女の同僚
エレベータ待ちのフロアで、昔の同僚に会った。
「今日、どう?」と誘うと、「いいですよ」という言葉が帰ってきた。
こういうのが…いいんだ。
「松矢とやってた時が懐かしいよ」
「あれ? グチですか?」
「んー…かな?」
「……松矢とは殴り合いの喧嘩もしたけど…一杯飲んだら、互いの不満なんか全部解消できたもんなぁ」
「あー分ります。そういう風に思っちゃうことってありますから」
「ホントに? 松矢もあんの?」
「まぁ…ね」
「俺んとこの同僚って、女性が多いんですよ」
「今、総務だっケ?」
「そうです。しかもね、ほとんどが酒飲めないんですよ。社会人の癖にさ…」
「へぇ……それもめずらしい」
「仕事でさ、ちょっと意見が合わないことってあるじゃないですか」
「うん」
「 それがずーっと尾を引いちゃうんですよぉ。まいったなぁって感じで……」
「そっか」
「実はさ。俺、この間、ある会議で初対面の奴とやらかしちゃったのよ」
「鶴実さんが?」
「まね。俺もまだまだ熱いのよ」
「へぇ…」
「まぁ、嫌な雰囲気で会議終わったんだけどさ。俺としては、これからのこともあるし、何とか関係修復したかったわけ」
「相手は女?」
「いや、そいつは男」
「じゃぁ…」
「うん、それでその男の隣の席にいた女がたまたま大学の後輩だったんだ」
「へぇ」
「だから、取り持てない?って、お願いしたんだよ。まーちょっと飲む機会を作って欲しかっただけなんだけど…」
「うん」
「そったら、そいつ『それっておごりですか?』って宣いやがった。もうやり憎いったらありゃしない」
「はははは。そりゃ困りましたね」
「あー全くだ。世の中やり難くなったよ」
ふーっと、互いに溜め息が出る。
「まーせめて俺達は仲良くやりましょうよ」
そう言って互いのグラスを傾けた。