TOPIC No.2-138 自由貿易協定(FTA)/経済連携協定(EPA)

01.自由貿易協定 byやさしい経済用語の解説
02.自由貿易協定(FTA) YAHOO!ニュース
03.自由貿易協定 外務省
04.アセアン自由貿易圏(AFTA)
05.模索始まる日本との自由貿易協定
06.日韓自由貿易協定共同研究
07.自由貿易協定に向け研究会設置で合意 ソウルで日韓首脳会談 asahi.com (2002/03/22)
08.日本・メキシコ/日本・チリ
09.世界の自由貿易協定関連情報  経済産業省



ASEANと中国が投資協定 19億人の巨大経済圏に

2009年08月15日 中国新聞ニュ−ス

 【バンコク共同】東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国の経済閣僚会議が15日、バンコクで開かれ、両者間の投資の自由化などを定めた投資協定に署名した。ASEANと中国は既に、自由貿易協定(FTA)に基づいてモノやサービス貿易の自由化を実施しており、今回の投資協定署名で双方の経済連携は一段と深化、総人口約19億人の巨大経済圏完成に近づいた。

 ASEANは今年6月、韓国とも投資協定を締結したが、日本とは結んでいない。日本政府当局者は「日本はASEAN主要国と2国間で投資協定を締結しており、ASEAN全体との協定がないからといって日本企業が不利益を被ることはない」として、中韓に追随する必要はないとの見解を示している。

 共同通信が入手したASEANと中国の共同声明案によると、中国のASEANに対する累積投資額は昨年末までの段階で61億ドル(約5800億円)。ASEANの対中投資は昨年だけで56億ドルで、声明案は投資協定締結により「双方の投資家が利益を享受できる」と強調した。

ASEANとインド、FTA調印=17億人の自由貿易圏誕生へ

2009/08/14 時事ドットコム

 【バンコク時事】東南アジア諸国連合(ASEAN)とインドは13日、経済担当相会合が開かれているバンコクで、自由貿易協定(FTA)に調印した。これにより、貿易品目の80%超で関税撤廃が実現し、人口17億人の巨大な自由貿易圏が誕生する。

 共同声明によると、協定は2010年1月1日付で発効。家電製品や、繊維、化学、機械などが対象品目で、16年までに順次関税を撤廃していく。

 一方、ゴムなど一部農産品を中心とする489品目は対象から除外された。また、ソフトウエアやIT(情報技術)分野は今回の協定に含まれていない。(

石破農水相が民主FTAを「虚妄」

2009.08.11 MSN産経新聞

 石破茂農水相は11日の閣議後会見で、民主党が衆院選のマニフェスト(政権公約)の中の日米FTA(自由貿易協定)の記述を「締結」から「促進」に変更したことについて「締結と促進は何が違うのか。促進というのは締結のためにやるもの。ゴールは決まっている」と批判した。

 またFTAにおいて民主党がコメなど重要な農産物を関税撤廃の対象から除外するとしていることについては、「コメだけが例外という話は通じない。大きな事実誤認、もしくは虚妄の考え方だと断ぜざるをえない」とした。

【コラム】中国・日本より先にインド市場獲得へ

2009.08.10 キム・ドフン産業研究院研究委員/中央日報 Joins.com

 3年近い交渉の末、韓・インド包括的経済連携協定(CEPA)が7日に締結された。CEPAは商品・投資・経済協力など経済全般に関する協定で、事実上、自由貿易協定(FTA)と同じ概念だ。ただ、自由貿易に対するインド国内の反感を考慮し、CEPAという用語を選んだのだ。正式署名式をソウルで行ったのもインド政府の要請によるものという。

 一方、韓国はこれとは違う雰囲気だ。政府の各部処がこれを積極的に知らせていることからも分かるように、韓印CEPAは韓国がこれまで締結した他のFTAとは違う意味を持つ。もちろん政府が発表したように、人口が11億人を超え、購買力基準で世界4位の経済大国とのFTAを締結したということは、それ自体でも大きな意味がある。しかし、まだインド市場で韓国の輸出が占める割合は3%未満にとどまっており、経済規模に対する行き過ぎた期待感はやや性急な感じもある。

経済の規模を別にして、インドとのCEPAには次の3つの意義を見いだせる。まず、韓国が本格的に相手国の市場開放に関心を持って交渉を推進してきたという点だ。これまで韓国の関心を引いてきた2つの大きなFTA交渉は韓米FTAと韓・EU間FTAだ。2つの協定は輸出市場の確保も目標の一つだったが、政府が打ち出したように韓国経済構造の先進化、通商先進国としてのイメージ向上など付随的な目的もあった。これに対し韓印CEPA交渉では、韓国の輸出市場の確保が最も重要な目標になった。韓国の輸出の60%以上が開発途上国中心に形成されている状況で、この数年間の輸入増加率が20%を超えているインド市場を主要競争国の中国や日本よりも先に獲得するという点で、政府内の盛り上がった雰囲気は十分に理解できる。

2つ目は、韓印両国の相互補完的な産業構造をうまく生かせるという点だ。インドはまだ全体的な経済構造が農業を中心とする1次産業に依存している。こうした意味で韓国の製造企業にとってインドは1次的には輸出市場であり、2次的には低賃金を活用した製造業生産基地として活用する余地がある国だ。インドの立場では「包括的経済連携協定」という名前にも表れているように、韓国の市場開放よりも韓国製造業との産業・技術協力に大きな期待をかけている。韓国としてもインドの優秀な情報技術(IT)人材とソフトウェア技術力を積極的に活用できるため、CEPAは韓国の製造業の競争力を高めるのに寄与すると期待されている。これと同時に韓国企業の対インド投資・進出を円滑にするための投資家保護、国民と同じ待遇などの条項が盛り込まれた点も目を引く。

3つ目は、このように期待が大きいにもかかわらず、韓国が今まで締結した他のFTAに比べ、かなり低いレベルの市場開放にとどまったという点も注目しなければならない部分だ。多くの品目が関税撤廃の対象から外れ、開放された品目もほとんどが関税撤廃スケジュールが長期間にわたって形成されているからだ。インドが結んだ他の協定よりもはるかに改善された結果とはいえ、冒頭で明らかにしたように、韓国が市場確保を目標に本格的に推進したFTA交渉だったため、この部分の結果に満足できないのは事実だ。しかし幸いなのは、もともとインドの関税率が高かったうえ、韓国がインドに販売する品目の価格弾力性が高かったため、こうした結果にもかかわらず輸出増加効果は大きいと予想される点だ。

韓国の主要輸出市場に浮上している開発途上国とのFTA交渉は今後もずっと進められるだろう。韓印CEPA締結が試金石になり、韓国がさらに積極的な市場開放の姿勢を持つことを期待する。

韓国・インド間CEPAに署名「どのFTAよりシナジー効果大」

AUGUST 08, 2009 東亜日報

 「両国の経済が相互補完性が大きいため、韓国―インド間の包括的な経済パートナー協定(CEFA)は、どの自由貿易協定(FTA)よりシナジー効果が大きいものと予想されます」

 外交通商部の金宗フン通商交渉本部長は7日、ソウル鍾路区世宗路(チョンノグ・セジョンノ)の政府中央庁舎の別館で、インドのアナンド・シャルマ商工長官とCEFAに公式署名した後、共同の記者会見でこのように述べた。

 金本部長は、「両国の交易規模は、昨年基準で約156億ドルで、02年に比べて6倍へ増加しており、韓国企業のインドへの投資も持続的に増えている」とし、「両国間の交易と投資は、CEPAを通じてさらに弾みが付くと思われる」と述べた。

 シャルマ長官は、「8月15日が両国の独立記念日だという事実は偶然ではなく、両国の友好的な関係がさらに強まっていけるという良いシグナルだ」とし、「今回の協定は、インドが主要経済国と締結する初の協定だ」と位置づけた。

 長官はさらに、「韓国経済はインド経済の成長モデルになってきており、現代(ヒョンデ)自動車、三星(サムスン)電子、LG電子の製品はどこのインド家庭でもよく見られる商品になった」とし、「インドの労働市場と産業構造が韓国の製造業技術と相まって、さらに高い効果をもたらす」と期待を示した。また、「今回のCEPAは保護主義の拡散を防ぎ、自由貿易を守護しようというメッセージを世界にアピールする機会になるだろう」と付け加えた。

 金本部長は、インドの専門人材が韓国に大勢流れ込むのではないかという質問に対し、「韓国の労力が足りない部分がある状況で、情報技術(IT)、コンピューター・プログラム分野で競争力のあるインドの人材と英語を共用語として使う英語の補助教師が入ってくると、韓国にもプラスになる」と説明した。

 他のブリックス諸国との自由貿易協定については、「中国は産学官共同研究の大詰めの段階に来ており、ブラジルは南米共同市場(メルコスール)4カ国と共同研究に取り組んでいるため、少し時間がかかっている。ロシアは、世界貿易機関(WTO)加入に向けた最後の段階に来ているため、その後に話し合う予定だ」と述べた。

民主、公約の「日米FTA締結」から農畜産物除外

2009年08月04日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 民主党は4日、衆院選の政権公約(マニフェスト)に明記した米国との自由貿易協定(FTA)締結について、農畜産物を除外するよう修正することを決めた。

 今週中に具体的な修正内容を発表する方針だ。

 菅代表代行は札幌市で開いたマニフェスト説明会で、「食料自給率の向上、地産地消などと矛盾するようなFTA交渉をするつもりは一切ない」と述べた。菅氏はこの後、記者団に「日本の酪農産品の関税率は世界で最も低い水準だ。これ以上の関税引き下げは主要作物等についてはやるべきではない」と語り、国内生産者保護のため、農畜産物は対象外とする方向で米国などと交渉する考えを示した。

 民主党は7月27日に発表したマニフェストに「米国との間でFTAを締結し、貿易・投資の自由化を進める」と明記した。アジア・太平洋諸国などともFTA締結を推進するとしている。

 農畜産物の輸入には、国内生産者の保護のために関税がかけられているが、同党のマニフェストは、農畜産物の関税の税率に触れていない。このため、政府・与党は「米、麦、畜産物が壊滅的な被害を受ける」(石破農相)などと批判していた。

 札幌市での説明会では、農業関係の参加者から「FTAの修正部分を早く紙で届けて欲しい。今のマニフェストは配ることもできない」との声も上がった。

 このほか、民主党はマニフェストに「国と地方の協議の法制化」を盛り込むなどの修正を加え、18日の衆院選公示までに「最終版」を決定する方針だ。

日中韓FTAの早期締結を・賢人会議提言

2008/04/28 NIKKEI NeT

 【北京=藤田哲哉】日中韓の政治、経済、学術分野の有識者が3カ国の協力関係などを議論する「日中韓賢人会議」(日本経済新聞社、中国・新華社、韓国・中央日報主催)は28日、提言を発表して閉幕した。提言は3カ国による自由貿易協定(FTA)の早期締結の必要性を強調。財務・金融など経済関係閣僚と中央銀行総裁が一堂に会する定期会合の創設も呼び掛けた。

 同会議は2006年の初会合以来、日中韓3カ国首脳による定期協議の創設を提唱してきた。3カ国が今秋にも第1回の定期協議となる首脳会談を開く見通しになったことに関し、参加者からは議論の成果と評価する声が相次いだ。

 FTAをめぐっては中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)が締結しているものの、日中韓3カ国の議論は進んでおらず、貿易の自由化が遅れている。北東アジアの隣国である日中韓がFTAを締結すれば経済効果は大きく、提言はこうした事態の早期打開を訴えた。

日本、米国とのFTA締結に前向き=WSJ紙(上)

2007/07/09 edaily/朝鮮日報JNS

 米国紙ウォールストリート・ジャーナルは9日、韓国が米国との自由貿易協定(FTA)締結交渉を妥結させたのを受け、危機感を抱いた日本が米国などとのFTA締結に向け急な動きを見せている、と報じた。

 今年4月、韓米FTA締結交渉が妥結したことで、韓国製の平面パネル型テレビなどに対する米国の関税が撤廃されることになり、日本の家電業界にとっては脅威にならざるを得ない状況だ。日本製の平面パネル型テレビは、米国に輸出する際に5%の関税を課せられる。

 日本の経済産業省のある官僚は、「韓国に遅れを取ってはならない。日本は(韓米FTAの締結に対し)警戒している」と述べた。

◆日本、韓米FTA締結に「焦り」

 日本はこれまで、世界貿易機関(WTO)による多国間貿易体制に依存してきたが、最近一部の貿易交渉が難航しているのを受け、相手国に特恵的な取引条件を付与する2カ国間貿易体制のFTAに関心を寄せるようになった。

 日本が現在までにFTAを締結している国は、シンガポール、メキシコ、マレーシア、タイの4カ国にとどまっている。2004年にピーターソン国際経済研究所が発表した報告書によると、日本が米国とFTAを締結した場合、日本の生産量が約3%増加する効果が期待されるという。

 日本政府の経済政策委員会は先月、米国や欧州連合(EU)とのFTA締結を視野に入れていると表明した。また、日本経済団体連合会(経団連)など経済界の一部でも、米国とのFTA締結の必要性を訴える声が高まりつつある。

日本、米国とのFTA締結に前向き=WSJ紙(下)

2007/07/09 edaily/朝鮮日報JNS

◆自動車・農業部門がカギ…韓米FTA批准の難航が影響を与える可能性も

 一方ウォールストリート・ジャーナルは、韓米FTAの批准に向けた米国議会の手続きが難航していることや、先月末にブッシュ米大統領の優先交渉権である、いわゆる貿易促進権(TPA=Trade Promotion Authority)の更新に失敗したことなどが日本とのFTA締結にも影響を与え得る、と指摘した。

 また、民主党の大統領選候補であるヒラリー・クリントン上院議員が韓米FTAの批准に反対する姿勢を表明していることで、2009年1月に就任する新大統領が誰になるかということも、日本とのFTA締結に影響を与え得るとしている。

 とりわけ、日本との交渉では自動車部門が最大のカギとなるとの見方を示した。最近、米国市場において自国の自動車業界が苦戦を強いられている中で、日本の自動車業界が勢いを増しているためだ。

 日本の対米輸出品目のうち、自動車と自動車部品は全体の40%を占めているが、それに加えて日本の自動車業界の大半は米国に工場を建てて現地生産を行っている。

 また、日本国内における農業関係者の抵抗も相当なものになると予想される。

 日本国内の農産物の価格が比較的高い一方で、米国が日本に輸出している農産物はオレンジ、パイナップルから小麦粉に至るまで多様で需要も大きいが、ロビー活動の影響も大きく、米国産農産物の輸入を強力に阻止するのではないか、と同紙は予測した。

 日本はシンガポールとのFTA締結交渉において、ほとんどの項目について合意したが、農産物の輸入に関しては厳しい制限が設けられた。これは他国との交渉においても同様だ。

 日本の農産物市場の開放に強硬に反対してきた全国農業協同組合中央会の小林寛史WTO・FTA対策室長は「日本の農家の廃業続出という事態につながるだけでなく、関税まで撤廃されれば現在の状況を維持することも難しくなる」と強調している。

 だが、内閣の一部ではむしろ農産物市場を開放することにより、農業従事者らの業種転換を促進することができ、経済的にプラスになるとみている、と同紙は報じた。

 これについて日本政府のある報告書は、「米国とのFTA締結は、グローバル化に対する懸念もあるが、農業分野の改革をもたらすメリットがある」と分析しているという。

米韓FTAが合意 貿易額、飛躍的に拡大へ

2007/04/02 中国新聞ニュース

 【ソウル2日共同=粟倉義勝】ソウルで開かれていた韓国と米国の自由貿易協定(FTA)締結交渉は二日、合意した。韓国メディアが政府高官の話として伝えた。焦点だった牛肉など農産物と自動車分野で歩み寄ったもようだ。

 アジアの有力市場である韓国とのFTA合意は米国にとって、一九九四年発効のカナダ、メキシコとの北米自由貿易協定(NAFTA)以来の成果となる。

 韓国は「日本や中国より先に米国とFTAを結ぶ」(盧武鉉大統領)との強い意欲を示して交渉に臨み、最大の貿易自由化合意を達成した。昨年七百億ドル(約八兆二千五百億円)超だった両国の貿易額が今後数年間で一千億ドルに拡大するとの試算もある。

 自動車や薄型テレビ、パソコンなどの対米輸出で韓国と競合する日本にとって大きな脅威となりそうだ。ただ、両国議会では合意内容に批判的な声が強く、FTA発効に必要な議会の承認は難航が予想される。

 米韓は鉱工業品の九割以上の関税を十年以内に撤廃することで一致。政府調達や電子商取引、医薬品、サービス・投資など広い分野での相互の市場開放でも合意した。

 米韓は昨年二月に交渉入りを表明した。米国が求める牛肉輸入条件の緩和や、双方が要求した自動車関税引き下げや税制見直しをめぐって交渉が難航。三月三十一日の交渉期限を四月二日未明まで延長し、その後も合意を目指して徹夜で協議を続けていた。

インドネシアとFTA締結 来年中にも、資源大国と初

2006年11月24日 中国新聞ニュース

 日本とインドネシアの自由貿易協定(FTA)を柱とした経済連携協定が、来年中にも発効する見通しとなったことが24日、分かった。インドネシアは日本最大の天然ガス輸入元。「資源大国」との初のFTAとなり、日本のエネルギー安全保障確保に向けた一助となりそうだ。

 これにより日本は、東南アジア諸国連合(ASEAN)主要5カ国と協定を締結または大筋合意したことになり、東アジアの経済統合を主導する態勢が整う。

 両国は昨年7月に交渉開始。安倍晋三首相とユドヨノ・インドネシア大統領が28日に都内で会談し、協定締結で大筋合意する。

 協定には天然ガス、原油といったエネルギー安定供給に関する条項を盛り込む。対日供給量を減らす際には事前協議の場を設けるほか、供給契約の確実な履行や日本からの資源開発投資の環境整備も明記する見通し。

 インドネシアからは、日本のホテルなどで接客業を学ぶ実習生の入国を認める。公費による観光関連の実習生受け入れは初めてで、1年間の語学研修後に2年間実習する案が有力だ。

 看護師や介護福祉士の受け入れも、日本の国家資格取得を条件に認める。海外からの労働者受け入れは、フィリピンに次いで2カ国目。

 インドネシアは2016年までに自動車関税を撤廃するなど、日本から輸出する鉱工業製品の関税は、ほぼゼロになる。

アジア「経済連携」構想 16か国31億人 巨大自由市場

2006年09月13日 読売新聞 Yomiuri On-Line

◆中国に対抗、日本が提唱 FTA交渉では出遅れ負

 日本は8月24日、東南アジア諸国連合(ASEAN)などとの経済閣僚会議で「東アジアEPA構想」を提唱した。今月9日には日本とフィリピンが自由貿易協定(FTA)を柱とする経済連携協定(EPA)を締結し、アジアでの自由貿易体制作りの機運が高まっている。ただ、欧州連合(EU)などに対抗する巨大な経済圏構想の実現には課題も多い。(シンガポール 菊池隆)

 ■GDP9兆ドル

 二階経済産業相が提唱した東アジアEPAは、日中韓とASEAN10か国に、インド、豪州、ニュージーランドを加えた16か国がFTAを柱とするEPAを締結する構想だ。〈1〉鉱工業品や農林水産品の関税撤廃〈2〉投資やサービスの自由化〈3〉知的財産権保護に向けた共通ルールの整備――などを進め、アジアを「質の高い経済圏」とすることを目指す。マレーシア・クアラルンプールで開かれた経済閣僚会議では、対象国の専門家による検討を来年から始めることで大筋合意した。

 対象16か国の総人口は約31億人と世界のほぼ半数を占め、国内総生産(GDP)の総額も9兆ドル超と、12〜13兆ドル規模のEUや北米自由貿易協定(NAFTA)に匹敵する。

 東アジアは「21世紀の世界の成長センター」でもある。経産省は「東アジアEPA」が実現すれば、日本のGDPを5兆円、16か国全体のGDPを25兆円押し上げると試算する。

 ■日本の狙い

 日本政府は、東アジア経済連携を主導することで、産業競争力の強化や企業の国際展開を支援する狙いがある。

 日本企業にとって中韓やASEANは生産拠点や市場として引き続き重要な地域だ。さらに、新興市場インドに対する企業の関心が急速に高まり、豪州も「資源・エネルギーの安定的な供給の観点から重要」(二階経産相)といえる。

 日本は、2008年にも政府間交渉に入り、10年をメドに交渉を終結させたい考えだ。今年12月にフィリピン・セブ島で開かれる第2回東アジアサミット(16か国の首脳会議)に、今後の検討に関する具体策を提示する方針だ。

 ■2構想

 ところが、東アジアの経済連携では、中国が2004年に提唱した「東アジア自由貿易地域」構想が先行している。

 日中韓・ASEAN(ASEANプラス3)の「13か国」でFTAを締結しようというもので、専門家による検討を終え、8月のASEANプラス3経済閣僚会議に報告書が提出された。報告書は「07年から政府レベルの検討に移行し、09年に政府間交渉を開始。11年までに交渉を終結する」と提言している。

 日本があえて「13か国」構想に対抗して「16か国」構想を提唱したのは、中国主導で東アジア経済連携が進むことに危機感を持つためだ。

 中国と韓国がASEAN全体とのFTAをすでに締結しているのに対し、日本は交渉が難航しており、「13か国」の枠組みでは立場が弱い。2通りの検討作業を並走させ、最終的にインドなどを加えた「16か国」連携に集約させて、主導権を取り戻す戦略だ。

 ■課題

 構想の中核となるASEANは、域内の成長力を高める狙いでFTA・EPA網の構築を進めている。

 ASEANは日本の東アジアEPA構想を支持したが、加盟各国から「日本とASEAN全体のFTA交渉を最優先すべきだ」とする強い注文も相次いだ。

 日・ASEANが10年以内に関税を撤廃する品目の割合は、「90%超」という点では一致したものの、95%近い開放要求に日本が難色を示し、交渉は進展していない。「東アジアEPA」実現の最大の懸念材料は、皮肉なことに提唱国である日本自身と言える。

 さらに、構想の実現には、農業大国で日本に厳しい農産品開放を求めるとみられる豪州や中国とのFTA締結も必要で、どこまで農業分野の自由化を認めるのかなど日本国内の意見調整も課題だ。

  FTAとEPA

 FTAは、特定の国や地域間で貿易にかかる関税や規制の撤廃を進める取り決め。鉱工業品と農林水産品に大別される「物品貿易」では関税の撤廃・削減が最大の焦点となる。金融や通信、観光など「サービス貿易」では参入の自由化や規制緩和が中心になる。FTAを柱に、投資の自由化や労働力の受け入れ、知的財産権保護のルール作り、産業協力など幅広い分野を含む取り決めをEPAと呼ぶ。 世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)が7月末に凍結され、世界的にFTAやEPA締結の動きが加速するとの見方もある。

米韓FTA交渉入りへ 07年春妥結目標、農民が抗議集会

2006/02/02 The Sankei Shimbun

 韓国の財政経済省によると、訪米中の金鉉宗(キム・ヒョンジョン)外交通商省通商交渉本部長とポートマン米通商代表がワシントンで2日午後(日本時間3日早朝)、自由貿易協定(FTA)の交渉入りを発表する。5月初めまでに予備交渉を終え、2007年3月末までの妥結を目指す。

 農産物の市場開放につながることを懸念する韓国の農民は2日、交渉入りに抗議する集会を開いた。韓国政府は農業交渉では段階的な関税撤廃など柔軟姿勢を示しながら、農民団体などの理解を求める方針だ。

 韓国と日本のFTA交渉は、農業問題で対立して協議が中断している。盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領は新年演説で米国とのFTA締結の方針を表明しており、米国との交渉妥結を優先することになりそうだ。

 韓国は1月、牛海綿状脳症(BSE)により停止していた米国産牛肉の輸入を再開、国内映画保護のため韓国映画の上映日数を定めたスクリーンクオータ制を米国の要求通りに縮小することを発表するなど、交渉入りの条件を整えてきた。(共同)

中国とチリがFTA合意 年内にも正式発効

2005/10/29 The Sankei Shimbun

 中国商務省は29日、中国とチリが自由貿易協定(FTA)締結で基本合意したと発表した。年内にも正式にFTAを発効させるとしており、発効すれば、中国がFTAを締結するのは東南アジア諸国連合(ASEAN)に続き2番目になる。

 24日から28日まで北京で開かれていた両国の交渉で合意に達し、薄熙来商務相とチリのウォルケル外相が立ち会って、両国政府代表が合意文書に調印した。

 中国とチリは昨年11月に胡錦濤国家主席がチリを訪問した際にFTA交渉開始で合意していた。(共同)

タイとFTA合意、来年署名・調印へ

2005年09月01日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 小泉首相は1日、タイのタクシン首相と都内で会談し、日本とタイの自由貿易協定(FTA)を柱とする経済連携協定の締結を基本合意した。

 鉱工業品、農水産品を貿易額で9割以上自由化するほか、投資、技術協力などを実施する。2006年の早い段階での署名・調印を目指す。

 シンガポール、メキシコ、フィリピン、マレーシアに次いで5か国目の締結合意相手国となる。

 合意によると、タイは鉄鋼の関税を10年以内に撤廃するほか、製造業にかかわるメンテナンスなどのサービス事業で、これまで日本企業に認めていなかった過半数の出資を可能にする。日本は、エビや熱帯果実などの輸入関税を即時撤廃するほか、自動車分野での技術協力やタイの料理人の在留要件緩和などを実施する。

 ただ、懸案の自動車では、3リットル超の大型乗用車の関税が2009年までに60%(現在は80%)に引き下げられるにとどまり、その後再協議となったことや、3リットル以下の乗用車についても再協議とされた。

 会談で、小泉首相は「日タイ関係を大きく前進させると確信している」と評価、タクシン首相も「経済連携によって、タイは、世界に向けた日本の生産拠点になる」と述べた。

 また、タクシン首相は来年6月、タイ国王の在位60年の記念式典に、日本の天皇、皇后両陛下を招待する書簡も手渡した。

日・タイFTA大筋合意、3リットル以下の車は再協議

2005年08月01日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 【バンコク=菊池隆】日本とタイの自由貿易協定(FTA)を柱とする経済連携協定(EPA)締結に向けた閣僚交渉は1日、残されたテーマだった自動車分野も終結し、両国はFTA締結で大筋合意した。

 タイ側は自動車部品の関税を原則2011年までに撤廃し、鉄鋼は全品目の関税を10年以内に撤廃するという内容で、日本の自動車、電機メーカーなどの製造業にとっては、タイでの現地生産コストの軽減に役立つ。ただ、全体の合意を優先させた結果、3リットル以下の車は手つかずのまま「再協議」とされるなど、完成車の取り扱いでは“玉虫色”の決着を余儀なくされた面もあり、他のアジア諸国とのFTA交渉にも影響しそうだ。

 大筋合意を受けて、タイのタクシン首相が8月中に来日し、首脳間でFTA締結を基本合意する方向だ。

 タイは、貿易・投資面の結びつきの深さから、日本にとって、東南アジアでの「FTA戦略の本命」と見られてきた。日本にとってタイは輸出で6位、輸入で11位の貿易相手国であり、輸出入を合わせた貿易額は東南アジア諸国連合(ASEAN)の加盟国で最大だ。FTAの締結が、日本の国内総生産(GDP)を1兆円以上押し上げるという政府の試算もある。

 今回、難航した自動車部品や鉄鋼の合意内容は、マレーシアやフィリピンとの基本合意と比べても見劣りしない。日本の自動車、電機業界は、ASEAN域内で完成品や部品の最適生産地を選べ、効率的な分業体制がつくりやすくなる。

 日本の次の課題は、ASEANを一つの生産基地・市場として円滑に活用できるよう、ASEAN全体とのFTA交渉を成功させ、貿易・投資の整合性のあるルールを作ることになる。

自動車各社、タイで技術者養成 10年で1万人計画

2005年07月31日 asahi.com

 タイに生産拠点をもつトヨタ自動車など日本の自動車メーカー各社が共同で、タイ人の生産技術者を10年で1万人育てるプロジェクトに乗り出す。日本の専門家の講習を受けた技術者が講師となり、現地部品メーカーなどの若手を育てる仕組み。大詰めの交渉が続く日本とタイの自由貿易協定(FTA)を軸とした経済連携協定の目玉事業で、協定がまとまれば両政府の資金支援を受け、年内にも始まる見通しだ。

 トヨタ、ホンダ、日産自動車、三菱自動車などが協力して、毎年十数人の日本人の専門家をタイに派遣し、日系企業で長い勤務経験のある数十人のタイ人技術者に生産現場のノウハウを伝授。そのタイ人技術者が地元のすそ野産業の技術者、管理者ら数百人に、現地の大学や日系企業の工場などで数週間〜3カ月程度の研修をおこなう。

 研修内容は(1)生産技術(成型、鋳造、機械加工など)(2)金型(金型設計、工程・品質管理など)(3)エンジニアリング(コンピューターによる設計・製造など)。日本勢各社で分担する。

 世界の主要自動車各社が進出するタイの04年の生産総台数は、前年より約18万台増の92万8000台で、05年は100万台突破が確実。うち9割を日系が占めている。

 タイ政府は「アジアのデトロイト」になることをめざし、外資企業誘致のほか部品産業の育成に力を入れ、自動車の部品、加工、素材関連は約2000社まで増えた。それでも、組み立てメーカーの生産増強のピッチが速いために人材不足が指摘され、日本勢は「このプロジェクトでタイの自動車産業をしっかりと底上げしたい」(佐々木良一トヨタ・モーター・タイランド社長)とする。

タイとのFTA合意へ 中川経産相が閣僚会談

2005/07/31 The Sankei Shimbun

 中川昭一(なかがわ・しょういち)経済産業相が31日、タイのソムキット副首相、タノン商務相とバンコク市内のホテルで会談し、タイとの自由貿易協定(FTA)を軸とした経済連携協定に大筋で合意する見通しとなった。

 年間100万台超の自動車生産能力を誇るタイとの貿易自由化の実現で、鉱工業品を中心に、東アジア域内で生産品目を補完し合う「分業」が一段と加速し、東南アジア諸国連合(ASEAN)との経済連携が深まる。

 FTAの実現は、既に発効しているシンガポール、メキシコを含め、フィリピン、マレーシアに続き5カ国目となる。

 タイのタクシン首相は7月中の合意を目指すことを表明。両国は1年半近く、交渉を積み上げてきた。

 交渉終盤で最大の焦点となったのは完成車の関税の取り扱いで、早期の撤廃を求める日本と自国産業の保護、育成を主張するタイの間で平行線が続いていた。

 農産品は、コメや豚肉を例外として棚上げすることで3月中に合意。さらに日本は、エビ加工品などの関税撤廃時期を協定発効の直後に前倒しする事実上の追加措置も決断した。(共同)

経産相、月末にもタイ訪問…FTA合意目指す

2005年07月24日 読売新聞 Yomiuri On-Line

 中川経済産業相は23日、福岡市内で開かれたタウンミーティング後の記者会見で、タイとの自由貿易協定(FTA)を柱とする経済連携協定について、「私が行って最後の詰めをしないといけない。7月末前後に行く」と述べ、今月末にもタイを訪れ、閣僚折衝で大筋合意を目指す考えを明らかにした。

 タウンミーティングでは、「日本はグローバルに軸足を置きすぎ、(2国間協定の)取り組みが遅かった。タイは7月中に片づけたい」と意欲を示した。

日マレーシアのFTA決着 首脳会談で25日正式合意

2005/05/22 The Sankei Shimbun

 中川昭一経済産業相は22日、自由貿易協定(FTA)を柱とする日本とマレーシアの経済連携協定の締結に向け、クアラルンプールで同国のラフィダ通産相と会談、懸案だったマレーシアの自動車、鉄鋼の自由化について合意し、協定締結交渉が決着した。

 小泉純一郎首相とマレーシアのアブドラ首相が25日に東京で会談し、正式に合意する。その後、協定文を作成し12月の署名を目指す。

 日本のFTAはシンガポール、メキシコ、フィリピンに続き4カ国目。日本はタイとも7月をめどにFTA交渉の妥結を目指しており、アジアを中心に経済連携を強化する通商政策に弾みがつきそうだ。

 マレーシアにとっては初の2国間のFTAとなる。工業化が進むマレーシアと日本のFTA実現により、東アジアで生産品目を補完し合う「分業」が一段と進展する。

 中川経産相とラフィダ通産相は会談後、記者団に「両国にとって非常に良い結果になった」と成果を強調した。(共同)

中国・李外相がFTA研究促進を提案…日中韓外相会談

2005/05/07 読売新聞 Yomiuri On-Line

 京都で7日行われた日本と中国、韓国の外相会談で、中国の李肇星外相が、日本と韓国に対し、3国間の自由貿易協定(FTA)研究を促進するよう提案した。

 3国は2001年に、公的研究機関による共同研究を始めており、今後は、政府関係者を加えることなどを検討する。経済交流の強化は、政治的な緊張が続く中韓両国との関係打開につながる可能性があるが、FTA締結には課題が多く、実現性は不透明だ。

 中国が、日中韓FTAに前向きなのは、自国の経済発展に加え、北米や欧州で進む市場統合に対抗し、東アジアの結束で主導権を握る狙いがある。

 しかし、中国は、世界貿易機関(WTO)加盟後も国内で模倣品が横行し、日本政府には、知的財産権の取り扱いなどが不十分との見方が多く、「投資ルールなどの整備が先決」(経済産業省幹部)との声が強い。

 日本は国内農業への配慮から、足早に交渉を進めにくい事情もある。日韓の2国間FTAでさえ、双方の主張に隔たりが大きく、昨年11月以降、交渉は中断したままだ。日中間は、農産品や工業製品の輸出拡大を狙う中国と、企業進出の投資協定に関心が高い日本で、議論がかみ合いにくい面もある。

7月までにFTA決着を 中川経産相、タイ首相らと会談

2005/05/06 The Sankei Shimbun

 タイを訪問中の中川昭一経済産業相は6日午後、日本とタイの自由貿易協定(FTA)を柱とする経済連携協定の締結に向け、タクシン首相、ソムキット副首相らと相次いで会談した。焦点となっている鉄鋼や自動車の関税撤廃で合意には至らなかったが、双方は7月までの決着を目指し、閣僚級も含め詰めの交渉を急ぐことで一致した。

 タクシン首相は会談で「歴史的合意にサインする用意はできている」と合意を急ぐ考えを強調、経産相も同意した。首相はまた、7月中に決着できれば、愛知万博(愛・地球博)でタイのナショナルデーに設定されている8月12日をめどに訪日し、調印する可能性を示唆した。

 これに先立ち、中川経産相はFTA交渉責任者のソムキット副首相と会談。「アジアのデトロイト」を目指すタイに対し、鉄鋼などの製造現場の人材育成への支援を表明。一方で、タイで作れない高付加価値の鉄鋼や自動車部品から関税撤廃を進めるよう促し、「日本製品の供給を受けることはタイの産業力強化につながる」と説得した。

 しかし、副首相は受け入れるに至らず、既に固まっていた農業分野で、日本に一段の市場開放を求める構えを見せた。経産相は「(農業は)終わった話。鉄鋼、自動車(の関税撤廃)や投資分野に集中すべきだ」と応じなかった。(共同)

東アジアFTAに台湾も 連主席、中国の支持要請

2005/05/02 The Sankei Shimbun

 中国上海市を訪れている台湾の野党、国民党の連戦主席は2日、台湾企業家らとの昼食会で講演し、東南アジア諸国連合(ASEAN)と日本、中国、韓国が創設を目指す「東アジア自由貿易地域」に台湾も参加できるよう中国の支持を求めた。

 連主席は、自由貿易協定(FTA)締結の動きを進めるASEANと日中韓はすぐに世界最大の市場を形成するとして、「台湾が置き去りにされれば、われわれは肝心な時に誤った決定を犯したことになる」と述べ、台湾の陳水扁政権にもFTA参加に向けて、中国との関係改善などを求めた。

 連主席は4月29日の胡錦涛・中国共産党総書記との会談で、関税を自由化した中台の「共同市場」創設促進で合意しており、合意を基礎に東アジア自由貿易地域構想への参加にも弾みをつけたい考えだ。(共同)

インドネシアとのFTA交渉、検討グループが開始提言

2005/04/12 読売新聞 Yomiuri On-Line

 日本とインドネシアとの自由貿易協定(FTA)を柱とする経済連携協定について、論点整理などを行ってきた政府の共同検討グループは12日、両国首脳に対し、FTA交渉を開始するよう求める報告書をまとめた。

 両国は報告書を受けて、22日からインドネシアで開かれるアジア・アフリカ首脳会議(バンドン会議)に合わせて予定されている日・インドネシア首脳会談の席上、交渉開始を正式合意する見通しだ。

 日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)全体とのFTA交渉が13日から始まるが、地域の大国のインドネシアとの関係の重要性から、2国間でのFTAも並行して進めることが必要と判断した。

日・タイFTAで閣僚会談 鉱工業分野の打開策を探る

2005/04/11 The Sankei Shimbun

 中川昭一経済産業相とタイのタノン商業相は11日午前、都内で会談し、自由貿易協定(FTA)を柱とする両国の経済連携協定締結に向け、交渉が難航している鉱工業分野について打開策を探った。焦点の鉄鋼などの自由化で双方が歩み寄りを図り、「一定の前進」(日本側交渉筋)があったという。今後は両国が国内調整を進めつつ、閣僚レベルも含め最終段階の交渉を続け、早期合意を目指す。

 3月29日−4月1日にタイで開かれた次官級交渉では、農林水産分野について大筋合意した。しかし鉱工業分野では、日本側が鉄鋼や自動車・同部品などで自由化を求めたのに対し、タイ側が多くの品目で例外扱いを主張し、溝が埋まらなかった。

 タノン商業相は、世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)の成功に向け、非農産物の市場開放を促す目的で10日に千葉市で開かれた東アジア各国・地域の非公式会合に出席するため来日した。(共同)

日本・タイFTA交渉、29日から次官級協議

2005/03/26 読売新聞 Yomiuri On-Line

 日本とタイとの自由貿易協定(FTA)を柱とする経済連携交渉は、29日からバンコクで次官級協議が開かれる。

 タイ側は、農業分野での譲歩を理由に、日本が重視する自動車や鉄鋼の関税撤廃について、例外扱いを強く要求して交渉は停滞しており、「目標としてきた4月中の交渉妥結は難しい状況」(通商筋)となっている。

 協議には、外務省の藪中三十二外務審議官、経済産業省の日下一正経済産業審議官、農林水産省の木下寛之農林水産審議官が出席する予定だ。

 協議前日の28日には、鉱工業品や投資・サービス分野での対立を打開するため、日下経産審議官が予備交渉を行うが、タイ側の譲歩は期待しにくく、4月上旬の閣僚級協議の開催自体も微妙な状況となっている。

韓国とのFTA交渉、「竹島」沈静化後に…外相が意向

2005/03/22 読売新聞 Yomiuri On-Line

 町村外相は22日、閣議後の記者会見で、韓国との自由貿易協定(FTA)締結交渉について、「1月から始める予定だったが、韓国の通商責任者から、『日本の申し入れのレベルは低い』と言われ、認識の違いで(交渉開始が)延びているところに、今回の(竹島問題の)騒ぎになった。政治的に落ち着いてから始めようと思っている」と述べ、竹島問題がFTA交渉中断の原因になっているとの見方を示した。

竹島問題、日韓FTA協議に影 交渉再開めど立たず

2005年03月20日 asahi.com

 難航している日本と韓国の自由貿易協定(FTA)交渉が、竹島問題でより一層、厳しくなってきた。昨年11月以降、交渉は中断しており、日本側は早期再開を呼びかけてきたが、韓国世論の反発を背景に、「竹島問題が冷却しないと、交渉再開は難しい」(通商交渉関係者)との声が強まっている。

 日韓FTA交渉は、03年12月から始まった。昨年12月の日韓首脳会談で、05年中の合意を目指し、できるだけ早期の交渉再開を確認したが、韓国側は交渉入りに慎重な構えで、再開のめどは立っていない。

 韓国が交渉に入らないのは、日本が内々に示した農業分野の関税引き下げ・撤廃内容の水準が低すぎるという不満からだ。鉱工業品分野の関税撤廃で、日本製品の流入が増えることから、「農産物で成果が得られないと国内的に収まらない」という背景がある。

 経済産業省の杉山秀二事務次官は17日の会見で、竹島問題の影響について「協定の交渉に影響を与えないことを期待しているが、今後の推移を注視していきたい」と述べた。外務、経産両省内では韓国内の反日世論が強まることで、韓国側が交渉の席に着くことがより難しくなったと分析する。

 両省は事務レベルでの交渉ではらちがあかないとして、閣僚級の協議を模索しているが、日韓関係全体のなかでの問題だけに「首脳会談をテコに進めるしかない」という見方が強まっている。

 竹島を巡っては、島根県が今月16日に「竹島の日」を制定したことに韓国が反発。反日感情の高まりや、韓国政府による対日政策の見直しなどの動きが続いている。

FTA交渉開始へ月末から共同研究会開催

2005/01/22 読売新聞 Yomiuri On-Line

 政府は22日、インドネシア、チリとの自由貿易協定(FTA)を柱とする経済連携協定の交渉開始へ向けての共同研究会の初会合を、1月31日、2月1日の両日、ジャカルタ、東京でそれぞれ開催することを明らかにした。

 インドネシアとは4月の正式交渉入り、チリとは11月の交渉開始合意を目指す。共同研究会は、産官学の関係者らが、FTA交渉開始の準備段階として、互いに関心の高い分野や品目の論点を整理するために設置する。

 日本は4月に東南アジア諸国連合(ASEAN)全体とのFTA交渉を開始することを決めているが、インドネシアとは個別のFTAを結び、東アジア全体の経済連携を加速させるねらいがある。4月までに報告書をまとめ、交渉入りする見通しだ。

 南米でのFTAの足がかりと期待されるチリとは、11月に韓国・釜山で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせ、交渉開始で合意することを目指す。

FTA交渉促進めざし農水省、アジアに農業技術援助へ

2004/12/26 読売新聞 Yomiuri On-Line
 農水省は25日、自由貿易協定(FTA)の農業分野交渉で、日本への市場開放要求水準を引き下げるために、見返りとして農業技術援助や貧困地域で栽培される農産物に輸入枠を設けて譲歩を引き出す方針を固めた。

 日本の農業技術はアジア地域で高く評価されており、技術援助を取引材料に使うことで、交渉力を強化する。難航が予想されたフィリピンや、マレーシアとの交渉が早期に大筋合意した背景にもこうした戦術があり、農水省は今後もタイや中国など他の地域とのFTA交渉で積極活用する方針だ。

 24日に大筋合意したマレーシア産農林水産物への市場開放交渉では、日本側は、マレーシア産合板の品質改良などの技術協力や、小規模農家が作るバナナに限り、年1000トンの無税枠を設けることを提示した。これを評価したマレーシア側は、焦点だった合板の市場開放問題は数年後に再協議することで合意し、年明けと見られた農業分野の早期決着にこぎ着けた。

 11月に基本合意したフィリピンとの交渉でも、砂糖の品質改良技術で日本側が協力することを約束したため、焦点だった砂糖の完全撤廃問題は4年後の再協議に先送りできた。

 このため農水省は、こうした戦術がアジアの発展途上国とのFTA交渉では有力になると判断、交渉中のタイにも、地域の特産品開発や、検疫体制の整備などで日本側が協力案を提示して、タイ側に鶏肉や砂糖などの関税撤廃要求の取り下げを求めている。今後予想される中国やインドとの交渉でも、技術援助や貧困地域の農産物の輸入枠を活用していく方針だ。

 これまで、アジアなど発展途上国への農業分野の技術協力は、国際交渉との関連性は薄かった。農水省は外務省や農協などと連携を強めて、効果的な交渉を促進する方針だ。

世界のFTA、200件超 WTO、発効待ちも30件

2004/12/17 The Sankei Shimbun
 世界貿易機関(WTO)は16日発表した国際的な通商環境の発展に関する報告で、世界の自由貿易協定(FTA)が206件に達したことを明らかにした。さらに昨年から今年にかけて締結され発効待ちの約30件と、交渉・検討中の約60件を加えると、世界のFTAは近い将来、300件を超す可能性がある。

 WTOは、昨年9月のカンクン閣僚会議決裂で新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)の決着が遠のいたため、各国がFTA優先の通商政策に切り替えたと指摘。今年1月から8月までの間だけでWTOには21件の新規FTAが通告されたとしている。

 WTOは、新ラウンドの停滞からFTA優先はやむを得ない選択だとの見方を示しながらも、基本的には排他性を有するFTAへの依存は多国間通商体制をないがしろにする恐れもある、と懸念を表明した。(共同)

インドネシアとのFTA締結検討へ

2004/12/16 読売新聞 Yomiuri On-Line
 【ジャカルタ=菊池隆】中川経済産業相は16日、インドネシアのマリ貿易相と会談し、日本とインドネシアが2国間で自由貿易協定(FTA)を締結する可能性を探るため、政府間で非公式の検討グループを設けることで合意した。

 マリ貿易相は「政府内は2国間FTAに非常に前向きだ」とし、来年4月までに結論を得たいとの考えを示した。両国のFTAを巡っては、メガワティ政権下の昨年末を最後に予備協議が中断しており、ユドヨノ政権の方針転換で、準備作業が仕切り直されることになる。

韓国外交通商省がFTA局を新設

2004/12/12 The Sankei Shimbun
 聯合ニュースによると、韓国の外交通商省は12日、同省の通商交渉本部下に自由貿易協定(FTA)局を新設したと明らかにした。

 韓国はチリとFTAを締結し、日本やシンガポールなどと協議し、シンガポールとは事実上妥結している。来年には東南アジア諸国連合(ASEAN)と交渉を開始する予定で、今回の新設はこうしたFTA協議に対応するため。

 FTA局はFTA政策課、FTA地域交渉課、FTA商品交渉課、FTAサービス交渉課の4課で構成されている。(共同)

韓国で大規模時限スト突入 日韓FTA中止など要求

2004/11/26 The Sankei Shimbun
 韓国の2大ナショナルセンターの1つ、民主労働組合総連盟(民主労総)が26日、韓国政府の労働政策に抗議し、雇用拡大や日韓自由貿易協定(FTA)締結阻止などを求めて大規模な時限ストライキに突入、自動車大手の現代自動車、起亜自動車の工場などで操業がストップした。

 韓国の通信社、聯合ニュースによると、民主労総側は全国で約15万人がストに参加しているとしており、現代自動車は4260台の生産に影響が出る見通しとしている。

 韓国政府は今回のストを「政治的目的の不法スト」と位置付けて強硬対処する方針で、労組側との対立が憂慮されている。ただ、大きな混乱は伝えられていない。(共同)

 

日・比FTAが実質決着 経産相、比貿易相と再会談

2004/11/19 The Sankei Shimbun
 中川昭一経済産業相は18日夜(日本時間19日午前)、訪問先のチリでフィリピンのプリシマ貿易産業相と前日に続き会談、日本とフィリピンの自由貿易協定(FTA)を柱とする経済連携協定の締結に向け、最後の障害となっていたフィリピンの鉄鋼関税の取り扱いについて大筋合意に達した。

 これにより、両国の交渉は全分野で実質的に決着。小泉純一郎首相が今月末、ラオスでアロヨ・フィリピン大統領と会談する際、交渉全体について正式に合意する見通し。

 締結できれば、日本のFTAはシンガポール、メキシコに次ぎ3つ目。農業のほか人の移動も含む幅広い協定となり、東アジア諸国を中心にFTA締結を進める日本の通商戦略に弾みがつく。

 会談後に記者会見した中川経産相は「大臣レベルで基本的な合意が得られた」と述べ、詳細は事務レベルの交渉に委ねる考えを示した。

 フィリピンが自国産業を保護するため、鉄鋼の関税撤廃に抵抗したことから、日本は輸出品の3割の関税を撤廃し、残り7割は平均関税率を大幅に下げる案を提示。プリシマ貿易産業相は大統領と相談し、日本案に沿い詳細を詰めることに同意した。

 フィリピンが自動車の一部関税を即時撤廃し、残りを段階的に自由化することも固まった。

 日本はバナナ、パイナップルなどに低関税(一部無税)の輸入枠を設定、看護師なども条件付きで受け入れる方針を打ち出し、交渉は大きく前進していた。(共同)

 <経済連携協定> 特定地域や2国間で、物品関税やサービス貿易の障壁を削減・撤廃する自由貿易協定(FTA)を柱とし、より幅広く経済的な関係の強化を目指す協定。投資や人の移動、知的財産権などさまざまな分野での協力も含む。貿易の円滑化で市場が拡大したり、競争促進で経済が活性化する利点がある。協定締結に向けて日本の場合は農産物、相手国は自動車など、重要保護品目の輸入自由化が焦点になっている。(共同

日比FTA交渉 農産物分野が決着 月内にも合意

2004/11/14 The Sankei Shimbun
 【マニラ=共同】日本とフィリピンの両政府は十三日、自由貿易協定(FTA)を柱とする経済連携協定締結に向けた農産物の取り扱いで大筋合意した。同日終了した高級事務レベル会合で、バナナなどの低関税枠設定や砂糖の自由化先送りなどで一致。農産物分野の決着により、交渉全体は最終段階を迎えたことになる。

 三日間の会合では、フィリピン側から関税撤廃の要望が強かった砂糖、バナナ、パイナップル、鶏肉、マグロなどについて集中的に協議した。

 バナナやパイナップルは、フィリピンの小規模農家の経営を支援するため、一部品種で無税枠も設定する。このほか五年後に、キハダマグロの関税を撤廃することでも合意。その間にフィリピン側に水産資源管理の徹底を求める。鶏肉については従来より低水準の関税枠を設ける。

 沖縄など特定地域の経済にダメージを与えるとして、日本側が難色を示していた砂糖の自由化では、四年後に再協議することで折り合った。

 両政府は週明けから、鉄鋼の関税撤廃などでも高級事務レベル会合を開催。十一月末の日本・東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議の際に、協定全体の実質合意を目指す方針だ。

政府、チリとFTA締結検討 産官学で研究会設置へ

2004/11/06 asahi.com
 政府はチリと自由貿易協定(FTA)の締結を検討する。チリは米国やカナダ、中南米諸国とFTAを結んでおり、南北アメリカでは、自由貿易圏を形成する構想も進んでいる。圏外に置かれる日本企業が不利益をこうむらないように、日本政府も南米との結節点に当たるチリとのFTA締結を図る方針だ。

 具体的には、両国の産官学でつくる研究会を設置。17日からチリで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の際に検討開始を合意する方向で調整している。

 チリはFTAを通商政策の柱に据えている。メキシコやコスタリカなどの中南米諸国のほか、欧州連合(EU)や米国、カナダなど先進国と積極的にFTAを結んでいる。アジアとは、韓国と03年2月に署名、中国やインドとも交渉入りを検討している。

 日本からチリへの輸出は03年が5億7500万ドルで、南米ではブラジルに次いで2番目に多い。自動車が約6割を占め、一般機械、電気機械と続く。チリが先進国とFTAを結ぶ中、日本の進出企業は関税面で不利な競争を強いられている。進出企業などでつくる「日智商工会議所」の調査(03年)によると、日系企業が07年までに失う利益は約21億ドルに達するという。

 また、チリは世界最大の銅産出国で、日本への輸出26億ドル(03年)のうち、銅が35%を占める。将来、チリと中国が接近した場合、日本が資源確保の面で不利になるという指摘もある。

 チリのリカルド・ラゴス大統領が03年2月に来日し、小泉首相と、貿易や投資など幅広い経済分野の関係強化に向けた政府間協議を発足させることで合意した。その後も、チリ側からFTA締結を求める積極的な働きかけがあった。

 チリが準加盟国となっている南米南部共同市場(メルコスール=ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイで構成)と、北米自由貿易協定(NAFTA=米国、カナダ、メキシコで構成)を含む諸国をつないでアメリカ大陸全体を自由貿易圏にする米州自由貿易地域(FTAA)構想も交渉が進められている。

日韓首脳会談、予定通り鹿児島で 記者会見で外相

2004/11/05 The Sankei Shimbun
 町村信孝外相は5日午前の閣議後の記者会見で、鹿児島県指宿市で12月に予定する日韓首脳会談の場所選定に関し、韓国国内で「征韓論」発祥の地であるなどとして異論が出ていることについて「外交的に一度決まったことを特段大きな変化もないのに変えることは常識的にあり得ない」と述べ、予定通り実施されるとの見通しを強調した。

 町村氏は5日から訪韓し、潘基文(バン・キムン)外交通商相との日韓外相会談に臨む予定で「(この問題が)外相間の議題になることはあり得ない」とも述べた。

比大統領、FTA交渉早期決着へ柔軟対応表明

2004/11/03 読売新聞 Yomiuri On-Line
 【マニラ=菊池隆】フィリピンのアロヨ大統領は3日、同国を訪問した日本経団連の奥田碩会長らと会談し、日本とフィリピンの自由貿易協定(FTA)交渉について、「農水産品の対日輸出や、日本によるフィリピン人看護師、介護士の受け入れ問題などで柔軟な対応を示すよう(事務方に)指示した。互恵的な合意を期待している」と述べ、早期決着に強い意欲を示した。

 11月末にも首脳間で合意したい意向を示したものとみられる。

 看護師と介護士の受け入れ問題では、「介護士は日本人看護師を手助けできる。看護師より受け入れやすいのではないか」として、介護士の門戸開放により関心を持っていると強調した。両国はすでに受け入れの枠組みについて大筋で合意しているが、残る課題の年間受け入れ人数について、日本が看護師、介護士で各100人程度としたいのに対し、フィリピンが特に介護士で大幅な上積みを求める可能性がある。

 また、日本に対し、「工業製品の分野で柔軟性を示して欲しい」と要請し、日本からの自動車、電機などの投資を促進して、フィリピンが「輸出拠点」となることを希望した。

 これに対し、奥田会長は「先週の政府間交渉は、年内合意に向け大きな進展があったと聞いた。喜ばしい」とこたヲた。さらに、フィリピン側の投資環境を整備するため、「規制の透明性確保に向けて官民でつくる協議機関を設置したい」と提案し、アロヨ大統領も同意した。

 日本経団連の東南アジア訪問団は今後、マレーシア、タイ、インドネシアを訪問し、各国首脳と会談する。

日比首脳がFTAで合意 看護師ら初めて受け入れ

2004/10/30 The Sankei Shimbun
 小泉純一郎首相は29日夜(日本時間同日夜)、ラオスのビエンチャンで、フィリピンのアロヨ大統領と会談し、自由貿易協定(FTA)を柱とする両国の経済連携協定について正式に合意した。

 日本のFTAはシンガポール、メキシコに次いで3カ国目。日本がフィリピン人の看護師や介護福祉士を受け入れることなどを盛り込んでおり、初めて「人の移動」を本格的に含む幅広い協定となる。

 首脳の合意を受け、今後両国政府間で協定の成文化作業を迅速化、来年半ばの調印を目指す。日本政府は「東南アジア諸国連合(ASEAN)での足掛かりになる」(政府筋)と位置付け、マレーシアやタイ、さらにASEAN全体との包括的なFTA締結につなげたい考えだ。

 会談でアロヨ大統領は「両国関係の重要なステップになる」と合意内容を歓迎、小泉首相も「素晴らしい合意ができた」と高く評価した。

 合意によると、看護師、介護福祉士については、日本の国家資格を取得する準備の一環として就労を認め、看護師3年、介護福祉士4年を滞在期間の上限と設定。また資格を取得できれば引き続き就労可能とした。受け入れ人数は今後の協議で決める。

 モノの貿易では両国ともほぼすべての工業品の関税を10年以内に撤廃するが、フィリピンが自由化に抵抗した鉄鋼は一部関税が当面残る。自動車・自動車部品は2010年までに関税を撤廃、繊維・衣類はほぼ全品目で関税を即時撤廃する。

 一方、農業分野で日本はコメなどを関税撤廃の対象から除外し、パイナップルに無税の輸入数量枠を設定。日本が輸出するブドウ、ナシ、リンゴなどは関税を即時撤廃する。(共同)

資格取得後の就労は無期限 病院、介護で日比FTA交渉

2004/10/25 The Sankei Shimbun
 日本とフィリピンの自由貿易協定(FTA)を中心とした経済連携協定交渉で、焦点の看護師と介護福祉士の日本側受け入れ案の概要が25日、明らかになった。資格取得後は無期限で就労できるほか、看護師については来日1年目から国家試験の受験ができるなど、就労しやすい条件を整えた。合意すれば2006年度には、病院や介護の現場で本格的な外国人労働者の受け入れが始まる見通し。

 25日からマニラで始まったフィリピン政府との第5回政府間会合で、農業などほかの分野を含む全体の進ちょく状況を踏まえ提案する方針。11月末の東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議で大筋合意を目指す。

 政府案によると、受け入れ対象は両職種ともフィリピンの有資格者、経験者に限定。その上で日本の看護師、介護士の資格取得を前提にする。障壁となる日本語能力については日本語能力試験(日本語検定)2級程度を目安とする。検定合格は要件とはしないが、能力がない人には政府開発援助(ODA)を使った語学研修でサポートする。

 看護師の場合、病院で実務研修をして、国家試験に備える。試験は1年目から受験可能。介護士は国内の基準と同じく、3年間老人ホームなどで実務を経験した後に受験する。いずれも在留資格は「特定活動」とし、就労に関しては期限を設けない。ただ3年をめどに試験に受からない場合は原則、帰国する。

 受け入れ人数については年間の枠のほか、累計の上限を設定。政府内では両職種とも年間100人前後を想定しているが、フィリピンの要望を聞き、交渉の過程で柔軟に対応する方針だ。

 政府間会合は29日まで。フィリピン側は看護師、介護士の受け入れのほか、バナナやパイナップルの関税撤廃を要望。日本側は鉄鋼や自動車部品など鉱工業品分野の関税撤廃を求めている。

自由貿易協定に署名 日メキシコ首脳会談

2004/09/18 中国新聞ニュース
 【メキシコ市17日共同=加藤正弘】小泉純一郎首相は十七日午後(日本時間十八日未明)、メキシコの国立宮殿でフォックス大統領と会談、自由貿易協定(FTA)に署名し「大規模で調和のとれた市場を創出し、両国の経済発展を促進する」との共同声明を発表した。首相が会談で、日本の常任理事国入りを念頭に国連改革で協調を求めたのに対し、大統領は具体論を避け温度差が浮き彫りになった。

 日本のFTA締結はシンガポールに次いで二カ国目。日本が豚肉やオレンジ果汁など五つの農産品に低関税枠を設定することなどが柱で、農産物を含む協定は初めて。国会承認を経て来年四月の発効を目指す。

 首相は国連改革について「時代に適合した国連改革が必要だ。特に常任と非常任理事国の議席拡大が必要だ。メキシコとも協力して改革を実現したい」と提案。大統領は「国連改革については同意するが、安保理改革はその一部だ。常任理事国の候補国を出すとか、メキシコ自身が候補になると言うのは時期尚早だ」と述べるにとどめた。中南米ではブラジルが常任理事国入りに意欲を示しているが、メキシコはこれをけん制している。

 大統領はFTAに関して「両国経済関係の発展のためには、これからが大切だ。早期発効のため互いに努力したい」と指摘。首相も「政府のみならず、民間の力を合わせることで経済関係を発展させたい」と応じた。首相は文化交流に触れ「友好の基礎だ。日本とメキシコで文化サミットを開催したい」と提案し、大統領も「文化交流、教育問題は重要だ。提案を歓迎したい」と同意した。

タイがコメなど4品目の関税撤廃要求…FTA対日交渉

2004/09/12 読売新聞 Yomiuri On-Line
 13日から都内で行われるタイと日本との自由貿易協定(FTA)交渉を前に、タイがコメなど農産物4品目の関税撤廃を求める自由化要求リストを日本に提出したことが11日、明らかになった。

 日本はこれら4品目については、国内農業への影響が大きいとして従来関税撤廃の例外とするよう求めており、タイ側の要求に反発している。

 タイが関税撤廃を求めてきたのは、コメ、砂糖、でんぷんと鶏肉。

 FTA交渉は通常、相手国への要求項目と、自由化の受け入れが可能な項目を明記した2種類のリストを交換して、本格的な議論に移る。

 日本は7月に要求項目リストを提出し、タイ側は受け入れ可能なリストを示していた。

 日本が受け入れにくい農産物の関税撤廃をタイが求めた背景には、「日本がタイに関税や投資・サービス分野の原則自由化を幅広く求めてきたことに対する対抗措置」との見方が強く、週明け以降のタイとのFTA交渉は難航も予想される。

経産相、日中韓で投資保護協定早期締結を提案

2004/09/04 読売新聞 Yomiuri On-Line
 【ジャカルタ=菊池隆】中川経産相は4日、ジャカルタで中国の薄煕来商務相、韓国の金ヒョン宗(キム・ヒョンジョン)通商交渉本部長と会談し、3国間で早期に投資保護協定を結ぶことを提案した。(ヒョンは金へんに「玄」)

 これに対し、韓国側は「東アジア全体の経済統合に資する」と強い支持を表明したが、中国側は引き続き協議する考えを示すにとどめた。11月にラオスのビエンチャンで開く首脳会議に向けて議論を詰める。

 これまで中国は、3国間で自由貿易協定(FTA)を結ぶことなどを提案してきたが、日本側は慎重姿勢を示してきた。ただ、日本は中国への投資が拡大を続けているため、投資環境については整備したいとしている。

日本とASEAN、来年4月にFTA締結交渉開始

2004/09/04 読売新聞 Yomiuri On-Line
 【ジャカルタ=菊池隆】日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)の経済閣僚会議が4日、ジャカルタで開かれ、自由貿易協定(FTA)を柱とする包括的な経済連携協定(EPA)締結に向けた正式な交渉を、2005年4月に始めることで合意した。

 2年以内に交渉を終結するとの努力目標も共同声明に盛り込んだ。11月にラオスのビエンチャンで開く首脳会議で署名する。

 日本は、シンガポールと2国間FTAを締結、メキシコとの間でも来春発効の見通しだが、国境を越えた地域体とのFTA交渉は初めて。5億人の人口を抱えるASEANとの実質的な経済圏統合につながるルールづくりが交渉の焦点となりそうだ。

 日本は、タイ、マレーシア、フィリピンとも、それぞれ2国間で交渉中だが、日・ASEANが正式交渉に入れば、まだ2国間交渉に入っていないインドネシアなど残るASEAN加盟6か国とのFTA交渉も事実上始まる。関税の削減・撤廃交渉は、原則的に2国間で進める。

 ASEAN全体との交渉では、日本企業などがASEANを1つのまとまった生産拠点として活用できるよう、域内の複数の国にまたがって部品や製品を動かす場合の関税措置など、2国間では対応できない問題の調整を進める。

 日本とASEANは、昨年10月の首脳会議で、2005年初めにFTA交渉を開始できるよう努力することで合意した。しかし、8月初めの実務者による事前協議で、交渉の開始時期などを巡り意見が対立し、協議は休止状態に追い込まれていた。

 ASEANはすでに中国やインドなどとFTA交渉に入っている。

 ◆自由貿易協定(FTA)=特定の2国間、もしくは複数の国の間で、原則として関税を撤廃し、貿易を活発にするための取り決め。世界貿易機関(WTO)の貿易自由化措置が全加盟国に適用されるのに対し、FTAは参加国以外は優遇しない。経済連携協定(EPA)は、FTAに加え、人の移動や、各種規制の撤廃も対象としている。

慶州で非関税措置など協議 日韓FTA第5回交渉

2004/08/23 The Sankei Shimbun
 日本と韓国は23日午前(日本時間同)、韓国南部の慶州で日韓自由貿易協定(FTA)締結へ向けた第5回政府間交渉を3日間の日程で開始した。

 日本側は藤崎一郎外務審議官、韓国側は丁宇聲(チョン・ウソン)外交通商省通商交渉調整官をそれぞれ首席代表にし、全体会合のほか七つの交渉分野別の協議をする。

 韓国側によると、日韓双方は第3回交渉の際に交換した協定文草案を土台に各分野別に協議する。韓国側は特に関係業界の関心が強い非関税措置、相互承認、政府調達分野での調整に重点を置く方針だ。(共同)

シンガポール:タイと中国の野菜・果物関税免除協定に参加

毎日新聞 2004年6月5日 Mainichi INTERACTIVE
 シンガポール通産省は4日、タイと中国が昨年10月から始めた野菜と果物の関税を相互免除する協定に参加すると発表した。チリで開催中のアジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易相会合に際し協定に調印した。来年1月に発効し、3カ国間で一部農産物の自由化が始まる。

 中国とタイは、中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)が2010年の実現を目指し合意した自由貿易協定(FTA)の一部前倒し措置として、野菜と果物計188品目の関税を相互に撤廃した。(シンガポール共同)

対日輸出は10・6%増に FTAでメキシコ経済省 2004年03月11日 The Sankei Shimbun
 日本とメキシコが自由貿易協定(FTA)締結で大筋合意したのを受けて、メキシコ経済省は10日、対日輸出(2003年は17億7336万ドル)が今後、年平均10・6%増加するとの見通しを明らかにした。

 輸出増に伴う生産施設の増強や日本からの直接投資の効果で、10年間で約41万人の雇用創出も予測。対日FTAに寄せるメキシコ側の期待の大きさがうかがえる。

 メキシコが締結するFTAは日本で33カ国目。しかし貿易収支が黒字なのは、このうち6カ国にとどまっている。

 同省は、過去10年間で日本の全輸入は年平均4・7%増加したと指摘。メキシコ産の農産品などが低関税で日本市場に参入できることになり「対日輸出を増やせる可能性が高い」とみている。

 さらに、家電など日本製品に課税されていた18−30%の関税が撤廃されることで、メキシコの消費者の利益も大きいとしている。(共同)

メキシコFTA 大筋合意 2004年03月10日 The Sankei Shimbun
 日本とメキシコの自由貿易協定(FTA)交渉が10日、大筋合意に達した。焦点となっていた農産品や鉱工業品で進展がみられた。月内に閣僚交渉で最終決着する見通しだ。

 日本のFTAは2002年に発効しているシンガポールにつぎ2カ国目。農産物を含む包括的なFTA締結は初めてとなり、既に交渉が始まっている韓国やタイ、フィリピン、マレーシアなどアジア各国との交渉進展に弾みがつきそうだ。

 10日、中川昭一経済産業相とカナレス・メキシコ経済相が断続的に電話会談。鉄鋼製品の段階的な関税撤廃など鉱工業品分野で詰めの交渉を行い、大筋合意した。

 両国政府は「技術的な問題が残っている」(政府筋)ため、週末にかけて電話会談などで協定文案を詰め、22日の週に東京で閣僚級交渉を開く。

 昨年10月には農産物をめぐり閣僚級交渉で合意寸前に決裂、交渉の行方が危ぶまれた日本とメキシコのFTAは2002年11月の交渉開始以来、1年余りを経て決着の見通しとなった。

 9日夜には、亀井善之農相とメキシコのウサビアガ農相との会談で、豚肉、オレンジ果汁など農産品5品目の対日輸出拡大などをめぐり交渉の進展を確認した。

 10日の会談では、焦点となっていた自動車や鉄鋼について日本側が主張する無税枠設定や関税撤廃をメキシコ側が進める方向で基本合意した。

 対メキシコ自由貿易協定(FTA) 2002年10月にメキシコのフォックス大統領と小泉純一郎首相との間で協定締結に向けた交渉を開始することで合意。同年11月から政府間交渉が始まった。昨年10月にフォックス大統領が来日したのを機会に合意を目指したが、農産品5品目などで交渉が決裂。今年になってメキシコが、FTA締結国以外からの輸入車に50%の重い関税をかけるなど日本企業に実害が出ていた。

次官級交渉、日程は未定 メキシコFTAで農水次官 2004年02月26日 The Sankei Shimbun
 農水省の石原葵事務次官は26日の記者会見で、実務者級で協議中のメキシコとの自由貿易協定(FTA)交渉について「次官級協議は具体的なことは決まっていない」と述べ、日程などは未定だと説明した。

 閣僚級交渉についても「メキシコのウサビアガ農相が、3月9日から12日まで、食品・飲料の展覧会出席のため来日すると聞いているが、亀井善之農相と会談するかどうかは決まっていない」と述べた。

官邸主導でFTA交渉打開へ 副長官補をメキシコに派遣

2003年11月23日 The Sankei Shimbun
 
 政府は23日、難航しているメキシコとの自由貿易協定(FTA)締結交渉打開のため、谷内正太郎官房副長官補を団長とする内閣官房のメンバーをメキシコに派遣することを決めた。谷内氏は同日出発、約1週間の日程でメキシコ側関係者と会談し、早期の妥結を目指して具体的な交渉日程などを調整する。

 FTA交渉では外務、経済産業、農水の関係各省の連携不足が指摘されていることから、官邸主導で進めることになった。

 メキシコとのFTA交渉は、10月中旬にフォックス大統領が来日した際に合意を目指したが、オレンジジュースなど農産物に対する関税撤廃をめぐり交渉は決裂した。

 ただ、小泉純一郎首相は交渉再開に強い意欲を表明。11月初めにはロサンゼルスで次官級協議を開き、今月下旬にも事務レベルで交渉を再開することで合意していた。

 メキシコ側は事務レベル協議と並行して、正式な交渉は次官級で行いたい意向を伝達。谷内氏を派遣し、メキシコ側と調整することになった。

首相は保護主義打破を…米紙、日本の農業政策を批判

2003年10月26日 The Sankei Shimbun
 米紙ニューヨーク・タイムズは25日、日本とメキシコの自由貿易協定(FTA)交渉決裂の原因となった日本の農業保護政策を批判する社説を掲載し「小泉純一郎首相は保護主義を自ら打破しない限り、改革者とはなりえない」と強調、一段の貿易自由化を求めた。

 社説は、交渉の焦点となっていた豚肉やオレンジジュースの輸入関税問題で、政府・自民党が衆院選を控え及び腰になっていたことが決裂の原因だと指摘した。

 また、日本とメキシコの間でFTAがなければ、自動車業界をはじめ日本メーカーの海外生産活動に影響を与えると強調。日本の農業保護政策は発展途上国の貧しい農業従事者を犠牲にしていると批判した。

 こうした姿勢が原因で、日本は経済大国でありながら世界貿易機関(WTO)で、建設的な役割を担えないでいるとした。(共同)

FTA締結に向け予備協議へ…日本・インドネシア首脳

2003/06/24 読売新聞 Yomiuri On-Line
 小泉首相は24日夕、首相官邸でインドネシアのメガワティ大統領と会談し、自由貿易協定(FTA)を軸とする経済連携協定締結のため、両国間で予備協議を早期にスタートさせることなどを盛り込んだ共同声明を発表した。

 声明は、スマトラ島北端ナングロアチェ・ダルサラム州の分離独立問題について、インドネシア政府と独立派武装組織「自由アチェ運動」(GAM)との対話のための会合を東京で開く可能性を示唆した。

 北朝鮮情勢については、多国間協議で核開発問題などを解決すべきだとの認識で一致、メガワティ大統領は、昨年の日朝平壌宣言に基づき核・ミサイル問題や日本人拉致問題を解決し、日朝国交正常化を実現することに支持を表明した。

 インドネシアで深刻化している森林の違法伐採を防ぐため、違法に伐採された木材製品の取引に対する監視を強化することなどを盛り込んだ行動計画も同日、署名された。

シンガポールとEFTAのFTAが1日発効

2002年12月31日 Yomiuri On-Line
 【シンガポール=深沢淳一】欧州自由貿易連合(EFTA)に加盟するスイス、ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン各国とシンガポールとの自由貿易協定(FTA)が、1日発効する。アジアと欧州を結ぶFTAは初めてだ。

北京―上海間の高速鉄道は鉄路で

2002年12月31日 Yomiuri On-Line
 【フランクフルト=貞広貴志】28日付の独紙「ウェルト」は、中国政府筋の話として北京―上海間で計画されている高速鉄道をリニアではなく鉄路方式で建設することがほぼ確実になったと伝えた。

 同紙によると、中国当局は独政府に対し、北京―上海ルートの代わりに上海・浦東国際空港と浙江省の省都・杭州を結ぶ新線(全長194キロメートル)をリニア方式で建設する計画を提示する方針という。

自由貿易協定枠組み交渉入り決定 日・ASEAN

2002/11/05 中国新聞
 【プノンペン5日共同=沢井俊光】小泉純一郎首相と東南アジア諸国連合(ASEAN)十カ国首脳は五日午前、カンボジアの首都プノンペンで首脳会議を開いた。

 双方は経済関係緊密化のため、自由貿易協定(FTA)を含む包括的経済連携の枠組みを定める交渉を来年から始めることに合意。十年以内のできるだけ早い時期に経済連携を完成させることなどをうたった共同首脳宣言に署名した。

 中国は四日のASEANとの首脳会議でFTAの枠組み協定に調印しており、今回の首脳宣言は東南アジアへの影響力を確保するため、日本が中国に対抗していく決意を公式に表明した形となる。

 また、貿易自由化の交渉対象から農業を含む特定分野を除外しないことを明確化。ASEANの対日輸出のうち農林水産物の占める割合は15%を超えるため、実際の交渉が難航するのは必至だ。

 首脳宣言はまず、小泉首相が一月の東南アジア歴訪で提案した包括的経済連携構想を具体化する決意を表明。双方の政府高官から成る委員会がFTAの方式や進め方の大枠を定める枠組み交渉を行い、来年の首脳会議に結果を報告することが盛り込まれた。

 経済連携の具体化に当たってはASEAN全体を対象とするが、タイやフィリピンが日本との個別協議を始めている現状を踏まえ、二国間連携も可能とした。

 ASEAN側が検疫を協議対象に含むよう強く要求して最後まで難航した貿易円滑化措置については「非関税的措置」との一般的表現で決着した。

 会議ではこのほか、テロなど国境を越える問題での協力体制を確立することを目指した日本とASEANの局長級協議新設を小泉首相が提案。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の問題も討議された。

朱鎔基首相が「日中韓FTA」締結の検討を提案

2002年11月04日 Yomiuri On-Line
 【プノンペン4日=深沢淳一】プノンペンで4日に行われた日本、中国、韓国による首脳会談で、中国の朱鎔基首相は「日中韓3国の自由貿易が実現可能か研究を進めたい。東アジアの経済統合を考えると、3国の自由貿易協定(FTA)には意味がある」と述べ、3国によるFTAの検討を提案した。中国の首脳が公式の場で「日中韓FTA」の実現に前向きな考えを表明したのは初めてだ。

 これに対し、小泉首相は中国が世界貿易機関(WTO)に加盟したばかりである点にふれ、「中長期的な視点から検討を進めるべきだ」と慎重な考えを示し、韓国の金硯ス(キン・ソクス)首相も同様の意見を述べた。(スは、サンズイに「朱」)

大中華圏形成の可能性

2002年11月04日 The Sankei Shimbun
 中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)の自由貿易協定(FTA)の枠組みが決まったことで、中国の東南アジアへの経済的影響力が今後一段と強まることは間違いない。このFTAは将来「関税同盟に発展する可能性」(セベリーノASEAN事務局長)があり、「大中華圏」とでも呼ぶべき一大経済圏が形成される潜在力を秘めている。

 双方の貿易額は1999年の統計で200億ドルだが、FTAによって増加ペースがさらに加速される。過去5年余りの間に5倍増の1億5000万ドルになった中国のASEAN向け投資にも一層弾みがつくことは確実で、両者の経済関係は急速に緊密化することになる。

 来年から始まる農林水産物8分野の先行自由化がもたらす利益は「ASEANが6割、中国が4割」(タイ商業省高官)とされる。中国が政治的リスクの高い農業分野から自由化することを認めたのは、中国製品の大量流入による自国産業への打撃を恐れるASEAN側の利益を優先させた後、中国が優位な工業製品の自由化で中長期的な利益を確保する狙いからだ。

 あるASEAN当局者は「中国は、巨大な隣国にのみ込まれるというASEANの懸念払しょくに努め、結果的に成功した」と、1年にわたった枠組み協定づくりの交渉を振り返った。(共同)

日本とシンガポールのFTA、11月30日発効

2002年10月31日 Yomiuri On-Line
 【シンガポール31日=深沢淳一】日本とシンガポール両政府は31日、自由貿易協定(FTA)の発効に必要な最終書面を交換した。この結果、両国間のFTAは11月30日に発効することが決まった。日本にとって、今回が初めてのFTAになる。

FTA交渉が急速拡大、APEC形がい化恐れる意見も

2002年10月28日 Yomiuri On-Line
 【ロスカボス(メキシコ)27日=天野真志】27日閉幕したアジア太平洋経済協力会議(APEC)では、自由貿易協定(FTA)を今後の貿易活性化策の柱とする動きが、APEC域内で急速に拡大していることを印象付けた。

 日本は今回、メキシコとのFTA締結交渉開始を表明し、FTAの対象をアジアから拡大する意向を鮮明にした。アメリカも、東南アジア諸国連合(ASEAN)とのFTA締結の検討を目玉とする「ASEANイニシアチブ計画」(EAI)をブッシュ大統領自らが発表し、FTA拡大への強い意欲をうかがわせた。

 さらに、開発途上国の中にも、チリがニュージーランドやシンガポールとのFTA交渉開始で相次いで合意する動きなどがあり、「今回のAPECは、まるでFTAを進めたい国や地域の“お見合いパーティー”のようだった」(小泉首相同行筋)との声も聞かれた。

 FTAを巡る動きが活発化した背景には、APECや世界貿易機関(WTO)など多国間の枠組みで貿易自由化を図るより、2国間の自由化を目指すFTAの方が、迅速な合意が期待できることがある。

 しかし、各国・地域がFTAに力を注ぐ傾向がこれからも強まる一方になれば、域内全体の貿易自由化を目標とするAPECの形がい化が一段と進む恐れもある。実際、27日の首脳会議で、「FTAが新たな経済ブロックの誕生につながらないよう十分な監視が必要だ」との意見が途上国の一部から示される場面があった。

 今後は、FTAを多国間の貿易拡大にも貢献するよう互いに働きかけていくことが、日本などAPEC加盟国・地域の大きな課題となる。

チリ大統領、日本との自由貿易協定交渉開始に意欲

2002年10月22日 Yomiuri On-Line
 【サンティアゴ22日=本間圭一】チリのリカルド・ラゴス大統領(64)は21日、地方視察からの帰途、大統領専用機の機中で、読売新聞と単独会見し、日本との自由貿易協定(FTA)について「チリにとって極めて重要」と述べ、政府間交渉開始に向けた強い意欲を表明した。大統領は、26日からメキシコで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の際に予定される小泉首相との会談で、早期交渉開始を提案する方針だ。

 大統領はまた、交渉促進のため、自身が来年2月に訪日する意向も表明、これまで民間レベルの研究が主体だった両国のFTA構想を政府間協議の軌道に乗せるチリ側の姿勢を鮮明にした。日本の外務省も、「中南米で最も安定したチリとのFTA締結は中南米外交の観点から有益」としており、今後の協議次第では、チリが、メキシコなどに次ぎ、日本のFTA交渉の有力相手国として浮上する可能性も考えられる。

FTA:年限は政治決着へ 中国・ASEAN

2002年10月17日 Mainichi INTERACTIVE
 シンガポールで開かれていた中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)の自由貿易協定(FTA)の枠組みを定める最終交渉は17日早朝まで徹夜で事務レベル協議が行われたが、FTAの完成年限などについて合意できず、11月の首脳会議での政治決着に委ねられることになった。

 プノンペンで行われる同首脳会議には、中国の朱鎔基首相とASEAN10カ国の首脳が参加、FTAの枠組み協定に調印する予定。

 交渉筋によると、FTAの完成年限について、中国とタイ、シンガポールが10年を主張。これに対して、早期の自由化に消極的なマレーシア、フィリピン、インドネシアが12年を求め、双方の溝は埋まらなかった。

 来年から始まる農林水産物8分野の先行自由化対象品目に関する中国とASEAN各国の2国間協議も並行して行われ、中国からの農産品輸入急増を恐れる他国が膨大な除外対象品目リストを提出したため、首脳会議までに2国間調整を続けることになった。 (シンガポール共同)

APECカード:域内ではビザ不用 日本も参加へ

2002年10月12日 Mainichi INTERACTIVE
 政府は来年度から、アジア太平洋経済協力会議(APEC)域内のビジネスマンが入国査証(ビザ)なしで相互に渡航できる「APECビジネストラベルカード」制度に参加する。人的交流の拡大による貿易の促進・円滑化が狙いで、メキシコで26、27日に開かれるAPEC首脳会議に出席する小泉純一郎首相が16日、正式表明する。

 同制度は希望者が自国政府に対してカードの発行を申請し、渡航希望先の政府の承認を得る。パスポートと同カードがあれば、承認が得られた国・地域にカード有効期間の3年間、ビザなしで何度も渡航でき、最長3カ月間滞在できる。出入国審査の際も専用(優先)レーンを利用し、迅速な審査を受けられるメリットもある。

 APECビジネス諮問会議(ABTC)が96、97年に導入を提言し、99年から本格的な運用が始まった。現在は豪州、韓国、香港、台湾など8カ国・地域が導入し、日本以外にも中国やタイ、インドネシアなど5カ国が参加を表明している。カード偽造を懸念する日本は米国とともに導入に慎重だったが、ABTCの要請を受けた小泉首相の指示で導入を検討していた。

 カード発給は外務省が担当し、発行対象は域内を頻繁に移動する必要のあるビジネスマンとする。発給枚数は当面、2000人以内とする予定。 【三島健二】

経済連携:日本とASEANが合意 来年から政府間交渉へ

2002年09月13日 Mainichi INTERACTIVE
 平沼赳夫経済産業相と東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国の経済相による閣僚会議が13日午後、ブルネイの首都バンダルスリブガワンで開かれ、自由貿易協定(FTA)を含む両者の包括的経済連携を目指し、来年から枠組みづくりの政府間交渉を始め、10年以内のできるだけ早い時期に実現することで合意した。

 日本はこれまで、シンガポールとFTAを締結したほか、メキシコとの交渉開始もほぼ決まったが、複数の国が加盟する地域機構とのFTA交渉は初のケース。11月にカンボジアで開く日ASEAN首脳会議で正式決定される。

 会議で承認された日本とASEANの政府専門家グループ作成の報告書は、関税引き下げ・撤廃について「各国の微妙な分野に十分配慮する」としながら、農産物を交渉対象から除外しないことを明示した。だが、農産物の関税引き下げなどをめぐる双方の立場にはかなりの隔たりがあり、交渉は難航が必至だ。

 報告書によると、FTAを含む経済連携が実現した場合、ASEANと日本の国内総生産(GDP)がそれぞれ1.99%、0.07%押し上げられるほか、双方の相手側への輸出も44.2%(ASEAN)、27.5%(日本)増加することが見込まれる。(バンダルスリブガワン共同)

10年以内にFTA実現

2002年09月13日 The Sankei Shimbun
 平沼赳夫経済産業相と東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国の経済相による閣僚会議が13日午後、ブルネイの首都バンダルスリブガワンで開かれ、自由貿易協定(FTA)を含む両者の包括的経済連携を目指し、来年から枠組みづくりの政府間交渉を始め、10年以内のできるだけ早い時期に実現することで合意した。

 日本はこれまで、シンガポールとFTAを締結したほか、メキシコとの交渉開始もほぼ決まったが、複数の国が加盟する地域機構とのFTA交渉は初のケース。11月にカンボジアで開く日ASEAN首脳会議で正式決定される。

 しかし、同日午前の会議で中国とASEANは、一部の品目について来年中に貿易自由化を先行実施することで一致しており、東南アジアとの市場一体化競争での中国の優位が一段と鮮明になった。

 会議で承認された日本とASEANの政府専門家グループ作成の報告書は、関税引き下げ・撤廃について「各国の微妙な分野に十分配慮する」としながら、農産物を交渉対象から除外しないことを明示した。

 貿易、投資に限らずあらゆる経済活動の自由化を目指す「分野の包括性」と、すべてのASEAN加盟国を含む「対象国の包括性」を確保した上で、FTAのメカニズムなどを盛り込んだ枠組みを来年中に定めるため、双方の政府代表から成る委員会を設けるよう提案、会議で了承された。

 だが、農産物の関税引き下げなどをめぐる双方の立場にはかなりの隔たりがあり、交渉は難航が必至だ。

 報告書によると、FTAを含む経済連携が実現した場合、ASEANと日本の国内総生産(GDP)がそれぞれ1・99%、0・07%押し上げられるほか、双方の相手側への輸出も44・2%(ASEAN)、27・5%(日本)増加することが見込まれる。(共同)

「台湾との自由貿易協定は政治問題になる」対外経貿部

2002年6月22日「人民網日本語版」
対外貿易経済合作部の石広生部長は21日の記者会見で、一部の国が台湾と自由貿易協定を結ぼうとしていることについて「中国と国交を樹立している国が台湾と貿易活動を展開する場合、必ず一つの中国の政策を順守しなければならない。これらの国々が台湾と自由貿易協定を結べば、政治的問題をもたらす」と指摘した。

シンガポールと自由貿易協定締結 日本は初

2002年01月14日「人民網日本語版」
東南アジアを歴訪中の小泉純一郎首相とシンガポールのゴー・チョクトン首相は13日、関税撤廃などを柱とする両国の自由貿易協定(FTA)に正式調印した。協定によって、鉱工業製品やサービス、一部の農産物などの関税撤廃が実現するほか、経済、金融、学術など幅広い分野の交流も促進される。日本が2国間のFTAを結ぶのは初めてで、4月に発効する見通しだ。

これまで日本の通商政策は、世界貿易機関(WTO)による多国間貿易体制の支持を機軸に進めてきた。だが世界の主流は、時間のかかる多国間協議よりも、手早く効果的な2国間や地域FTAに移っている。日本もその現実を受け入れた形だ。

シンガポールはもともと自由貿易国で関税はないに等しい。日本が門戸をどこまで開くかが交渉の焦点だった。今回の協定で、日本側は鉱工業製品など計3800品目の関税撤廃に踏み切り、シンガポールからの全輸入金額の94%が無税化される。

このほか、金融、運輸、旅行など約30のサービス分野でシンガポールに最恵国待遇を提供する。双方で投資の自由化や製品規格の共通化、大学の人材交流も進める。

一方、農林水産物については、自民党農水貿易調査会など農林族が抵抗し、シンガポールとの調整も難航。結局、実際の関税がゼロになっている品目だけを無税化するという「FTAでは異例」(地元紙)の事実上の関税据え置きをシンガポール側が受け入れた。この結果、2000品目近い農水産品の関税が撤廃されないという課題も残った。シンガポール側は全品目の関税を撤廃した。

調印後、両国は「協定は双方の市場の魅力と活力を増進するだろう」との共同声明を発表。小泉首相は記者団に「日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)のほかの国との関係にもモデルになるだろう」と述べ、今後のFTAの拡大の可能性にも期待を表明し、ゴー首相も「日本とASEAN諸国の経済協力関係構築に前向きな影響を及ぼすはずだ」と述べた。 「朝日新聞」2002年1月15日

中国とASEANが自由貿易協定を準備

2000/11/23(木) 中国情勢24
 中国が21日、地域貿易協定への参加、特に東南アジア諸国連合(ASEAN)との自由貿易協定の締結準備を示唆した。イギリスからの報道によると、中国外交部の関係者がシンガポールで開催される会議の前に上述のような声明を発表したという。

 その声明によれば、中国は最近提案されているアジア太平洋地域の二カ国間自由貿易協定を利用するものではない、としている。声明は、中国はASEANが確立する自由貿易地域への関係、あるいは中国とASEANとの間の自由貿易協定の可能性を探っているところだという。

 二カ国間自由貿易については、シンガポールはニュージーランドと合意に達しており、メキシコとも談判中で、アメリカやカナダ、オーストラリア、日本ともその可能性を探っている。ニュージーランドはチリや香港と談判中。日本も韓国とその可能性について協議中である。

 中国の日増しに高まる経済的実力や外資の吸引力はASEAN諸国を憂慮させているが、しかしまた中国の巨大な市場はASEAN諸国にとっても垂涎の的である。東南アジア国家としては、ASEANを通じて加盟国内の団結を図るほか、日本や韓国、中国をフォーラムに参加させるなどして、北東アジアとの協力強化にも余念がない。

 中国の世界貿易機構(WTO)加盟と合わせて、もし中国がASEANと自由貿易協定を結ぶようなことがあれば、アジア全体の貿易構造に大きな影響を与えることになるだろう。

二国間自由貿易協定 問われている日本の通商政策

2000年11月21日 The Ehime Shimbun 社説
 特定の国・地域と相互に関税撤廃などを決める自由貿易協定(FTA)に向け、ようやく日本も動き始めた。

 第一弾として先月二十二日、森喜朗首相が来日中のシンガポールのゴー・チョクトン首相と会談し、両国間のFTA交渉を来年一月に開始し、二〇〇一年中に締結することで合意している。

 多国間のシステムである世界貿易機関(WTO)を通じた自由化を基軸としてきた日本政府が、特定国と優先的に自由化を進める協定に着手するのは初めてとなる。いわば、日本の通商政策の転換点といえる。
 世界の貿易協定の動きは、昨年の米シアトルでのWTO閣僚会議の決裂後、北米と南米の自由貿易地域が統合の動きを見せるなど、世界的に地域貿易協定の動きが加速していることは間違いない。
 背景にWTOを軸にした多国間の自由貿易体制が、うまく機能しないことへの挫折感があろうが、先般のアジア太平洋経済協力会議(APEC)でも、地域や二国間のFTAを初めて本格的に議論した経緯がある。
 このAPEC首脳宣言に「地域、二国間FTAは、自由貿易促進とWTOとの整合性が必要」との一項が盛り込まれたように、日本は協定にあたって基本理念を忘れてはならないし、APECやWTOが積み上げてきた成果に相乗効果をもたらす取り組みが求められている。
 二十一の国・地域の首脳が集まるAPECの域内で、全くFTAに属さない主要国・地域は現在、日本と中国、韓国、台湾だけになっている。WTOの枠組みの中でも既に欧州連合(EU)、北アメリカ自由貿易地域(NAFTA)などが発足しており、APEC開催中にもシンガポールとオーストラリアが協定締結に向け動き出している。
 日本とシンガポールのFTAでは、森・ゴー会談で従来の物品やサービスの自由化だけでなく、投資や電子商取引の推進、金融市場の連携など幅広く協力する経済連携協定を目指すことで合意している。
 日本とシンガポールの協定が発展的に進めば、シンガポールが加盟する東南アジア諸国連合(ASEAN)との協定促進にもつながろう。また、日本はシンガポールに続いて韓国やメキシコなどとの締結も模索しており、第一弾の成否が今後への大きな試金石となりえよう。
 ただ、心しておきたいことは、FTAが閉鎖的な経済圏づくりにつながるようならば、協定の根源的な意味が問われよう。少数の国・地域が利害を固定化し、各国・地域が抱える経済課題を先送りするようだと、WTOとの両立はかなうまい。
 さらには、情報格差(デジタルディバイド)に代表されるように、貿易の自由化とグローバル化が地域格差の拡大など新たなひずみを生み出していることも忘れてはなるまい。
 APEC閣僚声明にあるように、「域内の情報技術(IT)を加速」させ、日本自体のIT促進とともに、加盟国支援を強力に押し進めることが大切だ。
 FTAについては、経団連も「自由貿易協定の積極的な推進を望む」との要望書を作成し、各方面に働きかけている。ここでは、日米の自由貿易構想にも言及しており、FTAが日本の通商の主体性を高め、構造改革を進める手だてになりうるとしている。

 FTAへの取り組みを、日本の通商政策を世界に問う機会ととらえたい。

森首相:シンガポール首相と会談「自由貿易協定」の締結目指す

2000年10月23日 Mainichi INTERACTIVE
<森首相>シンガポール首相と会談「自由貿易協定」の締結目指す

 森喜朗首相は22日、シンガポールのゴー・チョクトン首相と首相官邸で会談した。両首脳は両国間の関税撤廃など貿易・投資の自由化を促進する「自由貿易協定」(FTA)の締結に向け、来年1月から交渉を始め、遅くとも同年末までの締結を目指すことで正式に合意した。実現すれば、日本にとって初の自由貿易協定になる。これを皮切りに、世界貿易機関(WTO)を基本とした多角的貿易交渉から、特定国との自由化交渉にも乗り出すことになり、日本の通商政策は大きく方針転換することになる。

 会談の中で、森首相は「新時代にふさわしい幅広い協定としたい」と述べ、ゴー首相は「欧米に比べ、アジアは自由貿易協定に乗り出すのが遅かったのではないか」と、来年末の締結期限設定を主張した。また協定の名称は「日本・シンガポール新時代経済連携協定」と決まった。

 両首脳は同協定がWTOを補完し、多角的貿易体制を進展させる役割を果たすものであることも確認した。両国は今年3月から9月にかけ、政府、産業界、学識経験者ら25人の共同研究会で協定締結の可能性について検討し、報告書を作成した。報告書は、関税撤廃や貿易手続きの簡素化・電子化、サービス部門の自由化などを提案。情報技術(IT)や金融サービス分野の開放、IT技術者へのビザ発給の緩和、株式市場の相互上場なども検討課題にあげている。首脳会談では、同報告書に沿って交渉を進めることも合意した。目標通り、来年末までに協定が締結されれば、発効は2002年中になる見通し。 【江南護、伊藤智永】

自由貿易協定 痛み乗り越え締結推進を

2000年05月17日 Mainichi INTERACTIVE
 日本とアジア、中南米諸国との自由貿易協定締結に向けた政府・民間レベルの論議が活発化している。

 メキシコについては日本貿易振興会(ジェトロ)が、協定のメリットを強調する報告書を4月にまとめており、韓国との合同研究報告も月内に公表される見通しだ。

 先行するシンガポールとの間では、年末にも正式な政府間交渉に入る可能性が出てきた。こんな流れを受け、2000年版通商白書は、自由貿易協定を「世界貿易機関(WTO)による多角的貿易体制の補完」と位置付け、政府として推進する姿勢を鮮明にした。

 通貨統合にまで進んだ欧州連合(EU)や北米自由貿易協定(NAFTA)、南米南部共同市場(メルコスル)など、1990年代に地域統合は世界規模で加速・深化した。その背景には、ウルグアイ・ラウンド交渉の難航で、いち早く自由化メリットを享受したい各国が締結を急いだことがある。

 この結果、地域統合に参加しない主要国は日・中・韓3国だけになった。WTO閣僚会議決裂に象徴されるように、米国の指導力低下と加盟国の利害の複雑化で、多国間合意形成の壁は一段と高くなっている。

 それを見越したかのように、最近では、EUとメルコスル間の自由貿易協定締結に向けた動きなど、地域統合間連携の模索も始まっている。それだけに、日本がここにきて自由貿易協定締結に意欲を示すのは、遅まきながら当然の選択といえる。

 だが、出遅れを取り戻すという受け身の姿勢では十分な効果は期待できない。地域統合を実のあるものにするには以下の三つの視点が大切だろう。第一は、地域統合を国内の経済構造改革につなげる長期的・戦略的な視点をもつことだ。

 自由貿易協定の効果は貿易拡大にとどまらない。欧州統合にみられるように、域内での競争の活発化・産業再編の加速や、競争促進的な制度改革の引き金になる。通商白書も「経済構造改革と表裏一体でとらえる視点が重要」と強調した。

 それを単なるスローガンに終わらせないためには、自由貿易協定に伴う痛みについても論議を尽くす視点が必要だ。これまでの市場開放は、主として多国間交渉に基づいて行われたため、国内での受け入れを相対的に容易にしてきた面がある。

 一方、自由貿易協定は特定の国との間で実質的にすべての市場自由化を意味するだけに、利害対立はより先鋭化する。といって例えば農産物、繊維などの例外を無原則に広げるのでは、WTO協定に反する。

 ただ、WTO協定では一部品目について10年の範囲内で実施時期の繰り延べは認められている。その間に競争力をどう回復し、業種転換を図るのか。自由化の痛みから逃げるのではなく、乗り越えて前進するには、きめ細かな対応の検討が欠かせないことを強調しておきたい。

 もう一つ重要なのは、国際配慮の視点である。域外国の差別につながるとして日本政府はこれまで自由貿易協定に批判的だった。その政策転換は、アジア・太平洋諸国にも複雑な波紋を引き起こすだろう。

 目先の利益にとらわれることなく、将来の参加国の広がりを担保し、世界の自由貿易をどう拡大するか。「多角的貿易体制の補完」にふさわしいビジョンと工夫が求められる。

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