TOPIC No.2-141 耐震強度偽造

01.【特集】耐震強度偽造 by The Sankei Shimbun
02.耐震強度偽造 by共同通信
03.>耐震強度の偽装問題 byYAHOO! NEWS
04.強度偽装 by Yomiuri On-Line
05.耐震強度偽造問題 リンク集 byJANJAN

「偽装、表に出すな」 小嶋容疑者、イー社に強要

2006/05/18 The Sankei Shimbun大阪夕刊から

 耐震偽装事件で、ヒューザー社長の小嶋進容疑者(52)=詐欺容疑で逮捕=が確認検査機関「イーホームズ」社長、藤田東吾被告(44)との会議の席上、「偽装の事実は表に出すな。(公表すれば)ここにいる何人かは行方不明になってもおかしくない」と非公表を強要する一方、神奈川県藤沢市のマンション「グランドステージ(GS)藤沢」の引き渡しについては「会議で名前が出ていないので問題ない」と手続き続行を部下に指示していたことが十八日、警視庁など合同捜査本部の調べで分かった。合同捜査本部は、小嶋容疑者が問題が公になる前に代金を確実に回収しようとしたとみて追及している。  調べでは、ヒューザーは昨年十月二十五日にイーホームズから、元建築士の姉歯秀次被告(48)の担当したマンションについて偽装された疑いを伝えられた。同日夜にはヒューザー役員が姉歯被告宅へ行き、グランドステージ藤沢など偽装物件の強度を通常の計算で出した数値をメモ。国の基準の40%とするGS藤沢の強度は小嶋容疑者にも報告された。

 二十七日にはヒューザー本社で、藤田被告から完成済み物件も含めて、偽装の可能性が指摘された。小嶋容疑者は公表を急ぐよう提案した藤田被告に「正義面して公表することに何の意味があるんだ」と反対。入居済みのマンションについては「大地震が来て倒壊してから公表したければすればいい。寝た子を起こすな。それでも公表するなら、ここにいる者の何人かは行方不明になってもおかしくない」と、非公表を迫った。

 翌二十八日はGS藤沢の住民への引き渡し日だった。別の役員が藤田被告らとの会議後、対応をどうするか、小嶋容疑者に確認したところ、同容疑者は「会議でも(GS藤沢の名前は)出ていない。検査済み証が出ているので問題ない」と販売代金の受領を部下に指示したという。

 こうした経緯や小嶋容疑者の発言から、合同捜査本部は遅くとも二十五日の段階で偽装の認識があったと判断。小嶋容疑者が総額約四億円に上る代金回収のため、藤田被告に非公表を迫ったとの疑いを強めている。関係者の聴取から、小嶋容疑者が十月下旬の指摘以前に偽装を認識していた疑いもあり、合同捜査本部はさらに調べる。

姉歯元建築士の妻が飛び降り自殺 自宅近くのマンションから

2006/03/28 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽装事件で、建築基準法違反容疑で家宅捜索を受けた姉歯秀次元一級建築士(48)の妻(49)が28日早朝、千葉県市川市の自宅近くのマンションから飛び降りて死亡した。県警行徳署は自殺とみて詳しく調べている。

 調べによると、同日午前5時35分ごろ、市川市富浜のマンション駐車場に止めてあった車の中に、女性が血を流して倒れているのを車の所有者が発見し、119番通報した。

 女性は病院に運ばれたが、全身を強く打っておりまもなく死亡が確認された。同署は女性が姉歯元建築士の妻と確認した。

 妻は黒のジャージー姿で、ほかに身につけているものなどはなかった。妻は病気で通院していたという。遺書などは見つかっていない。

 マンションは姉歯元建築士の自宅から約300メートル。最上階の7階の通路の手すりに乗り越えたような跡が残されており、同署では自殺とみている。妻は車のサンルーフを破り、車内に飛び込んだとみられる。

民間主導で初の建て替え計画 強度偽装マンション

2006/03/11 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽装問題で、使用禁止命令が出た川崎市高津区の分譲マンション「グランドステージ溝の口」の住民で構成する「建替え検討委員会」は10日までに、民間主導による建て替え計画をまとめた。都市再生機構の再建案より、追加負担が1世帯当たり1000万円程度安くなるといい、再建を目指すほかのマンションにも影響を与えそうだ。

 川崎市によると、金額を含めた民間主導による分譲マンションの具体的な建て替え計画が決まったのは初めて。検討委と民間コンサルタント、市が協議してまとめた建て替え計画に基づき、指名した住宅販売会社10社に事業計画の立案を依頼し業者を選定する。

 コンサルタントは建設費について「民間同士の競争原理が働いた過去の同規模マンション建設の経験から、今回のコストを見積もった」と、説明している。

 同マンションは7階建て。姉歯秀次(あねは・ひでつぐ)元1級建築士(48)が構造計算を担当し太平工業が施工、ヒューザーが販売した。各戸平均約100平方メートルで、24世帯が購入。耐震強度は基準の39%だった。

 検討委員会によると、選定した販売会社に建て替えを一括して委託。各戸の面積は変更せず、階段なども共有部分に国や市の補助金を最大限利用し、面積100平方メートル当たりの追加負担額は2000万円以内になる見通し。

 国の支援枠組みに従って都市再生機構が提示した再建案は、面積100平方メートル当たり追加負担額が約3000万円と割高。土地の買い上げなどに市が予算を組む際も議会の同意などが必要で、時間がかかる恐れもあった。

 民間施工によって追加負担、施工期間とも縮小できるという。

 検討委の委員長(42)は10日、記者会見し「転居先の家賃などで、時間がたつほど住民の資産が目減りする。(2000万円でも)苦渋の決断だったが、前向きに取り組みたい」と話した。

 「合理的に考えると時間イコールお金なんです」。初の民間主導による再建計画に踏み切った川崎市の「グランドステージ溝の口」。10日、記者会見した住民4人によると、転居先の家賃などで刻一刻と減り続ける自己資金への焦りが背景にあったという。

 4人のうち1人の男性(34)は「マンションを確保するには、資金を調達できるかどうかが重要だった」と、言葉を選ぶように慎重に語った。住宅金融公庫などに相談し、各世帯が追加負担できるギリギリの金額が約2000万円だった。

 川崎市も民間主導による再建を優先的に検討した。会見に同席した和田忠也(わだ・ただや)事業推進課長も「個人資産であるマンションを自治体主体で建設するのはそぐわないのではないか」と話し、民間主導による再建を歓迎した。

 再建案がまとまったことについて、別の住民男性(38)は「良い方向に動きだすめどがついた。スタート地点に立ったばかりだが、前向きに取り組みたい」と、自らに言い聞かせるように語った。

ホテル側が県や総研を初提訴 耐震偽装で7億円賠償請求

2006/02/14 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽装問題で、解体を決めた愛知県半田市のビジネスホテル「センターワンホテル半田」を経営する「半田電化工業」(同市)は14日、建築確認をした県や、コンサルティング契約を結んだ「総合経営研究所」(総研)と内河健(うちかわ・たけし)所長に、解体や再開業に伴う費用などとして総額約7億2000万円の損害賠償を求める訴訟を名古屋地裁に起こした。

 弁護士によると、耐震偽装問題で、ホテル側が損害賠償を求めて自治体や総研を提訴するのは初めてという。

 半田電化工業の中川三郎(なかがわ・さぶろう)社長は会見で「一刻も早く原因と責任の所在を明らかにし、最低でも解雇した従業員に伝えなければならない」と提訴の理由を説明。弁護士は「県が構造計算の偽造を見逃した経緯を明らかにするため、姉歯秀次(あねは・ひでつぐ)元建築士を証人申請したい」としている。

 訴えによると、県の職員は注意義務に反して違法な構造設計を見逃し、総研は構造設計をした業者を適切に指導、監督する義務を怠ったため、強度が不十分なホテルが建設されたとし、建て替え費用などを求めている。

 半田電化工業は2001年、総研と契約を結んで指導を受け、県の建築確認を経て同ホテルを建設。02年に開業したが昨年11月、姉歯元建築士による構造計算書の偽造が判明し、同12月、解体を決めた。

 愛知県の神田真秋(かんだ・まさあき)知事は「司法の場において県の考えを主張したい」としている。総研は「弁護士に対応を任せている」としている。(共同)

東京都、ヒューザーを行政処分へ 17日に小嶋社長ら聴聞

2006/02/07 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽装問題で、東京都は7日、偽装の疑いがあると知りながらマンションを引き渡したとして宅地建物取引業法違反で、中堅マンション販売「ヒューザー」を免許取り消しや業務停止などの行政処分とする方針を固めた。

 処分に先立ち都は17日に聴聞を開き、ヒューザーの小嶋進(おじま・すすむ)社長と同社販売代理会社「ジャスティーホーム」の犬山正一(いぬやま・しょういち)社長から事情を聴く。一連の問題発覚後、小嶋社長が自治体の聴聞を受けるのは初めて。

 都などによると、ヒューザーは昨年10月25日、民間の検査会社イーホームズ側から姉歯秀次(あねは・ひでつぐ)元1級建築士による構造計算書の偽造を伝えられた。27日には小嶋社長や姉歯元建築士らがヒューザー本社に集まり対応を協議した。

 しかしヒューザー側は28日に神奈川県藤沢市のマンション「グランドステージ藤沢」の17戸を引き渡した。ほかにも物件の販売契約を結んだという。

 都は昨年11月から同社幹部らから計6回、事情を聴いた。同社は「偽装の認識はなかった」と文書で回答したが、「藤沢」の引き渡しは、不動産取引での重要事項などの説明を義務付けた宅建業法違反の疑いが強いと判断した。

 小嶋社長は1月17日の衆院国土交通委員会の証人喚問で、昨年10月25日に偽装を知った後、物件の売買や引き渡しがあったことを認めた上で「宅建業法、その他の法律について違法性の認識はない」と証言していた。(共同)

川口のマンション実態調査 耐震偽装で日本ERI

2006/02/06 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽装問題で、指定確認検査機関「日本ERI」(東京都港区)は6日、同社が建築確認をし、ヒューザーが分譲した埼玉県川口市のマンション「グランドステージ川口」の実態調査を始めた。

 日本ERIによると、姉歯秀次(あねは・ひでつぐ)元建築士が構造計算書を偽造し、耐震強度が基準を下回った同社関連の物件のうち、同社が実態調査を実施するのは初めて。

 同日午前9時すぎから、日本ERIや、施工した福田組(新潟市)の関係者らが立ち会い、ベランダや階段の壁をくりぬいてコンクリートを採取。携帯型の探査機で梁(はり)の鉄筋の本数などを確認した。調査は11日までで、結果を基に3月中ごろまでに強度を再計算、住民らに補強策などを提示する。

 同マンション管理組合の理事長は「現実にどの程度、耐震性があるのか結果をみて今後の対応を決めたい」と話した。

 マンションは11階建てで2002年に完成。日本ERIが行った構造計算書の再検査では、耐震強度は基準値の56%だった。(共同)

横浜市長、ヒューザーに「盗っ人たけだけしい」 提訴を厳しく批判

2006/02/02 The Sankei Shimbun

 横浜市の中田宏(なかだ・ひろし)市長は2日、耐震強度偽装問題でヒューザーが同市を含む18自治体に約139億円の損害賠償を求める訴えを起こしたことについて、記者会見で「盗っ人たけだけしい。裁判を起こすこと自体コペルニクス的ばか者だ」と述べ、同社の姿勢を厳しく批判した。

 市長は「訴訟を闘うだけの費用ももったいない」とも語った。

 横浜市内では、ヒューザーが建築主のマンション3件で構造計算書の偽造が発覚。うち鶴見区の「コンアルマーディオ横浜鶴見」は耐震強度が基準の41%と判明し、市は使用禁止命令を発令。50%を上回った二物件には是正を勧告している。(共同)

ヒューザー、都など提訴 18自治体に139億円

2006/01/30 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽装問題で、マンション販売会社ヒューザーは30日、建築確認した自治体が、偽造された構造計算書を見過ごした結果、偽装物件を販売し損害を受けたとして、東京都など18の自治体に約139億円の損害賠償を求め、東京地裁に提訴した。

 訴えられたのは東京都のほか日野市、千葉県船橋市、神奈川県相模原市など首都圏の自治体。

 訴状によると、自治体は建築確認などの申請に際し、違法な建築物を未然に防止する注意義務があったのに、偽造された構造計算書を見過ごした。その結果、ヒューザーは偽装物件を販売し、完成した建物の解体や補強などの賠償義務が生じたとしている。

 請求額は、名誉棄損に伴う資産減少や引っ越し代などとして30億円、解体予定物件の解体費、建物価格相当費の約70億円など。(共同)

10年で住宅100万戸改修 国の耐震化目標の基本方針

2006/01/25 The Sankei Shimbun

 国土交通省は25日、改正耐震改修促進法の26日施行に向け、今後10年間で(1)住宅は150万―200万戸を耐震診断し100万戸を耐震改修する(2)学校や病院など多数が利用する建物は5万棟を診断し3万棟改修する―とした数値目標を盛り込んだ基本方針を決定した。

 政府は、2015年までに「震度6強または7の大規模地震でも倒壊しない」とする建築物の耐震化率を、現状の約75%から90%に引き上げる目標を掲げている。達成には耐震改修のほか建て替えによって住宅は約650万戸、学校や病院などは約5万棟を耐震化する必要がある。

 基本方針は都道府県には1年以内に公共建築物の耐震化について数値目標などを盛り込んだ耐震改修促進計画の策定を義務付け、市町村にも同様の計画をつくるよう要請している。

 政府は、改正耐震改修促進法で、耐震改修に応じない建物の所有者への指導を強化する一方、改修への補助費を2006年度予算案で大幅に増やしたほか、税制面でも支援する。(共同)

本格的解体始まる 千葉・白井市の強度不足マンション

2006/01/20 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽装問題で、強度不足を指摘され建築工事を中止した千葉県白井市の分譲マンション「ラ・ベルドゥーレ白井」(10階建て、93戸)で20日、重機を使った本格的な解体作業が始まった。

 作業は午前9時すぎに開始。約20人の報道関係者が見守る中、アームの先にはさみのような機具が付いた重機1台が現場に入り、1階エントランス部分を壊し始めた。

 既に、足場の組み立てや部屋の内装を取り除く作業は5日から始まっていた。4月中旬に終了予定。

 このマンションは、姉歯秀次(あねは・ひでつぐ)元1級建築士が構造計算書を偽造、耐震強度が基準の73%とされた。当初は設計・施工した木村建設(熊本県八代市)が解体する計画だったが破産したため、建築主の東日本住宅が引き継いだ。(共同)

姉歯発注は小嶋社長の指示 偽装物件建築確認も要求

2006/01/20 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽装問題をめぐり19日に開かれた衆院国土交通委員会の参考人質疑で、姉歯秀次元建築士(48)に構造設計を発注した設計事務所スペースワンの井上正一代表は「姉歯という固有名詞は出ていないが、ヒューザーの小嶋進社長から優秀な設計士が木村建設にいるので使うように言われた」と述べた。

 昨年10月27日に関係者が偽装問題への対応を協議した際、小嶋社長が千葉県船橋市の工事中マンションについて「『曲げてでも建築確認を下ろしてもらう』と(指定確認検査機関の)イーホームズに強く求めていた」とも話した。また、席上、小嶋社長が偽装問題公表を遅らせるよう主張したと述べた。

 小嶋社長は17日の衆院証人喚問で協議内容に関する証言を拒否したが、詳細なメモをイ社が残しており、井上代表の発言はその内容の一部を裏付ける形となった。

 井上代表は昨年10月25日の関係者協議にも同席。協議後、姉歯元建築士とヒューザーに向かう車中で「どうせ分かってしまう。(偽装を)やりました」と告白されたという。

 木村建設子会社の平成設計に鉄筋量削減のメモを渡していた総合経営研究所(総研)の四ケ所猛チーフコンサルタント(67)は、ゼネコンで10年間、構造設計を担当し、免震構造の専門資格も持っていることを認めた。「(削減の)数値は経験から来た勘で、検討してくださいというメモ」として強制ではないとの主張を繰り返した。

 しかし、平成設計の山口時也社長は「変更を断ると四ケ所氏が『(知り合いの)構造設計事務所でやる』と言った」と証言、食い違いを見せた。

 山口社長は平成設計について「営業も頼っており、総研の設計部のようだった」と説明。元平成設計社員の徳永豊氏も「総研に絶対服従のように感じた」と述べた。

 山口社長は姉歯元建築士との関係を「1999年が最初で、(総研との)暗黙の了解でずっと続いてきた」とした。(共同)

小嶋社長紹介を否定 耐震偽装で伊藤氏が釈明

2006/01/19 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽装問題に絡み野党側から証人喚問を要求されている自民党の伊藤公介元国土庁長官は19日午前、自民党本部で記者会見し、中堅マンション販売会社「ヒューザー」が絡む耐震偽装で国土交通省に同社の小嶋進社長を紹介したとされることについて「そうは思っていない」と否定した。

 国交省を訪れた際、偽装の事実について局長や課長から具体的な説明はなく「正式な許可が下りたマンションになぜ工事中止命令が出たのか分からなかった。(偽装の実態は)報道で初めてこういう広がりがあることを知った」と説明した。

 伊藤氏は証人喚問に応じるかどうかについて「国会の考えを聞いて、その都度判断する」と述べるにとどまった。

 伊藤氏によると、昨年11月6日か7日ごろ、小嶋氏から免震技術を持つ大成建設の紹介を依頼され、11月10日に一緒に同社を訪問。小嶋氏からの依頼は「この1件だけだ」と指摘した。

 同月15日に建設会社の社長から「小嶋氏の紹介で千葉に建てたマンションに工事中止命令が出た。事実確認のため国交省に向かっている」との連絡があった。小嶋氏とともに大成建設を訪れた経緯があり、伊藤氏が小嶋氏に連絡したところ、小嶋氏は「私も行きます」と国交省に来たという。

 伊藤氏とヒューザーの関係では既に、小嶋氏から政治献金を受けパーティー券も購入してもらった事実が判明。伊藤氏の三男が経営する会社がヒューザー物件の設備点検を請け負っていたが、伊藤氏は「ヒューザーや関連会社との直接の契約はなく、マンション管理組合との契約が1件だけだ」と釈明した。(共同)

ヒューザー、強度偽装で国訴える方針決める

2006/01/18 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽装問題で、マンション販売会社ヒューザーは18日、特定行政庁や国指定の確認検査機関が、姉歯秀次(あねは・ひでつぐ)元建築士(48)による偽装を見抜けなかった結果、偽装物件を販売し損害を受けたとして、国家賠償を求める訴訟を起こす方針を正式に決めた。

 関係者によると、ヒューザーは、耐震強度偽装問題が拡大した原因が、特定行政庁や検査機関の偽装の見落としにあった、との見解をまとめた。

 ヒューザーは昨年10月25日、検査機関のイーホームズから未完成のマンション4棟の構造計算書が改ざんされたとの通告を受け、さらに8棟で改ざんを確認したが「耐震基準を下回るとの認識はなかった」と主張。基準値以下の強度の物件に施工の許可を与えた最終的な責任は国にあるとしている。(共同)

耐震補強工事の促進を要望へ 被害17ホテルが協議会結成

2006/01/18 The Sankei Shimbun

 耐震強度の不足が分かった全国のホテル経営者や支配人が18日、東京都内に集まり、連絡協議会を結成した。12都府県の計17ホテルが参加。早期の営業再開に向け、耐震補強工事の設計審査を早めるよう、今月中にも国に要望書を提出する方針を確認した。

 これまで強度不足が分かった分譲マンションの住民同士が連携する動きはあったが、被害ホテルの関係者が連携するのは初めて。参加したホテル名は公表されていない。

 協議会事務局によると、18日の初会合には協議会に参加していないホテルも含め14ホテルが出席。姉歯秀次(あねは・ひでつぐ)元一級建築士(48)による構造計算書の偽造が判明して以降、いずれも営業休止が続いたままで、再開のめどは立っていない。

 事前に実施したアンケートでは、大部分のホテルが建物の耐震補強工事を行う方針。自治体と協議しながら計画を進めているが、自治体によっては設計段階で耐震性をチェックする機関が決まらず、補強工事が進まないケースもあり、国への要望を決めたという。

 国土交通省の18日までのまとめでは、構造計算書偽造が分かったのは全国で38ホテル。協議会には参加せず、再建に向け解体工事を始めたホテルもある。(共同)

小嶋社長喚問 ヒソヒソ…拒否連発 核心「訴追の恐れ」

2006/01/18 The Sankei Shimbun【東京朝刊から】

≪補佐人と相談に罵声≫

 「証言を控えさせていただきます」と約四十回。耐震強度偽装事件の証人として十七日、衆院国土交通委員会に喚問されたヒューザーの小嶋進社長(52)は「訴追の恐れがあるので」を理由に証言拒否を繰り返した。「証人喚問に呼んでくれと豪語していたじゃないか」と委員から罵声(ばせい)が飛ぶ。「ふざけるな」「バカヤロウ」と声を荒らげた昨年十一月の参考人招致とは一転し、逃げの一手の小嶋社長だったが、安倍晋三官房長官の秘書に相談した事実が明るみに出ると、思わず視線を泳がせた。

 午後一時四十分過ぎに第一委員会室に現れた小嶋社長。「(昨年十一月に自殺した森田設計事務所の建築士の)森田(信秀)先生の無念を晴らしたい」と数珠を握り、黒スーツに黒ネクタイ姿。くしくも多くのマンションが倒壊した阪神大震災から十一年の節目の日と重なり、委員会の冒頭、犠牲者への黙祷(もくとう)がささげられ、小嶋社長も頭をたれた。

 喚問では「違法性があったという認識はございません」と自らの刑事責任は明確に否定。しかし後ろに控えた補佐人の鶴見俊男弁護士としきりに相談。「偽装をいつ知ったか」「偽装を説明せずにマンションを販売したか」など核心に触れる質問には証言拒否を繰り返し、偽装認識と販売との関係については、ほとんど解明されなかった。

 議院証言法は、証人が自分や妻、三親等内の血族、後見人といった関係者が刑事訴追を受け、または有罪判決を受ける恐れのあるときは、宣誓や証言、書類の提出を拒むことを認めている。

 だが、小嶋社長の証言拒否のあまりの多さに、「いいかげんにしろ」「とぼけるな」と委員らはいらだつ。佐藤茂樹委員(公明)は、雄弁だった参考人招致を引き合いに「どこに行ったんですか、あの小嶋進は」と痛烈に皮肉った。

 糸川正晃委員(国民)から「証人喚問とは何か分かっているのか」と問われると「私、正確には存じ上げておりません」。

 小嶋社長は証人喚問後に会見し、「証言拒否の場面が多く、納得いただけなかったところも多かったと思う」と語り、「私を生かしておいていただければ、(瑕疵(かし)担保責任を果たすことは)不可能でない。住民の方にはご理解をいただきたい」とハンカチで目を押さえながら“立場”を訴えた。

 補佐人の鶴見弁護士は、“大不評”だった証言拒否について、「小嶋社長は捜査対象になっており、証言が本人にとってもいい結果をもたらさない。また喚問直前、捜査機関が小嶋社長を偽証罪で訴追する準備をしているという情報が入った」とし、「議院証言法に基づく正当な権利を行使させてもらった」と釈明した。

ヒューザー営業休止へ 「居住者補償」中心に縮小

平成18(2006)年1月17日 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽装事件で、ヒューザー(東京)は十六日、営業活動を休止し、会社は住民への被害補償を中心とした組織に縮小することを決めた。社員の大半はすでに退職しているという。小嶋進社長(52)は会社の資産とすべての個人資産を提供して公開し、偽装マンションの居住者補償にあてる方針だという。同社長は十七日午後に行われる衆院国土交通委員会の証人喚問で、この方針を表明する。

 関係者によると、ヒューザーは昨年十一月十七日に国土交通省で偽装が公表されて以降、手持ちの新たな物件の販売ができなくなり、事実上、営業が不可能となっていた。

 このため小嶋社長は会社を縮小、偽装マンションの居住者補償中心の会社にする方針を固めた。ヒューザーは社員に再就職先を斡旋(あっせん)し、三十人以上いた社員の大半がすでに退職。現在は残った数人の社員で住民との交渉などを行っている。

 ヒューザーは建築主としてマンション居住者に瑕疵(かし)担保責任がある。補償には多額の資金が必要だが、同社は弁護士らでチームをつくり、姉歯秀次元建築士(48)による構造計算書偽造を見抜けなかった民間の指定確認検査機関や、制度の不備を放置したとして国にも損害賠償請求し、その補償金を原資とする意向だ。

 ただ、住民集会などでの説明ではヒューザーの補償方針が二転三転しているため、住民は不信感を募らせている。破産申し立ての方針を表明する住民もいるため、住民側が同社の意向を受け入れるかどうか、流動的な部分もある。

ヒューザー、偽装把握後も販売継続 宅建法違反の疑い

2006/01/16 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽装問題で、中堅マンション販売ヒューザー(東京都千代田区)の小嶋進(おじま・すすむ)社長(52)らが、指定確認検査機関イーホームズから偽装を指摘された昨年10月25日、姉歯秀次(あねは・ひでつぐ)元一級建築士(48)から直接説明を受け、販売中の物件に偽装の疑いがあることを把握しながら販売契約を結んだり、鍵を引き渡したりしていたことが16日、分かった。

 小嶋社長も同日「間違いない」と事実関係を認めた。宅地建物取引業法は販売契約締結などの際、顧客への重要事項の説明を義務付けており、同法違反の可能性がある。ヒューザーは「当時は建物が耐震基準以下になっているとの認識がなかった」と述べた。

 ヒューザーは偽装問題の発覚後に新たな物件の販売が進まず、現在は営業休止の状態。発覚前に三十数人いた社員の9割近くが退職したことも判明した。当面は破産手続きを取らず、マンション入居者への補償を進めるとしている。

 ヒューザー関係者によると、検査機関から指摘のあった昨年10月25日の午後、同社設計担当役員が姉歯元建築士から「(構造計算書の数値を)低減した」との説明を受けた。

 役員は姉歯元建築士を伴いヒューザー本社に帰り、小嶋社長に会わせた後、姉歯建築設計事務所(千葉県市川市)に同行。姉歯元建築士がパソコンを操作し、構造計算書を偽造した8件のヒューザー物件を表示させ、役員が名称や数値をメモに取ったという。

 物件は販売中のグランドステージ船橋海神(千葉県船橋市)や、引き渡しが近いグランドステージ藤沢(神奈川県藤沢市)が含まれていたが、同社は同月26日に「藤沢」の1戸で販売契約を結び、28日に17戸を引き渡し、29日には「船橋海神」の1戸を契約した。

 同社側は「(船橋海神は)契約金が振り込まれており、担当が履行が必要と述べた」としている。(共同)

ヒューザー社員の大半退職 近く正式に営業停止へ

2006/01/16 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽装問題で、マンション販売会社ヒューザー(東京都千代田区)の従業員の大半が退職し、営業継続が困難な状態に陥っていることが16日、分かった。近く正式に営業活動を休止する。同社は会社資産と小嶋進(おじま・すすむ)社長(52)の個人資産を公開し、耐震強度不足が判明したマンション住民への補償に充てるとしている。

 しかし、複数のマンション住民が「小嶋社長の言動はまったく信用できない」として、資産保全のため破産申し立ての方針を表明しており、今後の推移は不透明だ。

 ヒューザー関係者によると、11月17日の偽装問題発覚後に新たな物件の販売が進まず、事実上営業ができなくなった。これに伴い、発覚前に三十数人いた社員の9割近くが退職し、現在は数人の社員が残るだけという。ヒューザー側は、退職者に再就職先をあっせん。当面は自ら破産手続きを取らず、補償を中心に会社を存続させる考え。

 また、弁護士らによるチームをつくり、姉歯秀次(あねは・ひでつぐ)元一級建築士(48)による構造計算書偽造を見逃した指定確認検査機関や、制度不備を放置したとして国にも損害賠償を請求。被害住民に対しては、連絡協議会をつくるよう求め、その合意に基づいて補償するなどとしている。

 同社は昨年12月中旬、偽装が発覚して建設を中止したグランドステージ町田(神奈川県相模原市)の土地と、埼玉県和光市のマンション用土地を売却した。

 計約21億5000万円の売却益のうち、約20億5000万円が銀行への借入金返済に充てられた。住民への補償原資は残る約1億円で、約200世帯に「迷惑料」として50万円ずつ支払ったという。(共同)

偽装把握後も販売継続 ヒューザー・小嶋社長認める

2006/01/16 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽装問題で、マンション販売会社ヒューザー(東京都千代田区)の小嶋進(おじま・すすむ)社長(52)らが、指定確認検査機関イーホームズから最初に偽装を指摘された昨年10月25日に、姉歯秀次(あねは・ひでつぐ)元一級建築士(48)から直接説明を受け、販売中の物件に偽装の疑いがあることを把握しながら販売契約を結んだり、鍵を引き渡したりしていたことが16日、分かった。

 小嶋社長も同日「間違いない」と事実関係を認めた。同社側は「当時は建物が耐震基準以下になっているとの認識はなかった」と説明している。

 宅地建物取引業法は、販売契約締結などの際、顧客への重要事項の説明を義務付けており、同法違反の可能性がある。

 同社関係者によると、指摘を受けた昨年10月25日の午後、ヒューザーの設計担当役員が説明を求めるためイーホームズを訪れ、同席した姉歯元建築士が「(構造計算の数値を)低減した」と述べた。

 役員は姉歯元建築士を伴ってヒューザー本社に帰り、小嶋社長に会わせた。その際も姉歯元建築士は「低減」と説明。

 その後、役員は姉歯元建築士と千葉県市川市の姉歯建築設計事務所に同行。姉歯元建築士がパソコンを操作し、構造計算書を偽造した7、8件のヒューザー物件を表示させ、役員が名称や数値をメモに取ったという。

 メモの物件には販売中の「グランドステージ船橋海神」や、引き渡しが近い「グランドステージ藤沢」も含まれていた。

 同社は、同月26日に「藤沢」の一戸で販売契約を結び、28日には17戸を引き渡した。

 報告を受けた小嶋社長は27日夕にすべての物件の販売中止を指示したが、29日には「船橋海神」1戸を契約。同社側は「契約金が振り込まれており、担当が履行が必要と述べた」と説明。また「当時は数値の意味がよく分からなかった」としている。(共同)

耐震偽装に懲役刑導入へ 「3年以下」軸に調整

2006/01/15 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽装問題を受け国土交通省は14日、再発防止策の柱として建築基準法を改正し、構造計算書の偽造などによって地震で倒壊する恐れのある建築物を造った建築士らに対し懲役刑を新たに導入、罰金刑も強化する方針を固めた。

 懲役刑の年数は法務省と今後調整するが、最大「3年以下」を軸に調整する。

 現在の罰則は50万円以下の罰金しかないため、大幅な強化となる。20日召集の通常国会に同法改正案を提出する。

 罰則強化では当初、懲役刑とはせずに罰金の大幅な引き上げを想定していた。しかし、再発防止策を検討している国交省の社会資本整備審議会や自民党などから「偽装問題の社会への影響を考えるべきだ」などとして懲役刑の導入を求める声が相次いでいた。

 自治体による違反建築物の解体命令などに従わない建築主らに対しては、建築基準法に「1年以下の懲役または300万円以下の罰金」など懲役も含めた罰則が既にある。

 個人の犯罪に対しては、罰金よりも懲役刑の方が抑止力があるとして、耐震偽装のような犯罪にも懲役刑を適用する方針を固めた。

 無許可で建設業を営んだ者に対し、建設業法が「3年以下の懲役」を含めた罰則を定めており、懲役年数を決めるに当たり参考にする。

 再発防止策としてこのほか、建て替えが必要になった分譲マンションの住民を保護することを盛り込んだ住宅品質確保促進法改正案と、建築士の免許に更新制を取り入れる建築士法改正案を提出する方針。(共同)

「非姉歯」新たに257件

平成18(2006)年1月13日 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽装事件で国土交通省は十二日、木村建設が設計や施工に関与し、姉歯元建築士以外が構造計算を担当した「非姉歯物件」が新たに二百五十七件あったとして、関係二十一都府県に対し、偽装の有無や耐震性の調査を依頼した。

 国交省は昨年、木村建設への立ち入り検査で約三千件の関与物件があったことを把握し、分類を急いでいた。これまで同社関与の「非姉歯物件」は二百十八件としていたが、平成七年以降の工事で新規分が見つかったという。今回、調査対象が増えたことで、木村建設や子会社の平成設計(東京)、販売会社のヒューザー(同)、総合経営研究所(同)が関与した「非姉歯物件」の総数は六百七十八件となった。国交省の十一日までの集計で、このうち総研絡みの二十六件を含む百八十九件で偽装がなかったことが確認されている。

耐震偽装 生コン硬度、規定外か 「藤沢」の現場写真公開

平成18(2006)年01月13日 The Sankei Shimbun

 姉歯秀次元一級建築士(48)が構造計算書を偽造した分譲マンション「グランドステージ藤沢」(神奈川県藤沢市)で、JIS規格に適合しない生コンが使用された疑いのある問題で、十二日、民主党の下条みつ衆院議員が、同マンションの建設現場に納入された生コンの写真を公開した。黒板に書かれた数値と合致しない写真も含まれ、下条議員は「何らかの手を加えた軟らかいものが納入されたと推測できる」と話した。

 グランドステージ藤沢を施工したのは木村建設(熊本県、破産)。同マンションに関しては、基となる設計図と、現場用の「施工図」に食い違いがあることがすでに判明している。耐震強度は基準値のわずか15%と判定され、姉歯物件の中でも最低クラス。

 生コンはJIS規格で硬さが決められており、流した直後の広がり具合で硬度をチェックする。写真は建設現場に納入された当日、木村建設の現場監督が撮影した。

 建物全体の重量がかかる半地下部分に使う生コンをチェックした平成十七年一月二十八日の写真は、黒板には直径三十七センチと記されているが、それを大きく超えているように見え、規定外の軟らかい生コンの可能性が高まっている。一方、同年四月十六日の写真は四階部分に使われたもので、ほぼ規定通りの硬度を示す広がり具合だった。

 下条議員はこの写真を一級建築士のほか、複数の生コン業者にも見てもらい、規定通りではない可能性が高いとの回答を得たという。

耐震偽装 ヒューザー 土地代過剰に高く 消費税かかる建物代低く

2006/01/12 The Sankei Shimbun【東京朝刊から】

 耐震強度偽装事件で、強度不足の多数のマンションを分譲したヒューザー(東京)が、物件の土地代を過剰に高く設定していたことが十一日、国土交通省などの調べで分かった。消費税は建物代だけにかかるため、相対的に建物代を低くすることで販売価格を抑えるのが目的だったとみられる。「格安物件」を標榜(ひょうぼう)した同社の巧妙な手法が浮かんだ格好だ。

 国交省などによると、例えば五千万円の物件で区分所有の土地代を三千万円、建物代を二千万円とした場合、5%の消費税は建物代にかかる百万円で、総額は五千百万円になる仕組み。ヒューザーは販売の際に土地代を高く、建物代を低く設定し、総額を抑えて顧客にアピールしていたとみられる。

 国交省は、耐震強度が基準の50%未満で解体や建て替えが必要となっている計十物件で、こうした実態を確認。昨年時点の路線価などと比べて、土地代が約四倍になっていたケースもあったという。

 ただ、「販売当時の実勢価格を調べて厳密に比較したわけではない。法的に問題があるかどうかも不明」(市街地建築課)としている。

 ヒューザーや前身の会社をめぐっては、姉歯秀次元建築士(48)による偽装物件のうち、問題の十物件を含む計二十三物件に関与していたことが判明している。

耐震偽装 公的支援策に反対 4都県、特措法要求で合意

2006/01/11 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽装事件について首都圏四都県の知事会議が十日、都内のホテルで開かれ、四知事は国が示した公的支援の枠組みに反対の態度で一致し、「責任は国にある」として、問題解決を図るため特別措置法の制定を求めることで合意した。一方、特措法は制定までに時間を要することが予想されることから、地方自治体の財政支出の法的根拠を明確にするために建築基準法の改正を国に強く求めることにした。

 出席したのは東京都の石原慎太郎知事、神奈川県の松沢成文知事、千葉県の堂本暁子知事、埼玉県の上田清司知事。

 国が示した支援枠組みは地域住宅交付金制度を活用するため、費用負担の割合が国45%、地方自治体55%となる。知事らは「法的根拠が薄い現状のままで財政支出をした場合、住民監査請求や住民訴訟の対象になる可能性がある」と懸念を示している。一方で、地震はいつ起こるか分からないため、住民の生命財産を守る観点から早急に対応することが必要となる。

 会議では、国の責任を明確にすることが確認されたうえで、対応を急ぐために建築基準法を改正して、国と地方自治体の責任分担の明確化を求めることで一致。同法改正によって、現在の「45対55」の負担割合を、最低でも「50対50」にするとしている。

 会議後、石原知事は「地方分権、民営化は結構だが、それに法体系がともなっていない。分権を裏付ける法体系を国につくってもらいたい」と言及。また、上田知事は「法整備の前に財政支出の必要性が出たら、後日、地方交付税などで国が措置をすればいい」などと述べた。

自治体によるチームを設置 強度偽装の再発防止へ国交省

2006/01/10 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽装問題を受けた再発防止策を検討中の国土交通省の社会資本整備審議会基本制度部会は10日、2回目の会合を開き、建築確認制度の在り方を地方自治体の視点から見直すため、自治体担当者によるワーキングチームの設置を決めた。

 チームは偽装したマンションやホテルがある自治体など12都道府県と5市区の担当者で構成。(1)自治体が行う建築確認の在り方(2)民間の指定確認検査機関の指導や監督をどうするか(3)建築士に対する指導などの方法―を検討、2月をめどに部会に報告する。

 この日の部会では、民間の指定確認検査機関が建築確認した建物に偽装があった場合でも、地元自治体に賠償責任が生じる可能性がある現行制度に対し「自治体に責任が及ばない制度に改めるべきだ」との意見が委員らから出た。

 このほか「建物の構造設計をした設計士とは別の構造設計士がチェックする制度を導入すべきだ」など、建築主側に厳しい義務を課す意見が相次いだ。

 部会は、2月中旬に中間報告をまとめる。国交省はこれに基づき、建築基準法と建築士法の改正案を通常国会に提出する方針。(共同)

一部問題なしのマンション、全世帯に使用禁止命令 東京・世田谷

2006/01/10 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽装問題で、東京都世田谷区は10日、構造計算書偽造が確認された同区のマンション「グランドステージ千歳烏山」(31戸)について「住民の安全を確保するため」として、建築基準法に基づく使用禁止命令を出した。2棟に分かれた構造で片方の耐震性は問題ないが、区は全世帯の住民に1月31日までの退去を求める。

 区は2棟を命令の対象としたことについて、建築確認は1棟扱いで、両棟の機能が一体化していることを理由に挙げた。建て直しか補強工事で済ませるかについては、住民の間で意見が分かれている。

 マンションは5階建て部分(22戸)と3階建て部分(9戸)があり、渡り廊下で結ばれている。3階建て部分の耐震性は安全基準の149%だが、5階建て部分は34%で震度5強の地震で倒壊の恐れがあるという。

 区は「3階建て部分は大規模地震でも倒壊しないが、揺れで変形した後に元に戻る力には計算上、問題がある」と全体を使用禁止にした根拠を補足した。

 命令書を受け取った住民の男性(44)は「命令は法律に基づくもので仕方がない。建て直しや補修でどの程度の費用が必要かはっきり分かるまでは、今後の方針を決断できない」と話した。

 マンションの建築主はヒューザーで、姉歯秀次元一級建築士(48)が構造計算を担当し、木村建設が施工した。偽装問題が発覚した後の検査で区は「問題なし」と判断したが、12月の再検査で構造計算書の偽造が判明した。(共同)

「偽造見逃し」一級建築士6人を処分へ 国交省、24日決定

2006/01/10 The Sankei Shimbun

 国土交通省は10日、姉歯秀次(あねは・ひでつぐ)元一級建築士(48)による構造計算書偽造を見逃したとされるシノケン東京支店など元請け設計事務所5社の一級建築士の処分について、6人を対象に24日に免許取り消しか業務停止の懲戒処分とすることを決めた。

 処分は、建築基準法20条に違反して強度不足の建築物を建てたというのが理由。6人については、かかわりの度合いによって処分内容が異なる見込み。建築士法に基づき、24日に開く中央建築士審査会(会長・村上周三(むらかみ・しゅうぞう)慶大教授)の同意を経て正式決定する。

 姉歯元建築士による計算書の偽造は9日現在で89物件が確認されている。国交省は平成設計など残る計11事務所の建築士十数人についても、聴聞など事実確認の手続きを経て3月末ごろまでに処分を決める方針。

 処分対象の一級建築士は、11月に国交省が発表した偽造21物件にかかわったシノケン東京支店のほか、エスエスエー建築都市設計事務所、木村建設、下河辺建築設計事務所の各1人と、スペースワン建築研究所の2人。

 国交省が昨年末に開いた弁明のための聴聞では、建築士らは「偽造は知らなかった」「姉歯元建築士は優秀な構造設計者と聞いていた」などと説明したという。(共同)

国交省、10年間で200万戸を耐震診断 100万戸は改修へ

2005/12/29 The Sankei Shimbun

 国土交通省は29日までに、大規模地震でも倒壊しない住宅と建築物の割合を2015年までに約90%に引き上げる耐震化目標の達成のため、今後5年間で住宅100万戸、10年間では150万―200万戸を耐震診断し、100万戸を耐震改修するなどの数値目標を固めた。

 達成には改修のペースを現在の2、3倍にする必要がある。来年1月下旬に施行する改正耐震改修促進法で初めて定める基本方針案に盛り込んだ。都道府県などは06年内に、診断や改修で住民負担を軽減する補助制度や地域ごとの数値目標を示した耐震化促進計画の作成などが求められる。

 数値目標ではこのほか、デパートや病院、学校など多くの人が利用する建築物では今後5年間で3万棟、10年間で5万棟を耐震診断し3万棟は耐震改修する。

 建築基準法で耐震基準を強化した1981年以前に建てられ、耐震性が不十分と国交省が推計するのは03年で一戸建てやマンションを含めた住宅4700万戸のうち1150万戸、建築物36万棟のうち9万棟。耐震基準を満たすのは住宅3550万戸、建築物27万棟で耐震化率は75%となる。

 約90%を達成するにはこの耐震改修に加え、老朽化した住宅の建て替えが550万戸、建築物の建て替えが2万棟進むことを前提にしている。

 促進計画では、都道府県は想定される地震の規模や耐震化の状況に応じて住宅やデパート、病院など用途ごとに耐震の診断や改修の数値目標を盛り込む。学校、病院、庁舎など公共建築物については、早急に耐震診断を実施して結果を公表、耐震化を推進する整備プログラムを作成する。

 市町村が策定する促進計画には、地震被害を受ける可能性がある地域を示すハザードマップの作成や公表、優先的に耐震化に着手すべき建築物や重点的に耐震化すべき区域などを盛り込むよう求めている。(共同)

都内の偽装は計24件に 東京都が姉歯物件まとめ

2005/12/26 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽装問題で東京都は26日、姉歯秀次元建築士が構造計算に関与した都内の建築物は計83件あり、このうち24件で構造計算書の偽造が判明したと発表した。

 都によると、偽造が判明した24件の内訳はマンション20件、ホテル4件。83件のうち、構造計算書に偽造がなかった物件が26件、建築計画中止などが8件で、25件は偽造の有無を調べるために再計算中という。

 また、ヒューザー、平成設計、木村建設、総合経営研究所が関与した物件のうち、姉歯元建築士がかかわっていない物件は計83件あった。26日現在、構造計算書の偽造は見つかっていないが、70件が再計算中という。

 姉歯元建築士が関与し、構造計算書が偽造されたホテル「プラザイン羽村」(東京都羽村市)について、都が再計算した結果、1階部分の強度が基準の54%しかなかったことが判明。震度5強で倒壊の恐れはないものの、耐震補強工事が必要という。(共同)

総研所長も国会招致へ 耐震強度偽造で衆院国交委

2005/12/06 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽造問題を審議する7日の衆院国土交通委員会に、経営コンサルタント会社「総合経営研究所」(東京都千代田区)の内河健所長が参考人として出席することが6日、決まった。参考人は、姉歯秀次一級建築士(48)ら計5人となった。

 ほかに出席するのは、昨年2月に姉歯建築士の構造計算書偽造を見抜いた東京都渋谷区のアトラス設計、渡辺朋幸代表(44)、渡辺代表に偽造を指摘された民間検査機関の日本ERI(東京都港区)の鈴木崇英社長(63)と、イーホームズ(東京都新宿区)の藤田東吾社長(44)。

 国交委は7日午後1時半から2時間、耐震強度偽造が行われた状況の説明を求める。(共同)

耐震偽造で住民支援策決定 政府、対策費に80億円計上

2005/12/06 中国新聞ニュース

 政府は六日午前、耐震強度偽造問題を受け、官房長官、国土交通相、財務相など八閣僚による会合で、耐震性が不十分なことが確認されている分譲マンションの住民らへの支援を中心とした総合対策を正式決定した。

 危険なマンションを地方自治体がいったん買い取って解体、建て替えて住民に再び分譲する緊急対策事業を盛り込んだのが特徴だ。

 安倍晋三官房長官は同日の記者会見で「政府は国民の不安を解消するためスピーディーで遺漏なき対応をしていく」と述べた。

 必要な費用は八十億円程度になる見込み。次期通常国会に提出する予定の補正予算案に計上する。建て替えなどへの補助が約五十億円、耐震診断促進などで約三十億円。

 対象は耐震強度が基準の50%未満で震度5強の地震による倒壊の恐れがあり改修での対応が困難な物件。国交省は「現時点でこの基準に合うことが確認された物件は、ヒューザー(東京)が売り主の七棟」としている。

 自治体は、都市再生機構に事業の実施を委託することも可能。住民にとっては、売り主と建て替え交渉する必要がなく、自治体への売却代金でローンの一部を返済できるメリットがある。

 対策事業で自治体は、建物の価値がないため土地の価格だけで住民から購入。解体費用は、建物を放置すれば周辺住民へも危険が及ぶとして、全額公費で負担する。建て替えでは、国と自治体は新しいマンションの廊下や階段など共用部分を中心に補助、住民の負担を軽減する。希望者には再分譲し、残った部屋は一般に分譲し事業費の回収にも充てる。

 このほか、(1)移転費を被災者生活再建支援制度に準じて最高百万円助成(2)転居先での家賃の補助(3)ローン返済期間の延長による毎月の支払額の軽減や金利の減免(4)固定資産税の負担軽減−を盛り込んだ。

 一般マンションなどでも希望者には国や自治体の補助で耐震診断の実施を促進する。

耐震強度偽造で上場延期 リビングコーポレーション

2005/12/05 The Sankei Shimbun

 マンション販売のリビングコーポレーション(東京)は5日、耐震強度偽造問題でデータの改ざんを見逃したことが分かった民間検査機関の日本ERI(東京)に建築確認を多数委託していたため、14日に予定していた東京証券取引所マザーズへの上場を延期すると発表した。

 今井武一(いまい・たけかず)社長は「確認申請の大半を日本ERIに依頼しており、投資家の投資判断を誤らせないため」と、上場延期の理由を説明した。別の検査機関により構造計算書の再確認を行ったが「構造上の問題はなかった」としている。

 リビングコーポレーションは、開発にかかわった全78物件のうち、74件の検査を日本ERIに依頼した。一連の耐震強度偽造問題をめぐる国土交通省の調査経過や結果公表などを判断材料とし、早期の上場を目指すとしている。(共同)

不動産取得税を全額免除 神奈川、耐震強度偽造で初

2005/12/05 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽造問題で神奈川県は5日、自治体が使用禁止命令を出し、固定資産税を減免や免除したマンションなどの不動産取得税を全額免除すると発表した。県によると、不動産取得税免除の支援策は全国初という。

 県内では横浜市と川崎市のマンションにそれぞれ使用禁止命令が出され、固定資産税の減免や免除を決定。この2棟が不動産取得税免除の対象となる見込み。

 県税務課は、強度偽造による使用禁止が地方税法上の「自然災害を受けた場合」と同じと判断。取得税を免除し、納付済みの分は全額返還するという。

 今後、自動車税や個人事業税などの県税についても、入居者から申し出があれば、実情に応じて納付期限を延長するという。(共同)

偽造確認、12都府県55件に ホテル8件増と国交省

2005/12/05 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽造問題で国土交通省は5日、姉歯建築設計事務所(千葉県市川市)の姉歯秀次一級建築士が設計に関与したマンション、ホテルなど208件のうち、構造計算書の偽造が確認できたのが8件増え、12都府県55件となったことを明らかにした。愛知県の6件と京都府の2件で、いずれもホテル。

 地方公共団体の報告を集計すると、偽造のないことが確認されたのが97件、調査中が33件、建物の所在が確認できなかったのは23件になるとしている。(共同)

国交省、姉歯建築士を刑事告発 建築基準法違反

2005/12/05 The Sankei Shimbun

 姉歯秀次(あねは・ひでつぐ)一級建築士(48)による耐震強度偽造問題で、国土交通省は5日、マンションやホテルを設計する際に構造計算書を偽造したとして建築基準法違反容疑で姉歯建築士を警視庁に刑事告発した。

 告発に先立ち、警視庁は同日午前、70人態勢の捜査本部を単独で設置。近日中に千葉、神奈川両県警と合同捜査本部を設置、本格的な捜査に乗り出す。

 姉歯建築士によるマンション、ホテルなどの構造計算書偽造は国交省確認分だけで12都府県55件に上っており、住まいの安全の根幹を揺るがす問題は刑事責任の追及に向け、動きだした。

 告発後に設置される合同捜査本部は、証拠の散逸を防ぐため、年内にも関係先の家宅捜索に着手する見通し。建築基準法違反容疑にとどまらず、詐欺や文書偽造容疑での立件も検討する。

 告発対象はマンション3件とホテル1件。警視庁は姉歯建築士や建築主のヒューザー(東京都千代田区)、施工・設計にかかわった木村建設(熊本県八代市)=破産=や平成設計(千代田区)などの幹部らから任意の事情聴取を進める。

 警視庁は既に、国交省の担当課から資料の提供を受け、姉歯建築士の聴聞結果などの分析を開始。姉歯建築士が構造計算に関与した東京都内の物件について、耐震強度が著しく低い物件を対象とし、まずは建築基準法違反事件の捜査を進める。

 警視庁の捜査本部は、主に生活安全部の各課から集め、汚職や詐欺事件などの知能犯罪の捜査に当たる刑事部捜査二課の捜査員も加わった。(共同)

 「怖くて外出できない」。耐震強度偽造事件で、国土交通省は5日、姉歯秀次(あねは・ひでつぐ)一級建築士(48)を建築基準法違反の疑いで警視庁に告発した。全容解明の最重要人物は、発覚当初は報道陣に淡々と経緯を語ったものの、現在は姿を消し、千葉県市川市の自宅に帰っていない。携帯電話の着信にも応じず、沈黙を続けている。

 関係者らによると、姉歯建築士は妻の知人らが都内などに用意したホテルを転々とする日々。同建築士に構造計算を発注した設計事務所代表が、自殺とみられる遺体で発見された11月26日を境に、感情の起伏が大きくなった。自己中心的な言動を繰り返したり、突然ふさぎ込んだりしているという。

 関係者の1人は「姉歯建築士は毎日、偽造のニュースに目を通している。精神的に参っていて、かなり不安定な状態」と明かす。

 衆院国土交通委員会の参考人招致(11月29日)や千葉県の聴聞(12月5日)は、いずれも直前になって「今、外に出られる状態ではない」「体調不良」として欠席。7日に予定される国交委の再招致も応じるかどうか微妙だ。

 姉歯建築士の昔を知る親類や友人らは「なぜ偽造したのか」と割り切れない思いでいっぱいだ。

 姉歯建築士は1957年6月、仙台市の北約20キロの宮城県大郷村(現大郷町)で生まれた。両親と3歳年上の兄の4人家族。9歳で両親が離婚し、病気がちな母親が裁縫の内職などで家計を支えた。

 地元の中学から県内の工業高校に進学。卒業後、上京してゼネコンに就職し、一級建築士の資格を取得した。親類の男性は「家は貧しかった。秀次はすごい努力をして一級建築士の資格を取った」と振り返る。90年5月に千葉県に事務所登録している。

 偽造問題で渦中のマンション販売会社「ヒューザー」の小嶋進(おじま・すすむ)社長(52)も宮城県生まれ。姉歯建築士の出身高校と近い高校に通っていた。「もともと地元で接点があったのでは」と指摘する姉歯建築士の高校の同級生もいるが、ヒューザーは「問題発覚まで社長と姉歯建築士とはまったく面識がなかった」。

 高校時代の姉歯建築士の印象は「目立たない」「まじめな性格」「母親思い」。同級生のほとんどが「偽造をするような人間じゃない」と驚いた。

≪姉歯事務所の登録取り消し 千葉県≫

 耐震強度偽造問題で、千葉県は5日、県建築士審査会の承認を得て、姉歯秀次(あねは・ひでつぐ)一級建築士(48)が開設した姉歯建築設計事務所(千葉県市川市)の事務所登録を取り消した。

 県の諮問を受けた審査会は、全会一致で取り消し処分に同意。「前代未聞の事件で非常に残念。厳重処分が必要だ」などの意見が出たという。

 事務所登録が取り消されると、建築士はほかの事務所に移らない限り、業務ができなくなり2年間、全国で新たな事務所の登録もできない。

 国土交通省は7日、中央建築士審査会を開き、姉歯建築士の建築士免許を取り消す予定。(共同)

姉歯建築士また聴聞欠席 事務所登録取り消しへ

2005/12/05 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽造問題で、千葉県は5日、姉歯(あねは)建築設計事務所(千葉県市川市)の事務所登録取り消し処分に向け聴聞を開いたが、姉歯秀次一級建築士(48)は「体調不良」を理由に欠席した。

 千葉県は聴聞の再延期はせず5日午後、建築士審査会を開いて登録を取り消す方針。偽造問題で姉歯建築士に処分が出るのは初めて。県によると、姉歯建築士は電話で「処分に不服はない」との意向を伝えたという。

 県は当初、先月30日に聴聞を予定していたが、姉歯建築士が健康上の理由で欠席したため、延期していた。

 聴聞は、建築士法に基づく手続き。建築士が事務所を開設するには所在地の都道府県への登録が必要で、姉歯事務所は1990年5月に千葉県に登録している。

 7日は国土交通省が中央建築士審査会を開き、姉歯建築士の建築士免許を取り消すことにしている。(共同)

姉歯事務所が構造計算、愛知の3ホテルも偽装判明

2005年12月04日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 愛知県は4日、姉歯建築設計事務所が構造計算した県内のビジネスホテルのうち、大府市の「アズイン大府」と半田市の「センターワンホテル半田」、刈谷市の「エースイン刈谷」の計3棟について、いずれも構造計算書が偽造され、耐震強度が不足していると発表した。

 これで、東海3県で姉歯事務所が関与したホテル9棟のうち8棟で強度不足が判明した。

耐震強度偽造 解体費用は全額公費負担で

2005/12/04 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽造問題で、北側一雄国土交通相は4日、耐震性に問題があることが分かった分譲マンションの住民支援策で、マンションの解体費用については「周辺住民への危険もあり(解体は)公共性が高い」として、国と自治体で全額を負担する方向で検討していることを明らかにした。同日午前のテレビの報道番組出演後、記者団に語った。

 北側国交相は「売り主などの責任確定には時間がかかり、それまで待ってられない」と公的支援の理由を説明した。

 また解体のため転居を求められた住民の転居先家賃の補助について、公営住宅に入る人だけの減免は不公平として、民間の賃貸住宅でも一定の補助をする考えを示した。

 家賃補助について北側国交相は「介護が必要な人や子供の学校などさまざまな事情で公営住宅に移ることができない人もいる」と、配慮の必要性を述べた。(共同)

姉歯建築士、偽造手口使い分け ソフト巧妙利用/書類単純混在

2005/12/04 The Sankei Shimbun【東京朝刊から】

 耐震強度偽造問題で、姉歯(あねは)秀次一級建築士(48)が構造計算書を偽造する際、少なくとも二つの手口を使い分けていた可能性が高いことが三日、分かった。計算書の一部を正しいものと差し替える単純なパターンのほか、市販の編集ソフトを駆使して、計算プログラムに適合したと見せかける巧妙な手法も浮上。姉歯建築士は六年前から、建築確認を行う検査機関の“チェック能力”に応じて偽造法を変えていたとみられる。

 構造計算書は通常、国土交通相認定の計算プログラムソフトで作成される。地震発生時に水平方向にかかる圧力や鉄筋の本数などさまざまなデータを入力し、建築基準を満たせば「適合」のメッセージが表示される。

 国土交通省などの調べでは、姉歯建築士は誤った条件を入力した計算書類と、正しい条件で計算した書類を単純に混在させて、建物の強度を偽装。当初、民間確認検査機関「イーホームズ」(東京都新宿区)などの報告で発覚した二十一件はこうした手口だった。

 一方、十一棟の偽造物件に建築確認を下ろした民間確認検査機関「日本ERI」(東京都港区)によると、材料の強度変更や壁重量の書き替えなど書類に細かな改竄(かいざん)が重ねられていたという。

 本来、入力値が正常でなければソフトは「エラー」の文字を出し、認定番号を印字しない。しかし、ERI社などの調査で、市販の編集ソフトを使うと、計算ソフトの出力データの変更や、エラーの消去、認定番号の書き込みが可能になることが判明。同社は「姉歯建築士が編集ソフトを巧妙に利用していた可能性は否定できない」としている。

 これまでの国交省のまとめで判明している偽造物件四十七のうち、建築確認を行った機関の内訳は、民間が四社三十六件、自治体が十一件。関係者によると、機関により審査能力やチェックの厳格さにバラつきがあるといい、姉歯建築士は事情に応じて「単純」と「巧妙」の手口を使い分けていたとみられる。

 一方、四十七件で計算書作成が最も古かったのは、平成十一年の「ホテルセンピア」(長野県伊那市)で、姉歯建築士は産経新聞の取材に、「偽造の始めは平成十四年末ごろ」と話していたが、実際には建築確認が民間開放された六年前から手を染めていた格好だ。

木村建設が破産申請 負債57億、保有現金5億

2005/12/01 中国新聞ニュース

 耐震強度が偽造されたマンションやホテルを多く設計、施工した木村建設(熊本県八代市)は一日、東京地裁に破産手続きを申し立てた。債権者数は千六十九社で負債総額は約五十七億円。早ければ二日にも破産手続き開始決定が出て、破産管財人が選定される。耐震強度偽造問題で関係企業が倒産するのは初めて。

 記者会見した代理人弁護士によると、保有する現金は五億円だけで、偽造問題で被害を受けたホテルやマンション住民への補償は極めて難しいことが判明した。

 本社の土地建物や木村盛好社長の個人資産は、金融機関の担保となっており、配当財源となる資産は現金が約五億円、売掛金が約二億三千万円。工事が中断しているため、売掛金が回収できない可能性もあるという。

 ホテルやマンション住民が補償を受けるには、債権者集会前に管財人に債権の届け出を行い、債権額が確定すれば、ほかの一般債権と同様に配当財産となる資産から一定の割合で支払われる。

 しかし、代理人の弁護士は「建築主のヒューザーやシノケンなどとの補償割合の調整も必要で、最終的に債権額がいくらになるか、いつごろ補償が可能かは全く予想できない」としている。

 同社は耐震強度偽造問題がきっかけで十一月二十一日に一回目の不渡りを出し、事業を停止。二十四日に木村社長が破産方針を表明、二十五日には全従業員約百八十人を解雇していた。

 同社は大手ゼネコンより低いコストと工期の短い独自の工法で事業を拡大。マンションやビジネスホテル建設の受注を伸ばした。信用調査会社によると、二○○五年六月期の売上高は建設業としては熊本県内トップの約百二十七億円だった。

 木村建設は当初、熊本地裁での破産手続きを検討していたが、債権者が全国に点在しており、東京地裁に申し立てた。

住宅ローン返済繰り延べも 耐震強度偽造で全銀協

2005/11/30 The Sankei Shimbun

 全国銀行協会は30日、耐震強度偽造が発覚した分譲マンションの購入者に対し、住宅ローン返済の一時繰り延べを含めた救済措置を検討することで加盟184行が申し合わせたと発表した。

 全銀協によると、申し合わせは、一時繰り延べの検討のほか、照会があった場合の対応窓口の明確化など「適切な対応に努める」としている。

 具体的な繰り延べ期間などは顧客ごとの事情を精査したうえで個別に対応する。

 耐震強度偽造をめぐっては住宅金融公庫が3年間の返済額軽減や、返済期間の延長など救済策を講じるとしている。(共同)

倒壊恐れのマンションなど視察 救済措置を検討へ

2005/11/29 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽造問題で、衆院国土交通委員会は29日、姉歯(あねは)建築設計事務所(千葉県市川市)の姉歯秀次(あねは・ひでつぐ)一級建築士が構造計算書を偽造し、地震で倒壊の恐れが指摘されているマンションなどの現場視察をした。

 一方、安倍晋三官房長官は同日午前の記者会見で「国としてどのように責任を持って対応すべきか。どのような公的な支援があるのか、必要かを検討している」と述べ、入居者のマンションからの移転費用などを念頭に公的資金投入による支援に前向きに検討していくことを明らかにした。

 林幹雄(はやし・もとお)委員長らは午前8時45分ごろ、ヒューザー(東京都千代田区)が建築主で、指定確認検査機関イーホームズ(新宿区)が建築確認した千葉県船橋市のマンション「セントレジアス船橋」に到着。国交省、船橋市の担当者らから工事中止に至る経過説明を受け、約20分間建物内を回った。

 工事の担当者は「設計者に『鉄筋が少ないのでは』と指摘すると、『姉歯氏はこれが売りだから』と言われた」と説明したという。林委員長は「救済措置をどう取れるのかなど、議論を詰め一刻も早く対応したい」と話した。

 その後、営業休止中のホテル「京王プレッソイン茅場町」(東京都中央区)も視察。ホテル関係者は、建築主や施工者らを相手に損害賠償請求訴訟を検討していることなどを説明した。

 イーホームズの藤田東吾(ふじた・とうご)社長も姿を現し、報道陣を前に「マスコミで誤った情報が流れている。当社としては違法な行為を行った認識はない。国会の答弁で事実を明らかにしたい」と話した。(共同)

木造個人住宅2棟でも耐震強度を偽造

2005/11/29 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽造問題で、千葉県船橋市は28日、姉歯建築設計事務所が設計した木造3階建ての個人住宅2棟で新たに偽造が見つかったと発表した。耐震性は現在、調査中。

 偽造問題発覚後、市が民間検査機関「UDI確認検査」(千葉県柏市)に2棟の再検査を指示。UDIは「改ざんなし」と報告したが、建築主から改ざんの恐れがあると指摘を受けた市が独自に調べた結果、偽造が分かった。

 UDIは「安全性に問題ない。偽造ではなく、入力や転記ミスの可能性が高い」と説明しているが、市は「全国で行われている再点検を根底から揺るがす事態」として国土交通省に報告。「改ざんなし」の結論を出した経緯を調べる。

 船橋市の調べでは、1棟は構造計算書で建物の重量を約半分で計算し、基礎部分の鉄筋量が基準の約80%しかないという。もう1棟は構造計算書に問題はないが、計算書を図面に書き換える際、鉄筋の間隔が広く取られており、鉄筋量が約60%しかない恐れがある。(共同)

姉歯建築士、国交委への出席拒否 「怖くて外出できない」

2005/11/29 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽造問題を審議するため29日午後開かれる衆院国土交通委員会に、参考人として招致されていた姉歯建築設計事務所(千葉県市川市)の姉歯秀次(あねは・ひでつぐ)一級建築士は28日、「怖くて外出できない」として、精神的な不安定を理由に出席を断った。

 ヒューザーの小嶋進(おじま・すすむ)社長、木村建設の木村盛好(きむら・もりよし)社長ら関係者6人は出席し与野党議員が3時間、偽造が見逃されていた事情などを聴く。

 衆院事務局によると、姉歯氏は28日夕、構造計算を同建築士に発注した森田設計事務所の代表が自殺したことに何度も触れ「精神的に参っている。怖くて外出できないので、委員会で答弁できない」と述べた。

 その上で「精神的に落ち着いたら、日をあらためて出頭します」と答えたという。25日には即答で出席を約束していた。

 ほかに出席するのは、木村建設の篠塚明(しのづか・あきら)・元東京支店長、シノケンの篠原英明(しのはら・ひであき)社長、イーホームズの藤田東吾(ふじた・とうご)社長、ホテルの強度不足を見逃した神奈川県平塚市の渡辺貞雄(わたなべ・さだお)都市政策部長。

 国交委は29日午前、工事停止中の千葉県船橋市の分譲マンションなどを視察する。30日は政府側に対応などをただす。(共同)

検査機関18社の手順に不備 国交省、105社立ち入り検査へ

2005/11/28 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽造問題で国土交通省は28日、国交相や地方整備局長指定の確認検査機関48社を対象に、年内に立ち入り検査する方針を決めた。都道府県知事指定の57社にも、立ち入り検査を実施するよう都道府県に指示する。

 姉歯建築設計事務所(千葉県市川市)による構造計算書の偽造発覚後に国交省が実施した緊急調査で、48社のうち18社の審査手順に形式的な不備があったことが判明。立ち入り検査で実態を確認する必要があると診断した。

 佐藤信秋(さとう・のぶあき)事務次官は、同日の記者会見で「100人以上の態勢を組み、検査機関の審査手順を精査したい」と述べた。

 アンケート形式の緊急調査では18社が、建築確認の際に一部の書類添付の有無を点検していないと報告。国交省は「形式的な不備で、法令違反に当たるとは言えない」としたが、各社で手順にばらつきがある上、途中の計算過程を省略するやり方の周知が不十分だったことも判明した。

 国交省は24日と25日に、姉歯設計事務所による計26件の偽造を見逃したイーホームズを立ち入り検査。未完成のマンション1件の偽造を見逃した東日本住宅センター(横浜市)にも、近く立ち入りする方針を固めていた。

 全国では、123の民間検査機関が建築確認審査の実施機関として登録。今回の立ち入り検査の対象は、構造計算書の審査業務を実施していない18社を除く105社。(共同)

川崎市が全国初の使用禁止命令 耐震強度偽造マンション

2005/11/28 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽造問題で川崎市は28日、川崎区の分譲マンション「グランドステージ川崎大師」について、地震による倒壊の危険性が高いとして、建築基準法に基づく使用禁止命令を出した。同日午後、入居者に命令書を交付した。

 この問題で使用禁止命令が出たのは全国初。川崎市は12月中旬をめどに退去を求める。

 川崎市は同マンションの耐震強度が、国土交通省の調査で基準の約30%だったことを重大視。緊急性が高いとして、住民と協議し使用禁止命令の発令を決定した。

 市によると、居住者からも「マンションが建築基準法に適さないことをはっきりさせてほしい」と、早期に命令を出すよう要請があったという。マンションには23世帯が入居し、すでに引っ越した世帯もある。

 横浜市も鶴見区のマンションへの使用禁止命令の適用を決めている。

 また神奈川県藤沢市は同日、マンション「グランドステージ藤沢」の外壁や室内を調査。現時点で問題はなかった。市は入居15世帯に退去を勧告している。(共同)

奈良の2ホテル、計算書偽造で営業休止 姉歯事務所が設計関与

2005/11/28 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽造問題で、奈良県は28日、姉歯建築設計事務所(千葉県市川市)が設計に関与した奈良市の「サンホテル奈良」と同県大和郡山市の「サンホテル大和郡山」で、構造計算書の偽造が判明したと発表した。

 建物1階の強度が足りず、震度6強の地震で倒壊の恐れがあるという。両ホテルはそれぞれ、25日と27日から営業休止している。

 県建築課によると、構造計算プログラムで再計算。建築確認時の数値と不一致があり、改ざんが判明した。

 サンホテル奈良は鉄筋12階建て。東京の設計事務所が設計、木村建設(熊本県)が施工し、今月5日にオープンしたばかり。サンホテル大和郡山は大阪市北区の建築士事務所が設計、同区の建設会社が施工し昨年5月にオープンしていた。

 県は建築基準法違反がなかったかなどを設計者らから聴く。(共同)

検査機関18社の手順に不備 耐震強度偽造問題

2005/11/28 中国新聞ニュース

 ▽国交省、全国116社立ち入りへ

 耐震強度偽造問題で国土交通省は二十八日、大臣や地方整備局長指定の確認検査機関を対象にした緊急調査で、イーホームズ(東京都新宿区)など二社を除く四十八社のうち十八社で建築確認の際、一部の書類添付を確認していないなど審査手順の不備があったことを明らかにした。

 国交省は、年内に四十八社への立ち入り検査を行うほか、都道府県知事が指定する確認検査機関六十八社に対しても、立ち入り検査するよう都道府県に指示する。

 国交省は二十四日と二十五日に、姉歯建築設計事務所(千葉県市川市)の姉歯秀次一級建築士(48)による計二十六件の偽造を見逃したイーホームズを立ち入り検査。未完成のマンション一件の偽造を見逃した東日本住宅センター(横浜市)にも、近く検査する方針を固めていた。

イーホームズ、法令手続き守らず審査簡略化

2005/11/27 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽造問題で、姉歯建築設計事務所(千葉県市川市)の姉歯秀次(あねは・ひでつぐ)一級建築士(48)による構造計算書の偽造を見逃した指定確認検査機関イーホームズ(東京都新宿区)が、法令上の手続きを守らず独自の解釈で簡略化した審査を続けていたことが27日までに、国交省の立ち入り検査で判明した。

 同社が見逃したホテルとマンションの建築確認は、計26件に上る。

 国交省は、偽造を見逃した背景には同業者と比べずさんな審査態勢があり、適正な審査をしていれば偽造を早期発見できたとして、指定取り消しを含め厳しい処分を検討している。

 省令では、構造計算の途中過程の審査を省略するには国交相の認定証などが必要。イーホームズへの立ち入り検査で、10階以上の建物約500棟の建築確認審査記録のうち、98件を抽出し調査した結果、大半は構造計算の途中過程を詳細に検査する必要があった。

 しかし国交省の聞き取り調査に対し、ほとんどの同社担当者(確認検査員)が「計算過程は見ていない」と答え、管理責任者も確認するよう指示していなかった。必要な書類がそろっていないケースも2件あった。

 イーホームズ側は法令を独自解釈した理由について「国交相認定のプログラムを使って作成されており、信用できると思った」と説明したという。

 同社は内部調査で偽造問題を知った後の今月5日、計算過程をしっかり確認するようマニュアルを改定している。

 一方、指定確認検査機関に対する国交省の定期検査は原則として年に1回行うが、検査員の数や記録の保管状況の確認などが中心で、個々の審査状況は調べていなかった。国交省は、実効性を高めるよう定期検査の内容も見直す方針。(共同)

群馬のホテルでも改ざん 構造計算書、営業を休止

2005/11/27 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽造問題で、群馬県は27日、姉歯建築設計事務所(千葉県市川市)が関与した同県渋川市辰巳のビジネスホテル「エクセルイン渋川」について、構造計算書が改ざんされていたことが分かったと発表した。

 震度6以上の地震で倒壊する恐れがあり、県の要請を受けホテルは同日から当面、営業を休止することを決めた。

 群馬県内で同事務所がかかわった建築物のデータ改ざんが判明したのは初めて。県内には前橋市と伊勢崎市にも姉歯建築設計事務所がかかわった2棟のホテルがあり、両市が調査している。

 県建築住宅課によると、構造計算プログラムによる再計算を実施したところ、建築確認時の構造計算書の数値と再計算の数値に不一致があり、構造計算書が改ざんされていたことが分かった。

 ホテルはJR渋川駅前にあり、昨年1月に開業。鉄筋11階建てで東京の建築事務所が設計し、構造計算を姉歯建築設計事務所が請け負った。

 ホテルによると、26日は約100人が宿泊、連泊予定の4人や新たな予約客10人には別のホテルを案内したという。(共同)

公的資金投入は居住者中心 耐震強度偽造で中川氏

2005/11/27 The Sankei Shimbun

 自民党の中川秀直政調会長は27日のフジテレビ報道番組で、耐震強度偽造問題に関し、マンション販売会社への公的資金投入の可能性について「あくまで居住者が中心になると思う」と述べ、否定的な考えを示した。

 同時に「今は居住者の安全と代替住宅の安定確保、原因究明を急がなければならない。ほかにもないか、全面チェックもしなければいけない」と指摘。与党として再発防止策の策定に全力を挙げる考えを示した。

 行政の責任については「マンション販売会社に全面的に瑕疵(かし)担保責任があり、そこは間違えないようにしないと大変なことだ」としながらも「公の事務がかかわっており、行政に法律上の責任がどこまで課せられているのか、しっかり検討していきたい」と述べた。(共同)

設計事務所代表が自殺 「姉歯」に構造計算発注

2005/11/27 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽造問題で、姉歯建築設計事務所に構造計算を発注し、行方不明だった森田設計事務所代表(55)が26日、神奈川県鎌倉市の海岸で、遺体で見つかった。家族が身元確認した。鎌倉署は状況から自殺とみている。

 森田設計事務所は22日、建築士法に基づき東京都の立ち入り検査を受けていた。

 調べでは、同日午前11時半ごろ、服を着たままの男性が海岸岩場の海面に浮いているのをサーフィンをしていた会社員(48)が見つけた。

 鎌倉署員が駆け付けたが既に死亡していた。右足を骨折しており、同署は、付近のがけから飛び込んだとみている。

 代表は問題発覚後に行方不明になり、家族が24日夜、警視庁調布署に捜索願を出し、代表の乗用車が神奈川県茅ケ崎市内の駐車場で見つかっていた。

 森田設計事務所は、倒壊の恐れが指摘されている横浜市と同県藤沢市のマンション計2棟の設計を請け負い、構造計算については姉歯建築設計事務所に発注していた。

 東京都の立ち入り検査は、姉歯事務所の偽造をなぜ見抜けなかったのか調べるのが目的。森田事務所の玄関ドアには「姉歯事務所の告訴を準備しているところですので、コメントは差し控えさせていただきます」との張り紙が出されていた。(共同)

建築士免許の更新制導入も 国交省が制度見直しへ

2005/11/26 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽造問題で浮き彫りになった建築士のモラル低下や自治体、民間検査機関の建築確認体制のずさんさを受け国土交通省は26日までに、建築士免許の更新制導入も視野に入れ建築士法の改正など抜本的な見直しに着手する方針を固めた。

 社会資本整備審議会建築分科会に専門部会を12月初旬にも設置して検討を始める。必要であれば、次期通常国会に改正案を提出する。

 建築士の更新制が導入されれば、更新に合わせ建築士の倫理や最新の知識を身に付けているかなどをチェックできるようになる。

 このほか専門部会では、今回問題になった耐震構造計算書の審査など建築確認事務を行う民間の指定確認検査機関が、法律に基づいて検査しているかを抜き打ちでチェックするなど法令順守の徹底策などを検討する。

 建築士の制度では、日本建築家協会が「建築士は適性がなくても続けられる。違反を起こしても行政処分もほとんどないのが倫理観を持たない建築士が生まれる原因だ」と指摘するなど見直しの機運が高まっている。

 このほか国交省は、危険なマンションが倒壊すれば、近隣の建物も影響を受けることから、大規模地震の恐れのある地域では、耐震性の乏しい住宅の建て替え促進に国や自治体が補助していることも参考に、地域指定から外れるケースでも早期の建て替えを可能にする方策も探る。販売主が資金難で解体撤去すらできない場合、自治体が代わって解体し国が補助することも検討候補だ。(共同)

販売値106%で買い取り ヒューザー社長表明

2005/11/26 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽造問題で、震度5強で倒壊する恐れがある完成済みマンション7棟を発注した中堅マンション販売会社ヒューザーの小嶋進社長は26日、購入者から要請があれば、すべてのマンションについて販売価格の106%の金額で買い戻すとの考えを初めて明らかにした。

 横浜市が使用禁止命令を出す方針の鶴見区のマンション「コンアルマーディオ横浜鶴見」前で報道陣に説明。小嶋社長は「無過失であっても、私どもには瑕疵(かし)担保責任がある」と理由を述べた。

 小嶋社長によると、希望者とは28日以降、販売価格の6%の手付金で売買契約を結び、3カ月以内に既に支払われた代金分を渡し、住宅ローンなどの残金は全額引き受けるという。

 資金について「公的資金なしでも問題はないと思う」と話し、マンションを補強し、それを担保に銀行から資金を借り入れる考えも示した。小嶋社長は同マンション居住者へも同様の説明をしたとみられる。

 ヒューザー側はこれに先立ち、神奈川県藤沢市のマンション「グランドステージ藤沢」について、居住者への説明会後、同社の担当者が藤沢市を訪れ、買い戻す方針を伝えた。藤沢市によると、ヒューザー側は買い戻しのほか、居住者の当面の生活資金の一部も負担すると説明したという。

 藤沢市は27日に居住者に説明会を開き、12月中旬までにマンションから立ち退くよう要請する方針。(共同)

都内で「強度偽造」被害者相談会 結束呼び掛け

2005/11/26 The Sankei Shimbun

 姉歯建築設計事務所による耐震強度偽造問題で、弁護士らでつくる「欠陥住宅被害全国連絡協議会」は26日、東京都品川区で被害者相談会を開催した。マンションの住民約30人が出席し、弁護士側は、被害者の会を結成して集団で売り主や建設会社と交渉していくよう呼び掛けた。

 同協議会事務局長の吉岡和弘弁護士は「被害者が個々に補償について交渉するのと一つにまとまるのとでは発言力の重みが違う。運動の力で責任企業や行政を押していくことが重要だ。裁判に持ち込まずに解決できることが望ましい」と提案した。

 弁護士側は「建築確認を行った民間検査機関や元請け設計事務所、自治体にも過失責任を問える」「売買代金が全額返ってくるほか、引っ越し費用や慰謝料も請求できる」などと説明。

 住民からは、国の責任の有無やローンの支払いのほか「住民同士の横の連携はどう取っていったらいいか」などの質問が出た。東京都墨田区のマンションに住む会社員男性(40)は「マンション各棟で状況が違うので、まずはお互いの情報共有からスタートしたい」と話していた。

 同協議会は12月3日も都内で相談会を開く。(共同)

横浜市、マンション使用禁止命令へ 強度が基準の41%

2005/11/26 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽造問題で横浜市は26日、姉歯建築設計事務所が構造計算書を偽造した同市鶴見区のマンションについて、地震に対する危険性が高いとして、建築基準法に基づく使用禁止命令を出す方針を居住者に伝えた。

 横浜市によると、今回の問題で自治体が建物の使用禁止命令を出す方針を決めたのは全国初。発令は30日以降で、その後は原則、建物使用を認めないという。

 同マンションは国土交通省の調査で強度が基準の56%と分かり、震度5強の地震で倒壊の恐れがあるとされたが、市の調査で41%とさらに強度が低いことが判明した。

 市は、この日の説明会に出席した居住者約20人に、禁止命令の内容や根拠などを記載した通知書を交付。退去後の住宅に公営住宅を提供することなども説明した。

 居住者からは「命令を出すのが早急すぎないか。引っ越し費用は補償されるのか」「なぜ建設前に強度不足を見抜けなかったのか」などの意見が出た。(共同)

新たに4都県で6ホテル営業休止 耐震強度偽造

2005/11/25 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽造問題で、姉歯建築設計事務所(千葉県市川市)が設計に関与した長野、静岡、愛知各県と東京都のホテル計6カ所が新たに営業を休止したことが25日、分かった。営業休止のホテルは計13カ所となった。

 長野県では「ホテルセンピア」(伊那市)、「駒ケ根プレモントホテル」(駒ケ根市)が新たに営業を中止。既に休止していた「エースイン松本」(松本市)では構造計算書の偽造が確認された。震度6の地震で倒壊の恐れがあるという。

 長野県や松本市が建築確認したが、コンピュータープログラムの計算過程に偽造があった。ホテル側から取り寄せた構造計算書で再計算した結果、数値の不一致などが判明したという。ホテルセンピアと駒ケ根プレモントホテルは熊本県の木村建設が施工した。

 静岡県では3施設で偽造の疑いが判明。「三交イン静岡」(静岡市)、「くれたけイン浜名湖」(同県湖西市)は営業を休止、同県沼津市で建設中の「三交イン沼津駅前」(仮称)は工事を中断した。

 東京都の「プラザイン羽村」(羽村市)は独自に検査業者に依頼したところ「問題がありそうだ」と連絡を受け、営業を停止。愛知県岡崎市ではビジネスホテル「岡崎第一ホテルイースト館」が、安全が確認されるまで営業を自粛した。(共同)

設計業者が所在不明 姉歯事務所に構造計算発注

2005/11/25 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽造問題で、姉歯(あねは)建築設計事務所(千葉県市川市)に構造計算を発注した東京都内の設計事務所を経営する50代男性の所在が分からなくなり、家出人捜索願が警視庁調布署に出されていることが25日、分かった。

 関係者によると、男性が都内の自宅に戻らないため、家族が24日夜、捜索願を出した。

 男性が使用していた乗用車は神奈川県茅ケ崎市内の駐車場で発見され、同県警茅ケ崎署員が付近を捜索している。(共同)

東京都「強度偽造マンション居住者に住宅斡旋」

2005/11/25 The Sankei Shimbun

 東京都は25日、姉歯建築設計事務所が偽造した構造計算書に基づいて建築確認を受け、建設された都内のマンション居住者に対し、都営住宅や都住宅供給公社などの公的住宅を有償で斡旋(あっせん)すると発表した。

 都によると、都内で耐震強度偽造が判明したマンションは8棟、計約280世帯。関係する区市に設置されている相談窓口を通じて12月1日から7日まで、3―6カ月の一時使用や長期入居を受け付ける。

 石原慎太郎知事は同日の定例会見で「都民の安全確保のため緊急措置を取ることにした」と述べた。(共同)

静岡3ホテルで偽造の疑い 構造計算書に不審点

2005/11/25 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽造問題で、静岡県は25日、姉歯建築設計事務所が構造設計に関与した県内5つのホテルのうち、3施設にデータの偽造の疑いがあると発表した。ほかの2物件は、偽造の形跡がないことを確認した。

 県によると、3施設の確認検査機関だったイーホームズに照会した結果、構造計算書の数値に不自然な点があるとの回答があった。ほかの2件は県が確認検査をしており、再調査で異常が認められなかった。

 偽造の疑いがあるのは三交イン静岡(静岡市)、くれたけイン浜名湖(同県湖西市)のほか、静岡市の不動産会社が同県沼津市で建設中の「三交イン沼津駅前」(仮称)。

 くれたけイン浜名湖を運営する呉竹荘(同県浜松市)は同日、「当面の間、休業する」と発表。三交イン静岡は23日から休業、三交イン沼津駅前も工事を中断している。

 呉竹荘が愛知県刈谷市で運営するホテル「エースイン刈谷」も姉歯事務所が構造設計に関与しており、同社は第三者機関に再審査を依頼した。(共同)

台東区、耐震強度偽造を見逃す 「深くおわび」

2005/11/25 The Sankei Shimbun

 東京都台東区は25日、姉歯建築設計事務所が関与した建物の構造計算書の偽造を見逃していたとして、同区が審査したマンション(12階建て)の建築確認を24日付で取り消したと発表した。建物は未着工だった。

 自治体が建築確認した姉歯事務所関連の物件で、耐震強度偽造が分かったのは、神奈川県平塚市のホテルに続き2件目。

 台東区によると、マンションは開発販売会社シンアイ(新宿区)が発注。姉歯建築設計事務所は、別の設計事務所から構造計算を下請けしていた。

 台東区は7月、いったん建築確認済み証を交付。耐震偽造問題の発覚を受け姉歯事務所が関与した建物の設計図書を再検査したところ、地震で加わる力を本来の6割程度として耐震強度を計算していたことが分かった。

 吉住弘区長は「建築行政への信頼を損ない深くおわびする。審査事務の厳正化を図る」としている。

 シンアイは「先週から確認作業を進めていて下請けに出されていたことが分かった。姉歯事務所が関与した建物はほかにはないが、非常に残念」としている。(共同)

シノケンは偽造指示を否定 3棟、来月にも解体

2005/11/25 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽造問題で、姉歯建築設計事務所が構造計算書を偽造したマンション4棟を開発したシノケン(福岡市)の篠原英明社長は25日、福岡市内で記者会見し「姉歯秀次建築士とは面識もなく、交渉の場もない」と主張。偽造の指示はしていないと訴えた。

 4棟はいずれも震度5強程度の地震で崩壊する恐れがあるといい、篠原社長は解体を決めた2棟に加え、さらに東京都港区の1棟も解体する方針を示した。12月にも着手する。残りの1棟についても解体の方向で調整中という。

 構造計算書が偽造されたシノケンのマンションは、同社が熊本県の木村建設に設計、施工を発注。木村建設が構造計算を姉歯建築設計事務所に委託した。

 篠原社長は「木村建設とも常識の範囲内で金額交渉し、圧力と取られるような交渉はなかった」と説明した。

 姉歯建築士は国土交通省に対し、施工会社の名前を挙げ「鉄筋を減らせ」と指示を受けたとしているが、シノケンの名前を挙げているなら名誉棄損容疑での告訴も検討するという。

 シノケン開発物件では、さらにマンション4棟の設計に姉歯建築設計事務所がかかわっていることが判明していたが、独自調査の結果、うち1棟は偽造がなかったとみられるという。(共同)

耐震偽造 「取引先から圧力」 建築士、現金渡し受注確保

2005/11/24 The Sankei Shimbun

 マンションやホテルの耐震強度の計算書を偽造した姉歯(あねは)建築設計事務所(千葉県市川市)の姉歯秀次一級建築士(48)が、周囲に対し「大口取引先の会社支店長から『鉄筋量を少なくしてほしい』との圧力があった」と語り、事実上、偽造を要求されたことを認める証言をしていることが二十三日、分かった。鉄筋量の削減は建設費の坪単価を抑えるためで、この支店長にリベートの現金を渡していたという。姉歯建築士は二十四日に国土交通省で開かれる聴聞会で、こうした経緯について説明するとみられる。

 関係者によると、姉歯建築士は以前、この取引先から依頼された仕事で、必要な鉄筋量を10%ほど減らした構造計算書を作成し、民間確認検査機関の「イーホームズ」(東京都新宿区)に提出した。当然、イー社側から変更を求められるだろうと考え、差し替え用の計算書を準備していたが、変更を求められなかったため、チェックの甘さを感じた。

 大口取引先の会社側は、これをきっかけに、仕事の依頼のたび、「鉄筋量を少なくしてほしい」と要求を強め、具体的な鉄筋の削減量を指示されることもあった。「それでは強度を保てない」と抵抗すると、「他の設計事務所に変更する」とほのめかされ、従わざるをえなかった、と話している。

 姉歯建築士は会社支店長に四、五回にわたってリベートを渡していたとも関係者に証言。領収書や送金控えを保存しているという。

 姉歯建築士は、この会社から直接工事を依頼されたほか、複数の建築主からの仕事もこの会社の紹介で請け負ってきた。このため「取引を切られれば生活ができなくなる」「家族のことを考えて引き受けてしまった」と悩んでいた。

 姉歯建築士の知人は「リベートを渡すことで取引先を必死に引き留めようとしていたようだ」と話している。

 姉歯建築士は今月十七日の問題発覚後、報道陣に対し、偽造の動機について「業界の全体的な風潮として(コストを)安くしないといけないというプレッシャーがあった」としたものの、「(偽造は)直接誰かに言われたわけではなく、独断でやった」と述べ、取引先からの圧力については否定していた。この取引先は、これまでの産経新聞の取材に「偽造は考えられないことで、驚いている」と語っている。

松本のホテルも営業休止 設計下請けに姉歯事務所

2005/11/24 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽造問題で、松本電鉄(長野県松本市)は24日、グループ会社が経営する同市のビジネスホテル「エースイン松本」について、姉歯建築設計事務所が設計に関与していたとして、耐震性などの安全性が確認できるまで営業休止を決めた。

 同社によると、21日夕、松本市から連絡を受けた。ホテルの設計は別会社に依頼したが、姉歯事務所が下請けでかかわっていた。

 長野県によると、姉歯事務所は県内のホテル4件の設計などに関与しており、このうちエースインなど3件は工事が施工され営業中。同県が建築主から構造計算書などを取り寄せ、改ざんがないか確認検査機関に依頼し調査している。早ければ25日に安全性の結論が出るという。

 エースイン松本は2001年12月オープン、客室数は167。(共同)

姉歯建築士を聴聞 国交省、免許取消手続き

2005/11/24 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽造問題で国土交通省は24日、姉歯(あねは)建築設計事務所(千葉県市川市)の姉歯秀次(あねは・ひでつぐ)・一級建築士(48)の資格取り消しに向け、同建築士に国交省への出頭を求め、多数の構造計算書を偽造した動機など弁明を聴くための聴聞会を開いた。

 聴聞会は午後1時20分から約30分間で終了した。姉歯建築士は国交省の職員を通じて「取材には応じない」とコメントした。

 また国土交通省は、姉歯建築士が偽造したとされる構造計算書を基に首都圏のマンション、ホテル計20棟の建築確認審査を行った検査機関「イーホームズ」(東京都新宿区)を立ち入り検査した。

 一方、長野県松本市のホテルも姉歯事務所が設計していたとして、安全確認ができるまで営業を休止することを決めた。ホテル休止は計7カ所になった。

 国交省は姉歯建築士が偽造を認めた21棟のうち、イーホームズがほとんどの審査を担当した点を重視。審査が適切に行われれば、構造計算書の偽造を見抜くことは可能だったとみており、立ち入り検査で業務実態を確認した上で、指定取り消しや改善命令などの処分を検討する。

 イーホームズはこれまでの同省の聴取に対し、必要書類がそろわないまま審査を行った不備や、偽造を見逃した結果責任は認めているが「審査業務に過失はなかった」と主張している。

 同社には午前10時ごろ、国交省職員3人が検査に入った。同社は「適切に確認検査業務を行っていると信じるが、事件に与えた適法性については国交省の判断に委ねる」とコメント。検査は同日夕まで行われる見込み。

 同社は、建築物の確認検査業務の民間開放が実質的に始まった1999年に設立。2002年11月に建物の建築確認や完了検査を行う機関として、国交相の指定を受けた。

 姉歯事務所の構造計算書の偽造は、イーホームズが10月に未完成マンションの建築確認書類を内部監査した際に発覚。同社が国交省に報告し、同様の事例がないかどうか調べたところ、完成済みのマンション、ホテル14棟を含む計21棟で偽造が見つかった。

 国交省は未完成の1棟を審査した「東日本住宅評価センター」(横浜市)も近く検査する。(共同)

イーホームズ社を立ち入り検査 20棟の不正見逃し調査

2005/11/24 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽造問題で国土交通省は24日、姉歯(あねは)建築設計事務所(千葉県市川市)の構造計算書を基に、首都圏のマンション、ホテル計20棟の建築確認審査を行った指定確認検査機関「イーホームズ」(東京都新宿区)を立ち入り検査した。

 また同日午後、姉歯秀次(あねは・ひでつぐ)・一級建築士(48)の免許取り消しに向け、同建築士に国交省に出頭を求め、弁明を聞くための聴聞会を開く。

 国交省は姉歯建築士が偽造を認めた21棟のうち、イーホームズがほとんどの審査を担当した点を重視。審査が適切に行われれば、構造計算書の偽造を見抜くことは可能だったとみており、立ち入り検査で業務実態を確認した上で、指定取り消しや改善命令などの処分を検討する。

 イーホームズは、これまでの同省の聴取に対し、必要書類がそろわないまま審査を行った不備や、偽造を見逃した結果責任は認めているが「審査業務に過失はなかった」と主張している。

 イーホームズでは午前10時ごろ、国交省職員3人が検査に入った。

 同社は、建築物の確認検査業務の民間開放が実質的に始まった1999年に設立。2002年11月に建物の建築確認や完了検査を行う確認検査機関として国交相の指定を受けた。

 姉歯事務所の構造計算書の偽造は、イーホームズが10月に未完成マンションの建築確認書類を内部監査した際に発覚。同社が国交省に報告し、同様の事例がないかどうか調べたところ、完成済みのマンション、ホテル14棟を含む計21棟で偽造が見つかった。

 国交省は未完成の1棟を審査した「東日本住宅評価センター」(横浜市)も近く検査する。

 <指定確認検査機関> 一定規模以上の建物を建築する場合、その計画の内容が建築基準法などに適合しているかどうか、地方公務員の「建築主事」に事前に申請して確認を受ける必要がある。この建築確認や、工事完了後の検査業務などを建築主事に代わって行う民間機関のこと。国土交通相指定の業者はイーホームズなど17社、特定のエリアで業務を行う地方整備局長や都道府県知事指定の業者は全国で約100社。役職員の構成や他の業務内容によって、確認・検査業務に公正を欠く恐れがないなどの条件を満たす必要がある。1998年の建築基準法改正を受け、翌年からスタートした。(共同)

木村建設社長、破産申請を表明 会社存続困難と判断

2005/11/24 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽造問題で、偽造物件のマンションやホテルを設計、施工した木村建設(熊本県八代市)の木村盛好(きむら・もりよし)社長が24日、熊本市で会見し、早ければ今月末に自己破産を申し立てる方針を表明した。

 木村社長は「再生の道を模索したが、偽造問題と手形不渡りによる信用低下はいかんともし難く、会社自体の存続が困難であると判断した」と説明。「わが社に構造計算という特殊な分野を処理する能力はなく、姉歯建築士の計算や審査機関の審査結果をそのまま信じてしまったことが問題発生の原因」とした。

 その上で「安全な建物を造るという建設会社としての義務を厳守できなかった責任は強く感じており、深くおわび申し上げる」と謝罪した。

 同社は、取引銀行が一部の債務の返済を要求したことで資金繰りが悪化。手形決済が不能となり、21日に1回目の不渡りを出し、営業停止状態となっていた。(共同)

偽造耐震計算書 重要数値、都合よく粉飾 重量7割、外力は半分

2005/11/23 The Sankei Shimbun

 マンションなどの耐震構造を示す計算書が偽造されていた問題で、姉歯(あねは)建築設計事務所(千葉県市川市)が偽造した構造計算書の内容が明らかになった。建物の「重量」を七割程度に減じたり、横揺れに耐え得る力を算出する際、地震時にかかる力を通常の半分程度にするなど、耐震性を高めるため都合のいい“粉飾”がなされていた。専門家によると、一目では偽造が発覚しにくいものの、重要な数値をチェックすれば異常と判断できる内容だという。

 産経新聞は、東京都墨田区の十一階建てマンション「グランドステージ東向島」の計算書を入手、専門家に分析を依頼した。書類は三百二ページで、「概要書」と「計算書」に分かれている。

 計算書では、国土交通相の認定計算ソフトを使い、震度6程度までの地震を想定した一次設計と、震度7の地震でも倒壊しないための二次設計を、別々に計算していた。

 一次設計に必要な入力データは常識的な数値だったが、導き出された建物全体の重量はなぜか、本来の七割程度にしかなっていない。さらに、地震の横揺れへの耐力を算出する際、半分程度の外力で計算していた。

 “粉飾”がなされているため、計算の途中ではほころびも出てくる。建物各階の重さは、一平方メートル当たり通常十四キロニュートン(一キロニュートンは百二キロの物体にかかる重力)程度のはずが、このマンションでは八キロニュートン以下にしかなっていない。計算書では、各階ごとに記載するのが一般的だが、姉歯事務所は記入していなかった。

 構造計算を専門とする一級建築士(59)は「記載してあれば、まっさきに怪しまれる個所」と指摘し、「記載しない代わりに別の似たような表を張り付けている。体裁を整えたのだろう」とみる。

 また計算書は、通常の計算と構成順序が異なっていた。この建築士は「わかりにくくしようという意図も感じられる。計算順序が異なり、建物の構造計算の実態を把握しやすい数値が抜けていれば、検査機関も丁寧に審査し、問いただすべきなのに」と、検査機関の甘さに驚いている。

 偽造計算をもとにマンションを建設すると、鉄筋コンクリート部分の躯体(くたい)費(外装、内装などを除いた本体工事費)は、本来より二−三割安くなるとみられる。この建築士は「『グランドステージ東向島』のように四千三百平方メートル規模のマンションであれば、八千万円から一億円程度安く建設できたのでは」と指摘している。

耐震強度偽造、年内にもマンション2棟解体

2005/11/22 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽造問題で、不動産会社シノケン(福岡市)の篠原英明(しのはら・ひであき)社長は22日、福岡市で記者会見し、震度5強程度の地震で倒壊の恐れがあるとされる東京都内の同社関連マンション2棟について、入居者退去の上で、年内にも建物を解体すると発表した。

 解体するのは新宿区と港区のワンルームタイプ2棟で計65戸。いずれも構造計算部分に姉歯(あねは)建築設計事務所がかかわっていた。今年、完成し、オーナーに販売後、賃貸されるなどしていた。

 篠原社長によると、既に管理会社を通じて入居者に早急な退去を要請。同日までに6、7世帯が転居したという。転居費用はシノケンが全額負担しており、マンションはオーナーへの販売時と同額で買い戻す方針。

 国土交通省に耐震基準を下回ると指摘されたシノケン関連のマンションは計4棟で、残りの2棟についても解体や補強工事などを含め対応を検討している。シノケンは4棟をすべて建て替えた場合、マンションの買い戻しや再建築に総額約32億7000万円の費用が掛かるとしている。

 シノケンは、これとは別に同社関連の4物件に姉歯事務所がかかわっており、独自に調査している。

 篠原社長は「早く入居者などが安心できる状況にしたいと考え決断した」と話した。(共同)

設計6社 都、立ち入り検査へ 耐震強度偽造

2005/11/22 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽造問題で東京都は二十二日、構造計算を姉歯建築設計事務所(千葉県市川市)に発注した元請けの設計業者六社に対し、建築士法に基づき近く立ち入り検査する方針を決めた。できるだけ早期の着手を目指し調整を進めている。

 各業者が保存している設計業務に関する帳簿類の提示を求め、事実関係の確認を急ぐ。

 立ち入り検査の対象は、スペースワン建築研究所、シノケン東京支店、エスエスエー建築都市設計事務所、木村建設、森田設計事務所、下河辺建築設計事務所。六社は今月中旬に都が事情聴取した際、姉歯建築設計事務所に発注した理由を「建築主に指示された」「仕事が速いから」などと説明したという。

 一方、北側一雄国土交通相は二十二日の閣議後の会見で、「この問題は純然たる『民と民』の関係とはいえないと思っている」と述べ、今後、居住者らの被害回復に向けた財政負担があり得ることを示唆した。

≪施工の木村建設 不渡り≫

 姉歯建築設計事務所(千葉県市川市)の耐震構造計算書偽造問題で、工事の多くに関与していた木村建設(熊本県八代市)の手形決済が不調に終わり、事業停止状態に陥ったことが二十二日、民間調査会社の東京商工リサーチの調べで分かった。同リサーチによると、負債は平成十七年十月末で約百三十八億円。

 手形決済が一回目の不渡りとなったのは二十一日に行われた手形取引。木村建設は昭和三十八年創業で、工期短縮を掲げ受注を伸ばした。平成十七年六月期には、年間百二十七億円の完工高を達成。熊本県内でトップの建設会社となった。

 木村建設本社にはこの日朝、社長名でおわびの文書が張り出され、債権者や下請け業者が詰め掛ける事態になった。

元請け設計業者を検査 耐震強度偽造で東京都

2005/11/22 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽造問題で東京都は22日、姉歯建築設計事務所(千葉県市川市)にマンションなどの構造計算を発注したエスエスエー建築都市設計事務所(新宿区)と森田設計事務所(世田谷区)を、建築士法に基づき立ち入り検査した。

 同様の発注をしたスペースワン建築研究所、シノケン東京支店、木村建設、下河辺建築設計事務所の4社も、24日以降、順次検査する。

 各社が保存している設計業務に関する帳簿類の提示を求め、姉歯事務所の不正をなぜチェックできなかったか、事実関係の確認を急ぐ。

 新宿区のエスエスエーが入るビルには、午後4時50分、都の職員4人が入った。検査は約2時間続き、姉歯関連の契約書類や設計図書などを調べ、コピーの提出を受けた。

 都によると、エスエスエー側は、立ち入り検査で「建築主のヒューザーから姉歯を勧められた」として、偽造への関与を否定する説明をしたという。(共同)

北側国交相、住民救済策に前向き 耐震強度偽造

2005/11/22 The Sankei Shimbun

≪「民間の問題とはいえず」≫

 北側一雄国土交通相は22日、閣議後の記者会見で耐震強度偽造問題について「建築確認という公の事務の関与があり、純然たる民間の問題とはいえない。行政がしっかり対応するべきだ」として、住民の救済策に前向きな姿勢を示した。

 閣議に先立ち、小泉純一郎首相に北側国交相が偽造問題の現状と対応を報告。首相からは「なぜ偽造を見抜けなかったのか、しっかり究明して再発防止に努めてもらいたい」との指示があったという。

 北側国交相は「建築主である売り主がまず、契約上の責任を負わなければならない。その上で設計事務所、施工業者、指定確認検査機関に落ち度があるかどうかを明らかにし、地方自治体と連携して行政の責任も検討しなければならない」と指摘した。具体的な支援策は「今後の課題として、しっかり考えていきたい」と述べるにとどまった。

 検査機関を監督する地方整備局や、都道府県を通じた建築確認事務の総点検結果が今週中にもまとまる見通しで、北側国交相は「検査機関の監督の在り方や建築確認のシステムについても、専門家の意見を聞いて詳細に検討したい」と話した。(共同)

耐震偽造「法と証拠に基づき対処」 公安委員長

2005/11/22 The Sankei Shimbun

 沓掛哲男(くつかけ・てつお)国家公安委員長は22日の閣議後記者会見で、耐震強度偽造問題について「非常に重大な事案であり、警察としても刑事事件として取り上げるべきものがあれば、法と証拠に基づいて厳正に対処していく」と述べた。

 沓掛公安委員長は「かなり専門的で複雑な話なので、国土交通省でよく調査してもらい、警察としてもそれに対応していく」とした上で「国全体として早急に取り組んでいく問題と考えている」と話した。(共同)

耐震偽造で国交省、自治体担当者を集め対策会議

2005/11/22 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽造問題で、国土交通省は22日午前、東京、千葉、神奈川の各都県や問題物件が所在する市区の担当者を集め、2回目の対策連絡会議を開いた。

 国交省が再計算した問題物件の耐震強度のデータを基に、姉歯(あねは)建築設計事務所(千葉県市川市)の姉歯(あねは)秀次一級建築士(48)が偽造した構造計算書が建築確認に使われた21棟について、各自治体が住民への説明や意見聴取などをしている現状を報告。国交省は姉歯建築士を建築基準法違反容疑で告発する方針などを説明した。

 千葉県は、姉歯建築士が関与した89件の共同住宅を含む計194件の設計について、調査結果を提出。国交省は各都道府県を通じ、他に構造計算書の偽造がなかったかどうか調査する。

 山本繁太郎住宅局長は「事実関係の究明と居住者の生活再建のため、問題意識を共有して対応に当たりたい」とあいさつした。(共同)

木村建設1回目不渡り 耐震偽造問題で経営悪化

2005/11/22 The Sankei Shimbun

 耐震強度偽造問題で、マンションやホテルを設計、施工した熊本県八代市の木村建設は22日、木村盛好社長名で「21日に手形が不渡りとなった」と同市の本社玄関前に張り紙を出した。関係者によると、民事再生法の適用申請を検討するなど、今後の対応を弁護士らと協議中という。

 不渡りは1回目。張り紙の説明によると、問題が連日報道されるようになり、取引銀行の熊本ファミリー銀行が「債権保全のため」として、木村建設の当座預金と同銀行への債務を相殺したことが不渡りの直接原因としている。

 熊本ファミリー銀行は「相殺の事実はない」(経営管理部)としている。(共同)

耐震強度偽造、倒壊の恐れ計16棟 補償の動き鈍く

2005/11/22 The Sankei Shimbun【東京朝刊から】

住民不安「連絡ない」/行政「民民問題」

 首都圏のマンションなどの耐震強度を示す計算書が偽造されていた問題で21日、既に完成している14棟すべてが建築基準法の耐震基準を下回り、うち13棟は震度5強程度で倒壊する恐れがあることが明らかになった。未完成7棟のうち3棟も同様の状態。営業中止に追い込まれたホテルの系列1店舗でも姉歯(あねは)秀次一級建築士(48)=千葉県市川市=が構造計算書を偽造していた疑いが新たに浮上。一部マンションで「建て替え」案が提示されるなど補償に向けた動きも出たが、住民や関係者の混乱は広がっている。

≪わずか「26%」≫

 建築基準法は震度6弱の中規模地震で損壊せず、6強以上の大規模地震で倒壊しないよう耐震基準を規定。今回、国土交通省が公表したのは震度6強の揺れを基準とした耐震強度だ。数値が「100」以上であれば基準を満たしていることになり、「100」の場合は「非常に大きな地震が来たときに何とか1発目に耐えられる」(同省建築指導課)状態だ。

 「50」以下だと震度5強で倒壊する恐れがあるが、12棟が下回り、「56」となった「グランドステージ弁天橋」(横浜市)も同様の危険があるとした。「78」の「初台2丁目マンション」(東京都渋谷区)でも耐震補強や免震工事が必要とみられる。

 数値が最低だったのは、ホテル「京王プレッソイン茅場町」(東京都中央区)と「芝大門2丁目マンション」(港区)の「26」。ほかに「グランドステージ藤沢」(神奈川県藤沢市)など7棟が「40」を下回った。

 工事停止中の「グランドステージ船橋海神」(千葉県船橋市)は、震度5弱の地震にすら耐えられないことが判明。強度を示す数値をはじき出す以前に、計算プログラムが「エラー」を表示したという。

≪怒り、混乱…≫

 耐震基準のわずか26%と診断された「芝大門2丁目マンション」。9月に入居したばかりの女性は「行政や販売、施工会社からは何の連絡もない。これからどうしたらいいのか分からない」と不安を募らせる。

 「グランドステージ川崎大師」では建築主のヒューザーが居住者に建て替えを提示した。だが、補償に向けたこうした動きはほんの一部だ。

 「グランドステージ東向島」では21日午後、マンション管理組合の理事長(32)が会見。「(危険性が)確認できたことで、怒りがこみ上げてきた」と声を震わせた。マンションではすでに20日、居住36戸のうち34戸が集まり集会を開催。一致団結して問題に対応していくことを決めている。

 理事長は、「建て替えや転居など問題解決にかかる費用をすべて要求していく」としたうえで、「建て替えなら、退去しなければいけない。うちにもこれから学校へあがる子供がいるが、学校が変わるなどということでは困る」と先の見えない今後の生活を考え、不安げな表情を見せた。

≪行政へ不満≫

 小泉純一郎首相は21日夜、「被害の救済はよく事情を総点検して対策を講じないといけない」と述べ、救済に前向きな考えを示した。

 「悪質な話で、建築士の詐欺みたいな問題だ」

 東京都は同日、姉歯建築士に構造計算を請け負わせていた都内6カ所の建築士事務所に対し、建築士法に基づく立ち入り検査をする方針を固めた。

 ただ、今後の被害補償となると、現実的な“骨組み”は、まだ全く見えてこない。

 金銭補償について、問題発覚直後(18日)に国土交通相の職務代行だった沓掛哲男国家公安委員長は、「民と民で発生していることなので、公的資金を出すことはないだろう」と述べ、家賃補助などを否定した。

 自治体も同様だ。横浜市は「(行政責任は)ゼロではないが、一義的には偽装した設計事務所が責めを負うべきだ」(まちづくり調整局、樋高雄治指導部長)、川崎市の阿部孝夫市長も「『民民』問題であり、市は家賃などを立て替える立場にはない」と語った。

 工事中も含め、5棟の危険マンションがあることが明らかになった千葉県船橋市。同市海神町に建築中の1棟は震度4−5程度の中程度地震でも倒壊の危険があるとされ、事態は深刻だ。しかし同市はこれまで、問題マンションの公表について「危険と断定されたわけではない」「家主の合意が必要」とかたくなに拒んでいた。

 マンション入居者への情報も滞りがちで、「住民の安全を守る任務を投げ出した」(住民)と、行政の対応にも不満を募らせている。一部の業者は補償策の提示を始めており、行政に踏み込んだ“交通整理”を求める声が強まっている。

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