多次元機甲戦士道 メクトン Z

究極のロボットアニメRPG!!

 

今回はRPGを紹介しよう。
RPGといってもコンピュータゲームではなくて、会話を主体として遊ぶ、俗にテーブルトークRPGなどと呼ばれるやつだ。

「RPGは結構やってるけど、こんなタイトルは知らないよ」という人もいるだろう。
それもそのはず、このゲームは日本では発売されていない。
実はこれ、アメリカのタルソリアン・ゲームズ社が作ったゲームで、前に紹介した6ニムトのように代理店があるわけでもないので海外のゲームを直輸入しているショップなどでしか手に入らないのだ。
もちろん地方在住のわしは、仕方ないので東京のショップから通販で取り寄せた。
おまけに当然のことながら英語で書かれていて、翻訳はされていない。
辞書を片手に自分で読むしかないのである。

 


これが問題のタイトル。これでも海外のゲームなのだ。

しかし、そのわりには表紙には思いっきり漢字とカタカナで「多次元機甲戦士道」とか「メクトン」とか書かれてるし、ガンダムやザクみたいなロボットの絵もアメリカっぽくない。
そう、日本人がカッコつけてやたらと英語を使いたがるように、海の向こうの人間もカッコつけるために日本の文字が使いたいのだ!!
表紙イラストにいたってはなんと、日本一の怪獣画家、開田裕治氏によるものなのである。ガンプラの箱絵も描いてる人なんだから、ロボットのカッコイイ絵はバッチリだ。きっと、わざわざ海をこえて「ガンダムみたいに描いて下さい」って頼まれたんだろうなあ。
しかし、中の絵はアメリカ人の手によって描かれたものが多く、はっきり言って余り上手くない。熱意だけは伝わってくるが、どうにも笑えてしまう。いい味出してるんだ、これが。

ここまでの説明で、その只者ではない異常なコダワリぶりがわかってもらえたと思う。
これは日本のアニメが大好きな、アメリカの尋常ではないアニメファン達が力の限りコダワリまくった「ロボットアニメRPG」なのだ!!

このメクトンZの「Z」、ゼットではなくゼータと読む。
自分は持っていないが、コレの前にモトになったルールがあったらしい。で、その改訂版が「ゼータ」なのだ。追加ルールも出ていてそっちのタイトルは「メクトン ゼータ・プラス」になっている。「ダブルゼータ」じゃない辺りがヒネくれてて、やってくれるぜという感じである。

「ゼータ」と「ゼータ・プラス」があれば大概のロボットアニメは再現できる。
「ゼータ」だけだとやや物足りない感があるが、「ゼータ・プラス」には詳細なロボット製作ルールがついているので、メカ好きロボ好き野郎も大満足だ。

 

どんなキャラをつかうの?

RPGなんだから、まずは自分のキャラクターを作るわけだが、最初に基本となる肉体的特徴を決めるようになっている。体力なんかの数値は普通のRPGとそんなに変らないが、髪の色やなんかも決められるようになっていて、その中にピンクやら紫やらといったすげえ色が入ってたりするのが、なんともアニメ的。いきなり笑かしてくれる。

で、基本を作ったら、今度はプロフェッショナルとルーキーのいずれかを選ぶようになっている。
プロを選ぶと、ゲームスタート時までにどのような経歴を辿ったかを決め、それに応じて様々な技能や財産などの特典が得られるようになっている。つまり、最初から強いわけだ。
この経歴(というか職業)というのがまた色々あって、パイロットや刑事などの比較的まともなものから中にはエンターテイナーだとかゲームデザイナーなんてわけのわからないものまで入っている。
主婦なんて、2年やる毎にお昼のTV番組技能が+1だぞ!!一体何に使うんだ?

じゃあルーキーは弱いからダメかというとそうではなくて、もらえる経験値が2倍になるというオイシイ特典があるのだ。つまり、アムロは最初のうちシャアより弱いが、ストーリーが進むにつれて最終的にはシャアを超える能力を持つ、という状況を再現できるわけだ。
ルーキーには幾つかのタイプがあって、アニメヒーローと呼ばれる主人公型、アニメスタッドと呼ばれるライバルキャラ型などのアニメくさいタイプを演じるようになっている。
「気は優しくて力持ち(地味だ)」「芸能人(アイドル歌手とか声優もオッケー)」「色気たっぷり美女(峰不二子?)」「子供(ロリキャラ、ジャリキャラ)」など色々あって見てるだけで笑える。
ライバルキャラだと特典として日本刀とサングラス(それもcool sunglassesだ!)がもらえるだとか、ヘンに細かいフォローもいちいちハマっててサイコーだ!

 

メクトン・テクニカル・システム

メクトン最大のウリは、あらゆるアニメメカが造れると豪語するメカ製作ルールだ。
CPと呼ばれるコストを払って購入したパーツを組み合わせてメカを造るわけだが、基本的にはそう難しい物ではない。ただ、選択項目が多い為、最初のうちはどうしても時間がかかると思う。面倒な人はあらかじめマスターにでも造ってもらうか、あるいは他の人が造った同クラスのロボットを「同型機だ」とかいってそのままコピーさせてもらったりしてもいいだろう。

基本となるのはやはりガンダム型で「メクトン」クラスと呼ばれる。
大きさは20メートル前後で二本腕に二本足、コクピットとエンジンを積んだ胴体があって、センサーを付けた頭があって、背中には推進ロケットのついたポッド、というやつだ。
だがこれはあくまで基本。ルールの許す限り好きなようにやって構わない。
頭にコクピットをのせると装甲が弱くなる分やられた時の非常脱出が有利になるとか、足に車輪をつけて地上をダッシュするとか、ホバー移動で水上も走れるとか、色々面白いものが用意されている。
もちろん有利な特徴を多くとれば、それだけコストもかさむので、頭の使いどころだ。逆に不要と思う部分は思い切って性能を落とし、他へつぎ込むという手もあるぞ!

変形も出来るぞ!ポピュラーなのは飛行機型だが、車やバイク、船舶や潜水艦、動物メカもオッケー。ハイブリッドとかいうのもあって、何の事かと思ったら早い話がガウォークだったりする。

合体だって出来る!好きなように分割して、好きなように分離メカを造ってくれ!
面倒くさいという人にはコクピットのオプションで「ビークルポッド」というのがあるぞ。
コクピットが分離して乗り物になるというヤツだ。ホバーパイルダーやスパイラルフローみたいなもんだな。

コクピットといえば、操縦方法も選択できるようになっていて、ザブングルのような直接目視によるマニュアル式、ガンダム型のコンピュータサポートが発達したレバー式、さらに発達した全周スクリーン型、ジャンボーグAやGガンダムのような追従型、さらには思考操縦型まであるぞ!
当然複座型、三座型にもできて、人数を増やすと操縦が難しくなるかわりに1ターン毎の行動回数が増えるぞ!最大十人乗りにまで出来る!

もちろん武装もよりどりみどりで、剣や鉄球などの格闘兵器、いわゆるビームサーベルの類であるエネルギー格闘兵器、大砲や機関銃などの射撃兵器、ビームライフルのような光線兵器、デカイ一発でも大量撒き散らしもオッケーのミサイル兵器と様々だ!
破壊力や連射性能、弾数制限、攻撃範囲、特殊効果などはそれこそ山のようにある中から好きなように選べる。
強力な兵器はそれだけ大型になるが、さらにコストをつぎ込んでムリヤリ小型化し、軽量級ロボに積み込むこともできる!使用制限を大きくして、安いけれども威力はでかい武器ってのもアリだし、威力は小さいが使い勝手のいい武器ってのも実はあなどれない。
お好みのイメージに合わせてカスタマイズしよう!

シールドだって普通の手持ちの物から腕につける物、ビームシールド、反射シールド、自動防御シールドなど色々あるぞ!

ロボットのサイズも、数メートル程度の「ロードストライカー」、ガンダムサイズの「メクトン」、50メートル位のスーパーロボット「コーベット」、人が住める戦艦サイズ「スターシップ」の4クラスが用意されている。

ダイアポロンやエヴァンゲリオンのようなロボットと呼ぶのには多少問題のある連中だとか、鉄人28号やバラタックのような外部操縦型、ジーグのような人間が操縦しないもの、ゴーバリアンやレインボーセブンのような念力で造っちゃうものなど、できないものは意外と多いのだが、コクピットへの昇降用ワイヤなどの戦闘に直接関係ないオプションも充実しているし、リアル系のロボットならだいたい再現できるだろう。

 

戦闘ルールは、基本的には単純なのだが豊富なオプションルールが用意されているので、プレイヤーの練度に合わせて超カンタンルールからガチガチのシミュレーションまで自由に選ぶ事が出来る。
マスターが注意して選べば、誰でも自分に合ったレベルで楽しめるのだ。

 

見てるだけでも楽しいルールブック

他にも、全ページに書かれたヘンな日本語や日本のアニメらしいプレイの手引き、アニメでよく使われる用語集など、見所は山ほどある。

「LightSpeed あかりのはやさ」ってのはまだわかるが「Advanced Rules すすむのきそく」あたりになると間違ってはいないがカナリ怪しい。「Final Touches まったくする」とか「Stupid Mekton Tricks ぐメクトンてだて(原文のママ)」いうのになると、もう笑うしかない。
我々日本人が使っているウソ英語も、外国人には笑われまくっているのかもしれない。

アニメ用語集もケッサクだ!
日本人らしい名前の付け方(女性名は語尾に「ko」をつければそれらしくなる!とか)に始まって「HASSHA」「HASSHIN」「UTTEE」などの決まり文句も対訳と同時に紹介されている。めちゃくちゃ笑えるぞ。
しまいには「YATTE−YARUZE」だの「OMAE WA MOO SHINNDEIRU」といった本来なら作品限定モノのセリフまであったりする。
外人達が集まって、口々にたどたどしい日本語で「イキマース!」「ハッシャ!」「オチロー!」「ナン・テ・パワア・ダ!」などと叫びあってる姿はぜひとも見てみたいぞ!

 

この「メクトンZ」は、ゲームとしても遊べるし、その上見て楽しい、読んで楽しいと三拍子揃ったなかなか良いRPGである。ただし、英語を読む気力があればだが。
だが、安心して欲しい。わしは学生時代、英語の点数は非常に悪かった。
ロボットアニメが好きなら、中学生でもきっと大丈夫だ。

実は日本語版の発売も予定があったのだが、残念ながらポシャってしまった。しかし、全ページに溢れる怪しい味わいや、海外から見た日本のアニメの姿などはやはり原書で読んだほうが楽しいと思う。興味のある方は購入してみてはいかがだろうか。

 

 

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