ファントム・ストライカー
ドレッド帝国の恐るべき航空兵力!!
「ファントム・ストライカー」は、未来戦士たちの敵である機械軍団「バイオ・ドレッド」の戦闘機だ。
設定では、ドレッド帝国の帝王「ロード・ドレッド」の専用機となっている。そりゃまあ、わしだって機械帝国の帝王になったら、自分専用のメカをいろいろ造らせて楽しむだろう。そう考えれば、ロード・ドレッドが戦闘機ぐらい持っていても別に変ではない。だが、全人類を敵に回した大戦争に勝利して、地球全土を制圧した大帝国の帝王が、わざわざ自分で戦闘機に乗りこんで戦うというのは、ちょっと無理があるような気がする。
もとは軍人だったとかいうのならまだ話は別だが、ロード・ドレッドの場合、サイボーグになる前は科学者だったという設定なので、やっぱり不自然だ。
番組製作スタッフもそう考えたのか、劇中でのロード・ドレッドは、いかにも帝王らしくボルケニア城の玉座に座って、あれこれと指令を出している事が多く、この「ファントムストライカー」が出撃してキャプテンパワーに戦いを挑むような場面は、ほとんどなかった。たまに出てきたかと思えば、ドレッド自身は後部座席に座り、操縦は小型ロボットの「ラッキー」にやらせていたりして、なんというか「敵の強力戦闘メカ」というより、「リッチなおじさまが所有している自家用ジェット」という感じであった。
メイン商品だというのに、あまりな仕打ち。不憫なメカだ。
デザイン自体は、パワージェットよりもカッコイイくらいなのに、なんとも残念な話である。
どちらかというと、本編よりもエンディングの映像に毎週登場していた事のほうが強く印象に残っている。
スターウォーズのデススター戦に似た、メカニカルな溝の中を飛行する主観映像で、「さあ、バトルゲームで遊んでください!」と全力で主張しているのが笑えるのだが、その途中で何度も、六角形の噴射口が並んだ特徴ある後姿が「さあ、狙ってー!」とばかりに迫ってくるので、イヤでも印象に残る。
噴射口ばっかり映るので、最初はこの六角形の物体が「ファントムストライカー」だとは気付かなかったくらいだが、毎週ちゃんと登場するだけ、まだマシなのかもしれない。
激突!1対1!? キャプテンVSドレッド
玩具のファントムストライカーは、パワージェットと全く同じギミックを搭載している。
異なるのは外観だけで、フィギュアが搭乗可能なのも、インタラクティブ機能でテレビと戦えるのも、撃破されるとイジェクションシートが作動するのも、すべて同じだ。完全に同じなので、テレビと戦うときは味方のドレッド軍を撃たなくてはいけないくらいだ。ちょっと笑える。
つまり、同じ機能を備えた二機の戦闘機のうち、ヒーローと悪役のどちらか好きなほうを選べるようになっているのだ。このあたりはいかにも米国製の玩具という感じである。
ウチにはドレッドがいないので、かわりにホークに乗ってもらった
もちろん、両方そろえてもいい。二機あれば、正義と悪の戦いを楽しむ事ができるわけだ。
普通の玩具ならば、「戦わせて遊ぶ」といっても、それは「戦っているような気分を味わう」「戦っているところを想像する」という意味になるのだが、キャプテンパワーの玩具は、そこのところが一味違う。
「テレビと本当に戦える」というだけでなく「玩具とも本当に戦える」のである!!
中央がセンサーで、奥がフラッシュ。手前はダミー
ファントムストライカーもパワージェットも、エンジンポッド部分にテレビからの発光信号を受信する為のセンサーが装備されているのだが、その隣にあるもう一基のエンジン部分には、センサーの代わりにフラッシュが装備されている。
電源スイッチの横にある切り替えスイッチを「TV」から「ROOM」にすると、トリガーを引いた時、発射音と同時にフラッシュが発光する。
この光は、テレビからの攻撃と同じ点滅発光になっているので、センサーが光をキャッチすると、テレビから攻撃を受けた時と同じようにダメージを受ける。もちろん、パワーポイントが0になれば、パイロットが射出される。
参加者がそれぞれ自分の愛機を手に持ってお互いに撃ち合い、先に敵機を撃破すれば勝ち、というわけだ。
つまり、テレビと戦うだけでなく、「ジリオン」などのような、いわゆる光線銃玩具のように人間相手の対戦も楽しめるのである。これは楽しい。
また、光線銃ではなく、あくまで飛行機の玩具だというところがミソだ。
テレビからの攻撃は広範囲に広がるので、効果範囲内のマシンはすべて影響を受ける。これに対し、玩具が搭載しているフラッシュは小さく丸いスポット型なので、きちんとセンサー部分を狙って撃たないと命中しない。
センサーはエンジン部分についているので、対戦はお互いに敵機のエンジンを狙って撃ち合う形になる。このあたり、妙に説得力があって、なかなかよろしい。
撃破された時も、破壊されたのはあくまでエンジンであり、コクピットは無事だからパイロットも脱出できるのだと考えることができる。これもまた妙に説得力があって面白い。
意図的にこういう仕様にしたのだとしたら、考えた奴はかなりいいセンスしてると思う。
テレビとのバトルも、玩具同士のバトルも、参加人数に制限はない。
仲のいい友達みんなで、自分の愛機をそれぞれ持って集まり、全員でキャプテンパワーを一緒に観ながらテレビの中の敵と戦ってお互いに得点を競い、その後は対人戦でチーム戦やサバイバル戦をプレイする…などという楽しみ方ができるわけだ。想像するだけでも楽しそうである。
とはいえ、周りにパワージェットやファントムストライカーを持っている友人がたくさんいる、などという人は滅多にいないだろうし、実際にはなかなかそういうわけにはいかないだろう。
メーカー側もそれを見越していたのか、一応、一人でも遊ぶ事ができるように、紙製の組みたて式ターゲットが付属している。
これが付属の紙製ターゲット
ターゲットについている反射板に向かって撃つと、反射した光が自機のセンサーにあたってダメージとなるのだ。要するに、自分で自分を撃って射撃練習をせよという事なのだが、これで遊んでいると、ちょっと寂しい気持ちになってしまうかもしれない。
ただ、光線銃の対戦玩具は、戦う相手がいないと全く遊ぶ事ができないのに対して、こちらは一人でもテレビとのバトルが楽しめるし、戦わないときでも、フィギュアを載せる飛行機の玩具として遊ぶ事ができるのだから、あまり責めるのは贅沢というものだろう。
商品の売上はよくなかったようだが、パワージェットもファントムストライカーも、決してつまらない玩具などではなかった。それどころか、はっきりいって極めてよくできた、非常に面白い玩具だと思う。
今の目で見ても、本当に凄い。
ビームや爆発の電子音など、多少は古さを感じる部分もあるが、システムそのものは全く古さを感じさせない。15年以上も前の玩具だとはとても思えない、素晴らしいものだ。インタラクティブ機能自体も面白いが、それをさらに活かす非凡な発想と細かい配慮が、この玩具をインパクトの強いものにしている。電子技術の進歩により、様々な「新しい機構」を盛り込んだ玩具が毎年のように登場しているが、これほどの衝撃を与えてくれたものは、そうは多くない。
テレビ映像で閃光を利用した機構を取り入れる事は、今後はまずないだろう。しかし、いつかまたパワージェットやファントムストライカーを超える、斬新なアイデアを盛り込んだ、驚くようなギミックをそなえたインタラクティブ玩具がきっと登場すると、わしは信じている。