TOPIC No. 2-102 高1生/大分一家6人殺傷事件

01.一家6人殺傷事件(大分)特集 by読売新聞西部本社 九州発
02.15才、大分一家6人殺傷事件の犯罪心理「最悪のことをした」byこころの散歩道


大分一家6人殺傷で15歳少年の医療少年院送致を決定

2000.12.26(17:48)asahi.com
 大分県大野郡野津町で今年8月に起きた一家6人殺傷事件で、大分家裁は26日午後1時半から第2回審判を開き、殺人などの疑いで送致された同郡内の少年(15)に対し、医療少年院送致とする保護処分を言い渡した。久我保恵裁判官は少年について、「事件の重大性を十分認識しておらず、未熟な自我の発達を促しつつ、命の尊さを教えることが不可欠」とし、精神鑑定が指摘した「重症の行為障害」を考慮すると、長期間にわたり専門的、個別的な治療と教育が必要と判断した。

 家裁の決定によると、少年は8月14日未明、同県野津町都原、農業岩崎萬正さん(66)方に侵入、サバイバルナイフで一家6人を次々と刺し、萬正さんの妻澄子さん(当時66)、長女智子さん(同41)、智子さんの長男潤也君(同13)を殺害、萬正さんと智子さんの長女、次男に重傷を負わせた。

 事件は、西鉄高速バス乗っ取り事件や愛知県豊川市の主婦刺殺事件など、重大少年事件が全国的に相次ぐ中で起きた。3人殺害、3人が重傷と結果も重大だったため、来年4月から施行される改正少年法の成立過程の議論に影響を与えた。

大分の一家殺傷事件で少年の審判開始決定

2000.09.06(23:07)asahi.com
 大分県大野郡野津町の一家6人殺傷事件で、大分家裁は6日、殺人、殺人未遂、銃刀法違反の容疑で送致されている同郡内の高校1年の少年(15)に対する審判開始を決定した。近く、少年の更生方法などを判断する審判が始まる。少年の付添人の弁護団は、少年の精神鑑定を求める精神鑑定請求書を提出しており、精神鑑定の採否も決まる見通し。

 家裁では5人の調査官が少年の家庭環境や学校生活など成育過程の調査を進めている。審判では少年や保護者、付添人などが出席、少年院送致などの処分の方法について審議する。少年は16歳未満のため、少年法の規定により地検へ逆送され、公判を受けることはない。大分地検は大分家裁に少年を送致する際、「少年院送致相当」との意見書をつけたとみられる。

 家裁が精神鑑定の必要性を認めた場合は、通常1―3カ月間程度の鑑定留置の手続きがとられ、その間、審判手続きは中断、鑑定後に再開される。

大分の一家6人殺傷事件 殺人容疑で少年を家裁送致

2000.09.04(22:46)asahi.com
 大分県大野郡野津町の一家6人殺傷事件で、大分地検は4日、同郡内の高校1年の少年(15)を殺人と殺人未遂、銃刀法違反の疑いで大分家裁に送致した。「少年院送致が相当」との意見書を付けたとみられる。大分家裁は同日、少年の観護措置を決定、身柄を大分少年鑑別所に収容した。

 一方、同地検と大分県警は送致後記者会見し、事件の概要を発表した。同県警は、動機を「下着盗が発覚しないよう口封じのため全員の殺害を図った」と説明した。

 調べでは、少年は8月14日午前2時ごろ、同町都原、農業岩崎萬正(かずまさ)さん(66)方にふろ場の窓を割って侵入、岩崎さんの一家6人をサバイバルナイフで次々と刺し、岩崎さんの妻澄子さん(当時66)、長女智子さん(当時41)、智子さんの長男の潤也君(当時13)を殺害、岩崎さんと智子さんの長女の舞さん(16)、次男の誠也君(11)に重傷を負わせた疑い。

 県警によると、少年は事件までに数回、岩崎さん宅に侵入して下着を盗んだという。さらに8月2日夜には、侵入のための細工をしようと岩崎さん方の敷地に入った際、岩崎さんに見つかり逃走し、その後、岩崎さんが数回、少年の母親に注意をしたことから「下着盗が発覚すると、近所の人や女の子から白い目で見られる」「父親から怒られると家にいられなくなる」と考え、一家殺害を決意したとされる。

 大分家裁ではこの日、5人の調査官が調査に当たることを決め、少年の付添人として弁護士8人を許可した。少年の弁護団は5日にも同家裁に精神鑑定を申請する。

 鑑別所での観護措置期間は最長4週間だが、精神鑑定が認められれば、その間は観護措置が停止される。また、少年法の規定では16歳未満の少年は刑事罰を受けないため、家裁から地検へ逆送致(検察官送致)されて公判が開かれることはない。

少年立ち会い、現場検証

2000.08.29 The Sankei Shimbun
 大分県野津町の一家六人殺傷事件で、三重署捜査本部は二十九日、殺人などの容疑で逮捕した県立高校一年の少年(15)を立ち会わせ、犯行現場となった被害者の岩崎万正さん(66)宅=同町都原=などで現場検証を始めた。

 少年を乗せたワゴン車は拘置先の佐伯署を出て、午前八時五十分ごろ、最初の検証場所になる同町内の少年宅に到着。周辺を立ち入り規制し、庭にパトカーが入って捜査員が警戒する中、検証が始まった。捜査員が青いプラスチックの容器を手に、少年が被害者宅に火を付けるため油を持ち出した様子などを再現した。

 調べによると、少年は十四日午前二時ごろ、母屋のふろ場から岩崎さん宅に侵入。離れ二階に直行し潤也君(13)=死亡=らをサバイバルナイフで襲った後、母屋に戻って万正さんらを刺し、三人を殺害、三人に大けがを負わせた疑いが持たれている。

 少年は動機について当初「ぬれぎぬなのにふろをのぞいたと疑われ、腹が立った」などと話していた。

 しかし、その後の調べに、少年は事件前に下着を盗む目的で岩崎さん宅に複数回侵入、女性用下着や現金を盗んだことを認めた上で、「侵入したことが親や地域の人にばれるのが怖かった」などとも供述。捜査本部は複数の要因が重なって、犯行に及んだとみて追及している。

大分の一家殺傷 容疑少年はホラービデオを日常的に鑑賞

2000.08.19(03:06)asahi.com
 大分県野津町の一家6人殺傷事件で、殺人などの疑いで逮捕された高校1年生の少年(15)の自宅から、県警の捜査本部が押収した中に、少年が犯行前日にレンタルビデオ店で借りたとみられるホラー(恐怖)ビデオが含まれていることがわかった。少年は日常的にホラービデオを観賞していたとされ、調べに対してもビデオに関心があったことを認める供述をしているという。捜査本部は押収したビデオと事件との関連を調べている。

 少年の友人らによると、少年は、自宅から自転車で1時間ほどの距離にある同県臼杵市内のレンタル店で、月に2、3回、ホラー系のビデオを借りていた。この種のビデオを観賞し始めたのは中学生時代からで、新聞配達のアルバイト料などをビデオ代に充てていたという。

 この友人は「少年はホラービデオが唯一の趣味だったのではないか」と言う。

容疑者の少年の高校で全校集会 大分の一家6人殺傷事件

2000.08.15(13:47)asahi.com
 大分県大野郡野津町で一家6人が殺傷され、同郡内の高校1年の男子生徒(15)が逮捕された事件で、この生徒が通う県立高校は15日午前、臨時の全校集会を開き、生徒たちに「命の大切さを考えてほしい」と呼びかけた。被害に遭い、重傷を負った高校2年の岩崎舞さん(16)も同校の生徒だけに、同級生たちはショックを受け、保護者に連れ添われて登校する姿も見られた。

 集会は午前11時過ぎから体育館であった。学校側は、全校生徒約300人に事件の経緯を説明し、亡くなった3人のめい福を祈って黙とうした。

 校長は「人の命の大切さは、何にも代えられない。人の命を絶つことは、人の道として許されない。事件を忘れることはできないが、日常の心を取り戻して、新しい第一歩を踏み出して欲しい」と訴えた。

 一方、大分県教委は15日午前、大分県庁で臨時の県立学校長会議を開き、各学校の生徒指導態勢の見直しや、生徒指導の徹底などを指示した。

 会議には、逮捕された少年が通う高校を除く70校余りの校長が出席した。県教委は各校長に対し、「生徒の実態を把握するために日常からどのような具体策をとっているか」など7項目について、生徒指導の現状を書かせる用紙を配布。29、30両日に、その回答をもとに教育長が各校長から意見を聴く場を設けるという。

犯行後、電話線ちぎり逃走

2000.08.15The Sankei Shimbun
 大分県野津町の農業、岩崎萬正さん(六五)一家六人殺傷事件で、殺人と殺人未遂容疑で逮捕された野津町内に住む高校一年の少年(一五)が犯行後、岩崎さん方の電話線を引き抜くなど発覚を遅らせる工作をしていたことが十五日、分かった。少年は自宅に帰って油の入ったポリ容器を持ち出し、岩崎さん方に放火しようとした証拠隠滅工作も行っており、犯行後の冷静さが際立つ。「前日にたまたまサバイバルナイフを見つけ、犯行を思い付いた」と短絡的犯行を強調する供述と矛盾があり、大分県警三重署捜査本部は少年の取り調べを進めている。

通報遅らせる工作 供述裏腹に冷静行動

 調べによると、少年は六人を刺した後の十四日午前二時すぎ、岩崎さんの自宅の電話線を引きちぎり、電話機を隠した後、逃走した。このため、事件覚知の第一報となった一一〇番は午前二時五十二分で、重傷を負った岩崎さんの孫、舞さん(一六)=県立高二年=の持っていた携帯電話からだった。その際、舞さんは犯人像について「うちのふろをのぞいていた近所の高校生」と話していた。

 犯行後、少年は約三百メートル離れた自宅にいったん帰り、自宅倉庫から混合油の入ったポリ容器とライターを持ち出した。再び岩崎さん方に戻り、玄関前に油をまいて火を付けて逃走したが、火は玄関の一部を焼いただけで消えていた。

 「家族全員を殺害したと思っていた」という少年だが、一方で放火を実行するまでの時間かせぎとして電話線を引きちぎるなどしていて、捜査本部は、少年が確実な証拠隠滅をねらって冷静に行動していたとみている。

 これまでの調べでは、少年は犯行前日の十三日午後六時ごろ、父親に「モンキースパナを倉庫にしまっておけ」といわれ、倉庫に入って凶器となったサバイバルナイフ(刃渡り約十センチ)を見つけ、犯行を思い付いたという。ナイフは以前見かけたことがあったが、自分のものではないという。

 少年は動機について「一週間前にふろをのぞいたといわれ恨みを持っていた。家族全員を殺そうと思った」と話し、のぞきの事実については「ぬれぎぬ」と強く否定している。

謝罪、後悔なし 大分の高1、一家6人殺傷/ 前日にナイフ見つけ犯行決意

2000.08.15The Sankei Shimbun
放火「自宅からガソリン」

 大分県野津町で農業、岩崎萬正(かずまさ)さん(六五)方で一家六人が近くの高校一年生の男子生徒(一五)に殺傷された事件で、逮捕された男子生徒は十四日、大分県警三重署捜査本部の調べに「前日に自宅倉庫にあったナイフを偶然見つけ犯行を思い付いた」と供述した。捜査本部は男子生徒の短絡的犯行との見方を強めている。動機について男子生徒は「一週間前にふろをのぞいたといわれ、恨みを持った」と話しているが、萬正さんの孫で同じ高校に通う舞さん(一六)に交際を断られたとの情報もある。せい惨な犯行に駆り立てた男子生徒の心の闇(やみ)には、何が潜んでいたのか。

《交際断られ?》

 男子生徒は取り調べに淡々と応じ、「悪いことをしたと思う」と話している。しかし、謝罪はなく、犯行を後悔している様子はうかがえないという。

 凶器とみられるナイフについて、「以前、自宅の倉庫にあったのを見ていたが、自分が買ったものではなく、忘れていた。犯行前日、用事があって倉庫に行った際、偶然ナイフを見つけ、一家を殺そうとはっきりと考えた」と供述した。

 動機について男子生徒は「ぬれぎぬなのに一週間ほど前、岩崎さん方のふろ場をのぞいたと両親から注意された。岩崎さん一家も自分を避けるようになり、あいさつもしてくれず腹が立ってきた」などと詳しく話しているという。

 男子生徒が今春卒業した中学校の校長によると在学中はバスケットボール部に所属。クラスで他の生徒を指導する生活部長を務めたこともあった。高校進学後、「目つきが悪くなった」と感じた同級生もいた。

 また男子生徒の友人によると、男子生徒は舞さんに、数カ月前に交際を申し込んだがやんわりと断られ、それ以降、つきまといととられるような行動をとっていたという証言もある。事件後、携帯電話で一一〇番した舞さんも男子生徒について「うちのふろをのぞいていた近所の高校生」と話していた。

《ぼくがやった》

 事件の通報があってから約一時間後の午前四時過ぎ。捜査員が男子生徒の自宅を訪ねた。「外から帰ってきたのでは」との捜査員の質問に、男子生徒は「家におったよ。どこにも出ていない」と落ち着きはらって答えた。このため、捜査員は「人違いでは」と感じたという。任意同行中のパトカーの中で初めて、「ぼくがやりました」と犯行を認め、自宅ふろ場のたき口に捨てた凶器のサバイバルナイフなどについて話し始めた。逮捕後は犯行の詳細、犯行後の放火も「家に帰ってガソリン入りのポリ容器を持ってきて、玄関にまいてライターで火を付けた」など素直に供述している。

《刑事罰なし》

 逮捕された男子生徒は十五歳で、少年法が刑事罰の対象としている「十六歳以上」に当たらない。このため、成人と同じように刑事裁判を受けることはなく、家裁で審判が進められることになる。

 今後、家裁で審判が進められ、保護処分にするかどうかの決定が下される。保護処分には少年院送致、児童自立支援施設送致、保護観察などがある。

 十六歳以上で死刑か懲役、禁固以上の罪に当たる事件の場合、刑事処分が相当と判断すれば、家裁は少年を検察官に送致することができ、刑事裁判の法廷で裁かれる。

 最近相次いだ少年による事件では、岡山県の金属バット事件やバス乗っ取り、愛知県の主婦殺害の容疑者は、いずれも当時十七歳で、各地検が「刑事処分相当」とする意見を付けて家裁に送致している。

少年、高校になじめず/大分の一家6人殺傷事件

2000.08.15The Sankei Shimbun
 大分県野津町の一家六人殺傷事件で、殺人などの疑いで逮捕された高校一年生の少年(15)が、四月に入学した直後から、高校生活にうまくなじめず、孤立感を深めていたことが十五日、三重署捜査本部の調べや学校関係者の話などで分かった。

 捜査本部は、のぞきの疑いをかけられた少年が、だれにも相談できず、自分の内部で不満を募らせていった可能性もあるとみて、学校関係者らから事情を聴いている。

 学校関係者によると、少年は高校入学後に入った野球部もすぐに退部。五月には同級生に殴られるトラブルがあり、六月ごろから服装に乱れが出始めた。口数も少ない上、友達付き合いも上手ではなく、内にこもるタイプだった。家庭内暴力などはなかったという。

 これまでの調べに対し、少年は「ぬれぎぬなのに被害者方のふろ場をのぞいたと両親から注意された。被害者の一家も自分を避けるようになり憎しみを持つようになった」などと供述。犯行前日の十三日に、偶然自宅倉庫でナイフを見つけたことで、殺害を決意したなどとしている。

 捜査本部は、司法解剖の結果を待って、犯行の状況の解明を進めるとともに、十五日午後、少年を送検する。

一家6人殺傷の高1 入学後、急激な変貌

2000.08.15The Sankei Shimbun
「学校辞めたい」ともらす 同級生に殴られ欠席がち

 大分県野津町で一家六人が襲われた殺傷事件で逮捕された同町内に住む高校一年の男子生徒(一五)は、捜査本部の調べに「悪いことをした」と淡々と供述しているが、被害者への謝罪や後悔の様子はなく、冷静に「高校に行けなくなるんやろか」と答えているという。犯行の引き金は一週間前の「ふろ場をのぞいた」という「ぬれぎぬ」にあると供述しているが、それだけで一家惨殺に結びついたとみるには疑問が残る。瞬く間に三人の命を奪った男子生徒の残忍な手口からは想像できない幼稚な言動。少年の心に何があったのか。繰り返される十代の凶悪犯罪に教育関係者らは衝撃と苦悩をにじませた。

 この日会見した男子生徒が通う県立高校の校長によると、少年は入学した今年四月以降、ピアスをつけたり髪の毛を染めるなど中学時代と比べ生活態度が一変した。校内暴力の被害者になったこともあり、一学期も後半は休みがちで、六月上旬には母親を通じて「勉強への意欲がなくなった。学校を辞めたい」と申し出ていた。

 相談を受けた担任は、何度か自宅を訪問したが、男子生徒は六月二十五日から一週間欠席。退学の理由や目的などについて言明しなかったが、母親は「職業系の高校への進学を希望していたが、説得して今の普通高校へ行かせたことが伏線になったのでは…」と話していたという。

 担任は「目的がないまま辞めても後悔する」と説得し、少年は終業式翌日の七月二十日に行った四回目の家庭訪問では「もう少し頑張る」と語り、二学期からも出席することを約束していたという。

 こうした高校での問題も、犯行につながったのか。少年は任意同行のパトカーの中で犯行を自供後、「高校に行けなくなるやろか」と捜査員に尋ねていた。

 また被害に遭った岩崎萬正さん(六五)がふろ場ののぞきについて男子生徒の母親に抗議したのは一週間前だった。

 「うちのふろ場をのぞいちょるのは、あんたんとこやないか」

 抗議を受け、母親は「じいちゃんから聞いたけど、あんたふろ場をのぞいたんやなかろうね」と注意し、父親にも「(少年が)夜中に出歩いてるけど、なんかあったら一番先に疑われるので注意してやって」と話した。父親は「何かあったら一番先に疑われるから気を付けろ」といってきかせたという。

 八月初めには、付近で侵入者に女性の下着が切り刻まれたり、下着の窃盗事件が数件発生していた。このため、のぞきも含め、近所では「男子生徒がやった」とのうわさが流れていた。

 逮捕後、男子生徒はふろ場ののぞきを強く否定し、「前日午後六時ごろ、たまたまサバイバルナイフを見つけた」と短絡的な犯行であったように供述している。同日午後四時ごろは、近くの商店でジュースを買い、商店主の女性(八一)と普段通りの会話をしていた。

 男子生徒が岩崎さんの孫の舞さん(一六)に交際を申し出て断られ、付きまとっていたという証言も友人らの間から出ているが、校長は「少年は普通科、彼女は福祉科で、学年も違う。彼女からも、友人からも付きまといの相談は受けていない」と否定する。

 しかし、少年や舞さんが通った中学校の校長は「この辺のような田舎では交際を迫ったり、ストーカーをしたというようないろいろなうわさが飛び交う」と指摘し、「そうしたうわさに、少年は我慢することができなかったのかもしれない」と話した。

         ◇

《9割「非」でも被害者意識/悪い噂ダメージ強い地域性》

 十五歳の男子生徒は、なぜ凶行に走ったか。ぼんやりとした動機、短絡的と思える犯行までの暴走、そして犯行の残虐性−。識者らは事件の背景に、相次ぐ少年犯罪に共通する「若者のひ弱さ」、さらに「地域性」の存在を指摘した。

 国際医療福祉大の小田晋教授(精神病理学)は「最近の若者には、自分に九割の『非』があっても、一割の『理』があれば、自分が悪いにもかかわらず『自分が被害者だ』という感情を持つ風潮がある」という。「のぞきを注意された中に、一割でも濡れぎぬ的なところがあったために、男子生徒が被害者感情を持ち、恨みを膨れ上がらせたのではないか」と指摘する。

 そして「年齢的には十四歳の少年が起こした神戸の酒鬼薔薇聖斗の事件と似ている。十四、五歳の若者が持つ心の不安定さがバランスを崩すと、突出した行動を取ることがある」という。

 東洋大の岩井弘融名誉教授(犯罪社会学)は少年のひ弱さに加えて、「地域の特性」を指摘する。「都会と違い人間関係が深い農村部では、一度悪いうわさを立てられてしまうと生活しにくくなる。『ふろをのぞいた』と指摘されたことが男子生徒を追いこみ、恨みを増幅させたのではないか」と話す。

 ベストセラー「学校崩壊」の著者で中学教師の河上亮一さんは、「相次いだ少年事件同様に今回の事件でも男子生徒のことを『優しく素直な子だった』と話す声がある。しかし、悪い生徒が悪いことをする時代は終わり、だれが何をしてもおかしくない世代が登場したと考えるべきだ」と指摘する。その上で「今の子供たちには言葉で言ってもだめ。道徳教育よりも前に、共同生活や奉仕生活を行うことが必要」と話す。

 東北大大学院の大渕憲一教授(心理学)は「この年代は人に悩みを打ち明けるのが苦手。仲のいい友人がいないなど、まわりとの関係が切れている場合は、極端な方法を取りがち。特別なことではなくて、だれもが極端な行動に走る可能性があり、事件の防止には、一人で思いつめないような状況をつくってあげることが大切」と指摘する。

「気が弱く自分に閉じこもるタイプ」 一家殺傷の高1

2000.08.14(15:58)asahi.com
 14日未明、一家6人を殺傷した容疑で逮捕された高校生が通っていた大分の県立高校では、校長と教頭が14日午前11時から学校で記者会見した。「信じられない。正直言って『まさか』という思いです。(高校生は)気が弱く、自分の中にこもるタイプだった」などと震えながら困惑した様子で話した。

 校長は「夏休みに入って日々の指導ができにくくなった時の出来事。正直いって何と言っていいか言葉が見つからない」。この高校生の性格について、担任教師の話として「優しく、素直。どちらかと言うと気が弱く、口数が少ない方で友達づくりはうまくない」と話した。

 大分県警によると、高校生は取り調べに対し、特に動揺した様子はなく、素直に応じているという。一家の中で最初にだれを刺したか記憶しているなど冷静な面も見せているらしい。他の少年事件との関連については「影響はされていない」と供述しているという。

 校長によると、一学期の中ごろに、同級生に放課後の掃除の時間に「生意気な感じがする」などと言われて殴られたことがあった。その時には殴った方の生徒の親が高校生の家に謝罪に行き、仲直りしていたという。

 一学期の欠席日数は16日で、殴られた後には欠席が目立っていた。このため、担任が家庭訪問をして家族とよく連絡を取っていたという。高校入学後、野球部に入部したこともあったが、4月末にすぐ退部していた。

 学校では15日に全校集会を開いて生徒に事実関係を説明し、「動揺しないように」と指導するという。

大分で一家6人刺され、3人死亡 15歳高校生逮捕

'00/8/14中国新聞
 十四日午前二時五十分ごろ、大分県の農業岩崎万正さん(65)方から「男に家族全員が刺された」と一一〇番があった。

 警察署員が現場に駆け付けると、岩崎さんの妻澄子さん(66)と長女の智子さん(41)、智子さんの長男で町立中二年の潤也君(13) の三人が胸などを刺され死亡、岩崎さんら三人も重軽傷を負って倒れていた。

 同署は家族の話に基づいて、近くに住む県立高校一年の少年(15) から事情聴取。「一週間ほど前にふろをのぞいたと注意され、うらみを持っていた。家族全員を殺そうと思った」などと供述し犯行を認めたため、午前六時四十五分、殺人と殺人未遂の疑いで緊急逮捕した。

 負傷したのは重体の岩崎さんのほか、智子さんの長女で県立高校二年の舞さん(16)、二男で町立小五年の誠也君(11)。

 調べによると、少年は午前二時五十分ごろ、岩崎さん方のふろ場の窓ガラスを割って侵入。起きてきた潤也君を持っていたナイフで刺した後、就寝中の家族五人に次々と切りつけた。

 捜査員が午前四時ごろ、少年の自宅に駆け付け、任意同行を求めた。少年は既に、犯行時の服装から着替えており、動揺した様子などはなかったという。

 供述などから、少年の自宅ふろ場のたき口で、凶器とみられる刃渡り約十センチのサバイバルナイフが見つかった。

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