TOPIC No.2-145 ワーキングプア(働く貧困層)/ネットカフェ難民

ワーキングプア(働く貧困層):いくら働いても、所得が生活保護水準(大都市部で年間約160万円)に達しない人たち。
01.ワーキングプア〜働いても働いても豊かになれない〜 byNHKスペシャル(2006年07月23日総合テレビ)
02.NHKスペシャル「ワーキングプア 働いても働いても豊かになれない」by紙屋研究所
03.ワーキングプアのNHK特集で取材された秋田県仙北町出身の友人と今日、昼飯を食いました by分裂勘違い君劇場
04.ワーキングプアU 努力すれば抜け出せますか byNHKスペシャル(2006年12月10日総合テレビ)
05.12/10 ワーキングプアが産み出す富はどこへ(2006.12.10)byきょうも歩く
05.「ワーキングプアU」(1)…“たまたま”の固定化を許すな!! (2006年12月11日) by dr.stoneflyの戯れ言
06.それでも他人事じゃない!?“ワーキングプア”とは? (2007.04.19) by L25
07.§789 ワーキングプア (2007.05.01) byムネオの厠
08.ワーキングプア byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』  
09.ネットカフェ難民 byフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』  
10.インターネットカフェ
11.日本全国のインターネットカフェ
12.全国のインターネットカフェ/マンガ喫茶
13.NO 貧困――名古屋行動集会(1)準備編・横断幕に思いを込める (2007/06/15) JanJan

ワーキングプア対策が重要 G8労相、格差問題議論/h3>2008年05月12日 中国新聞ニュ−ス

 新潟市で開催中の主要国(G8)労働相会合は2日目の12日、雇用をめぐる格差問題や、仕事と生活の調和(ワークライフバランス)について議論。働いているのに収入が極めて低い「ワーキングプア(働く貧困層)」への対策が重要との認識で一致した。

 会合は経済のグローバル化による負の側面として、格差が広がっているという認識を共有。企業が求める労働者の技能水準が向上したため、訓練などによる職業能力開発が不可欠との指摘が出た。

 また地域間の格差是正のため、政府や自治体が地元の企業、教育機関などと協力し、産業振興や雇用創出を進める必要性も確認された。

 仕事と生活の調和では、上川陽子少子化担当相が、男性の育児休業取得率などの数値目標を設けた行動指針など、日本の取り組みを説明。高齢者も安心して働けるように、良好な職場環境や安全の確保が重要との認識でおおむね一致した。

日雇い派遣事業を縮小 グッドウィルが経営方針

2008/05/09【共同通信】47News

 米系投資ファンドなど外資主導で再建を進めている人材派遣大手グッドウィル・グループ(GWG)は9日、日雇い派遣事業を縮小し、技術者派遣や海外事業を強化するとした経営方針を発表した。

 日雇い派遣など仕事があるときだけ雇用契約を結ぶ登録型派遣から、技術者を中心に正社員採用した上で企業に派遣する事業への移行を目指す。「ワーキングプア(働く貧困層)の温床」などと批判が多い日雇い派遣事業を圧縮し、コンプライアンス(法令順守)の強化を図るという。

 GWGの子会社で日雇い派遣大手のグッドウィルが今年1月、違法派遣を繰り返したとして厚生労働省から事業停止命令を受けた。創業者の折口雅博氏が3月、GWGの会長を退任。堀井慎一・元大和証券副社長が社長に就くなど経営幹部を大幅に入れ替え、再建を進めている。

経営者も賃上げ努力をCommentsAdd Star

2008-05-08 八重山毎日新聞

どうにかならんか「格差社会」の是正

■増える「働く貧困層」

 「ストップ・ザ・格差社会」―。これは去る1日に行われた連合系の第79回メーデーのテーマで、一向に改善されないどころかますます深刻になっているため、昨年に続き2カ年連続で同様のテーマとなった。八重山もこの日、およそ200人が参加して「仕事と家庭の調和」(ワークアンドバランス)を求めて宣言や特別決議を採択、格差解消を訴えていた。

 このメーデーをはさんで「昭和の日」「憲法記念日」「みどりの日」「こどもの日」などと続いたゴールデンウイークもきのう6日で終了し、海外や国内各地の旅行を楽しむ人々の姿がテレビに映し出されていたが、一方で現在の「格差社会」を浮き彫りにしてこの連休期間中、逆に働きづめで、こうした連休を楽しむ人々をうらやましく思った人たちの方がむしろ多かっただろう。

連合の資料によると、いまやパートやフリーター、派遣社員などの非正規労働者は全労働者の3分の1を占める1700万人を超えたという。さらに年収 200万円以下の世帯は20%を超え、生活保護水準以下の低賃金で働くワーキングプア(働く貧困層)や、住居がなくインターネットカフェで寝泊まりする若者を中心とするネットカフェ難民が社会問題化するなど、産業や企業規模、あるいは地域によって労働者の雇用形態、所得格差が拡大・固定化し、低所得者層との2極化はますます深刻の度を増している。

■沖縄の最賃は618円

 最近問題になっている「名ばかり管理職」に代表されるサービス残業や賃金不払いの増加など、規制緩和による競争社会の中で、働く人々の環境がこの数年でさらに悪化しているというのは否定できない大きな現実といえよう。

 それでは沖縄はどうか。全国の例に決して漏れないだろう。観光客でにぎわっているが、失業率は全国平均3%台の2倍以上の8%前後を推移して改善の兆しはないし、1人当たり県民所得も200万円台で全国平均の7割程度にすぎず、これも一向に改善されないのが現状だ。 それもそのはずで中小零細企業がそのほとんどを占めるため、労働条件や格差は全国平均より悪いのは確かだろう。

現在沖縄の最低賃金は時給にして618円となっており、そのほかに新聞業など産業別最低賃金がある。この最賃も沖縄は全国の中で最も低いとされるが、その最賃をも守らない事業所や企業が沖縄は全国に比べ多いというから驚きだ。

 それでは八重山はどうか。八重山も沖縄本島同様観光客でにぎわい、そのぶん働き口も多いはずだが、そのほとんどが中小零細あるいは個人企業となっているため、賃金は「最賃すれすれ」と不満が多いのが現状だ。これはその低賃金の改善が問題になっている介護職も同様だ。

■従業員の働きあってこそ

 それだけに自然にあこがれ移住を決めて移り住んだ本土の若者たちも「これでは暮らしが成り立たない」と移住を断念して帰る人が少なくないという。

 国サイドでも、パートの正社員への転換を求めた改正パート労働法を4月からスタートさせるなど、「格差是正」に乗り出し、さらに東京都も年収200万円以下の世帯などを対象に、独自に低所得者生活安定化プログラムを打ち出し格差是正のさまざまな対策に乗り出した。

 収入が少なくて結婚ができないという問題は決して本土だけでなく、八重山にもある切実で深刻な話だ。中小零細な企業にとっては、確かに厳しい競争社会の中で生き残りのために大変な苦労があるだろう。それは十分理解できる。しかし一方で従業員があってこその事業経営というのもまた確かだ。それだけに車の両輪として、経営者も厳しい中で従業員の賃上げアップに最大限努力し、働き甲斐のある環境づくりをすべきだろう。

 主要ホテルの中で唯一の地元資本であるホテルミヤヒラが最近、厳しい業界の中で契約社員やパートなどの年次的な正社員化に乗り出した。他の企業にもぜひ望みたい。5日は子供の健やかな成長を願ってさまざまな催しがあったが、現在の格差社会は子供の未来を憂えさせるものだ。石垣市など地方自治体も独自に、そして企業あるいは経営者に格差社会是正への取り組みをお願いしたい。

憲法語り合う 大垣で格差と貧困テーマに

2008年05月04日 中日新聞

 格差と貧困問題を考える西濃憲法集会「生きさせろ!」が憲法記念日の3日、大垣市情報工房であった。招かれた作家の雨宮処凛(かりん)さん(33)が「日本は生存競争という内戦状態だ。生存権が脅かされると、争いの元になる」と訴えた。

 若者と対談する形で進められ、約380人が聴き入った。

 若者の貧困問題に取り組む雨宮さんは、ワーキングプアの生活を紹介。「『ネットカフェ難民』になると住所不定となり、職を得にくく貧困から抜け出すのが難しい。政府が自立のための一時金を支給すべきだ」と話した。

 また「平和とは餓死することやホームレスになることを誰も心配しなくていい状態。貧困から戦争は生まれる」と指摘した。

 集会では、実行委員の一部が原告だったイラク派遣違憲判決に関しての声明も採択した。声明は「違憲と判断された自衛隊のイラクでの活動を直ちに中止し、撤退することを求める」としている。 (稲熊美樹)

連合系メーデー、非正規労働者の待遇改善を要求

2008年04月26日 NIKKEI NeT

 連合系の第79回メーデーが26日、全国34都府県129会場で開かれた。連合の高木剛会長は「低処遇のワーキングプアといわれる労働者が増えている。非正規労働問題への協力をお願いしたい」と訴えた。

 東京の中央会場となった代々木公園では約4万5000人(主催者発表)が参加した。

 連合は中央大会の式典終了後、代々木公園内で初めての「連合・非正規労働メーデー」も開催。連合は昨年、正社員中心の運動方針を大きく転換しており、新たなイベントで非正規労働問題への取り組みをアピールした。

非正規労働センター:連合広島、南区に相談窓口を開設/広島

2008年04月21日 毎日新聞 地方版 Mainichi INTERACTIVE

 連合広島(宮地稔会長)は20日、アルバイトや派遣社員などの非正規労働者の相談を受け付ける「非正規労働センター」(南区金屋町)を開設した。これまでも労働問題全般の「なんでも相談」を実施していたが、センターは非正規労働者の相談に特化し、処遇や労働条件の改善に向けた問題解決を図る。

 連合広島によると、全国の労働者約5500万人のうち3分の1の約1700万人が非正規労働者で、正社員よりも賃金が安く、働いても生活保護以下の収入しか得られない「ワーキングプア」や、時間外労働などさまざまな問題を抱えている。県内でも正社員から非正規労働者への切り替えが進んでいるという。

 センターでは、労働問題に詳しい相談員らが待機し、労働条件や組合組織作りなどについて電話相談(082・262・7755)を受け付ける。申し込みがあれば面談もできる。相談は祝日を除く平日午前9時〜午後5時。【矢追健介】

日雇い派遣:「全面禁止」民主が法案 建設などへ派遣、罰金1億円に

2008年04月19日 毎日新聞 東京夕刊 Mainichi INTERACTIVE

 民主党は格差是正を目的とした労働者派遣法改正案(要綱案)を固めた。仕事がある日だけに呼び出される「日雇い派遣」の全面禁止や、派遣労働者の賃金や年金保険料の支払いに関し派遣業者と派遣先企業が連帯責任を負うことなどが主な柱だ。23日にも「次の内閣」で正式決定し、今国会への提出を目指す。【小山由宇】

 現行法では日雇い派遣が認められている。しかし、働いても貧困から抜け出せない「ワーキングプア」の温床になっているとの批判が強まっており、改正案では全面禁止を打ち出した。

 また、現行制度では、労働者の社会保険などを派遣業者が負担することになっているが、派遣業者が違法に支払わないケースが発生しているため、派遣先の企業にも連帯責任を持たせるよう改める。

 企業が人件費抑制のため人材派遣の子会社を作り、親会社や関連会社に限定して派遣するなどの「専(もっぱ)ら派遣」も規制する。現行制度が「派遣先拡大の努力が客観的に認められない」などとあいまいな規制にとどまっているのを見直し、「提供する労働者の5分の4以上を特定の1社に派遣してはならない」と明確化する。

 罰則も強化する。現行法は港湾運送業務、建設業務などへの派遣を禁止し、違反した場合は派遣業者に100万円以下の罰金を科しているが、これを1億円に引き上げる。派遣先の企業についても、懲役1年以下または100万円以下の罰則を新設する。

 派遣対象業種は99年に原則自由化され、04年に製造業でも解禁された。

 企業は労働力の弾力化のため、派遣労働を増やし、これが若年層などの「ワーキングプア」増大を招いたとされている。

 今国会でも共産、社民両党が日雇い派遣を「人間の使い捨て」だと激しく非難。公明党の北側一雄幹事長も国会質問で「日雇い派遣の原則禁止」を福田康夫首相に提案している。

 ◇民主党の労働者派遣法改正要綱案骨子

・日雇い派遣の禁止

・専ら派遣の規制強化

・派遣元(業者)の情報公開義務を追加(派遣労働者に対し、賃金、マージン比率、派遣元の負担する社会保険料の明示を義務付け)

・就業時間数の確認を派遣元に義務付け

・社会保険料や賃金を派遣元が支払わなければ、派遣先(企業)が支払う責任を負う

・育児休業や性別を理由とした差別の禁止

・罰則の強化(罰金の最高額引き上げ)

・均等待遇原則の徹底

「普通に暮らせる社会を」 市民団体や労組が連絡会議

2008/04/16【共同通信】47News

 社会保障の基準引き下げに反対し、普通に働けば普通に暮らせる社会を実現しようと、市民団体や労働組合が16日「人間らしい労働と生活を求める連絡会議」を結成、初会議を東京で開いた。

 貧困問題に取り組む市民団体などでつくる「反貧困ネットワーク」の代表で、会議の代表世話人の1人、宇都宮健児弁護士は「生活保護の切り下げを阻止し、ワーキングプア(働く貧困層)を解消する反転攻勢の場にしたい」とあいさつ。

 7月から10月にかけて、生活保護基準の引き下げ反対などを訴える全国キャラバンを実施し、地方でのネットづくりにつなげることや、生活保護基準についての調査、研究や見直しの提言を行う調査会を設置することなどを確認した。

ネットカフェ難民5400人 50代も2割超す

2007.09.23 MSN産経新聞

 定まった住居がなく、インターネットカフェなどで寝泊まりしている「ネットカフェ難民」が全国で約5400人に上ると推計されることが28日、厚生労働省が実施した調査で分かった。20代が27%で最多だが50代も23%おり、高齢層にも広がっていることが判明。このうち半数が日雇い労働など非正規労働で日々の生計を立てているとみられるほか、失業者や無業者も全体の4割に達しているという。全国的なネットカフェ難民の実態調査は初めてで、厚労省は今後の具体的な支援策を検討することにしている。

 調査は今年6〜7月に実施。全国の24時間営業のインターネットカフェや漫画喫茶など1173店と、抽出したオールナイト利用者1664人に生活実態を調査した。

 店舗調査の結果、オールナイトで利用する人は1日あたり約6万900人と推計。多くが「パソコンなどを利用するため」(52・8%)や「夜遅くなり帰宅がおっくう」(27・8%)だったが、「住居がなく寝泊まりのため」に利用している人が7・8%いた。

 オールナイトの利用者に利用頻度を聞いたところ、「週5日以上」が17・8%、「週3〜4日」が20・1%だった。これらから、週の半分以上をネットカフェなどで泊まり歩いている住居喪失者が約5400人いると推計した。

 住居喪失者を雇用形態別にみると、アルバイトなど短期直用労働者が約1200人、日雇い労働など1カ月以内の短期派遣労働者が約600人で、長期を含めた非正規雇用の労働者は計約2700人。正社員として勤務している正規雇用労働者も約300人と推計された。また、失業中が約1300人、仕事を探していない無業者も約900人と推計した。

 厚労省職業安定局は「住居のない不安定就労者の数が、多いか少ないか、意見は分かれるところ。しかし、就職していないために住居を持てず、住所がないために就職できないという悪循環があるのは確かで、これを絶つための支援を行っていく必要がある」と話している。

111カ所の事業所閉鎖 人材派遣フルキャスト

2007年09月10日 中国新聞ニュ−ス

 人材派遣大手のフルキャストは10日、全国の事業所の約3分の1に当たる111カ所を閉鎖すると発表した。厚生労働省から違法派遣をしたとして、全事業所の事業停止命令を受けたことで業績が低迷する中、収益確保が難しい事業所を閉鎖し、経営効率化を進める。

 9月中に閉鎖し、登録者を近隣の事業所に移管する。現在、事業所は沖縄県を除く各都道府県に計316カ所。青森、佐賀、宮崎は、県内から事業所がなくなる。退去費用などを特別損失として2007年9月期決算に計上する見込み。

 フルキャストは労働者派遣法で禁止されている港湾での荷さばき業務に労働者を派遣したとして事業停止命令を受け、この日から業務を再開。8月上旬には処分を受けて07年9月期の業績予想を下方修正している。

 また、派遣労働者の給与から天引きしていた「業務管理費」を返還することになっており、これまでの集計(9月7日時点)では支払いが14億円に上っている。支払い金額が確定次第、損失を計上するという。

息子、娘を「ワーキングプア」にしない!

2007年09月09日 livedoorニュース(ゲンダイネット)

 働いても働いても暮らし向きが楽にならない……。ワーキングプア(働く貧困層)が社会問題化しているが、年収200万円以下の人は、いまや550万人(2005年調査)。団塊ジュニア世代にも多い。20代の場合、就職の段階でつまずき、スタート時から非正社員の道を歩まざるを得なかった若者がそのまま転落するケースが目立つ。親のスネをかじっているうちはいい。が、親が年金生活に入った途端、生活苦が表面化する。親にできることは何か? 「ワーキングプア」(宝島社新書)の著者で、若者の就職動向に詳しいジャーナリスト・門倉貴史氏に聞いた。

●会社を簡単に辞めさせるな

「入社2年目、正社員として働く息子が『会社を辞めようと思う』などと相談してきたら、絶対に辞めさせないことです。若者の転職は統計的に見ても成功例は少ないし、給料が下がることも珍しくない。転職を繰り返すうちに、ワーキングプアになってしまう若者は多い。ひとつの会社にずっと勤めるのは、ワーキングプア予防の意味で有効な手段です」

 辞めたことを後から知らされたりすることがないよう、離れて暮らしていても普段からメールのやりとりくらいは続けるべきだろう。

●スキルアップのためにカネを援助

 不幸にも、息子や娘がいま非正社員の親はどうするべきか。正社員になるのは簡単ではないが、正社員に一歩でも近づく、あるいはいま以上に状況を悪化させない手立てはないものか。

「非正社員は貧乏暇ナシ。スキルアップしたくても時間とカネがありません。ただ、時間はともかく、親がお金を援助することはできます。どんな企業でも通用する語学力や、インテリアコーディネーターなどの専門技術取得のためなら積極的に応援してやるべきです」

 子供が自宅通勤なら、貯蓄を勧めるのも堅実な予防手段だ。給料が安いながらも、契約が切れたときの最悪の事態に少しずつ備えておけば、一直線に転落するリスクは軽減される。

●やっぱり就職有利校か…

「子供に教育費をかけないと、ワーキングプアになるリスクは高くなります。就職時に正社員でいい会社に入るためには、いい大学を出るしかありません。そう、なんだかんだ言っても、企業の採用担当者は“学歴優先”です。つまり、自分の息子が社会人になった時点で“格差社会の下流グループ”に居ないようにするには、いい学校を卒業させるしかない。そのために、小、中学校時代から惜しみなく教育費をかけるのが正解です」

 習い事はピアノや水泳教室より、英語や学習塾が正解か。

●親元から独立させろ

 就職後は、アパートなどを借り、自立させるのも効果的だ。

「ワーキングプアは親元に居る人が多い。家賃はかからず、食事はタダ。心の甘えができがちです。自立すると、そうはいかない。ひとりで生活する緊張感があるし、月末に生活が苦しいのも実感できる。貯金や保険に入るなど金銭面で長期的な視野でモノを考えるようにもなる。家族を抱える大変さも分かってきます」

 バイトや契約社員の収入では食っていけないことを身をもって知る――。当然、仕事がキツイくらいで会社を辞めたりもできない。これも一人暮らしの効用なのだ。 【2007年9月6日掲載】

「貧困者の増大」認めず?──ジニ係数も高いのに 

2007-09-07 OhmyNews

隠しようのない不平等 厚労省「所得再分配調査報告書」下川 悦治

  厚生労働省は2007年8月24日「所得再分配調査報告書」を発表しました。3年毎の調査ですが、今回もいろいろな分析が少し強引に見えます。

1. 当初所得が平均約466万円で前回より45万円減少していることについて、報告書はコメントしていません。後の説明をみると高齢化と世帯数の増加によるということになるのでしょうか。

2.「ジニ係数は増加したが再分配機能も働いている」と分析。

 ジニ係数は当初所得で過去最大の0.5263、再分配所得のジニ係数は0.3873と格差が広がっていることを示しています。(ジニ係数は所得分配の不平等度を表す指標。所得分配が完全に平等な場合のジニ係数は0であり、1に近いほど格差が大きいことを示す)

 国際比較として、等価所得(「世帯の所得を世帯人員の平方根で除した数値」これによって得られた所得)の可処分所得でも0.3218となり、国際的にも不平等率の高い国になっています。

 しかし「2002年から2005年の上昇の要因は、世帯主の年齢構成の高齢化によるものと世帯の小規模化によるものが約9割となっている」としていますが、この間の増加だけを求めてみても、ベースとなる係数は格差拡大を示しています。

3. 社会保障制度や税の対策による「所得再分配により所得格差が縮小していることが分かる」としています。再配分後のジニ係数は0.3873で過去最大なのにそれについてはふれていないというか、高齢者が増えているから当然視しています。

4.「所得再分配によるジニ係数の改善度は、26.4パーセントで過去最高」であると、施策による改善を強調しています。

 読んでいくと政党の活動成果を誇るようなものと同じように見えてきます。

 データからみる問題点

1.貧困層の拡大―200万円未満が約38パーセント

当初所得構成比(撮影:下川悦治) ワーキングプアと言う年収200万円未満の人が労働力の3人に1人だと言われています。今回の調査でも、50万円未満が23.4パーセントで、50万円未満の人を含む200万円未満が37.4パーセントとなり、4割近い人が当初所得で生活保護水準程度の人になります。

2.「再分配」で改善されているが、格差は拡大している

 厚生労働省の分析では当初所得の低さは社会保障などで改善されているとしています。先日発表されたように介護保険利用者が初めて減少になったと自画自賛している厚生労働省ですが、昨年の改正による給付制限によるものです。

 障害者自立支援法でもそうですが、医療、福祉の受益者負担の拡大で、貧困層には社会保障による貧困が拡大していることを抽象しています。低所得者対策として障害者自立支援法や後期高齢者医療費制度でもとられていますが、導入するための反対をやわらげるための時限的なものでしかありません。今回の報告でも、低所得者に対する給付が大きいので問題ないとしています。

3.不平等度合いの拡大の国際比較

 等価所得のジニ係数でも0.3218です。OECD(経済協力開発機構)諸国と比較すると歴然としています。2004年でポルトガル0,356が最も高く、日本は0,314でワースト6位です。それでも、改善されていると厚生労働省は主張しています。いくら再分配が低所得者に厚くなっていると主張してみせても、格差が拡大していることを否定できないのに、あえて無視しようとしています。

4.地域間格差

 当初所得での地域ブロック格差としては所得が高いのは東海の550万3000円、北陸の531万7000円です。低い順からでは、北海道308万9000円、南九州の327万4000円、四国が398万9000円と200万円ほどの開きがあります。国土交通省が8月に発表した調査によると、65歳以上の住民が過半数を占める限界集落が、九州では10.7パーセントを占めています。四国圏が20.6パーセントとなっています。

 OECDの「対日経済審査報告書 2006年版」は次のように述べています。

「所得不平等と相対的貧困の縮小。人口高齢化は、不平等指標の上昇や相対的貧困の拡大の一因であるが、労働市場における二重性も重要な要素である。正規労働者に対する雇用保護の緩和などの包括的アプローチにより、非正規労働者の使用の増加を反転させるべきである。また、公的社会支出の対象を片親などの社会的弱者に、より重点化すべきである。」

 貧困の拡大・所得の不平等は隠しようのない事実だと思いますが、素直には認めたくないようです。

若者のレジャー離れ

2007/09/07 四国新聞社

 2007年版のレジャー白書によると、昨年の余暇市場は前年比1・6%減少の78兆9210億円となった。80兆円の大台を割り込んだのは1990年以来。企業の業績は好転しているといわれるが、個人消費の回復が遅れていることの表れだ。

 レジャー白書は77年に創刊され、国民の余暇活動を分析して今年で31回目の報告となる。余暇は労働と密接に結び付いており、余暇活動からもその時々における人々の生活のありようが浮かび上がる。

 余暇市場が減少した大きな要因は、公営競技などの娯楽部門の売り上げが減っているためだ。特にパチンコは前年より約1兆3000億円も減らしている。中央競馬会も9年連続のマイナスだ。

 パチンコをする人を年齢階層別に見ると、20代から40代の参加率がここ10年で10―5ポイントほど低下している。スキーやゴルフ、海外旅行などでも若い世代は減少している。白書は「若年層のレジャー離れ」が認められると指摘する。

 本来活動的である若者に、どうしてこんな減少が起きるのか。白書に分析はないが、若者の労働実態と関係はないだろうか。

 総務省の労働力調査によると、今年1―3月期平均で非正規社員は63万人増えて過去最多の1726万人。雇用者全体の3人に1人の割合だ。10年前に比べると、570万人も増えている。

 非正規社員の多くは年収が200万円未満だ。食べるだけで精いっぱいのワーキングプア(働く貧困層)にとって、ゴルフやスキーに行く余裕がどこまであるか。かくして若者のレジャー離れが進み、階層分化が目立ち始めた日本の姿が見えてくる。

「ネットカフェ難民」って言わないで 業界団体、イメージ回復に必死

2007年09月06日 ITmedia (ZAKZAK)

「ネットカフェ難民」という言葉は使わないで──ネットカフェなどの業界団体が「お客は難民ではない」と反発。厚労省の調査などを「問題の本質をあやふやにしているだけ」と批判している。

 全国のインターネットカフェや漫画喫茶約1400店が加盟する「日本複合カフェ協会」(JCCA)が、最近の報道で用いられる「ネットカフェ難民」について、使用差し止めを求める声明を発表した。難民の定義を「戦禍・政難を避けて放浪する亡命者」とし、「お客様は“難民”ではない」と主張する業界団体の言い分とは…。

 「厚生労働省の不安定就労者の実態調査に際し、協力の打診がありましたが、すぐにお断りしました。入り口から『難民ありき』という役人的発想の調査に、協力なんてできるわけないじゃないですか!」

 ネットカフェ業界の第一人者で、JCCA顧問の若林修氏(56)はこう怒りをぶちまける。

 「ネットカフェ難民」という言葉が一人歩きした発端は、今年3月、共産党議員が柳沢伯夫前厚労相に「懸命に働いてもアパート代が払えず、インターネットカフェで寝泊まりする“ネットカフェ難民”が急増している」と質疑したことからだ。以降、この言葉に対する各店舗のアレルギーは強烈だという。

 「少しでも女性客を増やすよう健康的な店舗づくりに腐心してきましたし、教育関係者から目の敵にされた時も、業界独自のガイドラインを作成して粘り強く説明してきました。そんな企業努力が“難民”というインパクトある言葉によって、再び汚らわしいイメージだけが先行した時代に逆戻りしてしまう」

 ただ、深夜を中心に24時間格安で過ごすことができるネットカフェに、職を求めている人や居住地が定まらない人が集まっているのも事実だ。若林氏は「若者の労働環境の問題として論じるならば社会的意義もあるが、『ネットカフェ難民』として括ることは、問題の本質をあやふやにしているだけ」と反論する。

 ただし、一部地域のJCCA未加盟店舗では、いまだに眉をひそめたくなるような行為に頭を悩ませているという。

 東京・蒲田で5月まで店長を務めていた男性(34)は重い口を開く。

 「ハッキリいって日雇い労働の派遣事務所状態です。店内で寝泊まりする“常連さん”たちが、朝方ブローカーからの携帯の指示で派遣先へ移動。夕刻に戻り、そのまま自分の個室に戻る。指示がない雨の日などは一日中“待機”しているため、200円でシャワーが使えるのに、店内にはいつも、すえた臭いが充満していました」

 JCCA未加盟店では、完全個室禁止や防犯カメラ設置、年齢制限措置などのガイドラインも一切関係なく、一時は広めの個室に3段ベッドを据えて対応したこともあったという。このように、劣悪な店舗も都市部を中心に一部存在しているのだ。

 ネットカフェの未来像について若林氏は、「高齢者や主婦、子供も“第二の書斎”として気軽に健全に訪れることができる場にしていくべきでしょう。ネットを通じた地域への就職情報提供や生涯学習などに貢献する施設を目指します」と語る。労働問題にも積極的に取り組むと宣言した添厚労相も、まずは一晩、ネットカフェに泊まってみてはいかがか?

【明解要解】なぜ日本の「最低賃金」は低いのか?

2007/09/05 The Sankei Shimbun WEB-site

 厚労省の中央最低賃金審議会の答申を受け、各地方では最低賃金の改定審議が進められている。今年はワーキングプア(働く貧困層)が増え続けている実態を念頭に、近年にない大幅なアップが図られる見込みだが、それでも先進国の中では最低水準にある。そもそも何故、日本の最低賃金は低いのか?(地方部 佐渡勝美)

 中央最低賃金審議会が示した最低賃金の目安額は、全国平均で14円(時給)アップの687円。各都道府県をA〜Dランクに分け、A(東京、大阪など5都府県)19円▽B(埼玉、京都など10府県)14円▽C(北海道、福岡など16道県)9〜10円▽D(青森、沖縄など16県)6〜7円を、引き上げ額の目安とした。

 目安に強制力はないが、各都道府県の地方最低賃金審議会は、おおむね目安に沿った額を最終決定するのが通例だ。すでに東京(20円アップ)や大阪(19円アップ)などでは最終答申が出され=表、近年、1〜5円のアップ(全国平均)で推移してきた状況は様変わりしている。

 背景には、一部の地域では最低賃金で働いても、生活保護費にも達しないといった不条理が生じていることがある。

先進国の中で突出

 先進国の中でも、日本の最低賃金の低さは突出している。英国やフランスは時給1200円前後の水準にあり、従来、先進国中最低だった米国も今年、5ドル15セントから7ドル25セント(約850円)に2年間で引き上げることを決めたため、早晩、日本が最低になる。

 日本の最低賃金が低い理由の一つは、最低賃金法が制定された(昭和34年)際、18歳の単身者の賃金を基準に最低賃金を定めたという経緯にある。年功序列が確立されていれば、最初は低くても社会問題とはならない。また、18歳前後では親と同居していることが多いため、そもそもが一人で自活できる額では設定されていなかった。さらに最低賃金法は、決定基準に企業の「支払い能力」が考慮されると定めるなど、常に雇用者側の意向が強く反映される形で最低賃金は決められてきた。

 欧州では、決定要件に企業の支払い能力はなく、尊厳ある最低限の生活が確保できる額という概念が初めにありきだ。支払えない企業は市場から退出してもらうという考えが基本になっている。

1円上げるのもつらい

 年功序列・終身雇用の崩壊、非正規雇用の増加など、労働環境が大きく変わりつつある日本では、与野党ともに最低賃金の根本的引き上げが必要との認識では一致している。民主党は中小企業支援とセットで、段階的に1000円に上げる構想を掲げている。しかし、現況では地方の中小企業にとって、1円であっても上げるのはつらい。

 すでに新規の最低賃金を答申している都道府県はA〜Cランクの地方ばかりで、Dランク(現行610円台)の地方はほとんどない。いずれも1円刻みの激しい攻防で、8月以降、何回も審議会を重ねているのが現実でもある。

主な地域別最低賃金の改定状況

 東 京 739(719)

 神奈川 736(717)

 大 阪 731(712)

 愛 知 714(694)

 千 葉 706(687)

 埼 玉 702(687)

 岐 阜 685(675)

 栃 木 671(657)

 長 野 669(655)

 富 山 666(652)

 茨 城 665(655)

 群 馬 664(654)

 新 潟 657(648)

 北海道 654(644)

 香 川 640(629)

 宮 城 639(628)

 長 崎 619(611)

※金額は各都道府県の地方最低賃金審議会が答申した時給。カッコ内は現行額

地域別最低賃金の全国平均額の推移

平成 8年 623(1.96)

   9年 637(2.25)

  10年 649(1.88)

  11年 654(0.77)

  12年 659(0.76)

  13年 663(0.61)

  14年 663(0.00)

  15年 664(0.15)

  16年 665(0.15)

  17年 668(0.45)

  18年 673(0.75)

  19年 687(2.08)

※カッコ内は引き上げ率(%)。19年は中央最低賃金審議会が示した目安額

              ◇

最低賃金 雇用形態を問わず、国が定めるすべての労働者の最低限度の賃金。地域別と業種別に決められる。例年、7月下旬に厚労省の中央最低賃金審議会が目安額を決め、8〜9月に各都道府県で目安に沿って最終改定審議が行われ、10月中に発効する。

              ◇

 一線記者がニュースの背景にせまり、わかりやすく解説します。読者の質問、疑問にもお答えします。ファクス03・3242・7745か、Eメールでspecial@sankei.co.jpへ。

森永卓郎:ネットカフェ難民がスラムをつくる日

2007年09月03日 nikkei BPnet Safty Japan

 厚生労働省は8月28日、いわゆる「ネットカフェ難民」の実態調査の結果を明らかにした。ネットカフェ難民とは、家を持たずに、終夜営業をしているネットカフェや漫画喫茶に寝泊まりしている人たちのことだ。

 最近のネットカフェや漫画喫茶は、単にマンガが置いてあってインタ−ネットが使い放題というだけではない。自分のスペースが個室に近い形で仕切られていて、シャワーも完備されているから、そこで暮らすことが十分に可能なのだ。しかも一晩いて1500円程度の店も多く、都心に近い場所に立地しているから交通も便利である。

 典型的なネットカフェ難民は、普段はネットサーフィンをしたりマンガを読んだりしていて、派遣先から仕事の依頼メールが携帯に届くと働きに出るという生活を繰り返しているのである。

 厚生労働省の実態調査は、全国のネットカフェ、漫画喫茶3246店舗に対して電話で行われた。それによると、推計されるネットカフェ難民の数は5400人。店舗からの聞き取り調査をもとにしているために、実際はもっと多いはずだという意見もある。

 しかし、数自体はともかくとして、わたしが衝撃を受けたのは、その中身であった。
ネットカフェ難民の半数近くが中高年だった

 わたしはこれまで、ネットカフェに寝泊まりしているのは若い男性がほとんどだろうと思い込んでいた。実際に、テレビや新聞で取り上げられるのは、そうした例ばかりだから、それが典型例だと頭に焼き付けられていたのである。

 ところが、年齢別の構成比を聞いて驚いた。

 20代が26.5%と最も多いのは想像できた。しかし、それに次ぐのがなんと50代で、全体の23.1%もいるのである。そして、30代が19.0%、40代が12.8%と続き、60代も8.7%いた。

 つまり、40代以上の中高年が、半数近くを占めていたのである。それだけではない。女性が17.4%いたことにも、わたしには驚きであった。ネットカフェ難民はけっして若い男だけの現象ではなかったのだ。

 一方で、イメージ通りだった結果もあった。それは、アルバイトや派遣などの非正規労働者が約2700人と圧倒的多数を占めていたことである。その他、職を探している失業者が約1300人、職を探していない無業者が約900人、正社員が約300人だった。

 非正社員と失業者が圧倒的に多いという点では、フリーターと完全に層が重なっているといっていい。ただネットカフェ難民の生活スタイルは、従来型のフリーターとは明らかに異なっている。それは、先にも述べたように、彼らはネットカフェに生活基盤を置いているという点である。

 そう考えていくと、ネットカフェ難民は、フリーターよりもむしろ、ある別の存在に近いことに思い当たる。
日雇い労働者化しているネットカフェ難民

 自分の家が持てず簡易な宿に寝泊まりし、仕事が見つかったときだけ働きに出る ―― これは、ドヤ街と呼ばれた地域の簡易宿泊所で寝泊まりをしていた、主として日雇い労働者と呼ばれていた人たちのワークスタイル、ライフスタイルと変わらない。

 しかし、わたしはむしろ簡易宿泊所のほうが、はるかにましではないかと思うのだ。なぜなら、簡易宿泊所には横になって休めるベッドやふとんもある。ところが、ネットカフェにはそれがない。せいぜい椅子をリクライニングさせて眠るくらい。最近では簡易なベッドを設けているネットカフェもあるそうだが、それは例外的である。

 人間の健康にとって大切な「きちんと眠る」ことさえできないとは、これほど悲惨な生活があるだろうか。しかも、個室とはいうが、囲いでおおわれているだけで上部は筒抜けなのだ。だが、今や、そうした生活しかできない人が増えているのである。

 ネットカフェ難民という言葉からして、どことなく優雅なイメージを持っていた人がいるかもしれないが、そんなことはけっしてない。ネットカフェ難民は、日雇い労働者の現代的な形であり、しかもさらに悲惨なのである。

 もちろん、ネットカフェや漫画喫茶にもピンからキリまであり、すべてが簡易宿泊所化しているわけではないことはお断りしておきたい。終夜営業を行っていないネットカフェや漫画喫茶もある。
なぜネットカフェから脱出できないのか

 では、なぜ彼らはそこから脱出しようとしないのか。「努力が足りない」と簡単に片づける人もいるようだが、そうではない。実際にネットカフェ難民の支援者の話を聞いたことがあるが、ネットカフェ難民のほとんど全員が、現状からの脱出をしたがっているという。だが、それは非常に困難なのである。

 その理由は二つある。

 一つは住所がないことだ。住所がなければ正社員としての就職もままならない。しかし、家を借りようにも現住所がないことには、なかなか貸してもらえない。禅問答のようだが、家がないから家が借りられないのだ。そのために、正社員になって安定した金をかせぐことができないのである。

 もう一つは、まとまった金を持ち合わせていないことである。都会で家を借りようとすると、敷金、礼金、家賃前払いなどで40万〜50万円、どんなに安くても10万円はかかる。ネットカフェ難民は、日雇いの仕事によって普段暮らしていく金は稼げても、そうしたまとまった金は用意できない。それがネットカフェから脱出できなくなる最大の理由なのだ。

 いったんこの境遇に落ち込むと、本人がいくら努力しても容易に抜け出せない、いわば「アリ地獄」のような状況がネットカフェ難民なのである。

 先日、自力で難民脱出に成功した人が1人だけいたという話を、ネットカフェ難民の支援者から聞いた。その人は、パチンコをやってたまたま確変(確率変動)を連発して大もうけし、家を借りる資金を得たのだそうだ。

 逆に言えば、ギャンブルにでも当たらない限り、抜け出すのは困難なのである。
新しい形のスラムが出来ようとしている

 フリーターやニートが250万人規模で存在するのに比べると、ネットカフェ難民の数はまだまだずっと少ない。しかも、ネットカフェ難民という言葉が連想させる、自由気ままなイメージにごまかされて、これをたいした社会問題ではないと思っている人が多いようだ。

 しかし、それは間違いだ。この問題を放置すると大変なことになるとわたしは考える。というのも、これは形を変えたスラムだとわたしは思うからだ。「いくら努力しても悲惨な境遇から抜け出せない」という人たちが集まることで、現代日本には存在しなかったスラムが、今、出来ようとしている。そしてそれは、従来の形のスラムとは違った、いわば地域横断的な新しい形の「分散型スラム」である。

 スラムには社会不安や犯罪の種がまかれる。早いうちにその芽をつまないと、あとで取り返しのつかないことになるだろう。

 厚生労働省も事態を重くみて、ネットカフェ難民が金をためられるように、資金管理の支援をするという。だが、それよりも大切なことは、彼らが住む場所を得られるようにアパートを借りる資金を融資することではないだろうか。

 ネットカフェ難民はニートやホームレスとは違い、ある程度の仕事の能力を持ち、仕事をしたいと思っている人が多い。いったん家を借りさえすれば、毎日の生活をするだけの金は稼げるのだ。

 彼らは働きたがっている。要は、住所さえ確保すればなんとかなる話なのだ。言ってみれば金で済む話なので、ニートやホームレス対策よりはるかに解決は簡単なのである。

 「再チャレンジ」を標榜する政府ならば、少なくとも働く意欲のある人に対して、できるだけ早く救いの手を差し伸べてほしいと思うのだ。

カフェ難民*「貧困」を放置できない

2007年08月30日 北海道新聞

 住居がなく、低賃金の短期雇用の仕事をしながらインターネットカフェに寝泊まりする「ネットカフェ難民」が増えている。

 初の実態調査を行った厚生労働省は、二十代を中心に全国で五千四百人に上ると推計している。

 半数は日雇いを中心とする非正規雇用の労働者だ。平均月収は東京で十一万円、大阪で八万円にとどまる。

 研究者によると、この数字は氷山の一角だ。ネットカフェをすみかにしている人が多いことに驚かされる。

 働いても生活保護以下の収入しか得られない「ワーキングプア層」の一つの断面と言えるだろう。

 厚労省は全国八十七店の宿泊者千六百人余にアンケートしたほか、東京、大阪の店舗前で聞き取りをした。

 住む家を失ったのは「仕事を辞めて家賃が払えなくなったから」との理由が東京で三人に一人を占める。

 人員整理や、正社員から非正規雇用への切り替えによって職場を去った例が多いのではないかと推測できる。

 求職活動をしても、「履歴書に書く住所がない」ことがハンディになる。雇用は不安定で、四割強が路上生活を経験している。これでは、ホームレスかホームレス予備軍ではないか。

 安心して住める場所を確保するために何ができるのか、政府と企業、地域社会が知恵を絞らなくてはならない。

 たとえば、東京都はホームレスへの支援事業として、自立が見込める場合は新たに入居するアパートの家賃の一部を一定期間補助している。

 政府や地方自治体も考えてほしい。家賃や敷金補助のほか、公的施設の提供といった対応が必要ではないか。

 今回の聞き取りでは「職業訓練を受けたい」との希望が出ている。技能習得の機会をつくり、修了までの間の所得を保証することも検討課題だ。

 大切なのは、個々の事情を考慮しつつ、自立をいかに支援するかだ。

 全体像を把握するため、厚労省はさらにきめ細かい調査をしてほしい。

 「日雇い派遣」などの非正規雇用の待遇改善と賃金の底上げなしに、問題を解決するのは難しい。

 同時に、日雇い派遣のような働き方を可能にした規制緩和のあり方をあらためて検証すべきだ。

 働いても衣食住を賄えるだけの賃金をもらえない社会はいびつだ。格差を超えた「貧困」をこれ以上放置することはできない。

 中高齢者を中心に健康を害している人については、生活保護の受給を促す必要があるだろう。

 ネットカフェ難民の大半は地方から大都市に出た人だ。選挙権を行使しようにも帰省する金がない場合が多い。

 声なき声に耳を傾け、一人一人が生きがいを見いだせるような施策を実行に移す時だ。

「ネットカフェ難民」は差別語 「客の足遠のく」 業界団体が声明

2007年08月30日 西日本新聞朝刊

 全国のインターネットカフェや漫画喫茶約1400店が加盟する「日本複合カフェ協会」は29日、「ネットカフェ難民」は差別語だとする声明を発表した。

 声明は「(客の中には)定職に就くことが難しい方もいらっしゃるでしょう。しかし、複合カフェにとっては大事なお客さまなのです」とした。一方で「あたかも浮浪者風情の人が夜な夜なネットカフェに集まっているかのような報道が、多くのお客さまの足を遠のけていることに配慮いただきたい」ともしている。

 ネットカフェ難民は、日雇い仕事などをしながらネットカフェを泊まり歩く人を指す。厚生労働省は28日、全国に約5400人いるとの推計を発表した。

ネットカフェ難民 自助努力では済まない

2007/08/29 中国新聞ニュ−ス

 二十四時間営業しているインターネットカフェや漫画喫茶には、夜間割引を利用した「泊まり客」が多い。ところがその顔ぶれが変わりつつある。

 広島市のある店では、当初は終便に遅れた人などいちげん客が中心だった。しかし二年前ごろから若い人が常連になり始め、今では十人前後にもなる。「ここから仕事に出かけるなど家代わりにしている人もいる」と店長は言う。

 いわゆるネットカフェ難民を対象に、厚生労働省が初めての調査をした。決まった家がなく週の半分以上をこうした場所で寝泊まりする「住居喪失者」を、全国で五千四百人と推計している。二十歳代、次いで五十歳代が際立つ。

 こうした人たちは、一晩千―二千円のネットカフェだけでなく、もっと安く過ごせるファストフード店や路上にまで泊まる場所を求めていることも分かった。

 とすれば「実質的にはホームレスと同じ」(首都圏青年ユニオン)といえよう。背景にあるワーキングプアの問題を考え合わせれば、もう「自助努力を」と言って済む問題ではない。

 調査では、ネットカフェ難民の半数はアルバイトや派遣など非正規雇用だった。必ずしも毎日仕事があるわけではなく、手取り収入の平均は東京で十一万三千円。日々の生活だけでも相当苦しい。

 ましてここを出てアパートを借りるとすれば、何カ月分もの敷金など多額の金が要る。その金を稼ぐためにいい仕事を探そうとしても、履歴書に住所が書けないことが支障になる。

 親や縁者の助けがあればともかく、そうでないともう悪循環だ。その中で将来に希望を見いだすことも困難になりかねない。

 まず必要なのは「住居の保障」だろう。一時金の貸し付けなどとセットにした家賃の補助を考えてもいい時期ではないか。あるいは若い単身者向けの公営住宅も選択肢にあがっていい。今や若い人のある層については「弱者」ととらえる発想が、行政に必要だろう。

 もちろん根本的には、企業がちゃんとした賃金を支払い、非正規雇用を減らす政策が求められることは言うまでもない。

 中国地方では、まだ親などの助けが得られやすく、今回調査した大都市圏ほどの状況ではないかもしれない。しかし親世代の力ももうそんなに強くはない。何らかの理由で難民化した人の立ち直りの道筋を、早めに示しておきたい。

医師確保に765億円 ネットカフェ難民支援も 厚労省概算要求 The Sankei Shimbun WEB-site

 厚生労働省は28日、平成20年度予算で一般会計総額の概算要求が22兆1604億円(本年度当初予算比3.2%増)となったと発表した。地方を中心に深刻な医師の不足や偏在に対応するため、医師確保対策などの関連経費に765億円(17.7%増)を計上した。

 このうち、国が主導して緊急に医師を派遣するシステムに30億円。新たな施策として、交代勤務制などを徹底し、過重労働を解消した病院に補助金を支給する事業(13億円)、離職した女性医師の復職を支援するため病院などで実施される研修費に5億円を要求。

 一方、がん対策の総合的な対策費は33.0%増となる282億円。政府が6月に閣議決定した「がん対策推進基本計画」に基づき、10年以内に75歳未満のがん死亡率を20%減らすことなどに取り組む。

 このほか、糖尿病などの生活習慣病を未然に防ぐ特定健診・特定保健指導を推進する事業に571億円、中国残留孤児への生活支援給付金など支援策に355億円なども計上した。

 労働関係では、ネットカフェに寝泊まりする若者への就職支援に1億7000万円を要求した。

 社会保障関係費は、自然増分7500億円のうち2200億円の削減を求められており、年末の予算編成までに、公定薬価の引き下げや、価格の安い後発医薬品(ジェネリック)の使用促進、中小企業の従業員が加入する政府管掌健康保険への国庫負担分の削減などで具体策を確定する。

「お客様は難民ではない」ネットカフェの業界団体が声明

2007/08/28 INTERNET Watch

 お客様を「ネットカフェ難民」と呼ばないで──。最近の報道などでよく用いられるようになったこの言葉について、日本複合カフェ協会(JCCA)が使用を止めてほしいと訴えている。

 JCCAはインターネットカフェやマンガ喫茶の業界団体で、加盟企業は8月末で235社、各社が運営する店舗は全国に1,361店ある。JCCAによると、「ネットカフェ難民」についてのセンセーショナルな報道の影響により、風評被害で実際に利用者が減っている店舗もあるという。加盟企業から協会としての公式声明を求める声もあって、7月17日には「いわゆる『ネットカフェ難民』について」という文書をJCCAのサイトに掲載。そもそも「難民」とは「戦禍・政難を避けて放浪する亡命者」だとする「広辞苑」の定義を紹介しながら、「一般社会と隔たりのあるケースにおいて『○○難民』と安易に定義づける傾向を私たちは危惧している」などとコメントしている。

 なお、JCCAによれば、深夜にネットカフェを利用する人の中には定職に就くことが難しい人もいることは認めており、地域によってはその数が多いこともあるという。ただし、これを大きな社会問題だとする見方には疑問を投げ掛けるとともに、「お客様は難民ではない」(JCCA)と強調している。

 厚生労働省が8月28日に公表した「住居喪失不安定就労者の実態に関する調査」では、ネットカフェなどに寝泊まりしながら不安定就労に就いている人の実態を報告している。この調査にあたっては、JCCAにも協力の打診があったが、「ネットカフェ難民ありき」の調査だとしてJCCAでは協力を断わったという。 ( 永沢 茂 )

「将来不安、3時間しか眠れず」ネットカフェ難民

2007年08月28日 人民日報社「asahi.com」

実態が把握しにくいネットカフェで、事実上ホームレス状態の新たな貧困層が確実に広がっていた。厚生労働省の「ネットカフェ難民」実態調査が示した深刻な結果に、専門家からは早急な対策を求める声が相次いだ。

「将来が不安で、毎晩3時間ほどしか眠れなかった」。6月まで、東京・浅草や池袋のネットカフェで寝泊まりしていた男性(40)は振り返る。

地元に仕事がなく、派遣社員として食品工場で働くため、今年4月に東北から妻(27)と2人で上京。だが工場では、深夜から早朝にかけての労働時間が、面接での約束より長いうえ休憩もなし。最初の3カ月は社会保険もなく、夫婦で会社の寮を飛び出した。残金1万3000円を手にネットカフェに泊まり、求人雑誌で仕事を探した。

まもなく妻は旅館の住み込みの仕事が見つかったが、男性は複数の日雇い派遣会社に登録。書籍発送や引っ越し作業などを続けたが、腰を痛めて働けなくなり、8月から生活保護を受けている。

こうした東京のネットカフェ難民300人に対する厚労省の今回の聞き取り調査では、48.6%が日雇い労働に従事。毎月の支出は食費が平均2.5万円、宿泊費2.4万円。住まいを得られないのは「敷金など初期費用を貯蓄できない」(66.1%)、「家賃を払い続ける安定収入がない」(37.9%)と、低賃金が一番の壁になっている。

厚労省は来年度からネットカフェ難民向けの相談窓口を設け、職業紹介や無料技能講習の紹介などを始める。だが、NPO法人「自立生活サポートセンターもやい」の湯浅誠事務局長は「就労支援だけでは解決は難しい。職業訓練の間の生活費、住居費をどうするか。日雇い雇用保険の適用など、既存の制度で使えるものもあるはずだ」と指摘する。

今回の調査は、こうしたホームレス状態が若年層にも広がっている現実を行政にも突きつけた。独協大学の森永卓郎教授は「非正規雇用の拡大で、新たな貧困層がネットカフェに集まっており、放置すればスラム化の恐れもある。今なら敷金や家賃の無利子融資など、わずかな支援で生活を立て直せるので、早急な対策が必要だ」と訴える。

ネットカフェ難民「自力で脱出は困難」 その日暮らし、貯金なく

2007年08月28日 ITmedia(産経新聞)

 いわゆる「ネットカフェ難民」は全国で約5400人いると推計されることが、厚労省が実施した初の実態調査で分かった。経験者は「いったん落ち込むと抜け出すのは難しい」と振り返る。

 住居がなくインターネットカフェなどで寝泊まりしている人が全国で約5400人いると推計されることが28日、厚生労働省が実施した調査で分かった。このうち半数の約2700人が、日雇い労働など非正規労働で生計を日々立てているとみられる。全国的な「ネットカフェ難民」の実態調査は初めてで、厚労省は今後の具体的な支援策を検討することにしている。

 調査は今年6〜7月に実施。24時間営業する全国のインターネットカフェや漫画喫茶など1173店と、抽出したオールナイト利用者1664人に生活実態を調査した。

 店舗調査の結果、夜から朝までオールナイトで利用する人は1日あたり約6万900人と推計。多くが「パソコンなどを利用するため」(52.8%)や「夜遅くなり帰宅がおっくう」(27.8%)だったが、「住居がなく寝泊まりのため」が7.8%いた。

 オールナイトの利用者に利用頻度を聞いたところ、「週5日以上」が17.8%、「週3〜4日」が20.1%だった。これらから、週の半分以上を常連的にネットカフェなどで過ごしている住居喪失者が約5400人いると推計した。

 住居喪失者の雇用形態別の内訳は、アルバイトなど短期直用労働者が約1200人、日雇い労働など1カ月以内の短期派遣労働者が約600人で、長期を含めた非正規雇用の労働者は計約2700人。正社員として勤務する正規雇用労働者も約300人と推計された。また、失業中が約1300人、仕事を探していない無業者も約900人と推計した。

 厚労省職業安定局は「住居のない不安定就労者の数が、多いか少ないか、意見は分かれるところ。しかし、就職していないために住居を持てず、住所がないために就職できないという悪循環があるのは確かで、これを絶つための支援を行っていく必要がある」と話している。

ネットカフェ難民「自力で脱出は困難」 その日暮らし、貯金なく

 厚生労働省が全国に約5400人いると推計したネットカフェ難民。経験者は「いったん落ち込むと抜け出すのは難しい」と振り返る。4割が路上生活を経験しており「ホームレスの一形態」とみる支援者もいる。

 「実際にはもっと多いんじゃないか」

 3カ月前まで東京で日雇い派遣労働者として働きながら、1年以上にわたってインターネットカフェで暮らしていた20代の男性は話す。

 男性はかつての生活を、「路上生活とアパート暮らしの中間」と表現する。「テレビもパソコンもあって、そこそこ快適だから『これでいいか』と思っちゃう部分がある」

 厚労省の調査では「敷金など入居費用の貯蓄の難しさ」が原因で住居が確保できないとの回答が多かったが、男性も「その日暮らしで貯金は無理。自分の力だけでは脱出できない」と振り返る。男性の場合、実家に帰ることで生活を立て直したという。

 大阪でホームレスを支援する「野宿者ネットワーク」の生田武志代表は「仕事が途絶えれば、すぐに路上生活。ホームレスの一形態ととらえるべきだ。若年ホームレスの増加につながっていく恐れがある」と指摘する。生田さんは「行政は、不安定就労の労働者がネットカフェ生活に入る前の早い段階で支援することを考えてほしい」と求めた。

ネットカフェ難民5400人 初の調査、20代が最多

2007/08/28 中国新聞ニュ−ス

 住所不定でインターネットカフェを泊まり歩く「ネットカフェ難民」が全国で約五千四百人に上るとみられることが二十八日、厚生労働省の初の実態調査で分かった。二十代が27%で最多だが、五十代も23%おり、高齢層にも広がっていた。半数が日雇いの仕事で、低賃金の不安定な働き方が背景にあることも裏付けられた。

 厚労省はハローワークとホームレス支援の民間非営利団体(NPO)の連携を進め、社員寮付きの仕事を紹介するなどネットカフェ難民の就労支援に取り組む方針。

 六―七月に全国のネットカフェ八十七店の宿泊客約千七百人にアンケート。これとは別に東京、大阪の店の前で三百六十二人に聞き取りをした。

 その結果、ネットカフェの客で「住居がなく寝泊まりするために利用している」のは8%。これを全国の宿泊利用者推計数にかけて約五千四百人と算出した。

 就業形態をみると、東京では職場で直接雇用される日雇い労働者が35%、日雇い派遣労働者が14%。契約が一カ月未満の人も含めると短期労働者が58%を占めた。失業者も17%いた。

 平均月収は東京で十一万円、大阪で八万円。40%以上が路上生活を経験していた。

 東京で住む家を失った理由は「仕事を辞めて家賃が払えなくなった」が33%、「仕事を辞めて寮や住み込み先を出た」が20%。住居確保の問題点(複数回答)は「敷金など入居費用の貯蓄の難しさ」が66%、「入居後に家賃を払い続けられるか不安」が38%だった。

 厚労省は同時に日雇い派遣労働者約千七百人への調査も実施。平均月収は約十三万円。希望する雇用形態を年齢別に聞くと、二十代後半と三十代の男性は「正社員」が最も多く、若年層がやむを得ず不安定な仕事についていることが分かった。

『ワーキングプアの逆襲だ』派遣労働者26人 天引き給与返還を グッドウィルを集団提訴

2007年08月24日 東京新聞朝刊

 人材派遣最大手「グッドウィル」(東京都)の給料天引き問題で、同社に登録する日雇い派遣労働者二十六人が二十三日、天引きされた給与計約四百五十五万円の返還を求める訴訟を東京地裁に起こした。

 訴状によると、同社は一九九五年の創業時から、派遣スタッフが一回勤務するごとに、「データ装備費」の名目で給料から二百円を天引きし、スタッフの安全装備の購入や個人情報の管理のために、社で一括加入する民間保険料の一部に充てたと説明していた。しかし、安全装備は本来、同社が負担すべきで、派遣スタッフの待遇改善に使われた事実は見当たらず、「徴収(天引き)は任意の同意」としながら派遣スタッフが拒むことはできなかったという。

 訴えたのは、二十−四十代の男性。原告一人当たりの天引き額の最高は八年間で約四十万円だった。同様に天引きしていた業界二番手の「フルキャスト」は全額を返還する方針を示したが、グッドウィルは、賃金請求権の時効を理由に、過去二年分に限って返還するとしている。

 グッドウィルは「当社の主張については裁判において明らかにする」としている。

フルキャスト事業停止 グッドウィルにも違法派遣の疑惑(1)

2007/08/22 週刊東洋経済TKプラス

日雇い派遣業界の両雄が激震に見舞われている。フルキャストは初となる全事業所での事業停止命令を受けた。最大手のグッドウィルでも重大な違法派遣の疑いが強まっている。(『週刊東洋経済』8月25日号より)

 ワーキングプアの温床ともされる日雇い派遣の事業者に厳罰が下った。厚生労働省東京労働局は業界2位のフルキャストに対し、労働者派遣法で禁止業務とされている港湾運送に人材を派遣したとして、全事業所に対し1カ月の事業停止命令を出した。同様の命令は昨年10月にクリスタルグループ(現グッドウィル・プレミア)の傘下企業に出されて以来で、全事業所の事業停止という事態は初めてのことだ。

 東京労働局の浅野浩美・需給調整事業部長は「今年3月の事業改善命令後に再発防止の十分な取り組みが行われていると確認できなかった」ことを処分の理由に挙げる。同社は全国の事業所で、やはり禁止業務である建設作業などへの派遣を繰り返したとして改善命令を受けていた。同社は「顧客からの発注書内容に疑問を持たず、禁止業務への派遣を未然に防げなかった」とする。が、「少し注意すれば港湾運送業務だとわかる内容だった」(浅野部長)。

 確かに、現場の神戸港新港第2突堤を訪れると、派遣労働者が荷さばき作業に従事したコンテナは岸壁近くに位置していた。関係者は「誰が見ても港湾業務。大っぴらすぎて驚いた」と苦笑する。フルキャストの平野岳史会長は「港湾など禁止業務を想起させる発注に自動的に警告を発するシステムを構築した」と7月末の会見で胸を張っていたが、実際にはその導入は遅すぎた。

 フルキャストの登録者は174万人。1日に約1・2万人が稼働する。スタッフの5割はフリーターで、日当は貴重な生活費。だが、日雇いという就労形態の性格上、休業手当の対象とはならない。社会保険の加入義務のある登録者はわずか数%で、失業保険の対象ともならない。日雇い労働者を対象とした保険の導入について厚労省の腰は重い。日雇い派遣の実情に詳しい「派遣ユニオン」の関根秀一郎書記長は「日雇い派遣労働者は無保険状態のまま放置されている」と懸念する。

 度重なる規制緩和でほぼすべての業務への派遣が認められるようになった中でも、港湾運送への派遣は禁止されている。港湾労働法で特別の雇用調整制度が設けられているのがその理由だ。加えて、港湾業務は戦前から「労働ボス」などによる不当な労働者支配や中間搾取が行われてきた典型業種でもあったためだ。また、安全確保の問題も大きい。厚労省の調査によれば港湾における死亡災害は2006年で14件発生しており、増加傾向にある。仕事内容も未経験者には勤まらない重労働が多く、派遣先の業務内容の確認も不十分になりがちな日雇い派遣事業者が扱うには危険性が高い。

 実際に深刻な労災事故は発生している。今年2月、日雇い派遣最大手のグッドウィルと雇用契約を結び、三井倉庫の現場で作業をしていた男性(27)は左脚を骨折、3本の靭帯も切れる重傷を負った。仕事は陸揚げされたコンテナから重さ25キログラムの袋をパレットに積んでいく作業。高さ1・2メートルまで積み上げる作業を朝8時半から夕方5時まで繰り返し、もらえるのは8500円。

 日給からは毎回200円が「データ装備費」として控除された。男性は事故が起きるまで、それを必要経費と思っていた。業務上の事故に備え、スタッフが運営する安全共済の掛け金であると説明されていたためだ。ところが事故後、見舞いに来たグッドウィルの支店長にこの話を持ち出すと、「(安全共済の)保険はない。今回は(事業所が加入する)労災(保険)で賄う」と言われた。今も男性はリハビリを続けているが、担当医からはひざに負担のかかる仕事は当面難しいと告げられている。

フルキャスト事業停止 グッドウィルにも違法派遣の疑惑(2)

2007/08/22 週刊東洋経済TKプラス

「特殊手当」が語る違法認識の可能性

 実はこの労災の裏側には複雑な雇用関係も横たわっていた。男性は人材派遣会社の東和リース(東京都港区)に派遣されたことになっている。だが実際に働いたのは三井倉庫の現場で、しかもその作業を請け負っていたのは港湾業者の笹田組(横浜市中区)だった。男性によれば「仕事の指示はすべて笹田組の所長から受けていた」という。

 東和リースと笹田組は男性の就労実態が「偽装請負」であったことを認める。グッドウィルは港湾運送という禁止業務への派遣に加え、職業安定法違反の二重派遣まで行っていたことになる。厚労省幹部は「派遣元はスタッフの労働実態を把握する義務がある。法の無知は法違反の理由とはならない」と言い切る。

 さらに男性は罹災の数日前に船内作業にも従事していた。勤務後に「船で働きました」と支店に電話すると、「特殊勤務車両手当」との名目で日給に500円が上乗せされた。ということは、同社は禁止業務への派遣を認識していた疑いが強い。こうした点に関してグッドウィル・グループは「現在、労働局にて調査を頂いている状況にあり、詳細の回答は差し控えたい」(広報IR部)としている。

 戦後長らく、派遣など労働者供給事業は、職業安定法において全面的に禁止されてきた。間接雇用では責任があいまいとなり労災事故につながりやすいとされたからだ。指摘したケースはその典型例といえる。こうした現状を放置すれば、「派遣」という雇用形態そのものの是非が厳しく問われることになるだろう。(書き手:風間直樹)

最低賃金 底上げに一段の努力を

2007年08月20日信濃毎日新聞

 地域別の最低賃金の引き上げの目安が示された。全国平均で14円である。最近では大きなアップ額ではあるものの、十分とは言えない。

 賃金の格差やワーキングプア(働く貧困層)が社会問題となっている。社会の安定を確保する上でも、最低賃金の引き上げは緊急の政治課題だ。生活基盤の安定につながる改革を与野党に求めたい。

 最低賃金をどの程度引き上げたらいいか、その目安を論議するのが厚生労働相の諮問機関・中央最低賃金審議会である。2007年度について、審議会が柳沢伯夫厚労相にこのほど答申を出した。

 それによれば、現在の全国平均の時給673円に対して、平均で14円増やす。具体的には、都道県をAからDの4段階に分け、段階ごとに目安を示している。

 ▽Aランクの東京、神奈川、大阪などは19円▽Bランクの長野、埼玉、富山、京都などは14円▽Cランクの北海道、宮城、新潟、岐阜、山口などは9円から10円▽Dランクの青森、岩手、島根、佐賀、沖縄などは6円から7円−である。

 これらの目安を参考に、今後、地方の最低賃金審議会が個別に金額を煮詰めていく。

 今回示された平均14円は、現行方式となった02年度以降、最大である。だが、労働者にとっては、まだ不十分と言わざるをえない。

 現在は3人に1人が非正社員である。賃金は正社員の6割から7割とのデータがある。ワーキングプアや、ネットカフェで暮らす「ネットカフェ難民」と呼ばれる若者たちも、社会問題になっている。

 賃金を下支えすることで、こうした状況を改善することが、最低賃金制度改革に求められている。

 だが、仮に14円アップしたとしても、全国平均の最低賃金は687円にしかならない。AランクとDランクの地域間の格差も、依然として開いたままだ。これでは、暮らしの基盤を安定させる効果は期待できないだろう。

 政府・与党は、先の国会に最低賃金法の改正案を提出したものの、継続審議となった。7月の参院選では、民主党など野党も引き上げをマニフェストに掲げた。改革はなお大きな論点だ。

 日本の最低賃金は、イギリスやフランスなどと比べても低い水準にあると指摘されている。各党が知恵を出し合って、思い切った引き上げに道筋をつけたい。

 中小企業などからは、抵抗があるのも事実だ。中小企業対策とも合わせた総合的な政策が必要だ。

厚労省、「ネットカフェ難民」初調査・就労支援狙い

2007/08/14 NIKKEI NeT

 日雇い仕事をしながらネットカフェで長期間寝泊まりする「ネットカフェ難民」について、厚生労働省は初の実態調査に乗り出した。秋までに結果をまとめ、新たな相談窓口の設置や就労支援など本格的な対策を始める方針。ただどのような支援をするかを巡っては専門家から実効性を問う声も出ている。

 ネットカフェ難民は、家賃が払えないため住む場所がなく、夜は安価な料金で利用できる24時間営業のネットカフェなどで寝泊まりする若者らのこと。最近「新たな貧困層の出現」と懸念する声が上がり始めているが、大規模な調査はこれまで実施されておらず、人数など実態はよく分かっていなかった。

アジアの労働力、2015年までに2億人増

2007/08/14 FujiSankei Business i.

 国際労働機関(ILO)は13日、アジアの労働市場に関する報告書を公表し、アジア全体で労働力が2015年までに20億人を超えると予想した。06年時点の労働力は推定18億人強で、インドをはじめとする南アジア地域での人口増加などを背景に15年までに労働力が2億人以上増えるとみている。

 雇用者数に関しては、06年の推定17億5000万人から15年には約19億6000万人に増加すると予測している。

 報告書はその上で、「経済成長にもかかわらず、貧困削減などに必要な雇用は十分創出されない」と分析。労働政策の改善などを通じて、働いても貧困から抜け出せない「ワーキングプア」や労働者の高齢化、労働の質的向上と男女の雇用機会均等といった課題に取り組むよう求めた。(ジュネーブ 時事)

フルキャスト事業停止へ 厚労省、悪質と判断

2007年08月03日 東奥日報

 人材派遣大手のフルキャスト(東京)が労働者派遣法で禁止されている建設や港湾業務への派遣を繰り返しているとして、厚生労働省は3日、同社に対し一定期間の事業停止命令を出す方針を固めた。命令は3日中に出される見通し。全事業所が対象となる可能性もあり、同社の経営にも影響が出そうだ。

 フルキャストは今年3月、労働者を建設業務などに派遣したとして、東京労働局から事業改善命令を受けていた。その後も違法な派遣をしていることが分かり、厚労省は極めて悪質と判断、厳しい処置に踏み切ることを決めた。

 フルキャストに対しては神奈川労働局が昨年8月、神奈川県内の支店が建設業務に労働者を派遣したとして是正を指導。今年1月には宮城県警が、同様に労働者派遣法で禁じられている警備業務に派遣した疑いで仙台支店などを家宅捜索した。(共同通信社)

ネットカフェ暮らしの若者増える 「貧困の広がりを象徴」

2007/05/14 中国新聞

 低賃金労働などを背景に、「ネットカフェ難民」と呼ばれる若者が各地で増えている。貯金がなくアパートを追い出され、インターネットカフェを泊まり歩く。将来が見えないその日暮らしを送る若者は「ホームレスと紙一重。気持ちがすさむ」とこぼした。専門家からは「貧困の広がりを象徴している」として住宅支援の必要性を指摘する声が出ている。

 ▽更新料が払えず

 ネットカフェの料金が安く、長期滞在の利用者が多いといわれる東京・蒲田。二十四歳の男性は個室料金が一時間百円の店を一年以上、仮のすみかに使っている。

 一畳足らずの畳敷きの個室。小さなテーブルにパソコンとテレビが並ぶ。夜になると、テーブルの下に足を伸ばし、上着を掛けて横になる。

 同じフロアのごみ箱から悪臭が漂ってくる。薄い仕切りで隔てられているだけで、周囲の物音は筒抜け。「小さな音にもイライラすることがある。徐々に気持ちがすさんでくる」と漏らす。

 専門学校を卒業後、映像関係の会社に勤めたが、低賃金で貯金がなく、賃貸アパートの契約更新料を払えなかった。やむなく退去したものの別の部屋を借りる敷金、礼金もなく、ネットカフェ暮らしを始めた。「ちょっとしたきっかけでこういう生活になってしまう」

 ▽かばん一つで生活

 移動しやすいように、荷物は小さいかばん一つだけ。「下着はほとんど使い捨て。冬の上着は春になると捨ててしまう」。食事はファストフードやインスタントラーメン。今は派遣社員として流通センターで働き日給九千円を稼ぐが、貯金はできないままだ。

 「けがや病気で仕事を休んだら店の料金が払えず、ホームレスになる。この生活は長く続けられない」。今は関東地方の実家に帰って仕事を探すことを考えている。

 地域労組「首都圏青年ユニオン」などが四月に宮城、奈良、福岡など十都府県で行った調査では、三十四店舗中二十六店舗に長期滞在者がおり、各地に広がっていることが分かった。

 「家がない。正社員になれず職を転々としている」(名古屋)「実家は近くにあるが自立しなければと思うと家に居づらい。でも派遣社員なのでアパートを借りるほどの収入がない」(東京)。アルバイトや派遣など、正社員に就けない若年層が目立った。

 店への調査では「長期滞在は二十人ぐらいいる」「業界では三年前ぐらいから問題になっていた」との回答もあった。

 ▽新しいホームレス

 日雇いの派遣労働で働く人も多いとされるのも特徴。東京・山谷など簡易宿泊所を拠点にした従来型とは異なる新たな日雇い労働の形態として注目されており、厚生労働省も初の実態調査に乗り出す。

 一方で「新しいホームレスの形態」とみるのは、下村幸仁しもむら・ゆきひと・会津短大教授(社会福祉)。「雇用の不安定さと低賃金の影響が大きいのではないか」として東京都内で聞き取り調査をする予定だ。

 ホームレスらへの支援をしている特定非営利活動法人(NPO法人)「自立生活サポートセンター・もやい」(東京)には四年ほど前から、こうした若者から相談が寄せられるようになった。

 「日本全体が貧困化している中で表れた象徴的な現象」と湯浅誠ゆあさ・まこと事務局長。「多くは働いて収入はあるが、アパートを借りる一時金がない。生活困窮者向けの低家賃の住宅を用意すれば、一定期間の入居で抜け出せるはず。必要なのは就労支援ではなく、住宅支援だ」と話した。

「ワーキングプア」都市部で増加、ネットカフェ宿代わりも

2007年05月04日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 地方の若者が都市部に職を求める場合、正社員採用も一定の需要があるが、一方で、アルバイトや派遣などの非正規採用にとどまった上、中には、どんなに働いても低収入の「ワーキングプア」と呼ばれる境遇に陥るケースもある。

 東京など都市部では最近、ネットカフェや漫画喫茶を宿代わりにする若者が増えている。全労連などが4月に東京、大阪、愛知など全国10都府県で行った調査では、ネットカフェ計34店舗のうち8割近くの店で長期滞在の若者がいた。

首都圏青年ユニオンの河添誠書記長は、都市部で非正規雇用が拡大している現状を指摘した上で「雇用契約打ち切りなどで寮などを追われ、蓄えがないと敷金・礼金を払えないため、仕方なくネットカフェで寝泊まりするケースが増えているのでは」と話している。

憲法施行から60年*(下)*貧困を許さぬ生存権こそ(5月3日)

2007年05月01日 北海道新聞 社説

 給料が下がった。時間外の割増賃金がもらえない。解雇された…。

 もろもろの労働相談が昨年、道内で三万件を超えた。北海道労働局によるとわずか七年で三倍増だ。

 求人情報誌をめくってみる。札幌のコンビニの募集欄には「時給六百四十四円」が並ぶ。道内の最低賃金そのものだ。家族構成などにもよるが、生活保護より収入が少ない人も多いだろう。

 「働く貧困層」(ワーキングプア)が、全国で六百万人以上いるとする研究者もいる。

 なによりも生活保護を受ける人が増えた。全国で百万世帯を超えている。十年間で七割増の勢いだ。

 いつの間にか、貧困という言葉が広く切実感を持つ社会になった。

 憲法が保障する「生存権」は守られているのだろうか。

*問われる「最低限の生活」

 憲法は言論や表現の自由、職業選択や居住の自由などを保障する。だが「自由権」だけで人間らしい生活ができるわけではない。

 そこで二五条で生存権を定めた。第一項で「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とうたう。

 この実現のため第二項で「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と国の義務を定めている。

 二五条の第一項は、連合国軍総司令部(GHQ)案に基づく政府草案にはなかった。憲法制定の国会で社会党議員らの提案で盛り込まれた。欧州に広がっていた「福祉国家」の考えに根ざしたものだ

 問題は「最低限度の生活」の中身である。これを正面から問うたのが一九五七年に結核患者の朝日茂さんが起こした「朝日訴訟」だった。

 「肌着は二年に一着」などを基準とした生活扶助費が月額六百円では少なすぎる、という訴えだった。

 地裁は訴えを認めたが控訴審で朝日さんは敗訴。上告後に朝日さんが死去したため上告は棄却された。

 棄却に際して最高裁は、保護基準について「行政の裁量に委ねる」という判断を示し、同時に著しく低い保護基準や、行政の裁量権乱用は違法となりうると指摘した。

 朝日さんは訴訟に敗れたが、生存権という考えは裁判を通じて広く理解された。政府も一審判決後、保護額の大幅引き上げを行った。

 最低限度の生活がどのようなものかは、時代や社会状況によって違う。しかしある程度、客観的な保護基準を設けることはできるだろう。

 貧困問題が深刻ないまこそ、現状を検証する必要がある。

*総額抑制に悲鳴が上がる

 生活保護費は、政府の総額抑制路線の下で、世帯当たりの支給額が段階的に減らされている。

 七十歳以上の老齢加算は二○○六年度に撤廃された。受給者の半分近くが対象だ。高齢者からは悲鳴と不満の声が上がり、各地で老齢加算の復活を求める訴訟が起きている。

 国は本年度から母子加算の段階的廃止にも踏み込んだ。女性の賃金は男性に比べ低く、子育てと仕事の両立は簡単でない。先進国では母子家庭への支援が福祉政策の主流なのに日本は逆の方向に向かっている。

 生活保護の支給額削減が、貧困拡大や国民生活の水準引き下げにつながってはいけない。

 最低賃金も見直しが不可欠だ。

 日本の最賃は先進国の中でも低水準だ。各地の労働組合が最賃での生活を実験し「生活できない」という事例報告を出している。

 最低賃金を月収に換算した額が、生活保護費を下回る地域が全国で十都道府県に及んでいる。

 最賃法は抜本改正が急務だ。「生活保護を下回らない水準」と、きちんと法律に書き込んでほしい。

*「福祉」の旗を立て直そう

 行きすぎた平等社会に決別する−政府の経済戦略会議がこう打ち出したのは八年前だった。規制緩和や競争がいっそう進み、働く形は様変わりした。パートや派遣など非正規労働者は四百五十万人も増え、正規労働者は三百万人近く減っている。

 憲法は二五条で社会福祉・保障の対象を「すべての生活部面」と定めている。しかし自民党の憲法草案は「国民生活のあらゆる側面」と言い換えた。

 「側面」は、国の責務が主役から脇役に回り、国民に自助努力をうながすことを意味するだろう。

 経済協力開発機構(OECD)は先進各国の「貧困率」を定期的に調べている。国ごとに、国民の平均的所得の半分以下の所得者の比率を貧困率として計測する。

 驚くことに、日本の貧困率はこの十年でほぼ二倍に急上昇した。しかも先進国では、米国、アイルランドに次いで三位の高率だ。

 雇用と労働環境の急激な変化に社会が揉(も)まれている。

 それは戦後の日本が、欧州のような福祉国家の足腰をしっかり築かないまま、米国流の自由と競争の社会にかじを切ったからでもある。

 「働く貧困層」を含め多くの人が自立できず、家族などによる細く不安定な扶助に頼るのが現状だ。

 こうした社会だからこそ、国民一人一人に保障された生存権が重い意味を持つ。国の責務が問われる。

全労連、全労協などが各地でメーデー

2007年05月01日 asahi.com

 メーデーの1日午前、労働組合の集会が全国各地で開かれ、格差是正などを訴えた。

 全国労働組合総連合(全労連)は東京の代々木公園で中央メーデーを開き、主催者発表で約4万2000人が参加した。坂内三夫議長は「ワーキングプアをなくし、格差と貧困を解消させよう」と呼びかけた。参加者の一部は都内をデモ行進した。

 全国労働組合連絡協議会(全労協)は、東京の日比谷公園に約1万2000人(主催者発表)を集めた。パートや派遣労働者ら非正社員の雇用安定などを求めた。

 連合の地方集会も、北海道や沖縄など各地で開かれる。

メーデー 格差是正訴える

2007年05月01日 KAB News(熊本朝日放送)

 5月1日はメーデー、各地で働く人たちの条件の改善を求める集会が開かれています。 熊本市の高橋公園では、県労連など、16団体が参加して集会を開きました。実行委員長の石原勝幸さんが「労働者のうち、非正規労働者が3分の1、年収250万円以下のワーキングプアも急増している。貧困と格差の解消に向け闘い抜きましょう」と気勢を上げました。

「働くものの生活と権利を守り、平和と民主主義、中立の日本をめざそう」をスローガンに、憲法9条の問題や、格差社会の是正に向け団結して取り組むことを確認しました。さらに繁華街を行進し、安心できる社会の実現をと訴えました。

一方、連合熊本は、熊本市の白川公園で37団体、約2700人が参加して集会を開き、パートや派遣労働者の格差是正などを求める宣言を採択する予定です。

ネットカフェ実態調査、ワーキングプア背景さぐる

2007年04月25日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 ネットカフェや漫画喫茶を宿代わりにする若者が増えている問題で、労働組合やNPO法人のメンバーが24日夜、東京都内で利用者の実態調査を行った。働いても低収入の「ワーキングプア」と呼ばれる人たちが利用しているとみられており、こうした問題の背景を明らかにするのが目的だ。

 首都圏青年ユニオンなどのスタッフ約25人が、東京・大田区の蒲田駅周辺で午後9時から約2時間、「1時間100円」「深夜から朝まで8時間で880円」などの看板を掲げるネットカフェ6店に出入りする若者らから、週の宿泊日数や、生活ぶりなどを聞いた。

 自立のため都内の実家を離れたが、派遣社員としての給料が安く、家賃を工面するゆとりがないという27歳の男性や、3年前に夫の家庭内暴力から逃げ出して以来、月収9万円程度のパートなどで働きながら、寝泊まりしている30歳代の女性らがいた。

 実態調査は、全国規模で始めており、5月中旬に結果をまとめる予定。首都圏青年ユニオンの河添誠書記長は、「ネットカフェで寝泊まりする生活貧窮者の実態を明らかにして、国の政策に生かすよう働きかけたい」と話している。

格差是正の「本当の線引き」はどこにあるか

2007/04/04 ITマネージメント/nikkeiBP net

 鈴木貴博氏(百年コンサルティング 代表取締役)

 世の中には、解決が難しい構造的な問題が多々、存在する。特に難しいのは、利権を持っている人が全体の過半数を超える場合である。

 利権を握っているのがごく一部の政治家や業界団体といったケースでも、利権の構造をぶち壊すのは至難の技だ。それが過半数の国民が利権を握っているケースとなると、まずその構造は壊せない。おそらく政治家の改革の公約にすら上らないだろう。なぜなら有権者の半数が反対することなど、恐ろしくて口にすることすらできないはずだからだ。

 そのような問題の1つに、ワーキングプアの格差是正の話がある。

 格差社会が問題視され始めて早数年といったところだろうか。格差は拡大こそすれ、一向に狭まる気配はない。「ワーキングプア」という言葉が生まれ、働けど生活が成り立たないという収入階層が増加している。

 その一方で、「IT長者」というような、起業によって数百億円の資産を作り上げた“超”富裕層が存在する。ないしは年収が2000万円を超えるようなエグゼクティブビジネスマンや、「セレブ」と呼ばれる人たちの数も増加傾向にある。

 格差の問題とは、この「富裕層」と「ワーキングプア層」の間にある格差の問題だと、一般的には認識されている。

 もしこの格差の是正問題が「富裕層」と「中流層」の間に線を引き直し、人口の数%に過ぎない富裕層への課税を増やせばすべてが解決するような問題ならば、構造的な問題としては解決しやすい部類に入るだろう。

 しかし、本当の線引きはそこではない――というのが今日の話である。

 「ワーキングプア層」と「そうでない層」の間に引くべき“真の線”は、実は富裕層よりももっと大衆的なところに2種類、引くことができる。

 一つは、人口の過半数を占める「中流層」と「ワーキングプア層」の間。そしてもう一つの線は、有権者の過半数を占める「40歳代以上」と、「30歳代以下」の若者との間である。

 フリーターなどワーキングプアと呼ばれる若者は、いずれの線引きでも日本におけるマイノリティに属する。つまり、彼らのようなごく一部の若いワーキングプア層が、この格差問題における一番の“被害者” であるということだ。

 しかし、この構造を変える力を持つ有権者の多くは、そこから“恩恵”を受けている中流層である。であれば「プアでない」過半数の人々が、「プア層」への所得の再配分に前向きになるのは難しいだろう。

 2007年3月11日付の朝日新聞に興味深いグラフが載っていた。所得税を納めている人を税率ごとに分け、その割合を先進国同士で比較したグラフである。そして日本の場合、「8割の人が最低税率となっていて、累進機能が十分働いていない」というのがその主張だ。

 このグラフのうち、日本のベースになっているのは平成18年度の所得税率だ。4段階区分になっていて、最低税率は10%、最高税率が37%である(ちなみに19年度からは6段階に変更されて最低税率は5%に下がっているが、その分、住民税の最低税率が5%から10%に引き上げられた。これは地方に財源を移すための措置である)。

 では、日本でこの最低税率10%に当てはまる人がどれくらいいるかというと、実に国民全体の81%に上るというのである。逆に、最高税率である37%を支払っている給与所得者は人口の1%に満たない――。

 これは、他の先進国と比較すると非常に偏った数字である。各国の税制には色々な相違点があり、一律に比べるわけにはいかないが、それでも人口比率で見たときに8割の人が最低税率という国は珍しい。

 例えば、日本よりも深刻な格差社会の問題を抱えるアメリカでは、最低税率は日本同様の10%だが、その税率に相当する人は国民全体の23%と、数としては多くはない。一番多いのは2番目に低い税率の15%の層だ。ここに、アメリカ民の46%が所属する。

 ちなみに3番目に低い税率の27%にはアメリカ国民の26%が所属していて、この層は日本流にいえば「ニューリッチ」と同じぐらいの生活水準に相当する。そしてこの3つの階層にアメリカ国民の95%近くが入ることになる。

 もちろん「アメリカン・ドリーム」の国であるから、その上にはビル・ゲイツからパリス・ヒルトンまで超リッチな人々が存在していて、超リッチな税金を納めているわけだが、それはそれとして、ここでは、その下が日本のように一律“中流”とはなっていないことに注目してほしい。

 実は、日本におけるこの最低税率層の異様な厚さは、財務省の税制調査会のレポートでも問題点として指摘されている。

 そもそも所得税の最低税率は、年間所得額が330万円以下の人に対する税率として設定されたものである。しかしそのレポートの試算によると、所得額を計算する際の控除の要素が大きいため、実際には夫婦で子供2人のサラリーマンの場合、年収831万円の人までがこの最低税率の範囲に収まってしまうという。

 そこで「国民の大多数が最低税率」という状況が生まれてくるわけだ。 ---------------------------------------------------------------------------

 累進税というのは、元々富める層からそうでない層へ、所得の再配分を行うための仕組みである。だが日本の場合、あれだけの国家予算がありながらワーキングプア層への再配分の原資は十分ではない。

 その原因は、本来、ワーキングプア層へ再配分されるべき富が、人口の過半数を占める中流層へも再配分されてしまっているからではないだろうか。

 仮にワーキングプア層をアメリカ並みに、人口の25%程度に再設定し、新たな線引きをしたとしよう。すると今、最低税率を支払っている80%の層は、25%の「プア層」と55%の「中流層」に仕切られる。

 この55%が現在のような富の再配分の“受益者”ではなく、逆にアメリカ並みの15%の税率を支払う新たな「中流層」となって、「プア層」へ再配分を行う“参加層”に転換されれば、日本の税収構造の格差は是正される――と税制調査会のレポートは語っているのだが、実際のところ皆さんはどう考えるだろうか。

 アイデアとしては正論だと僕は考える。

 しかし、人口の55%を占める普通の中流家庭が、格差是正のためとはいえ、例えば税率10%から15%への増税を口にする政治家に票を投じるとは思えない。したがって「中流層とワーキングプア層の間」という一つ目のあるべき線引きを引き直すことは、まず難しいだろう。

 このような構造によって富の再配分が難しくなったからといって、ワーキングプア層への福祉を削るわけにはいかない。その場合、税収以外にも国債という資金調達の手段が国にはある。その国債は積もり積もって、現在、国民1人当たりの国の借金額は600万円を超えている。

 国債の発行残高が多いのは10年間以上の長期国債であり、また新規の発行を抑制するというのが政策目的である。残高自体を大きく減少させる政策は当面ないという事実を考えれば、現在発行している借金を返すのは「後の世代」ということになる。

 公会計を大学で勉強すると必ず教えられる事柄として、国の収支を考える際には本来、「期間平衡性の確保」を重要視しなければならないという考えがある。簡単にいえば、後の世代の負担によって、現在の世代が幸せを享受してはならない――というのが、この「期間平衡性の確保」の原則だ。

 日本の場合、国債発行残高が増えてどうしようもなくなってしまった結果、教科書で教えているこのような原則は、もはや守れない状況に陥っている。

 では、期間平衡性が破られたおかげで“勝ち組”になっているのは誰だろうか。

 後の世代から大量の借金をすることで充実した社会資本を享受した“勝ち組世代”とは、赤字国債が発行されるようになった1965年以降の時代を通じ、長く社会人の立場にあった40歳代以降の世代ということになる。

 特に団塊の世代以降は、日本の高度成長を成し遂げた“恩人世代”であると同時に、年金などの社会保険や富の再配分の視点で見れば“勝ち逃げ世代”ともいえるだろう。

 一方でバブル崩壊以降に社会人になった30歳代以前の世代は、国の税収が減り続けるトレンド中にあって、拡大する期間平衡性の「負の遺産」を背負うべき世代ということになる。

 本来あるべき「期間平衡性の確保」という視点に立ち戻れば、膨れ上がった国の借金は、バブル崩壊前に社会人となった現在の40歳代以降の世代が解決すべき問題である。例えば、資産税を増税することで国債返済の原資を確保するといったアイデアがあるが、これがもし実現されれば、家屋や金融資産を多く持つ40歳代以降の世代の富が、将来国を背負うべき30代以下の世代へと移転することになる。

 そこでまた考えるのだが、有権者の過半数を占める40歳代以降の有権者に対して、増税を口にできる政治家がどれほどいるのだろうか? この点でも、30歳代と40歳代の間に引くべきニつ目の線引きも、構造的に考えて実現は難しいと僕は結論付けてしまうのだ。

 かくして「フリーター」「30歳代」「ワーキングプア」という新たに増加している格差社会の“主役”たちは、構造的には壊せそうにはない2つの壁の下で、当面は我慢を強いられることになるのである。

 このコラムの最後に1つ予見をしておきたい。今はまだ過半数だと思っている中流層も、あまり安心はできないということだ。若者は人数は少なくなってきているとはいえ、社会のエネルギーという意味では中心層である。

 団塊世代が20歳代のころには学生運動があったように、将来の若者のエネルギーが「格差是正」を唱える世代間闘争に向かわないとは限らない。それは、ただでさえ不安定な日本社会をさらに不安定にさせてしまうのではないか。

 そうならないように、格差是正はできる範囲内で今のリーダーたちが少しずつ行っていった方がいい――。小さな声ではあるが、僕は社会に向けてそうささやき続けていくつもりである。

立て万国の貧困者 ワーキングプアの大逆襲

2007年04月02日号AERA byasahi.com

 ワーキングプアが立ち上がった。一人で、数人で、会社も仕事の枠も超えて。

 働いても豊かにならない、一度落ちたら抜け出せない。この貧困はなんだ?

 義憤に動かされた貧困者たちの闘い、他人事ではあり得ない。

 (AERA編集部・後藤絵里)

 半年で20キロ痩せた。

 2006年1月から人材派遣のフルキャストのグループ会社で正社員として働く星野雄一さん(26)は、「スポット(日雇い)派遣」の「人繰り」が仕事だった。企業の依頼を受け、携帯電話やメールでそのつどの人手を確保し、解体作業などの現場に送る。午後3時まで注文を受け、登録スタッフのマッチングを始める。

 「明日働けるかな?」

 人数がそろうまで、深夜1時でも電話をかけ続ける。

 翌朝6時。今度はスタッフから電話で出発連絡を受ける。9時頃まで100本近い電話を1人でさばく。会社に3、4連泊はざら。昼も夜もコンビニ飯。給湯室で頭を洗う。最初の半年を時給換算したら500円を切った。

 でも、スタッフの生活はもっと悲惨だった。

 スポット派遣の日当は6000〜7000円。月20日働いても十数万円。アスベストの粉塵が舞う現場で風邪用マスクだけで働かされた人、危険な現場で安全靴を持たず、釘が足を貫通した人……。

 星野さんが珍しく家に帰れた日の翌朝。出勤途中の横浜駅の地下で、ゴミ箱をあさる若い男性を見た。胸が詰まった。時々仕事をまわすスタッフだった。

 「これじゃホームレス製造工場じゃないか」

●ひと味違う新ユニオン

 当初は同僚と、会社側に自分たちの労働環境の改善を訴えた。社長との協議は平行線で、同僚は一方的に解雇された。星野さんたち社員は、未払い残業代を求めて横浜地裁に提訴。その後、スタッフも誘って労働組合を結成した。

 「無法地帯のスタッフの労働状況がずっと気になっていたんです」

 会社と団体交渉を重ね、グループで働く全スタッフの労働条件を改善する労使協定の締結にこぎつけた。日雇い派遣では初めてのことだ。有給休暇の保証や日雇い労働者向け保険の適用を約束させた。今年の春闘でも社員の賃上げは据え置き。スタッフやアルバイトの時給アップが最大の要求だ。

 バブル崩壊後の不況期、企業は人件費を減らすため派遣や契約、請負といった非正社員への切り替えを進めた。後押ししたのが規制緩和。1986年施行の労働者派遣法は99年、対象業務を原則自由化し、03年には禁じられていた製造業への派遣も認めた。今や全雇用労働者の3分の1が非正社員だ。

 そうした非正社員は、労働運動とは遠い存在だった。労働組合は正社員中心だし、組合活動を理由に契約を切られかねない。

 そんな丸腰の労働者がいま、労働組合の結成に動き出している。彼らの新しいクミアイは、既存の労組とはひと味もふた味も違う。オルタナティブな連帯、“新ユニオン(労組)”なのだ。

 まず第一に、中心のない、ネットワーク状に広がる紐帯であることがあげられる。

●使いやすいコマの反逆

 「フリーター連帯はどうだ」

 「なんだか締まりがないな」

 「3K職場がおれたちの職場。『ガテン系』でいこう」

 06年9月。新宿西口の居酒屋で盛り上がる一団がいた。製造現場で働く非正社員の労働団体ガテン系連帯の誕生だ。

 会社も職種も、働き方も違う全国の労働者をつなぐネットワーク。会員は職場ごとに労組を作って個別に交渉をする。

 一方、ガテン系連帯ではそれぞれの職場情報を共有する。労働法を学んで知識武装する。国や業界団体に訴えかける。従来型の組合のように「支援→被支援」の上下関係では、組合員に依存心が生じるし、執行部もなれ合う。だから、中央組織は置かない。

 業務請負大手の日研総業から派遣され、日野自動車で働く和田義光さん(42)と池田一慶さん(27)は創立メンバー。労組結成のきっかけは職場有志の花見の席だった。池田さんは隣に座った若い正社員から声をかけられた。

 「いくつになった?」

 「26歳です」

 「その年でハケンか。人生終わってるな」

 池田さんより先に、向かいに座っていた和田さんがキレた。

 「何を言ってるんだよ!」

 よっしゃ、この人なら一緒に声を上げてくれるかもしれない。池田さんはそう思った。

 製造現場への派遣期間は最長1年(07年3月に3年に延長)。細切れの雇用契約、低い賃金など、企業にとっては使いやすい「コマ」であり、著しい身分格差がある。

 日野の場合、直接雇用の期間工は社が準備した寮で寮費は無料。派遣は派遣会社の借り上げ寮。和田さんたちは3人1部屋で一人3万8000円と光熱費を月給から引かれる。期間工は一定期間働くと慰労金が出る。派遣はどんなに働いても時給1150円前後のまま。少ない月は手取り15万円を切る。契約は1カ月更新だ。

 「夏は40度の暑さで油まみれになりながら、社員も期間工も派遣も、協力してノルマ達成に向かう。働く仲間じゃないですか。そこに身分格差が埋め込まれてる。僕らは最下層。そんな怒りや悔しさを抱える非正社員が全国にたくさんいるんです」(池田さん)

 ●胸の底にあるのは義憤

 既存の労組は多くが企業内組合で、組合の役員経験が出世の一段階となっているところもある。しかし“新ユニオン”は成り立ちから違う。義憤――胸の底にあるのは、そんな感情だ。

 2人がガテン系連帯の結成準備にかかりはじめたころ、後藤英樹さん(48)は三重県の半導体工場で働いていた。10年勤めた百貨店が倒産。求人誌で見つけた派遣に応募したのだ。年収は200万円を切る。

 ある夜、夜勤に行くため派遣会社のバスを待ちながら、空を見上げた。満天の星。高校生の時、キャンプ場で見た星空と同じだ。当時は美しさに心が震えた。今は少しもきれいだと思えなかった。

 「同じ星なのに、置かれた境遇でこんなにも見え方が違うのか」

 美しいものを美しいと思えない世の中って何だろう?

 翌月、派遣会社を変え、東京都青梅市の半導体工場で働き始めた。その間インターネットでガテン系連帯のサイトにたどり着き、池田さんに会った。

 「皆さんが正社員になったら会は解散するんですか」

 後藤さんの問いに池田さんはそうじゃない、と首を振った。

 「ならば、一緒にやりたい」

 2月には同じ職場で働く仲間と労組をつくった。後藤さんの組合運動は、自分の生活を良くするなんてけちな考えじゃない。

 「派遣には若い子も多いんです。あいさつしてもまともに返事もしない。死んだ魚の目をしている。未来のある人たちが、星がきれいだと思うこともなく一生を終えるなんてあんまりだ」

●携帯とネットを駆使

 70年代にトヨタ自動車の工場で季節工として働き、『自動車絶望工場』を著した鎌田慧さんは言う。

 「大企業の組合員と違い、守るべき権益も会社への忠誠心もない彼らが労働運動に立ち上がるのは、もはや人間の尊厳を保てないレベルまで追いつめられているから」

 昭和女子大の木下武男教授(労働社会学)も、19世紀の産業革命期を見るようだという。

 「資本主義の黎明期、飢えて死ぬほどの貧困と無権利の労働者が大量に生まれた。彼らが生存権を求め闘ったのが労働運動の始まりでした。非正社員の労組結成は、運動の原点を思わせる」

 携帯電話やネットを駆使するのも、新時代ユニオンの特徴だ。

 東京・渋谷、午後6時。若者でごった返す「109」の前に怪しい円陣が組まれた。首都圏青年ユニオンの団交前の打ち合わせ光景だ。同ユニオンではメーリングリストが組合員同士をつなぐ。

 「『すき家』に対して未払い残業代と解雇撤回を求める団交を行います。集合は○日×時、渋谷の109前。応援お願いします」

 当日、関心がある組合員がわらわらと集まってくる。書記長の河添誠さんが立ったまま、10分程度でポイントを説明。これは喫茶店に入るお金を節約するため。団交後に再び円陣を組み、感想を言い合う。非正社員の職場はバラバラで、個人加盟のメンバーが多い。「よその団交」に出ることでいろんなケースを知り、連帯も生まれる。同ユニオンには「すき家」のアルバイト労組に続き、3月にはライブドアの労組もできた。

●会社と闘うの怖かった

 ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)という手もある。国際電話のオペレーターをする谷岡典子さん(31)は昨年11月、ミクシィの日記につづった。

 「1人でも入れる労働組合に入って運動してます。組合を作ると、会社と対等な立場で話し合えるんです」

 谷岡さんはKDDI子会社の契約社員。会社は昨夏、契約社員の労働条件の変更を一方的に通知してきた。(1)交通費の支給を廃止(2)1年契約は3カ月・6カ月の短期更新に(3)深夜勤手当2000円を400円に減額、などだ。谷岡さんは月収6万円のダウンになる。

 「契約途中で一方的に条件を変えるのはおかしい」

 上司との面談で訴えたが取り合ってもらえない。条件を応諾するかどうか返事を迫られた2回目の面談を控え、ネットで見つけた派遣ユニオンに電話した。書記長の関根秀一郎さんは穏やかに言った。

 「全部ノーって言いなさい」

 会社と闘うのは怖かった。クビになるかもしれない。

 「でも、転職してもまた非正社員。ここで逃げても、同じ問題が繰り返されるだろう」

 夫も姉も友人も、有期雇用の社員。将来子どもも欲しい。そのころには、非正社員もまともな働き方ができる社会になっていてほしい。腹をくくった。

 ユニオンに加盟し、関根さんと2人で数回の団交に臨んだ。約2カ月、同僚にも言わず、たった一人の闘い。数回の交渉の後、会社が譲歩する姿勢を見せ始め、10月からの各種手当の減額が保留になった。

 すると、職場の同僚が谷岡さんに「労基署が踏み込んだらしい」とささやいた。がっかりした。

 「団交の成果だって知らないのか……。この仕組みを知らないとまた同じことされちゃうよ」

 そこでミクシィで「告白」し、同じ内容を職場の友だちの携帯に「転送歓迎」でメールした。

 数日後。昼勤務の40代の先輩が、夜勤で入る谷岡さんとすれ違いざまに声をかけてきた。

 「メール見ました。協力します」

 別の同僚は小さくたたんだ紙切れをくれた。「すき家のアルバイトが労組結成」を報じた新聞記事のコピー。

 背中を押され、谷岡さんは動き出した。

●もっとも弱き者の連帯

 「労働組合を立ち上げたい。協力してください」

 はっきりそう伝えるメールを同僚に送った。そうして組合員は30人に増えた。映画『七人の侍』で、侍に野武士との戦い方を教わった農民みたいだった。会社側に気づかれずに組合を作るのに、SNSと携帯のチェーンメールは大いに役立った。

 非正規の若者たちのメーデーのデモをきっかけに生まれたのはフリーター全般労組だ。

 「ちょっと遅刻しただけでバイト先をクビになった」

 デモに参加した若者が話すのを聞き、執行委員長の大平正巳さんは、個別相談に応じる場が必要だと感じた。

 「労働基準法ではアルバイトでも正当な理由なく解雇できない。権利を知らずに泣き寝入りしている人がどんなに多いか」

 私は正社員、新しい労働運動なんて関係ない――。そう思っている読者がいたら、グローバル化の時代認識を誤っている。共産主義の恐怖がなくなった今、資本主義は「強者必勝」の本来の姿に回帰している。立命館大の高橋伸彰教授(日本経済論)が言う。

 「グローバル化で、企業は世界中から安い労働力を調達できるようになった。先進国の労働者は途上国の安価な労働者とポストを競うことになる」

 実際、台頭する中国やインドでは技能労働者が育っている。

 「日本の正社員も、いずれ彼らと競争することになり、待遇はじりじり下がるだろう。国内で正規/非正規と言っている場合ではない。大資本に対抗するには労働者も力を持たないと。国際的な連帯、生活者との連帯が必要です」

 自己増殖する巨大資本=怪物リバイアサンに対抗する手だてがなければ、働く者すべてがじきにのみ込まれる。

 徒手空拳で立ち上がる「もっとも弱き者」の連帯。新しい闘いの可能性は、そこにこそあるのかもしれない。

【連載】ワーキングプア(1)

2007年03月01日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 格差社会の象徴とも言える「ワーキングプア」。いくら働いても、所得が生活保護水準(大都市部で年間約160万円)に達しない人たちをそう呼ぶ。社会の底辺をさまよう若者たちの姿を追った。

日雇いを転々、宿はファストフード店…携帯電話が命綱

深夜でも込み合うネットカフェ。宿代わりにする若者もいる 午前2時半、高層ビルに囲まれた東京・新宿のハンバーガー店。髪を伸ばした男性(30)が、トイレで歯磨きを済ませて席に戻ってきた。机の上には空のカップ。今夜はここで休む。“宿代”は紅茶代の100円だ。

 運送会社や建設現場で、日雇い労働者や短期の契約社員として働いている。力仕事が多いから、夜はせめて、マンガ喫茶かネットカフェの個室で足を伸ばしたい。だが、1泊800円。手持ちが少なければ、24時間営業のファストフード店で寝る。疲れはとれないけれど仕方がない。野宿よりはましだ。

 年収は数えたことがないが、せいぜい百数十万円だと思う。風呂は週2回、銭湯などで済ませる。食事はカップラーメン、ゆとりのあるときはコンビニエンスストアの弁当だ。

 1月下旬、マンガ喫茶で寝ているうちに、1万3000円が入った財布を盗まれた。2日間、食事にありつけなかった。以来、マンガ喫茶には泊まっていない。

 1万円ほどの携帯電話代が払えなくなるのが1番怖い。勤め先からの連絡が入る“命綱”だからだ。

 高校を卒業したのは、バブル崩壊後の1994年。就職活動はしたが、定職には就けず、建設現場などを転々とした。2002年には自動車工場で月に40万円稼いだこともあったが、10か月の契約期間が切れると更新はしてもらえなかった。以来、職場ごとの雇用期間は短くなる一方だ。

 「早くやれよ、バカ」。昨秋勤めた運送会社では、引っ越しの作業をただ見ているだけの社員に、よくどなられた。みじめだったが、首にならないためには慣れないといけなかった。

 都営団地のアパートにある実家には、還暦を迎えた母親が暮らすが、3年近く会っていない。ヤミ金融の人が取り立てに来るからだ。仕事が途切れた時に、2、3万円ずつ借りた額がふくらんだ。

 先月、母から電話が来た。幼なじみが結婚するという知らせだった。家を出たころは近況を聞かれるのが嫌で、電話を無視していた。久しぶりに言葉を交わした母はうれしそうだった。

 何か知識を身につけなければと思うが、働くだけで終わってしまう。頻繁に職場を変えるので、仲間もいない。いつも1人なので、危機感が薄く、何となく時間を過ごしてしまっていた。

 ひっそりとした店内で男性はなかなか寝付けずにいた。港の荷役作業の仕事が決まったからだ。日給1万2000円で契約期間はない。「あしたから来てくれ」と連絡があり、「この生活から抜け出せるかも」と思った。

 翌朝、携帯電話が鳴った。「今日は来なくていい。また連絡します」。気を取り直して、日雇いの引っ越し作業の仕事に応募した。

 別れ際に記者に語った。「今日初めて、自分の生き方を人に伝えた。話をしているうちに、頑張って働こうという気がわいてきた。色々と考えてみます」。初めて笑顔がのぞいた。

<メモ>981万人

 国税庁の調査によると、年収200万円以下の給与所得者は1995年は793万人(全給与所得者の17・8%)だったが、2005年には981万人(同21・8%)と拡大。厚生労働省の06年版労働経済白書は、「収入の低い20歳代の労働者の割合が高まっており、行方が懸念される」と指摘している。

【連載】ワーキングプア(5)

2007年03月06日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 連載「ワーキングプア」では、「日雇い派遣」で、その日の糧をようやく得ている若者や、いつ職を失うか分からない不安におびえる請負・派遣労働者の姿を描いてきた。

取材班には、挫折感を抱えたまま働く若い世代や、そうした子を持つ親から数多くの手紙やメールが送られてきた。

フリーター、好きでなったわけじゃない…誇り失わぬ最低賃金必要

 大学卒業後、3年余りフリーター生活を送り、今は派遣社員として工場で働き、月給15万円を得ているという26歳の女性は、「好きでフリーターになったわけではないのに、社会からは認められず、自尊心は根こそぎ削られ、人生をどう組み立て直せば良いのか分かりません」と、悲痛な思いを吐露した。「4年にわたる結果の出ない就職活動に、正直疲れました」。苦悩は深い。

 札幌市北区の女性は、5年前に上京し派遣社員をしている30歳の息子を思いやるメッセージを寄せた。息子は職が途切れるたびに家賃が払えなくなり、これまで2、3回、仕送りをして窮地を救ってきた。先日、電話で近況を尋ねると、「1日2食にしているから大丈夫」との返事があった。女性は、「派遣で食いつなぐ若者には結婚も年金の支払いも考えられない生活なのです」とやるせない思いをつづった。

 一方、千葉県鎌ヶ谷市の女性は企業の人材育成のあり方を批判する。「今、会社は若く使える人だけを使って、長く人を育て社会を支えようとする心がなくなっている。会社は人を育て、人は自分の仕事に責任を持つ。会社がそのことに気づかないと日本はダメになる」と記した。

 では、どうすればワーキングプアの現状を変えることができるのだろうか?

 安倍政権が掲げる再チャレンジ政策に携わる厚生労働省の金子順一政策統括官(労働担当)。「10年、20年後の労働力人口は確実に減少する。フリーターの若者の正規雇用の道を整えていくことが重要で、新卒時に就職に失敗しても、意欲のある若者が挑戦する機会を与えたい」と語る。25歳以上の「年長フリーター」になると、フリーターから抜け出すことは極めて難しくなる。このため、同政策では、年齢差別を禁止する法改正を行い、30歳前後の世代の雇用を促していく。

 一方、「希望格差社会」などの著作で知られる山田昌弘・東京学芸大教授(49)は、「大企業は、新卒一括採用の雇用方式をとり続けるだろう」と、政策の実効性に懐疑的だ。企業が、アルバイトなどの非正社員を職場を束ねる中間管理職に昇格させるなどし、社員に登用していく道を広げるよう求める。

 また、欧州諸国と比べて水準が低いとされる最低賃金(全国平均時給673円)にも注目。「たとえ失敗しても、誇りを失わない生活を維持できる最低賃金の確保も必要」と提言する。

 中小企業の労働組合で作る産別労組JAMの小出幸男会長(60)は、非正社員の割合が3割を超えた現状について、もの作りの現場から警鐘を鳴らす。「人件費削減のため、請負、派遣化を進めてきたことで技術の継承も危うくなっている。団塊世代が大量退職し、景気回復を果たした今こそ、次世代の人材を養成するため、正社員の雇用を進めなければならない」と力説する。

 千葉大教育学部長の明石要一さん(59)は、雇用面での対策だけでは不十分との意見だ。高校卒業後、進学も就職もしない「ワーキングプア予備軍」には、「自尊心を持てず、人間関係もうまく構築できない人が多い」として、「高齢者や子供のケアをさせるなどして、まず、社会に貢献しているという感覚を持たせるべきだ」と話した。 (おわり)


【Webウォッチ】新ホームレス ネットカフェ難民

2007/02/01 JanJan

 企業に見放され、家族にも見放された“新たな形のホームレス”が増えているという。名付けて“ネットカフェ難民”。アパート代を払えず追い出された若者が1日契約の派遣の仕事に出かけながら、毎日のねぐらにネットカフェを利用しているという。先日放送された『NNNドキュメント‘07(日テレ系)』で彼らの生活が映し出されていた。

 必需品はケータイ(派遣会社との連絡)、コインロッカー(荷物の預け)、そして、ネットカフェ(低料金での宿泊)である。だが「体を伸ばして眠りたい」と、ある10代後半の女性はつぶやいていた。

 『ネットカフェ難民 漂流する貧困者たち』1月28日深夜(関東地区)

 【社会のあちこちで目に付く格差の広がり。生活困窮者を支援するNPOや生活保護ケースワーカーの間で最近話題になっているのが“現住所・ネットカフェ”という若者たちだ。(中略)バイトを転々として食いつなぎ、健康や将来の不安を抱えながら希望が見つからない若者たち】と、番組ホームページで紹介されている。 (『NNNドキュメント』のHP

 (漫画喫茶でパソコンブースの導入が進んでいるため、「ネットカフェ」と「漫画喫茶」は同義語として用いられる場合が多い。)

参考:ネットカフェ

参考:ネットカフェ難民(はてなダイアリー)

 この番組に対しての感想や意見がブログにもかなり集まっています。【日本はいくら格差が進んだといっても、他の国々に比べれば、衣食住で困ることはなく、経済的には豊かな国だとずっと思っていたが、その考えがくつがえったし、同時にホームレスという概念についても考えが改まった。】と、少なからずショックを受けた視聴者の方たちが多かったようです。 (小説家と文学部の重要な仕事)−Blog)

 そして、【放送で登場していたのは、親には頼れないという、28歳の男性・10代の女性、30代の男性ら。日雇い派遣に向かう時はコインロッカーに大きな荷物を預けて仕事へ。そしてまたネットカフェで寝泊り……体は伸ばせないそうです。辛い。仕事がない日もあるそうで、そういう日は公園のベンチで過ごすそうです。そんな毎日。もし、病気になったらどうするんだろう?

 そういう若者が増えているというのです。「そんな風になるのはそいつの根性がないからだ!やる気がない本人が悪い」と思われる方もいるかもしれませんが、それだけでこの人たちはここまで落ちてしまうのでしょうか?これがアメリカ色の格差社会なのか?なんだか怖くなってきました。日本ってこんな国だったんだ……不況といえど表面上は豊かに見える日本、このままでいいのか?】と、(グルメ倶楽部【B】)さんは変貌する社会の矛盾を捉え改善策を求めているようです。

 ブログにはこのような見方・意見が多数見受けられました。が、一方まったく正反対の見方をしている人もいます。

【ビックリした。現代の若者たちの甘えの構造がここまでヒドイものになってるとは。それにもましてこの番組を制作した側が、まるでこいつらを被害者であるかのように扱っていることにたいして不愉快になった。(中略)この番組に出ているネットカフェホームレスとかいう連中は、ようするに我がままを通した結果住む家を無くした。たったそれだけのことだ。(中略)いったい何でこんな姿勢の番組が作成されるのかも非常に問題だ。やっぱりテレビ製作に関わる人間はエリートばかりなので、一般の人間がどれだけ苦労して普通の生活を維持しているか想像もつかないのだろう】

 このように(猫マイルドの日記)さんは番組制作者に対して激怒しています。

 また、番組内ではハローワーク(職業安定所)を通してある工場に派遣された男性の事例も紹介していました。【求人票に『寮費コミ、月給25万』って書いてたから行ったら、実際は『寮費2.5万を引かれて月給15万、しかもそこからイキナリ首宣言された』とか】と、(東方@咲夜の日記)さんはこのことを『偽装派遣』と称し怒っています。

 さて政府は「景気回復」を謳い、首相は「美しい国」に誇りを持っているようですが(?)、しかし、私たちの仕事・生活を取り巻く環境は年々厳しくなっているようです。非正社員の大幅増加、ワーキングプア、国保の引き上げ、年金不安等数え上げたら際限がありません。一体誰のための政治なのかと私も首を傾げてしまいます。そして、今、ネットカフェ難民の出現です……。最後に彼らと同じような生活を過去にしていたと言う方のブログを紹介したいと思います。

 【番組に出ていた女の子が、ノートに「我慢する」と書いていたのが印象的だった。これ以上悪くならないように、上に上がれるようになるためにノートを何度も読むということを言っていた。私もかなり昔だが東京でフリーターをして過ごしていた。安定したコンピューター会社を去り、自ら外の世界に飛び込まなくてはと不安定な毎日を選んだ。

 当時はネットカフェなんてのは無い代わりに深夜喫茶だとか、映画館・クラブ・はたまた公園に段ボールでネグラを作ったりして夜が過ぎ去るのを待った。アルバイトも同じように派遣会社へ電話をし、現場の住所を言われ、朝早くから夜遅くまで言われたとおりなんでもこなした。】と、(CAFE BLACK BooSTER! )さんは、ご自身の経験を話した上で、【ネット難民と呼ばれる人が置かれている立場、苦しみ、その状況が私にはよくわかる。観ていて思わず涙ぐんだ。ちょっとしたきっかけで誰でも落ちていく可能性はあるのだ。(中略)

 運よく現在どうにか定職があり結婚して子供もいて、車もあって家も温かい布団もある。どうにか這い上がったわけだ。どうか今辛くて、逃げたくて死にたいと考えている人達、頑張って欲しい。必ずどこからか光がさす時がくると思うから……そこからどうにかなる時だって来るのだから……】と、心の底から励ましています。

関連サイト:(自立生活サポートセンター・もやい)

(志鎌誠)

フリーターを探せ ワーキングプア依存のもろさ

2006年12月18日号(AERA) asahi.com

 いろんな現場で企業や商店を支えてきたフリーターたち。

 簡単に切り捨てられる都合のいい存在だった。

 足りなくなって初めて、そのありがたさに気づいた。

 もう遅いかもしれない。

 (AERA編集部・後藤絵里、加藤勇介 ライター・小西樹里)

     ◇

 JR神田駅西口商店街。100メートルほどの通りに立ち並ぶ飲食店のほとんどの店に、同じ内容の張り紙がしてある。

 「アルバイト急募!」

 11月末にこの通りに新規開業した「仙臺牛たん 太郎」もまた、同じ悩みを抱えている。とにかく人が足りないのだ。

 「求人誌に2回広告を出しましたが、かかってきた電話は2本だけ。しかも、2人とも面接日に現れなかった」

 店長の菅野智基さん(28)はため息をつく。「アルバイトは5人は確保したい」と開業3週間前から広告を出したが、獲得できたバイトは0人。結局、菅野さんの弟や社長の庄子恵さん(31)の母親ら5人で店をまわしている。宮城県仙台市で別の会社を経営している庄子社長自ら、開業からほぼ毎日、新幹線で夕方東京に来て店を手伝い、翌朝の始発でとんぼ返りする日々を送っている。庄子社長は言う。

 「将来の多店舗展開をめざして、店長になる幹部の育成もしたいんです。この商売、すべての基本は人材です。でもその確保が一番難しくなっている」

留学生にも頼れず

 求めるのは、ずばり終日働けるフリーターだ。

 新宿の高層オフィスビル街の一つに入る大手コンビニチェーン。

 アルバイトの3割を中国人留学生が占めていたが、最近まとまって帰国してしまい、補充要員が見つからないままだ。店長(45)は困った顔でこう話す。

 「あと3〜4人必要です。留学生の子たちは、学費稼ぎという明確な目的があるので長期で働いてくれ、深夜・早朝帯にも入ってくれた。今はコンビニだけでなく他業種でもアルバイトが足りないので、より条件のいいところに移ってしまうのか、留学生でもなかなか働いてくれる人が見つからない」

モーニングコールも

 全国の加入台数が1億台に達する勢いの携帯電話。この年末は番号持ち運び制の開始で、さらに商戦が過熱している。そこで圧倒的に不足しているのが全国に約8000店ある携帯電話ショップや、携帯販売に力を入れる家電量販店で営業支援をする専門の販売員だ。関西の中核都市のあるショップでは、店員が一度に辞めた後、代替要員が見つからず、2週間ほど店を閉める事態に追い込まれた。

 「店を開けないことには商売ができない。非常事態だから経費はいとわない」

 店の幹部が、携帯電話市場専門の人材派遣会社ジェイコム(本社・大阪市)に泣きついた。

 岡山県内の別のショップでは、地元の派遣会社で人が確保できず、ジェイコム東京支社に、

 「ホテル代を出すので大阪や東京から人を派遣してほしい」

 と依頼してきた。派遣社員を使うと直接雇用より人件費はかさむが、確実に人を確保できるとあって需要は急伸している。同社の岡本泰彦社長は言う。

 「毎月約200人を新規に派遣しています。登録スタッフが足りずに紹介できていない分も含めると、求人数は1000人近い」

 携帯電話ショップで働く正社員は各店に数人。残りは1日8時間週5日働ける非正社員だ。単純なバイトと違い、機種ごとに違うマニュアルを覚え、商品説明やアドバイスができなければならない。同社では社会経験がほとんどない層に教育訓練をし、朝起きられない人には、担当社員が携帯でモーニングコールまでして送り出す。

時給上昇で経営負担

 少子高齢化と、景気の回復に伴う「正社員」回帰で、アルバイト人材、その中核となる若年フリーター層の確保が難しくなっている。厚生労働省がまとめたフリーター人口は、03年の217万人をピークに、04年は213万人、05年は201万人と2年連続で減った。人材サービスのインテリジェンスによると、需給の逼迫で関東エリアのバイトの平均時給は04年10月から24カ月連続で前年を上回っている。今年10月の平均時給は関東で前年同月比32円高い1039円、関西でも同22円高い977円。派遣やパートも含めた非正社員の無料求人誌への広告件数は2年前の2.5倍に増えた。

 最近のアルバイト1人を採用するための求人広告費の相場は、飲食業なら約10万円、長期雇用の販売スタッフは約20万円だという。それだけ払っても、最近は1人も採用できないケースも多い。零細な個人商店なら経営を直撃する大きな負担だ。

正社員への登用拡大

 企業向けのSNSシステム開発のビートコミュニケーション(東京都港区)も3年前からエンジニア不足に悩まされている。この世界にも、会社に属さず個人で仕事を請け負う「フリーター」が多い。SNSの普及で企業の需要は急増しているのに、開発の人手が足りずに注文を断ることもしばしばだ。求人情報誌にも2回広告を出したが採用に足る人材は集まらなかった。

 「人手さえあればあと10〜20件は仕事を受けられるのに……」(村井亮社長)。人手不足が成長の阻害要因になっているのだ。

 正社員登用があるアルバイト情報に特化したサイト「本気のアルバイト」を運営するエン・ジャパンの寺田輝之プロデューサーは言う。

 「新卒者の内定率が上がり、中小企業やベンチャーは新卒者の確保が難しくなっている。従来は新卒や経験者しか採らなかった業種や職種で、フリーターに採用の門戸を広げる企業が増えています」

 エン・ジャパン社内にもいる。昨秋入社した田中外さん(25)は大学卒業時に希望の就職ができず、2年半フリーターをした。昨年1月から真剣に就職活動を始め、同社のアルバイト求人サイトから応募、3カ月の試用期間を経て正社員になった。

 「25歳を前に、このままじゃまずいと思ったんです」

 積極的にフリーターになる人はどの時代もいるが、不況下で仕方なくなっていた層も多かった。その層が正社員に転じ始めて、需給バランスが崩れてきた。

 ファミリーレストラン、居酒屋やレンタルショップなど、アルバイトがいないと成り立たない業態では、人材の確保に必死だ。

 首都圏を中心にカラオケボックス「カラオケの鉄人」を展開する鉄人化計画(本社・東京)は、アルバイトの世界に「出世の階段」を持ち込んだ。働き続けることの「動機づけ」を狙ったのだ。

バイトにも昇級制

 研修生からスタートして凡人→賢人→達人→師範と階級が上がり、最高位は「鉄人」となる。フロントや調理場といった店舗運営に必要な業務がきちんとできるか、後輩バイトの指導ができるかといった項目で評価され、長く働き続ければ出世するというものでもない。

 飯田橋神楽坂店では総勢20人のバイトのうち鉄人は1人。師範と達人は0人、賢人が1人と狭き門だ。鉄人になるには本社の部長との面接の上にリポート提出も課されてハードルも高いが、時給は研修生800円が鉄人だと1000円。アルバイトの名刺も、普通は店の共用名刺に手書きで名前を書くが、鉄人は名前が印字されたものを渡される。

 「仕事をやってもやらなくても同じ給料では、モチベーションも上がらない。鉄人には社内の会議にも出席してもらい、ほとんど社員に近い扱いをします」(同社エリアマネージャーの片平豊彦さん)

 この店でアルバイト歴3年半のフリーターの佐藤舞さん(23)は2月に鉄人に昇格した。

 「それなりの立場なんだから自分からやらなきゃって思うんです。時給が上がることもですが、バイト以上のやりがいを感じます」

給与の一部前払いも

 アルバイトを「パートナー」と呼ぶのは、焼き肉店「牛角」などを展開する外食大手のレインズインターナショナルだ。アルバイト同士、あだ名で呼び合い、アルバイト向けの社内報も発行している。年2回、首都圏のアルバイト約4000人を一堂に集めてイベントも開催。優秀なアルバイトには賞金や海外研修などの特典を贈っている。牛角事業部長の村松憲司さんは、

 「職場に愛着を持って続けてもらうために、こちらからいろいろなきっかけを作らないと」

 と話す。

 それでも、最近は応募者数が鈍っているので、店舗任せだったアルバイトの採用も本部がバックアップし、ホームページや携帯電話からも応募できるようにした。

 共著『10代のぜんぶ』(ポプラ社)などがある博報堂生活総合研究所研究員の原田曜平さんは、

 「人間関係のしがらみの少ない社会で生きてきた彼らは、『おまえがいなきゃダメだ』と言われたい。ちょっと古くて嘘くさいような人間同士のきずなを求めている」

 と指摘する。

 すかいらーくは今春から、和食店など一部で給料日前に給料の一部を受けとれる「前給制度」を始めた。突発的にお金が足りないとき、月給の5割まで働いた分をもらえる。

 携帯電話から、提携銀行の専用サイトに申し込むと、最速で翌日にはお金が給与口座に振り込まれる。東京都民銀行が開発した「前給」サービスで、今年から本格稼働し、導入企業は約90社という。

 若者の就業支援を手がけるジョブカフェ・サポートセンターの原正紀代表は言う。

 「特にコンビニや外食などパート・アルバイトが支える業態は、フリーターなどの非正社員人材が確保できないと、事業そのものが立ち行かなくなる。キャリア育成の仕組みを整え、労働条件面で正社員との差をできるだけ平準化する努力が必要です。もっとも正社員でも若者の離職率は高い。働くことに幸せを感じられない職場や仕事からは、若者は辞めていくでしょう」

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