TOPIC No.2-14C-1 サハリン沖油田開発

01. サハリン関連情報
02. サハリンプロジェクトの概要(サハリン1、2)
03. ロシア・サハリン石油・天然ガス開発事業 by FoE Japan
04. サハリン大陸棚における石油・天然ガスの開発と環境(2000年06月01日) 北方海域技術研究会 講演会報告
04. 過去記事のINDEX byJapan Sea Network

サハリン2

2004年09月14日(火) 東奥日報

 日本の三菱商事、三井物産と国際石油資本のロイヤル・ダッチ・シェルが出資、サハリン東北部沿岸で行っている石油と天然ガスの大規模開発事業。 2007年前後の出荷を目指している。 日本企業が事業設備を受注したり、日本の電力会社が天然ガスの購入で基本合意したりしている。 環境保護団体には、オオワシなどの希少な鳥類や鯨への悪影響を懸念する声が強い。

サハリン1

2004年11月02日(火) 東奥日報

 1995年に開始したロシア・サハリン島北東部沖合の大陸棚3鉱区に埋蔵された石油、天然ガス開発の大型プロジェクト。 採掘可能埋蔵量は原油23億バレル、天然ガス4850億立方メートルに上る。 日本は政治的に不安定な中東に対するエネルギー資源の依存度が高いため、距離的にも近い安定的な供給源として政府も支援。 日本からは伊藤忠商事、丸紅が出資するサハリン石油ガス開発が参加している。 日本初の国際パイプラインによる天然ガス供給を計画しているが、パイプラインの仕様が定まらず、建設コストの算定が遅れているほか、漁業補償や用地確保の面もあり実現を疑問視する見方もある。

サハリン2のLNG船、日本に到着 東電など調達先多様化

2009/04/06  NIKKEI NeT

 ロシア・サハリン沖資源開発事業「サハリン2」で産出した液化天然ガス(LNG)を搭載した最初のLNG船が6日、東京電力と東京ガスが共同運営する袖ケ浦基地(千葉県袖ケ浦市)に到着した。フル生産に入る2012年には日本全体で天然ガス輸入量の約8%に相当する年間960万トンを輸入する計画。最大の輸入先であるインドネシアが供給量を絞るなか、新たなエネルギー調達先としてサハリンの位置づけが高まりそうだ。

 今回輸送されたLNGは約6.7万トンで、都市ガスとして使用すれば約20万世帯の年間使用量に相当する。今回の輸送分は東電と東ガスが半分ずつ受け入れる。サハリン2産出のLNGは東ガスをはじめとする都市ガス5社と電力4社の計9社が購入する。

 サハリンからの輸送日数は3―4日と中東(約20日)に比べて大幅に短縮するため、輸送コストの低減が期待できる。また緊急時に短時間でLNGが調達できる利点もある。

露、初のLNG生産開始へ 日本とエネルギー協力推進

2009/02/14  中国新聞ニュ−ス

 【モスクワ13日共同】ロシア初となる液化天然ガス(LNG)の生産が十八日、極東のサハリン島で始まる。三月末には日本向け輸出が開始される見通しで、日ロ間のエネルギー協力が大きく進展する。

 十八日のLNG加工施設の稼働式典には、メドベージェフ・ロシア大統領や麻生太郎首相が出席する予定。

 三井物産と三菱商事が参加する石油・天然ガス開発事業「サハリン2」で採掘されるガスを島南部の不凍港プリゴロドノエまでパイプラインで輸送、年約九百六十万トンのLNGを生産する。約六割が日本向けで、二十年前後の長期契約となっており、日本の天然ガス輸入量の約7%を賄うことになる。

 ガス埋蔵量、生産量ともに世界一のロシアは、従来のパイプラインによる欧州向け輸出に加え、LNGを日本や韓国、米国などに輸出することで、アジア太平洋市場への販路拡大を狙う。日本は中東に集中するエネルギーの調達先の多様化を目指すが、資源を外交上の“武器”に利用するロシアからの安定的な供給確保が最大の課題となる。

 一九九四年に始動したサハリン2は、国際石油資本のロイヤル・ダッチ・シェルが主導してきたが、ロシア政府の圧力を背景に、二〇〇七年に経営権がロシア政府系企業ガスプロムへ譲渡された。

インド、極東権益拡大 ロシア石油最大手と共同開発協定へ 日本のエネ戦略侵食も

2008/02/16 FujiSankei Business i.

 インド国営石油ガス公社(ONGC)とロシア石油最大手、ロスネフチが近く、石油、天然ガス事業で包括的な協力協定を締結する見通しになった。インドがロシアの極東・シベリアの油田・ガス田開発に参加するとともに、第三国の権益獲得でも両国が協力する。日本へのエネルギー供給にも影響を与えそうだ。

 ■サハリン3に参加

 印主要メディアによると、ONGCとロスネフチは(1)石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン3」への共同入札などロシア極東地域での油田・ガス田共同開発(2)インド南部マンガロールにあるガス田の共同開発(3)インド小売市場へのロスネフチの参入−を柱とする協定を結ぶ見通しだ。

 インドを訪問したロシア産業エネルギー省のミハイロフ・エネルギー政策局長は13日、ONGCのサハリン3参加について「提案を精査しており、間もなく決定が下される」と語り、提案を前向きに検討していることを明らかにした。

 サハリン3は(1)キリンスキー(2)ベニンスキー(3)東オドプチンスキー(4)アヤシスキー−の4鉱区で構成。原油の可採埋蔵量は6億トンを上回るとされる。このうち、ベニンスキー鉱区は国営天然ガス独占企業体ガスプロムが開発権を獲得。残り3鉱区を同社とロスネフチが争っている。

 インドは高い経済成長に伴い急増するエネルギー需要をまかなうため、ONGCを通し海外権益の獲得に全力を挙げている。すでに権益の20%を握っている「サハリン1」に17億ドルを投資。さらにロシアの石油・天然ガス部門に総額で250億ドル(約2兆7000億円)を投じる計画で、サハリン3については、外資規制の上限である49%の権益を要求している。

 ノーボスチ通信によるとロシア政府には、極東のエネルギー資源開発でインドの本格的な参加を認める代わりに、新興経済国最大の武器市場、インドと防衛装備面での関係を深める狙いがある。

 ■大手商社も警戒

 インドの防衛装備をめぐっては、126機の多目的戦闘機受注で米ボーイングが優位に立ち、インドは旧ソ連時代からのロシア依存を大きく転換しようとしている。このためプーチン大統領は昨年11月のシン印首相との会談で、エネルギー協力を進める条件として、多目的輸送機の共同開発を提案。インドが受け入れた経緯がある。

 一方、極東地域でのインドの権益が拡大することになれば、サハリン開発にかかわっている日本のエネルギー供給にも影響する可能性がある。

 インドはこれまで、ロシアに対し、極東のエネルギーを「日本や中国に売るより、インドに売った方が有利」などとして権益拡大を求めていた。

 大手商社の幹部は「インドはサハリン1でも権益拡大を考えているはずで、日本勢で構成するサハリン石油ガス開発(SODECO)が保有する30%の権益を買いに来ることは大いにあり得る。日本の極東におけるエネルギー戦略が、インドに侵食される心配がある」と警戒を強めている。

天然ガス「ロシア国内最優先」 サハリン1で第1副首相

2007/07/28 中国新聞ニュ−ス

 【モスクワ28日共同】ロシア政府系独占企業ガスプロム会長を兼任するメドベージェフ第1副首相は27日、日本の政府や商社が出資する極東サハリン沖の石油・天然ガス開発「サハリン1」で生産される天然ガスについて「ロシアの消費者の利益が第一だ」と述べ、国内消費を最優先する方針を示した。

 共同通信など一部外国メディアと会見した。ガスプロムは、サハリン1を主導する米エクソンモービルと中国側の「天然ガスの全量を中国に輸出する」とした覚書を撤回させ、国内消費に回すべきだと表明してきたが、プーチン大統領側近の第1副首相が確認したことで政権の方針が明確になった。

 第1副首相は「多角化のため伝統的な輸出先の欧州だけでなく、アジアへの天然ガス供給についても積極的に検討している」と述べ、サハリン1の天然ガスも一部が輸出に回る可能性があると示唆した。

「サハリン1」からのガス購入に期待・野村ガス協会会長

2007/07/04 NIKKEI NeT

 日本ガス協会の野村明雄会長(大阪ガス会長)は4日の記者会見で、ロシア極東の資源開発事業「サハリン1」で産出する天然ガスの日本向け輸出に「期待を持っている」と述べた。同事業を巡ってはロシア政府系のガスプロムが産出する天然ガスの全量を購入、輸出を管理する意向を表明しており、今後、ロシア側への働きかけに乗り出すとみられる。

 サハリン1を主導する米エクソンモービルはパイプラインを使って天然ガスを中国向けに供給する構想を持つとされてきた。これに対し、ガスプロムは過半数の権益を持つ「サハリン2」の液化天然ガス(LNG)基地を使い、サハリン1のガスをLNGとして輸出することに前向きな姿勢をみせている。LNGの受け入れ施設が整った日本も購入しやすくなるため、野村会長は「LNGで輸出するのがいい」との見方を示した。

サハリン1の天然ガス 「2」に合流 日本への輸出も

2007/06/11 北海道新聞

 【モスクワ10日藤盛一朗】ロシアの政府系ガスプロム社は十日、サハリン州で進むエネルギー開発「サハリン1」の天然ガス輸出先について、中国への全量輸出計画に反対し、同社が主導権を握る「サハリン2」開発に合流させ、液化による日本などへの輸出多角化を図る方針を明らかにした。同社のツィガンコフ対外経済局長がインタファクス通信などに語った。

 同社が、「サハリン1」の天然ガス輸出先の方針を明言したのは初めて。日本が支持する液化天然ガス(LNG)輸出に向けた計画変更の流れが強まりそうだ。

 「1」の中心企業、米エクソンは中国に全量を輸出する仮契約を昨秋、中国の「中国石油天然ガス集団」(CNPC)と結んだ。ツィガンコフ局長は、ロシアの天然ガス輸出はガスプロム社が独占すると定めた法規定を踏まえ、「中国はエクソンからガスを購入できるという誤った印象を抱いている」とし、エクソンとCNPCの仮契約は無効との認識を示した。

 その上で「1」の天然ガス事業について、「2」のLNG事業と合体させるか、ガスプロムが全量を買い上げた上で、国内向けの余剰分を「2」のLNGプラントに供給するかの二案を検討している、と説明した。

 ガスプロムは昨年末、「サハリン2」の経営主導権を三井物産など日欧の企業から取得。資源管理を強化するプーチン政権の意向を受け、開発に参加していない「1」への関与も強めている。「1」の天然ガス輸出をめぐっては、麻生太郎外相が二月、フリステンコ産業エネルギー相にLNGによる日本向け輸出を要請した。

サハリン1も国家統制強化か

2007/02/23 The SAnkei Shimbun WEB-site

 【モスクワ=遠藤良介】ロシアのフリステンコ産業エネルギー相が22日、26日からの訪日を前に記者会見し、日本政府や商社も出資する極東サハリン(樺太)の天然ガス開発事業「サハリン1」について、当初計画のパイプライン敷設でなく、液化天然ガス(LNG)での供給が望ましいとの考えを示した。

 先にロシアが事実上、国有化した「サハリン2」がLNG施設を持っていることからサハリン1とサハリン2の“統合”に向けた発言ともみられ、サハリン1に対してもロシアの国家統制が強まる可能性が出てきた。

 フリステンコ氏はサハリン1について、「広範な供給先を確保するうえで液化天然ガスの生産設備の創設が望ましい」とし、「サハリン2のガス加工施設を拡張することが可能で、サハリン1の事業者がこの方向での決定をすれば技術的に何の問題もない」と述べた。

 サハリン1のガス開発には日本政府が旧石油公団などを通じて1000億円以上を投資、パイプラインによる首都圏への供給を目指した。しかし、費用分担をめぐって計画は遅滞、ガスの大半が中国向けに供給される方向となっていた。

日本企業出資の法人に罰金 サハリン2工事でロシア移民局

2007年02月21日 中国新聞ニュース

 【モスクワ21日共同】インタファクス通信は21日、ロシア極東サハリン州沖の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」の天然ガス液化工場を建設している日本企業出資の現地法人に対し、ロシア連邦移民局の地元当局が外国人労働者らの不法な労働形態を理由に80万ルーブル(約370万円)の罰金を科したと報じた。

 同通信によると、この現地法人は日本の千代田化工建設や東洋エンジニアリングが出資する「CTSD」。同社はこれを不服として争ったが、ユジノサハリンスク市裁判所は19日、連邦移民局側を支持。CTSD側は10日以内に上訴できるという。

 連邦移民局のサハリン州当局によると、CTSD側は外国人の専門家や作業員らを「出張」扱いで工場建設の業務に当たらせていたが、実態は一般の常駐作業員と変わらず、必要な労働許可を得ていなかったという。

サハリン2 地元が露政府批判 配分ホゴ「だまされた」

2007/01/22 FujiSankei Business i.

 【モスクワ=遠藤良介】ロシア・サハリン(樺太)沖の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」の権益の過半数が、露国営天然ガス独占企業体ガスプロムに譲渡されたことに、ロシア国内から批判の声が上がっている。地元サハリン州のイワン・マラホフ知事がこのほど、同事業をめぐる中央政府の政策について「一貫性に欠ける」などと指摘した。露紙ベードモスチへのインタビューで語った。

 サハリン2は、1994年に締結されたPSA(生産物分与協定)に基づいて外資だけで開発が進められていた。PSAは開発資金を外資が負担する代わりに利益を優先的に投資回収に充てる方式。ガスプロムへの権益譲渡の背景にはロシアが過去の国際協定に不公平感を抱いていたことがあった。

 この点について、同知事は「PSAがなければ(州の)予算収入はより多かっただろう。しかし、それが国家に資金のなかった10年前に締結されたことを忘れるべきでなく、誰かを非難してはならない」と発言。PSAに基づく開発でも、雇用確保や経営水準の向上、資源開発技術の導入などで地元に多くの利益があったことを強調した。

 知事はまた、当初契約後の連邦法改正でロシア側に支払われるロイヤルティ(鉱区使用料)のうち州の取り分が60%から5%に減らされ、分与生産物(天然ガス)の50%を州に配分するとした約束もほごにされたことを指摘。こうした逸失利益が少なくとも年間40億ルーブル(約182億円)にのぼるとし、「住民は資産分配に関して政府にだまされた。これはわれわれにとって悲劇だ」と述べた。

 天然資源の国家管理強化や税収の再配分による地方自治体の統制といった露中央政府の方針に、資源を有する地方自治体が一定の不満を抱いていることを示した発言といえる。

 他方、露天然資源監督局がサハリン2への事業停止命令の根拠とした環境破壊をめぐっては、「(露国営ロスネフチが参加する)サハリン1はすべての当局の指示に対してサハリン2よりはるかに迅速に反応する」「ガスプロムにはロシアでの豊富な経験がある」として、ガスプロムの参画を歓迎する気遣いも見せた。

                   ◇

【用語解説】サハリン2

 ロシア・サハリン州沖合の原油・天然ガス開発プロジェクト。石油は1999年に生産開始。液化天然ガス(LNG)は2006年にそれぞれ出荷を開始した。英蘭系メジャー(国際石油資本)のロイヤル・ダッチ・シェルが55%、三井物産が25%、三菱商事が20%出資して設立した「サハリンエナジー」が事業主体。昨年12月、3社の保有するサハリンエナジー株の半数をガスプロムに売却し、ガスプロムに事業の主導権を渡すことで合意した。

サハリン2で週末に再協議 ロシア報道、エネルギー相ら

2006年12月18日 中国新聞ニュース

 【モスクワ18日共同】インタファクス通信によると、ロシア産業エネルギー省は18日、サハリン州沖の石油・天然ガス開発計画「サハリン2」へのロシア政府系独占企業ガスプロムの参画交渉のため、フリステンコ産業エネルギー相が今週末にサハリン2事業主体の株主と再協議する予定を表明した。

 サハリン2を主導する国際石油資本ロイヤル・ダッチ・シェル首脳は今月15日にフリステンコ氏と会談。ともに事業を進める三井物産、三菱商事の社長もモスクワ入りしていたが、ガスプロム参画交渉で結論は出なかった。

 シェルの報道担当は16日、1週間以内に交渉を決着させたいとの考えを明らかにしている。

 シェルなど事業者側は、適正な価格での合意や日本への液化天然ガス(LNG)供給契約の順守など、条件さえ整えば過半数の株式を譲渡する方針。

サハリン3:ロシアが権益譲る?シノペック浮上

2006/12/15(金) 中国情報局

 ロシアと中国の企業が参加している「サハリン3」の天然ガス採掘プロジェクトに絡み、サハリン石油が保有している同プロジェクトの権益25.1%を中国石化集団(シノペック)に譲渡する可能性が浮上している。同プロジェクトにはロシアの国営石油大手「ロスネフチ」も参加している。14日付で第一財経日報が伝えた。

 現在の権益比率はロスネフチが49.8%、サハリン石油が25.1%、シノペックが25.1%。2005年6月から7月にかけてシノペックとロスネフチはサハリン3のベニンスキー鉱区の探査契約を結んだ。しかし実際の探査で天然ガスの埋蔵状態が悪く、多額の投資が必要になることが判明した。

 2006年にシノペックは7000万米ドルを探査に投じた。07年もほぼ同額が必要になると見込まれている。シノペックのライバルとして韓国の石油会社の名前もささやかれている。

 ただしシノペック関係者は「ロシアでは石油資源へのコントロールが強く、株式を譲渡するとは考えられない。ロシア企業の権益が50%を下回ることはないだろう」と話している。(編集担当:菅原大輔)

日本などで提訴の可能性 サハリン2でロシア監督局

2006年12月12日 中国新聞ニュース

 【モスクワ12日共同】インタファクス通信によると、ロシア天然資源監督局のミトボリ副局長は12日、環境破壊が指摘されている極東サハリン州沖の石油・天然ガス開発計画「サハリン2」をめぐり、来年3月までに日本や英国を含む複数の国の裁判所に提訴するとの方針を示した。

 副局長は訴訟相手や提訴の内容については明らかにしなかったが、サハリン2の事業主体の最大株主、国際石油資本(メジャー)ロイヤル・ダッチ・シェルによる環境破壊は「暫定値で100億ドル(約1兆1700億円)相当に上る」と指摘、シェルを訴訟相手にする可能性を示唆した。

 副局長は、日本などのほか国際的商取引の係争を扱うストックホルム商業会議所仲裁裁判所やロシア、ベルギー、米国、イタリアを提訴の場所として挙げた。

天然ガスの対日供給絶望に 経産次官、サハリン1で

2006/10/23 中国新聞ニュース

 経済産業省の北畑隆生事務次官は23日の記者会見で、日本政府が参加するロシア・サハリン州沖の石油・天然ガス開発事業「サハリン1」について、日本への天然ガス供給は絶望的になったとの考えを示した。

 事業主体の米エクソンモービルが、天然ガスをすべて中国に供給する覚書を、中国の国営企業と交わしたため。政府や伊藤忠商事などはサハリン1に対し、既に約18億ドル(2100億円)を投じている。政府資金を投入して開発した天然資源を中国に奪われる形になり、政府への批判も出そうだ。

 北畑次官は「エクソン側がパイプラインによる供給方針を変えない限り、日本が購入するのはもともと困難だった」と指摘。パイプライン敷設に伴う多額のコスト負担などを日本側が嫌ったことが、今回の事態につながったとの見方を示した。

 次官は「仮にガスが日本へ供給されなくなっても、増産余力のある他国から調達する」と説明。「サハリン1からの原油輸入は今月中にも始まる」とも述べ、事業自体は失敗ではないと弁明した。天然ガスが日本に供給されなくても、出資比率(30%)に応じたガス売却益は確保できる見通し。

ロシアに不利益と批判 サハリン2でプーチン氏

2006/10/21 中国新聞ニュース

 【モスクワ21日共同=清水健太郎】ロシアのプーチン大統領は二十日、日本商社などが出資する極東サハリン州沖の石油・天然ガス開発計画「サハリン2」について、現行の契約形態である生産物分与協定(PSA)や、事業主体が打ち出した事業費倍増計画はロシアの利益にならないと厳しく批判した。大統領がサハリン2について自ら考えを表明したのは初めて。

 ロシア政府は環境対策の不備が指摘されているサハリン2の包括的調査が終了する今月下旬に事業継続の可否を決定する予定。ロシアの狙いは外資に有利とされるPSAの見直しを迫り、ロシア側の権益を拡大させることにあり、大統領の発言が決定に影響する可能性がある。

 フィンランドのラハティで開催された欧州連合(EU)非公式首脳会議での記者会見で述べた。

 プーチン大統領は、「(PSAに基づけば)事業主体が出資分を回収するまではロシアは利益を受け取れない」と指摘。さらに事業主体サハリンエナジーの事業費倍増計画に関し「原油はもう何年も採掘されているにもかかわらず、ロシアはいまだに何の利益も得られず、事業費が増加すればさらに十年間も利益を得られなくなる」と述べた。

 また「PSA契約では労働力や設備などの70%をロシアで調達しなければならないとしているが、実際は50%にも達していない」と語り、サハリンエナジーがPSAの条件を履行していないと批判した。

サハリン2を処罰へ 環境違反とロ天然資源相

2006/10/16 中国新聞ニュース

 【モスクワ16日共同】インタファクス通信によると、ロシアのトルトネフ天然資源相は16日、日本の商社も出資する極東サハリン州沖の石油・天然ガス開発計画「サハリン2」について、森林伐採など環境面で取り返しのつかない違反があるとして処罰を科す方針を明らかにした。

 ロシア政府がサハリン2への処罰の方針を示したのは初めて。制裁金の規模など処罰内容やサハリン2の事業継続の可否には言及しなかった。同相は24−26日にサハリン訪問の予定で、この際に環境調査結果やこれに基づく処罰、事業の継続か中止かに関する政府決定が正式発表される可能性がある。

 天然資源相は、事業を中止させるかどうかについては、事業主体のサハリンエナジーが「どれだけ明確な改善計画を提出するかにかかっている」と指摘。その上で「環境問題を解決する改善計画が提出され、それをわれわれが受け入れることができるのなら、事業を中止する合理性はなくなる。だが、計画が提出されないのならどのような手段を取ることもできる」と述べた。

 天然資源省傘下の天然資源監督局などは、今月25日までサハリン2の環境に関する包括調査を実施している。

露、サハリン2の事業費増大認めず、外資利益剥奪へ

2006/10/08 The Sankei Shimbun

 【モスクワ=内藤泰朗】プーチン・ロシア政権の最高経済顧問、ドボルコビッチ大統領専門家評議会議長は、日本の商社が参加する極東の石油天然ガス開発事業「サハリン2」で、外資側がロシアとの合意を破り、開発費を倍増させていると批判したうえで、開発費の増加を一切認めないとの強い姿勢を示した。同議長は政権の経済政策に強い影響力を持っており、同政権は、エネルギー価格の高騰で増大する外資側の利益を、強制的に剥奪(はくだつ)する方針を固めたもようだ。

 ドボルコビッチ氏は、今月4日に開催された投資フォーラムで、サハリン2について「どちらが開発の条件を変えているのかおわかりでしょう」と述べ、当初予定の事業費が200億ドル(約2兆3400億円)に倍増すると発表した英蘭系ロイヤルダッチシェルら外資側が、ロシア側との合意をほごにしていると批判した。

 ロシア側と外資は、利益配分などを定めた生産物分与協定(PSA)に基づき事業を推進しているが、ロシア側は、PSAにより事業費が完全に償却されるまでは外資から徴税できない。このため、事業費の倍増にいらだちを募らせており、事業費増大を認めないとの発言になった。

サハリン資源開発で露外相、外資との協力姿勢強調

2006/09/27 The Sankei Shimbun

 日本の商社が参加する石油・天然ガス開発事業「サハリン2」にロシア政府が事業停止を命じた問題の行方が注目される中、「サハリン石油・天然ガス国際会議」が27日、サハリン州の州都ユジノサハリンスクで開かれた。

 出席したロシアのラブロフ外相は、事業停止命令後に始まったロシア当局による点検作業について「事業許可の取り消しではない」と述べ、「ロシアが同国の資源開発事業から外資を排除しようとしているとの見方には根拠がない」と強調。今後とも外資と協力しながら開発を進めていくとの姿勢を示した。

 ロシア天然資源省は18日、環境対策の不備を理由に「サハリン2」の事業停止を命令。環境対策での違反調査を進めており、東京ガスなどが2008年夏から輸入を予定する液化天然ガス(LNG)の出荷が遅れることが懸念されている。同会議は、28日までの2日間開かれる。

 会議には、ラブロフ外相のほかマラホフ・サハリン州知事、日本からは斎藤泰雄駐ロシア大使らが出席した。(モスクワ 内藤泰朗)

サハリン2事業中止「過剰反応せず反論検討」甘利経産相

2006/09/26 The Sankei Shimbun東京朝刊から

 甘利明経済産業相は26日午後の記者会見で、ロシアが石油・天然ガス開発計画「サハリン2」の一部事業の中止を命じたことについて「(日本側に)過剰反応の面がある。ロシア側が指摘する環境破壊にどう対処するのか精査してから、反論を組み立てるべきだ」と述べ、冷静に対応する姿勢を示した。

 日本と中国が対立している東シナ海のガス田開発に関しては「日中は共同で(開発に)取り組む方向で一致しており、粛々と取り組みたい」と話した。

サハリン2事業中止はサミット公約違反 米が露批判

2006/09/23 中国新聞ニュース

 【ワシントン22日共同】米国務省のケーシー副報道官は二十二日、ロシア政府が石油・天然ガス開発計画「サハリン2」の一部事業の中止を命じたことについて「ロシアが主要国首脳会議(サンクトペテルブルク・サミット)での約束を守る気があるのか疑惑を抱かせる」と、深刻な懸念を表明した。

 サハリン2の事業主体には、英国・オランダの国際石油資本のロイヤル・ダッチ・シェルや三井物産、三菱商事が出資。関係国の間で批判が高まる中、米国が同調したことでロシアに対する国際的な包囲網が築かれた形だ。

 七月のサミットでプーチン大統領は、議長総括で「世界のエネルギー安全保障」を強化する必要性を強調し、行動計画まで打ち出した。副報道官は、議長総括には(1)エネルギー市場の透明性向上(2)契約内容の順守(3)投資促進−などが含まれていると指摘。「ロシアに約束を守るよう要求する」と語った。

露、今度はサハリン1にも見直し要求 日本商社に暗雲

2006/09/22 The Sankei Shimbun東京朝刊から

 【モスクワ=内藤泰朗】ロシア天然資源省高官は21日、ロイター通信に対し、日本の商社などが参加し、米石油最大手エクソンモービル主導で開発が進められている極東サハリン沖の石油・天然ガス開発事業「サハリン1」に対しても見直しを求めていることを明らかにした。日本の商社が参加するロシア最大の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」への事業停止命令に続く措置で、日本の対露事業に暗雲が立ちこめてきた。

 同高官は、サハリン1の事業費が当初予定の128億ドルから170億ドルに増大していることに不満を表明し、「このまま増大するようであれば、ロシアは利益を得ることができない」と述べ、事業費の増大を認めない方針を示した。同高官は、「われわれは(サハリン1に対しても)法的な措置をとる用意がある」と警告した。

 また、ロシアの英字日刊紙モスクワタイムズによると、同省は20日、フランスの大手石油会社トタルが中心となってロシア極北で進める石油開発事業「ハリヤガ」についても、ロシアと外資の間で利益分配法などを定めた「生産物分与協定(PSA)」を見直すようトタル社側に求めた。ロシア政府は、外資主導のハリヤガとサハリン1、2に関するPSAが石油価格低迷期の1990年代に結ばれた「不平等協定だ」として見直す方針を示していた。

 プーチン大統領は22日にフランスを訪問しシラク大統領と会談、ハリヤガのほか、トタル社が同じロシア極北で参画を目指す巨大天然ガス開発事業「シュトックマン」についても協議するとみられている。

 シュトックマンの権益を持つロシア国営天然ガス独占企業体ガスプロムは、ハリヤガとサハリン2への参画を求めている。資源・エネルギーの国家統制を強化するプーチン政権は、これら2つの事業にガスプロムを参画させ、外資主導にくさびを撃ち込む狙いがあるものとみられる。

 しかし、ハリヤガも、サハリン1も、100%外資で開発を進めるサハリン2とは異なり、ロシア資本が入っている。それにもかかわらず、サハリン2と同様に環境保護法違反を指摘されるなど圧力を受けている。このため、プーチン政権側が外資主導の資源開発の排除に向け、強硬姿勢を示し始めたという見方も出ている。

ロシア、英BPにも操業停止圧力 外資排除へ

2006/09/20 The Sankei Shimbun

 ロシア検察当局が、英国際石油資本(メジャー)BPとロシア大手の合弁会社TNK―BPが手掛ける東シベリアのコビクタ・ガス田開発をめぐり、「環境対策が不十分」との理由で、事業許可を停止するよう、地元イルクーツクの資源監督部門に働き掛けていることが分かった。20日付の英紙フィナンシャル・タイムズが報じた。

 同社はBPとロシア側が折半出資。英メディアによると、ロシア側は株式をロシア政府系独占企業ガスプロムに売り渡す交渉に入っており、同事業でのBPの立場を弱める狙いがあるようだ。

 ロシア政府は、日本の商社などが出資するサハリン州沖の石油・天然ガス開発計画「サハリン2」の一部事業の中止を命じたばかりで、資源開発分野で外資排除の動きが強まっている。

 TNK―BPはコビクタで採掘した天然ガスの中国への輸出を目指しているが、ガスプロムの反対で難航している。(共同)

「サハリン2」事業停止 日本のエネルギー戦略見直しへ

2006/09/19 The Sankei Shimbun

 【モスクワ=内藤泰朗】ロシア天然資源省は18日、三井物産、三菱商事が参加するロシア極東サハリン沖の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」に対し、事業化の調査承認を取り消すとの声明を発表した。事実上の事業停止命令として、同計画が今後、大幅な見直しを迫られるのは必至で、日本のエネルギー安全保障戦略は、再考を余儀なくされるとみられる。

 インタファクス通信によると、天然資源省は、ロシア検察当局からの抗議を受け、事業化承認を取り消す決定を下した。同省は2003年7月、環境や採算性などの問題を検討した専門家による事業化調査をもとに、同計画を承認していた。

 また、同国天然資源監督局は今回の決定に先立ち、「自然保護法違反」でパイプラインの建設などサハリン2の業務停止を裁判所に申請していたが、同計画が事実上、停止に追い込まれることになったため、21日に予定されていた審理も中止されるという。

 事業はすでに8割方完成していた。

サハリン1にも干渉 環境調査を開始 露政権

2006/09/13 FujiSankei Business i.

 インタファクス通信によると、ロシア天然資源監督局は12日までに、日本勢も参画するサハリン(樺太)州の石油・天然ガス開発事業「サハリン1」について、環境保全に関する法律違反の可能性があるとし、総合的な調査を開始したことを明らかにした。今月18日に結論を出す予定という。

 同局は先に、三井物産、三菱商事が参画する「サハリン2」計画の環境保護規定違反を理由に、事実上の業務停止命令を裁判所に申し入れており、サハリン1についてもプーチン政権の干渉が始まったもようだ。

 サハリン1と2は石油価格低迷期に合意した生産分与協定(PSA)に基づいて開発が進んでいるが、政権側は「不平等協定」とし、見直す方針を示している。

 同局はサハリン1のどの部分を問題視しているかは公表していない。日本はサハリン1に1970年代から投資し、伊藤忠商事、丸紅、日本石油資源開発が計30%の権益を持つ。米石油最大手エクソンモービルが操業する。

 ワリアモフ天然資源省次官は先に、サハリン1についてPSAの適用を縮小する意向を示唆。エクソンはPSAへの干渉が投資環境を悪化させると反発している。 (モスクワ 時事)

「サハリン2」の特権排除を 露大統領補佐官

2006/09/07 The Sankei Shimbun

 【モスクワ=内藤泰朗】ロシアのシュワロフ大統領補佐官は5日、記者会見し、日本企業も参画する極東サハリン州沖の石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」について、同計画がいまだに享受し続ける特権を排除すべきだとの考えを示した。

 ロシアの日刊紙コメルサントによると、同補佐官は、世界的原油高が続く中、原油価格が低かった時代に外資とロシアが利益配分を決めた生産物分与協定(PSA)は不要になったとして、「サハリン2」がPSAから離脱して「ロシアの法の下」で適切な税金を支払うべきだと述べた。

 同計画をめぐっては、露当局が環境保全違反で提訴し、パイプラインの建設停止命令が出るなどしており、外資への圧力が高まっていた。

西部ガス、サハリン2からLNG購入…2010年度から

2006/06/13 読売新聞 九州発 YOMIURI ON-LINE

 西部ガスは13日、ロシア・サハリン沖の資源開発事業「サハリン2プロジェクト」から、液化天然ガス(LNG)を購入する契約を結んだと発表した。2010年度から18年にわたり、毎年8500トンを購入する。

 同社は都市ガス原料として、LNGをマレーシアから年間39万トン輸入しているほか、九州電力グループの北九州エル・エヌ・ジー(北九州市)から20万トンを購入している。今回の契約量は福岡地区の需要の10日分に過ぎないが、「購入先を多様化することで、より安定的な燃料調達が図れる」としている。

 「サハリン2」は、国際石油資本のロイヤル・ダッチ・シェルと三井物産、三菱商事が出資するサハリン・エナジー・インベストメント社(サハリン州)が進めている天然ガス輸出事業。年間で960万トンの生産能力があるとされ、九州電力や東京電力、東京ガスなどが購入契約を結んでいる。

サハリン天然ガスパイプライン計画 日露20日、共同開発構想

2006/06/11 The Sankei Shimbun

 サハリンから日本へパイプラインで天然ガスを供給する構想を協議してきた、「北日本パイプライン開発機構」(JPDO)とロシア企業が20日に、モスクワで業務提携と共同開発への取り組みを発表することが11日わかった。サハリンの資源開発は事業費の増大などで難航し、政府系企業が主導したパイプライン計画は頓挫しているが、地元・北海道が描くもう一つのルートで活路が開ける可能性が出てきた。

 JPDOによると、20日にモスクワで開幕する「ロシア石油ガス会議」で、同社はロシアの国営資源開発会社ガスプロムの傘下企業とともに、パイプライン計画の概要や協力体制を発表する。平成23年度に北海道名寄市まで、25年度に青森県のむつ小川原工業地域まで天然ガスを供給する計画で、総事業費は約3000億円としている。

露天然資源省「国家統制の強化検討」 サハリン石油・天然ガス計画

2006/05/26 The Sankei Shimbun

 【モスクワ=内藤泰朗】ロシア天然資源省は25日、欧米企業の主導で日本も参画して共同開発が進むサハリンの石油・天然ガスプロジェクトへの国家統制の強化を検討していることを明らかにした。ロシア側が国際的な巨大プロジェクトを「国営化」することには多大な困難が伴うが、豊富なエネルギー資源を背景にした排外的なロシア民族主義が高まる中、欧米側はロシア当局による不気味な圧力に警戒感を強めている。

 ロシアの英字紙モスクワ・タイムズによると、同省のギタズリン報道官は「(ロシアは)富を失っている」と強調、同プロジェクトへの政府の対応を見直すことを検討していると語った。

 ロシア自然科学アカデミーは、欧米投資家の非効率的な運営と計画の遅れでロシアは100億ドル(1兆1200億円)もの損失を被っているとして、ロシア政府が外国投資家との間で利益の分配法などを明確に定めた生産物分与協定(PSA)を見直し、ロシア企業に開発主導権を与えるべきだとする報告書を同省に提言として提出している。

 米エクソンモービル主導のサハリン1には、ロシア国営石油ロスネフチが12%参画し、欧州のロイヤル・ダッチ・シェルによるサハリン2では、ロシア国営ガスプロムが25%参画をもくろみ、交渉中とされる。

 一方、ロシア産業エネルギー省の報道官は「協定の見直しについては聞いていない」と述べ、天然資源省報道官の発言が政府の統一見解でないことは明らかだが、ロシアの資源ナショナリズムがプーチン政権下で高まっていることを背景に、ロシア側が欧米主導の有力プロジェクトへの国家統制を強化する機会を狙っているとの懸念はぬぐい切れない。

 欧米の専門家は「ロシアでは、サハリン・プロジェクトがエネルギーを安く外国に垂れ流しているとの批判が強まっている。ロシアの資源はロシアのためにという資源ナショナリズムは今後さらに高まるだろう」と指摘する。

東シベリア石油パイプライン、前倒しで月内着工

2006/04/20 The Sankei Shimbun

 【モスクワ=内藤泰朗】日本と中国が綱引きする東シベリア石油パイプラインが当初の予定を早め、今月中に着工される。計画第一段階では、東シベリア油田地帯のイルクーツク州タイシェトから中露国境付近のスコボロジノまでのパイプラインを建設する。その際に中国向け支線も敷設され、2008年夏には中国側に最初の石油が流れることになるという。

 イタル・タス通信によると、ロシアのフリステンコ・エネルギー産業相が17日、東シベリア・パイプラインを建設するトランスネフチ社幹部らと会合した際に明らかにした。第一段階の総投資額は2000億ルーブル(約8400億円)となる。

 同社は当初、今夏にパイプライン建設を始めると表明していたが、高騰を続ける石油価格を背景に、東西にまたがる同国の戦略的なパイプライン建設計画を早める決断をしたようだ。

 計画の第二段階では、スコボロジノからハバロフスクを経由し、日本海に面するペレボズナヤ湾までを建設する計画で、完成すれば総延長約4200キロとなる。

東シベリアパイプライン 08年夏には開通 最初の石油は中国へ

2006/04/20 FujiSankei Business i

 【モスクワ=内藤泰朗】日本と中国が綱引きする東シベリア石油パイプライン計画の詳細が十九日までに明らかになった。環境保護団体は反対を表明しているが、当局側は、不安要因だった石油埋蔵量や環境などの問題も解決済みとしており、二〇〇八年夏には、中国側に最初の石油が流れることになるという。

 イタル・タス通信によると、ロシアのフリステンコ・エネルギー産業相が十七日、東シベリア・パイプラインを建設するトランスネフチ幹部らと会合した際に明らかにした。

 計画第一段階の総投資額は、二千億ルーブル(約八千四百億円)になり、ロシアと外国からの投資で行われる。

 トランスネフチは当初、今夏にパイプライン建設を始めると表明していたが、原油高を背景に、東西にまたがる同国の戦略的なパイプライン建設計画を早める決断をしたものとみられる。

 第一段階では、東シベリア油田地帯のイルクーツク州タイシェトから中露国境付近のスコボロジノまでのパイプラインを建設。その際に中国向け支線も敷設する。第二段階では、スコボロジノからハバロフスク経由で、日本海に面するペレボズナヤ湾までを建設する計画で、総延長約四千二百キロのパイプラインが出現することになる。

 また、ロシアのラジオ放送エホ・モスクブイによると、国営石油ロスネフチのボグダンチコフ社長は十八日、プーチン大統領と会談した際、同パイプラインは〇八年八月三十日に開通し、最初の石油二千万トンが輸送されることになると語った。

 しかし、環境保護団体は、環境破壊の危険が大きすぎるとしてルート変更を求め反対を表明。今週末には、ロシア全土で抗議行動を起こす計画を立てている。

中国はプーチン氏に失望か、パイプライン決着せず

2006/03/22 中国情報局

 中国を訪問しているロシアのプーチン大統領は21日、胡錦涛・国家主席とエネルギー分野での協力などを盛り込んだ共同声明に調印した。懸案となっている東シベリア石油パイプラインの接続問題をめぐっては、具体的な着工予定への言及はなく、最終決着は先送りされた。21日付のボイス・オブ・アメリカ(中国語版、VOA)は「問題に進展はなかった」と伝えた。

 プーチン大統領の訪中では、東シベリア石油パイプラインについて、中国側への接続工事の開始時期や投資の方法など具体的な事柄が書面で確認されるかどうかに注目が集まっていた。

 声明では「ロシアは中国に対する原油や天然ガスの輸出を積極的に推進していく」との文言が明記されるにとどまり、VOAでは「プーチン大統領は中国を失望させた」と説明している。一方、中国メディアの新華社や人民日報などは事実を報道するにとどめており、成果を強調する論調は見られない。

日本に油田開発投資を要請 パイプライン事業で露大統領

2006/03/18 The Sankei Shimbun

 ロシアのプーチン大統領は16日、主要国(G8)エネルギー相会合のため訪露した西野陽経済産業副大臣ら各国閣僚と会談し、東シベリア原油を極東に運ぶパイプライン事業推進のため、東シベリア油田開発に日本が投資するよう要請した。西野氏は協力する意向を伝えた。

 大統領は「パイプラインを太平洋岸まで敷設する」とあらためて言明。“お墨付き”が得られたことで、日本の投資検討が本格化しそうだ。

 同事業はイルクーツク州タイシェトから太平洋岸ペレボズナヤまで約4000キロを結ぶ計画。ロシア政府は昨年4月に西側半分の建設を命令。しかし、太平洋岸に至る残り半分の建設には、新たな油田を開発し、供給量を確保することが不可欠だとの立場だ。

 日露両国の専門家は同日、同事業加速化に向けモスクワで会合を開き、日本からの資金協力などを協議した。(共同)

サハリン島:問われるエネルギー開発と自然保護の両立

2006年03月07日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 日本最北端の宗谷岬から北に43キロ。ロシア・サハリン島は天然ガスなどエネルギー資源が豊かで、日本企業も参加する世界最大級の開発事業が大詰めを迎えている。しかし、島は野生の生き物が繁殖する貴重な環境でもあり、エネルギー開発と自然保護をいかに両立させるかが問われている。【ユジノサハリンスクで古田信二】

 流氷が迫る島南部の町プリゴロドノエ。ここで石油・天然ガス開発事業「サハリン2」の基地建設が進む。完成後は、船積みされた原油や液化天然ガス(LNG)が日本や米国へ輸出される。

 ところが、07年を見込んでいた輸出開始は08年にずれ込んだ。総事業費も当初の100億ドルが200億ドルに倍増することになった。最大の原因は環境問題だ。

 原油や天然ガスはサハリン北東の洋上施設で採掘された後、島を南北に縦断する全長約800キロのパイプラインを通りプリゴロドノエの輸出施設に運ばれる。パイプラインが横切る川は大小1084本。サケなどが産卵のために遡上(そじょう)する川もある。現地の環境保護団体、サハリン環境ウオッチ(SEW)のドミトリー・リシツィン代表は「川に上ってくるサケには、絶滅の恐れがある種も含まれる」と懸念する。

 絶滅危惧(きぐ)種のコククジラの餌場が原油採掘現場とサハリン島の間にあることも判明した。このため、洋上の採掘設備と島を結ぶパイプラインを沖合へ遠回りさせる敷設ルートに変更した。

 費用は予定を大幅に超えたが、原油価格が急騰したため、「現在の油価なら十分に採算がとれる」(サハリン・エナジー社のイアン・クレイグ社長)という。しかし、環境問題は、建設費用の「相当部分」を融資することになっている欧州復興開発銀行(EBRD)の最終決断に影を落とす恐れも出てきた。

 事業に参加する企業の幹部は「EBRDの融資が受けられなくても、事業は進められる」と言うが、「環境問題で融資が止まるというイメージ悪化は避けられない」と不安を隠さない。

 エネルギー資源をテコに、ロシアの国際社会での地位向上を狙うプーチン政権下で、政府系天然ガス独占企業のガスプロム社もサハリン2への出資を決めた。平均月収が1万3000ルーブル(約5万4000円)のサハリン州で、サハリン2の参加者は倍以上もらっている」(みちのく銀行の対馬雅弘ユジノサハリンスク支店長)など、地元への経済効果も表れている。

 EBRDは6月末まで4カ月をかけ、世界6カ所で事業を評価する公開討論会を開く。サハリン2の関係者は「(建設の約6割が終わった)進行中の大プロジェクトが今から中止になることは考えにくい」と期待を込めて見守っているが、自然保護でさらに工夫を求められる可能性もある。

 【ことば】サハリン2 事業を進めているのは、英国とオランダの石油メジャー、ロイヤル・ダッチ・シェルが55%、三井物産が25%、三菱商事が20%出資するサハリン・エナジー社。原油生産は99年に始まったが、冬の間は流氷に閉ざされるため、年間を通じた生産はできない。現在建設中のパイプラインや天然ガスの液化施設が完成すれば、1年を通じて、原油や液化天然ガスの船積みが可能になる。液化天然ガスの年間出荷量は、日本の年間輸入量の6分の1相当。東京ガスや東京電力などが購入を決めている。

 サハリンでは、1から9までの区域に分かれて開発計画が進められ、本格化しているのは、サハリン2のほかに、米エクソン・モービル社や伊藤忠商事、丸紅などが参加するサハリン1がある。

天然ガス開発計画「サハリン2」、成功へ自信

2006年03月06日 asahi.com

 資材価格の高騰や自然環境保護の費用で事業費が2倍近い200億ドル(約2兆3000億円)に跳ね上がったロシア・サハリンの石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」。施設整備も遅れているが、原油高や天然ガス需要の逼迫(ひっぱく)は追い風で、現地では事業成功への自信を深めている。

 ●原油高で需要急増

 寒波が来れば零下30度にもなる2月のサハリン南部・プリゴロドノエ。降りしきる雪の中、防寒着に身を包んだ作業員らが世界最大級の液化天然ガス(LNG)プラントの建設を進めていた。約520ヘクタール、東京ドーム110個分の敷地で約20カ国の6000人ほどが働く。

 プラントは2系列で年産960万トン。サハリン北東の海底から出る天然ガスは、島を縦断する約800キロのパイプラインで運ばれ、ここで液化して日本や韓国、米国に出荷する。この港は冬場も完全には凍らず、船底を厚くするなどの改造だけで通常のLNG船が使える。

 海上桟橋の工事などは、流氷のため冬場はできない。「通常は36カ月で終わる規模だが、サハリンは51カ月かかる」と事業会社サハリンエナジー(SE)社の担当者。現在の進み具合は全体で60%超、プラント建設は66%、パイプライン埋設は53%。

 出荷開始は07年11月から08年夏になる。SE社の株主である英・オランダのロイヤル・ダッチ・シェル、三井物産、三菱商事は巨額の追加負担を強いられる。

 遅れの主因の一つである環境対策では、コククジラのえさ場を避けるため、海底パイプラインをルート変更した。オオワシなどにも開発の影響が及ぶ恐れがあるとして環境NGO(非政府組織)も目を光らせている。

 河川の下をくぐるパイプラインの埋設工事はサケ・マスの遡上(そじょう)時期を含む5〜11月は作業できない。また、雪解け時期は地面がぬかるみ、作業は困難で、極寒期の方が工事しやすい。「自然を甘く見ていた」という関係者もいる。

 一方、最大の出資者であるシェルはロシア国営の天然ガス会社、ガスプロムに権益の一部を譲渡する方針。三井物産や三菱商事も同様に権益の一部を譲渡する必要はあるが、ロシア企業を参画させることで事業の進展を図る考えだ。

 そのロシアでは、米エクソン・モービルや伊藤忠商事、丸紅、石油資源開発などが進めるもうひとつのプロジェクト「サハリン1」との連携案が浮上している。

 サハリン1はパイプラインで天然ガスを日本や中国に運ぶ計画だが、難航している。ならば、サハリン2のプラントでLNGにして売ればいいとの発想だ。

 ただ、「エクソン、シェルのメジャー両雄にはメンツもあり、連携は無理」との見方が強い。

 ●米中視野に増産も

 強まる逆風をよそに、SE社は増産計画を練っている。プラントの部分改良などで計画より2割以上多く生産できる見込みだが、イアン・クレイグ社長は「13年にはプラント1系列の増設も検討中」と語る。土地もすでに確保している。

 自信の背景にはまず地の利がある。サハリンの天然ガスは可採埋蔵量で約5千億立方メートルあるといわれる。日本には、英国にとっての北海油・ガス田のような安定供給の支えになる可能性がある。

 サハリンから日本までは2〜3日。中東からの約2週間より圧倒的に近い。LNGの場合、距離に比例して高価なLNG船を増やす必要があり、コストが跳ね上がる。サハリンからだと中東からよりもトンあたり10ドル安くなる。

 サハリンのLNGは日本の電力・ガス会社や米国のシェルのグループ会社、韓国ガス公社と契約するなど、販売先はほぼ決まっている。

 地球温暖化対策で燃焼時の二酸化炭素(CO2)の排出量が少ない天然ガスへのシフトが世界的な動きになっている点が追い風だ。世界の需要は30年まで年平均2.3%で伸びると予想される。特にLNGの拡大ピッチが速く、三菱商事は05年の約1億5000万トンが10年には倍増の3億トンに、15年には3億5000万トンを超すと試算する。

 陸上のパイプラインで運んだ天然ガスに比べ、LNGはずっと高価。以前は日本くらいしか買い手がなかったが、近年は韓国、台湾など東アジア地域も加わってきた。

 そのうえ、最近は米国や中国などでも需要が急増。米国では原油高に加え、国産だけでは需要を賄い切れなくなっている。中国も経済発展の結果、天然ガスの消費量が増大している。

 天然ガスは中東に偏る石油に比べ資源開発地域が世界各地に広く分布しており、エネルギーの中東依存からの脱却も図れる。世界最大のLNG輸出国はインドネシアで、日本と韓国、台湾向けの年間契約数量は2453万トン。マレーシア1980万トン、豪州1114万トン、カタール1080万トンと続く。

 インドネシアでは新たにタングープロジェクト(年産760万トン)の開発が進んでいるが、一方で資源の枯渇も心配されている。カタールはカタールガス3や4(いずれも年産780万トン)などの開発で2010年には年産7700万トンに達し、世界最大の輸出国になる。

欧州開銀は融資する? 資源開発「サハリン2」に環境団体が猛反発

2006年02月16日 nikkeibp.jp

英蘭系オイルメジャー(国際石油資本)、ロイヤル・ダッチ・シェルと、日本の三菱商事、三井物産の3社が出資して開発を進めているサハリン(樺太)沖の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」に、資金調達面で新たな関門が浮上した。

同プロジェクトの開発主体であるサハリン・エナジー・インベストメントから融資を要請されていた欧州復興開発銀行(EBRD)は2月2日、融資の実行の可否を判断するための関係者間の公開協議会を、2月28日のロンドンを皮切りに、今後120日間にわたって開催すると発表した。公開協議会は3月にサハリン、4月中旬には札幌でもそれぞれ開かれる予定だ。

実は昨年12月14日、EBRDは緊急記者会見を開いている。その中でジャン・ルミエール総裁は、公開協議会の実施を明らかにするとともに、「現在のところ決めているのは、協議会の実施だけ。融資するかしないかの決定はしていない」としていた。

今後問題となるのは、協議会実施という手続きの後、EBRDが「融資しない」という結論を出した場合だ。

「EBRDが要請されている融資額は2億〜3億ドル」(ルミエール総裁)と、200億ドル(約2兆3000億円)を超える事業総額の10%程度とはいうものの、その影響は大きい。

というのも、日本の国際協力銀行(JBIC)や欧州の民間銀行など、同プロジェクトに融資予定の他の金融機関の対応に、大きく影響するからだ。

EBRDが協議会実施に踏み切った背景には、サハリン2に対する環境保護団体からの強い反対の声がある。

クジラ問題が事業を揺さぶる

サハリン2は、生産拠点であるサハリン沖からサハリン北端まで海底にパイプラインを敷設、サハリン南部の液化天然ガスプラントまでつなげるというもの。生産された石油、液化天然ガスを日本の電力、ガス会社などに輸出する計画だ。

このうち特に問題視されているのは、パイプラインの海底部分だ。同海域はコククジラの世界有数の繁殖地で、環境保護NGO(非政府組織)からは、パイプラインの建設がコククジラの生態系に大きく影響しかねない、との懸念が示されていた。

さらに敷設されるサハリン内陸でも1000を超える中小河川を横断すると見られ、川を遡上するサケなどへの影響を心配する声もある。

総事業費は当初の2倍に

EBRDの決定は欧州内のこうした根強い反対の声に押されたもので、協議会では住民のほか、こうした環境保護団体とも意見を交換するという。ちなみに、120日間の協議会実施は、EBRDの内規では最長の実施期間に相当する。

サハリン2を巡っては、シェルが2005年7月、総事業費が当初予定していた約100億ドル(約1兆2000億円)から、約200億ドル(約2兆4000億円)に倍増する見通しであることを発表した。出荷時期も当初予定の2006年末から2008年夏にずれ込み、計画が見直された。

これに伴いパートナーである三菱商事、三井物産の投資負担もほぼ倍増。両社で約4500億円の追加負担が決まった。金融筋によるとその後、総事業費は220億〜230億ドル程度まで膨らんだ可能性があるという。

事業費の倍増と出荷時期の変更は、環境保護団体の意見に配慮してパイプラインルートの変更したことなどが理由だ。ただ、変更後の計画に対してもなお、反対の声は強く、今回のEBRDの決定につながったと見られる。

最近の原油、天然ガス高を背景に、総事業費の拡大そのものは十分吸収できるというのが周囲の一致した見方。ただ、新たに浮上した融資面での不確定要素が、事業の今後にどう影響するのか。120日後のEBRDの決定が注目される。(ロンドン支局 田村 俊一)

LNG船保有会社を設立 東電、サハリン2から輸送

2005/11/24 The Sankei Shimbun

 東京電力は24日、ロシア・サハリン沖合の原油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」から液化天然ガス(LNG)を輸送する船の保有を目的とする新会社シグナス・エルエヌジー・シッピングをカリブ海諸国のバハマに設立した、と発表した。資本金41億円で出資比率は東電が70%、日本郵船と三菱商事が15%ずつ。

 新会社は2008年末に三菱重工業から船の引き渡しを受け、船員手配や保守・管理は日本郵船に委託する。09年からサハリン2のLNGの輸送を行う予定。(共同)

日露、シベリア油送管建設促進など12文書に署名

2005/11/21 The Sankei Shimbun

 日本とロシア両政府は21日夕、テロ対策の強化や、東シベリアからの原油パイプライン建設に関する協力など12本の文書に首相官邸で署名した。テロ対策の合意文書は小泉純一郎首相とプーチン大統領が署名、ほかは関係閣僚らが署名した。

 テロ対策では国際的な協力強化とともに、日露2国間について(1)テロへの資金供与防止(2)テロリストの国境を越えた移動の阻止(3)テロに関する捜査共助―などの協力拡大を盛り込んだ。

 また東シベリア産原油を極東に運ぶパイプラインに関しては「早期かつ完全な実現が両国の戦略的利益に合致し、アジア太平洋地域のエネルギー市場の安定化を促進する」との認識で一致。このうち具体化の遅れている東側半分についてロシア側が「実現に早期に移行することを追求」することで合意した。

 ロシア極東地域の退役原子力潜水艦については、さらに5隻の解体協力事業を実施することで一致。このほか、ロシアの世界貿易機関(WTO)加盟に関する両国間の交渉妥結についての確認文書や、情報技術(IT)分野での協力についても署名した。

 両国の交流促進の分野では、観光客への査証発給手続きの簡素化や観光分野での協力強化で合意。水産物の密漁、密輸問題への協力活発化を盛り込んだ捜査共助・治安活動分野の協力プログラムに関する文書も交わした。(共同)

≪日露首脳会談の骨子≫

 一、北方領土問題をめぐる共同声明採択は見送り

 一、双方が受け入れ可能な解決を目指し、交渉を継続することで一致

 一、東アジア情勢などの安全保障の課題をめぐる日露閣僚級の「戦略的対話」設置で合意

 一、プーチン大統領は、小泉純一郎首相の来年のロシア公式訪問を招請

 一、小泉首相は、フラトコフ首相の来年の来日を招請

 一、プーチン大統領は、東シベリアの原油を極東に運ぶパイプライン建設問題で、太平洋岸までつなげることを言明(共同)

石油パイプライン敷設、北方領土と結び付けない 露次官

2005/10/05 The Sankei Shimbun

 ロシアのヤコベンコ外務次官は5日付のロシア紙イズベスチヤとのインタビューで、日本が強く求めているシベリアから太平洋岸までの石油パイプライン敷設を北方領土問題と結び付ける考えはないとの姿勢を示した。

 領土問題を含む平和条約締結交渉が進展しなければ、日本からのパイプライン建設資金が見込めないのではないかとの質問に対し、次官は「(太平洋岸までの)パイプラインを単独で建設する資金は十分ある」と述べ、日本からの資金提供がなくても建設計画に支障はないとの見方を示した。

 次官はまた、11月のプーチン大統領訪日の際に経済関係発展のための10を超える文書が調印されると述べたが、平和条約調印の可能性は否定した。(共同)

「サハリン1」生産開始 石油・ガスの新供給源に

2005/10/01 The Sankei Shimbun

 ロシア・サハリン沖の大型資源開発プロジェクト「サハリン1」が1日、石油と天然ガスの生産を開始した。石油は来年1―3月期には日本などへ輸出を開始する予定で、中東原油への依存脱却を目指す日本にとり、将来の新供給源としての期待がかかる。

 1970年代に旧ソ連と日本の共同事業として、旧石油公団や伊藤忠商事、丸紅などが出資してスタートしたプロジェクトは、ようやく本格的な稼働に移る。

 タス通信によると、サハリン島北東部の採掘拠点では同日、企業関係者のほか、ロシアのフリステンコ産業エネルギー相やインドのアイヤル石油・天然ガス相らが出席して「最初の石油」の採掘を祝った。

 石油輸出量は当初は日量5万バレルだが、来年末までには25万バレルにまで増やす方針。タンカーにより日本のほか中国や韓国への輸出を見込む。

 天然ガスは日本が全量購入計画を進めていたが、パイプライン整備が進まず、中国が供給交渉を始めている。

 サハリン1は日本商社や米エクソンモービル、インド石油公社などが参加する国際コンソーシアムが事業主体で、投資額は120億ドル(約1兆3600億円)超。採掘可能埋蔵量は原油23億バレル、天然ガス4850億立方メートルに上る。(共同)

プーチン大統領:東シベリア送油管「中国供給を優先」

2005/09/08 中国情報局

 ロシアのプーチン大統領は5日、クレムリン宮殿で行われた記者会見で、東シベリアの石油パイプライン計画について、中国への供給を事実上優先させる考えを改めて示した。プーチン大統領は、7月に英グレンイーグルズで行われた主要国首脳会議(サミット)での公式の場でも、中国優先を表明している。7日付で南方日報が外電を引用して伝えた。

 プーチン大統領は、東シベリアパイプラインについて、「スコボロジノと黒龍江(こくりゅうこう)省・大慶(だいけい)を結ぶ支線建設をまず優先し、第2段階として太平洋沿岸のナホトカまでパイプを延長する」と語った。クレムリン宮殿のスポークスマンはこの理由について、「中国向けパイプライン建設は、ロシアの経済利益からみても魅力的なものであるため」としている。

 ロシア政府は2004年12月、シベリアの石油を極東に運ぶ石油パイプラインについて、日本が支持する太平洋ルート案を承認した。これは東シベリアのタイシェトから中国国境に近いスコボロジノを経由し、最終的にナホトカ近郊までパイプを敷設するというもの。しかし、その後、スコボロジノまでの第1段階の建設を先行させ、スコボロジノからは中国向けの「支線」を優先させる案が出てきた。このため、今回のプーチン大統領の発言は、一時優位にあった日本の立場を極めて厳しくするものとなっている。

 第1段階となるタイシェトからスコボロジノ間のパイプラインは年内に着工する予定で、年間3000万トンの原油を輸送する。このうち中国に2000万トンをパイプで送り、太平洋沿岸には1000万トンを鉄道で送る計画。(編集担当:伊藤亜美・恩田有紀)

日露、東半分を具体化へ パイプライン「太平洋ルート」

2005/08/26 The Sankei Shimbun

 日本、ロシア両政府は26日までに、東シベリア産原油を極東に運ぶパイプライン「太平洋ルート」建設計画のうち、具体化が遅れている東側半分約2000キロについて、専門家による協議を9月にも本格化させることで一致した。日露交渉筋が明らかにした。

 日本政府は、プーチン大統領来日が予定されている11月20日までに一定の成果を挙げ、北方領土交渉を前進させる弾みとしたい考えだ。

 今回は、太平洋ルートを完成させることを前提に(1)東シベリアの原油埋蔵量を確認するための調査(2)パイプライン建設が環境に及ぼす影響や経済性の調査(3)日本側の資金協力の在り方―などについて、両国専門家で意見交換する見通し。

 太平洋ルートの建設をめぐっては、4月下旬に東京で開かれた日露貿易経済政府間委員会で、実現のための具体的な協力について専門家協議を継続することを確認したが、その後開かれていなかった。

 同計画は昨年末、イルクーツク州タイシェトから、日本海側ナホトカ付近のペレボズナヤまで約4000キロを結ぶルートが決定。今年4月にはロシア政府から、第1段階として中間点のスコボロジノまでの西側半分を2008年後半までに建設する命令が出された。

 第2段階の東側半分の建設については、プーチン大統領が7月の記者会見で、東シベリアの新たな油田開発を進めながら、検討する考えを示している。(共同)

 <太平洋ルート> ロシア・東シベリア産原油を太平洋岸へ運び、アジア太平洋市場に供給するパイプライン建設計画。ロシア政府は昨年12月末、先行した中国ルートに代わり、日本が求めてきたイルクーツク州タイシェトからペレボズナヤまで約4000キロを結ぶ計画を発表した。フリステンコ産業エネルギー相は今年4月下旬、第1段階として西側半分の建設を命令。ロシア政府は第1段階の送油能力は年間3000万トンで、太平洋ルート全体では同5000万トンとしている。(共同)

中露が石油パイプライン建設で合意、供給増へ

2005/06/24 中国情報局

 中国外交部の劉建超・報道官は23日の定例記者会見で、中国とロシアが石油パイプラインの建設計画ですでに合意していることを明らかにした。

 今年、ロシアが中国に供給する原油は1000万トンの予定だが、06年には1500万トンまで増えることが見込まれる。近日中に胡錦涛・国家主席がロシアを訪問し、正式合意されるとみられている。(編集担当:恩田有紀)

中間点で建設中止も 東シベリア油送管でロシア

2005/04/28 The Sankei Shimbun

 インタファクス通信によると、ロシア産業エネルギー省のヤノフスキー燃料エネルギー局長は27日、東シベリアからの石油パイプラインについて、今後3年間の地質調査で十分な原油が確認できなければ、日本が求める「太平洋ルート」の建設は中国国境に近い中間点までで中止する考えを明らかにした。

 同ルートを採算に乗せるには年間8000万トンの原油が必要だが、連邦資源庁の幹部は同日、日本への原油供給源となる東シベリアでの原油産出能力は最大で年間5000万−6000万トンと指摘しており、太平洋岸までのパイプライン建設は不透明な情勢となってきた。

 ヤノフスキー局長は「地質調査で結果が出なければ、追加的な投資決定はされないだろう」と述べた。

 また、フリステンコ産業エネルギー相は26日、パイプラインの起点となるタイシェトから太平洋岸に至るルートの中間点となるスコボロジノまでを第1段階として2008年後半までに建設するよう命令。スコボロジノから太平洋岸のペレボズナヤまではその後の第2段階で建設するとしている。

 中間地点までのパイプラインは、現在稼働中の西シベリア油田から年間3000万トンを輸送。原油は事実上、中国向けになるとみられる。(共同)

石油パイプライン:ロシア 中国向け「支線」の建設優先

2005年04月24日 毎日新聞 Mainichi INTERACTIVE

 ロシア・東シベリアの石油パイプライン計画に関連し、来日したロシアのフリステンコ産業エネルギー相が23日までに、太平洋ルートのパイプラインを2段階に分けて建設し、中国向け「支線」の建設を優先する姿勢を示した。日本政府は、ロシア側が求める建設資金などの協力は「パイプが太平洋まで引かれ、石油が来るのが大前提。全部セットだ」(中川昭一経済産業相)と反発しているが、日本への原油輸送の実現に暗雲が漂い始めた。

 建設ルートをめぐって日中間で激しい綱引きがあったパイプラインについて、ロシア政府は昨年末、日本が主張した太平洋ルート案を承認。具体的な計画案は5月1日に提出される。

 ロシア側は、太平洋岸までパイプラインを引いて積み出し港から輸出する戦略は変えていないが、建設の第1段階では東シベリアのタイシェトからスコボロジノまでとし、太平洋岸のペレボズナヤまでの敷設は第2段階とした。その間、中国・大慶への「中国向けの支線」の建設を優先する考えを示した。

 産業エネルギー相は来日前の19日に日本人記者団に対し「鉄道で中国に送っている量をパイプラインに切り替える可能性がある。最初から(ペレボズナヤまでの)すべての資金はいらない」とも述べており、既に中国側から建設資金の融資を受けているとの観測もある。

 経産省は、中東への石油依存度を下げる戦略から、このパイプライン計画で太平洋ルートの採用を働きかけ、ルート設定では「勝利」していただけに、ロシア側の対応に不信感を募らせている。「そもそも埋蔵量も不明だ。中国にも売ってもいいが、パイプラインが完成しないまま石油がなくなるリスクもある」(経産省幹部)との声も出始めた。【小島昇】

インド洋天然ガス、日印共同開発へ 中国牽制の狙いも

2005/04/22 The Sankei Shimbun 東京朝刊から

 日本とインド両政府は二十一日、インド洋のアンダマン諸島付近で、海底の天然ガスを共同開発するための具体的検討に着手した。97%を海外からの輸入に頼る天然ガスの輸入先を多角化して安定供給を確保するねらいのほか、インドとの経済関係強化で中国を牽制(けんせい)する「戦略的な重要性」(経済産業省筋)もある。小泉純一郎首相も強い関心を示しており、二十九日に訪印した際、シン首相との会談で共同開発に言及する。

 天然ガスの共同開発については、自民党の安倍晋三幹事長代理らが今年三月、訪印してシン首相と会談した際、シン首相から「アンダマン諸島は有望だ」と協力を提案された。

 アンダマン諸島は、マラッカ海峡の西方にあり、日本のタンカーなどが航路としているシーレーン上で、安全保障上も重要な海域となっている。

 その一方、インドは今月、訪印した中国の温家宝首相ともエネルギー分野での協力で合意している。政府はこうした状況を検討した結果、資源供給源の確保で中国に比べ遅れている−と判断、インド当局と共同開発する方向で折衝を始めた。

 実現すれば、民間主導で共同開発・採鉱を実施し、天然ガスは液化処理した上で日本へタンカーで輸送し、インドへはパイプラインで供給することが想定される。

 天然ガスは、都市ガスや火力発電に利用され、主な輸入先はインドネシア、マレーシア、豪州、ブルネイなど。「インドとの共同開発でより確実な供給が期待できる」(政府関係者)という。具体的な契約や鉱区設定、民間事業者の選定などの手続きをめぐる両国の協議は、小泉首相の帰国後に本格化させる。

 ともに人口が十億人を超える中印両国はエネルギー資源の確保を最優先課題とし、最近急速に関係を強化している。

 ただ、「インドは本心では中国を信用していない。インドにとっても日本との共同開発推進には中国への対抗上メリットがあるはずだ」(自民党幹部)との分析もある。中国はシーレーン上のミャンマー領・ココ島に、中国軍が管理する通信施設を設置したとの情報もあり、こうした動きを牽制するねらいもあるとみられる。

東シベリア油田 中国向け先行か 露が設計に着手

2005/01/27 The Sankei Shimbun 東京朝刊から

 【モスクワ=内藤泰朗】日中両国がルートをめぐり競合する東シベリアから太平洋岸への石油パイプライン建設問題で、ロシア国営のパイプライン敷設・管理会社、トランスネフチのバインシュトク社長は26日、同社が中国向けの支線の建設を含むパイプラインの設計に着手したことを明らかにした。インタファクス通信が伝えた。

 ロシア政府は12月31日、パイプライン建設で日本に有利な太平洋ルートの建設計画を採択し、実現に向け大きく動き出したが、石油需要が逼迫(ひっぱく)する中国側の支線が先に完成すれば、太平洋岸まで石油が到達する時期が大幅に遅れることも予想され、今後のロシア側の対応が注目される。

 同社長が26日、プーチン大統領との会談で明らかにしたところによると、同社はシベリアのタイシェト−スコボロジノ間を開通させ、その後、太平洋岸まで延長する。スコボロジノから中国までは70キロで、先に開通する可能性がある。

 日本側は、70億ドル(約7300億円)の建設資金を融資する提案を行っているとされ、その場合、日本の資金で中国に先に石油を送ることにもなりかねず、日本側の反発は避けられない。

太平洋ルート決定と報道 ロシア油送管建設でタス通信

2004/12/31 The Sankei Shimbun

 タス通信は31日、日本と中国が競合している東シベリアから極東沿岸への石油パイプラインについて、日本が提案したナホトカ方面へ通じる「太平洋ルート」の建設をロシア政府が30日に正式決定したと報じた。政府に近い筋の情報として伝えた。

 モスクワの日本大使館はこの情報を確認していない。

 ロシア政府は当初、12月15日までに同ルート建設を正式決定する予定だったが、中国側が資金援助などを申し出たため、政府内で日中のどちらへの原油供給を優先させるかで意見が分かれ、決定が延期されていた。(共同)

決定は2、3カ月遅れも 露の油送管建設ルート

2004/12/18 The Sankei Shimbun
 ロシア政府による東シベリア油田から極東への石油パイプラインの建設ルート決定が、当初予定の今月15日から大幅に遅れる見通しとなった。ロシアのラジオ「モスクワのこだま」によると、トルトネフ天然資源相は17日までに、正式決定は2、3カ月遅れる可能性があるとの見通しを示した。

 関係筋によると、ロシア政府は、日本が後押しする「太平洋ルート」を正式決定するとみられていた。しかし、中国・大慶までのルート建設を求める中国側が最近、建設費などに約130億ドル(約1兆3500億円)もの資金援助を申し出るなど巻き返しを強め、政府内での調整が難航、決定が遅れているという。

 天然資源相は「ロシアの国益」を考慮した上での検討が必要と強調。経済発展・貿易省の報道官も「いくつもの問題が未解決のままだ」と述べ、最終結論が出ていないことを示唆した。

 ある外交筋は「ロシア政府は、日中両国から一層の資金援助を引き出すため意図的に決定を先延ばしている」と分析している。(共同)

サハリン天然ガス 露、日本供給撤回も 東シベリア太平洋ルート採用

2004/12/11 The Sankei Shimbun
 ロシアは東シベリアで進めるパイプライン建設計画のルート選定問題で、中国が求める大慶ルートを見送り、日本が推す太平洋ルートとする方針を固めた。その見返りとして中国には、日米露などが共同開発する石油・天然ガス開発事業「サハリン1」の天然ガスの大半を供給する。最終的なルートは今月中旬にも公式発表され、サハリン資源の対中供与は年明けにも日本に伝えられる見通し。日本は、サハリン1に一千億円超の税金を投入してきたうえ、全量供給されるとの開発前提が崩れることになり、微妙な立場に追い込まれた。

 プロジェクト関係者によると、輸送ルートはタイシェットを起点に中国東北部の大慶に向かう中国案があったが、ロシアは日本が推すナホトカとつなぐ太平洋ルートを採用する方針を固めた。国際石油資本(メジャー)のBPやエクソン・モービルと連携し、主に対日、対米輸出用とする計画で、概要は今年十月の中露首脳会談で胡錦濤国家主席にも伝えられたもようだ。

 確定ルートはロシア大統領府が今月中旬にも発表する見通しだが、事業主体となるトランスネフチ社が提出した案では、タイシェットから中間地点のスコボロジノまでを第一区とする。鉱区開発のめどがたった後、ナホトカ近郊の積出港ペレボズナヤまでを第二区として、建設に着手する。

 一方、大慶ルートの断念を強いられる中国に対しては、見返りとしてサハリン1で産出される天然ガスの大半を供給することで調整する。

 サハリン1の天然ガス開発には、日本政府が石油公団などを通じて一千億円を上回る巨額の税金を投じ、将来、パイプラインで首都圏まで引く構想を進めてきた。だが、パイプライン敷設にともなう費用分担をめぐって官民が連携をとれず、プロジェクトは足踏み状態。

 開発を主導するエクソンのレイモンド会長は十一月上旬に小泉純一郎首相らと会って「このままでは中国に全量を売ることになる」と“最後通告”を突きつけていた。

 新しい資源ネットワークの構築を目指すロシアやメジャーは、サハリン1に対する日本の姿勢に見切りをつけるとともに、世界第二の石油消費国となった中国を引き込む戦略がある。ロシアは東シベリア開発では、日本から援助資金を引き出す思惑も見え隠れするが、その半面、東シベリアの採掘の可否や採算性を疑問視する専門家の指摘もあり、どこまで日本側にメリットがあるかどうか不透明。供給めどがつかない場合に備え、パイプライン建設も二段構えとし、中間点のスコボロジノから中国国境に向け鉄道輸送する案も浮上している。

 「このままだと日本は東シベリア開発への資金援助にとどまるだけでなく、官民で開発に参加したサハリンの利権をも失いかねない」(石油業界)との声もあり、日本政府はエネルギー戦略の練り直しを求められる可能性もある。

エクソン、中国とも交渉 天然ガス供給

2004/11/02 The Sankei Shimbun
 ロシア・サハリン沖の資源開発プロジェクト「サハリン1」で、開発主体の国際石油資本(メジャー)の米エクソンモービルが天然ガス供給交渉を中国側と開始したことが、2日分かった。中川昭一経済産業相が同日の閣議後の記者会見で明らかにした。

 エクソン側はこれまで、サハリンから日本までパイプラインを敷設し、日本に全量販売する交渉を進めてきたが、日本国内の漁業補償問題などが障害となり遅れている。このため今回、中国とも交渉することで、こう着状態を打開する狙いがあるとみられる。

 中川経産相は「中国に決まったとか、(日本への供給が)白紙とかではない」と強調。原油高が続く中、エネルギー需要が増加するアジアで「資源争奪戦」が一段と激化してきたといえそうだ。

 サハリン1には、伊藤忠商事、丸紅なども参加。天然ガスは2008年に商業生産開始を目指しているが、漁業補償問題のほか、日本の電力会社などが購入の意思を明示していないこともあり進んでいない。

 エクソンモービルのレイモンド会長は1日、小泉純一郎首相や中川経産相と会談している。経産相は2日の記者会見で「(会長は)日本は重要な顧客だが、ほかにも交渉を進めているところがあると言っていた」と説明した。エクソンは、中国3大石油会社の一つである中国石油天然ガス集団公司と交渉しているとみられる。

日本ルート年内に結論 石油パイプラインで露副首相

2004/05/01 The Sankei Shimbun
 ロシアのジューコフ副首相は30日、ロシアを訪問した中川昭一経済産業相と会談し、日本と中国が競合する東シベリアからの石油パイプライン建設について、年内にも日本が求める極東ナホトカまでのルートの事業化調査が終了し、建設の是非の結論が出るとの見通しを明らかにした。中川経産相が会談後の記者会見で明らかにした。

 事業家調査で埋蔵量や採算性などについて前向きの結論が出れば、中国・大慶へのルートに先行して、日本ルートを優先着工する方針が最終決定する。日本がロシアとの戦略的関係強化の切り札として打ち出した石油パイプライン計画は、来年初めにも予想されるプーチン大統領の日本訪問に向け大詰めを迎える公算が大きくなった。

 中川経産相は「副首相は日本が推すルートに好意的との印象を受けた」と述べ、プーチン政権が日本ルートに傾斜しているとの見方を示した。

 パイプライン建設ルートは、中国ルートが環境問題をクリアできず、国営パイプライン会社トランスネフチが策定した東シベリア・タイシェトから極東ナホトカまでのルートだけが予備的な環境審査に合格している。

 ロシア政府は中国への石油輸出は当面、鉄道輸送拡大で対処する方針を固め、日本ルートが優位に立っている。詳細な事業化調査の結果が出なければ、日本も資金援助に踏み切れないため、日露間で専門家協議が続いている。(共同)

外交部:中ロパイプラインで中国案の採用求める

2004/04/09 中国情報局

 中国外交部の孔泉・報道官は8日の定例記者会見で、ロシアが計画している石油パイプライン建設に関し、中国側が提案していたアンガルスク−大慶ライン案をロシア政府が正式に決定すると信じていると発言した。中国新聞社が伝えた。

 ロシア石油パイプライン建設は、中国案と、日本が支持するアンガルスク−ナホトカルート案で意見が対立していたが、ロシアは2004年に入ってナホトカルート案を採用する方向で検討を進めているとされていた。

 孔・報道官は、ナホトカルート案、大慶ルート案のどちらについても、まだロシア政府からの正式な決定は伝えられていないと述べ、ナホトカルート案の採用にまだ可能性があるとする中国側の希望的観測を匂わせた。

 また、中ロ間の友好関係を強調する形で、エネルギー資源問題でも中ロは協力し、パイプライン建設はその中でも重要な共同プロジェクトの一つだとコメント。

 さらに、両国によるパイプライン建設が順調に行われることは両国に巨大な経済効果をもたらし、また戦略的パートナーシップの強化という政治的意義も含んでいるとして、ロシアに大慶ルート案の採用を強く促した。(編集担当:緒方隆次)

日本向け新ルート検討 シベリア油送管でロシア

2004年03月21日 The Sankei Shimbun
 日本と中国が競合する東シベリア石油パイプライン計画をめぐりロシア政府が、日本に有利となる極東への新ルートの優先着工を検討していることが21日までに分かった。複数の関係筋が明らかにした。

 中国へは鉄道輸送の大幅拡大を図る構想で、プーチン政権がこの案を採用すれば、日本が求める極東ナホトカまでのルートが、中国・大慶までのルートに優先して着工される方向が固まり、総額100億ドル(約1兆700億円)の巨大事業実現へ向けて大きく前進する。

 政権内では、日本の大型投資やアジア市場を広く対象とする日本ルートへ傾斜が強まっている。だが中国も、緊密な関係のロシア軍需産業を通じて圧力を強化。埋蔵量の確認や事業化調査も今後の課題で「まだ曲折が予想される」(日本政府筋)という。

 新ルート案は国営パイプライン企業トランスネフチが作成。起点を従来の日本向けルートのアンガルスクから北西500キロのタイシェトに移した。未開発油田に近くなり、最大課題の輸出量確保に寄与するが、中国からは大きく離れる。

 また油流出でバイカル湖汚染が懸念される問題も、湖との距離が従来ルートより約100キロ広がり、18日に天然資源省の環境審査に正式に合格した。

 中国への供給に関し、プーチン大統領の指示を受けた「ロシア鉄道」社は、中国への鉄道輸送量が現在の年間250万トンから数年で同1000万−1500万トンに拡大可能との見解をまとめたが、中国向けパイプラインが想定する年間3000万トンには及ばない。宇宙開発や兵器生産での技術供与などを見返りに検討しているという。(共同)

パイプライン:優先着工条件に調査費拠出 日本が露に表明

2004年01月07日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE
 ロシア東シベリアからの石油パイプライン建設問題で、日本政府が日本が推す太平洋ルートの優先着工を条件に、同ルートの事業化調査の資金拠出をロシア側に表明していたことが7日、分かった。

 パイプラインのルート選定をめぐり日本と中国が競合。日本は資金拠出によりロシアに早期の調査実施を促し、太平洋ルートの優先着工に道を開きたい考え。しかしロシア側は「太平洋ルート調査後に、再度中国ルートとの優劣を検討したい」との立場で、双方の思惑は食い違っている。

 中国ルートの事業化調査は既に終了している。

 太平洋ルートは総延長約3700キロあり、具体的な敷設地点や建設費用、採算性などの事業化調査費用は数千万ドル(数十億円)と見込まれる。

 資金拠出は石油公団を通じて行う。日本は、ロシアが現在進めている環境影響調査が終わり次第、早ければ今月か2月にも事業化調査を開始したい考え。(モスクワ共同)

露、決定を3カ月先送り 日中競合の石油パイプライン

2003年09月24日 The Sankei Shimbun
 中国を訪問中のロシアのカシヤノフ首相は24日、温家宝首相と北京で会談し、日本と中国が競合する東シベリアの石油パイプライン計画について「環境影響調査をさらに続けるため最終決定を3−4カ月延期する」と伝えた。

 会談後、温首相と共同記者会見したカシヤノフ首相が語った。

 同計画で日本は、東シベリア・アンガルスクからナホトカまでの北ラインを希望し、中国は大慶までの南ラインを要求している。当初9月に終了するとしていた環境影響調査を踏まえたロシアの決断が焦点となっていた。

 カシヤノフ首相は12月に訪日し、日本とも協議を行う予定。「環境影響調査」は名目で、ロシアとしては日中の要求が対立する中、どちらのルートがより国益にかなうか慎重に見きわめようとの判断があるとみられる。日本としては決定が先送りされたことで、望みをつないだ格好だ。(共同)

サハリンU2期工事、「一部は法律違反」とロシアNGO

2003/07/30 JANJAN

 ロシア・サハリンで来月から着工されようとしている石油・天然ガス田開発プロジェクト「サハリンU」の第2期工事について、現地で活動している環境NGOのサハリン環境ウォッチが、計画の一部が法律に違反していると指摘している。

 違法性について言及しているのは、同代表のドミトリー・リシツィン氏。事業主体のサハリンエナジー・インベストメント社は、2期工事で生まれる掘削汚泥約100万トンの投棄先としてサハリン南部のアニワ湾を計画しているが、ロシア水典法96条(Russian Water Code,article96)に違反していると訴えている。

 それによるとアニワ湾は、サハリン州魚類資源保護再生産漁業規制局によって最も高レベルの漁場と位置づけられており、そこへのあらゆる投棄は、沿岸海水域の保護について定めた同法で禁じられているという。

 ロシア資源開発事業での海洋投棄問題では、かつて、サハリンUと同じ性格を持つプロジェクトの「サハリンT」において、事業主体者のエクソンが掘削汚泥等を海洋投棄することを認めようとしたロシア行政側に対し1999年、ロシアのNGOが違法性を訴え、エクソン側の海洋投棄計画が中止された前例がある。

 今回のサハリンUの第1期工事では、既に海洋上での資源掘削基地から出された汚泥の一部が、行政側の認可を受けて海洋投棄が行われており、現地NGOではこれも、汚泥の埋め戻しや陸上処理を行う国際的な環境基準から判断して違法性が高いとみている。

 サハリン環境ウォッチのドミトリー代表は24日、日本の環境NGO・FoE Japanとともに、サハリンエナジー側からプロジェクトへの融資要請を受けている日本の国際協力銀行を訪れ、工事の一部について違法性があることを説明し、サハリンエナジーに計画を見直すよう勧告すべきだと訴えている。

 今後、サハリン環境ウォッチでは、サハリン沿岸に生息し、水産庁も絶滅危惧種に認定しているニシコククジラの保護に関するプロジェクトの違法性についての訴訟を視野に入れながら、環境保護への配慮がなされた工事の実現に向け各方面に働きかける予定だ。 (遠藤博丈)

「日本だけ良ければ」でいいのか、サハリン石油・ガス田開発の環境問題

2003/07/25 JanJan

 都内で23日、ロシア・サハリンの石油・天然ガス田開発プロジェクト「サハリンU」が環境に与える影響を考えるフォーラム、「サハリン石油・天然ガス開発プロジェクトを知り、考える市民フォーラム」が、国際環境NGO・FoE Japanの主催で行われた。フォーラムには、NGOサハリン環境ウォッチ代表のドミトリー・リシツィン氏と、米ワシントン州立大学・環境資源学研究者のジョッシュ・ニューウェル氏が参加し、プロジェクトの問題点について講演を行った。

 ドミトリー氏が指摘するプロジェクトの主な懸念は、開発のための海底掘削で生じる汚泥の廃棄と、陸上に敷設されるパイプラインの安全性及び環境負荷について。

 100万トンの汚泥投棄がなされるサハリンのアニワ湾では、海洋生物への悪影響が予想され、また、陸上でのパイプライン敷設が川底を掘り埋設する工法を取るため、鮭などの魚類への負荷や、地震発生時のパイプラインの安全面で問題があり、計画を見直すべきだとしている。

 このサハリンUの事業主体はサハリンエナジー・インベストメント社で、出資企業には、シェル(出資比率55%)のほか、三井物産(同25%)、三菱商事(同20%)などの日本企業が名を連ねている。開発された鉱区から生産される液化天然ガスについては、東京ガスと東京電力が、2007年からの購入基本合意を締結した。

 このためFoEでは6月、他のNGO団体とともに東京ガス・東京電力に対し、基本合意を見直すよう要望書を提出した。今後も現地NGOと連絡を取り合い、両企業が、プロジェクトの開発手法及び環境などへの前向きな対応を取ってから購入契約を締結するよう、働きかけていく予定だ。

 現在、日本のエネルギー政策は、長期的には原子力への依存度を強め、中期的には火力発電における燃料を、従来の重油・原油などの石油系燃料から、燃焼時に二酸化炭素や窒素酸化物の排出が石油系燃料より少ない天然ガスへと、移行する方向にある。

 ライフサイクルアセスメントでは、他の化石エネルギーより優れているとされる天然ガス。だが、その開発の過程で周辺環境を破壊してしまっては、元も子もない。エネルギーの受益者である日本が、エネルギー供給先の環境問題に無関心であることは、「自分だけ良ければいい」という姿勢の表れでしかないだろう。 (遠藤博丈)

専門家含め検討で日露合意 石油パイプライン建設

2003年07月11日 The Sankei Shimbun

 平沼赳夫経済産業相は11日の閣議後の記者会見で、東シベリアとナホトカを結ぶ石油パイプラインの建設について専門家を含めて検討を深めていくことで日露が合意したと発表した。

 8日にロシア入りした岡本巌資源エネルギー庁長官ら政府代表団は、モスクワでフリステンコ副首相らと会談。東シベリアの油田開発や、パイプライン建設費融資への協力のあり方を中心に意見交換。専門家協議を通じて計画を具体化していくことになった。

 一方、日本のパイプライン建設を中国より優先する条件として、ロシアがイランのアザデガン油田の共同開発を日本側に提案したとの一部報道については「そういう事実はない」と否定した。

日露石油協議:生産量を調査へ パイプライン建設計画で

2003年07月07日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE

 経済産業省の村田成二事務次官は7日の会見で、ロシアとの石油パイプライン建設計画をめぐる協議について、「今後に向けてのターニングポイントになると期待している。一つは、どのぐらいの油が確保できるかだ」と具体的な生産計画が議論の対象になることを明らかにした。

 村田次官は、「油を確保するにあたって、どういう課題を解決する必要があり、両国がどのように寄与できるかを絞り込む。これを前提に資金調達の手法について具体的な選択肢を両国がイメージし合える状況にもっていけることを期待している」と述べ、日露両国がリスクの負担や投資計画の議論にも踏み込むことを示した。

 ロシアのパイプラインは、東シベリアからナホトカへの太平洋ルートで、岡本巌・資源エネルギー庁長官を代表とする調査団は8日出発。フリステンコ副首相ら首脳と協議する。【藤好陽太郎】

川口外相:訪露で東シベリア油田の共同開発を表明

2003年06月28日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE

 ロシア極東を訪問中の川口順子外相は28日午後(日本時間同)、ウラジオストク市内のホテルでロシアのプリコフスキー極東連邦管区大統領全権代表と会談し、東シベリアからナホトカへの太平洋ルート石油パイプライン建設計画に関して、中国ルートより先行させることを前提に、東シベリア油田の開発にロシアと共同して取り組む考えを表明した。

 外相は「(中国ルートより)先行して建設されることを前提に、東シベリアの油田の共同開発を協議する用意がある。実現のための話し合いを本格化することを期待する」と述べた。

 北朝鮮の金正日総書記と親交があるとされるプリコフスキー氏は核問題をめぐる多国間協議について「(米朝中の)三カ国協議は効果が上がっていない。(日韓ロを含む)6カ国協議に発展することを支持している」と表明。「金総書記とは何度も会っているが、理解を得る努力が必要だ」と強調した。(ウラジオストク共同)

 外相は「日本は北朝鮮問題の平和的解決を目指している。拉致は重要で深刻な問題だ」と述べた。

中露が石油売買で基本合意 東シベリアからパイプライン

2003年05月29日The Sankei Shimbun

 ロシアの石油大手ユコスと中国の同「中国石油天然ガス集団」は28日、ロシア政府が計画中の東シベリアから中国・大慶までのパイプラインを通じ、ユコスがロシア産石油を中国側に輸出することで基本合意したと発表した。

 ロシアが建設予定のパイプラインは、日本が推すロシア極東のナホトカに至るルートと中国が求める大慶に至るルートがあり、両国は激しく争っている。

 ロシア政府は建設費用が割安で採算確保のめどが立っている中国ルート優先の方針を固めているが、正式決定には至っていない。パイプラインの着工時期も決まっておらず、建設予定地の環境問題など計画実現には課題が残されているという。

 今回の合意は、中国ルートを求めるユコスと中国側が、既成事実を積み上げることで優先着工の決定に向け弾みを付ける狙いがあるとみられる。

 合意によると、ユコスは2005年から年間2000万トン、10年からは同3000万トンの石油を計25年間にわたり輸出。中国側は総額1500億ドル(約17兆7000億円)をロシア側に支払う。

 日本政府はまだ巻き返しのチャンスもあるとして、30日の日露首脳会談で、小泉純一郎首相が再度働き掛けをする方針だ。(共同)

東京ガス:サハリン2から天然ガス購入で基本合意

2003年05月12日[毎日新聞]Mainichi INTERACTIVE

 東京ガスは12日、ロシア・サハリン州沖の石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」から、液化天然ガス(LNG)を07年4月から購入することで、事業主体の「サハリン・エナジー」と基本合意した。日本企業がサハリンから天然ガスの購入を正式に決めたのは東京ガスが初めて。

 契約期間は07年4月から24年間で、年間最大110万トンを輸入する。東京ガスは現在、年間750万トンのLNGを輸入しており、サハリン産は将来的な需要拡大に向けた純増分となる。

 サハリン2は英蘭系メジャー(国際石油資本)のロイヤル・ダッチ・シェルと三井物産、三菱商事が合弁で設立した「サハリン・エナジー」が開発を進め、99年7月に原油の生産を開始。天然ガスの生産は06年末の予定で、日本企業では東京ガスのほか、東京電力、中部電力などもサハリン2からLNGを購入する方針を示している。【川口雅浩】

シベリアからのパイプライン、中国ルート優先着工方針 2003/04/19 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【モスクワ=五十嵐弘一】露外務省のアレクサンドル・ロシュコフ次官(アジア太平洋担当)は19日、タス通信と会見し、日本と中国が競り合う、東シベリアからの石油パイプライン建設事業で、中国・大慶へのルートを優先着工する方針を明らかにした。

 これにより、日本が大規模な資金支援まで検討して露側に求めていた、極東ナホトカへのルート建設は、当面棚上げとなる可能性も出てきた。

 ロシュコフ次官は「ロシアは埋蔵石油を開発してきたが、(西シベリアの石油)生産量は、(極東の)ナホトカと中国の両方へ供給するのに十分とはいえない」とした上で、「われわれは中国側と協議を重ね、相当な前進をみた」と語った。

 ロシュコフ次官は一方、ナホトカ・ルート建設を求める日本については、「われわれが中国と協議を始めると同時に、(事業支援を)決めるべきだった」と語り、日本の反応が遅すぎた、との見方を示した。

 露政府は先月、バイカル湖近くのアンガルスクからパイプラインを建設、途中で分岐させて、極東のナホトカと中国の大慶の双方に供給する方針を原則決定。今年5月はじめまでに建設ルートを具体的に決定する見通しだった。

極東開発進展の起爆剤に

1999年07月24日 共同通信社

 日本の商社や欧米の国際石油資本(メジャー)が参加する、ロシア・サハリン東方沖の大規模石油・天然ガス開発計画「サハリン2」で、原油の商業生産が今月上旬から始まった。産業界からは、総額約1兆円に上る同計画を起爆剤に「低迷する極東開発が一気に前進してほしい」(大手総合商社)との期待の声が高まっている。

サハリン沖油田波高し、冷戦の舞台で米ロが協調

July 11, 1999

 ロシア・サハリン沖の大陸棚開発で、初の原油生産が始まった。冷戦時代、米国とソ連(当時)がつばぜり合いを演じた海域での、米ロなどの共同事業だ。経済不振のサハリン州は、外資導入による経済立て直しに期待している。だが、地元はもちろん、海を隔てた北海道沿岸部の住民にも、油流出事故への警戒感が強い。厳冬期には生産を休まざるを得ないこともあり、黒字になるには時間がかかりそうだ。長い目でみれば、成否はすぐ隣の大市場である日本にかかっている。

 7日に生産を開始したプロジェクト「サハリン2」は、本社をモスクワに置くサハリン・エナジー社が進めている。現場の責任者は米国人のデビッド・ロラン所長(49)だ。アラスカやメキシコで石油を掘ってきた。かつてあれほど敵対したロシアで掘るとは、考えてもみなかったという。

 ノグリキは州都ユジノサハリンスクから北へ約600キロ、「サハリン2」の最前線だ。16ロ沖合のオホーツク海に、110キロ四方の巨大な石油掘削施設「モリクパック」が浮かんでいる。1年の半分以上も流氷が押し寄せるなか、米ロの技術者が2年前から、1日2交代勤務で掘削を進めてきた。

 エナジー社は米系石油メジャーのマラソン・オイルと英・オランダ系のシェルが計6割ほど、残りを三井物産、三菱商事が出資した。地元のロシアとは、原油や天然ガスを分ける生産分与契約を結んでいる。

 ロシア政府の開発にかける意気込みは強く、生産開始を目前にした2日、アクショネンコ・ロシア第一副首相が極東訪問の途中、モリクパックを訪問した。ノグリキのゲナージ・スーセンコ地区長(53)も「事業が順調に進めば税収も増え、立派な町ができる」と期待している。

 しかし、6月8日に地元テレビが「モリクパックでオイル漏れ」と報じた。翌日、ロラン所長が記者会見し流出を認めたものの、「ワイングラス1杯分の潤滑油が海に流れた」。関係者によると、実際は漏れた400リットルほどの一部が海に流れたという。

 地元の不安は高まった。5月30日に事故が起こっていたのに、報道のきっかけになった州政府への報告も1週間後。住民から「もっと情報公開が必要だ」という声があがった。事故に神経質になるのは付近がサケやマスなどの豊かな漁場だからだ。入り組んだ湾には、5000羽以上のカモメやウミワシの巣が多く確認されている。連邦の自然保護区もある。

 レフ・ポドゥニェフ地区環境委員長は「財政危機で自然保護予算は削られ続けている」といい、流出への具体的な対策は何もないという。漁業組合幹部は「エナジー社は事故への備えがあるだろう。信頼している」と言うものの、「事故が起こればお手上げ。失業だ」と付け加えた。

 宗谷海峡を隔てた稚内市、網走市などの北海道沿岸地域も、国に万一の時の対策を要望している。原油は、この地方に押し寄せる流氷と同じコースでやって来ると考えられるからだ。

 エナジー社は厚さ10センチもの事故対策計画書を作り、訓練も済ませた。同社幹部は「ロシア政府や融資を受ける日本輸出入銀行からも(計画書の)承認を得ている」と自信をのぞかせている。事故が起これば油除去チームをシンガポールや英国から呼び寄せるという。

 さらに問題なのは原油の買い取り先だ。日本をあてにしているが、「今の石油価格はあまり高くなく、半年ほどの稼働期間や掘削にかけた投資を考えると、赤字覚悟の出荷だ」との指摘がある。

 長期契約に基づいて開発を進める天然ガスとなると、もっとやっかいだ。こちらも日本市場に期待しているが、日本では大口需要家の電力やガス業界が数年分の契約を済ませている。計画通り、「サハリン2」で4〜5年後に天然ガスの生産に移れるかどうかは微妙だ。

 <サハリン沖資源開発> ロシアがサハリン北東部沖の大陸棚で外国資本を導入して進めている。20年以上前、日本が当時のソ連と共同開発を決めた鉱区が「サハリン1」。一時中断したが、2003年以降の生産を目指している。「サハリン2」は日本の大口需要を見込んだもの。

パイプライン建設で調査

1999年05月13日 共同通信社

 ロシア・サハリン沖の天然ガスなどの開発計画、『サハリン1』で、資源開発会社、石油資源開発(東京)と伊藤忠商事、丸紅の3社は13日、サハリンから日本へ天然ガスを運ぶ大規模パイプライン建設に向け、事業化調査を始めると発表した。 

        

 事業化の場合、パイプラインは日本海側か太平洋側の陸上と海底を通り、日本海側では総延長は約1300キロと世界的にも最大規模の設備となる。

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