲作のノウハウを活用。国連世界食糧計画(WFP)などと連携し、資金面では政府開発援助(ODA)だけでなく、マイクロソフト社のビル・ゲイツ会長が作るゲイツ財団などの協力も得る。【鵜塚健】

 アフリカではカメルーンやコートジボワールなどで食糧高騰による暴動が起きるなど深刻化している。日本は食糧問題で総額100億円の緊急支援を決めているが、日本独自の技術を生かした長期的な支援の枠組みを示すことで、自給率向上や農家の所得向上など食糧問題の構造的な改善を目指す姿勢もアピールする。

 計画は「拡大アフリカ稲作振興イニシアチブ」。▽コメの品種改良▽かんがい技術の普及▽日本の農協制度を取り入れた生産、流通過程の改善−−などが柱。

 国際協力機構(JICA)が既にウガンダなどで取り組んでいるアフリカの気候に適した「ネリカ米」と呼ばれる高収量のコメの普及を拡大し、サブサハラ地域(サハラ砂漠以南)のコメの生産量約1400万トン(06年)の倍増を目標とする。

食糧支援への日本米活用も一案 米USTR高官が見解

2008年05月16日 asahi.com

 【ワシントン=西崎香】米通商代表部(USTR)高官は15日、食糧難に直面する途上国を援助するため、日本が外国から輸入したコメを活用するのも一案、との見方を一部メディアに示した。日本政府に対しても、近く協議の場などで伝える方針という。

 食糧高騰を和らげるため、「日本にコメの在庫を国際市場に放出するよう求める声も一部にある」と指摘した。

 米国では、3月以来高騰した国際相場を冷やすため、日本などが保管しているコメを市場に供給すべきだ、との見方がメディアで出始めている。米農務省報告などを引用する形で主に米国からの輸入米など約150万トンが在庫となり、古米の一部は飼料に使われていると紹介。人道援助で年間約20万トンを輸出しているが、さらに支援努力を拡大できる、といった論調だ。

ネパール:食料自給率の低下と食品価格高騰

2008/05/16 JanJan News(IPSJapan)

ネパールでは昨年に比べて食品価格が2倍にはね上がった。しかし政府は、4月10日に行われた制憲議会選挙に執心して食糧危機がネパール国民に与える苦難を顧みることはなかった。

【カトマンズIPS=マリカ・アリヤル、5月8日】

 5人家族のうち唯一の稼ぎ手であるマヤ・タマンさんは、家族の食費を抑えるのに余念がない。しかし、食料価格が高騰する中、多くの食品が食卓から消えてなくなる日を彼女は予想してもいる。「食用油は高くなりました。米を買うことも難しくなっています。肉の値段は恐ろしい勢いで上がっています」。

 ネパールでは昨年に比べて食品価格が2倍にはね上がった。しかし政府は、4月10日に行われた制憲議会選挙に執心して食糧危機がネパール国民に与える苦難を顧みることはなかった。

 人口2900万人のネパールの食料自給率は90年代を通じて下がり続けている。毎年、3070万ドル相当の米と76万ドル相当の小麦を輸入している。また、肥料から農薬、種子にいたる、食料生産のすべての要素を輸入に頼らざるを得なくなってきている。

 普段ネパールに食料を輸出しているインドとバングラデシュが、自らも食料危機に直面して食料輸出の禁止を決めたことが、ネパールにとっては大打撃となった。

 短期的要因もある。上で述べた制憲議会選挙のために資金を必要とする政党に資金供与している業者が、食品価格を意図的に高く設定したり売り惜しみをしたりしたのである。

 世界食糧計画(WFP)では、ネパールで食料不足に苦しむ民衆の数は400万人から800万人にまで拡大したとみている。

 他方、ネパール自身もチベットや中国、バングラデシュに小麦や米を輸出していた。しかし、政府は、4月30日、これらの輸出禁止措置を決めている。

 食料不足に悩むネパールの状況について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=山口響/武原真一(IPS Japan )

日本に眠るミニマムアクセス米、放出でコメ高騰対策に 米NGO

2008年05月15日 APP BB News 発信地:ワシントンDC/米国

【5月15日 AFP】日本が世界貿易機関(World Trade Organization、WTO)の合意に基づいて米国から輸入しているコメ150万トンについて、ワシントンDC(Washington D.C.)に拠点を置く非政府組織(NGO)Center for Global Development(CGD)は14日、「コメの価格高騰に歯止めをかけるため」に第三国への売却、または国連(UN)世界食糧計画(World Food Programme、WFP)への譲渡を米国が許可するべきだとの見解を示した。

 1993年のウルグアイ・ラウンド農業合意で定められた農産物の最低輸入制度(ミニマムアクセス)に基づき、日本は米国から中粒米を、タイとベトナムから長粒米を輸入しているが、国内の農業保護政策のため用途を飼料用に限定しており、在庫が積みあがっている。

 CGDは、在庫150万トンのコメの大半は状態がよいと指摘。国際市場に放出できれば、日本政府も保管に膨大な経費をかけずに済み、コメ価格高騰を止めるためには最も簡単な方法だとして、米国に「黙認」を呼びかけている。(c)AFP

サウジアラビア タイの稲作に投資へ 食糧安定確保へ国家戦略

2008/05/14 FujiSankei Business i.

 【ハノイ=坂本一之】バンコクからの情報によると、東南アジアでのコメ国際価格高騰をにらみ、タイの稲作農業にサウジアラビア政府が年内にも、資金供給を検討していることが明らかになった。サウジ側はコメなど食糧の安定供給源確保が狙い。サウジとタイの当局者がタイの民間企業を交えて投資協議に入った。

 サウジ側は昨年、96万トンのコメを輸入した世界6位の輸入国。国土の多くが砂漠に覆われ、農業に適さないことから、コメ以外の農作物も大半を輸入に頼っている。また、サウジの約2500万人の人口は30年までに倍増するとの予測もあり、稲作農業への投資で将来にわたる食糧調達ルート確保の国家的戦略がありそうだ。

 コメの国際価格はインドが3月に輸出制限を実施したことなどから、今年に入って約3倍も高騰した。サウジのコメ輸入の70%はインドなどで栽培される長粒種米で、輸入に占めるタイ産の比率は10%程度。関係筋では、「サウジはタイに限らず“オイルマネー”を頼りに、東南アジア広域で食糧確保に乗りだす可能性がある」と話している。

国連、6月に「行動計画」 食糧サミット提出で合意

2008/05/13 【共同通信】47News

 【ニューヨーク12日共同】国連は12日、食糧価格の急激な高騰を受けて設置した「グローバル食糧危機作業部会(タスクフォース)」の初会合を国連本部で開き、今後の対策や課題を明記した「行動計画」の原案を6月初旬の「食糧サミット」までにまとめ、提出することで合意した。潘基文事務総長が声明で明らかにした。

 声明は、行動計画について「食糧支援や社会的保護の取り組み、農業支援など短期から長期にわたる行動をまとめた内容になる」と説明。食糧サミットで原案を協議し、正式な了承を受けた上で国際社会の一致した取り組みを求めることになる。

 この日の会合には議長の潘事務総長のほか、世界食糧計画(WFP)のシーラン事務局長ら国連関係機関の代表らが出席。「価格高騰に立ち向かう包括的枠組み」(声明)となる行動計画の原案を中心に協議した。

国連作業部会、食料輸出規制の撤廃要請へ

2008/05/13 NIKKEI NeT

 【ニューヨーク=中前博之】国連は12日、深刻化する食料危機の打開策を探るグローバル食料危機タスクフォース(作業部会)の初会合を国連本部で開催、食料価格の高騰に拍車をかけている農業国による輸出規制の撤廃などを働きかけていく方針を確認した。

 作業部会は今後も断続的に開催し、ローマで6月上旬に開かれる食料サミットへ向け、対策を詰める方針だ。議長を務める潘基文(バン・キムン)事務総長は「国際的な指導力と最高レベルでの調整力が必要だ」とする声明を報道官を通じて出した。

 部会では短期的、中長期的な対策を大筋で確認。食料の不足している地域や社会的弱者への支援、農産物の増産など基本的な対策を改めて強化する。さらに、コメなど主要作物の輸出を制限したり、高額な関税を課したりする輸出規制により、食料価格を押し上げないよう各国に要請する。

コメ高騰で学校給食停止に カンボジア

2008/05/13 中国新聞ニュ−ス

 コメ価格の高騰を受け、世界食糧計画(WFP)がカンボジアの小学校で実施している給食プログラムが今月初旬から停止に追い込まれ、児童の不登校が続出している。食糧価格高騰によるWFPの給食打ち切りは世界でも初のケースとみられ、WFP幹部は今後、世界各地で同様の給食停止が広がりかねないと危機感を強めている。

 発展途上国では親が子供を労働力として利用し、子供が就学の機会に恵まれない傾向がある。学校給食が提供されれば親が子供を通学させるため、WFPは子供の栄養確保と就学率向上を同時に図る「学校給食プログラム」を四十年以上にわたり世界各国で実施。二〇〇六年には七十一カ国で約二千二十万人の子供が給食の恩恵を受けた。

 カンボジアでは計千三百四十四の小学校の児童計約四十五万人に朝食を提供してきたが、今年三月、主食のコメ一トン当たりの価格が昨年比で約二・四倍の約六百三十ドル(約六万五千円)に高騰。WFPカンボジア事務所は予算不足に陥り、今月一日から順次、各学校で給食支給が停止された。

 首都プノンペンから北へ約六十キロ離れた中部コンポンチュナン州のピアニ小学校では、WFPから配給を受けて学校で貯蔵していたコメが底をついた今月三日から給食を停止。それ以降、全校児童約四百五十人のうち約30%が登校しなくなったという。

 給食停止後に学校を休んだ五年生の女子児童ニー・ラミンさん(13)は「うちは貧しい。給食が出ないなら学校を休んで、幼い妹や牛の世話をし、魚や果物を集めるように両親に言われた。本当は給食がなくても学校に行きたい」と漏らす。

 クム・ソプオン校長(42)は「給食があるから通学させる親も多い。親たち自身が教育を受けたことがないから、教育の大切さも分からない」と説明した。

 児童の親のほとんどは稲作農家で、一日の収入が一ドル(約百三円)以下の貧困世帯だ。給食はコメ百グラム、魚二十グラム、豆二十五グラムなどだが、朝食を用意できない家庭も多い中、子供たちの貴重な栄養源となっている。

 給食停止後、児童たちからは「いつ、お米は戻ってくるの?」「おなかがすいて勉強できないから早退させてほしい」と言われるが、ソプオン校長はうまく答えられずにいる。

 WFPカンボジア事務所のケスター所長は「今まで経験したことのない事態。食糧危機で最初に被害を受けるのは貧困層だ。夏休み明けの十月以降に給食を再開できるかどうかは、支援国の援助があるかどうかで決まる」と訴えた。(プノンペン共同=平林倫)

サミットで食糧高騰議論を 米紙に首相 「実体経済と乖離」

2008/05/12 北海道新聞

 福田康夫首相は米ワシントンポスト紙のインタビューで、世界的な食糧価格高騰について「今の経済問題の根源にあるのは石油と食糧の原材料の価格が急に変化していることで、話し合わなければならない」と述べ、七月の北海道洞爺湖サミットの主要議題とする考えを示した。

 首相は食糧高騰の原因について「投機や先物取引などの投機的要素が強く、実体経済から乖離(かいり)している」と指摘。

 原油高に関しては「早く石油をエネルギーとして使わない世の中に導く一つのきっかけになる」と述べ、技術開発を急ぐべきだと強調した。

 また、自衛隊の海外活動について「平和協力をもう少し拡大する考え方は状況が許せば、そういう法律をつくりたい」と述べ、自衛隊の海外派遣を随時可能にする恒久法(一般法)制定にあらためて意欲を示した。

 インタビューは十日に行われた。

コメ、小麦の生産高が史上最高に=価格高騰受け面積拡大−米農務省予想

2008/05/10-時事ドットコム

 【シカゴ9日時事】世界的な食糧不足と食品価格の高騰が問題化する中で、米農務省は9日発表した最新の農産物需給報告で、今年作付けされるコメと小麦の世界の生産高が、天候が順調ならば史上最高になるとの見通しを示した。価格高騰を受け、主要生産国で作付面積が拡大するとみられ、食糧危機の沈静化につながるか、今後の天候に注目が集まりそうだ。

 同報告によると、今年の世界のコメ生産高は前年比1%増加して過去最高となり、期末在庫も6年ぶりの高水準になるという。アジアの主要生産国は軒並み増産となるが、ミャンマーは大型サイクロンの影響で同7%減になると予想している。

首相「自給率向上を」 農水省、国際需給を予測へ

2008年05月07日 中国新聞ニュース

 有識者らで組織する「食料の未来を描く戦略会議」は7日、世界的な農産物価格の高騰を受け、国は長期的で国際的な食料・農業戦略を持つべきだとする報告書を福田康夫首相に提出した。

 福田首相は「自給率を上げ、国内生産を高めることで、ピンチをチャンスに変えることができる」と述べた。報告書を受け農林水産省は、向こう10年の国際的な食料需給の予測を秋にも発表する方針だ。

 提言は「国は食料安全保障の具体策を確立する必要がある」と強調。主食用と飼料用の穀物を備蓄する重要性も言及したほか、米粉を使ったパンやめんなどの開発・普及や、生産調整の対象になっている水田の有効活用を求めた。国産農産物の消費拡大も訴えた。

 提言を受け、政府は、食料輸入国として独自に需給を予測するほか、シンクタンク、商社などを通じた情報の収集、食料問題を国民的な議論とするためのパンフレットの配布などに取り組む。

食糧価格高騰、ドル支払い要求で抗議デモ ソマリア首都

2008.05.06 CNN.co.jp

 モガディシオで起きた食糧価格高騰、米ドルでの支払い要求に抗議する住民らのデモ隊ソマリア・モガディシオ(CNN) アフリカ東部、ソマリアの首都モガディシオで5日、食糧価格高騰や店舗による現地通貨シリングの受け取り拒否に反発する住民数千人規模のデ抗議デモが発生、店を警備する警官隊の規制で2人が射殺される混乱が起きた。

 AP通信によると、目撃者らが証言した。デモ参加者は商店を襲うなどした。地元メディアによると、店は米ドルでの商品支払いを求めたという。

 この騒動のあおりで市内の商店多数が閉鎖した。国連は最近、政府軍、イスラム系の反政府軍の衝突が多発するソマリアで食糧危機の悪化への懸念を表明。食糧価格は現地で今年1月以降、約40%増となっており、総人口の三分の一以上に当たる約260万人が日常の食事に貧窮していると指摘していた。

 戦闘で首都を逃げ出す住民も多く、国連は先月、約7千人が避難、自宅などを失った国民は計100万人を超えたと推定している。

「食糧高騰、米国こそ責任」 インド、ブッシュ発言に反発

2008年05月05日 asahi.com

 【ニューデリー=高野弦】世界的な食糧高騰を巡り、ブッシュ米大統領が「インドの経済成長に一因がある」と発言したことが、インド国内の反発を呼んでいる。有力紙は「1人あたりの穀物消費量は米国のほうがはるかに多い」などと1面記事でこぞって批判。「米国帝国主義の表れだ」などとする政界の発言を掲載している。

 ブッシュ大統領は2日、ミズーリ州の講演で「成長するインドには米国の全人口よりも多い3億5千万の中間層がいる。よりよい豊かな生活を求め始めたことが、食糧価格の上昇を招いている」と発言した。インド有力紙タイムズ・オブ・インディアは「米国の1人あたりの穀物消費量はインドの5倍以上、中国の3倍以上」とする米政府の資料を引用。肉の消費量も、菜食主義者が多いインドは米国を下回っていると指摘した。

 経済紙ビジネス・スタンダードも、米国の穀物消費量の伸び(06年〜08年)が、中国やインドをはるかに上回るという国連食糧農業機関(FAO)のデータを掲載し、「高騰の責任は米国にある」とした。

 閣外協力する左派政党は「高騰の原因は米国のバイオエネルギー政策。米国以外の国は飢えても構わないという思想の表れだ」と猛反発。与党も「インドは食糧の純輸出国であって輸入国ではない」。最大野党のインド人民党は近く国会で、首相に対し米国にインド側の見解を伝えるよう求めるという。

食糧暴発 止まらぬ高騰、空腹に乱れる世界

2008年05月04日 asahi.com

 世界の食糧高騰が止まらない。途上国の消費増、生産国の大干ばつ、原油高……原因は複雑だ。貧困国がまず苦境に陥ったが、影響はおそらく、そこにとどまらない。

 ■がまんして給食持ち帰る子どもたち―ケニア

 ケニア・ナイロビ。

 泥壁やトタン張りの粗末な家がぎっしりと並ぶ。狭くぬかるんだ路地が入り組む、迷路のようなキベラ・スラム。80万人が住む。日雇い労働で暮らすアイエコさん(37)は、次女ダナさん(10)が通う小学校の春休みが間もなく終わるのを待ち望んでいる。小学校では月曜から金曜まで、世界食糧計画(WFP)の支援で朝食と昼食が支給されるからだ。

 主食ウガリの材料であるトウモロコシ粉はいま、1キロ32ケニアシリング(約54円)。1年前は20シリングだった。朝食はもともとミルクティーだけ。昼・夕食用に週5キロ買っていたのを、4月から3キロに減らした。病気がちの妻と、子ども3人。一家は、3メートル四方の借間で空腹をこらえている。

 ダナさんががまんして学校から持ち帰る給食が、助けになっている。小学校のウオウェ教頭は「給食を残して家に持って帰る児童が増えている」と言う。

 同国西部、穀倉地帯のエルドレト。トウモロコシ畑は雑草が伸び放題だ。1月、大統領選を機に民族衝突が各地で起き、農民の多くが国内避難民になったのが直接の原因だが、情勢が落ち着いても、人びとは畑に戻らない。

 トウモロコシと小麦を2ヘクタールずつ作っていたアグネスさん(40)は「小麦はこれから種まきだから時期は間に合う。でも、肥料が値上がりして手が出ない」とため息をついた。昨年1袋(50キロ)1800シリングだった肥料が4千シリングになった。町なかのピーターさん(33)の肥料店には、在庫が山のように積まれていた。例年の2割しか売れていない。「アメリカ製の肥料なんだが、なぜこんなに値段が上がるのかわからない」

 農業省によると、輸入肥料の価格が倍増し、ガソリン高騰で輸送費が上がったところに大統領選後の混乱があり、穀物価格が跳ね上がった。ケニアはトウモロコシを自給してきたが、今のままでは8月に在庫が底をつく。

 ■価格高騰、各地で騒乱相次ぐ―アフリカ

 西アフリカ・ブルキナファソの首都ワガドゥグ。3月、コメ高騰に抗議するデモ参加者が暴徒化した。今も、壊された信号機やタイヤの燃え残りなど、暴動の「痕跡」が残る。市中心部の穀物卸店は閑散としていた。店番の男性は、「コメが3カ月で2割上がった」と嘆いた。

 水不足に悩む同国では、コメはインドなどからの輸入に頼る。政府はコメ値下げ令や輸入関税停止などの手を打ったが、そのインドが自国のコメ不足・価格高騰で輸出を禁止してしまった。

 アフリカでは各地で食糧高騰が騒乱を呼んだ。カメルーンでは2月、首都ヤウンデなどで食糧と燃料の値上がりから暴動が起き、少なくとも7人が死亡。コートジボワールでは3月末、2都市で群衆と警官隊が衝突、十数人が負傷した。ギニア、マリ、モーリタニアでも暴動が起きた。

 ■コメを求めて首都圏から「疎開」―フィリピン

 アフリカだけではない。

 世界有数のコメ輸入国フィリピン。マニラ首都圏から南東へ300キロ、ルソン島南部のレガスピ市の食糧庁倉庫前で、政府供給米を買う人びとの長い列に並んでいた女性(73)は、3月に首都圏から息子を頼ってやって来た。

 マニラでは、自由価格の流通米が急騰し、市民が雪崩をうって品質は悪いが安い政府米に切りかえた。その結果、政府米も極端な品薄に。それでこの女性は「コメ疎開」を決断したのだ。「ここなら、1時間も並べば1日3キロまでは買えるから」

 バングラデシュ・ダッカ。昨年サイクロンや冷害に見舞われた同国は、米作が大打撃を受けた。だが、頼みの綱のインド米が止まった。何時間並んでもコメは買えない。政府は、価格が安定しているジャガイモを主食として食べるよう、奨励し始めた。(ナイロビ=古谷祐伸、ワガドゥグ=土佐茂生、マニラ=木村文、ダッカ=高野弦)

「食糧問題の対策討議を」国連特別報告者

2008.05.03 MSN産経新聞

 食糧問題を担当する国連のオリビエ・デシューター特別報告者は2日、食糧価格の高騰に伴い各地で暴動や抗議活動が広がっていることを受け、今月下旬にも国連人権理事会(日本など47カ国)で特別会合を開き、対策を討議すべきだと提案した。国連本部で記者会見した。

 デシューター氏は「22日か23日に開かれることを希望する」としたが、開催には16カ国による要請が必要で、実際に開かれるかどうかは不明。

 同氏は、食糧危機は人権に直結する問題で、人権理が「黙っているべきではない」と指摘した。

 今回の食糧危機について「自然災害ではなく、人がつくった危機だ」として国際社会に息の長い取り組みを要請。また、穀物などを原料とするバイオ燃料について「環境を保護するより破壊することが分かってきた」と述べた。(共同)

北朝鮮への食糧支援検討 米政府

2008.05.02 MSN産経新聞

 【ワシントン=有元隆志】ケーシー米国務省副報道官は1日の記者会見で、食糧不足が深刻化している北朝鮮に対し、「支援の可能性を検討している」と述べ、支援活動の主体となる世界食糧計画(WFP)と協議を続けていることを明らかにした。同副報道官は「正式には決定していない」としているが、米政府関係者によると50万トンの支援を検討している。

 同副報道官はあくまで人道的な見地を強調したが、北朝鮮から核計画の申告問題に関し、前向きな回答を引き出すねらいもあるようだ。

 ただ、同副報道官によると、WFPは供与された食糧が軍事用に転用されず食糧不足に悩む市民に渡るよう、北朝鮮側と配分監視のあり方について協議を続けているという。

 北朝鮮の食糧不足について、米ピーターソン国際経済研究所のマーカス・ノランド上級研究員らはこのほどまとめた報告で、世界的な食糧価格の高騰や昨年夏の大水害などの影響を受け、「10年前の飢饉(ききん)以来最も危険な状態にある。餓死者が出るのを防ぐには遅すぎるかもしれない」と警鐘を鳴らしている。

 報告によると、北朝鮮の食糧価格は昨年7月から今年4月までに約3倍にはねあがった。「肥料不足などにより、食糧不足は2009年も続く」との見通しを示している。報告は、北朝鮮が国際社会からの食糧支援に依存してきたにもかかわらず、「支援国などとの関係を悪化させた」と北朝鮮当局を批判した。

 北朝鮮は2005年、食糧事情の好転を機にWFPに支援中止を要請し、配分の監視も拒否した。WFPは同国での食糧支援事業を一時全面停止したほか、米国も支援を打ち切った。翌年北朝鮮とWFPは支援再開で合意したものの、規模は縮小されている。

米大統領、800億円規模の追加食糧支援を提案

2008.05.02 CNN.co.jp

 ワシントン(CNN) 世界的な食糧価格の高騰にともなう危機への懸念が強まるなか、ブッシュ米大統領は1日、途上国などへの食糧支援として、新たに7億7000万ドル(約806億円)の追加予算を議会に提示した。

 米国は先月、2億ドル(約209億円)の緊急食糧支援を発表したばかり。大統領は同日、「これは最初の一歩にすぎない」とも述べ、今後さらに支援を強化していく構えを示した。

 これを受けて、ペロシ下院議長は「食糧危機は人道問題であるばかりでなく、国家安全保障上の問題でもある」と強調。議会での早期承認を約束した。

 ホワイトハウス当局者らによれば、新たな拠出額のうち3億9500万ドルで緊急食糧援助を実施。残りは米国際開発庁(USAID)を通じ、開発支援などの資金とする方針だ。対象はアフリカ諸国が中心で、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は除外するという。

 ホワイトハウスによると、世界の食糧価格は過去1年間で43%上昇した。背景には、原油高による生産、流通コストの上昇や需要の増加、天候不順があるとされる。エジプト、ハイチ、イエメン、バングラデシュなどでは、食糧難が暴動や政情不安を招く事態となっている。また米国内でも、卵の店頭価格が1年前より3割高くなるなど、食費の増大が家計を圧迫し始めている。

国連、食糧支援へ…世銀など協力

2008年04月28日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【ベルン=白川義和】潘基文(パンギムン)国連事務総長ら27機関のトップが集まる国連の最高執行理事会が28日、スイスのベルンで2日間の日程で始まり、食糧価格の急騰問題が中心議題として取り上げられた。

 国連、食糧農業機関(FAO)、世界食糧計画(WFP)、世界銀行などが食糧危機への対応を策定する「ハイレベル作業部会」の設置や、「食糧サミット」開催の具体化が集中討議された。

 関係筋によると、FAO、WFP、国際農業開発基金(IFAD)の3機関は、国連や世界銀行と協力して、緊急食糧支援と供給強化策、各国政府への政策支援を進める方針を表明した。29日に具体策を発表する。

 国連主催の食糧サミットについては、FAOが6月初旬に開く「食糧の安全に関するハイレベル会議」にブラジルのルラ大統領や潘事務総長らが参加する予定で、同会議をサミットに格上げする案が検討されている。

食糧高騰の混乱、世界に拡大=1日100円以下の貧困層直撃

2008年04月26日 [時事通信社] Gooニュ−ス

 小麦やトウモロコシといった穀物の値段が世界的に急騰し、それに伴いパンや乳製品、食用油といった食品の値上がりが激しくなっている。世界各地で10億人が1日1ドル(約100円)以下で生活しており、食品価格の急騰はまず各地でこうした貧困層を直撃している。

 アフリカでは昨年11月、モーリタニア全土で暴動が発生。今年に入ってからもモザンビークやカメルーン、コートジボワール、セネガルなど各国で同様の暴動が起きており、瞬く間に大陸の東西南北に拡散した。

 やはり大規模な暴動が起きた中米ハイチでは今月、国連平和維持活動(PKO)のナイジェリア人警官が食糧を狙った暴徒に襲われ、車から引きずり出されて虐殺された。アレクシス首相が解任に追い込まれる事態に発展した。いずれ追い詰められた人々がボートピープルとなって大挙襲来すると、米国は警戒を強めている。

 混乱の拡大を受け、7月の北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)でも食糧価格急騰問題が緊急に話し合われることになった。国連はこれに先立つ6月に各国首脳を集めた「食糧サミット」を開催できないか動きだした。潘基文事務総長は25日、ウィーンで記者会見し、「まさに地球規模の危機であり、早急な行動が必要だ」と各国に迅速な対応と協力を求めた。 

始まった「食糧争奪戦」 穀物価格急騰 途上国ではデモ頻発

2008/04/26 FujiSankei Business i.

 コメ、小麦などの穀物から肉、乳製品にいたるまで、食糧の国際価格が天井知らずの上昇を続けている。価格の急騰はパンなど主食の価格にも波及し、発展途上国では抗議の暴動やデモが頻発するなど社会不安が増大。一部の途上国では食糧の安定確保を目指した「争奪戦」とも呼べる現象が起き始めている。

 国連食糧農業機関(FAO)によると、国際的な穀物価格は昨年後半以降、急激な上昇を続けており、3月末のコメと小麦の価格は前年同月比で約2倍に。トウモロコシも約3割値上がりした。

 背景には、中国やインドなど急成長を続ける途上国の需要拡大や、天候不順による一部地域での穀物生産の不振で、各国の在庫が大きく落ち込んでいることがある。FAOの最新集計では、世界の穀物在庫は2008年に4億500万トンと過去25年間で最低の水準となる見込みだ。

 一部の国では、穀物の輸出禁止や輸入関税撤廃など、なりふり構わぬ「食の抱え込み政策」を開始。英紙フィナンシャル・タイムズによると、サウジアラビアは小麦の輸入関税を25%からゼロにするなど幅広い品目の関税を引き下げ、主食の確保と国内価格の上昇抑制に動いた。

 インドも同様に輸入関税を下げただけでなく、一部の高級米を含めたコメの輸出を禁止。ベトナムもコメの輸出抑制に乗り出した。

 こうした動きに先進国からは警戒の声が上がっている。

 欧州連合(EU)欧州委員会のマンデルソン委員(通商担当)は17日の演説で「輸出の禁止や規制は経済発展につながらない。農産物の場合はなおさらだ」と警鐘を鳴らした。

 しかし、即効性のある対策はないのが実情だ。需給の切迫や天候不順だけが穀物価格急騰の理由ではなく、穀物取引市場での投機的な行動や、穀物を原料とする「バイオ燃料」の普及なども絡んでいることが問題を一層複雑化している。

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 ■対策、決め手なし

 日米欧など先進諸国は、食糧の国際価格急騰に関する緊急対策の検討に入った。世界銀行と国際通貨基金(IMF)の合同開発委員会が、途上国に対する政策や資金面の支援に備えるよう求める声明を13日に採択したのを皮切りに、ブッシュ米大統領は翌14日、食糧備蓄を取り崩して2億ドル(約200億円)規模の緊急支援を実施すると発表した。

 国連は「食糧サミット」開催を検討。7月の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)でも主要議題の一つとして取り上げる予定だが、いずれも多国間の調整を必要とするだけに「即効薬」にはなり得ないのが実情。当面は二国間支援を通じて急場をしのぎつつ、国際的な態勢を徐々に構築していくしかなさそうだ。

 世銀のゼーリック総裁は13日の合同開発委で「食糧価格の高騰問題は日本で開かれる6月の主要国(G8)財務相会合で取り上げられる。それ自体は歓迎するが、会合は6月だ。それまで手をこまねいているわけにはいかない」と緊急の取り組みを促した。

 日本は5月下旬に横浜市で開くアフリカ開発会議(TICAD)に向けて、資金援助を含めた対策を検討中だ。

 ただ、今回の食糧価格急騰の要因には(1)途上国の人口増に伴う需要増(2)気候変動による穀物の不作(3)原油高に伴う輸送コスト増大−などが複合的に絡み合っており、外務省幹部は「単純な処方箋(せん)はない」と漏らしている。

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 ■あるのに買えず「飢餓」

 穀物価格の急騰を受け、パンやコメなど主食を買えなくなった市民らの抗議デモや暴動が世界各地に広がっている。食糧はあるのに買えない人々の増加について国連は「新たな飢餓の顔」(潘基文事務総長)が出現しつつあると指摘。事態を放置すれば、世界の安全保障にも影響を及ぼしかねないと警鐘を鳴らす。

 ◆ハイチで首相解任

 中南米カリブ海地域の最貧国ハイチでは4月初旬、食料品の高騰に腹を立てた市民らによる暴動が南部で発生。首都ポルトープランスにも飛び火し、暴動は10日間以上も続いた。国連ハイチ安定化派遣団の警察官を含む7人が死亡し、上院は12日、事態を収拾できなかったとして首相を解任した。

 世界食糧計画(WFP)によると、同国の人口の76%が1日2ドル(約200円)以下で暮らす貧困層。食料自給率は低く、コメは80%以上を輸入に頼る。首都ではコメやスパゲティの価格が昨年比で2倍に上がり、国民の我慢が限界に達した。

 WFP当局者は「中南米諸国は食糧の輸入率が高く、他の地域よりも価格高騰のインパクトは大きい」と暴動拡大を懸念する。

 ◆不安解消に懸命の比

 世界最大のコメ輸入国フィリピン。コメや小麦粉の価格高騰が政情を一層不安化させかねないため、アロヨ政権は市民らの不安解消に懸命だ。

 マニラ首都圏ケソン市の広場。炎天下、政府米を買うため数百人が長蛇の列をつくり、銃を携えた兵士がコメを積んだトラックを警備していた。

 メリー・ブランカフロールさん(61)は約2時間並んで5キロを購入。「家族6人で節約しながら食べる」と話す。コメ市場の最低価格は1キロ30ペソ(約73円)だが、政府米は同約18ペソ。人々は争って政府米を買っているが、政府は「コメも小麦も不足していない」と強調する。

 4月中旬、買い占めなどの疑いでコメ業者13人を摘発したほか、ベトナムから今後3年間、コメ150万トンの供給を受ける覚書を交わしたと発表するなど、国民の不満と不安解消に努める。

 ◆中東でも拡大

 エジプトで四半世紀以上の独裁体制を敷いてきたムバラク政権も揺れている。5人に1人が日収2ドル以下で暮らす国民の不満を抑えてきたのが、1枚5ピアストル(約1円)に価格を統制してきた「政府補助金パン」。しかし小麦の価格高騰でこのパンが不足、他の食料品も軒並み倍以上に値上がりし、怒った住民らのストやデモが頻発している。

 イエメンでも小麦価格が2カ月前の倍に上がり、4月初めには南部ダリアで抗議の学生らが道路を封鎖。現場に派遣された軍用車両に放火するなど暴徒化し、100人近くが逮捕される騒ぎが起きたほか、エジプト紙によると、抗議デモはヨルダンなどにも広がっている。

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 ■需給システム崩壊寸前

 世界の総収穫量が増加しているにもかかわらず、急騰する主要穀物価格。人口増や途上国の経済成長など複雑な要因が絡み、専門家らは世界の食糧需給システムが崩壊寸前の「臨界点」に達したと危惧(きぐ)する。

 今後、アフリカなど途上国の農業開発を急ぎ、世界全体で増産を図るしか真の打開策はないと訴えている。

 国連食糧農業機関(FAO)によると、世界の穀物生産は2008年、史上最高の21億6400万トンに上る見込みだが、穀物価格がすぐに元の水準に下落する可能性は低いとみられている。

 ある専門家は「過去、何度か似たような穀物価格急騰があったが、あの当時は主要輸出国の米国などが作付面積を制限していた。かつては生産拡大の余裕があったが、今や手いっぱい」と説明。南米ではまだ生産拡大の余裕があるが、熱帯雨林を伐採して農地を拡大しており、環境問題が深刻化している。

 今後も穀物価格の急騰が続けば、いまだに農業生産性が低いアフリカ諸国などの農業開発が急務となりそうだ。特にアフリカへの開発援助では過去、国連や各国政府は教育・医療などの分野を優先し、農村・農業開発に冷淡だった歴史がある。

 そのせいもあり、世界でアフリカだけが「緑の革命」と呼ばれる土地生産性向上を経験していない。アフリカ低成長の主な要因は、人口の大多数が従事する農業の生産性の低さにあると断言する専門家もいるほどだ。

 世界銀行は昨年10月、開発分野で過去20年間、農業や農村が軽視され十分な投資が行われなかったと認めて、途上国の農業への投資拡大を呼び掛ける報告書を公表。過去の開発援助姿勢を転換したが、アフリカの農村荒廃は既に非常に進んでしまったのが実情だ。

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【用語解説】穀物の国際価格

 穀物の国際価格は米シカゴ穀物市場の価格が指標。コメについては世界最大の輸出国タイの価格が指標に使われる。今回の価格急騰の原因は(1)急成長を続ける中国やインドの需要増(2)石油価格高騰による輸送費の増大(3)主要な穀物生産国オーストラリアでの天候不順による不作(4)温暖化対策で穀物を原料とするバイオ燃料の普及−などが指摘される。また、米サブプライム住宅ローン問題で不安定化した金融市場から逃避した投機資金が穀物市場に流れ込み、価格を押し上げているとの声もある。

コメ不足のフィリピン、損失1000億円強

2008/04/26 FujiSankei Business i.

 ブルームバーグは25日、コメの緊急輸入を続けているフィリピンの食糧庁が431億ペソ(1000億円強)の損失を計上し、同国が今年度目標としていた単年度での財政収支均衡達成が厳しくなったと報じた。

 報道によると、フィリピンは今年、天候不順で主食のコメが不足し、農務省によると消費量の42%に当たる270万トンを輸入でまかなう計画だ。しかし、輸入価格が急激に上昇している一方、国内向けには輸入価格を大幅に下回る価格で供給しているため逆ざやが拡大。食糧庁の損失は前年度の26億ペソの16倍に達した。

 同国は財政健全化に向け今年度の歳出と歳入を均衡させる目標を立てているが、食糧庁の債務が財政負担となれば目標の達成は難しくなるとみられている。

食糧高騰、途上国の給食も直撃 WFP「支援を」

2008年04月25日 asahi.com

 来日中の国連世界食糧計画(WFP)学校給食政策アドバイザー、フランシスコ・エスペホ氏が25日、都内の国連大学で会見し、世界的な食糧価格の高騰により、WFPが途上国で行う学校給食事業に深刻な影響が出ていることを明らかにした。

 WFPは、アフリカを中心とする70カ国の児童約2千万人に、1人当たり1日25セント(約26円)の学校給食を提供している。ところが、穀物調達価格の高騰でWFPが7億5千万ドル(約780億円)の予算不足となり、学校給食事業にも影響が出始めている。

 カンボジアでは、児童56万人を対象に8月まで給食を提供する予定だったが、予算不足のため4月限りで打ち切られることになった。今後、ルワンダやエチオピアでも中止になる恐れがあるという。

 エスペホ氏は「給食は就学率の向上にもつながる、子どもにとっての安全網。もっと多くの資金が必要だ」と、国際社会へ支援を呼びかけた。(伊東和貴)

ウォルマート傘下の小売店、コメの販売制限を開始

2008年04月24日 AFP BB News 発信地:マイアミ/米国

【4月24日 AFP】世界的な米価の高騰が続く中、米小売大手ウォルマート・ ストアーズ(WalMart Stores)傘下の会員制小売チェーンSam's Clubは23日、コメの販売制限を始めたと発表した。

 対象品種はジャスミン米やバスマティ米、長粒白米類で、1人につき20ポンド(9キロ)入りの袋4つまでとしている。全顧客に商品が行き渡るようにするための一時的な予防措置で、少量サイズの袋やウォルマート店舗で販売する商品については対象外と説明している。(c)AFP

食糧危機の回避、WTOは農業生産国に圧力を=EU委員

2008年04月24日 Rueters

 [東京 23日 ロイター] 来日中の欧州連合(EU)のマンデルソン委員(通商担当)は23日、世界的な食糧危機の深刻化を回避するため、世界貿易機関(WTO)は農業生産国に輸出を維持するよう圧力をかけるべきとの考えを示した。

 バングラデシュやハイチでは食品価格の高騰を背景にした暴動が起きたほか、一部の国では、国内での食糧を確保するためにコメなどの輸出を禁止している。

 アジアの多くの地域で主食となっているコメは、年初来で価格が68%上昇。シカゴ・ボード・オブ・トレード(CBOT)のコメ先物は23日に過去最高値を更新した。

 マンデルソン委員は「われわれが貿易を規制すれば、すでにほかの国で大きな問題となっている食糧不足を加速させるだけだ」と指摘。「WTOは関税引き下げへの圧力や影響力を発揮し、それにより貿易を促進する必要がある」と述べた。

 さらに「WTOは、食料品や農作物の自由な貿易の流れを阻害する輸出規制や輸出税には抵抗しなければならない」と語った。

緊急食糧支援で100億円拠出 日本、WFP通じ途上国に

2008年04月24日 東京新聞

 政府が世界食糧計画(WFP)を通じ、発展途上国に100億円規模の緊急食糧支援を実施する方向で検討していることが24日、分かった。世界的な農産物価格の高騰を受けて、先進国に総額5億ドルの緊急出資を求めるWFPの呼び掛けに応じることにした。

 アジア、アフリカなどの途上国では食糧の価格が上昇し、暴動が起きるなどの事態に発展しており、7月の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)でも急きょ議題に取り上げる。

 米国が既にWFPを通じ3億5000万ドル(約360億円)規模の支援を表明。欧州連合(EU)も支援する見通しで、日米欧が足並みをそろえることになる。日本が支援額をさらに上積みする可能性もある。

 WFPは当初、今年は世界の7300万人を対象に29億ドルの食糧支援を実施する計画を立てていた。しかし、価格高騰により同じ人数分の支援を行うには34億ドル以上が必要となることが判明。先進国に追加拠出を求めていた。(共同)

雨不足により「アフリカの角」に迫る食糧危機

2008/04/24 財団法人 ケア・インターナショナル ジャパン

 アフリカ大陸東部の「アフリカの角」と呼ばれる地域において、過去数十年間で最悪の干ばつ発生以来2年経った今、およそ1400万人に及ぶ人々が食糧難に陥っていると、国際協力NGOのCAREは警告を発しました。何百万もの人々が2006年の危機の影響を受け、ただでさえ被害を受けやすい状態になっていますが、今月十分な雨量が見込めなければ、水と牧草地の急激な不足により人々の生計にさらに大きな損害が生じ、飢餓の危険にさらされることになります。

 ソマリアの一部の地域はすでに緊急事態に直面しており、CAREスタッフは広範囲に渡深刻な水と食糧不足に対応しています。ケニアとエチオピアでは、最近、所々で雨が降りましたが、水と牧草不足による家畜の死亡や食糧と水の物価高騰、食糧探しを手伝うために子どもたちが学校に通えなくなるなど、人々は深刻な窮状に陥っていると、現地のCAREスタッフは報告しています。

 CAREの東・中央アフリカ担当の地域ディレクター、Steve Wallaceは次のように話しています。「多くのことが今後4週間にかかっている。すでにいくつかの地域では、牧草地がほとんど残されていない上に、水不足により学校や診療所が閉鎖に追い込まれる状況になっている。もし来月雨が降らなければ、いまだに必死に生活を立て直そうとしている家庭は、再び厳しい食糧・水不足に直面することになるだろう」。

 貧困層による食糧の購入を困難にしている世界的な食料品の物価高騰、立て続けに発生する干ばつ、ソマリアやケニアにおける最近の紛争の激化−これらのすべてが現在の危機的状況のもととなる貧困や脆弱性の原因となっています。

 しかし、食糧危機を引き起こすこういった根本的原因に対処することができていない援助システムにもまた問題があるとCAREは考えています。根本的な問題が未解決であるため、人々は完全に困難な状況から脱せずにいます。

 ケア・インターナショナルUKのアフリカ飢餓問題担当アドバイザーであるVanessa Rubinは、「過去2年間にわたり、CAREは危機的状況の悪循環を断ち切るために資金がより賢明に使われることを保証する援助システムの早急な抜本的改革を呼びかけてきました」と話しています。「こうした動きへの進展は見られましたが、十分なものとは言えず、その結果、人々は現在かつてない窮状に陥っているのです」。

 「今後の干ばつにより何百万人もの人々が、生命は取り留めるあるいは、食糧や収入源を失うことを防ぐのには今が絶好の機会です。可能なうちに人々の生活を守り、緊急事態が定着してしまうのを防ぐために、世界中の支援者たちが早期に行動を起こし、早急に支援に充てられる資金を調達しなければなりません」。

 援助機関がこの種の緊急事態に資金を充てるのが遅れ、不適切なものに資金が使われてしまったり、緊急事態に真に取り組むにはあまりにも短い期間の活動に資金が提供されることなどが非常に頻繁にあります。今回こそは、援助機関は危機的状況は長期に及ぶ性質のものであるということを第一に考慮した上で対応しなければなりません。

 CAREは、現在ソマリアにおいて66万人の人々に食糧支援を実施中で、6月からはさらに20万人への支援も計画しています。これらのすべての人々に食糧を届ける活動を続けるには、2500万ドルの資金が必要とされます。ケニアでは、最も大きな被害を受けている地域に水を引く活動を実施しており、住民間で水を巡る争いが起こらぬようコミュニティーの指導者と連携して行っています。エチオピアでは、貧しい牧畜民の生活を守るために家畜用の飼料を提供しています。また、コミュニティーへの水の供給や増加する栄養失調に対応するためにその危険が及びやすい子どもたちに対するさらなる食糧支援を行っています

世界の食糧危機にWFPが警告(上)

2008/04/24 朝鮮日報/朝鮮日報JNS パリ=姜京希(カン・ギョンヒ)特派員/李泰勲(イ・テフン)記者

 「食糧危機は全世界で1億人以上を飢えさせる、“音のない津波”だ」と国連の世界食糧計画(WFP)が警告した。

 ブラウン英首相の提案により22日にロンドンで開催された国際食糧危機対策会議で、WFPやアフリカ開発銀行などからの参加者たちの間で、第2次大戦以降では初の世界的な食糧危機について心配する声が多かった、とAFP通信が報じた。

◆救護団体、食糧供給を縮小せざるを得ない危機に

 WFPのシーラン事務局長は、「2004年のスマトラ沖地震による津波は25万人を死へと追いやり、1000万人が難民となったが、食糧危機はそれに匹敵する。すでに数百万人が絶望的な状況にある」と指摘した。ブラウン首相も「食糧危機は国際社会に対し、金融危機に匹敵するほどの深刻な衝撃を与えている」と述べた。とりわけ救護用食糧以外に頼るべきもののない、1日50セント(約51円)未満で生活する貧民層への食糧供給の中断を、WFPは最も心配している、とBBC放送が報じた。WFPは今年の食糧供給に要する予算をおよそ29億ドル(約2999億円)としていたが、食料を購入するための費用が増加し、現在およそ7億5000万ドル(約776億円)が不足している状況だ。これは一部の支援プロジェクトの中断や縮小が避けられないということを意味する。WFPはすでにタジキスタン・ケニア・カンボジアでの学校給食を縮小していることを明らかにした。

 昨年は世界で750万人に食糧を支援した国際救護団体のワールドビジョンも、23日に配布した資料で、「今年は食糧支援の対象を150万人(約 20%)減らすことにした」と明らかにした。ワールドビジョン・インターナショナルのハーシュ総裁はこの日、「食糧支援が途絶える150万人のうち、57 万2000人は子どもで、栄養失調により脳の発達が回復不可能な打撃を受け、成長が止まってしまうなどの深刻な後遺症が残ることが心配される。開発途上国の未来が脅威を受けているのだ」と述べた。また、世界的に毎年5歳未満の子どものうち370万人が栄養失調で死亡し、1億4700万人は発育不良の状況にあることも明らかにした。

世界の食糧危機にWFPが警告(下)

2008/04/24 朝鮮日報/朝鮮日報JNS パリ=姜京希(カン・ギョンヒ)特派員/李泰勲(イ・テフン)記者

◆先進国は食糧の緊急支援を表明

 世界の食糧援助の半分を負担している米国は、緊急の救援資金として2億ドル(約207億円)の追加支援を行うことを表明した。英国もWFPに対して3000万ポンド(約61億円)の追加支援を行うことを約束した。ブラウン首相は、2010年までに穀物を原料とするバイオ燃料の比率を5%へと高めることにした政策も、全面的に再検討すると表明した。フランスのサルコジ大統領も今年の食糧援助支援金を2倍に増やし、総額で6000万ユーロ(約99億円)の支援を行うと発表した。

 国際的な穀物価格高騰の原因としては、悪天候による生産の減少や、中国・インドなどの経済成長に伴う需要の増加などが挙げられている。さらに先進国が気候変動対策としてバイオ燃料の使用を推進し、開発途上国でバイオ燃料用の作物栽培面積が増加したのも、食糧価格を押し上げる要因となっている。

食糧価格高騰、抑制に向け世界的な取組みが必要=独首相

2008年04月24日 Reuters

 [ベルリン 23日 ロイター] ドイツのメルケル首相は23日、世界各国は食糧価格高騰を抑制する措置を講じるべきとの見解を示すとともに、この問題が7月に実施される主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)で議題に挙がると述べた。

 首相はエジプトのムバラク大統領との共同記者会見で「国際社会が食糧価格抑制のために、できることを実施することが非常に重要」と述べた。

 さらに、欧米諸国はこの問題対処に向け協調するべきだが、早期解決策はないとの見方を示した。

 これより先にドイツのゼーホーファー食糧・農業・消費者保護相は、ラジオインタビューで「欧州やドイツにおける食糧価格は落ち着く見通しで、インフレ高進要因にはならない」と述べた。

中南米4カ国が食糧高騰に対抗する基金を設立

2008/04/24 The Sekai Nippo

 【サンパウロ24日綾村悟】南米カラカスで23日、ベネズエラ、キューバ、ボリビア、ニカラグアの4カ国が首脳会談を行い、地域内での食糧高騰に対抗、また安定供給を図るために1億ドル(約100億円)の基金を設立ことで合意した。

 また、チャベス大統領はサミット参加国に向けて、貧困層救済のために「食糧供給ネットワーク」を作ることを提案した。

 参加国の一つ、ニカラグアでは昨年だけでコメの値段が70%、小麦粉が130%値上がりしており、貧困層の中に混乱を引き起こしている。

 会談の席でチャベス大統領は、最近世界的な問題となっている食糧高騰に関して米国のバイオ燃料政策を非難。バイオ燃料推進は「資本主義の歴史的失敗の最たるものの一つだ」と強く批判した。

 昨年来、米国とブラジルがバイオ燃料での協定を結んだことに加え、中国やインドの急速な経済発展などの諸条件が重なり世界的な食糧高騰が発生、購買力のない途上国や貧困層の間で食糧危機が起こっている。

 食糧高騰問題では、国連の世界食糧計画(WFP)が、食糧価格高騰の「静かな津波」に直面していると警鐘を鳴らしている。

 WFPは、今後食糧増産が行われたとしても、食糧高騰は暫く続く可能性が高いと指摘、大規模な支援が行われない場合、一億人が食糧を購入できなくなる可能性があると警告している。

始まった「食糧危機」

2008/04/23 八重山毎日新聞オンライン

日本の物価高騰もその兆候の表れ

世界的に食糧価格が高騰し、世界銀行と国際通貨基金(IMF)が緊急支援に乗り出したほか、今年7月に北海道で開催される洞爺湖サミットでも取り上げられることが決まるなど、世界的に「食糧危機」が深刻の度合いを増している。

■デモ・暴動で死者も

 世銀の報告によると、小麦やトウモロコシ、コメなど主要食糧の価格は、中国やインドなど新興国の需要急増やバイオ燃料向け原料としての購入拡大などを背景に、2005年以来世界平均で実に83%上昇、小麦は181%もアップ、コメにいたっては2カ月で75%も値上がりしているという。

 この結果、特に食糧を輸入に頼る開発途上国を中心に、「世界は空腹に苦しむ人が増え、実態は日々深刻化している」(ゼーリック世銀総裁)といわれるほど食料不足や飢餓が深刻化。こうした国々で死傷者も出るなどの暴動、抗議デモが多発、政情不安や混乱が起きている。

 中米ハイチでは食糧高騰の抗議デモで警官が殺害され、エジプトでは数千人の労働者が警官隊と衝突、建物に放火するなど暴徒化する一方、政府配給のパンの列に並んだもの同士が奪い合いでけんかして死傷者を出し、さらにアフリカ各国では飢餓状況がますます悪化しデモ・暴動がほぼ日常化しているようだ。

 東南アジアでもコメ価格が高騰、フィリピンでは抗議デモの一方でゲリラが米穀商の車両を襲撃、軍隊が輸入米の輸送に動員されるなどコメ不足が深刻化しているといわれる。

■日本も「危機」始まる

 日本の現在の物価値上げもこうした世界と密接に関連している。そういう意味では、途上国同様穀物全般を輸入に依存する日本もすでに「食料危機」が始まっているともいえる。原油高騰やバイオ燃料ブーム、地球温暖化による異常気象などで食品にとどまらず、すべてが十何年かぶりにほぼ軒並み値上げされ、しかも原油高騰など現在の値上げ要因に沈静化の兆しはなく、食品価格は今後も次々再値上げまで予定されている状況だ。

 加えていまや「世界の胃袋」として、いまのこうした世界の物価高騰の要因の一つとなっている人口10億余の中国をはじめインド、ロシア、ブラジル、ベトナムなど新興国の食料需要が、今後さらに経済成長で増えることはあっても減ることは考えられず、世界の食料不足、価格高騰は今後ますます深刻化していくのは避けられそうにないのが実情だ。 

 それだけに食料自給率が4割を切り、その他はすべて外国からの輸入に頼る日本も、本格的な食料危機ははるか先の問題ではなく、すでに始まっている身近に迫った問題といえよう。ただ現在は外国のように食料不足も暴動もなく、そのため現実的な脅威となっている地球温暖化と比べてまだまだ実感に乏しく、危機意識も薄いのが現状だろう。しかし格差社会にあって低所得者層は恐らくこのことを痛切に実感しているかもしれない。

■沖縄の自給率は28%

 一方でこうした危機は地震などのように、ある日突然やってくるというものでなく、かつて日本が国民も知らぬ間にじわりじわりと戦争に向かっていったように静かに予兆、シグナルを送りながら徐々にやってくるものかも知れない。危機に陥ってからは手遅れであり、そのシグナルをどうキャッチし、対応するか。

 東南アジアのコメ不足も、ベトナムやインドの生産国が、当然のことながら需要増で自国への供給を優先して輸出を規制しているためといわれる。

 確かにこの食料危機に関しては、高騰すれば安いものに転化し、不足すれば増産に努めるバランスが働くとする楽観論もあるが、とはいえ日本の自給率は39%と先進国の中では最低であり、沖縄はそれよりさらに少ない28%にすぎない。

 それだけに離島の八重山も、観光客の増減に一喜一憂するだけでなく、地域の重要な問題として政策的に農業や漁業にもっと力を入れ、地域でできるだけ多くの食料を生産・供給、地産地消に努めるというのはバランスある産業振興面からも強力に推進して良いものだろう。そしてもし自治体の腰が重ければ家庭や地域団体レベルで「危機」に備えるのも決して無駄なことではないはずだ。

世界的な食糧争奪戦が始まった今こそ日本農業再生の好機

2008/04/23 JanJanNews 山口朝

現在の世界的な穀物価格の高騰は「高い資源」時代へ経済構造の変化が始まっている表れだ。食糧はこれから世界的な争奪戦に入る。作付け放棄とか生産調整をやっている日本は、世界とベクトルが全く逆だ。耕作放棄はやめて目一杯作れば生産性が上がり自給率が向上する。耕地の活用で農村も活性化する。日本農業は今こそチャンス到来だ。

 世界的な食糧価格の急騰で、各地から暴動発生のニュースまで伝わる中、東京都内で4月21日、食糧、農業の専門家による「穀物争奪戦・バイオ燃料と食料」と題するシンポジウムが開かれた。丸紅経済研究所所長の柴田明夫氏が講演して、現在の穀物価格の高騰は、来るべき「食糧争奪戦」の予兆だと述べた。柴田氏の講演の概要を以下に紹介する。

■価格高騰は「高い資源」時代への構造変化

 価格が高騰しているのは穀物だけではない。2006年には1次産品の原油、鉄、石炭などが急激な価格上昇を記録した。穀物価格の急騰は、この延長線上の動きと捉える必要がある。ここ数年の、こうした資源価格の高騰は金融資本の影響による一時的なものではなく、長期的な上昇局面にある。「安い資源」時代から「高い資源」時代への経済構造の変化がもたらすものだ。

 食糧の価格高騰については、地球温暖化の影響などで食糧生産に必要な水、土壌、地球環境といった資源が有限性を強めてきたのが一因である。また、世界経済の牽引力が、これまでの人口8億人弱の先進諸国から、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)と呼ばれる人口約30億人の発展途上国にとって替わったことが大きい。これらの国々が本格的な工業化の過程に入り、猛烈な勢いで先進諸国へのキャッチアップを始めたことが最大の原因である。

■エネルギー、鉱物、そして食糧の争奪戦へ

 現在の食糧価格の高騰は、エネルギー資源、鉱物資源の高騰に続くもので、食糧争奪戦の前触れである。食糧争奪戦には3つが考えられる。ひとつは国家間の争奪戦、もうひとつは市場間の争奪戦、そして3つめは工業部門と農業部門での水と土地をめぐる争奪戦である。

 国家間ではアメリカが輸出力を失う一方、中国が食糧輸入国に転じ始めている兆しがある。市場間の争奪とは、石油燃料からバイオ燃料への転換によって、バイオエタノールの原料のサトウキビ、トウモロコシをめぐって起きているエネルギー市場と食糧市場の競合のことである。いずれも厳しい状況が予想される。その結果、食糧も「枯渇性の資源」の性格を帯びてくるだろう。

■「割り算」から「掛け算」の世界に突入した中国

 中国は2001年に世界貿易機関(WTO)に加盟して国際マーケットに連動してきた。そして3つの新しい成長のエンジンを手に入れた。それは「輸出」「外資」それから成長に必要な「海外の資源」を活用することだ。中国は10%程度の持続的な成長を維持し続けていくだろう。

 その場合、食糧や資源における中国のインパクトというのは、90年代までの「割り算」の世界から「掛け算」の世界に入ったといえる。「割り算」の世界とは、限られた資源を13億の人口で割っていること。現在は13億人の一人一人が先進国並みの消費レベルを求めて猛烈な勢いでキャッチアップしている。13億人×先進国並みの食糧の消費量という「掛け算」となると、その影響は計り知れない。

 アメリカは、ブッシュ大統領が2007年1月の一般教書演説で、エタノール生産を2006年の50億ガロンから2017年までに年350億ガロン(約1億3千万キロリットル)に大幅増産するエネルギー政策を表明した。これは相当に高いハードルである。トウモロコシエタノールは2017年時点で最大200億ガロン程度まで増大できるとの見方があるが、それでも150億ガロン不足する。トウモロコシをめぐって食糧市場とエネルギー市場の争奪戦が強まるだろう。

■日本の農業、今こそが再生のチャンス

 日本では、農業の重要な指数はすべて右肩下がりである。食料自給率、延べ作付け面積、農業従事者、いずれも下がっている。いまの世界の状況を見ると、こうした右肩下がりでの作付け放棄とか生産調整をやっている場合ではないのにと思う。米の需要が減少する、価格が下がるという中で、日本の農業は世界の状況とベクトルが逆向きである。

 一方、日本の米は海外の米との内外価格差が縮まってきている。日本の米の価格が一気に上がっていく可能性は高い。国産農産物の見直し、米の見直しが始まると、全体の辻褄が合ってくる。耕作放棄をせずに目一杯作ると、生産性は上がり自給率の向上につながる。耕地が活用されることで農村が活性化する。ここに向かって、いまは大きなチャンスの到来と考えられる。

・柴田明夫氏プロフィール

栃木県生まれ。1976年、東京大学農学部卒業後、丸紅入社。鉄鋼第1本部、調査部を経て2000年に業務部産業調査チーム長。2002年に丸紅経済研究所主席研究員。副所長を経て2006年に所長。内外産業調査・分析、産業政策・国際商品市況分析の専門家として知られる。著書に『食糧争奪』日本経済新聞出版社など。

食糧価格高騰の「ツナミ」を警告、WFP食糧危機サミット

2008年04月23日 AFP BB News

【4月23日 AFP】国連(UN)世界食糧計画(World Food Programme、WFP)の食糧危機に関する臨時サミットが22日、ロンドン(London)で開催され、専門家らは、世界は静かに押し寄せる食糧価格高騰の「津波」に直面していると警鐘を鳴らし、将来的な食糧供給を確実にするため追加措置を行う必要があると訴えた。

 WFPによると、これまで支援を必要としなかった1億人が、新たに食糧を購入できなくなる可能性があると指摘。また、食糧価格の高騰は、最貧国での貧困対策と保健改善の取り組みを脅かし、WFPの予算29億ドル(約3000億円)に加え、7億5500万ドル(約780億円)がさらに必要となっているという。

 ジョゼット・シーラン(Josette Sheeran)WFP 事務局長は、声明で「これは新たに飢饉(ききん)が発生していることを示している。6か月前には緊急に食糧を必要としていなかった数百万人が、現在は食糧を必要としている」とし、「緊急かつ長期的な解決策に焦点を絞った、大規模で高水準の国際的措置が必要」と訴えた。

 シーラン事務局長はその後、サミットに参加したほかの専門家24人とともに、英首相官邸(10 Downing Street)で行われた、ゴードン・ブラウン(Gordon Brown)英首相主催の食糧危機に関する会議に出席した。

 協議後に首相官邸から発表された声明によると、専門家代表団は、食糧価格上昇へ対処し、最貧国への支援を増加させる世界的戦略に対し、主要国8か国(G8)および欧州連合(EU)と協力していくことを言明したという。

 英政府はこれに先立ち、5か年計画で実施される農業分野の研究費用8億ドル(約820億円)を含む、9億1000万ドル(約940億円)規模の経済支援を発表しており、支援団体や開発団体から歓迎されている。

 また、世界貿易機関(World Trade Organisation、WTO)と特に農業分野で協定を結ぶことで途上国を支援できる可能性や、バイオ燃料への取り組み見直しについても合意した。

 一方、すでに過去最大規模の1億6000万ユーロ(約260億円)の拠出を表明している欧州委員会(European Commission、EC)も、仏ストラスブール(Strasbourg)で1億1725万ユーロ(約200億円)の追加支援を発表した。(c)AFP/Phil Hazlewood

アジアのコメ備蓄、需要を満たすに十分=アジア開発銀行幹部

2008年04月22日 REUTERES

 [シンガポール 22日 ロイター] アジア開発銀行(ADB)のマネジングディレクター、ラジャット・ナグ氏は22日、アジアのコメ備蓄は過去数十年間で最も低い水準に減少したものの、依然需要を満たすに十分であるとの認識を示した。

 同氏は記者団に対し「アジアでの問題は供給ひっ迫ではなく、価格高騰だと考える」と述べた。

 アジアの各国政府は、コメ価格の急騰が買いだめや社会不安を引き起こす可能性を懸念している。

 主要なコメ輸出国は輸出を制限する動きを見せ始めており、一部の国では食料補助金の引き上げも行われている。

食糧危機でバイオ燃料が非難の的、国際エネルギーフォーラムで

2008年04月22日 AFP BB News 発信地:ローマ/イタリア

【4月22日 AFP】ローマ(Rome)で開催中の産油国や消費国、関連企業が参加する「国際エネルギーフォーラム(International Energy Forum)」で21日、一時は温室効果ガス排出量削減の重要なカギとみなされていたバイオ燃料が、世界的な食糧危機の原因となっていると非難の的となった。

 退任間近のイタリアのロマーノ・プローディ(Romano Prodi)首相は、「食糧と燃料の間で競合が起きており、悲惨な社会的争いと先行き不透明な環境への結果が懸念される」と指摘した。食糧価格の高騰で、一部の国では飢餓が発生する可能性が心配されている。

 プローディ首相はまた、農産物の価格上昇は、需要の増加によるものだけではなく、バイオ燃料向け栽培の増加も原因となっており、多くの国で緊張を生み出しているという。

 バイオ燃料は、地球温暖化の原因となっている温室効果ガスの抑制・削減計画の一環として開発されたが、食糧生産用の土地が利用されることから、食糧価格急騰の原因となっている。

 カタールのアブドラ・ビン・ハマド・アティーヤ(Abdullah bin Hamad al Attiyah)電力・水資源相は、「何が優先されるべきか。車か食べ物か」と述べ、世界はどちらか選択しなければならいと指摘した。(c)AFP

食糧危機 農業の振興を第一に

2008年04月22日 信濃毎日新聞

 世界レベルでは穀物の収穫量が増えているのに、食糧の値段が急騰して貧しい人たちの口に入らない−。

 いま、途上国を中心に起きている問題だ。一部の国はまるで食糧争奪戦をしているかのようだ。暴動も相次ぎ、社会不安が増している。

 背景には、中国やインドなど急成長を続けている途上国での需要拡大や、一部地域の天候不順により、在庫が大きく落ち込んでいることが挙げられる。

 穀物市場での投機熱の高まりや原油高による輸送コストの増大、穀物を原料とするバイオ燃料の普及も関係する。さまざまな要因が絡み合って、問題を複雑にしている。事態を放置していれば、世界の安全保障に深刻な影響が出るおそれもある。

 7月の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)でも主要議題の一つになる見通しだ。日本も含めて先進諸国は対応を加速させなくてはならない。知恵を絞って、難局を乗り切りたい。

 国連食糧農業機関(FAO)によると、国際的な穀物価格は昨年後半から急騰し始めた。3月末のコメと小麦の価格は前年同月比で約2倍、トウモロコシは約30%値上がりした。ことしの世界の穀物在庫は過去25年間で最低の水準になるとみている。

 食糧は多国間調整が必要で、すぐに効果が出る対策は難しい。とはいっても、手をこまぬいているわけにはいかない。「途上国の農業開発を急ぎ、世界全体で増産を図る以外に打開策はない」と指摘する専門家がいる。

 これまでの途上国に対する開発援助は、教育や医療が優先され、農業振興は二の次だったといわれている。世界銀行は昨年秋、農業や農村が軽視され、十分な投資が行われなかったことを認め、途上国の農業への投資拡大を呼びかける報告書を公表した。

 食糧の安定確保という目的を実現するまでには時間がかかるが、即効薬が期待できない以上、途上国の自給率を高めるための農業振興は待ったなしだ。

 食を輸入に頼り、自給率が40%を割り込んだ日本も同じことがいえる。穀物価格の高騰が暮らしを揺さぶっている。自給率低下の背景には農業離れによる農村の荒廃がある。

 経済のグローバル化が進む中、小規模な農業はますます厳しい状況に置かれている。食糧安全保障は農の現場を守り、育てることを基本に考えなくてはならない。世界共通の課題である。

洞爺湖サミット:食糧高騰を議題に…首相が国連などに書簡

2008年04月21日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 福田康夫首相は21日、世界的に深刻な影響が出ている食糧価格の高騰について、議長を務める7月の北海道洞爺湖サミットで議題に取り上げるとした書簡を、(潘基文バンギムン)国連事務総長とゼーリック世界銀行総裁あてに送った。

 書簡はG8(主要8カ国)や国際機関が連携し、貧困層への支援やバイオ燃料対策、食糧生産性改善に取り組むことが必要と指摘。サミットで「強い切迫感をもって」議題とするほか、5月に横浜市で開く第4回アフリカ開発会議(TICAD4)でも議論するとしている。【鵜塚健】

【社説】迫り来る食の危機

2008.04.21 中央日報 Joins.com

 コメの世界的な価格高騰が続いている。先週末にコメ価格は1トン=1000ドルを突破した。わずか1カ月で倍以上が上昇したが、それさえも物量確保が厳しい状況だ。昨年は小麦とトウモロコシの価格が急騰したが、今年はコメが問題だ。

食糧危機はオイルショックや金融不安とはレベルが異なる問題といえる。価格が上昇するからといって、食べずに生きていくことはできない。全世界にわたって食糧危機は驚くべきスピードで広がっている。国連食糧農業機関(FAO)は現在、世界の穀物在庫が8〜12週間分にすぎず、1980年代以来の最低水準にあると明らかにした。食糧価格の高騰が現在のスピードで進めば、今年1億人の人口が追加で飢えに直面するようになる、と警告した。

食糧危機は今年7月の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)でも主要議題に取りあげられるほど、世界を脅威する最大の懸案になっている。食糧危機は人間のどん欲の産物だ。地球温暖化によって耕作地は日々減り、水不足の頻度が増えた。毎年2500万トンの穀物を生産していたオーストラリアは、06年の穀物生産が980万トンにとどまった。

中国の場合、年間の肉類消費が1人当たり20キロ(85年)から50キロに増えた。豚肉1キロを生産するためには、穀物8キロが必要とされる。石油を代えるバイオ燃料に入っていく穀物の量も急増している。米国はトウモロコシの生産量の20%をバイオエタノールの製造に使っている。

最近では保護貿易が食糧危機を加速している。タイ・ベトナムなどコメ輸出国が自国のインフレに歯止めをかけるために、コメ価格の安定に向けた輸出統制に乗り出し、コメの価格が急騰している。さらに、中間卸業者らの買いだめが猛威を振るうなか、全世界の投機資本まで加勢し、コメ価格は高止まりしたままだ。

貧しいコメの輸入国には暴動が頻発しはじめている。食糧の兵器化を防ぎ、大規模な飢きんという災難を避けるためには、国際社会の連携が切実である。保護貿易主義は価格をわい曲し、危機を増幅させるだけだ。政策目標は、必要とする人々に食糧を供給するのを最優先しなければならない。食糧危機は、社会に不安を引き起こし、児童の学習機会を奪う。これが、貧困の悪循環と世界の「成長動力の弱化」につながるのは必至だ。

したがって、国連や国際復興開発銀行(世界銀行=IBRD)が主導する、国際社会のビッグディールが急がれる。米国はバイオエネルギー政策を見直し、中国も当分豚肉の需要を抑制しなければならない。その代わり、コメを輸出する各国は禁輸措置を解除しなければならないだろう。

最近、韓国政府は海外に食糧基地を設ける、という方針を明らかにした。ロシア沿海州やカンボジアの広い耕作地を長期にわたって賃貸し、北朝鮮への食糧支援や韓国内への供給を進める、ということだ。必要な場合、北朝鮮の安い労働力も投入する、という考えだ。マクロな展望に基づいた正しい政策といえる。

コメの自給自足を実現するというものの、韓国は全世界で第3位の食糧輸入国である。統一以降の状況をも踏まえる場合、海外の食糧基地確保は必すの措置だ。しかし、海外に食糧基地を作るためには、韓国の関税政策も見直さなければならない。現在、農家を保護するために、トウモロコシ・豆・小麦など輸入穀物に課す関税は、最高482%にのぼっている。

海外の食糧基地で生産された穀物を韓国内に「無関税」で搬入するとしたら、農民の反発はもちろん、米国・豪州など穀物輸出国も無関税恩恵を求めてくる可能性も排除できない。ここに、穀物産業は「クモの糸の理論」(需要と供給の対応関係を図表化すればクモの糸状になるという理論)が適用される危険な市場だ。農産物は育つのに相当な時間がかかるだけに、急変する需要に比べ、供給の量を適時に調整するのがむずかしい。

一定の時差をおいて超過需要と超過供給、それによる価格高騰と暴落が繰り返されやすい。したがって、海外食糧基地の推進は、政府と企業が協力し、リスクを避ける案を講じつつち密に進めていかなければならない事業といえるだろう。

国連事務総長、食糧問題の緊急性を強調 作業部会設置へ

2008.04.21 CNN.co.jp

 アクラ(AP) 国連の潘基文(バン・キムン)事務総長は20日、西アフリカ・ガーナの首都アクラで開催中の国連貿易開発会議(UNCTAD)で、世界的な食糧価格の高騰による食糧難問題の緊急性を強調し、国連内に作業部会を設けるなど早急に対処する構えをあらためて示した。

 潘事務総長は会議の冒頭で、「ひとつ確かなことは、過去3年間のうちに世界の食糧消費量が生産量を上回ってしまったことだ」「事態の重大さをしっかりと認識する必要がある」と強調。問題の原因として、原油価格の高騰や米ドルの下落、自然災害などを挙げたうえで、「われわれが適切な支援を実施すれば、必ず解決の日は来る」と述べた。

 さらに、2015年までに極度の貧困と飢餓を半減させるとした2000年の「国連ミレニアム開発目標」が、このままでは達成できないと警告。「われわれは振り出しにもどってしまう恐れがある。一層の努力をしなければ、約束を破ることになる」と語った。

 潘事務総長はまた、「切迫感を持ってただちに対処する」との方針に基づき、食糧問題に関する特別作業部会を設置すると表明。さらに、世界食料計画(WFP)が年間7億5000万ドルの資金を募る計画を示し、国際社会の協力を求めた。

広がる穀物輸出規制/「余剰の時代」の終わりか

2008年04月20日 河北新聞

 輸出税を課したり輸出枠を設けたりと、穀物の輸出を規制する動きが主要生産国で相次いでいる。ほとんどが新興国で、穀物価格の高騰に伴って増加する輸出を抑え、国内供給を優先させるための措置だ。

 地球温暖化による異常気象の頻発、バイオ燃料の増産に加えて、こうした動きが広がれば、世界の穀物需給はさらに逼迫(ひっぱく)する。世界最大の食料純輸入国である日本にとっては脅威であり、食をめぐる政策・戦略の練り直しが急務だ。

 輸出規制の影響が最近あらわになったのはコメ。規制したのは中国、インド、ベトナム、エジプトだ。貿易量が減少したため、国際価格も大幅に上昇。輸入に頼る香港やフィリピンでは、消費者が買いだめに走るなど“コメ騒動”を引き起こした。

 この例ばかりではない。米国やオーストラリア、ブラジルなどは別だが、ロシアが大麦、小麦に輸出税をかけたのをはじめ、ウクライナ、セルビア、アルゼンチンなども小麦やトウモロコシを中心に規制を敷いた。

 これらの国々、特に中国とインドでは人口増が著しい。さらに日本も経験したように、経済成長とともに食生活が変化し畜産物や脂質の摂取傾向が強まっている。食料としても飼料としても穀物の国内需要が高まったことが輸出規制の背景にある。

 これまでの穀物貿易はいわば「余剰の時代」の産物だった。国内であり余った物を輸出し国際市場で「商品」として取引してきた。が、その動きは影を潜め国内供給を優先する流れに変わった。穀物は自国民の生存と安全に不可欠な「戦略物資」としての色彩を強めつつある。

 日本は官民ともに、そうした現状を認識する必要がある。

 穀物の貿易量は大豆が全生産量の30%に上るものの、コメは7%にすぎず、小麦、トウモロコシも10%台にとどまる。

 現状のまま推移すれば、日本は、経済成長が著しく、いずれ輸入国に転じかねない中国やインドなどと、しぼむパイを奪い合うことになる。そうなれば価格はさらにつり上がり、争奪戦に勝っても負けても国民生活に計り知れない打撃を与えよう。

 日本の食料自給率は39%、基礎食糧である穀物に至っては27%にすぎない。余剰の時代にどっぷりとつかってきた結果だ。長い眠りから早く目覚めなければならない。

 国内農業はかつて過保護という強い批判にさらされ、保護が大幅に削られた。生産効率を高めるため大規模化を促し価格決定も市場原理に委ねる政策が取られてきた。ところが、自給率は一向に上がらず農業現場の疲弊感はむしろ増している。農政の転換が必要なのは明らかだ。

 ただ、自給率は急に向上するものではない。外に向けては輸入相手国の偏りをなくすなどして輸入の安定化を図る努力が要るし、備蓄についても戦略的な取り組みが必要ではないか。

 われわれ消費者も食べ残しや食品の廃棄をなくすよう努めたい。われわれの食の在り方が世界の飢餓と無関係ではないことも忘れてはならない。

食糧サミット開催提言 国連、価格高騰に危機感

2008年04月18日 西日本新聞

 【ニューヨーク17日共同】国連緊急援助調整官室(OCHA)などは17日までに、食糧価格の高騰によって世界各地で暴動が起きていることに対処するため、各国首脳が参加する食糧サミットの開催などを盛り込んだ提言書をまとめ、潘基文・国連事務総長に提出した。

 食糧価格の高騰は、中国やインドの需要急増やバイオ燃料の広がりなどが原因。適切な対応を取らないと暴動が拡大して政治情勢が不安定になりかねない国もあり、提言書は「緊急の行動が必要」と危機感を示した。関係者によると、国連本体が食糧サミットを開けば、初めてという。

 「地球規模の食糧課題」と題した15日付の国連内部討議用の提言書は、潘事務総長を議長とする作業部会設置のほか、世界銀行などの協力取り付け、緊急対応策の作成などを求めた上、食糧サミットを「理想的には(9月に始まる)次期国連総会前」に開催するよう提言した。

 価格高騰に伴い、エジプトやコートジボワール、ハイチ、ブルキナファソで暴動や抗議活動が起きている。

アジア開銀総裁、食糧高騰「サブプライムより深刻」

2008年04月18日 NIKKEI NeT

 【マニラ=遠西俊洋】アジア開発銀行(ADB)の黒田東彦総裁は18日、マニラのADB本部で記者会見し、世界的なコメなど食料価格の高騰に関し「途上国を中心に、米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題より深刻だ」と述べた。アジア各国の主食であるコメの値上がりを受け「インフレ抑制が今年から来年にかけての最大の政策課題になる」とも語り、インフレ対策の必要性を強調した。

 黒田総裁は食料高騰について「中国やインド、東南アジアといったアジア地域だけでなくアフリカや中米などでも喫緊の経済課題だ」と指摘。ADBとして「アジアの加盟国が食料高騰による財政難に陥った場合、緊急融資などに応じる」と述べた。

 各国のインフレ抑制策として「一層の金融引き締め策や自国通貨高容認などに期待する」と言及。5月初旬にマドリードで開く年次総会の場などを通じ、各国の当局者と対応を協議する考えも示した。

「要請あるまで待つ」 対北朝鮮食糧支援で韓国

2008.04.18 MSN産経新聞

 韓国外交通商省の文太暎報道官は18日の記者会見で、北朝鮮に対する食糧支援について「要請があるまで待つ予定だ」と述べ、北朝鮮から要請が来ない限り着手しない考えを示した。

 一方で、報道官は李明博政権でも北朝鮮への人道支援は続けるとし「具体的な提議があれば積極的に検討する」と語った。

 また北朝鮮の金正日総書記が近くベトナム、中国両国を歴訪する可能性があるとの一部報道について「ベトナム訪問の具体的な日程はなく、現時点では訪中計画もないと聞いている」と語った。(共同)

国連、ハイチに8000トンの追加食料援助を実施へ

2008.04.18 CNN.co.jp

 国連本部(AP) カリブ海の島国ハイチで、世界的な食糧価格高騰による食糧難が深刻化し、政情不安などを招いている問題で、国連は17日、緊急措置として、同国に8000トン規模の追加食料援助を実施すると発表した。

 国連報道官によると、世界食糧計画(WFP)が同国北部と西部、中部で、子どもや妊婦、授乳中の母親らへの援助を実施する。食糧の配給はただちに開始し、今後約2カ月間続く見通しだという。

 また同国北西部では、国連児童基金(ユニセフ)が子どもたちへの食糧援助を倍増させ、約160万ドルをかけて水道整備、公衆衛生の事業を実施する。WFPと国連ハイチ安定化派遣団が230万ドルの予算をかけて支援する失業者対策にも、今後さらに力を入れていく方針だという。

 もともと貧困、飢餓の問題を抱え、食糧自給率の低かったハイチは、世界的な食糧高騰で大きな打撃を受け、首都ポルトープランスなどで抗議デモや略奪が続発。国会では先週、事態を収拾できなかったとして、アレクシ首相が解任された。

世界各地で食糧価格が高騰、見直される「ジャガイモ」の魅力

2008年04月18日 Reuters

 [リマ 15日 ロイター] 世界各地で小麦やコメの価格が高騰するなか、比較的安価に栽培することもでき、栄養価の高いジャガイモの魅力が見直され始めている。

 ペルーを原産地とするジャガイモは、寒冷なアンデス山脈の荒れ地からアジアの熱帯地域まで、さまざまな環境で栽培されている。また、水分をさほど必要とせず、最短50日ほどで成長し、1ヘクタール当たりの「食糧」収穫量は小麦やコメの2─4倍にもなる。

 リマにある国際ジャガイモセンター(CIP)のパメラ・アンダーソン所長は「世界の人々に十分な食糧が行き渡らないという現実に、われわれは向かいつつあるのかもしれない」と指摘。その上で、ジャガイモが食糧供給問題の解決策の1つになるとの見方を示す。

 食品の値上がりや肥料・燃料の価格高騰、バイオ燃料に使用される作物への転作、人口の増加などによる食糧危機を救う可能性をジャガイモは秘めている。

 国連は2008年を国際ジャガイモ年とし、ジャガイモを「隠れた宝」と呼ぶ。また、政府がジャガイモの利用促進に力を入れ始めた国もあり、ペルーではジャガイモの粉を使ったパン作りを奨励するプログラムが開始された。ジャガイモから作られたパンは、学校や刑務所、軍隊などに供給されている。

 <各国の動向とジャガイモの栄養>

 約8000年前にペルーのチチカカ湖で栽培されていたのが起源とされるジャガイモだが、ペルー人の消費量はヨーロッパ人に比べて少ない。人口当たりで世界最大の消費国はベラルーシで、1人当たり年間で約170キロのジャガイモを消費する。

 インドは、向こう5─10年でジャガイモ生産量を2倍にする研究に着手。コメの一大消費国である中国は、世界最大のジャガイモ生産国でもある。またサハラ以南のアフリカでは、ジャガイモの生産がその他のあらゆる作物を上回るペースで拡大している。

 ラトビアでは、1─2月にパンの販売量が価格上昇を受けて10─15%減少した一方、消費者のジャガイモ購入量は20%以上増えた。

 ジャガイモ消費量が拡大すれば、その多くを栽培する発展途上国の農家の収入増加にもつながる。前述のアンダーソン氏は「(発展途上国は)ジャガイモを食糧安全保障と収入創出の両面で選択肢の1つと見ている」と語った。

 ジャガイモには色や形のほか、大きさや質感など非常に多くの品種があり、調理方法もさまざま。世界中で創作的な料理人の手によって、これまでに数多くのメニューが登場してきた。

 丸複合糖質を多く含むジャガイモはエネルギー源としても優れている。CIPによると、ゆでたジャガイモはトウモロコシに比べて多くのタンパク質を含み、カルシウムの量は約2倍だという。またジャガイモにはビタミンCや鉄分、カリウム、亜鉛も含まれている。

 <投機マネーに縁薄いジャガイモ>

 ジャガイモの価格が高騰していない理由の1つに、小麦などと違って国際的に取引されてないため、投機マネーを引き付けていない点が挙げられる。

 小麦は世界全体で毎年6億トン前後が生産されるが、そのうちの約17%が生産国外への輸出に回る。一方、ジャガイモは輸送途中で腐る可能性があるほか、病原菌に感染しやすいため、検疫の問題で輸出入が控えられる側面もある。

 専門家の推計では、国際的に取引されるジャガイモは生産量全体の5%未満。そのため価格は国際的な需給ではなく、主に消費される国ごとの事情によって変動する。

 これにはマイナス面もある。一部の国では、ジャガイモの価格が農家にとって魅力的ではなく、作付けの動機になりにくいことがある。ペルーのジャガイモ市場では、政府が需要促進にもっと力を入れるべきとの声も聞かれる。

 しかし、科学の進歩がこうした「ジャガイモ」を取り巻く環境を変えるかもしれない。

 独化学大手BASF(BASF.DE: 株価, 企業情報, レポート)は、遺伝子組み換えによって「葉枯れ病」に強いジャガイモを開発している。この病気は19世紀にアイルランドで飢饉(ききん)をもたらしたものであり、BASFによると、現在でも世界のジャガイモ収穫の約20%を損失させる原因となっている。

 研究者らは、病気の危険がない安全な種イモを使用することで、農家の収穫量が30%増える可能性があるとしており、検疫の安全性の観点から輸出にも使えるようになるとみている。

 そうなれば、農家にとっての収入増につながるだけでなく、企業は冷凍フライドポテトやポテトチップのみならず、特色を持ったジャガイモを海外に売り込めるかもしれず、生産量の増加がさらに加速していく可能性がある。 (ロイター日本語ニュース 原文:Terry Wade、翻訳:宮井伸明)

サミットで食糧高騰議題に 政府方針 緊急対策など検討

2008/04/17 北海道新聞

 政府は十六日、アフリカなどで抗議行動や暴動に発展している世界的な食糧高騰問題を、七月の北海道洞爺湖サミットで議題とする方針を決めた。七月七日のサミット初日のアフリカ開発に関する拡大会合(アウトリーチ)で協議し、気候変動や世界経済の協議でも取り上げる可能性がある。

 短期的な緊急援助策とともに、途上国での食糧生産性を中長期的にどう高めるかも話し合う。五月に横浜で開くアフリカ開発会議(TICAD)で対策を具体化させ、洞爺湖サミットで合意を得たい考えだ。

 緊急対策について、外務省は「サミットを待たずに実施したい」としており、まとまれば前倒し実施も検討する。

 食糧高騰問題は今月五、六日、東京都内で開かれた主要国(G8)開発相会合で論点に浮上。十三日にワシントンで開かれた世界銀行と国際通貨基金(IMF)の合同開発委員会も、緊急支援の必要性を強調した。

 世界銀行によると、現在の主要食糧価格は二〇〇五年から約80%上昇しており、小麦の実質価格は過去二十五年間の平均価格の約二倍に達した。 

北の食糧高騰、昨年の2倍に WFP発表

2008年04月17日 中日新聞

 【ソウル=築山英司】国連の世界食糧計画(WFP)は16日、北朝鮮でコメなどの基幹食糧価格が昨年の2倍に上昇し、記録的な高値になっていると発表した。昨夏の大洪水被害のためで、アジア地域の担当者は「外部の支援が緊急に必要だ」と国際社会に訴えている。

 WFPによると、平壌でコメは1年前に比べて約2倍になり、トウモロコシも前年同期の約1・7倍に上る。2004年以降で最も高い水準という。豚肉やジャガイモ、卵も軒並み高騰し、平壌で高級品になっている。

食料価格高騰に直面するフィリピン、政府が輸入米を直接販売

2008年04月17日 AFP BB News 発信地:マニラ/フィリピン

【4月17日 AFP】フィリピン国家食糧庁(National Food Authority、NFA)は16日、マニラ(Manila)首都圏で、ベトナムから輸入した政府米を1キロ当たり18.25ペソ(約44.67円)の安い価格で直接販売した。警備のため軍が動員された。

 政府は食料価格高騰による暴動を避けるため、コメを不正に備蓄している業者への取り締まりを強化する一方、米国にコメ支援を求めるなどの働きかけを行っている。

 国連(UN)世界食糧計画(World Food Programme、WFP)は、世界的な食料価格の高騰で、内乱が長引くミンダナオ(Mindanao)島での配給量を削減せざるを得ない可能性があると指摘。配給を受ける約100万人のうち、10年に及ぶ内戦のため避難生活を余儀なくされている女性や子どもへの影響が最も懸念されるとしている。

 世界銀行(World Bank)は、食料価格が過去3年間で2倍に上昇したことで、発展途上国では1億人がさらなる貧困に苦しむことになると警告。先進国に対しこの問題への取り組みを訴えている。(c)AFP

コメ不足のフィリピン、農地転用を無期限禁止

2008年04月17日 AFP BB News 発信地:マニラ/フィリピン

【4月17日 AFP】フィリピン政府は17日、コメの輸入量削減の一環として、農地の他用途への転用を無期限に禁止すると発表した。世界最大のコメ輸入国の1つであるフィリピンでは、米価が今年初めに比べ約2倍になっている。

 世界各地で食糧危機が深刻化するなか、フィリピン政府は、農地を買い上げ好景気に沸く不動産市場に売却してきた不動産開発業者を対象とする措置と説明。

 農業改革担当のNasser Pangandaman氏は、禁止措置の目的を「後を絶たない、良質な農地から不動産用地への転用」に歯止めをかけるためとしている。

 7000以上の山がちな島々で構成されるフィリピンでは、現在9000万人までに急増している人口を養っていけるだけのコメの生産が困難だとされている。(c)AFP

バイオ燃料の排斥こそ「人道に対する罪」、ブラジル大統領が反論

2008年04月17日 AFP BB News 発信地:ブラジリア/ブラジル

【4月17日 AFP】国連(UN)の特別報告官がバイオ燃料の大量生産は「人道に対する罪」だと発言した問題で、ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ(Luiz Inacio Lula da Silva)大統領は16日、開発を促進する原動力と成り得るバイオ燃料を「排斥することこそが本当の意味での人道に対する罪」だと反論した。

 ルラ大統領は、首都ブラジリア(Brasilia)で開かれた国連食糧農業機関(United Nations Food and Agriculture Organisation、FAO)の地域会議で、バイオ燃料の排斥は「食糧とエネルギーの不足に苦しむ国々の依存度を高め、不安定化させること」と指摘。バイオ燃料が食用農作物の生産地を減らし食糧価格の高騰を招いていると批判されていることについて、「驚きを隠せない」と述べた。

 14日、国連の「食糧を守る権利」に関する特別報告官を務めるジャン・ジグレール(Jean Ziegler)氏は、ドイツのラジオ番組で「バイオ燃料の大量生産は世界の食糧価格を破壊する『人道に対する罪』だ」と発言していた。(c)AFP

食品高騰は時限爆弾=補助金制度が全てを狂わす

2008年04月17日 ニッケイ新聞

 ドーハ・ラウンドは食品高騰を巡って、食糧輸入国と輸出国の間で新たなジレンマを引き起こしている。食糧輸入国は、補助金制度の継続により農業生産者を保護する必要があると主張。農産物の市場開放を主張してきたブラジルにとって、新たなトゲが刺さったような感じである。

 世界貿易機関(WTO)は、国際情勢が市場開放を既成事実としているのに、前時代的感覚で足踏みをしていると補助金制度に断を下すよう求めた。食糧問題は、世界が前向きに取り組むべきこととした。生産性の向上も改善意欲もない生産者を補助金で保護するのは、失政のツケという。

 EUは小麦の市場開放を行い、安い小麦の輸入に踏み切った。しかし、貧しい途上国は生産者に補助金供与もできないし、生産コストの削減も輸入品との競争もできないという。食糧を輸入する先進国の助けで、生産者保護協定を結ぶしかないと訴える。

 ブラジルでは最低賃金三カ月以下の低所得階級が、生活費の四〇%を食費につぎ込む。食糧高騰の犠牲になるのは、国民の二七%と見られる低所得階級らしい。セスタ・バジカ(生活必需品バスケット)は、農産物コモディティの動向次第といえる。

 食糧輸入国とブラジルの台所は、少し事情が異なる。ブラジルの生産者は、一部を除いて補助金という言葉さえ知らない。食糧高騰といっても、影響を受けるのは二七%のようだ。食糧輸入国は補助金制度を廃止すると、国家の屋台骨まで揺らぐ切実な問題だ。

穀物を巡る激しい争奪戦テーマ:2008年の日本と世界を読む

2008/04/17 世界同時バブル崩壊でも生き残る方法

 21世紀に入って、世界経済の牽引役はBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)に代表される新興国に移ってきました。 今や、世界経済を牽引しているのは人口8億人弱の先進国ではなく、人口約30億人の新興国経済です。

 これら「人口大国」が本格的な工業化の過程に突入し、猛スピードで先進国へのキャッチアップを進めたことが、穀物の需給逼迫(ひっぱく)をもたらした大きな原因になっています。

 新興国の急速な経済成長は急速な所得向上をもたらし、そして所得の向上は食生活を変え、量ばかりでなく質の変化を伴って食料需要の飛躍的な増大を招くためです。

 このため、穀物を巡る国家間の争奪戦が激化しています。

 第一は、穀物を巡る国家間の争奪戦です。

 これまで「世界のパン籠(かご)」として世界の食料供給を柔軟に行なってきた米国が国内市場の拡大により輸出余力を失う一方、成長著しい中国が新たな食料輸入大国になりつつあります。

 特に、争奪戦は今後、「トウモロコシ市場」において先鋭化する可能性が高いと予想されています。 これまで米国は、トウモロコシ生産量の約4分の3を国内で消費し、残り4分の1を輸出に供(きょう)していました。

 しかし、トウモロコシを原料とするエタノール向け需要の急増に伴い、近い将来、国内需要が生産量の9割近くに達し、輸出に回すことのできる量が1割程度に落ち込む可能性が高いのです。

 そこに中国がトウモロコシの輸入国に転じた場合、限られたトウモロコシを巡って輸入国間で争奪戦になることは避けられません。

 第二は、エネルギー市場と食糧市場による穀物の争奪戦です。

 急速に進む地球温暖化対策と原油価格の高騰を背景に、世界中でクリーンな燃料でガソリン代替燃料となるエタノールに代表されるバイオ燃料の導入が始まっています。

 米国のトウモロコシ・エタノールや大豆油を原料とするバイオディーゼルの導入をはじめ、ブラジルではサトウキビ・エタノールの生産が急増しています。

 欧州では菜種油から、東南アジアではパーム油を原料とするバイオディーゼルの生産も拡大しています。

 しかし、こうしたバイオ燃料ブームの負の側面として、エネルギー市場と食糧市場の競合が指摘されるようになってきました。

 エタノール需要の拡大はトウモロコシ価格を高騰させ、直接、貧困層の飢えを拡大させるほか、家畜の餌代に跳ね返り、最終的には食肉価格を押し上げています。

 第三は、工業部門と農業部門での水と土地の争奪戦です。

 工業化は工業用水や生活用水、そして工業用地や住宅地を拡大する結果、工業に比べ付加価値生産性の低い農業は、次第に限界地に追いやられています。

 特に今後、争奪戦が強まるとみられるのは、中国においてです。 急激な工業化が進む中国では、北部を中心に水不足が深刻化しています。

 また、穀物の大生産地である米国や中国、インドでは地下水を汲み上げて生産を行なってきたため、地下水位の低下または枯渇という現象を引き起こしています。 したがって、工業化の進展や急激な都市化は、こうした農業用水の不足に拍車をかけています。

 さらには、BRICsを中心とする新興国の肉食化によって、人間と家畜との間での穀物の争奪戦も激化しています。 食料としての穀物の消費は、人間が食べ物として「直接消費」する場合と、家畜の飼料として畜産物の生産に使用し、畜肉や酪農品を介する「間接消費」の2つに分かれます。

 特に間接消費では、畜産品を1キロ生産するために必要な飼料となるトウモロコシは、鶏卵で3キロ、鶏肉で4キロ、豚肉で7キロ、飼育期間が長い牛肉に至っては11キロといわれています。

 したがって、まだまだ動物性食料の消費割合が低い中国やインドなどの人口大国で、その消費割合が上昇してきますと、飼料としての間接消費が今後もさらに急増するものと予想されます。

食糧高騰 「外から買う」が危うい

2008年04月16日 中日新聞

 米大統領が食糧危機に瀕(ひん)するアフリカなどへの緊急支援策を打ち出した。英国の首相は食糧問題を北海道洞爺湖サミットの議題にすべきだと訴えた。日本も食糧調達の危うさを直視せねばならない。

 今月に入り、アフリカのチュニジアでは食品の値下げを求めるデモが暴動に発展し、警官の発砲で二人が死亡した。エジプトでは安いパンを求める人々が列をなし、けんかによる死者も出た。中米ハイチでは首相解任につながった。コメ輸出国のタイやベトナムは国内向けを優先し、輸出削減に踏み切っている。

 食糧高騰がもたらす混乱を早急に収めたい。アフリカと関係が深い英国のブラウン首相からそんな危機感が伝わってくる。世界銀行のゼーリック総裁は七月のサミット前に大阪で開かれる八カ国財務相会議でも議題とするよう求めた。サミット議長を務める日本の首相は真摯(しんし)に受けとめ、対策づくりを主導しなければなるまい。

 小麦やトウモロコシの市場価格は二〇〇六年に比べ二倍になった。小麦は主要生産国のオーストラリアが二年連続して干ばつに見舞われたことが影響している。

 米国のサブプライムローン問題を機に行き場を失った投機資金が穀物市場に押し寄せ高騰に拍車をかけている。トウモロコシがバイオ燃料の原料に回されて品薄となり、そのあおりで大豆の生産面積削減という悪循環も招いている。

 日本は穀物の多くを輸入に頼っており、めん類やパン、しょうゆ、食用油などの値上げが止まらない。投機資金の対策などサミットで議論すべき課題は山積しているが、同時に、日本も先進国中最低の食料自給率39%という厳しい現実と向き合うことが不可欠だ。

 二〇〇〇年に消費量の30%を超えていた世界の穀物在庫は国連食糧農業機関が安全水準とする18%を下回った。中国など新興国の旺盛な消費に生産が追いつかない。

 長く続いた「外国から買える」という日本の食糧調達が危うくなり、絶対不足の領域に移りつつあることを知るべきだろう。

 日本の農地のうち埼玉県の広さに匹敵する三十八万ヘクタールが耕作放棄地だ。生産基地を遊ばせているのが現実であり、そんな余裕はなくなっていると言うほかない。

 農政をめぐり与野党は激しく対立しているが、世界の食糧事情を見据えれば早急に対策を講じるべきだ。食糧政策を与野党一体で打ち出す覚悟を見せてもらいたい。

食糧危機対策として農業分野での改革を、専門家組織

2008年04月16日 AFP BB News 発信地:パリ/フランス

【AFP】国連(UN)が後援する専門家組織「開発のための農業科学技術国際評価(International Assessment of Agricultural Science and Technology for Development、IAASTD)」は15日、報告書を発表し、農業分野での改革を急がなければ、食糧価格高騰に伴う社会的・政治的混乱が拡大するとして懸念を表明した。

 IAASTDは報告書で「国際社会が、社会的崩壊や環境汚染を避けながら人口増加や気候変動の問題に立ち向かうのであれば、現代の農業には、貧困や飢餓を解決するための急速な変化が求められる」と指摘している。

 さらに、「生産と分配の分野で現在の状況が続くようであれば、われわれは資源を使い果たし、次の世代を危機にさらすことになる」と結論付けている。

 IAASTDのボブ・ワトソン(Bob Watson)氏は、農作業に変化を求めるのは「時代遅れで、一部地域では反発も起こりうる」とし、「貧困層の利益も考慮に入れた、より公平な政策がとられるべきだ」と語った。

 基本的な食料品の価格は過去数か月で急騰しており、エジプトやカメルーン、コートジボワール、モーリタニア、エチオピア、マダガスタル、フィリピン、インドネシアなど多くの国で激しい抗議活動が行われた。コメやトウモロコシ、小麦などの穀物価格は、今後も上昇するとみられている。

 現在、世界の穀物在庫量は記録的な低水準となっていることに加え、2007年3月以来、大豆の価格は87%、小麦は130%上昇している。この背景として、中国やインドでの需要が増加していることや大豆やトウモロコシがバイオ燃料に使用されていることなどが指摘されている。

 国連児童基金(ユニセフ、UN Children's Fund、UNICEF)は、食糧価格の高騰によって、食費を稼ぐために子どもたちが学校をやめて働かざるを得ない状況になっていると指摘する。

 食糧価格高騰の影響は、特に貧困国で深刻だという。富裕国では家計に占める食費の割合は15%なのに比べ、貧困国では75%にも上っているという。(c)AFP

バイオ燃料生産は「人道に対する罪」、国連報告官

2008年04月16日 AFP BB News 発信地:ベルリン/ドイツ

【4月16日 AFP】「バイオ燃料の大量生産は、世界の食糧価格を破壊する『人道に対する罪』である」。国連(UN)の「食糧を守る権利」に関する特別報告官ジャン・ジグレール(Jean Ziegler)氏が14日、ドイツのラジオ番組で発言した。

■食糧用耕地を乗っ取る燃料用穀物生産

 独バイエルン放送(Bayerischer Runfunk)のラジオ番組に出演したジグレール氏は、「今日のバイオ燃料生産は人道に対する罪だ」と述べた。

 耕地をバイオ燃料用の穀物生産に使用することで、食糧生産のための耕地が減少してしまうとの指摘は、多くの専門家らが警告している。

■援助計画、貿易政策が第3世界の農業を破壊

 番組内でジグレール氏は国際通貨基金(IMF)に対し、農業の助成政策支援を見直し、債務削減を目的とした計画のみに限定した支援を止めるべきだと要請した。

 ジグレール氏は過去に欧州連合(EU)についても、ダンピングによりアフリカの農業に打撃を与えていると非難している。「EUは欧州の余剰農作物のアフリカへの輸出を助成している。アフリカではそうした余剰作物が、EU圏内の生産価格の半分あるいは3分の1程度で取り引きされており、これがアフリカの農業を壊滅に追いやっている。さらに国際市場における農産物への投機を止めなければならない」

■食糧価格高騰から長い暴動の時代へ

 フランスの中道左派系新聞「リベラシオン(Liberation)」のインタビューでも、ジグレール氏は世界は「非常に長い暴動の時代に向かいつつある」と述べ、そうした衝突や紛争は食糧不足と食糧価格の高騰に起因すると警告した。

 ドイツの消費者保護団体「フードウオッチ(Foodwatch)」の代表Thilo Bode氏は独国営ZDFテレビに出演し、工業先進国の貿易政策に「致命的」と鋭い批判を向けた。「われわれには異なるエネルギー政策が必要」だと激しく非難する。「飢えている他の人たちの犠牲の上に自分たちのタンクを満たすことは間違ったことだ」(c)AFP

食料価格高騰のバングラデシュ、1.5万人の工場労働者がストライキ

2008年04月16日 AFP BB News 発信地:Fatullah/バングラデシュ

【4月16日 AFP】バングラデシュの首都ダッカ(Dhaka)南方20キロのFatullah工業地帯で15日、政府による抗議行動禁止令を破り、少なくとも1.5万人の縫製工場労働者が低賃金と食料価格高騰に抗議してストライキを決行した。

 縫製産業は国内最大の輸出業。労働者らは工場内で座り込み、現在の賃金では食料が買えない、賃上げ要求が通るまで仕事は再開しないと訴えているという。

 国内では前週末、労働者と警官隊の衝突により少なくとも50人が負傷する事件が起きている。同様の事件の発生を避けるため、当局はストライキ中の労働者が工場外に出ないよう入口を封鎖した。

 500を超える工場が密集するFatallah工業地帯は現在、マシンガンで武装した軍車両が通りをパトロールするなど物々しい雰囲気に包まれている。

 当局の対応についてある男性労働者は「わたしたちを怖がらせようとしているだけだ。今の賃金では20日分の食料すら買えない」と嘆いた。

 男性が働く工場では、約6000人が12日からストライキを行っている。今後3か月間限定で200タカ(200円)の賃上げの合意に至ったもようだが、工場前に集まった労働者らはAFPのインタビューに対し、「十分ではない」「急な解雇言い渡しが行われている」と不満をあらわにしている。(c) AFP/Shafiq Alam

コメの最高値更新続く=食糧危機懸念で投機資金流入−シカゴ市場

2008/04/16時事ドットコム

 【シカゴ15日時事】穀物相場の高騰や、開発途上国の食糧危機への関心が世界的に高まる中で、シカゴ商品取引所(CBOT)に上場されているコメ先物の史上最高値更新が続いている。

 ベトナムなどの主要輸出国で輸出停止措置が懸念されるなど、需給逼迫(ひっぱく)感が強まっているためで、15日の相場も、値幅制限の上限まで急騰。商品相場ブームがアジア地域の主食であるコメにも波及し、投機資金の流入が活発化している。

米政府、途上国に200億円の緊急支援、食糧高騰で

2008.04.15 CNN.co.jp

 ワシントン(CNN) 米国のブッシュ大統領は14日、食糧の高騰により大きな影響が出ているアフリカなどの途上国に対し、総額2億ドル(約200億円)の緊急に支援すると発表した。

 世界銀行のぜーリック総裁が13日に発表した、緊急の訴えを受けた措置。世銀によると、世界食糧計画(WFP)は世界各国に対し、食糧難の解決に向けて少なくとも5億ドルが必要だとして、支援を呼び掛けている。

 食糧の高騰により現在、ハイチやバングラデシュ、エジプト、モザンビークなどでは、抗議デモや暴動が発生し、政情不安が懸念されている。

 世銀は国際通貨基金(IMF)と合同で会議を開催し、食糧高騰への対策を協議。食糧の高騰が続けば、多くの国が悲劇的な状況に陥るとしている。

食糧高騰、世界各地で社会不安 行列、デモ、暴動多発

2008/04/15 Iza! 配信元:産経新聞

 食糧高騰、世界各地で社会不安 行列、デモ、暴動多発 世界銀行が警告を発する食糧価格の高騰。主食となるコメや小麦は日々の生活に不可欠なだけに、とりわけ発展途上国で深刻な事態を引き起こしている。フィリピンでは米穀商の車両が共産ゲリラに襲撃され、エジプトでは政府支援のパンをもらう列で死傷者が出た。中米の小国ハイチでは、価格の沈静化に対処できなかったとして首相を議会が解任する政情不安にまで発展している。(シンガポール 藤本欣也、ワシントン 渡辺浩生、田北真樹子)

               ◇

 東南アジアのコメの価格が年初来30−40%上昇する中、世界最大のコメ輸入国というフィリピンではコメ不足の影響が深刻だ。レストランでは「半ライス」が奨励され、市民団体は米穀商の前で抗議デモを組織。共産ゲリラが米穀商の車両を襲撃する事件も発生し、コメの輸送には軍隊が動員されている。

 バングラデシュでもコメ価格がこの1年で倍増した。1974年の飢(き)饉(きん)以来とされるコメ不足に見舞われ、地方の食糧事情がさらに悪化している。

 コメ価格高騰の主要な要因となっているのが、高度成長に伴う消費拡大や物価上昇に対応するため国内供給を優先させたベトナム、インドなどコメ生産国による輸出規制だ。べトナムでは年間輸出量を制限し、インドでも高級米を除くコメ輸出を禁止した。

食糧高騰、各地で政情不安 世銀警告、犯人は−

2008.04.14 MSN産経新聞

 【ワシントン=渡辺浩生】記録的な食料価格高騰に不満が爆発した民衆の暴動が世界に広がっている。中米ハイチでは首相解任の事態に発展した。世界銀行はアフリカなどの途上国や最貧国で飢餓や政情不安が今後も拡大すると警告。米国発の金融危機を受けた利下げや、バイオ燃料ブームがこの食料インフレに拍車をかけており、沈静化に決め手はないのが実情だ。

 「世界中で空腹に苦しむ人が増えており、実態は日々深刻化している」

 ゼーリック世銀総裁は、先週当地で開催された国際通貨基金(IMF)との合同開発委員会などの場で、食料価格高騰で庶民の生活が圧迫され、世界33カ国が政治・社会的混乱の危険に直面していると警告。各国政府に対し、援助用食糧不足に直面する国連食料計画(WFP)に緊急で5億ドル提供するよう呼びかけた。

 世銀によると、世界の食料価格が2005年以来実に83%も上昇。中でも米は2カ月で75%上昇、小麦は昨年来120%上昇した。IMFも今年の新興国・発展途上国の消費者物価は食料・エネルギーの高騰で7・4%上昇と予測する。

 その構図は原油価格高騰と類似する。中国やインドなど新興国の急成長や人口急増の需要要因では説明がつかない。先進国の金融緩和による投機資金の膨張が犯人のひとりだ。

 低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)に端を発した金融危機を阻止するため、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げは昨年9月以来3%に達し、欧州中央銀行(ECB)などと連携した市場への資金供給も拡大。投機筋やファンドの膨大なマネーは、低迷する株・債券市場には向かず、原油や金、穀物の商品先物に流れ込んでいる。

 利下げによるドル安も、米国内のインフレ圧力を高めるだけでなく、通貨がドル相場と連動した他国にまで物価上昇を“輸出”。しかし、火元の米政府は「金融危機の対処がわれわれの最優先課題」(財務省幹部)とし、食料インフレの沈静化は後回しのようだ。

 トウモロコシが原料のバイオ燃料エタノールの増産も、トウモロコシから小麦、大豆の価格高騰に波及。エタノール増産に米政府が農家や業者に拠出する巨額の補助金を世銀・IMFの専門家も問題視するが、「最大の出資国米国に配慮して公然と批判は難しい」(世銀幹部)という。

途上国の食糧高騰、世銀など対応策検討 円借款も視野

2008年04月14日 asahi.com

 【ワシントン=都留悦史】世界銀行と国際通貨基金(IMF)の合同開発委員会が13日開かれ、食糧価格の高騰にあえぐアフリカなどの貧困国に対し、支援が必要との認識で一致した。日本が議長国を務める5月下旬のアフリカ開発会議(TICAD)までに具体策を詰める。

 世銀のゼーリック総裁は13日の記者会見で、食糧問題が7月の北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)でも議題に取り上げられることに期待感を表明し、各国が食糧問題に連携して取り組むための「画期的な機会になろう」と述べた。

 世銀の分析によると、食糧価格はここ3年間で2倍近くまで高騰し、一部途上国では暴動が発生するなど社会問題化している。

 日本政府も「緊急的な対応が必要になっている」(財務省幹部)との認識から、信託基金や円借款などによる具体的な支援策を世銀と協力しながら検討する考えだ。

洞爺湖サミットで食糧高騰を議題に、英首相が福田首相に書簡

2008年04月11日 AFP BB News

【4月11日 AFP】ゴードン・ブラウン(Gordon Brown)英首相は10日、福田康夫(Yasuo Fukuda)首相に書簡を送り、日本が議長国を務める7月の北海道洞爺湖(Toyako)先進国首脳会議(G8 Summit)で、食糧価格の高騰を主要議題に取り上げるよう呼びかけた。

 ブラウン首相は書簡の中で、「数十年ぶりに飢餓人口が増加している。食糧価格の急騰で暴動に発展している国もある」と述べ、主要先進国が率先して問題に取り組んでいくことを求めた。

 また、書簡のコピーを国連(UN)の潘基文(パン・キムン、Ban Ki-moon)事務総長、国際通貨基金(International Monetary Fund、IMF)のドミニク・ストロスカーン(Dominique Strauss-Kahn)専務理事、世界銀行(World Bank)のロバート・ゼーリック(Robert Zoellick)総裁にも送付し、3機関が協力して食糧価格高騰に取り組むよう要請した。

 ブラウン首相は食糧価格が高騰している背景の1つとして、農作物のバイオ燃料への転用の影響を調査する必要があると指摘している。

 これに対し、世界最大の農産物輸出国であるブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダシルバ(Luiz Inacio Lula da Silva)大統領は10日、バイオ燃料と食糧高騰の関連を否定。世界の人口増加が原因であり、生産量を増加させることが必要だとの見方を示している。(c)AFP

新・食糧危機〜飢餓の新しい局面〜

2008/04/10 JanJan News 松平尚也

世界で食料価格の高騰が続き、食料不足や食品価格高騰に対する暴動が全世界に広がっている。先進国の食料輸入の集中、気候温暖化による天候不順、食糧援助を通じた途上国のモノカルチャー化などが原因だ。我々は食生活や車社会を見直し、気候温暖化をはねかえす持続可能な農業に転換していくべきだ。

○暴動の発生も招く食糧価格高騰

 世界で食料価格の高騰が続いている。トウモロコシ、小麦などの価格は史上最高値を記録しており、穀物全般を輸入に依存する日本も大きな影響を受け始めた。特に小麦は4月から3割値上げされるため、日本のメーカーや消費者を直撃しそうだ。しかし影響を受けているのは日本だけではない。今、食料不足や食品価格高騰に対する暴動が全世界に広がっているのだ。

 国連世界食糧計画(WFP)のジョゼット・シーラン事務局長は警鐘を鳴らす。「飢餓が新しい局面を迎えている。食料は棚に陳列されているものの値段が高く、人々は購入できない。このような都市部における脆弱性はかつて見た事がない。多くの国で食料暴動が起きている」。価格高騰の影響は世界中で体感され始めている。食料暴動がモロッコやイエメン、メキシコ、ギニア、モーリタニア、セネガル、ウズベキスタン等の国々で相次いで勃発しているのだ。

 パキスタンでは20年ぶりに主食の配給カードを復活。エジプトでも20年ぶりに食料品の割り当て制度を広げた。アルゼンチンとベトナムは海外の売上税、輸出禁止を強化、中国とロシアも輸出抑制や物価統制を課すようになった。インドネシアやメキシコ等、食糧援助の対象外だった国々も、非常事態を宣言するまでに食料事情が悪化している。

 途上国には、もともとエンゲル係数の高い国々が多い(例えばバングラデシュなどでは、3分の2以上)。そこにこの食料の値上げである。農村から移住してきた都市生活者は、高い食料を買う代わりに教育と医療、福祉を犠牲にせざるを得ない状況になってしまった。

 そもそも農村から移住してきたのには訳がある。それはWTO(世界貿易機関)等が推進してきた経済のグローバル化だ。世界中に安い農産物が流入し、農村で生計を立ててきた人々は都市部や国外に出て働かざるをえなくなってしまったのだ。

○食料価格はなぜ高騰したか

 FAO(国連食料農業機関)によれば、2007年の世界の穀物生産量は21億tで過去最高を記録したということだ。高騰の背景には、むしろ需要側の根本的な変化がある。その原因には以下の3点があげられる。

 原因その1:先進国への食料輸入の集中や、インド・中国の食生活の変化

 世界では60億の人々が食事をするのに十分過ぎる食料(1人当たり356kgの穀物)が生産されている。問題は食料が平等に分配されていないことだ。

 世界の食料、特に穀物の多くは購買力のある先進国や途上国の富裕層によって輸入されている。その中でも大きな影響を与えているのが畜産消費だ。1950年に4,400万tであった食肉生産量は、2003年に2億5,300万tにまで急増した。肉を育てるためには大量の穀物が必要とされる。畜産物1kgの生産に必要な飼料穀物量たるや牛肉で11kg、鶏肉で4kg、豚肉で7kgとされている。世界の穀物生産の約4割が食肉のための飼料として消費されているのが現状だ。

 中国・インドの肉類消費の増加による世界の穀物供給への影響も大きい。1978年にわずか900万tだった中国の豚肉生産量は2006年には5,200万t、世界の豚肉生産量の約半分を占めるまでに成長している。

 原因その2:バイオ燃料への農地や農産物の転換

 バイオ燃料用作物面積の増加も大きな問題だ。先進国では、アメリカを中心に食用からバイオ燃料生産に大規模に転換する動きが目立つ。一方、途上国では、海外の企業が参入し、巨大な面積の森林や農地の買い占めが起こっている。

 アマゾンやインドネシア、そしてアフリカでは、バイオ燃料用の作物栽培のために、もともと居住していた人々が大規模に追い出されるケースも生まれている。インドネシアの西カリマンタン地域では、パーム油のプランテーション拡大により、多くの「バイオ難民」が発生し、国連も警告を発した。FAOはバイオ燃料用に使用された穀物は少なく見積もっても1億tに上るとしている。

 原因其の3:気候温暖化による天候不順の影響 

 気候温暖化により世界中で異常気象の頻発や天候不順が起こっており、農作物への被害が拡大している。世界の穀物需給に影響を及ぼす豪州の小麦が2年連続干ばつで大不作に陥った。現地では依然降雨量が少なく、水不足が続いている。

 日本もうどん等の麺用中心に広く豪州産小麦を使用しているため、ここ数年影響が広がっている。中国ではこの冬、50年ぶりの大雪で日本の農地面積の2.5倍、1,200万haの農地に被害が及んだ。特に植物油用の菜種への被害が甚大で、世界の穀物価格にも影響を与え始めている。

             ◇ ◇ ◇

(この記事は、地域・アソシエーション研究所「News Clip」から転載しました)

アジア各地で「コメ騒動」拡大中 1年で70%の価格高騰

2008/04/11 Iza! 配信元:ビジネスアイ

 この1年間で70%近くという国際的なコメ価格の急騰で、アジア各地に混乱が広がっている。ベトナムやカンボジア、インドは国内価格の上昇や供給不足で不満が高まるのを恐れ、輸出の停止や削減を決定。タイも備蓄米の放出など対応を急いでいる。一方、タイやフィリピンなどでは、消費者のまとめ買いを避けるために小売店が販売量を制限し始めており、香港では住民が“買いだめ”に走って小競り合いになる場面もあった。高値を狙っての投機資金もコメ市場に流入しており「コメ騒動」は一段と深刻化しそうな雲行きだ。(河崎真澄)

 ≪投機資金流入も≫

 AP通信によると、国連食糧農業機関(FAO)がコメの主要輸出銘柄からまとめた「全米価指数」は1998〜2000年を「100」として、昨年3月の130から今年3月に216まで約66%も上昇。コメの最大輸出国、タイの代表銘柄タイ・ホワイト・グレードBの場合は、今月初めに1トン=795ドルと昨年12月の2倍以上になった。

 FAOでは中国、インドやベトナムなどの主要輸出国がコメ輸出を制限していることが価格急騰原因と指摘している。燃料費高騰で肥料や輸送、脱穀用燃料などのコストが上昇、米価に跳ね返ったほか、米国で小麦などに転作が進んでいることも供給減少の背景にある。相場のつり上げを狙った投機資金の流入が価格上昇に拍車を掛けており、米シカゴのコメ先物相場は史上最高値が続いている。

世界を揺るがす食糧危機 関税引き上げ、輸出禁止、価格凍結…

2008年04月07日 BPnet NBonline

穀物や牛乳をはじめとした農産物の価格高騰が止まらない。

各国政府は食糧安保を確保するため、輸出禁止や価格凍結に動き出した。

だが、価格高騰は構造的な問題で、政治的な解決は容易ではない。

 英国政府主席科学顧問のジョン・ベディントン氏は3月、就任2カ月にして新しい雇い主を狼狽させるシナリオをまとめた。「世界は大問題に直面している。気候変動に匹敵する問題なのに、政策立案者がろくに対処していない食糧安全保障の問題だ」──。

 小麦から牛乳まで、あらゆる農産物の価格が前代未聞のペースで高騰する中で、世界各地で社会不安と飢餓の問題が持ち上がった。この問題は富める国も貧しい国も同様に悩ませ、各国政府は価格抑制策を検討せざるを得なくなった。

 生産者は長らく市場の規律だけに従ってきたが、突如、高い輸入関税や輸出禁止、価格凍結といった制約に見舞われるようになった。

 食糧価格の高騰を受けて、バイオ燃料プロジェクトに対する政府援助にも疑念が浮上している。大切な耕地で食糧が生産されなくなるからだ。また、収穫量を増やし、食糧価格を引き下げられる遺伝子組み換え作物に反対している政府には、その立場を見直すよう圧力がかかっている。

食糧高騰は「危機的な水準」

 「これはすべての国に関わる大きな政治問題だ」。農業開発計画への融資を目的に設立された国際連合の組織、国際農業開発基金(IFAD)のレナート・ボーゲ総裁はこう言う。

 ボーゲ氏によれば、解決策に関する共通認識はまだまとまっていないが、食糧価格が危機的水準にあるという現実に直面した今、バイオ燃料支持や遺伝子組み換え作物反対の立場は棚上げすべきだという点で多くの政府の意見が一致しているという。

 世界がもし、1960年代の「緑の革命」──潅漑技術の発展と肥料開発、品種改良によって収穫高が飛躍的に増加し、食糧価格が下がり、何百万という人々を飢餓から救った──の再現を望むのなら、この20年間ほとんど忘れられていた作物栽培学への投資を増やす必要があるという点でも認識は一致している、とボーゲ氏は指摘する。

 専門家曰く、ここで危険なのは、多くの政策立案者がこの食糧危機を短期的な視点でとらえ、長期的には有害となりかねない短期的な解決策を追求していることだ。

 貧困層への食糧供給で資金不足に陥っている世界食糧計画(WFP)などが大々的に警鐘を鳴らしているにもかかわらず、多くの政府、特に選挙が近い国々は、これまでのところ時間稼ぎばかりしている。

 ロシアや中国などの食糧輸入国は、牛乳やパン、卵といった必需品の小売価格を凍結した。フランスやオーストラリアでは、食糧価格の上昇について調査を行い、大手スーパーや食品メーカーに対してコスト上昇分を価格転嫁しないよう圧力をかけている。

 一方、アルゼンチンやカザフスタンなどの食糧輸出国は自国向けの供給量を確保するために、海外売上税や完全禁輸といった措置を取っている。

 懸念されるのは、こうした禁輸などの措置が結局、利益よりも害をもたらすかもしれないことだ。価格を人為的に下げれば、農業の投資採算が悪化し、将来の生産高が減る恐れがある。

 「農場開発に投資する人々は、不透明さを増す政治情勢のために確信を持てなくなっているのかもしれない」と、欧州復興開発銀行(EBRD)の農業担当部長ジル・メテタル氏は言う。

 国連食糧農業機関(FAO)によると、食糧価格は昨年、全世界で40%近く上昇し、今年も上昇が続いている。

 最近の驚異的な価格高騰が構造的なものだということは、今や大半の政府が同意するところ。食糧価格はもう以前の水準には戻らない。バイオ燃料業界に加え、食生活を充実させようとする中国やインドの新興富裕層の台頭で、小麦やトウモロコシ、大豆といった基本的な食糧品に対する旺盛な需要が続くと見られるからだ。

 米ワシントンの国際食糧政策研究所(IFPRI)のヨアヒム・フォン・ブラウン所長は、現在の食糧危機は既に70年代初めの状況より深刻だと語る。当時は石油ショックと世界的な不作を背景に食糧価格が高騰した。「(現在の危機は)74年より深刻で、長く続く」。

 FAOのジャック・ディウフ事務局長は、「行動しなければ世界は社会不安と飢餓に襲われる」と警告し、長期的な解決策が必要だという認識を持つよう各国政府に働きかけている。

高まるバイオ燃料懐疑論

 FAOは年内に、少なくともバイオ燃料と気候変動の影響に関しては各国政府が協調政策を取れるようにしたいと考えており、6月にローマで各国首脳を集めたトップ会合を開く。

 「農業が再び大きな政治課題となっている。我々は食糧安保とバイオ燃料と気候変動をセットにして取り上げたい。この3つは緊密に関係しているからだ」とFAOのアレクサンダー・ミューラー事務次官は言う。

 会合を前に、各国政府の間に新しいコンセンサスが生まれつつあるようだ。例えば、IFADのボーゲ氏曰く、「半年、1年前と比べ、バイオ燃料への懐疑的意見がかなり増えている」。加えて、遺伝子組み換え作物への反対意見は根強いものの、「科学を農業に用いる必要性の認識は高まっている」と言う。

現代の米騒動 料理がすべて「半ライス」 米不足のフィリピン

2008/04/05 Iza!

 【シンガポール=藤本欣也】東南アジアでコメの高騰を背景に買いだめが広がり、一部でコメ不足が深刻化している。コメの輸入国フィリピンでは4月に入り、レストランのライスをすべて「半ライス」にする店も現れた。価格上昇は続くとみられており、“米騒動”を懸念する声も出ている。

 「ライスではなく、プライス(価格)を半分にしてくれ」。東南アジアでコメの価格が年初来30〜40%上昇する中、マニラ首都圏の商店前ではプラカードをもった住民らが抗議活動を行った。フィリピン政府は社会の不満の高まりを前に、ベトナムからのコメ輸入を確保する一方、コメをため込む悪徳業者を最高刑・終身刑の厳罰に処す方針を示すなど対策に躍起となっている。シンガポールでも消費者の買いだめで店頭のコメが不足している。

 昨年後半から始まったコメの価格高騰の背景には、(1)天災による不作(2)国内向けの供給を優先したベトナム、インドなどコメ産出国の輸出規制−などがある。

 域内では燃料、小麦価格も高騰しており、インフレ対策に頭を悩ますインドネシアのユドヨノ大統領は国連に善処を求めた。

オイルマネー持たざるアラブ諸国、食品価格上昇が深刻な問題に

2008年04月05日 asahi.com

 [ベイルート 3日 ロイター] 湾岸アラブの産油国が原油価格の上昇で経済的に潤っている一方、石油資源に乏しい周辺のアラブ国家では、エネルギー価格や食品価格の高騰に国民が苦しんでいる。

 湾岸アラブ諸国では、潤沢な石油収入による景気過熱が物価上昇を招いている側面がある。また、多くが米ドル・ペッグ制を採用しているため、米ドル安に連れて自国通貨が下落し、輸入価格が上昇することで一段とインフレが高進するという構図にもなっている。

 一方、原油高による恩恵をさほど受けていないアラブ諸国の都市部では、インフレ抑制には難しいかじ取りが要求される。エジプトの首都カイロやイエメンの首都サヌアといった都市では、当局は燃料や食料などへの助成金の財政コストと、社会的不満の爆発といった政治的リスクをてんびんにかけなくてはならない。

 シリアの首都ダマスカスでクリーニング店を営むジハド・アル・アミンさんは「もう安いものは何一つない。記憶する限りただ同然だったパセリでさえ、3倍に値上がりした」と話している。

 アラブ地域では、食品価格上昇の打撃を最も受けるのは貧しい国。食糧を輸入に頼る発展途上国など、世界のほかの地域でも食品価格の上昇は問題となるが、中東ではあらゆる不安定要素が地域に大きく波及するリスクがある。

 国連の世界食糧計画(WFP)のスポークスマン、ロビン・ロッジ氏は「中東は極めてセンシティブな地域なので、もっとよく注視しておかなくてはならない」と指摘。エジプトやイラク、シリア、イエメン、パルスチナ自治区で約400万人に食糧を提供するWFPだが、ロッジ氏は「中東では不満や怒りの向かう先が、恐らくほかのどの場所よりも地政学的問題になりやすい。大きな貧富の格差も考慮する必要がある」と述べた。

 アラブ首長国連邦(UAE)やバーレーンでは、物価上昇と米ドルの購買力低下を背景に、出稼ぎ労働者らによる暴動や抗議行動が発生している。サウジアラビアではインフレ率が2月、27年ぶりの高水準となる8.7%に達した。

 <政治的な抑圧>

 インフレの高進が地域の中流層の生活水準に影響し、貧困層が一段と厳しい状況に追い込まれるなか、社会的な不満は一層高まっている可能性がある。ただ、一部の専門家は、それが政治的混乱にまで至るという考えには懐疑的な見方を示す。

 レバノンにあるノートルダム大学の経済学教授、ルイス・ホベイカ氏は「貧困や社会不安、今よりもひどい生活という風に影響が出るが、アラブには独裁体制による政治的抑圧があるので、一線を越えることはないだろう」と指摘した。

 食糧問題はグローバルな課題でもあり、いずれにせよ、すぐに解消されるものではない。ホベイカ氏は「主として燃料価格の上昇や発展途上経済からの需要拡大、ある部分ではバイオ燃料業界からの影響もあり、食糧が急速に減って価格は急騰している」と述べた。

 WFPが調達する穀物や豆類、植物油の価格は、過去9カ月で40%上昇したという。またロッジ氏によると、シリアの食品価格は過去半年で20%上昇。アラブ地域の最貧国の1つイエメンでは、小麦の価格が2月以降で2倍になり、米や植物油も過去2カ月で20%値上がりしている。

 レバノンで飲食料品を取り扱う会社を経営するピエール・ゾグビー氏の話では、乳製品など輸入食品の値段は、昨年の後半以降で145%上昇した。レバノン・ポンドも米ドル・ペッグ制を採用しており、ゾグビー氏は「為替の変動がわれわれに大いに影響する」と述べた。

 <各国政府の対応>

 アラブ諸国の政府の対応はまちまちだ。一部の湾岸産油国では、食品・住宅価格上昇の影響を緩和させるため、インフレ加速のリスクを冒しつつも国民の賃金を引き上げている。

 サウジアラビアは1月に公務員の給料5%引き上げを実施。ただ周辺の他国がすでに、それを上回る比率で賃上げを行っていたこともあり、国民の間には落胆の色も見える。サウジ当局はまた、冷凍鶏肉や乳製品、植物油といった食品の輸入税率引き下げの方針も発表した。

 エジプトやシリア、イエメンといった石油資源の豊かでない国は、国民に対するさまざまな助成金を維持することで財政が圧迫されている。

 ヨルダンでは2月に燃料助成金を廃止したが、ディーゼルや灯油の価格が一晩で76%も上昇した。ヨルダン政府は、公共セクターの賃金引上げと社会的なセーフティネットにより、助成金廃止の影響を和らげると約束している。

 また、1400万人以上が1日1ドル以下で生活するエジプトでは、主に食品の価格上昇を背景に、2月のインフレ率が12.1%と11カ月ぶりの高水準に達した。エジプト政府は、国内のコメの価格を抑えることを目的に、2008年4─10月のコメの輸出禁止を決定した。

 WFPの主張はこうだ。湾岸アラブ諸国は、地域の貧困対策に取り組む国際機関への拠出増額を検討すべき時に来ている。ロッジ氏は「石油の富には責任が伴うべきであり、彼らにさらに富をもたらす石油の価格が、ますます貧しい食事環境に人を追い込む一因になっているならなおさらだ」と述べた。 (ロイター日本語ニュース 原文:Alistair Lyon、翻訳:宮井 伸明)

北朝鮮、韓国に食糧支援求めず

2008/04/05 FujiSankei Business i.

 韓国紙ハンギョレ新聞は4日、北朝鮮が今春、韓国に食糧と肥料の支援を要請しない方針を決め、中国に例年以上の大規模な食糧支援を求めたと伝えた。消息筋の話としている。北朝鮮では食糧危機の深刻化が伝えられているが、一方で核問題解決を南北交流拡大の前提とする韓国の李明博政権に対して反発を強めており、南北関係が冷却化する中、対話の「糸口」を韓国側に与えない強硬姿勢の一環とみられる。

 同紙によると、中国は要請に返答していない。韓国は食糧を2000年以降、毎年40万〜50万トン、肥料は1999年以降、毎年提供してきた。中国も正確な量は分かっていないが毎年支援している。(ソウル 共同)

国連世界食糧計画(WFP)を通じたガンビアにおけるセネガル難民支援

平成19年04月03日 外務省

1. 3月29日、日本政府は、WFPの支援要請に応え、WFPのガンビアにおけるセネガル難民(カザマンス避難民)及び難民のホストファミリー支援のための緊急食糧支援事業に対し、WFPに対する拠出金から10万米(約1,110万円)ドルの拠出を決定した。

2. 昨年8月からセネガル軍によるカザマンス地方の反政府武装組織の掃討活動が行われ、多数の国内避難民が発生しており、うち7,500人がガンビアの一般家庭で生活している。受入地域の農業生産性は低く、食糧安全保障に問題があり、受入地域及び家庭の負担が大きくなっている。今回の支援は食糧をWFPの支援に依存している難民及び受入ホストファミリーに対する食糧支援として活用される。

香港で米騒動? 温家宝首相「中国は自給できる」

2008/04/01 中国情報局

 一部メディアが香港で米を買い求める客がスーパーマーケットに押しかけているなどと報じたことに絡み、中国の温家宝首相は3月31日、「中国は米を十分供給できる」と述べた。4月1日付で英字紙チャイナデーリーが伝えた。

 米は一大産地であるベトナムやインドなどが輸出制限を発表したことや天候不順などによって国際的に価格が高騰。南方都市報によると、香港では米を買い求める客がスーパーマーケットに殺到し、タイ産の米が売り切れるところも出始めたという。  

 こうした動きを受けて温首相は「米の国際価格は30%程度上昇しているが、中国は消費量の大半を自給でまかなっている」と説明した。また「米の国際価格の高騰は中国に原因があるわけでない」と主張した。(編集担当:菅原大輔)

毎日新聞企業人大学:柴田明夫・丸紅経済研究所長、「食糧争奪戦」と題し講演 /千葉

2008年03月19日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 ◇背景に中国発展など

 毎日新聞企業人大学3月講座が18日、千葉市美浜区ひび野の「アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張」で行われ、柴田明夫・丸紅経済研究所所長が「激化する食糧争奪戦 どうなる日本の食」と題し、講演した。【神足俊輔】

 ◇講演要旨

 穀物の価格にも構造的な変化が訪れ、食糧も石油などと同様、「資源化」しているといえる。

 背景には、中国の経済発展やバイオエタノール生産量の急増、発展途上国での人口増加などがある。需要見通しは増加する一方、供給は地球温暖化による気候変動リスクの高まりなどを受けて伸び悩み、食糧需給は一段とひっ迫傾向が強まるだろう。

 食糧自給率が低い日本は水資源や耕地を輸入しているのと同じ。食糧安全保障を改めて、考え直さなければならない。農業は、現在問題となっている地方格差問題や、活性化などの観点からも、重要になってくるだろう。

米国のエタノール生産用トウモロコシ増産、メキシコ湾の海洋生物に悪影響 研究報告

2008年03月11日 AFP BB News 発信地:バンクーバー/カナダ

【3月11日 AFP】米国がトウモロコシを原料としたエタノール生産を計画通り増やすと、メキシコ湾(Gulf of Mexico)の海洋生物に環境的「災害」をもたらす。このような研究結果が10日、Early Edition of the Proceedings of the National Journal of Sciences(電子版)に発表された。

 カナダのブリティッシュコロンビア大学(University of British Columbia)の地理学者Simon Donner氏は、トウモロコシの増産はメキシコ湾の「死のゾーン」と呼ばれる低酸素地帯の状態を悪化させると指摘する。

「大半の生物は十分な酸素がなければ生きられない。海底に住む移動できない生物は恐らく死んでしまうだろう。魚は可能であれば移動するだろう」と同氏は語る。

 Donner氏と米ウィスコンシン大学(University of Wisconsin)のChris Kucharik氏はコンピューターモデルを使い、2022年を目標年とする米国のバイオ燃料生産目標を達成するために十分なトウモロコシを生産した場合、メキシコ湾に流れ込むミシシッピ川(Mississippi River)とアチャファラヤ川(Atchafalaya River)の窒素汚染が10-34%悪化するとの結果を得た。一方、米国によるメキシコ湾の「死のゾーン」を縮小する目標は95%の確率で失敗するとしている。

「死のゾーン」が初めて観測されたのは約30年前。現在では、毎年夏には米国、メキシコ、キューバに囲まれたメキシコ湾の2万平方キロの範囲を覆うまでに至っている。

「死のゾーン」はイリノイ(Illinois)州、アイオワ(Iowa)州、ネブラスカ(Nebraska)州、ウィスコンシン(Wisconsin)州などのトウモロコシ畑で使われる窒素肥料によって間接的に引き起こされている。過剰な窒素はミシシッピ川に流れ込んで硝酸塩となり、藻の生育を促す。最終的に死んで海底に沈んで腐った藻は水中の酸素を吸収し、ほかの生物を死に至らしめる。

 Donner氏によると、米国本土では世界で消費されるトウモロコシの約半分を生産している。その一部は人間向けだが、大半は家畜の飼料またはエタノール生産用だ。

 研究は、硝酸塩汚染を制御すると同時にエタノール生産目標を達成する唯一の方法は、米国の農家が食肉用の家畜にトウモロコシを与えるのをやめ、農業管理技術を大幅に変更することだと指摘している。

「死のゾーン」の酸素濃度はすでに2ppm(100万分の2)以下まで下がっており、この地域でのすべての商用、スポーツ用の釣りは廃止されているという。

 Donner氏は、漁業はトウモロコシ生産ほどの経済的価値はないとし、「問題点についてもある意味では同様に考えることができる。米国の片側で発生した汚染が逆側に被害を与えるのだから」と指摘する。(c)AFP

穀物価格の上昇は歴史的な物価上昇の序章なのか

2008年01月号 Financial Japan

柴田明夫(丸紅経済研究所所長)インタビュー

顕在化し始めた3つの戦い

食糧の争奪戦が始まった

 ――食糧市場で穀物価格が上昇しています

 穀物の値上がりというのは実は一過性ではなくて、振り返ると、1970年代の食糧危機騒ぎのときに一度、60年代の安い価格から2倍ぐらいに値上がりしました。その後、トウモロコシなら1〜2ドル程度、小麦であれば3ドルぐらいの相場が、この30年間続いていました。

 今回の価格上昇は、いよいよこれが変わるのだと思います。大豆は73年に12ドル60セントという史上最高値を付け、食糧危機の騒ぎが起きましたが、この30年間で一度もこの価格よりも高い値が付いたことがありません。しかし、この30年間で先進国の物価は3倍以上になっています。それと比較すると、こうした食糧資源の価格は安すぎたのです。

 ところが、中国やインドといった国々の人口が増え、今世紀に入り、工業化による経済発展で所得が伸び、人々の生活が豊かになっています。中国の13億人が、先進国並みの生活レベルに猛烈な勢いで追いつこうとしています。港湾設備や高速道路が造られ、発電所が建設されています。こうしたことから、エネルギー資源や食糧資源の需要が一気に伸びた。つまり、私たちは今、30年間続いてきた価格を逸脱する動きに直面しているのです。大きな変化の入り口に立っているような状況です。

――例えば、今回の小麦の値上がりは天候不順による不作が原因と言われています

 昨年10月頃から小麦の値段が上がりました。確かに引き金はオーストラリアで起きた100年に一度の干ばつです。しかし、本当は米国やヨーロッパ、ウクライナやカザフスタンのような黒海沿岸、つまり北半球では、オーストラリアより前に、干ばつで大減産していたのです。だからオーストラリアの小麦に期待がかかっていた。ところがオーストラリアで、それ以上の干ばつが起きてしまったので、世界的な需給の逼迫感が一気に強まったのです。

 以前のように、年間消費量の3割ぐらいの在庫を持っていれば、この程度の干ばつはたいして影響しなかったと思います。 21世紀に入って、確かに小麦の消費は伸びていました。しかし、同様に生産も伸びていたのです。ところが、消費の伸びに生産が追いつかず、結局じわじわと在庫が取り崩されて、期末在庫率が減っていきました。それがずっと続き、去年はもう過去最低レベルまできていて、そこで干ばつが起きて、供給障害が生じたため、一気に価格が高騰してしまったのです。

――食糧市場の逼迫は、今後どのような問題を引き起こすのでしょうか

 穀物価格上昇の背景には、旺盛な需要があります。その需要の背後には中国という新興国が存在しています。

 70年代の頃は、価格上昇に供給量を増やすことで対応していました。生産は作付面積×単位収量(単収)ですから、作付面積も増やせたし、単収も増やすことができました。そして、70年代は市場規模が大きくなっていましたから、結果的に元の値段には戻らず、価格水準が変わりました。

 今回はどうかというと、土地の状況が厳しく、作付面積の拡大は期待できないので、単収で増やすしかありません。しかし、水の制約などもあり、単収が上がる保証がないのです。

 中国やインドといった新興国の工業化が進んでおり、工業化が進めば進むほど、農業用水や農地は、工業用水や工業用地、住宅地に使われてしまい、ますます農業には不利な状況になっています。

 また、今回は代替燃料としてエタノール需要があります。その原料であるトウモロコシは、世界の生産の4割以上を米国が占めている上に、貿易用の7割近くを米国に依存しています。米国で国内向けのエタノール需要が増えて、その生産にトウモロコシの大半が使われるようになると、これまでは生産量の約25%、4分の1ぐらいが輸出にまわされていましたが、それが10%ぐらいになる可能性がでてきました。

 そのときに米国に代わる輸出国はアルゼンチンぐらいしかない。中国も輸出していましたが、急速に国内需要が増えていて、場合によっては輸入国に転じるかもしれない。そうなると、トウモロコシを国家間で奪い合うことになるかもしれない。つまり食糧をめぐる国家間の収奪戦争が起きるということです。

 また、それに続いてエネルギー市場と食糧市場間での奪い合いが始まるでしょう。トウモロコシだけではなくてサトウキビもそうです。米国ではバイオエタノールの急増でトウモロコシの値段が上がったら、今度はバイオディーゼルということで、大豆油から軽油に代替するエネルギーの開発が始まりました。今後は、ますますそういう傾向が強まるでしょう。

 そしてもう1つは、食糧をつくるための資源である水と土地をめぐって、農業分野と工業分野の争奪戦が始まる。そうすると、これがさらに値上り要因となります。食糧をめぐる3つの戦いが顕在化し始めたのです・・・


(変わるアフリカ)「笑顔」増やす闘い 脱貧困へ食糧増産

2007年12月17日 asahi.com

 温かい料理を受け取った子どもたちから笑顔がこぼれた。ケニア西部サウリ村。貧困やエイズに苦しんできた村は食糧増産に成功し、学校給食を軌道に乗せた。変化を後押しするのが、先進国の援助資金を集中させ、成果を引き出す「ミレニアム村」プロジェクトだ。国連主導の「実験」はアフリカ各地に広がる。だが貧困問題への日本や世界の関心はまだ低い。

 サウリ村のニャムニニア小学校。午前の授業が終わるやいなや、子どもたちが歓声を上げながら教室を飛び出し、給食室の前に列を作った。

 それまで多くの子どもは昼に帰宅していた。だが2年前、給食が毎日配られるようになってからは、670人の児童全員が午後も勉強を続けている。「子どもたちの栄養不足が治り、成績も上がった。村人も喜んでいる」とミリセント・アキンオキン校長は話す。

 人口5000人のサウリ村は、04年に始まったミレニアム村プロジェクトの最初のモデル村だ。

 「耕地があり、雨も降るのに農業が弱い。まず食糧増産に的を絞り、それを突破口に生計向上を図ってきた」。約70人の現地事務所を率いるムトゥオ代表はこう語る。

 「食卓に食べ物を、ポケットにはお金を」。こんなスローガンを掲げて、化学肥料と高収量のトウモロコシの種が無料配布され、普及員が指導に回った。それまで農民は肥料を使えず、種も、収量の少ない伝統品種しか入手できなかった。

 食糧増産の成果は目覚ましかった。1ヘクタール当たり収量は04年の約1.9トンから05年4.9トン、06年6.2トンと2年間で3倍以上に。栽培面積も倍増した。村人は穀物組合を設立し、仲介業者を通さずに売買、利益を手にした。収量の10%を寄付することで給食が実現した。

 支援は他の分野にも広がる。診療所の開設や蚊帳の配布などによって、マラリア感染率や乳幼児死亡率は大幅に減った。

 国連MDGセンターのマティアス・ヨハンソンさんは「村のニーズを吸い上げながら、井戸の改修や道路の補修なども進め、生活全般を底上げしていきたい」と語った。(論説委員・脇阪紀行)

 ◇援助強化、足踏み

 暗黒大陸と呼ばれたアフリカに、最近、経済成長や紛争の減少など明るい変化が生まれている。

 だが一方で、大きな影を落とすのが貧困だ。サハラ砂漠以南では、2割近い乳幼児が5歳までに命を落とす。ミレニアム村プロジェクトを提唱する米コロンビア大のサックス教授が「時は命なり」と訴え、モデル村で「特効薬」を示そうとする理由もここにある。

 ただ壁も見えてきた。プロジェクトは原則5年で終わるため、この間に住民の能力をいかに高め、開発を持続させるかが最大の課題だ。

 これは、貧困削減を目指す取り組みすべてに共通する。援助と自助努力が両輪となってこそ、目標の達成は可能となる。

 だが現実は厳しい。主要先進国の首脳は05年の英グレンイーグルズ・サミットで、アフリカの貧困撲滅に向けた援助増強を約束。だが援助はさほど増えていない。「MDGsの達成期限は8年後に迫っているのに、先進国側に緊急性の認識がなく十分な援助を提供していない」。サックス教授は、いらだちを隠さない。

 ◇明確な戦略欠ける日本

 日本は支援強化に向けた国際社会の旗振り役を期待される。来年、5年に1度の国際会議「第4回アフリカ開発会議」(TICADIV)や、アフリカが主要議題の一つとなるG8サミットを主催するからだ。日本は村落開発や感染症対策、教育支援に加え、援助と民間投資で経済発展を実現した「アジアの成功体験」を意識し、アフリカでも経済成長と貧困解消を目指す。

 問題は、これらの支援をどんな規模で、どれだけ速く実施するかだ。国連安保理常任理事国入りを目指していた05年、小泉首相(当時)は「アフリカの安定なくして21世紀の世界の安定と繁栄はない」として3年間で援助倍増を約束。さらに先進国間の国際公約「ODAの国民総所得比0.7%」の達成に努力すると踏み込んだ。だが、常任理事国入り失敗や財政難でODA予算はピーク時の6割の水準まで落ち込んだ。

 これに対し、英、仏、独などが15年までの0.7%達成を目指してODAを増額する一方、資源獲得を狙う中国がアフリカ支援に力を入れる。

 明確な戦略を欠いた日本に対する落胆や不満が募る中、アフリカ援助の再構築を求める声が強まっている。(望月洋嗣)

 ●毎月報告します

 アフリカと聞いて何を連想しますか? 広大な自然、極端な貧困、医療の遅れ、民族紛争、難民流出……。その姿が国際社会の援助や自立への努力で変わりつつあります。

 例えば、貧困を脱した地域がある半面、貧富の差の拡大や環境破壊などが起きています。地下資源をめぐり、中国などを巻き込んだ新たな外交戦も生まれています。

 日本の役割も問われています。来年にはアフリカ開発会議が横浜で、7月にはG8サミットが北海道・洞爺湖で開かれます。いずれも「環境と開発」が大テーマ。日本の「外交力」の正念場です。私たちは来年夏に向けて毎月、現場と国際社会の視点を重ね合わせ、地球が抱える問題の縮図であるアフリカを報告します。(外交・国際エディター 市川速水)

 ◆キーワード

 <ミレニアム開発目標(MDGs)> 00年の国連ミレニアム・サミットで採択された貧困と開発に関する目標。(1)極度の貧困と飢餓の撲滅(2)普遍的初等教育の達成(3)ジェンダーの平等推進(4)乳幼児死亡率の削減(5)妊産婦の健康の改善(6)HIV、マラリアなど疾病の蔓延(まんえん)防止(7)持続可能な環境の確保(8)開発のための地球規模協力の推進、の8分野で15年までに達成すべき目標を掲げている。

 <「ミレニアム村」プロジェクト> 「十分な援助があれば、貧困からの脱出は可能」の主張を実証しようと、アフリカ10カ国の79村(計40万人)で実施。1人あたり年110ドル(約1万3000円)を農業や教育、医療、水、道路などの分野に集中投資する。国連事務総長特別顧問のサックス米コロンビア大教授の提唱で始まった。資金は政府や財団・企業などが負担。日本は06年、国連の「人間の安全保障基金」から約10億円を拠出した。

■ミレニアム開発目標とアフリカ

○極度の貧困(1日1ドル以下で暮らす人の割合)

サハラ以南アフリカ 41.1%

途上国       19.2%

<サハラ以南アフリカの2015年の目標値 23.4%>

○初等教育就学率

サハラ以南アフリカ  72%

途上国        85%

日本        100%

<目標100%>

○5才未満の乳幼児死亡率(1000人あたりの人数)

サハラ以南アフリカ 172人

途上国        83人

日本          4人

<目標60人>

○HIVの感染者数 3320万人

サハラ以南アフリカ 2250 アジア        490

東欧・中央アジア   160 ラテンアメリカ    160

その他        260

<サウリ村の問題と変化>

【問題】・約7割が1日1ドル以下の暮らし・学校給食実施は小学生の20%以下・住民の5割超がマラリアに感染

【変化】・トウモロコシの生産量3倍に・学校給食の完全実施で成績も向上・蚊帳配布でマラリア感染率8割減

丸紅経済研究所柴田明夫所長講演要旨

2007年11月27-28日「アグリビジネス創出フェア 2007」/農林水産省

こわいのは物価高と食料危機

2007/10/10 JanJan News

 10月8日(月曜日)の読売朝刊は、一面トップに「年収160万未満の低所得層に基礎年金加算…政府・与党検討」とありました。年収160万未満の場合、月6.6万円を8.3万円の支給にするというのです。これだけみれば聞こえは良さそうです。

ところが、内容をよくよく読んでみれば、またか、とがっかりするのです。

(財源新たに9000億円必要)

 どこからそれを持ってくるんだ!

 悲鳴にも近い雄叫びを挙げたくなる人々がどれ程大勢いることでしょうか?

 そんなことを考えてくれるお方は政治を司るお方のなかにはいらっしゃらないのでしょうか?

(きれいごとばかりを、さもありなんと言うのはもうやめにしませんか?)

 現実を直視することが現段階では一番必用なことだと思うからです。

 誰が何の為に頑張るのでしょうか。

注意1

 国会で討論されている、議員や霞ヶ関の皆様はご存知ですか。研究にさほどの時間もかけずに始めてしまったバイオエタノールのおかげで、いよいよ世界は食料危機に向かって進み始めてしまったことを。

注意2

 国会で討論されている、議員や霞ヶ関の皆様はご存知ですか。そのために上がっているのは石油の値段だけではないことを。すでに一部の商品は値上げを始めています。今後、いもずる式に連動し関係ないものまで便乗で上がるでしょう

注意3

 国会で討論されている皆様はご存知ですか。たかが1、2万円、支給額が上がったところで、これからどんどんつり上がっていくだろう物価には到底追いつかないだろうということを。

 そこで、一人の国民からの提案です。

提案1

 解散総選挙も「領収書が一円から」も、私のように[そんなの関係ねえ]と思っている人は少なくないかもしれません。それよりも大切なのは、これから益々ひどくなると予想される食料難に備えての日本の国の対応だと思うのです。

 私は、自分の国の食は、自分の国の産業で補う準備の必然性を訴えます。農業・漁業の復権が必要だと思います。

提案2

 公務員の皮を被った「泥棒」を起訴するだのしないだの、私のように[そんなの関係ねえ]と思っている人は少なくないかもしれません。今後の再発防止策の方が重要です。社会保険庁を民営化し、責任がアイマイになるのはよくないと思います。そして年金制度は、何の問題もなく仕事が出来ていた時代の仕組みに戻すべきでしょう。手帳は一冊。管理する人間も一括。複数処理をしない。

 上記で、私が考える3つの注意と2つの提案を示してみました。知らない間に直面している本当の危機は、物価高だと思います。おととしあたりから、バイオエタノールが「石油に代わるエコエネルギー」として話題を集めるようになっていました。日本でも、ビールメーカーなどが開発に取り組んでいるとテレビで紹介されていました。

 しかし当初から「食料不足を招くのでは」という懸念がありました。最近、そのことが顕著となってきたようです。世界の人々のなかでも、最も弱い立場に置かれた人々が真っ先にそのあおりを受けてしまっているようです。それなのに、誰もそれを止めることができないのでしょうか。

 次に今後、原油高とは関係のない便乗値上げに対して、国の監視体制を強化して欲しいと思います。かつてのオイルショックでは便乗値上げが相次ぎました。それをさせないで欲しいのです。

 最後に、課税のシステムを元に戻してください。 消費税などの増税より、払い過ぎた年金を国民に返す事の方が大事だと思います。年金額を上げたり、扶養家族や控除をなしにしたり、目先においしい言葉をぶら下げておいて、実は私たちの生活を脅かす行為を捨て去ってください。そろそろ、国民もごまかしには騙されない姿勢を構え始めていることに気がついてください。(リュウイーファン)

大豆の本作化に全力をあげよう! ―食糧争奪戦の激化のなかで―

2007.10.10 農業協同組合新聞

コラム 今村奈良臣の「地域農業活性化塾」

 食糧をめぐる激烈な争奪戦が地球規模でいま始まりつつある。

 第1は、経済成長著しい中国さらにインドなど人口大国が世界から食糧を買い集めている。高度経済成長に伴う生活水準の上昇と工業製品の輸出による外貨の蓄積を背景に多様な食糧を多様な国々から買い集め、その余波は、いろいろなかたちで、日本に及んで来るであろう。日本は当面の食料自給率の達成目標を政策的に45%と設定してきたが、昨年には遂にそれまで維持してきた40%を割り込んで39%に下落してしまった。

 第2は、石油価格の高騰、さらに地球温暖化対策の一環としてのCO2削減という課題に対応して、バイオエタノール原料と人間の食糧との間の争奪戦が激烈に進行しつつある。バイオエタノール原料の最右翼はトウモロコシである。トウモロコシは多様な食料の原料(例えば食用油)となるだけでなく、家畜の配合飼料としても最も重要なものであるが、アメリカではいまや大量にバイオエタノール生産に振り向けられつつある。

 ところで、アメリカの穀倉地帯の中西部では、トウモロコシの連作は不可能で、基本的には大豆との輪作を原則としている。大豆生産に当たっては、遺伝子組み換え大豆(GM大豆)と非遺伝子組み換え大豆(NON―GM大豆)とがあるが、近年、圧倒的にGM大豆の生産へと傾斜してきた。GM大豆の方が生産性が高くコストも低くなり収益性が高くなることが、その理由とされている。そのため、恐らく来年以降はNON―GM大豆は全く生産されなくなるのではないかという予測もある。また、お隣の中国も大豆主産地の東北地方ではGM大豆への転換に踏み切ったと伝えられている。なお、EU(欧州連合)では遺伝子組み換え作物は容認していない。

◆NON―GM大豆への熱いまなざし

 他方、日本の消費者、とりわけ生協をはじめとする多くの消費者団体や市民団体は、GM大豆に対する反対意見をもち、GM大豆製品への反対運動や不買運動を進めてきた。いうまでもなく、食の安全性に対するGM大豆製品への不信感、危惧感がその根底にある。それは現世代だけでなく、これから生まれてくる子孫へも影響を及ぼすのではないかという強い危機感である。こういう背景もあり、わが国では遺伝子組み換え大豆は容認されていない。

◆大豆ネットワークと6次産業化の推進を

 以上のような背景も踏まえて、私は、大豆を「本作」として取り組むことを提案したい。これまで、大豆は米の生産調整の一環として「転作」として位置づけられてきた。「転作」であるためあまり熱が入らなかったのは事実である。しかし、いまや非遺伝子組み換え大豆は貴重なものとなってきた。大豆の生産を組織化し生産性の向上をはかるだけではなく、大豆製品への加工もおこない、さらにその製品を確実に消費者に届け、販売するまでの一貫した活動がいま求められているように思う。私は、かねてより農業の6次産業化の推進を農業・農村関係者に訴えてきた。6次産業とは1次×2次×3次=6次産業ということである。こうすることにより付加価値を増やし農業所得の向上がもたらされ、農村に雇用の場が増えることになる。そうした生産、加工、流通、販売、消費というネットワークを通して、毎朝の食卓に供される大豆製品である豆腐、納豆、豆乳などを安全かつ美味しい国産大豆で充たしてほしい。こういう先端的な活動は全国各地で始まってきている。私の知見の一端を紹介すれば、次のような事例と活動がある。

◆大豆ネットワークの事例

 新潟のJAささかみは、地域の大豆生産を基盤に、生協、農協、豆腐会社の共同出資によるすぐれた豆腐製造工場を作り、生協を通して組織的に消費者に供給していた(詳しくは本紙2005年10月15日付「JAささかみに学ぶこと」参照)。

 広島のJA三次(みよし)では「JA三次集落法人大豆ネットワーク」を作り、大豆の生産性向上、大豆加工の集中化、製品の流通・販売の組織化に取り組んでいる。JA三次管内には、新たな地域農業の展開と次世代に継承・発展が可能な集落農業法人が実に16法人も設立され、大豆本作化に取り組むため播種機や大豆コンバインなどの専用機の利用を法人間でネットワークを組み、効率的活用、生産費の引下げ、品質向上などに取り組むとともに、実需者と連携し、生産、加工、販売までの一貫管理、運営による経営の安定化に全力をあげている。

 さらに福島では、すでに早く1998年にJA中央会を中心に「ふくしま大豆の会」の活動を立ち上げ、いまでは、JAあいづ、JA会津みどりなどを中核として生産、加工、流通、消費に至るネットワークを作り上げ、一時足踏みだったのが、近年新たな飛躍の方向をめざして活動を推進している。このほか、個別的な事例は多いが、別の機会に改めて詳しく紹介したいと考えている。

◆米の消費拡大と更なる技術開発を

 もちろん大豆だけでなく、米の消費減退の中で需要の伸びが見られている米加工品のさらなる開発に取り組んでほしい。米粉加工品で最近試食した中で、山形のJA庄内たがわの「はえぬき麺」のベトナムフォータイプは逸品であった。ベトナムでは麺は米粉から作るということにヒントを得たのであろう。「はえぬき」の米粉70%と北海道バレイショデンプン30%の配合で麺はシコシコ、ゆで時間は1分半で、いろいろなタイプのつゆはあったがベトナムフォータイプは今年の暑い夏にぴったりであった。

 ところで、JA―IT研究会の黒澤賢治副代表に次のような大変貴重な示唆を私は受けた。(1)米粉の活用を麺やパンなどを含め更に多用途に広げること、(2)老人向けの白玉汁粉や地震や災害時のための非常食・防災食の開発に全力をあげること、非常食・防災食などは、水や火を使わなくても食べられるものを開発することが必要不可欠ではないか、(3)さらに重要なことは、大豆製品なども含めて冷温ではなく常温で貯蔵・流通可能なかたちへの技術開発を全力をあげて進めるべきだ、という教示を受けた。重要な示唆である。

 世界で食糧の激しい争奪戦が見通されるなかで、何をなすべきか、お互いに真剣に考え、英知を傾け頑張ろうではないか。

食糧争奪戦

2007年10月04日 波動展望編集長日記

 日経新聞に「食糧争奪」というコラムが連載され始めた。 株式市況を論じる経済ニュースでも、国際商品市況関連についての話題も多い。 株や為替がぱっとしない中、原油高騰、小麦高騰は投資家の心中をざわつかせるに足りる上げっぷりだ。

 同じ日の日経新聞では、「日清食品が9月中間決算で18%減益、原材料高が負担に」という記事も出ている。先般紹介したように、カップヌードルも値上げしないと原材料高を消化しきれず、業績に響いているわけだ。麺の材料である小麦の高騰は言うに及ばず、工場を稼働させ、流通させるためのエネルギーコストの上昇も激しい。 デフレ、デフレといわれてきたが、とうとう、インフレが始まったということではなかろうか。

 昨年、わが社(経営統合前の北辰商品)において、それまでの東京工業品取引所ザラバ銘柄だけでなく、穀物相場も取り扱い銘柄に増やしたのは、2007年のテーマが穀物相場の価格シフト的な上昇になるかもしれないから、取引のチャンスを拡大しておこうという意図であった。

 今年、2007年はすでに小麦相場の大爆発的上昇が始まっている。

 世界需給が逼迫しているのに、世界生産が伸びず、需給逼迫状態が継続するとの見通しが背景だ。

 トウモロコシは今のところ春の高値からは下げているが、これは目先の米国内需給が大幅増反と豊作によって緩和しているためであるが、世界全体での需給バランスはどうかというと、期末在庫率が実は小麦よりも低いという状況にある。

 昨年の秋もそうだったが、小麦が急騰するとトウモロコシが追いかけ、需給緩和状態にあった大豆も、次ぎの作付け面積がこの相場バランスなら減るだろうという先読みで追従高をした。

 今年は去年よりも1ヶ月早く、しかも爆発的に小麦が急騰した。今期の米国需給が引き締まった大豆が連鎖し、増反豊作のトウモロコシは逆に下げ基調ではあるが、昨年同様、すでに市場の関心は来年春の作付け面積に移っている。

 同じものを連作すると単収が落ちる、畑が傷むから違うものにシフトするケースも多いというが、来年の春は今年の逆で、コーン減反大豆増反というのが市場の見通しになっている。

 ところで、小麦とトウモロコシの相場を比較してみると、大体小麦÷トウモロコシの比率は1.0倍から1.75倍程度のレンジで往来してきていることがわかる。これはなにを意味しているのかというと、比率が高くなれば適正に修正が働くから、比率が往来しているということである。

 今は小麦の方が異常に高い比率になっており、農家の作付け意欲はより小麦へと向かうが、その反動でトウモロコシの作付けは減り、生産も減れば価格バランスはまた元にサヤに収まるのではないかということだ。このことは、大豆、小麦、コーン、どれかが上昇相場を牽引していたにしても、価格バランスから他の商品も相対的に連鎖上昇してバランスをとりにゆくということを意味している。

 中国、インド、ブラジル、ロシア、これらの経済成長が、それまでバランスしていた世界の原材料相場の需給バランスを壊した。 彼らが懐に余裕ができて、それまで我慢していた食事の量を増やしただけで、パンや中華まんや麺類の材料需要は増える。

 彼らが我慢してきたステーキやハンバーグを食べ始めれば、牛肉の需要が拡大し、牛のえさ、飼料穀物需給バランスも崩れる。 そこに、地球温暖化対策でバイオエネルギーとか言われ始め、一定規模のトウモロコシ農家がエタノール工場にトウモロコシを売り始めた。

 トウモロコシは今年、増反豊作だが、いつもの年なら2ドルあたりまで相場が暴落していても不思議ないのに、春から下がっているとはいえ、3ドル以上で高止まりしているのは、こうした需給逼迫感と、需給構造の変化が背景にある。

 いくら世界最大の穀物輸出国である米国の国土が広いからといっても、作付け面積はそんなには急激に増えない。 ということで、異常暴騰の小麦の後を追いかけるトウモロコシ、大豆という流れを意識しておきたいと思うわけだ。

【書評】『食糧争奪』

2007/08/13 中国情報局

書名:『食糧争奪』 /著者:柴田明夫(著)/出版社:日本経済新聞出版社/価格:1890円(税込)

 食料と食糧の違いは何かといえば、食料は肉や魚など俗にいう“おかず”のこと。対する食糧は米や麦など文字通り“生存の糧”となる穀物のことを指す。いつもコンビニ弁当や牛丼のお世話になっていると、ライスなんてあって当然の存在だが、じつは世界中が美味いジャポニカ米を狙っているというのが今回のお話。

 食糧危機の原因は地球温暖化による異常気象や人口増加などがあげられるが、本書は中国をはじめとする新興国の“爆食”や深刻な水不足に乗じた水利権の高騰が食糧危機に拍車をかけていると指摘する。中国は2005年に世界食糧計画(WFP:WorldFood Program)からの食料援助を打ち切り「自らを養う」奇跡を達成したが、輸出国から輸入国に転じた中国は世界の資源を食い尽くすと警鐘する。

 著者の柴田明夫さんは資源問題のスペシャリストで、前作『資源インフレ』では原油や鉱物資源について日本が採るべき戦略を提示されたが、最新刊の本書では人口・食糧生産・工業生産・資源の消費・汚染物質の排出などのデータをもとに新たな提言をされている。要約すると当面の問題は、「飽食を続ける3億人のアメリカ人の胃袋」「食物の美味しさに目覚めた13億人の中国人の胃袋」「穀物から燃料(エタノール)をつくる新たな需要」の三つをどうするか。

 とかくこれらの問題は、アメリカ、中国、インドと人口の多い国が矢面に立たされることが多いが、かれこれ十数年前に日本の米不足でタイやインドから大量の米を輸入したとき、その評判たるや惨憺たるもので、そのとき輸入した米のほとんどを家畜の餌にしたという。今回の争奪戦はあの時の天罰なのか。

 いずれにせよ旺盛な需要に供給が追い着かなくなれば食糧危機が起こるのは世の道理。美味い不味いなんて比較するモノがあってはじめて言えることで、今回の争奪戦は日本にとってかなり深刻な事態になりそうだ。喉もと過ぎればナントヤラが日本人の国民性だが、日本ほど飢餓や飢饉に対して危機感がない国はない。本書を読めば地球の全人口60億人を養うには世界の食糧事情は極めて不安定な状態にあることがわかるはずだ。(文責:前野晴男)

■目次

第1章 マルサスの悪魔がやってくる―逼迫する食糧市場(資源の次は、食糧が危ない;穀物市場は「薄いマーケット」 ほか)

第2章 飽食の時代とそのわな―「爆食」中国の幾何級数的インパクト(アジア食糧事情の多様化と脆弱性;中国が四千六百億個の卵を食べる日 ほか)

第3章 脅かされる大地―荒れ狂う環境と水不足の時代(再生可能な食糧資源が有限に;使える水の力で国力が変わる ほか)

第4章 高まる食卓への不安―食品に混入する「異物」(狂牛病はなぜ発生したのか;遺伝子組み換え作物(GMO)はサイエンス、テクノロジー、そしてインダストリーになった ほか)

第5章 立ち遅れるなニッポン―争奪戦から取り残されないために(自給率40%から45%への施策;「くっつく農業」と「離れる農業」 ほか)

食料自給率が40%割れ 13年ぶり、天候不順で

2007/08/11 中国新聞ニュース

 農水省は十日、二○○六年度の食料自給率が供給熱量(カロリー)ベースで39%となり、十三年ぶりに40%を下回った、と発表した。天候不順で果実などの国内生産量が減ったほか、コメの一人当たりの消費量が減ったことが影響した。

 一九六五年度には70%を超えていた自給率だが、食生活の欧米化に伴い年々低下。コメの大不作で九三年度に37%まで下がったが、九八年度から○五年度までは八年連続で40%で推移した。

 政府は一五年度までに自給率を45%にするという目標を掲げているものの、目に見える効果が出ておらず、戦略の抜本的な見直しが急務となりそうだ。

 今回の結果を受け、若林正俊環境相兼農相は「○八年度予算も視野に入れ、危機感を持って自給率向上につながる取り組みの強化」を緊急指示した。

 日照不足や夏場の異常気象の影響を受けたのは、主に砂糖やイモ類、果実など。糖度が落ちたり生産量が減ったりしたことなどがカロリーベースの自給率を押し下げた。

 コメは一人当たりの消費量が六一キロと、前年度の六一・四キロに比べ○・四キロ減った。作況が不作だったことからせんべいなどに使われる国産の低価格米の供給が減り、輸入米の増加につながった。

 主要先進国の自給率(○三年)はオーストラリア237%、米国128%、ドイツ84%などで、日本の低さが際立っている。

エネルギー/食:バイオ燃料が食糧援助のコストを上げる

2007/08/04 JanJan News

【ワシントンIPS=エリ・クリフトン、7月27日】

 米国とECでバイオ燃料の需要が急増、原料となる食品価格を押し上げたことで、食糧援助に依存する飢餓に苦しむ途上国に深刻な影響が及ぶことが懸念されている。

 米政府は輸入原油価格と中東政治情勢の変動の影響を隔離し、中西部の農業活性化に資するとしてバイオ燃料を歓迎。トウモロコシを原料とするエタノール生産を拡大したことで、トウモロコシ価格が昨年2倍に跳ね上がる影響が出た。ECはバイオ燃料を10%混入するバイオディーゼルを義務化。より効率の良いサトウ、パーム油などの原料を提供する南米、東南アジアへ食品上昇の影響が拡大することが懸念されている。

 世界銀行によると基本食品の価格は2005年に比較して21%上昇。穀物、油などの重要品目は30%上昇。国連世界食糧計画(WFP)のジョゼット・シーラン事務局長は、フィナンシャル・タイムズのインタビューに応え、バイオ燃料の生産拡大による食品価格の上昇は「今までにない次元の問題」と語った。

 アースポリシー研究所のレスター・ブラウン所長はアマゾン、インドネシア、マレーシアなどの森林破壊の影響だけでなく、食糧とエネルギー市場の同化を指摘する。食糧価格はもはや原油価格と分離することができず、経済、政治情勢の変動がそのまま世界中の食糧価格に跳ね返ることになる。そのような意味で、バイオ燃料は危険な代替燃料だと警鐘を鳴らす。

 WFPは資金拠出国からより一層の資金提供がない限り、プロジェクトの削減もやむなしと警告。食糧援助の受け手であると同時に、バイオ燃料の原料供給国でもある途上国においては、食品価格上昇の恩恵を受けるのは一握りの大農場主にしか過ぎず、大多数の人々は食品の値上げだけを経験することになる。

 途上国に経済面、環境面で甚大な影響を及ぼすバイオ燃料の生産拡大について報告する。  翻訳/サマリー=角田美波(Diplomatt)/IPS Japan浅霧勝浩

安全な食糧の争奪戦 中国毒禍が火種

2007/07/07 Iza! 青革の手帖

 キリンが資本関係にあるフィリピンの会社を通じて、豪ナショナルフーズへ出資を検討しているようだ。ついに、安全な食糧の争奪戦が国際マーケットの表舞台にあがった。

 中国の毒物輸出禍は多岐にわたるので今さら詳細に振り返らないが、世界中が中国のことを“世界の工場”と見なしてきただけに、その衝撃もまた大きいものとなった。これは米国など旧西側先進国だけにとどまらない。同じ発展途上国だと思って懇意な姿勢を見せていた貧困国たちも中国産への拒否感を顕にしている。

 今回のキリンがどの程度の出資をするかも見ものだが、どういうモデルを構築するのかにも注目がいく。今、日本国内ではミートホープ社事件をめぐって食への不安感がイッパイだ。もはや国産ですらアヤシイと思っている。中途半端なトレーサビリティーしかない日本では、一度不安に火がつくとそれは際限がない。

 世界人口の60億人が安全な食糧争奪戦を繰り広げたとき、それは新たな安全保障問題ともなりかねない。資本の論理だけで出資、買収したとしても、マジで安全な食糧が確保できなければ即座に死活問題だ。世界は安全な食糧の争奪戦に血眼になるであろう。そういう視点で見れば日本の農協組織なんかはまさしく“金鉱脈”である。発想の転換が必要だ。

エネルギー争奪戦始まる=不可欠な消費管理=伯はエタノールで世界制覇=「資源枯渇はない」

2007年06月20日 Nikkey Shimbun

 【ヴェージャ誌二〇一二号】かつての戦争は食糧争奪戦であったが、現代はエネルギー争奪戦の時代という。石油に代わる緑のエネルギーを求め、世界各国は国運を賭けて奔走しているとエネルギーの権威ダニエル・イエルジン氏がいう。エネルギーに関しては、世界の要人が戦略を決定する前に必ず同氏を訪ねる。同氏は、聖市で開催されたエタノール国際会議に招かれ来伯した。来る三年は、ブラジル・エタノールの時代であると予言。政府の政策が正しければ、ブラジルはエタノールで世界を制覇すると喝破した。

 以下は、同氏とのエネルギーに関する一問一答。

 【新エネルギー資源と国策】来る二十年のエネルギー需要は止まるところを知らない。その結果エネルギー消費で、人類は壁にぶつかる。エネルギー危機を避けるため適切な消費管理が必要になる。現在直面する最大のリスクは、民族主義という名前のエネルギーの政治利用だ。

 この戦略を一九七三年に初めて使ったのはアラブ諸国。世界第二の産油国イランは、大いに政治に利用し、世界経済を不安定にさせ、問題を起こしている。

 【政治利用から威嚇へ】米中間が石油のため距離を置き始めたことが信じられない。ロシアが石油を武器にEUを揺さぶることも信じられない。しかし地政学的には、事実その道を歩んでいる。ロシアと中国が石油で同盟する可能性も、否定できない。

 急務はエネルギー源の管理であり、その未管理はリスクになる。そのためエネルギーの政治利用は早く辞めさせる必要がある。それが今世紀初頭に課せられた重大な宿題だ。

 石油に代わるエネルギー資源を発見することは、議論の余地がない。世界各国はエネルギーの闇市場を排し、新エネルギー発見に投資を惜しまないこと。しかし、代替エネルギーは高価で時間を要することを覚悟する必要がある。

 【途上国の燃料需要】二〇三〇年のエネルギー消費量は、現在の七五%増という予測がある。石油の需要増は五〇%増で寒気がする。中国やインドは、経済発展を持続するために大量のエネルギーを必要としている。貧しい一般庶民の所得増加と中流階級への上昇は、新たな問題となる。一般庶民の可処分所得が増えれば、自動車の所有台数と燃料消費が増える。

 【資源枯渇とその後】エネルギー危機は耳にタコができるほど聞いた。一般庶民にはどこ吹く風だ。しかし、新エネルギーの開発技術も日々進み、将来は夢のエネルギーさえ発見される。それを考慮しないで、やたら憂慮する専門家が多い。

 米国では一九七〇年から、本格的に新資源の研究をしていた。だから、来る三十年以内には研究成果が出るはずだ。

 ブラジルのエタノール生産技術も称賛に値する。ブラジルは一九七〇年、原油のほとんどを輸入した。ブラジルはその後、原油の自給化に成功し、海底油田の試掘でも世界に稀な最先端技術を開発した。

 【原油は枯渇するか】地下にあるものが、消えてなくなることはない。自然に吹き出た時代は終わり、歴史が訂正されるだけ。原油の枯渇は一八八〇年にも言われた。二度の大戦終了後もいわれた。

 原油の最盛期は終わり、なだらかな衰退期に入った。これまでの油井方式は、二〇三〇年が限度と思われる。以後は、油岩採集や海底油田の時代に入る。また油井からの汲み上げも、こぼれ防止率を二五%上げる必要がある。

 【石炭の排気ガス】石炭は国際経済にとって背骨のようなもの。ブラジルでは石炭依存度は低いが、世界の発電量は四〇%を石炭に頼っている。中国の石炭発電は桁違いである。中国には石炭に代わる燃料がないし、石炭の埋蔵量は無尽蔵に近い。一酸化炭素を排出しないクリーン石炭の製造技術を開発する必要がある。

 【エタノールと食糧】ブラジルではエタノール生産量がダントツに多く、食糧への影響が少ないので楽観しているが、米国ではトウモロコシの燃料化が社会問題になった。穀物市場のトウモロコシ相場が五〇%高騰し、その他の穀類や飲料、加工食品が便乗した。これは米国の経済均衡を崩し、国際市場へ波及する。農業生産者はよいが、経済市場に必ず影響が出る。

 【エタノールとバイオ燃料】ブラジルは、世界のバイオ燃料研究所である。エタノールに関しては、三十年の技術的蓄積と超低コストが他の追随を許さない。ブラジルのエタノール産業について、世界の投資家や燃料関係者から問い合わせが殺到、エタノールに関する日々の新しい情報と取引の可能性を尋ねている。ブラジルは、まさにちょうど良い時期のちょうど良い人のようだ。ブラジル政府が三年以内に必要な措置を講じるなら、ブラジルはエタノールで世界を制覇する。

 【植物繊維エタノールとサトウキビ】植物繊維がサトウキビを圧倒するかは、ブラジル政府の国際市場での対処次第である。まずブラジルが成すべきことは、エタノール外交である。次に国際間のクレジット協定。二十年以内にブラジルを中心に中南米諸国が世界のエタノールの七八%を生産する。ブラジル外交が成功するなら、計算通りになる。

シリーズ“食を問う”「食料争奪戦 〜ニッポンの食卓に忍び寄る危機〜 」

2007年06月05日放送 第266回日経スペシャル「ガイアの夜明け」

 マヨネーズ最大手のキユーピーが、6月からマヨネーズを17年ぶりに約10%値上げし、味の素も自社のマヨネーズ商品の価格を引き上げる方針を発表している。これはマヨネーズの原料となる大豆油などの価格が高騰しているためだ。

 また、大豆を原料とする食用油なども引き上げられる方向だ。さらに世界的に100%のオレンジジュースなど果汁飲料の値段も上昇している。

 実はそれら食品の高騰の一因が、「エタノール燃料」の需要増加だという。

 一体、今、世界の食料業界で何が起きているのか? 石油に変わる燃料として注目されるエタノールなどの「バイオ燃料」。

 アメリカでは続々とエタノールの工場ができるなど、世界で本格的に普及し始めている。エタノール燃料の原料となるのが「トウモロコシ」「さとうきび」などこれまで食料として作られ、食べられてきたものだ。

 「バイオ燃料」の原料として「トウモロコシ」や「さとうきび」の需要が高まるにつれ、大豆農家やオレンジ畑農家は「トウモロコシ」が儲かるとみて、続々と転作しようとし始めている。

 それによって、大豆やオレンジの生産が減るとの思惑から、価格が高騰しているのだ。そのため原料となる大豆の高騰で豆腐メーカーも大きな影響を受け始めている。

 日本のある豆腐メーカーは契約している中国の大豆農家からこう告げられた。「大豆の生産をやめてトウモロコシの生産を始めるかもしれない・・・。」バイオ燃料の需要拡大をきっかけに世界各地で激しさを増す食料の争奪戦。それによってニッポンの食卓に忍び寄る危機。

 原料高騰で苦闘し、付加価値の高い新商品の開発に生き残りを賭ける豆腐メーカーや食料の確保に奔走する大手商社などの動きを通して食料争奪戦の今を追う。

 【バイオ燃料の需要拡大で始まる食料争奪戦】

 アメリカ・中西部の穀倉地帯では、アメリカ政府が地球温暖化対策の一環でエタノール生産を奨励したため、エタノール生産工場の建設ラッシュが始まっている。

 そのため、原料となるトウモロコシは高騰。そして農家は、他の農産物の作付けを減らし、売れれば儲かるトウモロコシにシフトし始めている。

 農家たちは常に農作物の市況をチェック、一番儲かる作物を生産しようとしている。中には、今からトウモロコシを大量に備蓄し、価格の上がった瞬間に売り出そうと狙うアメリカの輸出会社もあった。

 その状況に困惑しているのが、食料輸入大国・日本の大手商社だ。

 食品メーカーに大豆を調達している、三井物産の食品大豆調達チームは、アメリカの大豆集業者から「アメリカは空前のコーンラッシュに沸く。

 日本向けの大豆を調達するには、さらに高い価格を提示しないと難しい」との報告を受ける。アメリカ・中西部アイオワ州で、商社マンたちは農家を奔走。日本のために、大豆を作って欲しいと現地の農家に訴える。

 しかし、儲かるトウモロコシを前に、農家たちの反応は…。激変する食料調達の現場で、いま、何が起きているのか。ニッポンの商社マンの悪戦苦闘を追う。

 【苦悩する豆腐メーカー 苦肉の新商品開発】

 日本国内で豆腐に使う大豆の量は、年間約50万トン。このうち、国産はわずか7〜8万トンにすぎない。多くは、アメリカ産とカナダ産で、約40万トンを占める。

 現在、1トン15万円〜25万円の国内大豆相場は、北米産の2〜3倍の価格もする。絶対量の少ない国内産大豆だけでは間に合わず、海外での大豆確保が各メーカーの至上命題だ。

 原料調達が厳しさを増す中、05年の日本の豆腐店は、1万3452軒。2000年比べ、約15.9%減った。原料の調達コストと、大手スーパーに客を奪われ、町の豆腐店は厳しい局面に立たせられている。

 そうした中、青森県に本社を構える、業界シェアトップの太子食品は、中国・吉林省の奥地で新種大豆の育成を始めている。緑大豆と呼ばれる、緑色の大豆は葉緑素を多く含み、ベータカロチンなど緑色野菜に似た成分を持つことが分かった。

 こうした付加価値の高い大豆を独自に調達し、新商品開発に結びつけ高い価格で売る・・・。

 原料高騰で生き残りをかけた、戦略に打って出ようとしていた・・・。

 ところが・・・。

 【原料高騰下の販売合戦。 果たして勝者は…。】

 豆腐業界に吹き荒れる逆風の中、それを跳ね返そうとする猛者もいる。「風に吹かれて豆腐屋ジョニー」で、ヒットを飛ばした男前豆腐店だ。

 型破りなパッケージと、巧みなマーケティングで、1丁300円という「高級豆腐」路線を築き上げたことで知られる。その「男前」が原料となる大豆高騰の中、今後の戦略をどう考えているのか?

 厳しい原料調達を乗り越えた先に勃発する、豆腐をめぐる販売合戦。他の食品メーカ−にも起こりうる事態を、豆腐メーカーを通じてドキュメントしていく。


アマゾンの攻防 〜日・中・米 大豆争奪戦〜

2006年05月19日 NHKスペッシャル

 今、世界で食糧をめぐる“戦争”が進行している。その主役は大豆である。大豆は豆腐、納豆、醤油から食用油、果ては牛や豚など家畜の飼料に至るまで、ありとあらゆる所で日本の食を支えている。しかし大豆の自給率は下がる一方で、今や97%を輸入に依存している。

 一昨年、大豆相場は過去30年の最高値を記録、わずか半年で2倍に急騰した。大豆高騰の最大の要因は13億の人口を抱える中国が経済発展に伴い、爆発的に穀物消費量を増大させ、世界の大豆輸出量の40%を買い占めるまでに変貌したためである。増大する一方の大豆需要に応えるため、穀物メジャーが目をつけたのがブラジル、アマゾンの熱帯域である。ブラジルの大豆輸出量はこの10年で急増、今年ついに米国を凌ぎ、世界一の輸出国となると見られている。

 その一方で急激な大豆の作付けに伴い、伐採による森林の消失が深刻化。一昨年だけで東京都の12倍の面積が消失した。番組では、“地球最後の食糧基地”南米で繰り広げられる大豆争奪戦を追い、食のグローバル化が私たちに何をもたらそうとしているのか、検証する。

人口爆発 資源・食糧の争奪戦激化

2006/02/25 持続可能な社会と金融CSR

 人口の増加が米商務省の推計通りにいくとは思えない。資源・食糧の争奪戦により、人口減少の局面に入るだろう。争奪戦とは経済的なものばかりではない。政治は軍事と表裏一体であり、武力による争奪というオプションも当然ながら行使されるだろう。争奪戦とは世界の国々が国力を総動員して行う戦争であり、国力とは軍事力と経済力である。好むと好まざるに関わらず、世界はその2つの力で動いている。

 ◆世界の人口、65億人突破へ・米商務省推計

 米商務省の推計によると、世界の総人口は米東部時間25日夕(日本時間26日午前)にも65億人を突破する。世界の人口増は今後も続き、20年後の2026年には79億人、40年後の2046年には90億人に達する見通しとなった。増え続ける世界人口を背景に、エネルギー資源や食料などを巡る世界的な争奪戦が一段と激化する可能性もある。

 商務省センサス局が推計値を公表している「世界人口時計」によると、米東部時間24日午後7時(日本時間25日午前9時)の世界の総人口は約64億9980万人。総人口は1日に20万人強のペースで増えており、25日中にも65億人に達する公算が大きい。

 人口増加率は1960年代には年2%台と高かったが、2006年の推計値は1.14%にとどまっている。伸び率は徐々に鈍っているものの、人口の増加基調は今後50年にわたって続くもようだ。

 先進国の少子化傾向にもかかわらず世界人口が増え続けているのは、途上国の人口増が止まらないためだ。米商務省調べでは、1990―2002年で途上国人口は年率1.5%の勢いで増加した。 (日経 2/25)

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