ザ・ウルトラマン ビームフラッシャー

閃光一発!ストロボメカ内蔵!!

 

 

1975年の3月に「ウルトラマンレオ」が終了すると、ウルトラシリーズはいったん終了した。以後数年間、新作がテレビに登場する事はなかった。
だが、新作の供給は途絶えたものの、ウルトラシリーズの人気が途絶える事はなかった。全国的な規模で再放送が頻繁に行なわれていたので、ビデオはなくても毎日のようにいつでも見られる状態だったし、児童誌では特集記事やオリジナル展開のコミックが好評を得ていた。
旧作ではあっても、はっきりいってヘタな現役ヒーローより、よっぽどメジャーな存在だったのだ。いや、むしろずっと現役だった、というほうが正しいかもしれない。

1970年代後半になるとウルトラ人気はますます盛り上がり、一種の「ウルトラブーム」と呼べるような状況になってきた。
そうなると当然、新作の製作という動きも出てくる。しかし当時の円谷プロには、莫大な制作費のかかる特撮テレビシリーズを製作できるほどの力はなかったらしい。まあ、「ウルトラ」の名をいただく以上は、アステカイザーみたいな見るからに低予算のシリーズでは子供たちも納得しなかっただろう。

そんなわけで、1979年になってついに登場した新テレビシリーズ「ザ・ウルトラマン」はアニメーション作品として製作される事になった。
同時期に劇場用映画も製作されているが、これも旧作の再編集が中心であった。長期にわたって継続するテレビシリーズなら、なおさら安くおさえなければならないわけで、仕方のない事だったのだろう。

 

待望の新ヒーローとして登場した「ザ・ウルトラマン」だが、大人気というわけにはいかなかった。
この作品が語られるとき、「やはりアニメのウルトラマンは違和感があった」「実写でなければダメだった」というようにいわれることが多いようだ。だが、単にアニメだから、実写でないから悪かったのだろうか?当時わしは小学生だったが、リアルタイムで見ていた者として素直な意見をいわせてもらうと、それはちょっと違うように思うのだ。
「アニメだからダメ」という事ならば、児童誌のコミックによるオリジナル展開が絶大な支持を得たという事の説明がつかない。あれだって実写とは全く違う世界だが、当時は非常に高い人気を得ていたのだ。

「ザ・ウルトラマン」が子供たちに違和感を与えたのは、アニメである事を妙に意識して、実写ウルトラとの差別化を強く打ち出したからだ。
実際、ヒーローや怪獣のデザイン、必殺技やアクションなど、様々な面でいかにもアニメくさい、実写ウルトラとは全然違ったものに仕上っている。ストーリーや舞台設定なども、過去のシリーズとは全く関連性のない、アニメ独自の世界になっている。
「アニメのウルトラ」という事で、送り手の側としてはやはり不安があったのだろう。「チャチい、安っぽい」という言葉は、彼らのもっとも恐れる評価であったに違いない。そこで、意図的に実写との違いを強調して、「今までこんなの見た事ない!アニメのほうが凄い!アニメのほうがカッコイイ!」と思わせようとしたのだろう。
宣伝などでも「実写では不可能な」とか「アニメでしか出来ない」などといった言葉がやたら強調されていた。

だが、それが悪かったのだ。
当時のブームは、再放送とコミックが基盤になっていた。子供たちが見たかったのは、「おなじみウルトラ戦士の新たな活躍」であって、「なんだかよくわからない変な新ヒーロー」ではなかったのだ。アニメという事で、ただでさえ違和感があるというのに、それをよけいに広げるような事をしていては、受け入れられないのも当然だろう。
そんな事をするくらいなら、内山まもるの「ザ・ウルトラマン」をはじめとする、コミック版ウルトラの世界をそのままアニメ化すればよかったのである。新ヒーローを登場させるにしても、もっと実写のウルトラに近いスタイルにして「ウルトラ兄弟の新たな仲間」とすればよかったのだ。
それこそ、アニメでしか出来ない独自の世界であったろう。

 

残念ながら児童の間で大きな人気を獲得する事は出来なかった「ザ・ウルトラマン」だが、決して惨敗というわけではなかった。
そこはさすがに腐ってもウルトラ、当時のブームによる後押しもあって、それなりの人気と知名度は獲得していた。
また、アニメ独自の展開は、ウルトラシリーズとしては違和感があったものの、独立したテレビアニメシリーズとしてみれば、かなり面白いものであった。
ウルトラシリーズであるという事を忘れ、SFヒーローアニメとしてみた場合、非常に楽しめる作品であったことも、また事実なのである。
そして翌年には、ついに実写シリーズとして「ウルトラマン80」が登場する事になる。

 

 

 

光か疾風か音か?今、燃える!!

 

「ザ・ウルトラマン」に登場するヒーローは、当初は単に「ウルトラマン」と呼ばれていたが、途中で「ジョーニアス」という本名が明らかになり、それ以降は「ジョーニアス」とか「ジョー」などと呼ばれていた。
普段は科学警備隊の隊員、ヒカリ超一郎と一体化している。ヒカリ隊員がベルトにつけている「ビームフラッシャー」を額にあてると、ウルトラマンに変身するのだ。

 

 
箱の側面にも印刷されている劇中の映像

 

この「ビームフラッシャー」は星型をした変身アイテムで、変身した後のジョーニアスの額にも、同じ星型がついている。ウルトラセブンの額にも「ビームランプ」と呼ばれる発光部分があるが、ちょうどそれと同じような感じで、星型の発光部分がついているのだ。額にビームフラッシャーをあてると、そこを中心に徐々に変身していくところも、ウルトラセブンの変身シーンに似ていて面白い。

ジョーニアスは、胸のカラータイマーも星型をしているので、いってみればこのグリーンの星型がジョーニアスの象徴、シンボルであるともいえる。そしてそのシンボルそのものが変身アイテムとなっているわけだ。
デザイン的にはちょっと変わっているけれども、ウルトラマンの変身アイテムには、メカニック的なものよりもこういったシンボル的なモノが多い。そういう意味では非常にウルトラらしい変身アイテムだともいえる。

こんな馬鹿でかい目立つものを制服のベルトにいつも付けていて、皆に見せびらかしながら仕事をしているヒカリ隊員はなかなかすごい。一見気弱なようでいてけっこう肝の太い男だなあと思うが、まわりも同僚たちもあまり気にしていないようである。「ヒカリ隊員って、意外とおしゃれなのね!」などと笑われる程度だ。オシャレって…そうかなあ?

 

 

さあ来い怪獣!光のパワーで変身だ!!

 

玩具のビームフラッシャーは、ポピー(現バンダイ)から発売されていた。
当時はテレビでも宣伝していたし、玩具店でも何度か見かけたのをよく覚えている。さすがにウルトラの名が付いているだけあって知名度は高く、置いてある店も多かったのだろう。だが作品がいまいちマイナーなので、マニアの間での人気はそれほど高くなく、古い割には入手はそれほど難しくない。

 


本体を台座から取り外したところ。

 


本体裏側。中央にスイッチがある。丸い銀色の金属部分は電極だ。

 

 

この玩具は、黒い板状の台座と、星型の本体とで構成されている。

本体の発光部分は蛍光グリーンのプラスチックで成形されており、独特の色合いが綺麗で印象的だ。
また、劇中でのビームフラッシャーは500円硬貨くらいの大きさに描かれていて形もシャープだったが、玩具の本体部分はギミックを仕込む関係からか、かなり大きくてゴツい。コインどころか、もみじまんじゅうといった印象である。まあ、手に持って遊ぶ時は、このくらいのボリュームがあったほうがいいのかもしれない。

台座部分には電池ボックスと電源スイッチが装備されている。
台座に本体をセットすると、台座と本体それぞれについている電極が接触し、本体に電力が供給されるようになっている。

また、台座の上端にはベルト通しがついている。これで台座を腰にぶら下げるのだ。皮製で見た目も立派だし、ボタンで止めるようになっているので、脱着も容易だ。
現在でも銃や剣などの玩具で、ベルトに通すホルスターが付属しているものは多い。しかし、こんなに凝った作りになっているものはまず無いので、ちょっと感心してしまった。こういう意外なところが古い玩具の楽しいところでもある。
また、台座の中央には溝がついている。本体の裏側にはスイッチを兼ねた突起が出ていて、それを台座の溝に差し込んで装着するようになっているのだ。

 


本体を外した台座部分。中央には二個の電極が突き出ている。

 


台座裏側。赤い電源スイッチが見える。電池ボックスは下端。

 

電池を入れて本体を台座にセットし、電源スイッチをオンにすると、キーンというチャージ音がしてチャージが開始される。
しばらく(10〜30秒程度)待って、台座から本体を引き抜き、額にあててみよう!本体の裏にあるスイッチが押されると、ストロボの閃光が走る!!
玩具とは思えない、予想を大幅に上回る強烈な閃光を放つので、初めて見たときには正直言ってちょっとビックリした。カメラのフラッシュなどにもつかわれるストロボ機構が内蔵されているためなのだが、これがなかなかすごい。

 


パッケージ裏の一部。モデルの子供による特写がイカス!変身!!

 

本体の発光部分は蛍光グリーンで、透明度が低い素材で出来ている。そのため、内部のメカ部分が全く見えない。
こういうアイテムで中身の機械が見えるとちょっと興醒めなのだが、全然見えないのでそんな心配も全くない。しかも、それを透かしてしまうほど強烈に発光するというのが、またいい。
それに、ウルトラマンの変身アイテムにはLEDの発光よりも、バシッと輝くフラッシュの閃光のほうがよく似合う。

弱々しく光るより、見ていてオオッ!と思うほど強く光るほうが、やはり楽しい。発光のみでサウンドギミックが無いのは残念だが、そんなものは吹き飛ばしてしまう楽しさだ。
あまりの楽しさに、こういう玩具がもっと他にもたくさん出てこないかなあ、などと思うが、残念ながらストロボ内蔵の変身アイテムは少ない。
玩具の安全基準などは以前に比べると厳しくなってきているし、もしかすると現在はこういう玩具を発売するのは難しいのかもしれない。

 

 

時には昔の話を…

よく考えてみると、変身アイテム玩具というのは昔はそんなに多くなかった。
特にライダー以降の変身ヒーローは、どちらかというと道具よりも「変身ポーズ」が重要視されていたように思う。宇宙刑事も変身アイテムなど持っていなかった。
戦隊の変身アイテムだって、初期のものは「変身ブレス型の腕時計」として発売されていたのだ。
チープトイのようなものはいくつかあったが、凝ったギミックを組みこんだものといえば、仮面ライダーの変身ベルトくらいしかなかったような気がする。
しかも、その変身ベルトにしても、「仮面ライダーの体の一部」という感じで、「変身する時に使う道具」という印象は薄い。

変身アイテムというと、ヒーローとは切っても切れない必需品という印象がある。しかし、あらためて振りかえってみると、昔はそうでもなかったのだ。
玩具メーカー側がデザインまで手がけ、ギミックを内蔵して主力玩具として発売する、というスタイルが定着したのは、意外と最近の事なのである。

では、そういう玩具主体の変身アイテムはいつごろから出てきたのかというと…仮面ライダーの変身ベルトを別にするなら、わしの記憶にある限りでは、このビームフラッシャーあたりが最初だったように思う。
まあ、あくまでチープトイを除いたギミック内蔵の主力商品に限った話だし、ジーグペンダントなどのような微妙な商品もあるので、はっきりこれだ、と断定する事は出来ないのだが…。だれか古い玩具に詳しい人、情報などをお持ちの方はご教授頂ければ幸いである。

それはそれとして、変身アイテム玩具がそう多くなかった時期に、これほど凝ったギミックを組みこんだ楽しい変身アイテムが出ていたというのは驚きだ。
台座にでっかく「ザ・ウルトラマン ビームフラッシャー」とロゴが入っていたり、ジョーニアスのイラストが描かれたシールが貼ってあったりするのが時代を感じさせるが、それもまた味わい深い所である。
発光ギミックを備えた玩具はたくさんあるが、ここまで強く光るものは少ない。光る玩具が好きな人なら、ぜひ一度手にとってみて欲しい、ナイスな変身アイテムだ。

 

 


パッケージ。文字は本来もっと濃い色なのだが、退色してしまっている。

 


CM等で活躍していた着ぐるみのジョーが目立つパッケージ裏面。実写でないのがよほど心配だったのか。

 

 

 

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