TOPIC No. 2-126 参審制/司法制度改革

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05.司法制度改革 by全司法労働組合

裁判官指名に民意映す機関設置 司法改革審が合意

2001.02.27(22:42)asahi.com
 裁判官制度の改革について、政府の司法制度改革審議会(会長・佐藤幸治京都大教授)は27日、高裁や地、家裁の裁判官を指名する過程に国民の意見を反映させる委員会を作り、地方の現場の意見を反映させることで合意した。裁判官になって10年に満たない判事補に社会経験を積ませるために、原則として判事補の職を相当期間解いたうえで、弁護士として働く制度を作ることでも一致した。

 裁判官制度をめぐっては、(1)基準や手続きが不透明だと指摘されてきた裁判官の任命手続きの見直し(2)「豊かな経験と知識に裏打ちされた裁判官」を確保するための給源の多様化(3)人事制度の透明化――が大きな柱になっている。この日の審議では、任命手続きと給源の多様化の面で意見がまとまった。

 これまでは裁判官になる人の名簿を作る過程が明らかにされていない。昨年11月に同審議会が示した中間報告は、指名から任命に至る過程の透明性や客観性を確保し、国民の意思を反映する仕組みを作る必要があるとしていた。

 新たに設ける委員会については、だれが裁判官として適任かを選考したり推薦したりし、裁判官の指名を希望する人に対して基準や手続きを説明して、選考過程に透明性を確保することにした。

 この委員会の性格に関しては、裁判官の指名権を持つ最高裁に対し、選考結果を意見として提出する機関とした。十分な資料や人事情報をもとに判断できる工夫が必要とし、こうした情報を中央に上げるための仕組みを作ることでも合意した。全国八高裁のブロックごとに、そのための組織を作る案が有力だ。委員会の構成や委員の選任方法については「公正で権威あるものにするよう工夫する」と述べるにとどまった。

 「社会的な経験が不足している」と批判のあった判事補制度をめぐっては、判事補の仕事を離れて一定期間弁護士を務めるなど、原則としてすべての判事補がほかの法律専門職につく制度を作ることで合意した。弁護士が裁判官になることを進めていくうえで、最高裁と日本弁護士連合会が効果の上がる措置を取るよう要望した。

弁護士事務所の法人化を了承 日弁連、訴訟専門化に対応

2001.02.10(06:35)asahi.com
 日本弁護士連合会(久保井一匡会長)は9日、臨時総会を開き、弁護士事務所の法人化を進めることなどを盛り込んだ執行部案を賛成多数で可決した。法人化で、複雑、専門的になる紛争に対応できるようにすることなどが狙いだ。弁護士の過疎・偏在問題の解消のために一定の条件の下で弁護士事務所の支店開設も了承した。日弁連は現在、法務省と法整備の協議を重ねており、同省は弁護士法の改正案として3月上旬にも国会に提出する予定だ。

 政府の司法制度改革審議会も昨年11月にまとめた中間報告に、法律事務所の共同化・法人化を進めるべきだとする提言を盛り込んでいる。

 執行部案によると、弁護士事務所は一定の要件を満たして登記すれば法人格を得られるとし、法人の社員は弁護士に限定する。さらに支店事務所も地元弁護士会所属の弁護士が常駐することを条件に認め、法人も地元弁護士会の会員となって監督を受けるとしている。

 法人化した場合、弁護士個人ではなく、事務所が事件の依頼を受けることになり、担当弁護士が死亡したり、退職したりした場合でも継続的に事件処理ができるようになる。また、事務所の規模が大きくなることにより、研修所教官など公益的業務にも参加する機会が増え、ノウハウが蓄積されて業務の専門化が進むことなどが期待されている。

参審制研究のため北欧などへ法学者を派遣 法務省

2001.02.03(11:34)asahi.com
 職業裁判官と市民が議論しながら、量刑も含めて判決内容を決める参審制について研究するため、法務省は3日から約1週間、デンマークとスウェーデンに法学者を派遣する。政府の司法制度改革審議会で「国民の司法参加」をめぐる議論が進んでいるためで、審議会から求められれば、視察結果を報告する。

 司法制度改革審議会は、重罪事件の刑事裁判を対象に、参審制に近い形の制度の導入を検討している。参審制はドイツやフランスでも採用されているが、同省はかなり前から両国についての資料を集めている。

 一方、デンマークやスウェーデンについての資料は十分にはそろっていない。両国は陪審制と参審制を併用しているが、審理の進め方は「当事者がそれぞれ主張を出し合う日本と似ている」との指摘もある。派遣される東大助教授は、現地の裁判官や検察官、弁護士らから、聞き取り調査をする予定だ。デンマークでは実質的に参審制に移行する改革案が示されており、その経緯や理由についても調べたいという。

「参審制」軸に検討へ 重罪事件の刑事裁判で司法改革審

2001.01.30(21:18)asahi.com
 国民が裁判に参加する方式について、政府の司法制度改革審議会(会長・佐藤幸治京都大教授)は30日、重罪事件の刑事裁判を対象として、事実認定から量刑に至るまで市民と裁判官が一緒に判断する「参審制」のような形を軸に検討を進める方向で大筋意見がまとまった。参審制はドイツやフランス、北欧諸国などで採用されているが、国民参加の形態は様々で、司法改革審は6月の最終報告までに具体的な制度作りを進める。国民に開かれた裁判を目指すもので、国民参加の度合いが低いと指摘されてきた戦後日本の刑事司法の歴史が、大きく変わることになる。

 この日の審議では、裁判に参加する市民の役割について、有罪か無罪かの事実認定だけでなく、量刑にも関与することで委員の意見がほぼ一致した。職業裁判官が事実認定に関与するかどうかという最大の焦点に関しては、「裁判官のプロとしての経験と一般市民の持つ社会常識といったそれぞれの長所を生かしながら、一緒に判断するのが望ましい」などの意見が大勢を占めた。

 陪審制の導入を主張する委員からは「裁判官とともに事実認定をすると、市民が裁判官の影響を強く受けてしまう」などを理由に事実認定から職業裁判官を排除すべきだという意見も出されたが、少数にとどまった。

 裁判に参加する市民の選任方法については、「無作為抽出にすべきだ」との意見でほぼまとまった。「能力や公平さなどに疑問がある場合には忌避するような制度を作るべきだ」などの案も示された。

 これまでの審議では、陪審制の問題点を挙げる意見の中で、有罪・無罪の評決に理由が示されないことが指摘されてきたが、この日は、結論には理由を付けることで意見が一致した。そのうえで、陪審制では原則として認められていない事実誤認を理由とした上訴についても、認めていく方向でまとまった。

 対象とする事件については、法定刑に死刑や無期懲役を含むような重大な事件に適用し、被告の判断で職業裁判官による裁判を選べるような選択制は認めるべきでないという見解でほぼ一致した。

 裁判体を構成する裁判官と市民の数をどの程度にするかをめぐっては、「職業裁判官の影響力をできるだけ小さくするため、市民の数をなるべく多くすべきだ」という意見と、「どちらか一方が圧倒的に多いのは妥当でない」とする意見に分かれ、今後の検討課題となった。

 司法改革審は3月までに、裁判に参加する国民の役割や選任方法、公判手続きのあり方なども含めた制度のより具体的な姿についてたたき台を作り、議論をまとめていく方針だ。

 司法改革審は昨年9月、市民が主体的に裁判内容の決定に関与できる仕組みを作ることで意見が一致している。しかし、陪審制と参審制のいずれの制度を採用するかをめぐり、委員間の意見の隔たりが大きく、具体的な司法参加の形態までは踏み込んでいなかった。

 一方、日本弁護士連合会は陪審制の導入を主張し、最高裁は裁判官の独立や身分保障を定めた憲法とのかねあいを理由に、市民に意見表明権だけを認める形での参審制導入を提言。法務省が市民にも評決権を与える形での参審制の導入を容認する方針を固めるなど、法曹界の中でも見解が分かれていた。

最高検総務部長、参審制支持を表明 シンポで

2001.01.22(21:58)asahi.com
 参審制の意義や問題点について考えるシンポジウムが22日夜、東京都内であり、法学者や弁護士、裁判官らが意見を述べた。参加者の1人の町田幸雄・最高検総務部長は「参審制であれば、意義ある形で国民の司法参加を図ることができるのではないか。事実認定と量刑の両面で、裁判官と国民とがコミュニケーションをとりながら、それぞれの知識と経験を生かしていける」と述べた。法務・検察当局の幹部が、公の場で参審制支持を表明したのは初めて。

 シンポは、日本法律家協会と商事法務研究会の共催で開かれた。町田総務部長は、参審員の数について「裁判官と参審員とが一緒に記録を検討し、十分議論する方法でないと難しい」との理由から、「ある程度人数を絞った規模が望ましい」と話した。

 一方、四宮啓弁護士は「国民の主体性や手続きの透明性が最もよく発揮されるのは陪審制」と主張。陪審制を実施しているアメリカやイギリスでは評決理由が明らかにされておらず、この日は「説明がないと、国民の納得は得られない」との意見が相次いだが、四宮弁護士は「陪審制の下でも、理由を書いてもらうことは可能だ」と反論した。

法律家以外の有識者が半数に 「衣替え」した法制審議会

2001.01.12(20:23)asahi.com
 明治時代から100年余りの歴史を持つ法制審議会(法相の諮問機関)が「衣替え」し、初めての総会が12日、開かれた。「法律家だけで議論せず、多様な意見を採り入れるべきだ」との指摘にこたえ、約7割を占めていた法律関係の学者・実務家の数を減らし、経済界や労働団体の代表者ら、法律以外の分野の委員を全体の半数に増やした。また、委員の互選でこの日、新会長に竹下守夫・駿河台大学長(民事訴訟法)が選ばれた。

 省庁再編に合わせた審議会の整理・合理化に伴い、法制審議会令も今月6日に改正された。「30人以内」だった委員が「20人以内」にスリム化されたほか、刑法部会や民法部会など常設の7つの部会を廃止。諮問されたテーマごとに部会を設置し、それぞれの部会には、外部からの「臨時委員」も置くことになった。

 旧審議会のメンバーは、23人のうち、法律以外の分野からの「有識者」は6人だった。今回の見直しで、20人のメンバーのうち他分野からの委員が10人に増えた。情報技術(IT)に詳しい長尾真・京大学長や、猪口孝・東大教授(政治学)らが6日付で新たに任命されている。

司法改革審議会、国民参加へ論議始まる

2001.01.09(23:23)asahi.com
 政府の司法制度改革審議会(会長・佐藤幸治京大教授)は9日、国民の司法参加について専門家から意見を聴くヒアリングを行った。同審議会は昨秋、欧米の制度を参考にしながら刑事裁判に国民が関与すべきだとする中間報告をまとめており、この日のヒアリングを参考にした意見交換を行ったうえで、今月30日に具体的な制度について方向性を示したいとしている。

 陪審制をめぐり、職業裁判官による裁判に比べて誤審が多いのではないかと懸念されている点について、藤倉皓一郎・帝塚山大教授(英米法)は「誤審が多いかの検証は不可能で、その議論は米国でも決着していない」と反論した。さらに、陪審員による評議の過程が公開されず、評決の理由が示されないことについて、「評議の材料は公開の法廷であらかじめすべて提示され、その記録をみればすべて把握できる」と述べた。

 三谷太一郎・成蹊大教授(政治学)は、日本や欧米で陪審制が政治制度として導入された経緯を紹介。そのうえで、「司法に対するシビリアンコントロール的役割が期待される」と同制度の今日的な意味合いを強調した。

 また、松尾浩也・東大名誉教授(刑事訴訟法)は、刑事裁判に国民が関与することになれば「証拠収集の方法、調書の取り方など捜査への即効的効果がある」と期待を表明した。一方で、「日本では捜査が濃密に行われ、立証が高度化しており、素人が固い山のような証拠と格闘するのは苦労を伴う」「裁判官との協議方式にすべきだ」と述べ、参審制の導入を支持した。

「市民に評決権」想定 法務省、参審制導入めざし検討

2001.01.06(08:22)asahi.com
 法務省は5日までに、司法への市民参加の道を広げる方策として、刑事裁判への参審制導入を支持する方針を固め、具体的な制度づくりの検討を始めた。「市民が事実認定のみを担当する陪審制よりも、職業裁判官と市民が議論しながら、量刑も含めて判決内容を決める参審制の方が適している」との考えによるもので、市民にも評決権を与える制度を想定している。市民に評決権がない形での参審制導入を提言した最高裁よりも一歩踏み込んでおり、法務省は最高裁と意見交換を始めた。

 政府の司法制度改革審議会では、「国民の司法参加」の制度づくりに向けた議論が9日から本格化する。こうした法務省の姿勢はその行方に大きな影響を与えるとみられる。

 司法参加の形態については、日本弁護士連合会が陪審制の導入を主張し、最高裁は裁判官の独立や身分保障を定めた憲法とのかねあいを理由に、市民に意見表明権だけを認める形での参審制導入を提言している。これに対し、法務・検察内では意見が分かれ、法務省は「いずれも検討課題がある」と述べるにとどめていた。

 法務省は、裁判官3人に市民2人程度の参審員が加わり、市民にも評決権を認める形の参審制が望ましいとしている。こうした見解は、司法改革審での議論が市民に評決権を持たせる方向で進んでいることも大きく影響している。

 参審員の選び方など、制度の中身は検討中だ。例えば対象とする事件については、「業務上過失致死罪に問われた交通事件など、身近なものから始めた方がいい」という意見がある一方で、「死刑や無期刑が科されるような重大事件で導入すべきだ」との声もある。

 参審制のメリットとして法務省は、(1)市民とプロの裁判官が議論しながら事実認定をしたうえで量刑の決定に当たるため、職業裁判官の経験を生かしつつ、市民の意見も反映できる(2)これまではプロ同士で合議を進めてきた職業裁判官が参審員に理解してもらえるよう自分の考えを説明するため、判決理由も平易になり、裁判がわかりやすくなる――などを挙げる。

 陪審制については、すでに実施されているアメリカやイギリスでは評決の理由が明らかにされていないことを踏まえ、「市民だけで個々の証拠を評価し、結論に至った理由を詳細に説明するのは事実上無理。事件の真相が明らかにされず、国民の期待にこたえられない」という考えだ。

 参審制はドイツやフランスなどで採用されている。例えばドイツの刑事裁判では、一部を除いて参審制が採用され、地裁の審理では裁判官3人に市民2人が参加する。参審員は政党の推薦の下、市町村が作成した名簿に基づいて選ばれている。フランスでは、刑事裁判への参審制の採用は殺人など重大事件に限られており、裁判官3人に無作為に選ばれた市民9人が参加している。

 司法改革審は学者や経済界、労働組合、消費者団体の代表ら13人の委員で構成。昨年9月、国民が裁判に直接参加する制度をつくっていくことで合意している。陪審制と参審制のどちらを採るかについて結論は出ていないが、司法改革審は今年夏の最終報告までに、制度設計についての方向性を打ち出したい考えだ。

 <参審制> 市民から選ばれた参審員が、職業裁判官とともに事実を認定する。これに対して陪審制では、市民から無作為に選ばれた陪審員が、裁判官から独立して事実認定する。刑事裁判の場合、参審制では市民が事実認定と量刑判断の双方にかかわる。陪審制では市民が有罪か無罪かを決め、裁判官が量刑を決定する。

 先進7カ国では独、伊、仏が参審制を、米、英、加が陪審制を採用している。日本でも、戦前に陪審制の裁判が行われたことがあったが、停止されたまま現在に至っている。参審制は採用されていない。

「ロースクール」設置を提言 司法改革審が中間報告

2000.11.20(20:10)asahi.com
 21世紀のあるべき司法の姿を検討する政府の司法制度改革審議会(会長・佐藤幸治京都大教授)は20日、中間報告をまとめ、内閣に提出した。司法を身近なものにするために法曹人口の大幅な増加を求めるとともに、質の高い法曹を育てる「ロースクール(法科大学院)」の設置を提言した。陪審・参審制の導入も視野に入れた国民の司法参加、裁判官の任用制度の工夫を打ち出し、捜査段階の弁護活動に公的費用を出す公的被疑者弁護制度も導入すべきだとした。今後さらに具体的な制度づくりを検討し、来年夏に最終報告を出す予定だ。

 昨年7月に内閣に設置された司法改革審は、これまでに38回の審議を重ねてきた。中間報告は、人的基盤の拡充や必要な法整備について、今の段階から準備を始めるよう内閣など関係機関に求めている。

 人的基盤の拡充・強化について中間報告は、「一発試験」の現在の司法試験を改めて、大学院でまじめに勉強した学生の多くが合格できるような専門教育機関としてのロースクールの設置を提言した。その整備状況を見ながら、現在の3倍にあたる毎年3000人程度の新たな法曹を作る必要があるとしている。

 さらに、「司法への国民の理解が進み、裁判の過程がわかりやすくなる」として国民の司法参加の拡充を求めた。欧米諸国で採用されている陪審制や参審制を参考に、主に刑事裁判を念頭に置きながら日本にふさわしい制度の導入を図るとした。

 裁判官制度のあり方をめぐっては、「裁判官になる多様なルートをつくる」「裁判官の人事制度に透明性や客観性を持たせる工夫をする」などの工夫に加えて、裁判官の選任過程に国民の意向を反映させるなど任命手続きの見直しも検討すべきだと指摘している。

ロースクール、直ちに準備を 司法改革審の中間報告案

2000.11.03(03:01)asahi.com
 21世紀のあるべき司法の姿を検討する政府の司法制度改革審議会(会長・佐藤幸治京都大教授)が今月20日に公表する中間報告の案の全容が2日、明らかになった。中間報告は、来年夏に予定される最終報告に向けた議論の方向性を示すものだが、法曹人口の増加やロースクール(法科大学院)構想など人的基盤の拡充と、そのために必要な法整備の準備を今すぐ始めるよう内閣や関係機関に求めている。改革の柱には(1)国民と司法をつなぐ法曹の拡充・強化(2)国民にわかりやすく利用しやすい司法制度の構築(3)国民的な基盤の確立――を掲げ、陪審・参審制の導入も視野に入れている。

 報告案は人的基盤の拡充・強化について、「一発試験」の司法試験を廃止し、まじめにロースクールで学んだ学生の多くが合格できる「プロセス」としての法曹養成制度を整備すべきだとした。同時に、「ロースクールの整備状況なども見ながら、計画的にできるだけ早く、(現在の3倍にあたる)毎年3000人程度の新たな法曹を作る必要がある」と大幅増を求めた。

 裁判官のあり方については「1人ひとりが法律家としてふさわしい多様で豊かな知識と経験を備えていることが望ましい」と言及。司法研修所を出るとそのまま判事補になり10年たって判事となる現行制度の改革も含め、裁判官になる多様なルートの構築や、裁判官の人事評価のための基準の明確化など具体的な制度作りを今後の検討課題として挙げている。

 利用しやすい司法をめぐっては、難しい法律をわかりやすい現代語に改めるとともに、弁護士報酬の透明化や法律事務所の共同化・法人化、弁護士過疎の解消などを通じて、弁護士へのアクセスの拡充を求めた。資力のない人に裁判費用を立て替える民事法律扶助の拡充も盛り込んだ。刑事司法では、少年事件への導入も視野に入れ、被疑者段階の弁護活動に公費を出す「公的被疑者弁護制度」の導入を提案した。

 国民の司法参加に関して報告案は「司法が国民の信頼と支持を十分に得ているかを改めて問い直し、司法の国民的基盤を強化する方法を検討すべきだ」と指摘した。欧米諸国で採用されている、裁判官から独立して有罪か無罪かを決める陪審制、職業裁判官と一緒に事実認定や量刑判断などに当たる参審制の両制度を参考にしながら、主に刑事裁判を念頭に置いて日本にふさわしい制度の導入を図るとした。

国民の司法参加めぐり三者三様の論議 司法改革審

2000.09.12(21:37)asahi.com
 政府の司法制度改革審議会(会長・佐藤幸治京都大教授)は12日、国民が裁判に参加する仕組みについて法曹三者がそれぞれの意見を述べ合った。日本弁護士連合会が「陪審制の導入こそが大切だ」と主張したのに対し、最高裁は一定の範囲での参審制の導入を提言した。法務省は「いずれの制度も検討する課題がある」と述べるにとどまり、態度を明確にしなかった。各立場から陪審・参審制の長所と問題点が指摘されたが、議論は平行線をたどった。司法改革審は次回18日の会議で3人の委員のリポートをもとに議論し、26日に司法参加のあり方に関して一定の方向性を示すとみられる。

 陪審制をめぐる諸外国の動きについて、日弁連が「ここ数年、ロシアやスペインなどでは陪審制を復活させており、陪審制を採用している国は拡大している」と述べると、最高裁は「フランスやドイツでは参審制に移り、イギリスでも対象となる事件が縮小されてきた」と反論した。

 最高裁は、英、米の学者の研究成果を根拠に、「陪審員の判断は不安定で、かなり高い確率で誤判が生じているのではないか」とも指摘した。しかし、日弁連の見解は「誤判の原因は警察・検察の証拠隠しや弁護人の無能などで陪審制度そのものが原因ではない」。

 参審制への姿勢も分かれた。最高裁はこの日、法定刑に死刑や無期懲役が含まれるような社会的に影響の大きい刑事事件や名誉棄損訴訟など民事裁判の一部に「参審制」を導入することを提言した。

 しかし、裁判官の独立を定めた憲法とのかねあいで参審員に評決権を認めておらず、この点に触れて、日弁連は「国民の司法参加制度の趣旨から大きく隔たるものだ」と批判した。

 陪審制を導入する前提条件として、報道規制も取りあげられた。法務省と最高裁はいずれも「陪審員の予断や偏見を排除するためには、事件報道を規制する方策が必要になる」と指摘した。

 これに対して日弁連は、検察審査会経験者のアンケートで「マスコミも影響を受けずに公正な判断が可能だ」とした人が58.1%だったことなどを挙げ、「報道の自由は重要な憲法的価値で安易な規制によるべきではない」との立場を示した。

最高裁が参審制提言へ 重大事件などに限り意見表明容認

2000.09.10(03:01)asahi.com
 最高裁は9日までに、法定刑に死刑や無期懲役が含まれるような社会的に影響の大きい刑事事件や名誉棄損訴訟など民事裁判の一部に、国民から選ばれた参審員が裁判官と一緒に審理する「参審制」の導入を提言する方針を決定した。裁判官の独立を定めた憲法とのかねあいから、参審員については、意見表明はできるが評決権を持たないという「日本型」を考えている。12日の司法制度改革審議会(会長・佐藤幸治京都大教授)で見解を明らかにする。日本弁護士連合会などは「陪審制」の導入を主張しており、最高裁が参審制の導入に向けて踏み込んだことで、国民の司法参加をめぐる議論は大きく進みそうだ。

 最高裁や日弁連、法務省などの意見を聞いて、司法改革審は今月中に陪審制や参審制の導入の是非について集中的に審議し、11月に予定される中間答申で一定の方向性を打ち出すとみられる。

 最高裁はこれまで、知的財産権や医療過誤など専門的知識を必要とする民事訴訟に限って、専門家を合議体に加える「専門参審制」という形での採用には積極姿勢を示していた。しかし、国民の裁判への参加を求める声を受けて、刑事裁判や通常の民事裁判に一般市民が加わる通常の参審制の導入の是非を検討。15人の最高裁裁判官で構成される裁判官会議で、参審制を認める方針が了承された。

 関係者によると、最高裁が検討している参審制は、職業裁判官3人と国民から選ばれた参審員2人の計5人で下級審の裁判体を構成する。参審員は事件の記録を読んで、合議の場では裁判官の問題提起に対して意見を述べる。

 重大な刑事裁判のほか、民事裁判についても、最高裁は「法律関係や事実関係が複雑で、一般の国民が理解するのに時間がかかるなど、負担が大きすぎるものがある」としながら、名誉棄損をめぐる慰謝料請求訴訟や隣近所の争い、借地借家に関する紛争など「国民の意見を反映させるのにふさわしい事件」は参審制の対象に想定している。

 参審制や陪審制の導入をめぐっては、裁判官の独立や身分保障を定めた憲法に抵触しないかが議論されてきた。「憲法は専門的な裁判官を想定していて、素人の臨時裁判官を認める余地はない」という考え方などが違憲論の根拠で、合憲の立場からは「国民主権の原則に照らし、当然許される」という反論があった。

 こうした議論を踏まえ、最高裁は、参審員が評決権を持たず、その意見が裁判官を拘束しなければ問題はないと判断。参審員には意見表明のみを認める方向で検討していく。「評決権がなくても、国民が裁判官と一緒に審理する過程を通じて、国民の意識や感覚を裁判に反映できる長所が期待できる」としている。

 12日の司法改革審では日弁連が、(1)刑事裁判では、当面は重罪事件の否認事件について被告が職業裁判官の裁判か陪審裁判を選ぶ選択的陪審制(2)国が一方当事者となる国家賠償訴訟に選択的民事陪審制――などを導入することを提案する方針だ。

 <参審制> 市民から選ばれた参審員が職業裁判官と一緒に一つの裁判体を作り、事実認定をするとともに法律問題も判断する。これに対して陪審制では、市民から無作為に選ばれた陪審員が、裁判官から独立して事実認定をする。例えば刑事裁判の場合、陪審では有罪か無罪かを判断し、量刑は裁判官が決める。参審員は事実認定と量刑の双方に関与することになる。

 戦後の司法制度改革論議では、陪審制の復活や参審制の導入などが検討対象になったものの、憲法とのかねあいなどもあり、いずれも採用されず、今日に至っている。先進7カ国では、独、伊、仏が参審制を採用し、陪審制は米、英、加が採っている。いずれも実施されていないのは日本だけだ。

司法試験合格者、3倍増の3千人に 改革審で一致

2000.08.09(00:44)asahi.com
 政府の司法制度改革審議会(会長・佐藤幸治京都大教授)は8日、法曹(裁判官、検察官、弁護士)人口を大幅に拡充するため、司法試験の合格者数を年間3000人程度に増やすことについて、各委員の意見が大筋で一致したことを明らかにした。具体的な時期については明示せず、「新たな法曹養成制度の整備の状況などを見定めながら、計画的に、できるだけ早い時期に確保を目指す」としている。昨年度の司法試験合格者数はちょうど1000人で、審議会の打ち出した数はこの3倍にあたる。

 これまでの審議会の議論では、社会の多様化・国際化などに対応しつつ、司法を国民に身近なものにしていくために、法曹人口を大幅に増やす必要があるという点で、各委員の意見は一致していた。合格者数の増加は、その一環として検討されてきた。

 一方で、質の高い法曹を育て、法曹人口の増加による質の低下を防ぐために、「日本型ロースクール(法科大学院)」構想の議論を進めており、合格者を増やす時期について、審議会は「こうした新しい制度がどれくらいのスピードと規模で立ち上がってくるかを見極める必要がある」と説明している。

 「3000人」という目標値については、「最小限」「精いっぱいの数」など、委員の中でも認識に隔たりがあるという。

 同審議会の事務局が作成したシミュレーションによると、3000人ペースで増員すれば、13年後には現在の約2万人の法曹人口が5万人を超えるが、審議会はこの日、法曹人口の総数については言及しなかった。

 法曹人口を諸外国と比較すると、日本の約2万人に対し、米国が約94万人、イギリス約8万人、ドイツ約11万人、フランス約3万5000人。法曹1人あたりの人口では米国が約300人、イギリス、ドイツが700人、フランス1600人に対して、日本は6000人余りとなっている。

弁護士費用の立て替えを法制化、10月1日から施行

7:38p.m. JST April 21, 2000
 資力の乏しい人も民事裁判や法律相談を受けやすくする「民事法律扶助法」が21日午前の参院本会議で全会一致で可決、成立した。10月1日から施行される。これまで弁護士らが自発的に行っていた法律扶助制度を法律で「国の責務」と定め、3人家族で年収400万円以下の所得層を対象に、訴訟代理人への報酬や訴訟書類の作成費用などを貸し付ける。返還が原則だが、生活保護を受けている人は勝訴の場合を除き、免除される。事業は法相が指定する公益法人が運営する。

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