text

がにーな年下



新入社員の都田王(とだおう)君は、とても人気者。
わたしよりも、も〜う一回り年配のお姉様方にもとても気に入られている。

何がいいんだろうか?

ちょっとした興味心が、むくむくしてくる。

朝の雑巾がけを率先してやっているから?
ゴミ捨てを進んでするから?
肉体労働っていうわけじゃなければ…知識が豊富ってところが壺なのかしら?
だって、最近の若者にしては珍しく話題が豊富だもの。
政治、経済、国際、エトセトラ…。
それとも、誰とでも話せる雰囲気っていうのがいいのかしら?

話し上手で、聞き上手で…時間がたつのが分からなくなるくらい夢中になるのは。

私も知ってる。

コーヒーカップを大事そうに両手で持って飲む姿がちょっと幼くて…
でも、少し『がに股』で歩く姿が……少しおじさんぽい…。

がにーな後ろ姿を見ていると、笑いが抑えられなくなった。

都田王君が、立ち止まり、こちらを向く。
あれれ、ばれちゃった。

不思議そうな顔をしている。
レッサーパンダの風太君みたい。
ひょろっと背が高くって…つぶらな瞳。

そして、あることに気付いたのか、真っ赤になる。


察しのいいお姉さんは分かってしまった。

……気にしてるんだ。

申し訳なくって、俯いてしまった都田王君にそっとささやいた。

「わたし、都田王君の歩き方、好きよ」

都田王君は、困ったなって顔をする。
でも、その後、本当に困ったのはわたしの方。

「足だけですか?」